特許第6104582号(P6104582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104582
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】プーリにおける回転バランス調整構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/32 20060101AFI20170316BHJP
   F16H 55/36 20060101ALI20170316BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   F16F15/32 A
   F16H55/36 H
   F16F15/12 S
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-265248(P2012-265248)
(22)【出願日】2012年12月4日
(65)【公開番号】特開2014-109356(P2014-109356A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】三井 理志
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−135555(JP,U)
【文献】 特開平10−286770(JP,A)
【文献】 特開2009−167974(JP,A)
【文献】 実開平06−056543(JP,U)
【文献】 実開昭56−079739(JP,U)
【文献】 特開2008−051265(JP,A)
【文献】 特開2002−323112(JP,A)
【文献】 米国特許第4379596(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F15/00−15/36
F16H55/32−55/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状を呈するプーリの円周上一部にバランス調整用マスを取り付けることにより前記プーリの回転バランスを調整する構造であって、
前記プーリの軸方向端面の円周上一部にマス取付用小穴を設け、前記マス取付用小穴に前記マスを取り付けし、
前記マスは、前記マス取付用小穴に挿入される比較的小径の取付部と、前記マス取付用小穴の外部に配置される比較的大径のマス本体とを一体に備え、さらに前記マス本体側に開口する凹部を備えたものであることを特徴とするプーリにおける回転バランス調整構造。
【請求項2】
請求項1記載の回転バランス調整構造において、
前記マスを2個使いとし、回転アンバランスにおける重点位置を通るプーリ直径線を中心線として前記2個のマスを対称に配置することを特徴とするプーリにおける回転バランス調整構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動力の伝達要素であるプーリに回転アンバランスが存在するときにこれを修正し解消するためのプーリにおける回転バランス調整構造に関する。本発明においてプーリには、金属などの単一材料部品よりなるプーリのほかに、一部材料としてゴム状弾性体を用いることにより吸振機能を発揮するダンパープーリやデカップラープーリなどが含まれる。
【背景技術】
【0002】
回転駆動力の伝達要素であるプーリに回転アンバランスが存在するときにこれを修正し解消する構造として従来から、アンバランス測定装置を用いて検出したプーリの円周上で重点となる位置(重点位置)に穴加工を施す(バランス調整穴を設ける)ものが知られている(特許文献1−3参照)。
【0003】
しかしながら、近年の、自動車等車両の低燃費化要求における部品の軽量化に伴いプーリでは、バランス調整穴を設けることができる部品上のスペースが非常に狭くなっており、このため、十分な大きさのバランス調整穴を設けることが困難で、小さなバランス調整穴を多数(多い時で8〜10箇所ほど)設けることで対応せざるを得ないケースが多く、生産効率の向上(サイクルタイムの短縮)が困難となっている。
【0004】
また、バランス能力を確保すべくバランス調整穴を設けるスペースを確保するため、意図的にプーリに駄肉部を設定する必要があるなど、軽量化と相反する(軽量化を犠牲にした)設計仕様とせざるを得ないケースがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−288744号公報
【特許文献2】特開平8−247219号公報
【特許文献3】特開平10−169717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、回転バランス調整に係るサイクルタイムの短縮を図るとともに、部品の軽量化を図ることができるプーリにおける回転バランス調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるプーリにおける回転バランス調整構造は、環状を呈するプーリの円周上一部にバランス調整用マスを取り付けることにより前記プーリの回転バランスを調整する構造であって、前記プーリの軸方向端面の円周上一部にマス取付用小穴を設け、前記マス取付用小穴に前記マスを取り付けし、前記マスは、前記マス取付用小穴に挿入される比較的小径の取付部と、前記マス取付用小穴の外部に配置される比較的大径のマス本体とを一体に備え、さらに前記マス本体側に開口する凹部を備えたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるプーリにおける回転バランス調整構造は、上記した請求項1記載の回転バランス調整構造において、前記マスを2個使いとし、回転アンバランスにおける重点位置を通るプーリ直径線を中心線として前記2個のマスを対称に配置することを特徴とする。
【0010】
上記構成を備える本発明の回転バランス調整構造は、従来のように穴加工を施すのではなく、マス(錘)を取り付けることによりプーリに存在する回転アンバランスを修正する。穴加工を施す場合は、上記したように小さなバランス調整穴を多数設けることになるのに対し、マスを取り付ける場合は、マス自体(マス本体)はプーリの表面から突出するように取り付けても良い(マス取付溝の外部に配置しても良い)ので、マス1個分の重量を大きく設定することによりマスの取付個数を減じることができ、よって穴加工の場合は多数の穴を穿設するのに対しマスの場合は少数のマスを取り付けると云う関係になるため、回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することが可能とされる。
【0011】
また、穴加工を施す場合は、意図的に駄肉部を設定する必要があることがあるのに対し、マスを取り付ける場合は、駄肉部を設定する必要がないため、プーリを極限まで軽量化することが可能とされる。
【0012】
尚、本発明において回転バランスの調整は例えば、以下のようになされる。
【0013】
すなわち先ず、定法にしたがってプーリを製作する。
【0014】
次いで、これも定法にしたがって既存(公知)のアンバランス測定装置を用いてプーリの円周上で重点となる位置(重点位置)を検出し、次いで、検出した重点位置におけるアンバランス量にもとづいて、マスを取り付けたときにアンバランス量を最も相殺できる位置をマス取付位置としてプーリの軸方向端面上で特定する。重点位置はプーリの円周上で過重量が最も大きな位置(方向)である。
【0015】
例えば図1に示すように、プーリの軸方向端面を時計の文字盤に見立てて、その6時方向に重点位置wpが検出され、この重点位置wpにおけるアンバランス量がM・L(ただし、M:重点位置wpにおける過重量(g)、L:プーリ中心0から重点位置wpまでの半径距離(m))であるとすると、重量Mのマスをプーリの軸方向端面上12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pに取り付けることにより回転アンバランスを修正することができるので、この12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pをマス取付位置としてプーリの端面上で特定する。プーリの端面における12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pは、重点位置wpを通るプーリ直径線上の位置であって、更に重点位置wpに対する180度対称位置であるので、マスは重点位置wpに対する180度対称位置に取り付けられる。
【0016】
次いで、上記工程で特定したプーリ端面におけるマス取付位置にマス取付用小穴を加工し、上記の例で云えばプーリ端面おける12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pにマス取付用小穴を加工する。上記したようにマスはプーリの表面から突出するように取り付けることが可能であるため、マス取付用小穴の大きさは比較的小径のマス取付部を圧入または挿入することができる程度の小さなもので良い。
【0017】
次いで、上記工程で加工したマス取付用小穴にマスを取り付け、上記の例で云えば重量Mのマスを取り付ける。
【0018】
尚、マスの取付個数について、上記の例ではマス1個使いとしたが、マス2個使いとすることも考えられ、上記の例で云えば、重量Mの1個目のマスをプーリ端面における2時方向(α=60°、ただし、α:12時方向の位置(重点位置wpを通るプーリ直径線)に対する角度)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pに取り付けるとともに同じく重量Mの2個目のマスをプーリ端面における10時方向(α=60°)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pに取り付けることにより回転アンバランスを修正することができる。したがってこの場合、2個のマスは重点位置wpを通るプーリ直径線を中心線として対称の位置(線対称の位置)に取り付けられる。
【0019】
また、図1から分かるように、プーリ中心0からの半径距離Lは一定として、プーリ端面における2時方向の位置p(α=60°)および10時方向の位置p(α=60°)に取り付ける2個のマスの取付位置を2個対称のまま12時方向の位置pのほうへ近付けてゆくと(αを小さくすると)、マスが重点位置wpから遠ざかる結果として、相殺可能となるアンバランス量(アンバランス調整量)が徐々に増大する。ここでアンバランス調整量が最大となるのは2個のマスを共に12時方向の位置p(α=0°)に取り付けたとき(2個のマスを12時方向の位置pで円周上横並びに取り付けたとき)であって、このときのアンバランス調整量は約2M・Lとされる。
【0020】
また反対に、プーリ端面における2時方向の位置p(α=60°)および10時方向の位置p(α=60°)に取り付ける2個のマスの取付位置を2個対称のまま12時方向の位置pから遠ざけてゆくと(αを大きくすると)、マスが重点位置wpに近付く結果として、アンバランス調整量が徐々に減少する。アンバランス調整量がゼロとなるのは、2個のマスをプーリ端面における3時方向の位置(α=90°)および9時方向の位置(α=90°)に取り付けたときである。
【0021】
したがって本発明では、以下のことが云える。
(1)マス1個使いの場合・・・
アンバランスと同じ量のバランス調整マスを反対側(180度対称位置)に配置することで、バランス調整を行なうことができる。
(2)マス2個使いの場合・・・
本発明では、アンバランス調整量は2個の調整マスの配置で任意に変えることができる。上記の例(図1)の場合、プーリ中心0からの半径距離Lは一定として、最大のアンバランス調整量は2M・L(gm)となる。例えばM・L(gm)のアンバランス量を、M(g)の調整マス2個で調整したい場合は、アンバランスの反対側の位置から、両側60°の位置にそれぞれバランス調整マスを配置すれば良い。
α=0°→バランス調整量:約2M・L(gm)
α=60°→バランス調整量:M・L(gm)
α=90°→バランス調整量:ゼロ(gm)
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0023】
すなわち本発明は、プーリの軸方向端面の円周上一部にマス取付用小穴を設けるとともにこのマス取付用小穴にマスを取り付けするものであって、プーリに多数の穴を穿設するのではなく少数のマスを取り付ける構造であるため、回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することができる。また、プーリにバランス調整穴を設けるための駄肉部を設定する必要がないため、プーリを極限まで軽量化することができる。また、マス2個使いとする場合は、一定の重量を備える2個のプーリの取付位置をプーリの軸方向端面上で変更することにより、異なる大きさのアンバランス調整量に対応することができる。また、マスをプーリの軸方向端面に取り付ける構造であるため、バランス調整を無段階的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のプーリにおける回転バランス調整構造の説明図
図2】本発明の実施例に係る回転バランス調整構造を備えるダンパープーリの斜視図
図3】同ダンパープーリを円周上半裁した状態の要部斜視図
図4】マスを取り付ける以前の同ダンパープーリを円周上半裁した状態の要部斜視図
図5】(A)はマスの斜視図、(B)は同マスを円周上半裁した状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)本発明は、従来のように部品の肉を削除してバランス修正を行なうのではなく、肉を追加することで、バランス調整穴加工部の非常に少ない部品においても効率良くバランス修正を行なうことのできるバランス修正方法を提案する。
(2)あらかじめ用意しておいたバランス修正用付加マスを、最低限(最小限)の穴加工が施された部品に圧入しマスを付加することで、ダンパープーリのバランス修正を行なう。
(3)バランス修正用付加マスの圧入部は必ずしも穴加工部に対して圧入設定である必要はなく、付加マスを穴加工部にセット後、凹部を広げる(カシメる)ことで圧入保持させることも可能である。
(4)バランス修正用付加マスは、想定される最大アンバランス量を付加マス2個で相殺できる程度のサイズのものが作業効率上好ましく、2個の付加マスの圧入位置(配置角度)を変えることで、全てのアンバランス量に対応することができる。
(5)本発明によれば、バランス修正の効率アップが実現される。すなわちバランス調整穴加工部の非常に少ない部品においても、たった2箇所の小さな穴加工と付加マスの付与により、バランス修正が可能となる。
(6)また本発明によれば、軽量化への貢献が実現される。すなわちバランス調整穴用の駄肉の設定が必要なく、また必要な場合でも、通常のバランス調整穴仕様に対し非常に少ないため(穴加工部が非常に小さいため)、極限まで部品の軽量薄肉化が可能となる。
【実施例】
【0026】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0027】
図2ないし図4は、本発明の実施例に係る回転バランス調整構造を備えるダンパープーリ11を示し、当該ダンパープーリ11は、回転軸(図示せず)に装着するハブ12の外周側にゴム状弾性体13を介してプーリ本体(振動リング)14を接続した基本構成を備え、環状を呈するプーリ本体14の外周面に、無端ベルト(図示せず)を巻架するためのプーリ溝15が設けられている。プーリ本体14はハブ12とともに金属製であって切削加工等にて製作されることからその製作に際して回転アンバランスを生じることがあり、また組立後のダンパープーリ11全体としても組立の都合上回転アンバランスを生じることがあり、このようにして生じる回転アンバランスを修正し解消するためにダンパープーリ11の円周上一部にバランス調整用マス(バランス調整用付加マス)17が取り付けられ、更に詳しくは、プーリ本体14の軸方向一方の端面14aの円周上一部であってダンパープーリ11に存在する回転アンバランスを最も相殺できる位置にマス取付用小穴16(図5参照)が設けられ、このマス取付用小穴16にバランス調整用マス17が取り付けられている。尚、当該実施例は、マス2個使いによる構造である。
【0028】
当該実施例に係る回転バランス調整構造による回転バランス調整の方法は、以下のとおりとされる。
【0029】
すなわち先ず、定法にしたがってダンパープーリ11を製作し、また別途、バランス調整用マス17を製作する。このバランス調整用マス17は図5に拡大して示すように、比較的大径の円盤状のマス本体17aに比較的小径の円盤状もしくはピン状の取付部17bを一体に設けたものであって、取付部17bを後述するマス取付用小穴16に圧入することによりプーリ本体14に取り付けられる。したがってマス本体17aは、マス取付溝16の内部に組み込まれることなくマス取付溝16の外部に配置された状態で取付完了とされる。マス17はSPCCやSPHCなどの鋼材を用いて板金加工にて製作することが可能で、この場合マス17は、マス本体17a側に開口する凹部(中空部)17cを備えたものとされる。マス17は、所定の重量Mを備えている。また当該実施例ではマス2個使いとするので、同一形状同一重量のマス17を少なくとも2個用意する。
【0030】
次いで、定法にしたがって既存(公知)のアンバランス測定装置(図示せず)を用いてダンパープーリ11の円周上で重点となる位置(重点位置wp)を検出し、次いで、この検出した重点位置wpにおけるアンバランス量にもとづいて、2個のマス17を取り付けたときにアンバランス量を最も相殺できる位置をマス取付位置としてプーリ本体14の軸方向端面14a上で特定する。
【0031】
例えば上記図1を用いて説明したように、プーリ本体14の軸方向一方の端面14aを時計の文字盤に見立てて、その6時方向に重点位置wpが検出され、この重点位置wpにおけるアンバランス量が2M・L(ただし、2M:重点位置wpで測定される過重量(g)、L:プーリ中心0から重点位置wpまでの半径距離(m))であるとすると、重量Mのマス17を2個、プーリ本体14の端面14a上12時方向(α=0°)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pに円周上横並びで取り付けることにより回転アンバランスを修正することができるので、この12時方向(α=0°)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pをマス取付位置としてプーリ本体14の端面14a上で特定する。
【0032】
次いで、上記工程で特定したプーリ本体14の端面14aにおけるマス取付位置にマス取付用小穴16を加工し、上記の例で云えばプーリ本体14の端面14aにおける12時方向であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pにマス取付用小穴16を2箇所円周上横並びで加工する。上記したようにマス17は比較的小径の取付部17bをもって圧入されるため、マス取付用小穴16の大きさはマス17の取付部17bを圧入することができる程度の小さなもので良い。
【0033】
次いで、上記工程で加工したマス取付用小穴16にそれぞれマス17を取り付け、上記の例で云えば重量Mのマス17を取り付ける。図2および図3はこの取付完了状態を示しており、これにて取付および調整作業が完了する。
【0034】
尚、上記実施例では、重点位置wpにおけるアンバランス量を2M・Lとしたが、これが過重量50%のM・Lである場合には上記したように、重量Mの1個目のマス17をプーリ本体14の端面14aにおける2時方向(α=60°)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pに取り付けるとともに同じく重量Mの2個目のマス17をプーリ本体14の端面14aにおける10時方向(α=60°)であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置pに取り付けることにより回転アンバランスを修正することができる。
【0035】
また例えば、過重量75%の1.5M・Lの場合には、重量Mの1個目のマス17をプーリ本体14の端面14aにおける2時方向(α=60°)と12時方向(α=0°)の間であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置に取り付けるとともに同じく重量Mの2個目のマス17をプーリ本体14の端面14aにおける10時方向(α=60°)と12時方向(α=0°)の間であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置に取り付けることにより回転アンバランスを修正することができ、過重量25%の0.5M・Lの場合には、重量Mの1個目のマス17をプーリ本体14の端面14aにおける2時方向(α=60°)と3時方向(α=90°)の間であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置に取り付けるとともに同じく重量Mの2個目のマス17をプーリ本体14の端面14aにおける10時方向(α=60°)と9時方向(α=90°)の間であってプーリ中心0からの半径距離Lの位置に取り付けることにより回転アンバランスを修正することができ、具体的な取付位置は、経験識にて、または予め演算式を設定しこれにて特定する。したがって当該実施例による回転バランス調整構造によれば、重量Mのマス17を2個用いることにより、アンバランス調整量0〜2M・Lの範囲で無段階的なバランス調整を行なうことができる。
【0036】
尚、本発明において、バランス調整用マス17の形状やマス取付用小穴16に対する固定の構造は、特に限定されず、所定の重量を備えるマス17をマス取付用小穴16に固定的に取り付けることができるものであれば良い。マス取付用小穴16に対する固定の構造としては例えば、マス17は上記したように中空の凹部17cを備えているので、圧入代を無くして取付部17bを緩やかに挿入可能とし、挿入後に凹部17cを広げて取付部17bを拡径する(カシメる)ことで保持させても良い。マス17の形状としては例えば、マス本体17aは円盤状でなく、半球状などであっても良い。マス17は高比重の材質であっても良く、この場合にはマス17が小型化される。マス17はプーリ本体14ではなくハブ12のほうに取り付けても良く、この場合にはハブ12の軸方向端面にマス取付用小穴16が設けられる。
【符号の説明】
【0037】
11 ダンパープーリ
12 ハブ
13 ゴム状弾性体
14 プーリ本体
14a 端面
15 プーリ溝
16 マス取付用小穴
17 バランス調整用マス
17a マス本体
17b 取付部
17c 凹部
図1
図2
図3
図4
図5