(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記鋼管の周方向での加熱位置は、前記継手から最も離れた周位置を基準位置とし、前記継手が、前記鋼管の周方向での複数箇所に設けられ、且つ、周方向に隣合う前記継手の溶接の入熱量が異なる場合は、両継手の溶接の入熱量に応じて、前記基準位置を入熱量の少ない前記継手側に補正する請求項1又は2に記載の平面度矯正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から、鋼管の両側面に溶接によって継手を取り付けると、それに伴う鋼管矢板の熱収縮の影響の一つが、長さ方向の収縮歪みとして管端面に表れることが知られている。
具体的には、管端面における継手取り付き延長線上の近傍箇所が、他の部分よりも凹む傾向があり、その結果、管端面の平面度が悪くなる。
因みに、平面度とは、管端面に基準平板を当てた時の隙間の最大値をいい、大きい値であるほど、管端面の凹凸が激しく平面度が悪いことを表す。
そして、管端面での平面度が悪いことによる弊害は、別の鋼管を軸芯方向に継ぎ足す状態で配置して、両者を溶接する溶接継手を使用するような場合、接合面どうしの間隔にバラツキが大きくなることが挙げられ、鋼管どうしの接合不良の原因になる危険性があって好ましくない。また、鋼管どうしの接合部に機械式継手を使用するような場合には、正常に嵌合連結できなくなる危険性もある。
従って、従来の鋼管矢板技術は、上述のようにリブ部材を鋼管内周部に固定することで、継手溶接箇所に作用する管長方向の収縮力を、リブ部材を介して他の周部分に分散させ、大きな凹みが生じるのを防止し、管端面の平面度を小さくするものである。
しかし、このような従来の鋼管矢板技術によれば、リブ部材を鋼管の内周部に配置しながらの溶接作業を実施する必要があり、手間とコストがかかる問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、手間とコストを抑えながら、鋼管矢板の端面の平面度を改善できる鋼管矢板技術を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、鋼管の外周面に、隣接管との継手が長手方向に沿って溶接されている鋼管矢板を対象として、前記鋼管矢板の端面の平面度を矯正する平面度矯正方法であって、前記鋼管の全周の内、前記継手が設けられていない周範囲の少なくとも一部を加熱することで、加熱後の温度低下に伴う素材の収縮を起こさせて、前記鋼管矢板の端面の平面度を向上させるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記鋼管の全周の内、前記継手が設けられていない周範囲の少なくとも一部を加熱するから、加熱後の温度低下に伴う素材の収縮を、継手が設けられていない周範囲にも起こさせることができ、継手が設けられている周範囲と、継手が設けられていない周範囲との間での、端面凹みの落差を少なくでき、その結果、管端面の平面度を向上させることができる。
しかも、その作業そのものは、上述のとおり、鋼管の全周の内、継手が設けられていない周範囲の少なくとも一部を加熱するだけであるから、簡単に、且つ、迅速に平面度矯正を行うことができる。
更には、従来方法に比べて、鋼管の内空部にリブ部材等の余分な部材を配置する必要がないから、コストダウンを図ることが可能であると共に、鋼管の内空部に、例えば、骨材やコンクリート等を打設するような場合にも、その障害になる存在が無いから、スムースに作業を進めることができる。
また、鋼管の全周の内、継手が設けられている周範囲を加熱しないから、その部分における熱収縮を助長する虞が無く、継手が設けられていない周範囲の加熱によって生じる素材の収縮による顕著な効果によって管端面の平面度の向上を図ることができる。
更には、鋼管と継手との溶接箇所の加熱による品質低下を来す虞もない。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記鋼管の加熱位置は、前記周範囲の内で、前記鋼管の長手方向での中央部より平面度矯正対象の鋼管端部側の範囲に設定するところにある。
【0009】
鋼管の加熱による熱収縮の影響は、加熱位置の周囲に広がるに連れて減衰する傾向があるから、加熱位置は、鋼管の中央部よりは自由端部に近い方が、端部への影響が大きく表れる。
本発明の第2の特徴構成によれば、前記鋼管の加熱位置は、前記周範囲の内で、前記鋼管の長手方向での中央部より平面度矯正対象の鋼管端部側の範囲に設定するから、中央部を加熱するのに比べて、熱収縮の作用を端面矯正に大きく活かすことができ、管端面の平面度の向上を図り易くなる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記鋼管の周方向での加熱位置は、前記継手から最も離れた周位置を基準位置とし、前記継手が、前記鋼管の周方向での複数箇所に設けられ、且つ、周方向に隣合う前記継手の溶接の入熱量が異なる場合は、両継手の溶接の入熱量に応じて、前記基準位置を入熱量の少ない前記継手側に補正するところにある。
【0011】
継手を溶接で鋼管に取り付けるに伴って発生する鋼管の管軸芯方向の収縮量は、溶接時の入熱量や溶着金属量が大きい程、大きくなる傾向を見出した。また、その収縮量(管軸芯方向の収縮量)の鋼管の周方向での分布は、継手を溶接した位置が最大となり、継手から最も離れた周位置が最小となる傾向を見出した。
従って、鋼管矢板の端面の平面度を向上させるためには、前記収縮量の最小(又は0)となる周範囲を、継手位置での前記収縮量に近付けるように収縮させることで叶えることができる。
本発明の第3の特徴構成によれば、継手から最も離れた周位置を加熱の基準位置とするから、前記収縮量の最小の周範囲を加熱収縮させることができ、鋼管矢板の端面の平面度を向上させることができる。これは、継手が一つのみ取り付けられている場合や、複数の継手が取り付けられていても、周方向に隣合う継手の溶接の入熱量が同様の場合に有効である。
また、周方向に隣合う継手の溶接の入熱量が異なる場合は、両継手の溶接の入熱量に応じて、加熱の基準位置を入熱量の少ない継手側に補正するから、その結果、前記収縮量の最小となる周範囲を加熱収縮させて、より効率よく、且つ、精度よく鋼管矢板の平面度の向上を図ることができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記鋼管の加熱温度は、前記鋼管の素材の機械的性質が、加熱前後において変化しない範囲での上限側に設定するところにある。
【0013】
鋼管の加熱温度は、高ければ高い程、温度降下後の熱収縮が大きくなるから、管端面の平面度の向上を目差す上からは、高温加熱が好ましい。
一方、加熱温度が高すぎれば、鋼管素材の機械的性質が変化する危険性があり、鋼管矢板全体とした所定の物性が確保できなくなる虞がある。
本発明の第4の特徴構成によれば、機械的性質が変化しない範囲での上限温度で鋼管を加熱するから、鋼管矢板素材の所定の機械的性質を維持できながら、その範囲内で最大限の熱収縮を生じさせて、効率のよい平面度矯正を行うことができる。
【0014】
鋼管の外周面に、隣接管との継手が長手方向に沿って溶接されている鋼管矢板であって、前記鋼管の全周の内、前記継手が設けられていない周範囲の少なくとも一部に、加熱後の温度低下に伴う素材の収縮を起こさせて、前記鋼管の端面の平面度を向上させている被加熱部が設けてあ
る構成によれば、被加熱部がもたらす鋼管素材の収縮によって、鋼管の端面において、継手が設けられていない周範囲の鋼管長手方向での変位傾向を、継手が設けられている周範囲での変位傾向に合わせることができる。その結果、管端面の平面度が向上し、長手方向に連結する別の鋼管矢板との密着性が良くなり、鋼管矢板どうしの接続性能を良好に維持できる。
しかも、被加熱部の加熱作業そのものは、上述のとおり、鋼管の全周の内、継手が設けられていない周範囲の少なくとも一部を加熱するだけであるから、簡単に、且つ、迅速に平面度矯正を行うことができ、コストアップの抑制を図ることができる。
更には、従来方法に比べて、鋼管の内空部にリブ部材等の余分な部材を配置する必要がないから、コストダウンを図ることが可能であると共に、鋼管の内空部に、例えば、骨材やコンクリート等を打設するような場合にも、その障害になる存在が無いから、スムースに作業を進めることができる。
また、鋼管の全周の内、継手が設けられている周範囲を加熱しないから、その部分における熱収縮を助長する虞が無く、継手が設けられていない周範囲の加熱によって生じる素材の収縮による顕著な効果によって管端面の平面度の向上を図ることができる。
更には、鋼管と継手との溶接箇所の加熱による品質低下を来す虞もない。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0017】
図1は、本発明の鋼管矢板技術の対象となる鋼管矢板Pの一実施品を示している。
鋼管矢板Pは、鋼管1の両端部に、管軸芯方向に連結する別の鋼管1との機械継手部材2をそれぞれ溶接によって取り付け、鋼管1の両側面のほぼ全長にわたって、並設させる別の鋼管矢板との矢板継手部材(継手に相当)3をそれぞれ溶接によって取り付けて構成してある。
【0018】
そして、図には示さないが、矢板継手部材3どうしが嵌合するように鋼管矢板Pを設置対象部に順次建て込んで、横に連続した鋼管矢板群によって土留め壁や護岸等の仕切壁を構成することができる。また、深さ方向に関しては、凹型機械継手部材2Aと凸型機械継手部材2Bとを嵌合連結して複数の鋼管矢板Pを継ぎ足すことで、所定の長さ寸法を確保することができる。
【0019】
前記機械継手部材2は、
図2に示すように、鋼管1の一端部(例えば、下端部)に設けられるリング状の凹型機械継手部材2Aと、鋼管1の他端部(例えば、上端部)に設けられて凹型機械式継手部材2Aと嵌合連結可能な構造をもつリング状の凸型機械継手部材2Bとがある。
【0020】
これら凹型機械継手部材2Aと凸型機械継手部材2Bとは、管径方向の内外に重なる状態で嵌合できるように構成してあり、互いの摺接面で対向する状態にそれぞれ周溝4,5が構成してある。これら両周溝4,5に亘って介在可能なキー部材6が設けてあり、このキー部材6を両周溝4,5に亘って位置させることで、凹型機械継手部材2Aと凸型機械継手部材2Bとの管軸芯方向への相対移動を規制するロック状態にすることができ、対応する鋼管1どうしを抜け止め状態に連結することができる。
【0021】
このように、機械継手部材2どうしは、前記キー部材6が、両周溝4,5にわたって嵌合できるように比較的高い寸法精度を備えた仕上げに構成してある。
従って、鋼管1への前記矢板継手部材3の溶接によって熱収縮が生じると、機械継手部材2どうしの寸法精度も低下し、キー部材6を前記ロック状態に位置させることが不可能となる虞がある。
これを防止する意味から、管端面の平面度が低下しないように維持する必要がある。
【0022】
前記矢板継手部材3は、本実施形態においては、
図3に示すように、管軸芯方向視での断面形状が「C」字形状、又は、「T」字形状の鋼材で構成してあるものを、鋼管1の全周面の内、筒軸芯周りの中心角として基準点Kから90度の位置と、270度の位置とにそれぞれ溶接によって取り付けてあるものを例に挙げて説明している。図においては、基準点Kが、上に位置する状態を基準としている。但し、ここでいう基準点Kからの角度は、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2B側から凹型機械継手部材2A側に向かって、筒軸芯周りでの右周りの角度としている。
矢板継手部材3の取付位置や取付箇所数は、これに限るものではなく、鋼管矢板Pが使用される現場状況に応じて、例えば、90度の位置のみの場合や(
図15(a)参照)、90度の位置と180度(又は360度)の位置の場合や(
図15(b)参照)、90度の位置と180度の位置と270度の位置の場合(
図15(c)参照)等、任意の位置と任意の取付箇所数に設定されることもある。また、取付位置の基準点Kからの中心角は、上述した90度や、180度や、270度等の90の倍数に限るものではなく、例えば、80度や、100度等、90の倍数以外の任意の角度の位置に設定してあってもよい。
【0023】
〔第1実施形態〕
両端部に機械継手部材2を溶接によって取り付けた鋼管1の両側部(前記90度、270度の位置)に、前記矢板継手部材3をそれぞれ溶接によって取り付けると、熱が下がるに伴って鋼材の熱収縮が生じ、その影響が、鋼管矢板Pの端面の凹みとして表れる。
この計測例として、直径1000mm、肉厚12mm、長さ5000mmの鋼管矢板Pでの凸型機械継手部材2Bの端面2aで、
図4に示すとおり、計測用の仮想基準平面Hから継手部材端面2aまでの離間寸法Sを割り出した。その値は、
図5に示すとおりである。
また、矢板継手部材3は、二ヵ所とも断面形状が「C」字形状の鋼材を用いている。
この結果によれば、矢板継手部材3が取り付けられている周範囲、即ち、90度の位置と、270度の位置との近傍において、他の周範囲よりも凹みが大きく表れており、特に、270度の位置においては、最大値0.77mmが観測されている。前記仮想基準平面Hと継手部材端面2aとの離間寸法Sの最大値が平面度に相当するから、当該例においては、平面度Smaxは、0.77mmを示した。
【0024】
第1実施形態での鋼管矢板Pの端面の平面度を矯正する方法は、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2Bが固着されている方の端部(鋼管矢板の他端部他)において、
図3、
図4に示すように、鋼管1の全周の内、矢板継手部材3が設けられていない周範囲の少なくとも一部をガス炎によって加熱することで、加熱後の温度低下に伴う素材の収縮を起こさせて、鋼管矢板Pの他端部の端面の平面度を向上させる方法をとった。
詳しくは、鋼管矢板Pの他端部から821mmの位置において、鋼管1の全周面の内、前記基準点Kから0度の位置、及び、180度の位置をそれぞれ中心として196mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の加熱エリアEを設定し(
図6参照)、700℃の温度で5分かけて加熱した。即ち、加熱エリアEの中心は、鋼管矢板Pの周方向において、二つの矢板継手部材3が取り付けられている位置間の中央部に設定されている。
更に詳しくは、196mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の加熱エリアEにおける加熱ポイントを、
図6に示すように、等ピッチで3行5列の15ポイントに設定し、1列の3つのポイントを、合計1分かけて加熱し、順次、次の列に移動し、合計で5分の加熱を行った。
また、加熱温度の700℃に関しては、鋼管1の素材(例えば、SKY400や、SKY490等)としての機械的性質が、加熱前後において変化しない範囲での上限側に設定されており、また、鋼管1の加熱位置は、鋼管1の長手方向での中央部より鋼管端部側(鋼管矢板の他端部側)の範囲に設定されている。
【0025】
以上の平面度矯正方法を実施することで、鋼管矢板Pの端面の平面度は、
図5に示すように、改善されている。
即ち、270度の位置に見られる前記離間寸法Sの最大値が、0.48mmという結果となり、平面度Smaxが、0.77mmから0.48mmに矯正されたことになる。
この矯正の結果、機械継手部材2どうしの嵌合、及び、キー部材6によるロック状態への切換が可能となり、鋼管矢板Pどうしの連結が可能となった。
【0026】
〔第2実施形態〕
先に説明した第1実施形態と共通する事項に関しては、説明を割愛し、異なる事項を主に説明する。
この実施形態では、長さ12000mmの鋼管矢板を用いている。
また、矢板継手部材3は、二ヵ所とも断面形状が「C」字形状の鋼材を用いている。
矢板継手部材3の溶接が完了した時点では、第1実施形態と同様に、基準点Kから90度の位置と、270度の位置との近傍において、他の周範囲よりも端面での凹みが大きく表れている。
【0027】
鋼管矢板Pの端面の平面度矯正方法は、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2Bが固着されている方の端部(他端部)と、凹型機械継手部材2Aが固着されている方の端部(一端部)との両方において、
図3、
図4に示すように、鋼管1の全周の内、矢板継手部材3が設けられていない周範囲の少なくとも一部をガス炎によって加熱することで、加熱後の温度低下に伴う素材の収縮を起こさせて、鋼管矢板Pの両端部の端面の平面度を向上させる方法をとった。
詳しくは、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2B側では、端部から815mmの位置において、鋼管1の全周面の内、前記基準点Kから0度の位置、及び、180度の位置をそれぞれ中心として154mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の加熱エリアEを設定して(
図9参照)、700℃の温度で5分かけて加熱した。
また、鋼管矢板Pの凹型機械継手部材2A側では、端部から759mmの位置において、鋼管1の全周面の内、前記基準点Kから0度の位置、及び、180度の位置をそれぞれ中心として157mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の加熱エリアEを設定して(
図9参照)、700°Cの温度で5分かけて加熱した。
【0028】
以上の平面度矯正方法を実施することで、鋼管矢板Pの端面の平面度は、凸型機械継手部材2B側は
図7、凹型機械継手部材2A側は
図8に示すように、改善されている。
即ち、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2B側では、平面度Smaxが、1.05mmから0.65mmに矯正され、鋼管矢板Pの凹型機械継手部材2A側では、平面度Smaxが、1.02mmから0.65mmに矯正されている。
この矯正の結果、機械継手部材2どうしの嵌合、及び、キー部材6によるロック状態への切換が可能となり、鋼管矢板Pどうしの連結が可能となった。
【0029】
〔第3実施形態〕
先に説明した第1実施形態と共通する事項に関しては、説明を割愛し、異なる事項を主に説明する。
この実施形態では、長さ12000mmの鋼管矢板を用いている。
また、矢板継手部材3は、二ヵ所の内の一方は、断面形状が「C」字形状の鋼材で、他方は、断面形状が「T」字形状の鋼材を用いている。
矢板継手部材3の溶接が完了した時点では、第1実施形態と同様に、基準点Kから90度の位置と、270度の位置との近傍において、他の周範囲よりも端面の凹みが大きく表れている。
【0030】
鋼管矢板Pの端面の平面度矯正方法は、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2Bが固着されている方の端部(他端部)と、凹型機械継手部材2Aが固着されている方の端部(一端部)との両方において、
図3、
図4に示すように、鋼管1の全周の内、矢板継手部材3が設けられていない周範囲の少なくとも一部をガス炎によって加熱することで、加熱後の温度低下に伴う素材の収縮を起こさせて、鋼管矢板Pの両端部の端面の平面度を向上させる方法をとった。但し、鋼管矢板Pの凹型機械継手部材2A側に関しては、鋼管矢板Pの長手方向に間隔をあけた二ヵ所に加熱エリアを設定している。
詳しくは、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2B側は、端部から715mmの位置において、鋼管1の全周面の内、前記基準点Kから0度の位置、及び、180度の位置をそれぞれ中心として190mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の加熱エリアEを設定して(
図12参照)、700℃の温度で5分かけて加熱した。
また、鋼管矢板Pの凹型機械継手部材2A側は、端部から715mmの位置と、端部から1630mmの位置において、鋼管1の全周面の内、前記基準点Kから0度の位置、及び、180度の位置をそれぞれ中心として加熱エリアEを設定して(
図12参照)、700°Cの温度で5分かけて加熱した。端部に近い加熱エリアEは190mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の範囲が設定され、端部から遠い加熱エリアEは180mm(鋼管長さ方向範囲)×314mm(鋼管周方向範囲)の範囲が設定されている。
また、各加熱エリアEの加熱順は、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2B側の加熱エリアEから、鋼管矢板Pの凹型機械継手部材2A側の端部に近い加熱エリアE、端部から遠い加熱エリアEの順で実施された。
【0031】
以上の平面度矯正方法を実施することで、鋼管矢板Pの端面の平面度は、
図10、
図11に示すように、改善されている。
即ち、三ヵ所の加熱エリアEでの加熱後において、鋼管矢板Pの凸型機械継手部材2B側では、平面度Smaxが、1.22mmから0.79mmに矯正され、鋼管矢板Pの凹型機械継手部材2A側では、平面度Smaxが、1.09mmから0.68mmに矯正されている。
尚、図には、凸型機械継手部材2B側の加熱エリアEと、凹型機械継手部材2A側の端部に近い方の加熱エリアEとの両端二ヵ所のみでの加熱が終了した時点での平面度に関しても記載している。この時点での平面度Smaxは、凸型機械継手部材2B側においては、0.81mmを示し、凹型機械継手部材2A側においては、0.76mmを示している。
この結果によれば、凹型機械継手部材2A側の端部から遠い加熱エリアEにおける加熱の効果が、凸型機械継手部材2B側においても反映されていることが解る。
これらの矯正の結果、機械継手部材2どうしの嵌合、及び、キー部材6によるロック状態への切換が可能となり、鋼管矢板Pどうしの連結が可能となった。
【0032】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0033】
〈1〉 鋼管矢板Pは、先の実施形態で説明した寸法や形状に限るものではなく、公知の鋼管矢板の全般がその対象となる。
例えば、両端部に機械継手部材2を設けた鋼管矢板Pに限るものではなく、例えば、機械継手部材2を設けずに鋼管1の端部をそのまま溶接継手として使用できる構成であってもよい。
また、矢板継手部材3は、例えば、
図13に示すように、断面形状が「C」字形状の鋼材や(
図13(a)、
図13(b)参照)、断面形状が「T」字形状の鋼材や(
図13(b)、
図13(c)参照)、断面形状が「L」字形状の2つの鋼材を使用するものや(
図13(c)参照)、それらの組合せによる構成であってもよい。
但し、矢板継手部材3の形状が異なるに伴って、鋼管1との溶接に使用する溶接量に差が生じるから、溶接部への入熱量にも差が生じる。「C」字形状の継手部材が、もっとも入熱量が大きく、次が「L」字形状の継手部材となり、「T」字形状の継手部材がこれらの中では最小の入熱量となる。
その結果、熱収縮量にも差が生まれるから、平面度の低下の度合も異なる虞があり、平面度矯正を実施する上では、これらの条件差を考慮して対処する必要がある。
特に、
図14に示すように、一本の鋼管矢板Pに、形状の異なる矢板継手部材3を混在させる場合、加熱エリアEを設定する上で、鋼管1の周方向での中心位置(基準位置に相当)を、入熱量の少ない矢板継手部材3側に寄せることが好ましい。これは、矢板継手部材3を取り付けた位置での鋼管矢板Pの収縮量(管軸芯方向)は、入熱量が大きい程、収縮量も大きくなることに起因している。
即ち、加熱によって平面度の矯正を図る上で、より効率よく行うためには、端面の管軸芯方向の突出量が大きいエリア(収縮量の少ないエリア)を中心として加熱収縮させることが重要であるから、そのエリアを加熱エリアEとして設定することが好ましい。従って、
図14に示すような、入熱量の異なる二つの矢板継手部材3が固着された鋼管矢板Pにおいては、両矢板継手部材3間の中央位置(継手から最も離れた周位置に相当)より、入熱量の少ない矢板継手部材3が取り付けられた側に寄った箇所に収縮量の少ないエリアが分布するから、そのエリアを加熱エリアEとして設定することが好ましいことになる。
また、入熱量の差に応じた位置の微調整を行うことも好ましい。
【0034】
〈2〉 また、鋼管矢板Pにおける矢板継手部材3の取付位置や取付箇所数も、任意に変更することができる。
図15に、矢板継手部材3の位置と、加熱エリアEとの関係を例示している。
【0035】
〈3〉 鋼管矢板Pの端面平面度矯正の為の加熱エリアEの設定は、先の実施形態で説明した鋼管矢板Pの他端部側のみに限るものではなく、例えば、両端部側共、実施するものであってもよい。
更には、加熱エリアEは、鋼管1の外周面に設定することに限らず、鋼管1の内周面に設定するものであってもよい。
また、加熱エリアEの寸法設定、先の実施形態で説明したものに限定されるものではない。
加熱エリアEの形状は、先の実施形態で説明した管周方向に細長形状のものに限らず、例えば、
図16(a)に示すように、管軸芯方向に沿って細長形状であったり、
図16(b)に示すように、管端部側ほど管周方向の寸法が大きな形状であってもよい。
また、鋼管1がスパイラル鋼管で構成してある場合は、
図16(c)に示すように、スパイラル状の溶接線に沿った細長形状を設定してもよい。
また、
図17(a)に示すように、対角線方向が管軸芯方向に交差する矩形形状の加熱エリアEであってもよい。
また、加熱エリアEは、管周方向に複数箇所設けたり、
図17(b)に示すように、管軸芯方向に複数箇所設けるものであってもよい。
要するに、鋼管1の全周の内、矢板継手部材3が設けられていない周範囲の少なくとも一部を加熱するものであればよい。
〈4〉 加熱エリアEについては、次のような数値限定を設定することができる。
鋼管矢板Pの端面から加熱エリアEまでの範囲は、加熱による平面度矯正への貢献度が期待できる値として、鋼管1の外径の3倍以内の数値が挙げられる。また、より好ましくは鋼管1の外径の2倍以内の数値が挙げられる。一方、加熱による歪みの悪影響が出ない値として鋼管矢板Pの端面から30mm以上の数値が挙げられる。また、より好ましくは、150mm以上の数値が挙げられる。
管周方向の長さは、加熱による平面度矯正への貢献度が期待できる値として、管軸芯周りの中心角で20度以上の数値が挙げられる。また、より好ましくは中心角で30度以上の数値が挙げられる。一方、矢板継手部材3に熱変形を与えない値として、管軸芯周りの中心角で85度以下の数値が挙げられる。また、より好ましくは中心角で80度以下の数値が挙げられる。
管軸芯方向の長さは、加熱による平面度矯正への貢献度が期待できる値として、80mm以上の数値が挙げられる。また、より好ましくは100mm以上の数値が挙げられる。一方、良好な加熱作業性を確保できる値として、500mm以下の数値が挙げられる。また、より好ましくは300mm以下の数値が挙げられる。
加熱エリアEの面積は、加熱による平面度矯正への貢献度が期待できる値として、5000mm2以上の数値が挙げられる。また、より好ましくは25000mm2以上の数値が挙げられる。一方、良好な加熱作業性を確保できる値として、3000000mm2以下の数値が挙げられる。また、より好ましくは2500000mm2以下の数値が挙げられる。
【0036】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。