【実施例1】
【0017】
図1は本発明の実施例1を示す泥土圧シールド掘削機の概略構成図、
図2はカッタヘッドの正面図、
図3Aはセンターカッタの拡大正面図、
図3Bは
図3AのA−A線断面図、
図3Cは
図3AのB−B線断面図、
図8は本発明のトンネル掘削機による立坑掘削工法の説明図である。
である。
【0018】
図1に示すように、立坑掘削工法を含むトンネル掘削作業に用いられる本実施例の泥土圧シールド掘削機(トンネル掘削機)10において、筒状をなす掘削機本体11の前胴(前部)11aにはバルクヘッド12が形成され、このバルクヘッド12にはリングギア付き軸受13によりテーパ筒状の回転体14が回転自在に支持され、この回転体14に後述する第1〜第4カッタ面板(カッタフェイス)16a〜16d及び第1〜第4カッタスポーク(カッタフェイス)17a〜17dが先細りの円錐状に傾斜する傾斜型のカッタヘッド15が装着されている。回転体14と掘削機本体11の前胴11aとの間にはシール18があり、リングギア付き軸受13のギアの噛み合わせ部分へ土砂などの異物が侵入するのを防いでいる。
【0019】
カッタヘッド15及び回転体14の後部には前述したリングギア付き軸受13が連接される一方、掘削機本体11の前胴11aには駆動モータ19が装着され、この駆動モータ19の駆動ギア20がリングギア付き軸受13のリングギア部に噛み合っている。従って、駆動モータ19を駆動して駆動ギア20を回転駆動すると、リングギア付き軸受13及び回転体14を介してカッタヘッド15を回転することができる。
【0020】
一方、掘削機本体11内にはスクリュコンベア21が配設されており、前端部がバルクヘッド12を貫通してチャンバ22に連通されている。また、掘削機本体11の後部(後胴11b)にはリングガータ23が形成され、このリングガータ23の外周部には周方向に沿って複数のシールドジャッキ24が配設されると共に、その内周部には旋回モータ25により旋回駆動される旋回リング26が旋回可能に支持され、この旋回リング26にセグメントSを組立てるエレクタ装置27が装着されている。従って、シールドジャッキ24が掘進方向後方に伸長してそのスプレッダ24aを既設のセグメントSに押し付けることで、その反力により掘削機本体11を前進させることができると共に、エレクタ装置27により前進した掘削機本体11(後胴11b)と既設のセグメントSとの空所に新しいセグメントSを組み付けることができる。
【0021】
また、掘削機本体11の前胴11aと後胴11bとは、球面継手部材28を介して連結され、前胴11aと後胴11bとの間に介装された複数の中折れジャッキ29の伸縮により掘削機本体11が所定方向に中折れ可能になっている。
【0022】
図2にも示すように、カッタヘッド15は、第1〜第4カッタ面板(カッタフェイス)16a〜16dと第1〜第4カッタスポーク(カッタフェイス)17a〜17dが周方向へ交互に等配されて(即ち、45°間隔で配置されて)センターシャフト30と外周リング31に支持されてなり、各第1〜第4カッタスポーク17a〜17dの両側に土砂用切削ビット32がまた中央部にスポーク取付用の支障物切削ビット33が多数装着され、各第1〜第4カッタ面板16a〜16dに面板取付用の支障物切削ビット34が多数装着されている。また、第1及び第3カッタスポーク17a,17cには押出ジャッキ35によってカッタヘッド15の径方向に突出可能なコピーカッタ36が内蔵される。
【0023】
そして、前記土砂用切削ビット32は、そのかんな刃状の超硬チップが所定のすくい角と逃げ角を有してチップ先端角度が鋭角になっている。一方、スポーク取付用の支障物切削ビット33は、一つ(複数でも良い)の超硬チップを中心にして切削方向(カッタヘッド15の周方向)に対称な山型状に形成されて土砂用切削ビット32の超硬チップと比較するとすくい角がマイナスとなっており、チップ先端角度が鈍角であると言える。また、面板取付用の支障物切削ビット34は複数の超硬チップを切削方向に所定の間隔をおいて埋設するも切削方向に対称な円弧状に形成されて、スポーク取付用の支障物切削ビット33と同様に、すくい角がマイナスとなっており、チップ先端角度が鈍角であると言える。
【0024】
また、
図3A乃至
図3Cに示すように、カッタフェイスの中央部とも言えるセンターシャフト30におけるフラットな蓋板37の表面には、第1カッタ面板16aと第3カッタ面板16cとを、直径線状に(一文字状に)連続する取付台38を介して、後述するセンタービット39とその両側に位置して第1カッタ面板16a側に2個、第3カッタ面板16c側に3個の蓋板取付用の支障物切削ビット40が装着されると共に、この取付台38を挟んで第2カッタ面板16bと第4カッタ面板16dとを概ね直径線状に(一文字状に)連続する、分断された二つの取付台41a,41bを介して、第2カッタ面板16b側に3個、第4カッタ面板16d側に2個の蓋板取付用の支障物切削ビット40が装着される。尚、前記蓋板37上のセンタービット39と支障物切削ビット40とでセンターカッタが構成されると共に、支障物切削ビット40が取付範囲を拡大して設けた支障物切削ビットである。
【0025】
前記蓋板取付用の支障物切削ビット40は、スポーク取付用の支障物切削ビット33や面板取付用の支障物切削ビット34と同様に、チップ先端角度が鈍角に形成される。また、スポーク取付用の支障物切削ビット33、面板取付用の支障物切削ビット34及び蓋板取付用の支障物切削ビット40は、カッタヘッド15の半径方向に隣り合うパスのものとラップさせて配置し、ビット間に隙間をあけないようになっている(
図2参照)。
【0026】
前記取付台38の取付面は、前記センタービット39が取り付けられる平面部を境に外方下がりの傾斜面で形成されると共に、分断された二つの取付台41a,41bの取付面もそれぞれ外方下がりの傾斜面で形成されて、先細りの円錐状に傾斜されるカッタフェイスの形状に沿わされている。
【0027】
また、前記取付台38の両側面と分断された二つの取付台41a,41bの分断面との間には、所定の隙間G1,G2が形成され、この隙間G1,G2が土砂攪拌用の流路を形成している。即ち、蓋板37の表面において第1カッタ面板16a側と第3カッタ面板16c側とを連通する二つの流路が形成され、この流路(隙間G1,G2)により、従来のフィッシュテールカッタによる土砂攪拌機能を保持しているのである。
【0028】
また、蓋板37の表面には、第1カッタ面板16aと第4カッタ面板16dとの間に位置して加泥剤を注入するための注入孔42が開口形成される。この注入孔42にはセンターシャフト30内の配管ブロック43やバルクヘッド12におけるロータリジョイント44等の配管経路を介して図示しない加泥剤供給源から加泥剤が供給されるようになっている。尚、
図3B及び
図3C中45は蓋板37の補強板である。また、第2及び第4カッタスポーク17b,17dの表面にも加泥剤を注入するための注入孔42が開口形成され(
図2参照)、図示しない配管経路を介して加泥剤供給源から加泥剤が供給されるようになっている。
【0029】
前記センターカッタにおけるセンタービット39は、先端面が円錐状に突出された例えば150mm程度の小径柱状(図示例では円柱状)の本体部39aに、先端面から外周面にかけて複数の超硬チップ39bを周方向にとびとびに埋設してなるものである。そして、本実施例では、
図3B及び
図3Cに示すように、センタービット39の高さが前述した取付範囲を拡大して設けた支障物切削ビット40の最も高いビットの面一以下に設定されている。図示例では、センタービット39が当該センタービット39に最も近接する支障物切削ビット40より寸法hだけ低くなっている。
【0030】
従って、このように構成された泥土圧シールド掘削機10にてトンネルを掘削するには、
図1に示すように、駆動モータ19によりカッタヘッド15を回転させながら複数のシールドジャッキ24を伸長すると、既設のセグメントSへの押し付け反力によって掘削機本体11が前進し、センタービット39と蓋板取付用の各支障物切削ビット40と土砂用切削ビット32とスポーク取付用の支障物切削ビット33と面板取付用の支障物切削ビット34とが、前方に位置するものから順に、前方の地盤(切羽)を掘削する。
【0031】
そして、掘削された土砂はチャンバ22内に取り込まれ、スクリューコンベヤ21によって外部に排出される。その後、シールドジャッキ24の何れか一つを縮み方向に作動して既設のセグメントSとの間に空所を形成し、エレクタ装置27によってこの空所に新しいセグメントSを装着する。この作業の繰り返しによってトンネルを連続的に掘削形成していくことになる。尚、掘削された土砂がチャンバ22内に取り込まれる際、従来のフィッシュテールカッタを廃止した蓋板37の表面上(即ち、カッタフェイスの中央部)においては、第1カッタ面板16a側と第3カッタ面板16c側とを連通する二つの流路G1,G2が取付台38の両側に形成されているので、従来のフィッシュテールカッタ同様、土砂の攪拌機能が良好に発揮されてチャンバ22内に掘削土砂が円滑に取り込まれる。
【0032】
この掘削途中で、H型鋼や鋼矢板(シートパイル)等の支障物に遭遇した際には、上述したようなカッタヘッド15の形状とセンターカッタにおけるセンタービット39及び支障物切削ビット40並びに他のカッタフェイスにおける支障物切削ビット33,34の形状及び配置で効果的に支障物を切削することができる。
【0033】
即ち、カッタ面板16及びカッタスポーク17が円錐状に傾斜する(例えば5°〜10°)傾斜型のカッタヘッド15により、カッタヘッドに傾斜が無いものに比べて、支障物切削範囲が小さくなり、切削抵抗の低減が図れるのである。
【0034】
また、各支障物切削ビット40,33,34におけるチップ先端角度が鈍角であると共に、切削方向(カッタヘッド15の周方向)に対称な山型状や円弧状に形成されて一つのビットでカッタヘッド15の左,右両回転に対応可能となっているので、一般的な土砂用切削ビット32に比べて、切削効率や耐久性が高い。
【0035】
また、各支障物切削ビット40,33,34は、カッタヘッド15の半径方向に隣り合うパスのものとラップさせて配置し、ビット間に隙間をあけないようになっているので、支障物を可及的に小片で切削でき、切削片を迅速かつ円滑にチャンバ22内に取り込み、スクリュコンベア21で排出することができる。
【0036】
このようにして本実施例によれば、フィッシュテールカッタを廃止した蓋板37の表面上(即ち、センターカッタ)にも複数の支障物切削ビット40を配置すると共に、前記フィッシュテールカッタと同様に、第1カッタ面板16a側と第3カッタ面板16c側とを連通する二つの流路G1,G2を形成してカッタフェイスの中央部における土砂攪拌機能を保持したので、立坑の施工や大掛かりな削孔装置を必要とせずに、トンネル掘削機自体で支障物切削を行ないつつトンネルを掘削することができる。
【0037】
そして、本実施例では、センターカッタにおけるセンタービット39が当該センタービット39に最も近接する支障物切削ビット40より寸法hだけ低くなっているので、切削性能にあまり寄与しないセンタービット39に代えて切削性能に大きく寄与する各支障物切削ビット40が先行して切削を開始するので、センターカッタの切削(掘削)性能が高められる。
【0038】
これにより、前述した掘進先の支障物に限らずトンネル構築時に施工される発進立坑や到達立坑におけるRC等の通常の封止壁(非ノムスト壁)をも直接掘削可能となり、工期の短縮と施工費の削減が図れる。
【0039】
図8に発進立坑の例を示す。これによれば、掘削機本体11とカッタヘッド15とからなる泥土圧シールド掘削機10が発進立坑50におけるRC等の通常の封止壁50a内のシールド受け台53上に設置される。
図8中54は仮組のセグメントSを介して設けられる反力受けである。
【0040】
この状態からカッタヘッド15を回転させながら掘削機本体11を、封止壁50aの内壁に設置した坑口コンクリート51内をエントランスパッキン52を介して推進させることで、カッタヘッド15で直接封止壁50aを切削(掘削)して発進することができるのである。