(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、予めワークに適切なテンションを付与しておき、その状態のワークをレーザ加工機に取付けてレーザ加工を行う要望がある。このような要望に対応する場合、レーザ加工機に対して別体としてワークを固定するワーク固定治具を設けて、予めこのワーク固定治具で固定されたワークにテンションを付与しておく。その後、ワークをワーク固定治具ごとレーザ加工機に取付けて、レーザ加工を行うことになる。
【0006】
しかし、このようなワーク固定治具を用いる場合、以下の問題点がある。即ち、ワーク固定治具に固定された薄板のワークにおいてレーザ加工が進むと、ワークに加工された孔や開口が多くなり、ワークに弛みが生じる。特に、枠加工のように、固定されたワークに対してレーザ加工でほぼ全域に亘って切り抜いて大きな開口穴を形成すると、開口穴の一部に垂れが生じる。このようなワークの弛みや垂れが生じると、焦点レンズとワークとの距離(ワークディスタンス)が変動して、レーザ加工の精度が安定せず、未切断になる場合がある。
【0007】
これに対して、ワークの弛みや垂れによるワークディスタンスの変動を防止するために、ワークの下面を支持することが考えられる。しかしながら、仮にワークの下面全体を支持する支持機構をワーク固定治具に設けた場合には、支持機構が大きくて、ワーク固定治具の重量が大きくなる。この結果、ワーク固定治具をレーザ加工機に取付ける際の持ち運びが大変になる。また、仮にワークの下面の一部を支持する支持体を設け、且つこの支持体をワークの平面方向に移動させるアクチュエータを設ける場合であっても、アクチュエータを新たに追加する必要があり、ワーク固定治具が高価なものになる。
【0008】
そこで、本発明は、上記した課題を解決すべく、安価且つ簡易な構成でワークの弛みや垂れによるワークディスタンスの変動を防止できるワーク固定治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るワーク固定治具は、レーザ加工用薄板であるワークを引っ張ることによりテンションを付与した状態で固定し、レーザ加工機に取付けられてレーザ加工されるものであって、前記ワークの引張方向に延びて互いに平行な第1,第2縦フレームと、前記ワークの引張方向及び前記ワークの平面に垂直な方向の両方向に直交する方向に延びて前記ワークの一端側を固定する固定側横フレームと、前記固定側横フレームと平行に延びて前記ワークの他端側を把持した状態で引っ張る可動側横フレームと、前記固定側横フレームと平行に延びて前記ワークのうち前記レーザ加工機の加工ヘッドと対向する部分の下面を支持するワーク支持部材と、前記加工ヘッドにおける前記ワークの引張方向の動きに追従して前記ワーク支持部材を前記ワークの引張方向に移動させる追従移動機構とを備えていることを特徴とする。
【0010】
この場合には、ワーク支持部材が加工ヘッドと対向する部分の下面を支持しているため、レーザ加工が進んでワークに加工された孔や開口が多くなっても、ワークに弛みや垂れが生じない。このため、ワークディスタンスの変動を防止でき、レーザ加工の精度を安定させることができる。また、ワーク支持部材は、加工ヘッドにおけるワークの引張方向の動きに追従して移動するため、ワークの下面全体ではなく、少なくとも加工ヘッドと対向する部分の下面を支持していれば良い。このため、ワークの下面を支持する機構が大きくならない。更に、ワーク支持部材を移動させるアクチュエータを設ける必要がない。従って、ワーク固定治具を安価且つ簡易に構成することができる。
【0011】
また、本発明に係るワーク固定治具において、前記追従移動機構は、前記第1,第2縦フレームに沿ってスライド可能に取付けられていて前記ワーク支持部材の両端部が取付けられた各スライド部材と、前記固定側横フレームと平行に延びて且つ前記加工ヘッドを前記ワークの引張方向に挟むように配置されて前記加工ヘッドが当接することにより前記各スライド部材をスライドさせる一対の加工ヘッド追従部材とを有することが好ましい。
【0012】
この場合には、加工ヘッドがワークの引張方向に移動する際に、加工ヘッドと加工ヘッド追従部材とが当接して、各スライド部材が第1,第2フレームに沿ってスライドする。これにより、各スライド部材に両端部が取付られたワーク支持部材は、加工ヘッドの動きに追従してワークの引張方向に移動する。こうして、加工ヘッドと加工ヘッド追従部材との当接を利用してワーク支持部材を移動させるため、加工ヘッド(レーザ加工機)とワーク支持部材との間で連結部材を設ける必要がなく、より簡易にワーク固定治具を構成することができる。
【0013】
また、本発明に係るワーク固定治具において、前記ワーク支持部材は、前記ワークの下面を支持する部分の断面が円形になっていて、前記ワーク支持部材の両端部は、そのワーク支持部材を回転可能に支持する回転支持機構を介して前記各スライド部材に取付けられていることが好ましい。
【0014】
この場合には、各スライド部材がワークの引張方向に移動する際に、ワーク支持部材は、その両端部が回転支持機構を介して各スライド部材に取付けられているため、ワークの下面に対してほぼ線接触した状態で回転しながら加工ヘッドの動きに追従する。このため、ワーク支持部材とワークの下面との接触抵抗を低減でき、ワーク支持部材がワークの下面のバリを引きずらなくなり、ワークの下面に生じる擦り傷をほとんど無くすことができる。従って、製作されたワークの品質の低下を防止できると共に、擦り傷に対して行っていた研磨作業の時間を大幅に減らすことができ、ワークの生産効率を上げることができる。
【0015】
また、本発明に係るワーク固定治具において、前記スライド部材には、前記ワーク支持部材を前記ワークの下面に向けて付勢する付勢部材が設けられていることが好ましい。
【0016】
この場合には、付勢部材がワーク支持部材をワークの下面に向けて常に付勢し続けるため、ワーク支持部材によって支持されているワークの下面近傍が常に張っている状態を維持することができる。この結果、レーザ加工が進んでワークに加工された孔や開口が多くなっても、レーザの焦点がずれ難く、レーザ加工の精度を安定させることができる。
【0017】
また、本発明に係るワーク固定治具において、前記ワーク支持部材は、互いに平行になるように一対設けられていて、前記加工ヘッドから照射されるレーザ光に対して前記ワークの引張方向に所定量離れて配置されていることが好ましい。
【0018】
この場合には、ワーク支持部材が、互いに平行になるように一対設けられているため、加工ヘッドと対向する部分の下面を支持し易い。また、ワーク支持部材がレーザ光に対して離れて配置されているため、レーザ加工によって生じた溶融物が一対のワーク支持部材の間に形成された空間に落ちて、ワーク支持部材に付着することを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安価且つ簡易な構成でワークの弛みや垂れによるワークディスタンスの変動を防止できるワーク固定治具が提供されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るワーク固定治具の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は第1実施形態のワーク固定治具10の平面図であり、
図2は
図1のA−A線に沿った断面図である。ワーク固定治具10は、レーザ加工用薄板であるワークWを引っ張ることにより、テンションを付与した状態で固定するものである。このワーク固定治具10は、ワークWを固定した状態でレーザ加工機1(
図3参照)へ持ち運ばれて、レーザ加工機1に取付けられるようになっている。
【0022】
ワークWは、電子部品の基板に半田を塗布する際にマスキングを行うためのステンレス板であり、板厚が0.03mm〜0.5mmの矩形状の薄板である。ワークWの長手方向(
図1の上下方向)の長さは約600mmであり、ワークWの長手方向と直交する方向(
図1の左右方向)の長さは約480mmである。このワークWにレーザ加工機1からレーザ光線が照射されることによって、貫通孔が形成される。
【0023】
ワーク固定治具10は、
図1及び
図2に示すように、その外形が矩形状に形成された枠体であり、ワークWの引張方向(以下、適宜「縦方向」と呼ぶ)に延びる第1縦フレーム11及び第2縦フレーム12と、ワークWの引張方向及びワークWの平面に垂直な方向の両方向に直交する方向(以下、適宜「横方向」と呼ぶ)に延びる第1横フレーム13及び第2横フレーム14とを有している。なお、
図1には、ワークWの引張方向(縦方向)が、矢印で示されている。また、ワーク固定治具10は、第1横フレーム13の近くに横方向に延びる固定側横フレーム15を有し、第2横フレーム14の近くに横方向に延びる可動側横フレーム16を有している。
【0024】
第1,第2縦フレーム11,12は互いに平行になっていて、両端部が第1,第2横フレーム13,14にボルトを介して連結されている。第1,第2縦フレーム11,12の長手方向の長さは約660mmである。第1,第2縦フレーム11,12には、後述するスライド部材41及び可動側横フレーム16を縦方向にスライドさせるためのガイドレール11a,12aが形成されている。第1,第2横フレーム13,14は互いに平行になっていて、その長手方向の長さは約500mmである。
【0025】
固定側横フレーム15は、ワークWの一端側Waを把持するクランププレートであり、その位置が固定されている。可動側横フレーム16は、ワークWの他端側Wbを把持するクランププレートであり、両端にガイド部材16aを有している。このガイド部材16aは、第1,第2縦フレーム11,12のガイドレール11a,12aに沿って摺動可能に取付けられている。こうして、可動側横フレーム16は、ガイド部材16aがガイドレール11a,12aに沿って摺動することによって、縦方向にスライド可能である。また、可動側横フレーム16は、第2横フレーム14によって第1,第2フレーム11,12の
図1下端から脱落しないようになっている。
【0026】
ここで、このワーク固定治具10においては、
図1の左右方向に対称の位置に配置されるネジ機構20を用いて、ワークWに適度なテンションが付与されている。これは、レーザ加工中にワークWに弛み、又は断裂や伸びが生じるのを防止するためである。各ネジ機構20は、第2横フレーム14を貫通し可動側横フレーム16に螺着されるネジ部21と、このネジ部21を回転させる回転部22とで構成されている。以下、ワークWに適度なテンションを付与する手順について説明する。
【0027】
先ず、
図1に示すように、ワークWの一端側Waを固定側横フレーム15に把持させるとともに、ワークWの他端側Wbを可動側横フレーム16に把持させることで、ワークWを位置決め固定する。次に、ワーク固定治具10にネジ機構20を取付けて、回転部22を回転させて、可動側横フレーム16を
図1の下側に引っ張る。このとき、ワークWに適度なテンションが付与するように、回転部22の回転量を調節する。
【0028】
そして、ワークWに適度なテンションが付与された状態で、ボルト17で可動側横フレーム16と第1,第2縦フレーム11,12とを連結する。その後、ネジ機構20をワーク固定治具10から取り外す。こうして、引っ張られたワークWが元の状態に戻ろうとして、可動側横フレーム16が
図1の上側に移動しようとしても、その移動がボルト17によって規制される。つまり、このワーク固定治具10において、ワークWに適度なテンションが付与された状態を維持しつつ、レーザ加工機1に持ち運ぶことができる。
【0029】
次に、ワークWをレーザ加工するレーザ加工機1の概略的な構成について説明する。
図3は、レーザ加工機1の一部を切断した部分断面図である。また、
図4は、
図3に示したワークWを下面WU側から見たときの図である。上述したようにワークWを固定したワーク固定治具10は、レーザ加工機1の保持装置(図示省略)に取付けられて、ワークWに対してレーザ加工が行われる。レーザ加工機1は、
図3に示すように、加工ヘッド30を備えている。
【0030】
加工ヘッド30は、レーザ光を照射する装置であり、上方からレーザ光が導入されるヘッド本体31と、ヘッド本体31内に配置される凸レンズである集点レンズ32と、集点レンズ32と同軸的に配置される円錐筒状のノズル33とを有している。この加工ヘッド30は、図示しないガントリー等の変位機構部等によってワークWの平面方向(縦方向及び横方向)に移動可能であり、ワークWの平面方向に移動しながらワークWを切断するようになっている。なお、
図3及び
図4では、ワークWの引張方向が矢印で示されている。
【0031】
ところで、本実施形態のワーク固定治具10においては、ワークWの下面WUを支持することによって、ワークWの弛みや垂れを防止して、集点レンズ32とワークWとの距離、つまりワークディスタンスが変動することを防止している。以下、ワーク固定治具10がワークWの下面WUを支持する構成について、詳細に説明する。
【0032】
ワーク固定治具10は、
図1〜
図4に示すように、横方向に延びる2本のワーク支持部材40と、このワーク支持部材40の両端部が連結(固定)されている各スライド部材41と、横方向に延びて加工ヘッド30を縦方向に挟むように配置された一対の加工ヘッド追従部材42とを備えている。
【0033】
各ワーク支持部材40は、
図4に示すように、ワークWのうち少なくとも加工ヘッド30と対向する部分の下面(裏面)WUを支持するためのものである。これらワーク支持部材40は、ワークWの下面WU側に配置されていて、
図1に示すように、ワークWの横方向の全体を支持できるようにワークWの横方向の長さよりも長くなっている。一対のワーク支持部材40は、加工ヘッド30のノズル33の先端を挟むように、加工ヘッド30から照射されるレーザ光に対して縦方向に所定量離れて平行に配置されている。これは、レーザ加工によって生じた溶融物(ドロス)が、一対のワーク支持部材40の間に形成された空間に落ちて、ワーク支持部材40に付着することを防止するためである。また、ワーク支持部材40が2本設けられているのは、1本に比べて、加工ヘッド30と対向するワークWの下面WUを支持し易いためである。なお、
図3に示すように、ワーク支持部材40は丸棒状であるが、ワーク支持部材40の形状は適宜変更可能であり、断面が四角又は上側が平面状の三角であっても良い。また、ワーク支持部材40はプレート状であっても良い。
【0034】
各スライド部材41は、第1,第2縦フレーム11,12に沿って縦方向にスライドするためのものである。各スライド部材41は、
図3及び
図4に示すように、各ワーク支持部材40の両端部が連結した連結体41aと、第1,第2縦フレーム11,12のガイドレール11a,12aに取付けられている移動体41bとを有している。連結体41aは略直方体形状に形成されていて、上面に各加工ヘッド追従部材42が固定されている。移動体41bは、図示しないボールの転がりを利用してガイドレール11a,12aに沿って直線運動できるようになっている。即ち、これら移動体41bとガイドレール11a,12aとがリニアガイド機構を形成している。
【0035】
各加工ヘッド追従部材42は、加工ヘッド30が当接することによって各スライド部材41をスライドさせるためのものである。これら一対の加工ヘッド追従部材42は、
図1に示すように、各スライド部材41の間で横方向に架け渡されている。また、
図3に示すように、縦方向(引張方向)において加工ヘッド30と各加工ヘッド追従部材42との間には、僅かな隙間X1が形成されている。これにより、加工ヘッド30は、横方向に移動する際には、各加工ヘッド追従部材42に当接しないようになっている。しかし、加工ヘッド30は、縦方向に移動する際には、その横方向の位置に拘わらず各加工ヘッド追従部材42に当接するようになっている。これら加工ヘッド追従部材42は、横方向の両端から下方に延びて、下端が各スライド部材41の連結体41aの上面に固定されている。
【0036】
図3に示すように、一対の加工ヘッド追従部材42は、加工ヘッド30の中心線O1に対して縦方向に対称の位置に配置されている。各加工ヘッド追従部材42と加工ヘッド30との間の縦方向の隙間X1は、約1mmで僅かなものであって、加工ヘッド30と各加工ヘッド追従部材42との当接部分には、当接が加工精度に影響を与えないように、衝撃を低減させる緩衝部材(図示省略)が取付けられている。なお、加工ヘッド追従部材42は丸棒状であるが、加工ヘッド追従部材42の形状は適宜変更可能であり、断面が四角であっても良い。また、加工ヘッド追従部材42がプレート状であっても良い。本実施形態において、各加工ヘッド追従部材42と各スライド部材41とが、本発明の追従移動機構に相当する。
【0037】
次に、第1実施形態のワーク固定治具10の作用効果について説明する。ワーク固定治具10は、ワークWに適切なテンションが付与された状態でレーザ加工機1に取付けられて、レーザ加工が行われる。このとき、加工ヘッド30が横方向(
図1の左右方向)に移動しても、ワーク支持部材40の長さはワークWの横方向の長さより長いため、ワーク支持部材40が常に加工ヘッド30と対向する部分の下面WU(
図4参照)を支持することができる。また、加工ヘッド30が縦方向(
図1の上下方向)に移動すると、加工ヘッド30が加工ヘッド追従部材42に当接し、各スライド部材41が第1,第2フレーム11,12に沿って移動する。これにより、各ワーク支持部材40は、加工ヘッド30の動きに追従して縦方向に移動して、加工ヘッド30と対向する部分の下面WUを支持することができる。
【0038】
こうして、加工ヘッド30の動きに拘わらず、加工ヘッド30と対向する部分の下面WUを支持することができ、レーザ加工が進んでワークWに加工された孔や開口が多くなっても、ワークWに弛みや垂れが生じない。このため、ワークディスタンスの変動を防止でき、レーザ加工の精度を安定させることができる。そして、このワーク固定治具10によれば、ワーク支持部材40が加工ヘッド30の縦方向の動きに追従して移動するため、ワークWの下面WU全体を支持する必要がなく、ワークWの下面WUを支持する機構が大きくならない。更に、ワーク支持部材40を移動させるアクチュエータを設ける必要がない。従って、ワーク固定治具10を安価且つ簡易に構成することができる。
【0039】
また、第1実施形態のワーク固定治具10によれば、上述したように、加工ヘッド30と加工ヘッド追従部材42との当接を利用してワーク支持部材40を移動させる。このため、加工ヘッド30(レーザ加工機1)とワーク支持部材40との間で連結部材を設ける必要がなく、より簡易にワーク固定治具10を構成できるようになっている。
【0040】
また、第1実施形態のワーク固定治具10によれば、ワーク支持部材40が、
図4に示すように、互いに平行になるように一対設けられているため、加工ヘッド30と対向する部分の下面WUを支持し易い。また、ワーク支持部材40が照射されるレーザ光に対して離れて配置されているため、レーザ加工によって生じた溶融物が一対のワーク支持部材40の間に形成された空間に落ちて、ワーク支持部材40に付着することを防止できる。
【0041】
次に、第2実施形態のワーク固定治具10Aついて説明する。上述した第1実施形態のワーク固定治具10においては、各ワーク支持部材40の両端部が各スライド部材41に固定されている。このため、各スライド部材41及び各ワーク支持部材40が縦方向(
図1の上下方向)に移動した際に、各ワーク支持部材40とワークWの下面WUとの接触抵抗が大きくなり、各ワーク支持部材40がワークWの下面WUのバリを巻き込みながら引きずって、ワークWの下面WUに擦り傷が多く発生するおそれがある。このように擦り傷が生じると、製作されたワークの品質が低下するだけでなく、研磨作業を行って擦り傷を目立たなくする作業が必要になってくる。そして、擦り傷が多く生じた場合には、研磨作業を行う時間が多く必要になって、ワークの生産効率が低下する原因になる。そこで、第2実施形態のワーク固定治具10Aでは、上記した問題に対処すべく以下のように構成されている。
【0042】
図5は、第2実施形態のワーク固定治具10Aの平面図である。
図5に示す第2実施形態のワーク固定治具10Aと、
図1に示す第1実施形態のワーク固定治具10において、第1,第2縦フレーム11,12、第1,第2横フレーム13,14、固定側横フレーム15、可動側横フレーム16、加工ヘッド追従部材42は、同様の構成であるため、同一符号を付してその説明を省略する。一方、第2実施形態のワーク固定治具10Aでは、ワーク支持部材50とスライド部材60の構成が第1実施形態の構成と異なり、更に回転支持機構70が新たに設けられているため、ワーク支持部材50、スライド部材60、回転支持機構70の構成について説明する。
【0043】
図6は、
図5に示したワーク支持部材50及び回転支持機構70の部分断面図である。ワーク支持部材50は、
図5及び
図6に示すように、横方向(
図5の左右方向)に延びる中空円筒状のパイプであり、丸孔状の貫通孔50aを有している。そして、ワーク支持部材50の外形の断面は円形であり、その外径が10mmになっている。このワーク支持部材50は、ワークWの下面WUの弛みを考慮しなければ、ワークWの下面WUに対してほぼ線接触した(面接触でない)状態で支持するようになっていて、両端部50b,50cがそれぞれ回転支持機構70を介して各スライド部材60に取付けられている。
【0044】
回転支持機構70は、ワーク支持部材50を回転可能に支持するためのものであり、
図6に示すように、軸パイプ71と、フランジ付ベアリング72と、カラーパイプ73と、六角穴付ボルト74と、ワッシャ75とを備えて構成されている。なお、フランジ付ベアリング72と、カラーパイプ73と、六角穴付ボルト74と、ワッシャ75はそれぞれ2つずつ設けられている
【0045】
軸パイプ71は、ワーク支持部材50より長く横方向に延びる中空円筒状のパイプであり、丸穴状の貫通孔71aを有している。この軸パイプ71は、ワーク支持部材50の貫通孔50aを同軸的に貫通していて、両端部71b,71cがワーク支持部材50の両端部50b,50cから飛び出ている。そして、ワーク支持部材50の両端部50b,50cは、各フランジ付ベアリング72によって軸パイプ71に対して回転可能に組付けられている。
【0046】
各フランジ付ベアリング72は、ワーク支持部材50の貫通孔50aの両端に組付けられていて、フランジによってワーク支持部材50の両端の側面に引っ掛かっている。なお、ワーク支持部材50の一端部50b側の構成と、ワーク支持部材50の他端部50c側の構成とは同様であるため、以下においてワーク支持部材50の一端部50b側の構成についてのみ説明する。
【0047】
カラーパイプ73は、フランジ付ベアリング72が貫通孔50aから抜け落ちることを防止するためのものである。このカラーパイプ73は、中空円筒状のパイプであり、丸孔状の貫通孔73aを有していて、軸パイプ71の一端部71bの外周に組付けられている。六角穴付ボルト74は、カラーパイプ73が軸パイプ71の一端部71bの外周から抜け落ちることを防止するためのものである。この六角穴付ボルト74は、ワッシャ75を用いてカラーパイプ73の貫通孔73aに取付けられている。
【0048】
次に、ワーク支持部材50の一端部50bが回転支持機構70を介してスライド部材60に取付けられている状態について、
図7を参照しながら説明する。
図7は、
図5に示したB部分の拡大図である。
図7に示すように、カラーパイプ73は、スライド部材60の連結体60aに形成されている貫通孔60cを貫通していて、その状態で押え板61がボルト62を用いて上方からスライド部材60の連結体60aに取付けられている。このようにカラーパイプ73がスライド部材60に取付けられることで、ワーク支持部材50が回転支持機構70によってスライド部材60に対して回転可能になっている。
【0049】
続いて、ワーク支持部材50がワークWの下面WUに向けて付勢されている状態について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、
図5のC−C線に沿った断面図である。
図8に示すように、スライド部材60の連結体60aには、鉛直方向に延びる2つの取付孔60dが形成されていて、各取付孔60dの中にコイルバネ63が配置されている。そして、コイルバネ63は、カラーパイプ73と取付孔60dの底部分との間で僅かに圧縮していて、カラーパイプ73(軸パイプ71の一端部71b)を上方に向けて付勢している。これにより、ワーク支持部材50がワークWの下面WUに向けて僅かに付勢されるようになっている。本実施形態において、コイルバネ63が本発明の「付勢部材」に相当するが、付勢部材は適宜変更可能であり、例えば皿バネであっても良い。なお、スライド部材60のその他の構成は、第1実施形態のスライド部材41の構成と同様であるため、60番代の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
第2実施形態の作用効果について説明する。第2実施形態のワーク固定治具10Aによれば、第1実施形態のワーク固定治具10と同様、レーザ加工する際に、加工ヘッド30が縦方向(
図5の上下方向)に移動すると、加工ヘッド30が加工ヘッド追従部材42に当接し、各スライド部材60が第1,第2フレーム11,12に沿って移動する。これにより、各ワーク支持部材40は、加工ヘッド30の動きに追従して縦方向に移動して、加工ヘッド30と対向する部分の下面WUを支持することができる。この結果、ワークWに弛みや垂れが生じることを防止でき、レーザ加工の精度を安定させることができる。
【0051】
更に、第2実施形態のワーク固定治具10Aによれば、各スライド部材60が縦方向に移動する際に、各ワーク支持部材50は、その両端部50b,50cが回転支持機構70を介して各スライド部材60に取付けられているため、ワークWの下面WUに対してほぼ線接触した状態で回転しながら加工ヘッド30の動きに追従する。このため、第1実施形態に比べて、ワーク支持部材50とワークWの下面WUとの接触抵抗を低減でき、ワーク支持部材50がワークWの下面WUのバリを引きずらなくなり、ワークWの下面WUに生じる擦り傷をほとんど無くすことができる。従って、製作されたワークWの品質の低下を防止できると共に、擦り傷に対して行っていた研磨作業の時間を大幅に減らすことができ、ワークWの生産効率を上げることができる。加えて、ワーク支持部材50とワークWの下面WUとの接触抵抗を低減できるため、各スライド部材60、各加工ヘッド追従部材42、加工ヘッド30の縦方向の動きを円滑にすることができる。
【0052】
また、第2実施形態のワーク固定治具10Aによれば、
図8に示すように、コイルバネ63がワーク支持部材50をワークWの下面WUに向けて常に付勢し続けるため、ワーク支持部材50に支持されているワークWの下面WU近傍が常に張っている状態を維持することができる。この結果、レーザ加工が進んでワークWに加工された孔や開口が多くなっても、レーザの焦点がずれにくく、レーザ加工の精度を安定させることができる。
【0053】
以上、本発明に係るワーク固定治具の各実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、加工ヘッド30と加工ヘッド追従部材42とが直接当接することによって、ワーク支持部材40,50が加工ヘッド30における縦方向の動きに追従できるように構成した。しかしながら、ワーク支持部材40が加工ヘッド30を移動させるガントリー等の変異機構部等に連結されることによって、加工ヘッド30における縦方向の動きに追従できるように構成しても良い。
【0054】
また、第1実施形態及び第2実施形態において、2本のワーク支持部材40,50によってワークWの下面WUを支持したが、ワーク支持部材40,50の数は2本に限定されるものではなく適宜変更可能である。従って、3本以上のワーク支持部材40,50であれば、ワークWの下面Wをより安定的に支持することができる。
【0055】
また、第1実施形態において、ネジ機構20を用いてワークWに適度なテンションを付与したが、ワークWにテンションを付与する方法は適宜変更可能であり、例えばエアシリンダ等のアクチュエータを用いてワークWに適度なテンションを付与しても良い。
【0056】
また、第2実施形態において、外径が10mmであるワーク支持部材50を用いたが、ワーク支持部材の外径は適宜変更可能である。ここで、外径が10mmであるワーク支持部材50を用いた場合と、例えば外径が8mmであるワーク支持部材を用いた場合とを比較して説明しておく。外径が10mmであるワーク支持部材50は、外径が8mmであるワーク支持部材に比べて、真直度が大きい、即ち軸中心に対するずれが少ないというメリットがある。更に、外径が10mmであるワーク支持部材50を用いた場合には、外径が8mmであるワーク支持部材を用いた場合に比べて、ワークWの下面WUを支持する部分の曲率が小さいことによって、弛み又は垂れが僅かに生じたワークWの下面WUに対する接触面積が大きくなり、ワークWの下面WUをより安定的に支持することができる。一方、外径が8mmであるワーク支持部材を用いた場合には、外径が10mmであるワーク支持部材50を用いた場合に比べて、ワーク支持部材自体の重量が小さくなり、各スライド部材60、各加工ヘッド追従部材42、加工ヘッド30の動きをより円滑にすることができる。