【0022】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)従来のTVD用のアンバランス修正方法に対し、アンバランスを修正するためのリベットを締結するためのスリーブをハブ内径部に嵌合する。
(2)アンバランス修正マスは、修正量に応じて個数や大きさを変えることで修正する。
(3)これにより製品本体にアンバランス修正穴をあけないため、強度の低下を抑えることができる。
(4)アンバランス修正マスの形状は
図1、
図5に示すタイプのようなものや、アンバランス修正マスを複数個装着したものが考えられる。
(5)また、アンバランス修正マスの外周部の締結プレートに
図1のような段差を作ることにより、遠心力によりリベット締結部に加わる力を支え、アンバランス修正マスの飛び出しを防止する。
(6)上記構成により、アンバランス修正のための穴を製品にあける必要がなくなり、加工時間の短縮および、アンバランス修正穴加工による製品の強度低下を防止することが可能となる。
(7)また、付帯効果として、振動リングの脱落防止、外周に歯切り加工を施すことによるセンサープレートとしての役割も果たすことが可能となる。
【実施例】
【0023】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0024】
図1および
図2は、本発明の実施例に係る回転バランス調整構造を備えるトーショナルダンパ11を示し、当該トーショナルダンパ11は、回転軸(図示せず)に装着するハブ12の外周側にゴム状弾性体13を介して振動リング14を接続した基本構成を備え、振動リング14の外周面に、無端ベルト(図示せず)を巻架するためのプーリ溝15が設けられている。
【0025】
ハブ12は、回転軸に固定されるボス部12aを備え、このボス部12aから径方向外方へ向けてステー部12bが一体に成形され、このステー部12bの外周端部に円筒状のリム部12cが一体に成形されている。
【0026】
このハブ12は、振動リング14とともに金属製であって切削加工等にて製作されることからその製作に際して回転アンバランスを生じることがあり、また組立後のトーショナルダンパ11全体としても組立の都合上回転アンバランスを生じることがあり、このようにして生じる回転アンバランスを修正し解消するためにトーショナルダンパ11の円周上一部にバランス調整用マス(バランス調整用付加マス)19が取り付けられ、更に詳しくは、ハブ12のリム部12cにマス取付用スリーブ16が固定され、このマス取付用スリーブ16の円周上一部であってトーショナルダンパ11に存在する回転アンバランスを最も相殺できる位置にバランス調整用マス19がマス取付用リベット20を用いて取り付けられている。
【0027】
マス取付用スリーブ16は、所定の金属によって板金加工され、ハブ12のリム12cの内径面に嵌合される筒状の固定部16aを備え、この固定部16aの軸方向一方の端部から径方向外方へ向けてバランス調整用マス17を取り付けるためのフランジ状の取付部16bが一体に成形されている。またフランジ状の取付部16bに、マス取付用リベット20を圧入するためのリベット圧入穴17が円周上に多数一定間隔で設けられ、このリベット圧入穴17の外周側に位置して、バランス調整用マス19が径方向外方へ向けて飛び出すのを抑制するための飛び出し防止用段差18が環状に設けられている。
【0028】
バランス調整用マス19は、所定の金属よりなるとともに所定の重量を備える円盤状ブロック体として成形され、その中心部に、マス取付用リベット20を差し通すための貫通孔部19aが設けられている。
【0029】
マス取付用リベット20は、所定の樹脂によって金型成形され、
図3に示すようにバランス調整用マス19を抜け止めできる大きさの円盤状の頭部20aを備え、この頭部20aから軸方向一方へ向けて円筒状の脚部20bが一体に成形されている。脚部20bは、バランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に差し通されてマス取付用スリーブ16の裏面16c側に達する長さを備え、その先端部外周面に環状突起状の係合部21が設けられている。係合部21は、当該脚部20bをバランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に圧入しやすいようテーパ面状の先端面21aを備え、また当該脚部20bがマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17から抜けにくいよう軸直角平面状の後端面21bを備えている。また脚部20bは係合部21を含めて、当該脚部20bをバランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に圧入しやすいよう円周上複数に分割され、このための軸方向に延びるスリット22が複数設けられている。
【0030】
このマス取付用リベット20を用いてバランス調整用マス19をマス取付用スリーブ16に取り付ける際には、多数が設けられたリベット圧入穴17の中からバランス調整用マス19を取り付けるリベット圧入穴17を選択のうえ、
図4に示すようにマス取付用リベット20の脚部20bをバランス調整用マス19の貫通孔部19aおよびマス取付用スリーブ16のリベット圧入穴17に圧入する。マス取付用リベット20によって取り付けられたバランス調整用マス19はその外径面の一部が飛び出し防止用段差18の内径面に接触した状態とされる。
【0031】
バランス調整用マス19を取り付ける円周上の位置(方向)については、上記したように既存のアンバランス測定装置を用いてトーショナルダンパ11の円周上で重点となる位置(重点位置:ダンパ11の円周上で過重量が最も大きな位置(方向))を検出し、その180度反対方向を求めることにより特定し、この特定した円周上の位置(方向)に最も近いリベット圧入穴17を選択する。バランス調整用マス19の重量は、アンバランス量を相殺できるものとする。したがって重点位置におけるアンバランス量が例えば、M・L(ただし、M:重点位置における過重量、L:ダンパ中心から重点位置までの半径距離)であってまたダンパ中心からリベット圧入穴17までの半径距離が同じくLであるとすると、この重点位置の180度反対方向に最も近いリベット圧入穴17を選択のうえ、このリベット圧入穴17に重量Mのバランス調整用マス19をマス取付用リベット20を用いて取り付ける。
【0032】
また、バランス調整用マス19としては、種々の重量を備える複数のバランス調整用マス19を予め用意し、アンバランス修正量に応じて最適な重量を備えるバランス調整用マス19を選択したうえで取り付ける。
【0033】
上記構成を備える回転バランス調整構造は、トーショナルダンパ11の構成部品であるハブ12のリム部12cの内径面にマス取付用スリーブ16を嵌合するとともにこのマス取付用スリーブ16の円周上一部にバランス調整用マス19を取り付けたものであって、マス取付用スリーブ16に取り付けるバランス調整用マス19の重量が制限されず任意な重量のマス取付用スリーブ16を取り付けることができるために、回転アンバランスを修正するのに必要十分な重量を備えるバランス調整用マス19を取り付けることが可能とされている。したがってトーショナルダンパ11におけるアンバランス修正を規格に対し十分に行なうことができる。
【0034】
また、バランス調整穴を設ける場合は、上記したように小さな穴を多数設けることになるのに対し、バランス調整用マス19を取り付ける場合は、マス1個分の重量を大きく設定することによりバランス調整用マス19の取付個数を減じることができる。したがってバランス調整穴を設ける場合は多数の穴を穿設するのに対しバランス調整用マス19を取り付ける場合は少数のバランス調整用マス19を取り付けると云う関係になるため、回転バランス調整に係るサイクルタイムを短縮することができる。
【0035】
また、ハブ12にマス取付用スリーブ16を固定するとともにこのマス取付用スリーブ16にバランス調整用マス19を取り付ける構造とされているため、回転バランス調整構造を設定するに際してハブ12に特段の加工を施す必要がない。したがって回転バランス調整構造を設定することによる製品強度に対する影響を軽減することができる。
【0036】
また、マス取付用リベット20を用いてマス取付用スリーブ16にバランス調整用マス19を取り付ける構造とされているため、取付作業を簡単迅速に行なうことができ、予めマス取付用スリーブ16にリベット圧入穴17を設ける構造とされているため、取付作業を一層簡単迅速に行なうことができる。
【0037】
また、マス取付用スリーブ16におけるマス取付位置の外周側に飛び出し防止用段差18が設けられているため、トーショナルダンパ11の回転時遠心力の作用によってマス取付用リベット20がマス取付用スリーブ16から外れることがあってもバランス調整用マス19が径方向外方へ飛び出すのを防止することができる。したがってバランス調整用マス19が径方向外方へ飛び出すことにより周辺機器が破損するのを未然に防止することができる。
【0038】
尚、この飛び出し防止に関しては、ハブ12のリム部12cの内径面に嵌合されたマス取付用スリーブ16の外径寸法が振動リング14の内径寸法より大きく設定されているため、このマス取付用スリーブ16が飛び出し防止のストッパとして作用することより、振動リング14がゴム状弾性体13から外れたときに軸方向一方(
図2における左方向)へ飛び出すのを防止することも可能とされている。したがってマス取付用スリーブ16は、振動リング14が軸方向一方へ飛び出すのを抑制するストッパとしての機能を兼ね備えている。
【0039】
また、この機能の兼ね備えに関しては、マス取付用スリーブ16の外周縁部に小突起23を円周上多数設けることにより、このマス取付用スリーブ16にセンサープレートとしての機能を兼ねさせることもできる。センサープレートは、小突起23に対し軸方向に対向する位置に例えば磁気センサ(図示せず)を設置してこの磁気センサにより小突起23の回転時通過数を測定することにより回転軸の回転数や回転角度などを検出するために用いられる。
【0040】
また、本発明において、バランス調整用マス19は、その取付個数を複数としたり増減したりすることにより重量を調整することが考えられる。この場合、複数のバランス調整用マス19を円周方向に並べる(複数のマス19を同数のリベット20で取り付ける)ことになるが、複数のバランス調整用マス19を何枚重ねと云うようにして軸方向に並べるようにしても良い(複数のマス19を1個のリベット20で取り付ける)。また、マス1個当たりの重量が大きい場合には
図5に示すように、1個のマス19を複数のリベット20で取り付けるようにしても良い。
【0041】
尚、上記したようにバランス調整用マス19を複数取り付ける場合には、マス1個当たりの重量を小さく設定したほうが組み合わせの態様(重量調整)が細分化されるので、最適重量の選定上有利となる。