【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるプーリにおける回転バランス調整構造は、環状を呈するプーリの円周上一部にバランス調整用マスを取り付けることにより前記プーリの回転バランスを調整する構造であって、前記プーリの軸方向端面の円周上一部にマス取付用小穴を設け、前記マス取付用小穴に前記マスを取り付け
し、前記マスは、前記マス取付用小穴に挿入される比較的小径の取付部と、前記マス取付用小穴の外部に配置される比較的大径のマス本体とを一体に備え、さらに前記マス本体側に開口する凹部を備えたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の
請求項2によるプーリにおける回転バランス調整構造は、上記した
請求項1記載の回転バランス調整構造において、
前記マスを2個使いとし、回転アンバランスにおける重点位置を通るプーリ直径線を中心線として前記2個のマスを対称に配置することを特徴とする。
【0010】
上記構成を備える本発明の回転バランス調整構造は、従来のように穴加工を施すのではなく、マス(錘)を取り付けることによりプーリに存在する回転アンバランスを修正する。穴加工を施す場合は、上記したように小さなバランス調整穴を多数設けることになるのに対し、マスを取り付ける場合は、マス自体(マス本体)はプーリの表面から突出するように取り付けても良い(マス取付溝の外部に配置しても良い)ので、マス1個分の重量を大きく設定することによりマスの取付個数を減じることができ、よって穴加工の場合は多数の穴を穿設するのに対しマスの場合は少数のマスを取り付けると云う関係になるため、回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することが可能とされる。
【0011】
また、穴加工を施す場合は、意図的に駄肉部を設定する必要があることがあるのに対し、マスを取り付ける場合は、駄肉部を設定する必要がないため、プーリを極限まで軽量化することが可能とされる。
【0012】
尚、本発明において回転バランスの調整は例えば、以下のようになされる。
【0013】
すなわち先ず、定法にしたがってプーリを製作する。
【0014】
次いで、これも定法にしたがって既存(公知)のアンバランス測定装置を用いてプーリの円周上で重点となる位置(重点位置)を検出し、次いで、検出した重点位置におけるアンバランス量にもとづいて、マスを取り付けたときにアンバランス量を最も相殺できる位置をマス取付位置としてプーリの軸方向端面上で特定する。重点位置はプーリの円周上で過重量が最も大きな位置(方向)である。
【0015】
例えば
図1に示すように、プーリの軸方向端面を時計の文字盤に見立てて、その6時方向に重点位置wpが検出され、この重点位置wpにおけるアンバランス量がM・L(ただし、M:重点位置wpにおける過重量(g)、L:プーリ中心0から重点位置wpまでの半径距離(m))であるとすると、重量Mのマスをプーリの軸方向端面上12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置p
1に取り付けることにより回転アンバランスを修正することができるので、この12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置p
1をマス取付位置としてプーリの端面上で特定する。プーリの端面における12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置p
1は、重点位置wpを通るプーリ直径線上の位置であって、更に重点位置wpに対する180度対称位置であるので、マスは重点位置wpに対する180度対称位置に取り付けられる。
【0016】
次いで、上記工程で特定したプーリ端面におけるマス取付位置にマス取付用小穴を加工し、上記の例で云えばプーリ端面おける12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置p
1にマス取付用小穴を加工する。上記したようにマスはプーリの表面から突出するように取り付けることが可能であるため、マス取付用小穴の大きさは比較的小径のマス取付部を圧入または挿入することができる程度の小さなもので良い。
【0017】
次いで、上記工程で加工したマス取付用小穴にマスを取り付け、上記の例で云えば重量Mのマスを取り付ける。
【0018】
尚、マスの取付個数について、上記の例ではマス1個使いとしたが、マス2個使いとすることも考えられ、上記の例で云えば、重量Mの1個目のマスをプーリ端面における2時方向(α=60°、ただし、α:12時方向の位置(重点位置wpを通るプーリ直径線)に対する角度)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置p
2に取り付けるとともに同じく重量Mの2個目のマスをプーリ端面における10時方向(α=60°)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置p
3に取り付けることにより回転アンバランスを修正することができる。したがってこの場合、2個のマスは重点位置wpを通るプーリ直径線を中心線として対称の位置(線対称の位置)に取り付けられる。
【0019】
また、
図1から分かるように、プーリ中心0からの半径距離Lは一定として、プーリ端面における2時方向の位置p
2(α=60°)および10時方向の位置p
3(α=60°)に取り付ける2個のマスの取付位置を2個対称のまま12時方向の位置p
1のほうへ近付けてゆくと(αを小さくすると)、マスが重点位置wpから遠ざかる結果として、相殺可能となるアンバランス量(アンバランス調整量)が徐々に増大する。ここでアンバランス調整量が最大となるのは2個のマスを共に12時方向の位置p
1(α=0°)に取り付けたとき(2個のマスを12時方向の位置p
1で円周上横並びに取り付けたとき)であって、このときのアンバランス調整量は約2M・Lとされる。
【0020】
また反対に、プーリ端面における2時方向の位置p
2(α=60°)および10時方向の位置p
3(α=60°)に取り付ける2個のマスの取付位置を2個対称のまま12時方向の位置p
1から遠ざけてゆくと(αを大きくすると)、マスが重点位置wpに近付く結果として、アンバランス調整量が徐々に減少する。アンバランス調整量がゼロとなるのは、2個のマスをプーリ端面における3時方向の位置(α=90°)および9時方向の位置(α=90°)に取り付けたときである。
【0021】
したがって本発明では、以下のことが云える。
(1)マス1個使いの場合・・・
アンバランスと同じ量のバランス調整マスを反対側(180度対称位置)に配置することで、バランス調整を行なうことができる。
(2)マス2個使いの場合・・・
本発明では、アンバランス調整量は2個の調整マスの配置で任意に変えることができる。上記の例(
図1)の場合、プーリ中心0からの半径距離Lは一定として、最大のアンバランス調整量は2M・L(gm)となる。例えばM・L(gm)のアンバランス量を、M(g)の調整マス2個で調整したい場合は、アンバランスの反対側の位置から、両側60°の位置にそれぞれバランス調整マスを配置すれば良い。
α=0°→バランス調整量:約2M・L(gm)
α=60°→バランス調整量:M・L(gm)
α=90°→バランス調整量:ゼロ(gm)