(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該説明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
【0029】
<1. 実施の形態>
図1は、本実施の形態における画像記憶システム1を示す図である。画像記憶システム1は、サーバ2、ゲートウェイ3、ルータ4、ハブ5および複数のカメラ60,61,62,63,64,65,66から構成されている。画像記憶システム1では、これらの装置がLAN80(第1ネットワーク)、および、IP網81(第2ネットワーク)により互いにデータ通信が可能な状態で接続されている。
【0030】
本実施の形態における画像記憶システム1では、アーカイブセンターにサーバ2が設置され、店舗にゲートウェイ3、ルータ4、ハブ5およびカメラ60,61,62,63,64,65,66が設置されている。アーカイブセンターと店舗との間はIP網81によってデータ通信が可能な状態で接続されている。また、店舗内にはLAN80が敷設され、店舗内の各装置をデータ通信が可能な状態で接続している。なお、
図1には、1つの店舗のみを例示しているが店舗の数は1つに限定されるものではない。
【0031】
図1に例示する店舗の1階には、主に店舗を訪れた顧客が直接利用するホールと、顧客の出入りはないが店舗に必要な備品などを格納しておくバックヤードとして利用される倉庫とが設けられている。比較的大型の部屋であるホールには、カウンターが設置され窓口の担当者が直接顧客に応対する営業窓口と、ATMが設置され装置(ATM)によって顧客に応対するATM前とが形成されている。また、店舗の2階には、主にスタッフが事務作業をするための事務所と、特別な顧客などに対応するための応接室とが設けられている。なお、
図1に示す店舗のレイアウトはあくまでも例示であって、これに限定されるものではない。
【0032】
店舗1階のホールATM前に設置されているカメラ60,61は、それぞれが対応するATMを利用する人物を確実に撮像できるように、その撮像範囲が設定され設置されている。店舗1階のホール営業窓口には、カメラ62,63が設置されている。カメラ62は窓口(カウンター)を訪れる人物等を撮像できるようにその撮像範囲が設定されており、カメラ63はホールに入ってくる人物を撮像できるように店舗の入り口に向けてその撮像範囲が設定されている。また、店舗1階の倉庫にはカメラ64が設置されている。さらに、店舗2階の事務所にはカメラ65が設置されており、店舗2階の応接室にはカメラ66が設置されている。
【0033】
なお、以下の説明において、カメラ60,61,62,63,64,65,66を個別に区別しない場合には、カメラ6と総称する。また、カメラ60,61,62,63,64,65,66は、互いに同一構造の装置でなくてもよい。また、画像記憶システム1が備えるカメラ6の数は、
図1に示すように7台に限定されるものではなく、各部屋に配置されるカメラ6の数も特に限定されるものではない。
【0034】
サーバ2は、アーカイブセンターに設置される一般的なコンピュータである。詳細は図示しないが、サーバ2は各種の中継器を介してIP網81に接続されている。画像記憶システム1において、サーバ2は、カメラ6によって撮像される画像データ90(
図2参照)を長期的に記憶し、保管する機能を提供する。なお、画像データ90の保管には、サーバ2本体(本体内の記憶装置)のみならず、可搬性の記録媒体(CD−ROMや光ディスクなど)が用いられてもよい。その場合は、適当なタイミングでサーバ2から当該記録媒体に画像データ90が転送されて記憶され、当該記録媒体が保管される。
【0035】
一般に、店舗などの様子を防犯カメラ等で撮像して記録する場合、各店舗に画像データを保管すると、各店舗がそれぞれ画像データを管理しなければならず煩雑であるとともに、紛失や破損の可能性も増大する。したがって、撮像された画像データは、画像記憶システム1や特開2007−104518号公報に記載されている画像管理システムのように、アーカイブセンターに集めて一括して記録し保管することが好ましい。そして、画像データの収集には、データ通信を利用することが確実性および簡易性の面から好ましい。
【0036】
ゲートウェイ3は、主にプロトコル変換を行う通信機器である。本実施の形態における画像記憶システム1では、LAN80内のプロトコルとIP網81内におけるプロトコルとを相互変換する。
【0037】
ルータ4は、異なるネットワークを接続するための通信機器であり、本実施の形態ではLAN80とIP網81とを接続する機能を有する。
【0038】
ハブ5は、ネットワークにおけるスター型配線の中心に位置する集線装置であり、本実施の形態における画像記憶システム1では、各カメラ6(ノード)からのケーブルを集線し、ルータ4と接続する。
【0039】
図2は、カメラ6を示すブロック図である。
【0040】
カメラ6は、CPU10、ROM11、RAM12、撮像部13、カードスロット14、通信インタフェース15およびタイマ16を備えている。これにより、カメラ6は一般的なコンピュータとしての構成および機能を有している。
【0041】
CPU10は、プログラム7を実行することにより、各種のデータ演算を実行するとともに、制御信号によりカメラ6が備える各構成を制御する。なお、CPU10の機能および動作の詳細については後述する。
【0042】
ROM11は、読み取り専用の記憶装置であって、主にCPU10によって実行されるプログラム7を記憶する。なお、プログラム7の一部が、カードスロット14に装着されているSDカード9やRAM12に格納されていてもよい。
【0043】
RAM12は、CPU10の一時的なワーキングエリアとして使用される記憶装置を含んでいる。RAM12は、比較的高速にアクセス可能な記憶媒体を備えており、CPU10によるデータの読み書きが可能である。なお、RAM12は、CPU10によるデータの読み書きが可能な記憶装置を代表して例示するものであって、カメラ6が備える記憶装置を比較的小容量の高速アクセス可能な揮発性の記憶装置に限定するものではない。カメラ6は、RAM12以外にも、不揮発性の記憶装置(例えばNANDメモリ)や比較的低速でしかアクセスできない大容量の記憶装置(例えばハードディスク装置)等を備えていてもよい。また、以下の説明において、RAM12に記憶されているとして説明されるデータの一部または全部は、適宜、SDカード9に格納され、必要に応じてRAM12にロードされてもよい。
【0044】
撮像部13は、図示しないレンズ等の光学素子と、図示しないCCD等の光電変換素子とを備えている。撮像部13は、カメラ6の撮像範囲に存在する被写体を撮像することにより、当該被写体を表現した画像データ90を生成する。
【0045】
カードスロット14は、カメラ6にSDカード9を着脱自在に装着する機能を提供するインタフェースである。したがって、カードスロット14にSDカード9が装着された状態においては、カメラ6はSDカード9を備えていると言える。
【0046】
SDカード9は可搬性の記憶媒体であり、カードスロット14に装着された状態においてCPU10によるデータの読み書きが可能である。詳細は後述するが、撮像部13により生成された画像データ90は、CPU10によりSDカード9に転送され、
図2に示すように記憶される。すなわち、SDカード9は、当該SDカード9が装着されたカメラ6の撮像部13により生成された画像データ90を記憶する機能を有している。したがって、SDカード9は、本発明に係る第1記憶手段としての機能を有している。
【0047】
通信インタフェース15は、カメラ6を、データ通信が可能な状態でLAN80に接続する機能を提供する。より具体的には、本実施の形態では、通信インタフェース15に装着されたケーブル(図示せず)により、カメラ6とハブ5とが接続される。これにより、画像記憶システム1が備えるカメラ60,61,62,63,64,65,66がいずれもLAN80に接続され、LAN80を介して互いにデータ通信が可能な状態となる。ただし、通信インタフェース15は、有線方式に限定されるものではなく、無線方式を採用するものであってもよい。
【0048】
また、本実施の形態における画像記憶システム1は、各カメラ6のSDカード9に記憶された画像データ90を、夜間の時間帯を利用して、通信インタフェース15を介してサーバ2に送信して記録する。すなわち、各カメラ6は、昼間の時間帯は自機に装着されているSDカード9に画像データ90を一時的に記憶しておき、夜間の時間帯になると、それらをサーバ2に向けて送信する。
【0049】
すでに説明したように、店舗においてカメラ6で撮像を行う場合には、データ通信を用いて、画像データ90をアーカイブセンターに収集して保管することが好ましい。一方で、ATMを備えた店舗では、当該ATMと管理センタとの間で顧客の預貯金の照会処理などのために、すでにネットワークが整備されている。したがって、画像データ90をアーカイブセンターに送信するためのIP網81として、すでに整備されているネットワークを利用することが効果的である。しかし、一般に、ATM用に整備されたネットワークは、ATMの利用量を考慮して設計されており、比較的データ量の多い画像データ90を同時に送信すると、輻輳を生じ、本来のATMでの利用を阻害するおそれがある。
【0050】
しかし、先述のように、画像記憶システム1は、比較的ATMの利用量(通信量)が多いと予想される昼間の時間帯を避けて画像データ90を送信する。これにより、画像記憶システム1は、特定の時間帯(昼間の時間帯)においては比較的通信量が増大するためにその時間帯において画像データ90を送受信する余裕のないネットワークであっても、IP網81として効率的に使用することができる。
【0051】
タイマ16は、CPU10からの制御信号に応じて、適宜、時間を計測する機能を有している。
【0052】
図3は、カメラ6が備える機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
図3に示す危機検知部100、診断部101、選択部102、記憶制御部103および確認部104は、CPU10がプログラム7に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0053】
危機検知部100は、カメラ6の危機を検知する。本実施の形態における危機検知部100は、画像データ90を解析することによりカメラ6の危機を検知する。例えば、不審者がカメラ6に向かってくる様子が画像データ90に撮像されている場合に、カメラ6に危険が迫っているとして危機を検知する。
【0054】
なお、カメラ6の危機を検知する手法はこれに限定されるものではなく、様々な手法を適宜利用できる。例えば、特開2000−306170号公報、特開2000−285328号公報、特開2008−083358号公報、あるいは、特開2000−194961号公報などに記載された技術を用いることができる。
【0055】
また、危機検知部100は、カメラ6の危機を検知したときに、検知データ120を作成する。すなわち、検知データ120は、危機検知部100の検知結果を示すデータである。詳細は後述するが、危機検知部100によりカメラ6の危機が検知されたとき(検知データ120が作成されたとき)、当該カメラ6の画像データ90は他のカメラ6に退避させられる。
【0056】
さらに、危機検知部100は、一旦検知した危機が検知されなくなったときには、検知データ120をRAM12から削除する。
【0057】
診断部101は、自機に装着されているSDカード9の状態を診断して、状態データ121における自機のレコード(自機の状態が格納されるレコード)を編集する機能を有している。すなわち、診断部101は、自機の状況を診断する自己診断手段に相当する。
【0058】
本実施の形態における状態データ121は、各カメラ6ごとに1つのレコードが作成されるテーブル構造のデータである。各レコードには、個々のカメラ6を識別する識別子とともに、各カメラ6に装着されているSDカード9の状態を示す情報が含まれている。SDカード9の状態としては、例えば、故障履歴や寿命予測、読み書き可能か否か、記憶容量(退避記憶として使用できる記憶容量)といった情報が記録されている。
【0059】
先述のように、診断部101は、自機に装着されているSDカード9の故障履歴や寿命予測、読み書き可能か否か、記憶容量などの情報を、随時、状態データ121の自機のレコードに記録する。
【0060】
なお、SDカード9の寿命を予測する手法としては、例えば、特開2011−113493号公報に記載されている技術を採用することができる。また、退避記憶として使用できる記憶容量は、例えば、各カメラ6の数日間に記録された画像データ90のサイズから1日あたりの平均値を算出し、求めた平均値を当該カメラ6のSDカード9の本来の記憶容量から減算することにより推測することができる。
【0061】
診断部101により作成された状態データ121における自機のレコードは、通信インタフェース15を介して他のカメラ6に向けて適宜送信される。このようにして送信されたデータは、受信したカメラ6における状態データ121において、送信したカメラ6のレコードとして格納される。すなわち、状態データ121の各レコードのうち、自機に関するレコードは自機の診断部101によって作成され、他機のレコードは通信インタフェース15によって受信されたデータに基づいて作成される。これにより、各カメラ6に記憶されている状態データ121は、全SDカード9の状態を示すデータベースとして、各カメラ6において共通の情報となる(ただし、送受信のズレによる多少のタイムラグは許容される。)。
【0062】
なお、本実施の形態におけるカメラ6では、全SDカード9の状態を格納した状態データ121を随時作成し、ほぼ常に記憶していると説明したが、状態データ121に含まれる情報は、必要になったときに必要となった情報のみ診断部101によって作成されてもよい。例えば、カメラ61からカメラ60に対してSDカード9の状態に関する問い合わせがされたときに、カメラ60の診断部101が自機のレコードを作成し、通信インタフェース15がカメラ61に向けて送信してもよい。
【0063】
また、診断部101は、他機の確認部104から安否に関する問い合わせ(以下、「安否確認」と称する。)があったときに、最新の状態を診断して、状態データ121における自機のレコードを更新する。このとき、通信インタフェース15は、更新されたレコード(安否確認されたカメラ6に装着されているSDカード9の最新の状態を示すデータ)を当該他機に向けて送信する。
【0064】
なお、安否確認に際しては、すべての項目についてSDカード9の状態を確認する必要はない。例えば、SDカード9の故障履歴や寿命予測、記憶容量などといった情報は安否確認に対する回答としては必要ない。したがって、安否確認がされたときには、診断部101は、SDカード9に対する読み書きが可能であるか否かといった最小限の項目について診断し、状態データ121を更新する。
【0065】
選択部102は、危機検知部100による検知結果(検知データ120)に応じて、複数のカメラ6のうち危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6を退避先カメラ6として選択し、選択データ124を作成する機能を有している。すなわち、選択データ124は、選択部102によって退避先のカメラ6として選択されたカメラ6を示すデータである。選択部102が選択データ124を作成する際には、状態データ121および優先順位データ123を参照する。
【0066】
本実施の形態における選択部102は、すでに説明したように、状態データ121を参照することにより、画像記憶システム1における全SDカード9の状態を確認することができる。したがって、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6が備えるSDカード9の故障履歴に応じて、退避先カメラ6を選択することができる。これにより、選択部102は、信頼性の高いSDカード9を装着しているカメラ6を、画像データ91の退避先カメラ6として選択することができる。
【0067】
また、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6が備えるSDカード9の寿命予測に応じて、退避先カメラ6を選択することもできる。これによっても、選択部102は、信頼性の高いSDカード9を装着しているカメラ6を、画像データ91の退避先カメラ6として選択することができる。
【0068】
さらに、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6が備えるSDカード9の空き容量に応じて、退避先カメラ6を選択することもできるので、退避先カメラの記憶容量が足りなくなることを抑制することができる。
【0069】
また、本実施の形態における選択部102は、設定データ122に基づいて、優先順位データ123を作成する機能を有している。
図3に示すように、設定データ122は、位置関係データ122aと登録データ122bとを含んでいる。設定データ122は、画像記憶システム1の運用が開始されるときまでに、作成され準備されるデータである。
【0070】
本実施の形態において設定データ122は、予め外部の入力装置(例えば保守者が携帯するノートパソコンなど)によりSDカード9に書き込まれるデータである。このようにして設定データ122が記憶されたSDカード9がカメラ6のカードスロット14に装着されることにより、RAM12にロードされる。なお、設定データ122の取得方法はこれに限定されるものではない。例えば、サーバ2において作成してから各カメラ6に向けてダウンロードしてもよい。また、カメラ6の操作部を保守者が直接操作して入力してもよい。あるいは保守者が持参する保守用パソコンをハブ5に一時的に接続して、当該保守用パソコンにおいて作成してから各カメラ6にLAN80を介して転送してもよい。
【0071】
また、店舗におけるカメラ6の設置状況に変化が生じたときや、店舗に新たな部屋を増設したときなどには、当該店舗に設置されている各カメラ6に記憶されている設定データ122を全て更新する必要がある。また、設定データ122は、カメラ6の電源が切れた場合にも保管しておく必要があるため、不揮発性の記憶装置(例えばSDカード9)に格納しておくことが望ましい。
【0072】
図4は、位置関係データ122aを例示する図である。なお、
図4に示す例では、位置識別子Aは
図1に示す店舗における「ATM前」を示し、位置識別子Bは「営業窓口」を示し、位置識別子Cは「倉庫」を示す。また、位置識別子Dは
図1に示す店舗における「事務所」を示し、位置識別子Eは「応接室」を示す。
【0073】
なお、
図1に示す店舗には位置識別子Fに該当する部屋は存在しないため対応する項目がブランク(空欄)となっているが、当該店舗とレイアウトの異なる店舗では位置識別子Fに該当する部屋が存在していてもよい。また、逆に、
図1に示す店舗よりも設定されている部屋の数が少なくてもよい。
【0074】
位置関係データ122aは、各位置識別子で示される部屋に設置されているカメラ6と、各部屋に設置されている他のカメラ6との位置順位を示すデータである。ここで、位置順位とは、危機が検知された部屋と各部屋との、位置関係に起因する安全性の順位であり、数値が小さいほど安全性が高いことを示す。
【0075】
例えば、
図4を見れば、自機位置が位置識別子Aの「ATM前」については、同じ「ATM前」が「位置順位4」であり最も安全性が低いことを示している。これは、ATM前で危機が検知された場合は、同じATM前は同じ危機にさらされる可能性が高いと予想されることに起因している。一方で、同じ位置識別子Aの「ATM前」については、2階の事務所(位置識別子D)や応接室(位置識別子E)が「位置順位1」であり最も安全であることを示している。これは、ATM前で危機が検知された場合であっても、階数が異なり、そのため比較的離れた場所である事務所や応接室には、当該危機が及びにくく、比較的安全であると予想されることに起因する。
【0076】
なお、
図4に示す例では、2階に設けられている事務所と応接室とが、ATM前に対していずれも「位置順位1」となっており、同じ位置順位として設定されている。しかし、もちろん、事務所と応接室との位置順位に差を設けてもよい。例えば、事務所にはスタッフが常駐しているため安全性が高いが、応接室は無人になりやすく安全性が低いと予想されるならば、事務所の位置順位を応接室よりも高く設定してもよい。あるいは逆に、ATM前からの距離が応接室の方が遠いため、応接室の位置順位を事務所よりも高く設定してもよい。すなわち、位置順位(位置関係データ122a)は、
図4に示される例に限定されるものではなく、状況に応じて任意に設定することができる。
【0077】
図5は、登録データ122bを例示する図である。登録データ122bは、店舗に設置されているカメラ6と当該カメラ6の設置場所との対応関係を示すデータであり、各カメラ6が新たに設置されるときになどに、当該カメラ6の設置場所を新たに登録することにより更新される。登録データ122bを参照すれば、どのカメラ6がどの部屋に設置されているか、あるいは、どの部屋にどのカメラ6が設置されているかを検索することができる。
【0078】
図6は、選択部102によって作成される優先順位データ123を例示する図である。選択部102は、設定データ122が作成されると、作成された設定データ122に基づいて、
図6に示すような優先順位データ123を作成する。
【0079】
優先順位データ123には、画像記憶システム1を構成する各カメラ6ごとに1つのレコードが作成される。当該レコードには、対応するカメラ6を示す識別子(退避元)と、当該カメラ6の画像データ90の退避先の候補となるカメラ6の識別子とが格納されている。退避先の候補となるカメラ6の識別子は、位置順位ごとに格納されている。
【0080】
選択部102は、登録データ122bを参照して、登録データ122bに格納されているカメラ6の識別子と当該識別子に対応する位置識別子とを取得する。例えば、カメラ60の識別子と、カメラ60の識別子に対応する位置識別子Aとを取得する。
【0081】
次に、取得したカメラ60の識別子に対応するレコードを優先順位データ123に作成する。そして、カメラ60の識別子に対応して登録データ122bから取得した位置識別子Aを自機位置として、位置関係データ122aを参照し、各位置順位に対応する位置識別子を取得する。これにより、位置順位1としては位置識別子D,E、位置順位2としては位置識別子C、位置順位3としては位置識別子C、位置順位4としては位置識別子Aが取得できる。
【0082】
さらに、選択部102は、取得した各位置順位に対応する位置識別子を登録データ122bを参照することにより、対応するカメラ6の識別子に変換して、それぞれ優先順位データ123のレコードに格納する。すなわち、位置順位1としての位置識別子D,Eがカメラ識別子65,66に変換されて、優先順位データ123におけるカメラ60のレコードの位置順位1の欄に格納される。位置順位2,3,4についても同様に、位置識別子に対応するカメラ6の識別子を格納する。ただし、選択部102は、このとき、位置識別子に対応して取得されるカメラ6の識別子から自機の識別子を除外する。本実施の形態では、危機検知部100は自機の危機を検知するので、退避先のカメラ6として自機(危機が検知されたカメラ6)は不適切だからである。
【0083】
このようにしてカメラ60(一台分)のレコードが作成されると、選択部102は、カメラ60以外のカメラ6の識別子を登録データ122bから取得して同様の処理を繰り返す。そして、登録データ122bに登録されている全てのカメラ6の識別子について処理が完了すれば、
図6に示すような優先順位データ123が完成する。
【0084】
図6に示す優先順位データ123を参照すれば、例えば、カメラ60の画像データ90の退避先の候補となるカメラ6の中で、位置的な優先順位が最も高い(位置順位1)カメラ6はカメラ65,66であり、最も低い(位置順位4)カメラ6はカメラ61であることが分かる。したがって、選択部102は、選択データ124を作成する際に、優先順位データ123を参照することにより、危機が検知されたカメラ6と当該危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6との位置関係に応じて、退避先カメラ6を選択する。これにより、例えば、位置的に安全なカメラ6を正確に退避先カメラ6として選択できる。
【0085】
図3に戻って、記憶制御部103は、危機検知部100による検知結果(検知データ120)に応じて、撮像部13により撮像された画像データ90を、危機が検知されたカメラ6に装着されているSDカード9とは別のSDカード9に退避記憶させる。
【0086】
具体的には、検知データ120が作成されていないとき(選択データ124が作成されていないとき)、記憶制御部103は、画像データ90を自機のSDカード9に記憶するように、カードスロット14を制御する。したがって、カードスロット14に装着されたSDカード9は、先述のように、第1記憶手段に該当する。
【0087】
一方、検知データ120が作成され、それに応じて選択データ124が作成されている場合には、記憶制御部103は、選択データ124に示されている退避先カメラ6に向けて画像データ90を送信するように通信インタフェース15を制御する。そして、退避先カメラ6の記憶制御部103は、通信インタフェース15が画像データ90を受信したときには、当該画像データ90を自機に装着されているSDカード9に記憶させる。すなわち、退避元カメラ6の記憶制御部103と退避先カメラ6の記憶制御部103とが協働して、退避先カメラ6に装着されているSDカード9に、退避元カメラ6が備える撮像部13により撮像された画像データ90を退避記憶させる。したがって、カードスロット14に装着されたSDカード9は、当該カードスロット14を備えるカメラ6以外のカメラ6からみれば、本発明に係る第2記憶手段に該当する。
【0088】
このように、他のカメラ6が備えるSDカード9を第2記憶手段として使用することにより、例えばLAN80にハードウェア(例えば予備の記憶装置)を増設する必要がなく、従来のシステムのハードウェア構成をそのまま利用することができるため、コストを抑制できる。
【0089】
なお、本実施の形態における記憶制御部103は、検知データ120が作成されたときにおいても、画像データ90の退避記憶と並行して、SDカード9に画像データ90を記憶するようにカードスロット14を制御する。すなわち、本実施の形態における画像記憶システム1では、検知データ120が作成されると、画像データ90が二重に記憶されることになる。また、以下の説明では、自機が備える撮像部13以外の撮像部13(自機以外のカメラ6が備える撮像部13)によって撮像された画像データを「画像データ91」と称し、自機が備える撮像部13が撮像した画像データ90と区別する。
図1に示す例を用いて具体例を説明すると、カメラ60に装着されているSDカード9に画像データ91が記憶されている場合、当該画像データ91は、カメラ60の撮像部13によって撮像されたものではないことを示している。
【0090】
また、記憶制御部103は、危機検知部100によって検知データ120が削除された場合には、状態データ121を参照し、自機(特に自機のSDカード9)に問題がないことを確認した上で、退避記憶を停止する。すなわち、通信インタフェース15による画像データ90の送信を停止させる。
【0091】
また、記憶制御部103は、安否データ125に応じて、SDカード9に退避記憶されている画像データ91を削除する機能も有している。これによって、例えば、退避記憶されている画像データ91を撮像したカメラ6が無事であり、当該カメラ6のSDカード9に当該画像データ91(当該カメラ6においては画像データ90)が記憶されているのであれば、退避記憶されている画像データ91を削除することにより、第2記憶手段としてのSDカード9の空き容量を確保できる。なお、削除の代わりに他のデータによる上書きでもよい。すなわち、画像データ91を無効化し、当該SDカード9の空き容量を確保することができるならばどのような処理でもよい。
【0092】
確認部104は、危機が検知されたカメラ6の安否確認をするとともに、当該安否確認の結果に応じて安否データ125を作成する機能を有している。すなわち、安否データ125は、安否確認の対象となったカメラ6について、「異常」または「正常」を示すデータである。
【0093】
確認部104は、確認対象のカメラ6に対して、通信インタフェース15およびLAN80を介して当該カメラ6の安否を問い合わせることにより安否確認を実行する。なお、確認部104が安否確認を実行するタイミングは、例えば、最後の画像データ91を受信してから所定の時間が経過したときとすることができる。確認部104は、タイマ16を参照することにより、このような経過時間を取得することが可能である。本実施の形態における記憶制御部103は、危機が去り、検知データ120が削除されると画像データ90の他機への送信を停止する。したがって、画像データ91が所定の時間受信されないという事態は、一旦危機が検知されたカメラ6に対する当該危機が去って画像データ91の送信が停止されたか、もしくは、画像データ91を送信することすら不能となったかのいずれかと想定できる。
【0094】
安否確認を受信したカメラ6の診断部101は、すでに説明したように、当該タイミングで新たに所定の項目に関する自己診断を行い、新たに状態データ121の自機のレコードを更新する。なお、ここに言う「所定の項目」とは、先述のように、安否確認がされたときに特化した項目でよい。すなわち、状態データ121に格納するすべての項目について自己診断を行う必要はない。また、安否確認に対する自己診断ができなかった項目についてはその旨が記録される。
【0095】
このようにして安否確認に対する状態データ121の更新が完了すると、当該カメラ6の通信インタフェース15が、自機のレコードを安否確認に対する応答として、安否確認を送信したカメラ6に向けて送信する。
【0096】
これにより、安否確認を実行した確認部104は、危機が検知されたカメラ6の診断部101による診断結果(状態データ121)をLAN80を介したデータ通信により受け取ることができる。そして、診断結果を受信した確認部104は、当該診断結果に応じて、危機が検知されたカメラ6の安否を確認し、安否データ125を作成する。
【0097】
これにより、任意の項目について自己診断がされた結果に応じて安否を確認することができ、例えば、単にリンクが成立しているか否かによって確認する場合に比べて安否確認の精度が向上する。なお、安否確認に対する応答がなかった場合、確認部104は、問い合わせ先のカメラ6に異常が生じている判定し、その旨を示す安否データ125を作成する。
【0098】
本実施の形態における確認部104は、自機が画像データ91を格納している場合にのみ、当該画像データ91を撮像したカメラ6に対して安否確認をする。例えば、カメラ60において危機が検知され、カメラ60において撮像された画像データ90が、カメラ66に画像データ91として記憶されている場合、カメラ66の確認部104のみがカメラ60の安否確認を実行する。これにより、危機が検知されたカメラ6以外の全てのカメラ6が一斉に安否確認を実行する場合に比べて、処理が軽減される。
【0099】
以上が、本実施の形態における画像記憶システム1の構成および機能の説明である。次に、画像記憶システム1によって画像データ90を記憶する方法(画像記憶方法)について説明する。
【0100】
図7ないし
図10は、本実施の形態におけるカメラ6の動作を示す流れ図である。
【0101】
図7ないし
図10に示す処理が開始されると、カメラ6は、初期設定を実行する(ステップS1)。初期設定では、例えば、設定データ122の取得、優先順位データ123の作成、診断部101による最初の自己診断(状態データ121の作成および他機への送信)、受信フラグや安否フラグをOFFに設定する処理などが実行される。
【0102】
なお、受信フラグとは、カメラ6が他のカメラ6から画像データ91を受信中であるか否かを示すフラグであって、画像データ91を受信中であるときに「ON」となり、受信中でないときに「OFF」となる。また、安否フラグとは、カメラ6が他のカメラ6に対して安否確認を行っているか否かを示すフラグであって、安否確認を行っているときに「ON」となり、行っていないとき(もしくは不要になったとき)に「OFF」となる。
【0103】
ステップS1の初期設定が終了すると、カメラ6は、運用状態に移行する。運用状態において、カメラ6は、撮像部13による撮像(ステップS2)と、撮像により取得された画像データ90のSDカード9への記憶(ステップS3)と、取得された画像データ90に基づく危機検知(ステップS4)とを実行しつつ、各種状態を監視する状態となる。なお、ステップS4において、危機検知部100は、危機を検知できなかったときは、すでに検知データ120が作成されているか否かを確認し、検知データ120がすでに作成されている場合は当該検知データ120を削除する。
【0104】
運用状態において監視される状態とは、検知データの有無(ステップS5)と、画像データ91の受信(ステップS7)と、受信フラグの状態(ステップS11)と、安否フラグの状態(ステップS21)と、安否確認の受信(ステップS31)と、時刻(ステップS34)とである。ただし、運用状態において監視される状態はこれに限定されるものではない。例えば、設定データ122が更新されたか否かなどが監視されてもよい。
【0105】
運用状態において、検知データ120の存在を確認すると、CPU10はステップS5においてYesと判定し、退避処理を開始する(ステップS6)。
【0106】
図11は、カメラ6において実行される退避処理を示す流れ図である。退避処理とは、画像データ90を退避記憶させる退避先カメラ6を選択し、選択した退避先カメラ6に向けて画像データ90を送信する処理である。
【0107】
退避処理が開始されると、CPU10はすでに選択データ124が存在しているか否かを判定する(ステップS41)。
【0108】
すでに選択データ124が存在する場合(ステップS41においてYes。)、記憶制御部103は、画像データ90を選択データ124に示されている退避先カメラ6に向けて送信するように通信インタフェース15を制御する。これにより、通信インタフェース15が画像データ90を退避先カメラ6に向けて送信する(ステップS42)。ステップS42を実行すると、カメラ6は、
図7に示す処理に戻り、運用状態に戻る。
【0109】
未だ選択データ124が作成されていない場合(ステップS41においてNo。)、選択部102は、優先順位データ123を参照して、自機に対する位置順位の高いカメラ6を退避先カメラ6の候補(以下、「候補カメラ6」と称する。)として選択する(ステップS43)。なお、ステップS43において、位置順位の等しいカメラ6が複数ある場合には、その中から任意に1つを選択する。
【0110】
次に、選択部102は、状態データ121を参照して、ステップS43において選択した候補カメラ6に装着されているSDカード9(以下、「候補SDカード9」と称する。)の故障履歴または寿命に問題がないか否かを確認する(ステップS44)。
【0111】
ステップS44においてYesと判定すると、選択部102は、さらに状態データ121を参照して、候補SDカード9の空き容量が閾値T以上が否かを判定する(ステップS45)。なお、閾値Tは、画像データ91を退避記憶させるために必要となる記憶容量の予想値に応じて決定される。また、ステップS45にいう「空き容量」とは、すでに説明したように、候補SDカード9において、候補カメラ6の画像データ90を1日分記憶したとしても残ると予想される記憶容量であり、画像データ91を退避記憶可能な記憶容量である。したがって、ステップS45が実行されるときにおける未使用の記憶容量よりは、画像データ90を記憶させるために確保しておかなければならない記憶容量分だけ少ない。
【0112】
ステップS45においてYesと判定すると、選択部102は、候補カメラ6を退避先カメラ6として決定し、当該カメラ6の識別子を含む選択データ124を作成する(ステップS46)。そして、ステップS46において選択データ124が作成されると、記憶制御部103および通信インタフェース15によってステップS42が実行され、画像データ90が退避先カメラ6に向けて送信される。
【0113】
ステップS45においてNoと判定すると、選択部102は、優先順位データ123を参照して、新たなカメラ6を追加の候補カメラ6として選択する(ステップS47)。ステップS47において選択部102は、すでに選択されている候補カメラ6以外のカメラ6の中から位置順位の最も高いカメラ6を追加の候補カメラ6として選択する。
【0114】
ステップS47が実行されて追加の候補カメラ6が選択されると、選択部102は、状態データ121を参照して、候補カメラ6(追加の候補カメラ6を含む。)に装着されているSDカード9のうち最も空き容量が少ないSDカード9の空き容量(最低空き容量)が閾値t以上か否かを判定する(ステップS48)。なお、t=T/(候補カメラ6の数)である。
【0115】
ステップS48においてNoと判定すると、選択部102は、ステップS47を繰り返して、さらに追加の候補カメラ6を優先順位データ123から選択する。一方、ステップS48においてYesと判定すると、候補カメラ6(追加の候補カメラ6を含む。)を退避先カメラ6として決定し、当該カメラ6の識別子を含む選択データ124を作成する(ステップS49)。そして、ステップS49において選択データ124が作成されると、記憶制御部103および通信インタフェース15によってステップS42が実行され、画像データ90が退避先カメラ6に向けて送信される。ステップS49において作成される選択データ124には、複数の退避先カメラ6が含まれるので、ステップS49が実行されてからステップS42が実行される場合、画像データ90は複数の退避先カメラ6に分散して退避記憶されることになる。
【0116】
なお、画像データ90を複数の退避カメラ6(カメラ64,65,66)に分散して退避記憶させる手法として、例えば、画像データ90における第1フレーム、第2フレーム、第3フレーム、第4フレーム、・・・の退避記憶先が、カメラ66のSDカード9、カメラ65のSDカード9、カメラ64のSDカード9、カメラ66のSDカード9、・・・となるように分散して記憶させることが考えられる。すなわち、画像データ90を構成する各フレームを、作成された順番(フレーム番号)に従って巡回的に複数の退避カメラ6に割り当てて退避記憶させることが考えられる。ただし、このような手法に限定されるものではない。
【0117】
ステップS44に戻って、ステップS43で選択された候補カメラ6のSDカード9において故障履歴または寿命に問題があった場合(ステップS44においてNo。)、選択部102は、優先順位データ123を参照して、新たなカメラ6を追加の候補カメラ6として選択する(ステップS50)。ステップS50において選択部102は、ステップS47と同様に、すでに選択されている候補カメラ6以外のカメラ6の中から位置順位の最も高いカメラ6を追加の候補カメラ6として選択する。
【0118】
次に、選択部102は、状態データ121を参照し、ステップS50において選択された追加の候補カメラ6に装着されているSDカード9について、故障履歴または寿命に問題がないか否かを確認する(ステップS51)。そして、当該SDカード9の故障履歴または寿命に問題がある場合は、ステップS50の処理を繰り返してさらに追加の候補カメラ6を選択する。
【0119】
一方、当該SDカード9の故障履歴または寿命に問題がない場合(ステップS51においてYes。)、選択部102は、状態データ121を参照して、ステップS48と同様に、最低空き容量が閾値t以上か否かを判定する(ステップS52)。そして、ステップS52においてNoと判定した場合はステップS47を実行して、新たな追加の候補カメラ6を選択する。また、ステップS52においてYesと判定した場合は、ステップS49を実行して、選択データ124を作成する。
【0120】
なお、本実施の形態における画像記憶システム1では、ステップS47において追加された候補カメラ6に装着されているSDカード9については、故障履歴または寿命に問題がないか否かを確認していない。これは、ステップS47が実行される場合は、すでにステップS44またはS51においてYesと判定されており、候補SDカード9の中に、少なくとも1つは、故障履歴および寿命のいずれについても問題がないSDカード9が含まれているからである。ただし、ステップS47において追加された候補カメラ6に装着されているSDカード9についても、故障履歴または寿命に問題がないか否かを確認してもよい。
【0121】
また、選択データ124を作成する際の処理(
図11)はあくまでも例示であって、退避先カメラ6の選択はこのような判定手順に限定されるものではない。例えば、ステップS43において複数台のカメラ6(例えば位置順位が等しい複数のカメラ6)を候補カメラ6として選択してもよい。あるいは、故障履歴および寿命のいずれについても問題がある場合に、追加の候補カメラ6を選択するようにしてもよい。あるいは、故障履歴に問題がある場合と、寿命に問題がある場合とにおいて、異なる処理を実行してもよい。すなわち、どの条件を重視して退避先カメラ6を選択するかは、状況に応じて適宜決定すればよい。
【0122】
画像記憶システム1は、ステップS44およびS51を実行することにより、退避先カメラ6の中に、少なくとも1つは故障履歴または寿命に問題のないSDカード9を備えるカメラ6が含まれるように退避先カメラ6を選択する。これにより、画像記憶システム1は、選択された退避先カメラ6に備えられている(装着されている)SDカード9が、すべて故障履歴または寿命に問題のあるSDカード9となることを回避している。そして、複数の退避先カメラ6が選択された場合には、先述のように、画像データ90は、これら複数の退避先カメラ6のSDカード9に分散して退避記憶される。したがって、故障履歴または寿命に問題があるSDカード9を備えるカメラ6が退避先カメラ6として選択され、万が一、これらのSDカード9が故障した場合であっても、少なくとも故障履歴または寿命に問題のないSDカード9に分散記憶された画像データ90だけは無事に保管される蓋然性が高くなる。言い換えれば、本実施の形態における画像記憶システム1では、すべての画像データ90がSDカード9の故障等によって消失する可能性を極めて小さくすることができる。
【0123】
また、画像記憶システム1は、空き容量の少ないカメラ6が退避先カメラ6として選択された場合(ステップS45,S48,S52のいずれかにおいてNoの場合)、追加の候補カメラ6を選択し、選択された複数の退避先カメラ6に分散して画像データ90を退避記憶する。これにより、1台の退避先カメラ6に退避記憶される画像データ90のデータ量を抑制することができるので、退避先カメラ6に装着されているSDカード9の容量不足を回避することができる。
【0124】
図7に戻って、運用状態において、通信インタフェース15が画像データ91を受信すると、CPU10(記憶制御部103)はステップS7においてYesと判定し、受信フラグをONに設定する(ステップS8)。ステップS8を実行するときにおいて、通常であれば、安否フラグがONとなっていることはないが、LAN80内の通信状態の影響等により画像データ91の受信間隔が大きくなり、タイムアウトにより安否フラグがONになっている場合もありうる(詳細後述)。したがって、ステップS8を実行するときに、記憶制御部103は、念のために安否フラグをOFFに設定しなおすことが好ましい。
【0125】
ステップS8が実行されると、確認部104がタイマ16を制御して、タイマ16に計測時間をセットする(ステップS9)。ステップS9においてセットされる計測時間は、画像データ91の受信間隔を計測するための時間であり、予め設定されRAM12に記憶されているものとする。また、ステップS9においてセットされる計測時間は、画像データ91を受信するたびにステップS9が実行されるため再セットされる。
【0126】
次に、記憶制御部103は、受信された画像データ91をSDカード9に記憶するように、カードスロット14を制御する。これにより、カードスロット14がSDカード9に画像データ91を記憶させる(ステップS10)。このように、ステップS10が実行されることにより、画像データ90が、他のカメラ6に画像データ91として記憶され、退避記憶が実現される。なお、ステップS10を実行すると、カメラ6は、運用状態に戻る。
【0127】
運用状態において、受信フラグがONとなっていると、確認部104はステップS11においてYesと判定し、さらにタイマ16を参照してタイムアウトか否かを判定する(ステップS12)。最後の画像データ91を受信してからの時間が、ステップS9においてセットした計測時間を過ぎている場合は、タイマ16がタイムアウト状態となっており、ステップS12においてYesと判定される。
【0128】
ステップS12においてYesと判定すると、確認部104は、受信フラグをOFFに設定し(ステップS13)、これまでに画像データ91を送信してきていたカメラ6に対して安否確認を行うように通信インタフェース15を制御する。これにより、通信インタフェース15が当該カメラ6の安否を問い合わせる情報を当該カメラ6に向けて送信し、安否確認を行う(ステップS14)。
【0129】
安否確認が実行されると、確認部104は、安否フラグをONに設定する(ステップS15)とともに、タイマ16に計測時間をセットして(ステップS16)、運用状態に戻る。なお、ステップS16においてセットされる計測時間は、安否確認に対する安否応答を受け取るまでのタイムアウトを計測するための時間(詳細後述)であり、予め設定されRAM12に記憶されているものとする。
【0130】
一方で、最後の画像データ91を受信してからの時間がタイムアウトとなっていない場合(ステップS12においてNo。)は、継続的に画像データ91の受信がされているとみなせる。このような場合には、危機が検知されたカメラ6は画像データ91の撮像と送信とが可能な状態であり、退避先のカメラ6は引き続き画像データ91を記憶すべき状態である。言い換えれば、この状態においては、安否確認を実行する必要はないので、カメラ6はステップS13ないしS16の処理をスキップして運用状態に戻る。これにより、画像記憶システム1は、無駄な安否確認を抑制することができる。
【0131】
運用状態において、安否フラグがONとなっていると、確認部104はステップS21においてYesと判定し、さらに、安否応答を受信しているか否かを判定する(ステップS22)。安否応答とは、安否確認に対して、安否確認の対象となったカメラ6から送信される状態データ121である。
【0132】
安否応答を受信している場合(ステップS22においてYes。)、確認部104は、受信した安否応答に応じて安否データ125を作成する(ステップS23)。なお、安否応答を受信できたからといって、当該カメラ6が無事であるとは限らない。例えば、不審者にSDカード9を抜き取られた場合などにおいては、安否応答は送信可能であるが、SDカード9が装着されていないのであるから当然SDカード9へのアクセスは不能である。したがって、ステップS23において作成される安否データ125においては、「正常」の場合もあれば「異常」の場合もある。
【0133】
一方、安否応答を受信していない場合(ステップS22においてNo。)、確認部104は、タイマ16を参照して、タイマ16がタイムアウトとなっているか否かを判定する(ステップS24)。安否確認(ステップS14)を実行してから、ステップS16においてセットされた経過時間がすでに経過した場合、タイマ16はタイムアウト状態となっており、確認部104はステップS24においてYesと判定する。
【0134】
ステップS24においてYesと判定すると、確認部104は、安否確認の対象となったカメラ6は、安否応答を送信できない状態であるとみなし、「異常」を示す安否データ125を作成する(ステップS25)。一方、ステップS24においてNoと判定すると、確認部104は、安否確認を実行してから、未だ、所定の時間が経過していないと判断して、運用状態に戻る。
【0135】
ステップS23またはS25が実行されることにより安否データ125が作成されると、確認部104は、安否フラグをOFFに設定する(ステップS26)。
【0136】
ステップS26が実行されると、記憶制御部103は、作成された安否データ125が「正常」か否かを判定する(ステップS27)ことにより、危機が検知されたカメラ6が正常に動作しているか否かを確認する。
【0137】
ステップS27において「正常」と判断すると、記憶制御部103は、退避記憶していた画像データ91を削除して当該データを無効化し(ステップS28)、運用状態に戻る。これにより、危機を検知したカメラ6において、その後異常が検出されず、正常な状態が維持されている場合(いわば、危機検知が杞憂に終わった場合)、退避した画像データ91を無効化して、退避先カメラ6の記憶容量を確保することができる。なお、ステップS28を実行する前に、記憶制御部103は、安否が確認されたカメラ6に記憶されている画像データ90と、自機に記憶されている画像データ91とを照合して、実際に無効化してよいか否かを判定してもよい。このように構成すれば、画像データ90として記憶されていない画像データ91を誤って無効化することを防止することができる。
【0138】
一方、ステップS27において「異常」と判断すると、記憶制御部103は、退避記憶している画像データ91をそのまま維持し(ステップS29)、運用状態に戻る。これにより、危機を検知したカメラ6にその後異常が生じても、当該カメラ6において撮像された画像データ90を誤って無効化することなく、画像データ91として退避先カメラ6に記憶しておくことができる。
【0139】
運用状態において、通信インタフェース15が安否確認を受信すると、診断部101はステップS31においてYesと判定し、自機の診断を実行する(ステップS32)。これにより、安否確認に対する所定の自己診断が実行され、状態データ121が更新される。次に、通信インタフェース15が、状態データ121を安否確認を送信したカメラ6に向けて安否応答として送信する(ステップS33)。そして、ステップS33を実行すると、カメラ6は、運用状態に戻る。
【0140】
運用状態において、送信時刻が到来していると、CPU10はステップS34においてYesと判定し、SDカード9に記憶されている画像データ90および画像データ91をアーカイブセンターのサーバ2に向けて送信する(ステップS35)。すでに説明したように、本実施の形態における画像記憶システム1では、送信時刻は夜間の時刻である。また、送信時刻は各カメラ6ごとにずらしておくことが好ましい。すべてのカメラ6が同時にサーバ2に向けて送信を開始すると、サーバ2の負担が増大するからである。
【0141】
以上のように、画像記憶システム1は、撮像により画像データ90を生成する撮像部13および撮像部13により生成された画像データ90を記憶するSDカード9を備えたカメラ6と、カメラ6との間のデータ通信が可能な他のカメラ6のSDカード9と、カメラ6の危機を検知する危機検知部100と、危機検知部100による検知結果(検知データ120)に応じて、撮像部13により撮像された画像データ90を、自機のSDカード9とは別に他のカメラ6のSDカード9に退避記憶させる記憶制御部103とを備える。これにより、例えば、カメラ6の危機が検知されたときに、他機のカメラ6のSDカード9に画像データ90を退避することができる。したがって、カメラ6(当該カメラ6のSDカード9)が破壊された場合でも、画像データ90を確実に保存することができる。しかも、常時、他機のSDカード9を自機が使用するのではなく、危機が予測されたときにのみ当該SDカード9を使用することにより、当該SDカード9の容量を抑制できる。
【0142】
また、画像記憶システム1は、互いにデータ通信が可能な複数のカメラ6を備え、危機検知部100による検知結果に応じて、複数のカメラ6のうち危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6を退避先カメラ6として選択する選択部102をさらに備え、記憶制御部103は、選択部102により選択された退避先カメラ6が備えるSDカード9を、退避先のSDカード9とみなして、危機が検知されたカメラ6が備える撮像部13により撮像された画像データ90を退避記憶させる。これにより、危機が検出されたカメラ6以外のカメラ6のSDカード9を退避用の記憶装置として兼用できる。したがって、常時使用されることのない記憶装置を別途設ける必要がない。
【0143】
また、選択部102は、危機が検知されたカメラ6と、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6との位置関係に応じて、退避先カメラ6を選択することにより、例えば、位置的に安全なカメラ6を正確に退避先カメラ6として選択できる。したがって、退避記憶された画像データ90の安全性がより向上する。
【0144】
また、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6が備えるSDカード9の寿命予測に応じて、退避先カメラ6を選択することにより、信頼性の高いカメラ6を退避先カメラ6として選択できる。
【0145】
また、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6が備えるSDカード9の空き容量に応じて、退避先カメラ6を選択することにより、退避先カメラ6の記憶容量が足りなくなることを抑制できる。
【0146】
また、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6が備えるSDカード9の故障履歴に応じて、退避先カメラ6を選択することにより、信頼性の高いカメラ6を退避先カメラ6として選択できる。
【0147】
また、危機が検知されたカメラの安否を確認する確認部104と、自機の状況を診断する診断部101を備え、確認部104は、危機が検知されたカメラ6の診断部101による診断結果(状態データ121)をデータ通信により受け取り、当該診断結果に応じて、危機が検知されたカメラ6の安否を確認することにより、安否確認の精度が向上する。
【0148】
また、記憶制御部103は、確認部104による確認結果(安否データ125)に応じて、SDカード9に退避記憶されている画像データ91を無効化する。これにより、例えば、退避記憶されている画像データ91を撮像したカメラ6が無事であり、当該カメラ6のSDカード9に当該画像データ91に相当する画像データ90が記憶されているのであれば、退避画像データ91を無効化することにより、SDカード9の空き容量を確保できる。
【0149】
なお、選択データ124を作成するときに、すでに他のカメラ6の退避先カメラ6として選択され、画像データ91を記憶しているカメラ6の優先順位を低くしてもよい。これにより、複数のカメラ6によって退避先カメラ6として選択されることを抑制することができるため、容量不足に陥る危険性を回避することができる。このように構成する場合、カメラ6は、画像データ91を受信したときに、他のカメラ6に向けて、自機が退避先カメラ6として選択されたことを通知する。このようにして通知された情報は、各カメラ6の状態データ121に格納しておいて、選択データ124を作成するときに反映させることができる。
【0150】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0151】
例えば、カメラ6の危機を検知するのは必ずしも自機でなくてもよい。
図1に示す例において、カメラ63の画角にカメラ61が撮像されているならば、カメラ63の危機検知部100がカメラ61の危機を検知してもよい。すなわち、カメラ61の危機を検知する危機検知部100は、危機が検知されたカメラ61以外のカメラ63に設けられていてもよい。あるいは、危機検知部100に相当する構成はカメラ6以外の独立した装置(センサ等)に設けられていてもよいし、他の警報システムなどと連動していてもよい。このように構成することにより、カメラ61の現状を他のカメラ63や装置により検知することができるので、カメラ61が破壊された後もカメラ61の観察が可能であり、正確な状況把握が可能となる。
【0152】
また、危機検知部100が自機以外のカメラ6の危機を検知する場合などにおいて、当該危機検知部100と同じカメラ6に設けられている確認部104は、当該危機検知部100による検知データ120に応じて当該カメラ6の安否を確認するタイミングを決定してもよい。例えば、当該カメラ6について危機が検知されている間は安否の確認をしないように構成することができる。これにより無駄な安否確認処理を抑制しつつ、カメラ6に対する危機が去った後に効率的に安否確認することができる。
【0153】
また、上記実施の形態では、すべてのカメラ6において、選択部102が
図6に示す優先順位データ123を作成すると説明した。しかし、オペレータが、設定データ122の代わりに優先順位データ123を入力してもよい。
【0154】
また、優先順位データ123を作成する機能は、各カメラ6が有していなくてもよい。例えば、サーバ2がそのような機能を有していてもよいし、保守用のパソコンがそのような機能を有していてもよい。このような場合、作成された優先順位データ123は、データ通信により各カメラ6に転送されればよい。
【0155】
また、各カメラ6において必要となるのは、優先順位データ123のうちの自機のレコードだけである。したがって、各カメラ6の選択部102は、自機についてのみ、優先順位データ123のレコードを選択的に作成してもよい。また、上記した例のように、優先順位データ123がカメラ6以外で作成される場合には、各カメラ6には、対応するレコードのみが転送されればよい。
【0156】
また、状態データ121には、SDカード9の故障履歴が記録されると説明したが、SDカード9ではなく、カメラ6自体の故障履歴が記録されてもよい。
【0157】
また、確認部104は、自己診断結果を要求することなく、単に、危機が検知されたカメラ6との間でデータ通信が可能か否かに応じて、危機が検知されたカメラ6の安否を確認してもよい。このように構成した場合、自己診断処理が不要になるため、容易に、かつ、迅速に安否確認をすることができる。
【0158】
また、確認部104は、危機が検知されたカメラ6が備えるSDカード9に記憶されている画像データ90が読み出し可能か否かに応じて、危機が検知されたカメラ6の安否を確認してもよい。これにより、最低限度の機能が確保されているか否かを確認できる。
【0159】
また、上記実施の形態における画像記憶システム1では、カメラ6において危機が検知されなくなったときに検知データ120が削除され、当該カメラ6の記憶制御部103が画像データ90の送信を停止する。したがって、この場合、受信側のカメラ6では、画像データ91が受信されないため、確認部104による確認を要することなく、記憶制御部103による画像データ91のSDカード9への書き込みが停止される。しかし、送信側カメラ6がこのような画像データ90の送信停止機能を備えていない場合には、受信側のカメラ6の記憶制御部103は、確認部104による確認結果に応じて、自機のSDカード9への退避記憶を停止してもよい。これにより、例えば、退避記憶されている画像データ91を撮像したカメラ6が無事であり、当該カメラ6のSDカード9に引き続き当該画像データ91(画像データ90)を記憶させることが可能であれば、退避記憶を停止することにより、退避先カメラ6のSDカード9の空き容量を確保できる。
【0160】
また、選択部102は、危機が検知されたカメラ6以外のカメラ6の形式に応じて、退避先カメラ6を選択してもよい。すなわち、設定データ122にカメラ6の形式を示す情報を含めておき、選択部102がこれを反映させた優先順位データ123を作成してもよい。例えば、営業窓口に設置されているカメラ63が、他のカメラ6と異なり、ドーム形式であった場合、ドーム形式のカメラ63は不審者により攻撃されにくいという特徴があるため、退避先のカメラ6としての優先順位を他のカメラ6に比べて高く設定してもよい。これにより、攻撃されにくいカメラ6を退避先カメラ6として選択することができ、退避される画像データ90の安全性が向上する。
【0161】
また、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、ここに示した内容や順序に限定するものではない。例えば、同様の効果が得られるのであれば、各工程の内容や順序が適宜変更されてもよい。
【0162】
また、カメラ6が備える機能ブロックは、プログラム7をCPU10が実行することにより、実現されると説明した。これにより、従来のハードウェアを変更することなく、画像記憶システム1に流用することができる。ただし、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路(ハードウェア)で実現してもよい。
【0163】
また、上記実施の形態では、危機が検知された以後の画像データ90のみを他機に転送して退避記憶すると説明した。しかし、時間や記憶容量に余裕があるならば、未だアーカイブセンターに送信されていない画像データ90(危機が検知されたカメラ6のSDカード9にすでに記憶されている画像データ90)についても、退避先カメラ6に転送してもよい。