特許第6104589号(P6104589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104589
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ダンパにおける回転バランス調整構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/32 20060101AFI20170316BHJP
   F16F 15/12 20060101ALI20170316BHJP
   F16H 55/36 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
   F16F15/32 A
   F16F15/12 S
   F16F15/32 E
   !F16H55/36 H
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-270280(P2012-270280)
(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-114902(P2014-114902A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】安達 彰平
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−323112(JP,A)
【文献】 特開2009−167974(JP,A)
【文献】 特開平10−311375(JP,A)
【文献】 実開昭61−131529(JP,U)
【文献】 実開平01−152136(JP,U)
【文献】 実開昭56−079739(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F15/00−15/36
F16H55/32−55/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に装着するハブの外周側にゴム状弾性体を介して振動リングを接続した環状を呈するダンパの円周上一部にバランス調整用マスを取り付けることにより前記ダンパの回転バランスを調整する構造であって、
記ハブにマス取付用スリーブを固定し、前記マス取付用スリーブの円周上一部にマス取付用リベットを用いて前記マスを取り付けし、
前記マス取付用スリーブは、前記ハブの内径面に嵌合される筒状の固定部と、前記固定部の軸方向一方の端部から径方向外方へ向けて設けられたフランジ状の取付部とを一体に備え、
前記取付部に、前記マス取付用リベットを圧入するためのリベット圧入穴が円周上に多数一定間隔で設けられ、
前記リベット圧入穴の外周側に位置して、前記バランス調整用マスが径方向外方へ向けて飛び出すのを抑制するための飛び出し防止用段差が環状に設けられていることを特徴とするダンパにおける回転バランス調整構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸に生起される捩り振動を吸収し減衰するダンパに回転アンバランスが存在するときにこれを修正し解消するためのダンパにおける回転バランス調整構造に関する。本発明においてダンパには、自動車等車両に用いられるトーショナルダンパ(TVD:トーショナルバイブレーションダンパ)などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来のトーショナルダンパ用の回転アンバランス修正は、アンバランスが発生する部位に穴加工を施し(バランス調整穴を設け)、アンバランス発生部位の重量を低減することで、アンバランスを修正している(特許文献1−3参照)。
【0003】
しかしながら、トーショナルダンパの設置スペースの問題等でバランス調整穴を設けるスペースを製品上確保することが難しいケースがある。この場合、小さなバランス調整穴を設けることになるが、1つ当たりのバランス調整量が小さくなるため、バランス調整穴を多数設ける必要がある。したがってこの影響で、アンバランス修正が規格に対し十分に出来ないケースや、加工時間が長くなるケースが発生することがある。
【0004】
また、バランス調整穴を設ける部位によっては、製品の強度が著しく低下する虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−288744号公報
【特許文献2】特開平8−247219号公報
【特許文献3】特開平10−169717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、アンバランス修正(回転バランス調整)を規格に対し十分に行なうことができ、アンバランス修正に係るサイクルタイムが短く、しかも回転バランス調整構造を設けても製品の強度が著しく低下することがないダンパにおける回転バランス調整構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるダンパにおける回転バランス調整構造は、回転軸に装着するハブの外周側にゴム状弾性体を介して振動リングを接続した環状を呈するダンパの円周上一部にバランス調整用マスを取り付けることにより前記ダンパの回転バランスを調整する構造であって、前記ハブにマス取付用スリーブを固定し、前記マス取付用スリーブの円周上一部にマス取付用リベットを用いて前記マスを取り付けし、前記マス取付用スリーブは、前記ハブの内径面に嵌合される筒状の固定部と、前記固定部の軸方向一方の端部から径方向外方へ向けて設けられたフランジ状の取付部とを一体に備え、前記取付部に、前記マス取付用リベットを圧入するためのリベット圧入穴が円周上に多数一定間隔で設けられ、前記リベット圧入穴の外周側に位置して、前記バランス調整用マスが径方向外方へ向けて飛び出すのを抑制するための飛び出し防止用段差が環状に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記構成を備える本発明の回転バランス調整構造は、従来のようにバランス調整穴を設けるのではなく、バランス調整用マス(錘)を取り付けることによりダンパに存在する回転アンバランスを修正するものであって、すなわちダンパの構成部品であるハブにマス取付用スリーブを固定するとともにこのマス取付用スリーブの円周上一部にマスを取り付ける。したがってこの構造によれば、マス取付用スリーブに取り付けるマスの重量が制限されず任意な重量のマスを取り付けることができるため、回転アンバランスを修正するのに必要十分な重量を備えるマスを取り付けることが可能とされる。
【0012】
また、バランス調整穴を設ける場合は、上記したように小さな穴を多数設けることになるのに対し、マスを取り付ける場合は、マス1個分の重量を大きく設定することによりマスの取付個数を減じることができる。したがってバランス調整穴を設ける場合は多数の穴を穿設するのに対しマスを取り付ける場合は少数のマスを取り付けると云う関係になるため、回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することが可能とされる。
【0013】
また、ハブにマス取付用スリーブを固定するとともにこのマス取付用スリーブにマスを取り付ける構造によれば、ハブに特段の加工を施す必要がないため、製品強度に対する影響を軽減することが可能とされる。
【0014】
ハブに固定したマス取付用スリーブにマスを取り付けるには、マス取付用リベットを用いるのが好適であり、これにより取付作業が容易化される。
【0015】
また、マス取付用リベットを用いる場合には、予めスリーブにリベット圧入穴を設けておくのが好適であり、これにより取付作業が一層容易化される。
【0016】
ただしこの場合、スリーブにリベット圧入穴を設ける段階ではマスの円周上取付位置が未だ特定されていないため、リベット圧入穴の円周上形成位置を特定することができない。したがってリベット圧入穴を円周上多数設けておき、この中から選択のうえでリベットを圧入する。
【0017】
マス取付用スリーブの基本構成としては、当該スリーブをハブに固定するための筒状の固定部と、当該スリーブにマスを取り付けるためのフランジ状の取付部とを備えたものとされるが、フランジ状の取付部の軸方向端面にマスを取り付ける構造であると、ダンパの回転時に遠心力がリベットに作用する結果として、リベットが外れ、マスが径方向外方へ飛び出す虞がある。そこでこれに対策するには、飛び出し防止用段差をスリーブにおけるマス取付位置の外周側に設けておくのが好適であり、これによればマスが段差に係合するため、遠心力による飛び出しが抑制される。
【0018】
尚、本発明においては、ダンパの円周上重心のある方向ではなく、その180度反対方向にマスを取り付けることによりダンパに存在する回転アンバランスを修正する。重心のある方向は、既存(公知)のアンバランス測定装置を用いることによりダンパの円周上で重点となる位置(重点位置:ダンパの円周上で過重量が最も大きな位置(方向))を検出する技術が確立されているので、その180度反対方向を求めることによりマスの取付位置を特定することが可能とされる。したがって本発明では、マスの円周上取付位置を特定することは発明の構成要件に含まれないものとしており、この点を勘案すれば本発明は、ダンパにおける回転バランス調整用マスの取付構造でもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0020】
すなわち本発明は、ダンパの構成部品であるハブにマス取付用スリーブを固定するとともにこのマス取付用スリーブの円周上一部にマスを取り付けるものであって、マス取付用スリーブに取り付けるマスの重量が制限されず任意な重量のマスを取り付けることができるために、回転アンバランスを修正するのに必要十分な重量を備えるマスを取り付けることが可能とされる。したがってダンパにおけるアンバランス修正を規格に対し十分に行なうことができる。また、マスの取付個数は少なくて良いため、多数のバランス調整穴を設ける場合の加工時間と比較してマス取付作業時間が短い。したがって回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することができる。また、ハブにマス取付用スリーブを固定するものであってハブに特段の加工を施すものでないため、製品強度に対する影響を軽減することが可能とされる。したがって製品の強度が著しく低下するのを抑制することができる。また、ハブに固定したマス取付用スリーブにマスを取り付ける際にマス取付用リベットを用いることにより取付作業を容易化することができ、マス取付用リベットを用いる場合に予めスリーブにリベット圧入穴を設けておくことにより取付作業を一層容易化することができる。更に、スリーブに飛び出し防止用段差を設けておくことにより、マスが回転時の遠心力によって飛び出すのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例に係る回転バランス調整構造を備えるトーショナルダンパの斜視図
図2】同トーショナルダンパの半裁断面図
図3】同回転バランス調整構造に備えられる取付用リベットの斜視図
図4】同リベットによるマスの取付構造の説明図
図5】同リベットによるマスの取付構造の第2例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)従来のTVD用のアンバランス修正方法に対し、アンバランスを修正するためのリベットを締結するためのスリーブをハブ内径部に嵌合する。
(2)アンバランス修正マスは、修正量に応じて個数や大きさを変えることで修正する。
(3)これにより製品本体にアンバランス修正穴をあけないため、強度の低下を抑えることができる。
(4)アンバランス修正マスの形状は図1図5に示すタイプのようなものや、アンバランス修正マスを複数個装着したものが考えられる。
(5)また、アンバランス修正マスの外周部の締結プレートに図1のような段差を作ることにより、遠心力によりリベット締結部に加わる力を支え、アンバランス修正マスの飛び出しを防止する。
(6)上記構成により、アンバランス修正のための穴を製品にあける必要がなくなり、加工時間の短縮および、アンバランス修正穴加工による製品の強度低下を防止することが可能となる。
(7)また、付帯効果として、振動リングの脱落防止、外周に歯切り加工を施すことによるセンサープレートとしての役割も果たすことが可能となる。
【実施例】
【0023】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0024】
図1および図2は、本発明の実施例に係る回転バランス調整構造を備えるトーショナルダンパ11を示し、当該トーショナルダンパ11は、回転軸(図示せず)に装着するハブ12の外周側にゴム状弾性体13を介して振動リング14を接続した基本構成を備え、振動リング14の外周面に、無端ベルト(図示せず)を巻架するためのプーリ溝15が設けられている。
【0025】
ハブ12は、回転軸に固定されるボス部12aを備え、このボス部12aから径方向外方へ向けてステー部12bが一体に成形され、このステー部12bの外周端部に円筒状のリム部12cが一体に成形されている。
【0026】
このハブ12は、振動リング14とともに金属製であって切削加工等にて製作されることからその製作に際して回転アンバランスを生じることがあり、また組立後のトーショナルダンパ11全体としても組立の都合上回転アンバランスを生じることがあり、このようにして生じる回転アンバランスを修正し解消するためにトーショナルダンパ11の円周上一部にバランス調整用マス(バランス調整用付加マス)19が取り付けられ、更に詳しくは、ハブ12のリム部12cにマス取付用スリーブ16が固定され、このマス取付用スリーブ16の円周上一部であってトーショナルダンパ11に存在する回転アンバランスを最も相殺できる位置にバランス調整用マス19がマス取付用リベット20を用いて取り付けられている。
【0027】
マス取付用スリーブ16は、所定の金属によって板金加工され、ハブ12のリム12cの内径面に嵌合される筒状の固定部16aを備え、この固定部16aの軸方向一方の端部から径方向外方へ向けてバランス調整用マス17を取り付けるためのフランジ状の取付部16bが一体に成形されている。またフランジ状の取付部16bに、マス取付用リベット20を圧入するためのリベット圧入穴17が円周上に多数一定間隔で設けられ、このリベット圧入穴17の外周側に位置して、バランス調整用マス19が径方向外方へ向けて飛び出すのを抑制するための飛び出し防止用段差18が環状に設けられている。
【0028】
バランス調整用マス19は、所定の金属よりなるとともに所定の重量を備える円盤状ブロック体として成形され、その中心部に、マス取付用リベット20を差し通すための貫通孔部19aが設けられている。
【0029】
マス取付用リベット20は、所定の樹脂によって金型成形され、図3に示すようにバランス調整用マス19を抜け止めできる大きさの円盤状の頭部20aを備え、この頭部20aから軸方向一方へ向けて円筒状の脚部20bが一体に成形されている。脚部20bは、バランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に差し通されてマス取付用スリーブ16の裏面16c側に達する長さを備え、その先端部外周面に環状突起状の係合部21が設けられている。係合部21は、当該脚部20bをバランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に圧入しやすいようテーパ面状の先端面21aを備え、また当該脚部20bがマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17から抜けにくいよう軸直角平面状の後端面21bを備えている。また脚部20bは係合部21を含めて、当該脚部20bをバランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に圧入しやすいよう円周上複数に分割され、このための軸方向に延びるスリット22が複数設けられている。
【0030】
このマス取付用リベット20を用いてバランス調整用マス19をマス取付用スリーブ16に取り付ける際には、多数が設けられたリベット圧入穴17の中からバランス調整用マス19を取り付けるリベット圧入穴17を選択のうえ、図4に示すようにマス取付用リベット20の脚部20bをバランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に圧入する。マス取付用リベット20によって取り付けられたバランス調整用マス19はその外径面の一部が飛び出し防止用段差18の内径面に接触した状態とされる。
【0031】
バランス調整用マス19を取り付ける円周上の位置(方向)については、上記したように既存のアンバランス測定装置を用いてトーショナルダンパ11の円周上で重点となる位置(重点位置:ダンパ11の円周上で過重量が最も大きな位置(方向))を検出し、その180度反対方向を求めることにより特定し、この特定した円周上の位置(方向)に最も近いリベット圧入穴17を選択する。バランス調整用マス19の重量は、アンバランス量を相殺できるものとする。したがって重点位置におけるアンバランス量が例えば、M・L(ただし、M:重点位置における過重量、L:ダンパ中心から重点位置までの半径距離)であってまたダンパ中心からリベット圧入穴17までの半径距離が同じくLであるとすると、この重点位置の180度反対方向に最も近いリベット圧入穴17を選択のうえ、このリベット圧入穴17に重量Mのバランス調整用マス19をマス取付用リベット20を用いて取り付ける。
【0032】
また、バランス調整用マス19としては、種々の重量を備える複数のバランス調整用マス19を予め用意し、アンバランス修正量に応じて最適な重量を備えるバランス調整用マス19を選択したうえで取り付ける。
【0033】
上記構成を備える回転バランス調整構造は、トーショナルダンパ11の構成部品であるハブ12のリム部12cの内径面にマス取付用スリーブ16を嵌合するとともにこのマス取付用スリーブ16の円周上一部にバランス調整用マス19を取り付けたものであって、マス取付用スリーブ16に取り付けるバランス調整用マス19の重量が制限されず任意な重量のマス取付用スリーブ16を取り付けることができるために、回転アンバランスを修正するのに必要十分な重量を備えるバランス調整用マス19を取り付けることが可能とされている。したがってトーショナルダンパ11におけるアンバランス修正を規格に対し十分に行なうことができる。
【0034】
また、バランス調整穴を設ける場合は、上記したように小さな穴を多数設けることになるのに対し、バランス調整用マス19を取り付ける場合は、マス1個分の重量を大きく設定することによりバランス調整用マス19の取付個数を減じることができる。したがってバランス調整穴を設ける場合は多数の穴を穿設するのに対しバランス調整用マス19を取り付ける場合は少数のバランス調整用マス19を取り付けると云う関係になるため、回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することができる。
【0035】
また、ハブ12にマス取付用スリーブ16を固定するとともにこのマス取付用スリーブ16にバランス調整用マス19を取り付ける構造とされているため、回転バランス調整構造を設定するに際してハブ12に特段の加工を施す必要がない。したがって回転バランス調整構造を設定することによる製品強度に対する影響を軽減することができる。
【0036】
また、マス取付用リベット20を用いてマス取付用スリーブ16にバランス調整用マス19を取り付ける構造とされているため、取付作業を簡単迅速に行なうことができ、予めマス取付用スリーブ16にリベット圧入穴17を設ける構造とされているため、取付作業を一層簡単迅速に行なうことができる。
【0037】
また、マス取付用スリーブ16におけるマス取付位置の外周側に飛び出し防止用段差18が設けられているため、トーショナルダンパ11の回転時遠心力の作用によってマス取付用リベット20がマス取付用スリーブ16から外れることがあってもバランス調整用マス19が径方向外方へ飛び出すのを防止することができる。したがってバランス調整用マス19が径方向外方へ飛び出すことにより周辺機器が破損するのを未然に防止することができる。
【0038】
尚、この飛び出し防止に関しては、ハブ12のリム部12cの内径面に嵌合されたマス取付用スリーブ16の外径寸法が振動リング14の内径寸法より大きく設定されているため、このマス取付用スリーブ16が飛び出し防止のストッパとして作用することより、振動リング14がゴム状弾性体13から外れたときに軸方向一方(図2における左方向)へ飛び出すのを防止することも可能とされている。したがってマス取付用スリーブ16は、振動リング14が軸方向一方へ飛び出すのを抑制するストッパとしての機能を兼ね備えている。
【0039】
また、この機能の兼ね備えに関しては、マス取付用スリーブ16の外周縁部に小突起23を円周上多数設けることにより、このマス取付用スリーブ16にセンサープレートとしての機能を兼ねさせることもできる。センサープレートは、小突起23に対し軸方向に対向する位置に例えば磁気センサ(図示せず)を設置してこの磁気センサにより小突起23の回転時通過数を測定することにより回転軸の回転数や回転角度などを検出するために用いられる。
【0040】
また、本発明において、バランス調整用マス19は、その取付個数を複数としたり増減したりすることにより重量を調整することが考えられる。この場合、複数のバランス調整用マス19を円周方向に並べる(複数のマス19を同数のリベット20で取り付ける)ことになるが、複数のバランス調整用マス19を何枚重ねと云うようにして軸方向に並べるようにしても良い(複数のマス19を1個のリベット20で取り付ける)。また、マス1個当たりの重量が大きい場合には図5に示すように、1個のマス19を複数のリベット20で取り付けるようにしても良い。
【0041】
尚、上記したようにバランス調整用マス19を複数取り付ける場合には、マス1個当たりの重量を小さく設定したほうが組み合わせの態様(重量調整)が細分化されるので、最適重量の選定上有利となる。
【符号の説明】
【0042】
11 トーショナルダンパ
12 ハブ
12a ボス部
12b ステー部
12c リム部
13 ゴム状弾性体
14 振動リング
15 プーリ溝
16 マス取付用スリーブ
16a 固定部
16b 取付部
16c 裏面
17 マス圧入穴
18 飛び出し防止用段差
19 バランス調整用マス
19a 貫通孔部
20 マス取付用リベット
20a 頭部
20b 脚部
21 係合部
21a 先端面
21b 後端面
22 スリット
23 小突起
図1
図2
図3
図4
図5