【実施例】
【0026】
つぎに本発明の実施例によるプリンターの開閉カバー開閉装置を
図1ないし
図5にもとづき説明する。ただし、
図6と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、上記プリンターたとえば携帯式プリンター20の斜視図であって、携帯式プリンター20は、サーマルプリンターとしてこれを構成してあり、前記プリンターハウジング2および前記開閉カバー3を有する。
図2は、携帯式プリンター20の開閉カバー3をプリンターハウジング2に対して開放した状態の斜視図、
図3は、携帯式プリンター20の概略縦断面図であって、とくに
図3に示すように、携帯式プリンター20はさらに、前記ラベル連続体9(印字用紙)の供給部21と、位置検出部22と、印字部23と、充電バッテリー24のバッテリー収納室25と、アダプター接続端子26と、入力部27と、表示部28と、制御部29と、電源スイッチ30と、開閉カバー開閉装置31と、を有する。
【0027】
プリンターハウジング2は、作業者が携帯可能な大きさを有し、
図3中、上方にベルト掛け部32を設けて、肩掛けベルト33により携帯式プリンター20全体を作業者の肩から吊り下げ可能としている。もちろん、作業者の腰に装着可能とする構成とすることもできる。
さらにプリンターハウジング2には、
図3中、下方隅部に位置した前記カバー軸17のまわりに上記開閉カバー3を開閉可能に設けて、供給部21へのラベル連続体9の収納および携帯式プリンター20への装填を可能としている。
【0028】
ラベル連続体9は、帯状の台紙34上に複数枚のラベル片35を仮着した構成である。ラベル片35は、いわゆるサーマルラベルであって、その表面に感熱発色層を塗工して、印字可能としてある。
供給部21は、上記ラベル連続体9をロール状に巻いてその内部に収納し、位置検出部22および印字部23方向に帯状に繰り出し可能としている。
なお、台紙34の裏面側には、所定ピッチで位置検出用マーク36をあらかじめ印刷してある。
【0029】
位置検出部22は、開閉カバー3側に取り付けた位置検出センサー37を有し、ラベル連続体9の裏面側に位置する位置検出用マーク36を検出して印字部23に対するラベル連続体9(ラベル片35)の相対位置を検出可能とする。
【0030】
印字部23は、プリンターハウジング2側に取り付けた前記サーマルヘッド7と、開閉カバー3側に取り付けた前記プラテンローラー8と、サーマルヘッド7をプラテンローラー8方向に付勢する前記ヘッド付勢スプリング11と、駆動モーター38と、を有する。
プラテンローラー8の前記プラテンローラー軸13の一方側端部にはプラテンローラーギア39を設けるとともに、駆動モーター38の回転を伝達するための連結ギア40を設け、開閉カバー3のプリンターハウジング2への閉鎖によって、プラテンローラーギア39と連結ギア40とを係合させ、駆動モーター38によりプラテンローラー8を回転駆動可能としている。
【0031】
すなわち、サーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間にラベル連続体9を挟持して、駆動モーター38によりプラテンローラー8を回転駆動するとともに、制御部29からサーマルヘッド7に供給した印字データに応じてサーマルヘッド7の発熱素子7Aを発熱させ、ラベル連続体9(ラベル片35)にサーマル印字を行う。
【0032】
充電バッテリー24は、バッテリー収納室25に収脱可能であって、印字部23(サーマルヘッド7および駆動モーター38など)はもちろん、携帯式プリンター20全体に電力を供給する。
【0033】
アダプター接続端子26は、プリンターハウジング2にこれを設け、外部電源(図示せず)に接続して充電バッテリー24に充電するためのACアダプター41を接続する。
【0034】
入力部27は、携帯式プリンター20に必要なデータないしコマンドを入力可能とする。
表示部28は、入力部27により入力された情報およびその他必要な情報を表示可能とする。
【0035】
制御部29は、電子基板などにこれを設けてあり、上述した位置検出部22、印字部23、充電バッテリー24、アダプター接続端子26、入力部27、表示部28および電源スイッチ30との間でデータおよびコマンドの授受を行うとともに、これらを適宜制御する。
【0036】
なお携帯式プリンター20においては、落下などによる衝撃に対する耐性を確保するために、とくにプリンターハウジング2の表面側に位置している入力部27、表示部28、電源スイッチ30、開閉カバー開閉装置31、開閉カバー3などを配置している領域面をプリンターハウジング2の他の領域面(図示の例では、プリンターハウジング2の稜縁部)から凹ませるとともに、当該他の領域面にエラストマーその他の衝撃吸収性材料によるクッション材42を設けている。
また、直方体形状のプリンターハウジング2における他の稜縁部にも同様に、クッション材42を設けて携帯式プリンター20全体の耐衝撃性を確保している。
【0037】
つぎに、プリンターハウジング2には開放用押しボタン43を設け、本実施例にかかる開閉カバー開閉装置31は、この開放用押しボタン43の部分にこれを設けている。
図4は、開放用押しボタン43(開閉カバー開閉装置31)部分の要部断面図、
図5は、開閉カバー開閉装置31の斜視図である。
開閉カバー開閉装置31において、開放用押しボタン43は、ボタン本体44と、ボタン本体44の周縁部の全周をめぐってこれに形成した防水用密着面45と、ボタン本体44に一体に形成したそのボタン軸46および弾性体としてのボタン付勢スプリング47と、ボタン本体44の裏面側に突出形成した押込み用突出部48と、を有する。
【0038】
ボタン本体44は、
図1および
図2に示したようにプリンターハウジング2の表面側に露出する部分であって、携帯式プリンター20を使用する作業者がプリンターハウジング2の内方(
図4中、右方から左方)に向かって押し込む部分である。
【0039】
防水用密着面45は、ボタン本体44より相対的にプリンターハウジング2の内方側に凹んだ状態でこれを形成してプリンターハウジング2の内側に入り込むことができるとともに、プリンターハウジング2の内壁面2Aに密着可能な平面領域である。
ただし、防水用密着面45は、とくに
図5および
図2(点線)に示すように、サーマルヘッド7の長さ方向(ラベル連続体9の幅方向)に沿ってより長く庇のように延びており、サーマルヘッド7の発熱素子7A(
図5)のすべてを覆うことができるようにしている。
【0040】
左右一対のボタン軸46は、プリンターハウジング2の内部ブラケット(図示せず)にこれを軸着し、ボタン本体44の押込み操作により、開放用押しボタン43全体をプリンターハウジング2に対して回動可能としている。
【0041】
左右一対のボタン付勢スプリング47は、防水用密着面45と同一平面内で蛇行させて開放用押しボタン43の端部にこれを形成しており、ボタン本体44からボタン軸46をこえた部位に位置するそれぞれの端部に当接軸部49を起立させている。
とくに
図4に示すように、それぞれの当接軸部49がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接して、左右一対のボタン付勢スプリング47が撓むことにより、その付勢力を発揮して開放用押しボタン43の防水用密着面45をプリンターハウジング2の内壁面2Aに密着可能とする。
換言すれば、開放用押しボタン43のボタン軸46は、ボタン付勢スプリング47と防水用密着面45との間に位置してこれを設けて、防水用密着面45がプリンターハウジング2の内壁面2Aに密着させるように、ボタン付勢スプリング47が開放用押しボタン43を付勢可能としている。
なおボタン付勢スプリング47を蛇行して形成することにより、所定の付勢力を得るための必要な長さを狭い空間内で得ることが可能となり、かつ、ボタン本体44と一体形成することにより、とくに小型軽量に製造する必要があるこの種携帯式プリンター20に有利である。
【0042】
図4(1)、(2)、(3)は、開放用押しボタン43のボタン本体44およびボタン付勢スプリング47を模式的に描いた平面説明図である。ただし、ボタン付勢スプリング47の可撓性は、それぞれ同程度とする。
図4(1)は、ボタン付勢スプリング47の当接軸部49がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接する場合の説明図であって、ボタン付勢スプリング47による付勢力は、後述する
図4(2)および
図4(3)の場合よりも小さい。
図4(2)は、ボタン付勢スプリング47に当接軸部49を形成せずに、そのスプリング先端部分47A(図中、ハッチングで示している部分)がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接する場合(あるいは、ボタン付勢スプリング47に当接軸部49を形成してもプリンターハウジング2の内壁面2Aに係合凹部(図示せず)を形成して、当接軸部49がこの係合凹部に係合する場合)の説明図であって、ボタン付勢スプリング47による付勢力は、中程度である(
図4(1)の場合よりも強く、
図4(3)の場合よりも弱い)。
図4(3)は、ボタン付勢スプリング47に当接軸部49を形成せずに、ボタン付勢スプリング47全体(図中、ハッチングで示している部分)がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接する場合の説明図であって、ボタン付勢スプリング47による付勢力は、
図4(2)および
図4(3)の場合よりも大きい。
すなわち、プリンターハウジング2の内壁面2Aに対するボタン付勢スプリング47の付勢態勢ないしは当接領域を選択することにより、防水用密着面35に要請される防水機能の程度に応じて必要な付勢力を適宜設計することができる。
【0043】
とくに
図4に示すように、開放用押しボタン43の裏面側(プリンターハウジング2の内方側)には、前記サーマルヘッド7を保持しているカバーロック50を前記ヘッド軸10のまわりに回動可能に設けている。
カバーロック50には、その上縁部中央に位置して、押込み用突出部48に対向する部位に当接傾斜プレート51を一体形成して設けるとともに、サーマルヘッド7を介して反対側に断面ほぼ半円弧状の左右一対の前記プラテンローラーロック係合部12を形成している。
なお、カバーロック50の当接傾斜プレート51は、開放用押しボタン43の裏面側に対して接近する方向に傾斜しており、換言すれば、開放用押しボタン43のプリンターハウジング2に対する当初の押込み方向(プリンターハウジング2の内方に向かって直交する方向)に対して傾斜している。
したがって、開放用押しボタン43(押込み用突出部48)からカバーロック50の当接傾斜プレート51に作用してヘッド軸10まわりのカバーロック50の回動操作に働く分力を比較的大きくすることができ、開放用押しボタン43への操作力自体を比較的少ないものとすることができる。
【0044】
プラテンローラーロック係合部12には、プラテンローラー8の左右一対の前記ロックピン14が係脱可能である。ロックピン14がプラテンローラーロック係合部12に係合した状態で、プラテンローラー8がサーマルヘッド7に所定押圧力(印字圧力)で当接可能であり、その間に挟持するラベル連続体9への印字が可能な状態となる。
【0045】
ボタン本体44の裏面側に位置する押込み用突出部48は、このカバーロック50の当接傾斜プレート51に対向しており、ボタン付勢スプリング47の付勢力に抗したボタン軸46まわりの開放用押しボタン43の
図4中、時計方向(第1の回動方向)の回動により、押込み用突出部48が当接傾斜プレート51を押圧し、さらにヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗してヘッド軸10まわりにカバーロック50をサーマルヘッド7とともに、
図4中、反時計方向(第1の回動方向とは反対方向の第2の回動方向)に回動させる。
したがって、プラテンローラー8のロックピン14がカバーロック50のプラテンローラーロック係合部12から離脱した状態となり、サーマルヘッド7およびプラテンローラー8とを互いに離反させ、その間にラベル連続体9を装填可能となる。
かくして、開放用押しボタン43の回動により、当接傾斜プレート51を介してカバーロック50をプラテンローラー8から離反可能としている。
【0046】
また、プラテンローラーロック係合部12の上方端部には、前記テーパー面16を形成してあり、開閉カバー3の閉鎖作動時にプラテンローラー8のロックピン14がテーパー面16に当接したのち、プラテンローラーロック係合部12に係合しやすくしている。
【0047】
とくに
図4に示すように、開放用押しボタン43における防水用密着面45の下方側先端部は、用紙切断用端部52としてあり、用紙切断用端部52がサーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間から発行口53に移送されてきたラベル連続体9に対向し、所定の部位でラベル連続体9(台紙34、ラベル片35)を切断可能である。
なお、開放用押しボタン43(用紙切断用端部52)の材料としては、ラベル連続体9その他の印字用紙の種類に応じて、一般的には所定の剛性および弾性を有する合成樹脂材料を採用することができる。
【0048】
さらに、とくに
図3に示すように、当該携帯式プリンター20は、サーマルヘッド7がプラテンローラー8より上方に位置するようにこれを携帯可能であるとともに、とくに
図4に示すように、開放用押しボタン43の下方側先端部(用紙切断用端部52)は、プ開閉カバー3より外方側に位置している。
すなわち、用紙切断用端部52が開閉カバーの先端部2の外表面より、わずかに(
図4に示す間隔D)分だけ外方側に位置していることにより、雨天その他の時に開放用押しボタン43を伝って水滴Wが用紙切断用端部52に至っても、庇のように出ている用紙切断用端部52から開閉カバー3に触れることなく地上に垂れ落ちるのみであり、プリンターハウジング2内に侵入するおそれは軽減されている。
このような開閉カバー3の閉鎖状態においては、開閉カバー開閉装置31における開放用押しボタン43は、そのボタン本体44は外部に露出しているが、かつその開放操作自体は確保されているが、ボタン付勢スプリング47の付勢力により防水用密着面45がプリンターハウジング2の内壁面2Aに所定押圧力で密着しているため、この部分からの水の侵入を防止可能である。
【0049】
こうした構成の携帯式プリンター20の開閉カバー開閉装置31において、
図1に示す開閉カバー3の閉鎖状態から、
図2に示す開閉カバー3の開放状態にするには、ボタン付勢スプリング47(
図2、
図4)の付勢力に抗して開放用押しボタン43をプリンターハウジング2の内方に押し込む。
開放用押しボタン43の押込み操作により、押込み用突出部48がカバーロック50の当接傾斜プレート51を、ヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗してヘッド軸10まわりに、開放用押しボタン43の押込み用突出部48の回動移動に沿うように、
図4中、反時計方向に回動させ、プラテンローラーロック係合部12とロックピン14との係合を解除してプラテンローラー8を開閉カバー3とともに
図2の開放状態とし、サーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間にラベル連続体9を挿通装填可能とする。
この開放状態で供給部21内にロール状のラベル連続体9を収納し、開閉カバー3をプリンターハウジング2方向に閉鎖すればプラテンローラー8のロックピン14がカバーロック50のテーパー面16に当接する。ヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗して開閉カバー3(プラテンローラー8)をさらに閉鎖方向に押し込めば、ロックピン14がプラテンローラーロック係合部12に係合するに至り、開閉カバー3を閉鎖し、またサーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間にラベル連続体9を挟持して、これを押圧した状態とすることができる。
【0050】
かくして、開閉用押しボタン43による開閉カバー3の開放操作を比較的少ない力で行うことができ、開閉用押しボタン43やカバーロック50(当接傾斜プレート51)などの部品の摩耗や損傷を回避可能として、屋外での携帯式プリンター20の使用にあたっても操作の容易性を確保可能である。
もちろん、卓上型プリンターその他のプリンターにも本発明による開閉カバー開閉装置を採用することが可能である。
【0051】
さらにまた、上述の実施例においては、印字ヘッド(サーマルヘッド7)は、これをプリンターハウジング2に取り付け、プラテンローラー8は、これを開閉カバー3に取り付けているとともに、開放用押しボタン43は、プリンターハウジング2に対してこれを回動可能とし、印字ヘッド(サーマルヘッド7)は、これをカバーロック50に取り付けている構造を説明したが、本発明においては、プリンターの使用条件や使用形態に応じて、それぞれの部品ないし相対関係について任意の組み合わせを選択することにより設計の自由度を上げることができる。
たとえば、印字ヘッド(サーマルヘッド7)は、これを開閉カバー3に取り付け、プラテンローラー8は、これをプリンターハウジング2に取り付けることができる。
あるいは、開放用押しボタン43は、開閉カバー3に対してこれを回動可能とすることもできる。
さらに、プラテンローラー8は、これをカバーロック50に取り付けることもできる。