特許第6104663号(P6104663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104663
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】プリンター
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/13 20060101AFI20170316BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B41J29/13
   B41J3/36 T
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-63673(P2013-63673)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-188705(P2014-188705A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小原 健
【審査官】 小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−062597(JP,A)
【文献】 特開2004−276251(JP,A)
【文献】 特開2008−006675(JP,A)
【文献】 特開2004−195805(JP,A)
【文献】 特開2011−037058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/13
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンターハウジングと、
このプリンターハウジングに対して開閉する開閉カバーと、
前記プリンターハウジングあるいはこの開閉カバーのいずれか一方に取り付けるとともに、前記プリンターハウジングに装填される印字用紙に印字可能な印字ヘッドと、
前記開閉カバーあるいは前記プリンターハウジングのいずれか他方に取り付けるとともに、この印字ヘッドとの間に前記印字用紙を挟持して回転することにより前記印字用紙を移送可能なプラテンローラーと、
前記プラテンローラーまたは前記印字ヘッドを有するカバーロックと、
このプラテンローラーおよび前記印字ヘッドを互いに離反させるように操作する開放用押しボタンと、
前記開放用押しボタンに対向し、前記カバーロックに形成された当接傾斜プレートと、
を有し
前記開放用押しボタンを前記プリンターハウジングに対して回動可能とし、
前記開放用押しボタンの回動により、この当接傾斜プレートを介して前記印字ヘッドおよび前記プラテンローラーを互いに離反可能としたことを特徴とするプリンター。
【請求項2】
前記カバーロックの前記当接傾斜プレートは、前記開放用押しボタンの前記プリンターハウジングに対する当初の押込み方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1記載のプリンター。
【請求項3】
前記カバーロックの前記当接傾斜プレートの先端側が前記開放用押しボタンの裏面側に対して接近する方向に傾斜していることを特徴とする請求項1記載のプリンター。
【請求項4】
記開放用押しボタン第1の回動方向に回動可能であり
前記カバーロックは前記第1の回動方向とは反対方向の第2の回動方向に回動可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプリンター。
【請求項5】
前記開放用押しボタンは、前記プリンターハウジングの内方に向かって押し込み操作するボタン本体と、このボタン本体に一体に形成され、前記開放用押しボタンを回動可能に支持するボタン軸と、を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のプリンター。
【請求項6】
前記開放用押しボタンは、前記ボタン本体に一体に形成したボタン付勢スプリングと、を有することを特徴とする請求項5に記載のプリンター。
【請求項7】
前記印字ヘッドは、これを前記プリンターハウジングに取り付けられ、前記プラテンローラーは、前記開閉カバーに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のプリンター。
【請求項8】
前記印字ヘッドは、これを前記カバーロックに取り付けることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のプリンター。
【請求項9】
プリンターハウジングと、
このプリンターハウジングに対して開閉する開閉カバーと、
前記プリンターハウジング内に設けられ、 印字用紙に印字可能な印字ヘッドと、
前記開閉カバーに設けられ、前記印字ヘッドとの間に前記印字用紙を挟持して回転することにより前記印字用紙を移送可能なプラテンローラーと 、
前記印字ヘッドを保持し、前記プラテンローラーと係合および離脱可能なカバーロックと、
押し込み操作によって前記カバーロックを前記プラテンローラーから離脱させる開放用押しボタンと 、
前記カバーロックに形成され、前記開放用押しボタンに対向し、先端側が前記開放用押しボタンの裏面側に対して接近する方向に傾斜している当接傾斜プレートと 、を有し、
前記開放用押しボタンの押し込み操作により、前記当接傾斜プレートを介して前記カバーロックを前記プラテンローラーから離脱させることを特徴とするプリンター。
【請求項10】
前記開放用押しボタンは、押込み用突出部を有し
この押込み用突出部が前記カバーロックの前記当接傾斜プレートに対向していることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載のプリンター。
【請求項11】
前記カバーロックに設けたヘッド付勢スプリングにより前記印字ヘッドを前記プラテンローラーに所定印字圧で押圧可能としているとともに、
前記開放用押しボタンは、このヘッド付勢スプリングの付勢力に抗して前記カバーロックを回動させ、前記印字ヘッド前記プラテンローラーから離反可能としていることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のプリンター。
【請求項12】
前記開放用押しボタンは前記ハウジングの内方側で支持されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載のプリンター。
【請求項13】
前記開放用押しボタンには前記プリンターハウジングの内壁面に密着可能な防水用密着面が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のプリンター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンターの開閉カバー開閉装置にかかるもので、とくに開閉カバーを開閉する操作性を改善したプリンターの開閉カバー開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、卓上型プリンターや携帯式プリンターなど各種のプリンターに帯状のラベル連続体その他の印字用紙を装填するために、開閉カバーなどを開放して、そのプリンターハウジング内に印字用紙を収納する必要がある。
この開閉カバーなどの開放のために操作する開放用押しボタンを設けることが提案されている。
図6にもとづき概説する。
図6は、提案されている開閉カバー開閉装置を備えたプリンター(たとえば携帯式プリンター1)の要部概略断面図であって、携帯式プリンター1は、プリンターハウジング2と、開閉カバー3と、印字部4と、開閉用押しボタン5と、カバーロック6と、を有する。
【0003】
印字部4は、プリンターハウジング2に取り付けているサーマルヘッド7と、開閉カバー3に取り付けているプラテンローラー8と、を有する。
印字用紙(たとえばラベル連続体9など)をサーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間に所定印字圧力(押圧力)で挟持し、サーマルヘッド7の発熱素子7Aに印字データを供給するとともに、プラテンローラー8を回転駆動することにより、ラベル連続体9に印字し、携帯式プリンター1から外部に移送発行する。
【0004】
開閉用押しボタン5は、プリンターハウジング2の側面から内方に向かって直角方向に押し込み可能にこれを取り付けている。
【0005】
カバーロック6は、サーマルヘッド7を固定しているとともに、ヘッド軸10のまわりにこれを回動可能としてあり、ヘッド付勢スプリング11の付勢力によりサーマルヘッド7をプラテンローラー8方向に押圧している。
カバーロック6には、断面ほぼ半円弧状のプラテンローラーロック係合部12を形成し、プラテンローラー8のプラテンローラー軸13に取り付けたロックピン14を係脱可能としている。
また、カバーロック6には、被押圧プレート15を一体形成するとともに、プラテンローラーロック係合部12の近傍外周側にテーパー面16を形成している。
【0006】
このような構成において、開閉用押しボタン5をプリンターハウジング2の内方に向かって押し込むことにより、カバーロック6の被押圧プレート15を押圧し、ヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗してヘッド軸10まわりにカバーロック6およびサーマルヘッド7を図6中、反時計方向に回動させる。
カバーロック6の回動操作により、プラテンローラー8のロックピン14がカバーロック6のプラテンローラーロック係合部12から外れて、カバー軸17のまわりに開閉カバー3を開放回動させ、開閉カバー3とともにプラテンローラー8をサーマルヘッド7から離反させ、サーマルヘッド7とプラテンローラー8との間にラベル連続体9を装填可能となる。
【0007】
プラテンローラー8を開閉カバー3とともに閉鎖する際には、プラテンローラー8のロックピン14が、まずカバーロック6のテーパー面16に当接し、ヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗してさらに押し込むことにより、ロックピン14がプラテンローラーロック係合部12に係合して、サーマルヘッド7にプラテンローラー8を所定印字圧力で押圧することができる。
【0008】
しかしながら、開閉用押しボタン5による上述のような開閉カバー3の開放操作においては、カバーロック6の被押圧プレート15が開放用押しボタン5のプリンターハウジング2内方への押込み方向に直交するように位置しているため、開閉用押しボタン5によるカバーロック6のヘッド軸10まわりの回動操作に働く分力が比較的小さくて効率的ではない。
すなわち、開閉用押しボタン5による上述のような開閉カバー3の開放操作に、過剰ないしは無理な操作力を必要とするとともに、開閉用押しボタン5およびカバーロック6(被押圧プレート15)などの部品間の摩耗損傷や破損につながるという問題がある。
プリンターとして、その部品の損傷および破損を回避することは必須であり、とくに、出先で使用する携帯式プリンター1の作業者にとっては、開閉用押しボタン5の押込み操作を簡易に実行可能であることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−150858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、開閉用押しボタンの押込み操作を簡易に実行可能としたプリンターの開閉カバー開閉装置を提供することを課題とする。
【0011】
また本発明は、開閉用押しボタンやカバーロックなどの部品の摩耗や損傷を回避可能としたプリンターの開閉カバー開閉装置を提供することを課題とする。
【0012】
また本発明は、開閉用押しボタンによる開閉カバーの開放操作を比較的少ない力で実行可能としたプリンターの開閉カバー開閉装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、開閉用押しボタンを回動方式とすること、および被押圧プレートをカバーロックに対して傾斜して配置することに着目したもので、 プリンターハウジングと、このプリンターハウジングに対して開閉する開閉カバーと、上記プリンターハウジングあるいはこの開閉カバーのいずれか一方に取り付けるとともに、上記プリンターハウジングに装填される印字用紙に印字可能な印字ヘッドと、上記開閉カバーあるいは上記プリンターハウジングのいずれか他方に取り付けるとともに、この印字ヘッドとの間に上記印字用紙を挟持して回転することにより上記印字用紙を移送可能なプラテンローラーと、このプラテンローラーおよび上記印字ヘッドを互いに離反させるように操作する開放用押しボタンと、を有するプリンターの開閉カバー開閉装置であって、上記開放用押しボタンを上記プリンターハウジングあるいは上記開閉カバーのいずれか一方に対して回動可能とし、上記印字ヘッドあるいは上記プラテンローラーのいずれか一方を取り付けたカバーロックに当接傾斜プレートを一体形成して、この当接傾斜プレートを上記開放用押しボタンに対向させ、上記開放用押しボタンの回動により、この当接傾斜プレートを介して上記印字ヘッドおよび上記プラテンローラーを互いに離反可能としたことを特徴とするプリンターの開閉カバー開閉装置である。
【0014】
上記カバーロックの上記当接傾斜プレートは、上記開放用押しボタンの上記プリンターハウジングあるいは上記開閉カバーのいずれか一方に対する当初の押込み方向に対して傾斜していることができる。
【0015】
上記カバーロックの上記当接傾斜プレートは、上記開放用押しボタンの裏面側に対して接近する方向に傾斜していることができる。
【0016】
上記開放用押しボタンは、その裏面側に位置して押込み用突出部を形成しているとともに、この押込み用突出部が上記カバーロックの上記当接傾斜プレートに対向していることができる。
【0017】
上記カバーロックは、上記開放用押しボタンの第1の回動方向に対して、この第1の回動方向とは反対方向の第2の回動方向に回動することができる。
【0018】
上記開放用押しボタンは、上記プリンターハウジングあるいは上記開閉カバーのいずれか一方に向かって操作するボタン本体と、このボタン本体に一体に形成したそのボタン軸およびボタン付勢スプリングと、を有することができる。
【0019】
上記カバーロックに設けたヘッド付勢スプリングにより上記印字ヘッドを上記プラテンローラーに所定印字圧で押圧可能としているとともに、上記開放用押しボタンは、このヘッド付勢スプリングの付勢力に抗して上記カバーロックを回動させ、上記印字ヘッドおよび上記プラテンローラーを互いに離反可能としていることができる。
【0020】
上記印字ヘッドは、これを上記プリンターハウジングに取り付けるとともに、上記プラテンローラーは、これを上記開閉カバーに取り付けることができる。
【0021】
上記開放用押しボタンは、上記プリンターハウジングに対してこれを回動可能としていることができる。
【0022】
上記印字ヘッドは、これを上記カバーロックに取り付けることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるプリンターの開閉カバー開閉装置においては、開閉用押しボタンをプリンターハウジングあるいは開閉カバーに対して回動方式とするとともに、従来の被押圧プレートに代えて、開閉用押しボタンに対して傾斜する当接傾斜プレートを配置したので、開閉用押しボタンからの操作力がカバーロックの回動に容易に伝達されて、開閉用押しボタンの操作性を向上し、部品の摩耗や損傷を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例による開閉カバー開閉装置31を装備した携帯式プリンター20の斜視図である。
図2】同、携帯式プリンター20の開閉カバー3をプリンターハウジング2に対して開放した状態の斜視図である。
図3】同、携帯式プリンター20の概略縦断面図である。
図4】同、開放用押しボタン43(開閉カバー開閉装置31)部分の要部断面図である。
図5】同、開閉カバー開閉装置31の斜視図である。
図6】提案されている開閉カバー開閉装置を備えたプリンター(たとえば携帯式プリンター1)の要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、開閉用押しボタンを回動させるとともに、この開閉用押しボタンに対向するカバーロックの被押圧プレート(当接傾斜プレート)を傾斜させて配置したので、開閉用押しボタンの回動力を有効に被押圧プレートおよびカバーロックに伝達して、操作が簡単で、省スペースでの組立てが可能となったプリンターの開閉カバー開閉装置を実現した。
【実施例】
【0026】
つぎに本発明の実施例によるプリンターの開閉カバー開閉装置を図1ないし図5にもとづき説明する。ただし、図6と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、上記プリンターたとえば携帯式プリンター20の斜視図であって、携帯式プリンター20は、サーマルプリンターとしてこれを構成してあり、前記プリンターハウジング2および前記開閉カバー3を有する。
図2は、携帯式プリンター20の開閉カバー3をプリンターハウジング2に対して開放した状態の斜視図、図3は、携帯式プリンター20の概略縦断面図であって、とくに図3に示すように、携帯式プリンター20はさらに、前記ラベル連続体9(印字用紙)の供給部21と、位置検出部22と、印字部23と、充電バッテリー24のバッテリー収納室25と、アダプター接続端子26と、入力部27と、表示部28と、制御部29と、電源スイッチ30と、開閉カバー開閉装置31と、を有する。
【0027】
プリンターハウジング2は、作業者が携帯可能な大きさを有し、図3中、上方にベルト掛け部32を設けて、肩掛けベルト33により携帯式プリンター20全体を作業者の肩から吊り下げ可能としている。もちろん、作業者の腰に装着可能とする構成とすることもできる。
さらにプリンターハウジング2には、図3中、下方隅部に位置した前記カバー軸17のまわりに上記開閉カバー3を開閉可能に設けて、供給部21へのラベル連続体9の収納および携帯式プリンター20への装填を可能としている。
【0028】
ラベル連続体9は、帯状の台紙34上に複数枚のラベル片35を仮着した構成である。ラベル片35は、いわゆるサーマルラベルであって、その表面に感熱発色層を塗工して、印字可能としてある。
供給部21は、上記ラベル連続体9をロール状に巻いてその内部に収納し、位置検出部22および印字部23方向に帯状に繰り出し可能としている。
なお、台紙34の裏面側には、所定ピッチで位置検出用マーク36をあらかじめ印刷してある。
【0029】
位置検出部22は、開閉カバー3側に取り付けた位置検出センサー37を有し、ラベル連続体9の裏面側に位置する位置検出用マーク36を検出して印字部23に対するラベル連続体9(ラベル片35)の相対位置を検出可能とする。
【0030】
印字部23は、プリンターハウジング2側に取り付けた前記サーマルヘッド7と、開閉カバー3側に取り付けた前記プラテンローラー8と、サーマルヘッド7をプラテンローラー8方向に付勢する前記ヘッド付勢スプリング11と、駆動モーター38と、を有する。
プラテンローラー8の前記プラテンローラー軸13の一方側端部にはプラテンローラーギア39を設けるとともに、駆動モーター38の回転を伝達するための連結ギア40を設け、開閉カバー3のプリンターハウジング2への閉鎖によって、プラテンローラーギア39と連結ギア40とを係合させ、駆動モーター38によりプラテンローラー8を回転駆動可能としている。
【0031】
すなわち、サーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間にラベル連続体9を挟持して、駆動モーター38によりプラテンローラー8を回転駆動するとともに、制御部29からサーマルヘッド7に供給した印字データに応じてサーマルヘッド7の発熱素子7Aを発熱させ、ラベル連続体9(ラベル片35)にサーマル印字を行う。
【0032】
充電バッテリー24は、バッテリー収納室25に収脱可能であって、印字部23(サーマルヘッド7および駆動モーター38など)はもちろん、携帯式プリンター20全体に電力を供給する。
【0033】
アダプター接続端子26は、プリンターハウジング2にこれを設け、外部電源(図示せず)に接続して充電バッテリー24に充電するためのACアダプター41を接続する。
【0034】
入力部27は、携帯式プリンター20に必要なデータないしコマンドを入力可能とする。
表示部28は、入力部27により入力された情報およびその他必要な情報を表示可能とする。
【0035】
制御部29は、電子基板などにこれを設けてあり、上述した位置検出部22、印字部23、充電バッテリー24、アダプター接続端子26、入力部27、表示部28および電源スイッチ30との間でデータおよびコマンドの授受を行うとともに、これらを適宜制御する。
【0036】
なお携帯式プリンター20においては、落下などによる衝撃に対する耐性を確保するために、とくにプリンターハウジング2の表面側に位置している入力部27、表示部28、電源スイッチ30、開閉カバー開閉装置31、開閉カバー3などを配置している領域面をプリンターハウジング2の他の領域面(図示の例では、プリンターハウジング2の稜縁部)から凹ませるとともに、当該他の領域面にエラストマーその他の衝撃吸収性材料によるクッション材42を設けている。
また、直方体形状のプリンターハウジング2における他の稜縁部にも同様に、クッション材42を設けて携帯式プリンター20全体の耐衝撃性を確保している。
【0037】
つぎに、プリンターハウジング2には開放用押しボタン43を設け、本実施例にかかる開閉カバー開閉装置31は、この開放用押しボタン43の部分にこれを設けている。
図4は、開放用押しボタン43(開閉カバー開閉装置31)部分の要部断面図、図5は、開閉カバー開閉装置31の斜視図である。
開閉カバー開閉装置31において、開放用押しボタン43は、ボタン本体44と、ボタン本体44の周縁部の全周をめぐってこれに形成した防水用密着面45と、ボタン本体44に一体に形成したそのボタン軸46および弾性体としてのボタン付勢スプリング47と、ボタン本体44の裏面側に突出形成した押込み用突出部48と、を有する。
【0038】
ボタン本体44は、図1および図2に示したようにプリンターハウジング2の表面側に露出する部分であって、携帯式プリンター20を使用する作業者がプリンターハウジング2の内方(図4中、右方から左方)に向かって押し込む部分である。
【0039】
防水用密着面45は、ボタン本体44より相対的にプリンターハウジング2の内方側に凹んだ状態でこれを形成してプリンターハウジング2の内側に入り込むことができるとともに、プリンターハウジング2の内壁面2Aに密着可能な平面領域である。
ただし、防水用密着面45は、とくに図5および図2(点線)に示すように、サーマルヘッド7の長さ方向(ラベル連続体9の幅方向)に沿ってより長く庇のように延びており、サーマルヘッド7の発熱素子7A(図5)のすべてを覆うことができるようにしている。
【0040】
左右一対のボタン軸46は、プリンターハウジング2の内部ブラケット(図示せず)にこれを軸着し、ボタン本体44の押込み操作により、開放用押しボタン43全体をプリンターハウジング2に対して回動可能としている。
【0041】
左右一対のボタン付勢スプリング47は、防水用密着面45と同一平面内で蛇行させて開放用押しボタン43の端部にこれを形成しており、ボタン本体44からボタン軸46をこえた部位に位置するそれぞれの端部に当接軸部49を起立させている。
とくに図4に示すように、それぞれの当接軸部49がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接して、左右一対のボタン付勢スプリング47が撓むことにより、その付勢力を発揮して開放用押しボタン43の防水用密着面45をプリンターハウジング2の内壁面2Aに密着可能とする。
換言すれば、開放用押しボタン43のボタン軸46は、ボタン付勢スプリング47と防水用密着面45との間に位置してこれを設けて、防水用密着面45がプリンターハウジング2の内壁面2Aに密着させるように、ボタン付勢スプリング47が開放用押しボタン43を付勢可能としている。
なおボタン付勢スプリング47を蛇行して形成することにより、所定の付勢力を得るための必要な長さを狭い空間内で得ることが可能となり、かつ、ボタン本体44と一体形成することにより、とくに小型軽量に製造する必要があるこの種携帯式プリンター20に有利である。
【0042】
図4(1)、(2)、(3)は、開放用押しボタン43のボタン本体44およびボタン付勢スプリング47を模式的に描いた平面説明図である。ただし、ボタン付勢スプリング47の可撓性は、それぞれ同程度とする。
図4(1)は、ボタン付勢スプリング47の当接軸部49がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接する場合の説明図であって、ボタン付勢スプリング47による付勢力は、後述する図4(2)および図4(3)の場合よりも小さい。
図4(2)は、ボタン付勢スプリング47に当接軸部49を形成せずに、そのスプリング先端部分47A(図中、ハッチングで示している部分)がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接する場合(あるいは、ボタン付勢スプリング47に当接軸部49を形成してもプリンターハウジング2の内壁面2Aに係合凹部(図示せず)を形成して、当接軸部49がこの係合凹部に係合する場合)の説明図であって、ボタン付勢スプリング47による付勢力は、中程度である(図4(1)の場合よりも強く、図4(3)の場合よりも弱い)。
図4(3)は、ボタン付勢スプリング47に当接軸部49を形成せずに、ボタン付勢スプリング47全体(図中、ハッチングで示している部分)がプリンターハウジング2の内壁面2Aに当接する場合の説明図であって、ボタン付勢スプリング47による付勢力は、図4(2)および図4(3)の場合よりも大きい。
すなわち、プリンターハウジング2の内壁面2Aに対するボタン付勢スプリング47の付勢態勢ないしは当接領域を選択することにより、防水用密着面35に要請される防水機能の程度に応じて必要な付勢力を適宜設計することができる。
【0043】
とくに図4に示すように、開放用押しボタン43の裏面側(プリンターハウジング2の内方側)には、前記サーマルヘッド7を保持しているカバーロック50を前記ヘッド軸10のまわりに回動可能に設けている。
カバーロック50には、その上縁部中央に位置して、押込み用突出部48に対向する部位に当接傾斜プレート51を一体形成して設けるとともに、サーマルヘッド7を介して反対側に断面ほぼ半円弧状の左右一対の前記プラテンローラーロック係合部12を形成している。
なお、カバーロック50の当接傾斜プレート51は、開放用押しボタン43の裏面側に対して接近する方向に傾斜しており、換言すれば、開放用押しボタン43のプリンターハウジング2に対する当初の押込み方向(プリンターハウジング2の内方に向かって直交する方向)に対して傾斜している。
したがって、開放用押しボタン43(押込み用突出部48)からカバーロック50の当接傾斜プレート51に作用してヘッド軸10まわりのカバーロック50の回動操作に働く分力を比較的大きくすることができ、開放用押しボタン43への操作力自体を比較的少ないものとすることができる。
【0044】
プラテンローラーロック係合部12には、プラテンローラー8の左右一対の前記ロックピン14が係脱可能である。ロックピン14がプラテンローラーロック係合部12に係合した状態で、プラテンローラー8がサーマルヘッド7に所定押圧力(印字圧力)で当接可能であり、その間に挟持するラベル連続体9への印字が可能な状態となる。
【0045】
ボタン本体44の裏面側に位置する押込み用突出部48は、このカバーロック50の当接傾斜プレート51に対向しており、ボタン付勢スプリング47の付勢力に抗したボタン軸46まわりの開放用押しボタン43の図4中、時計方向(第1の回動方向)の回動により、押込み用突出部48が当接傾斜プレート51を押圧し、さらにヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗してヘッド軸10まわりにカバーロック50をサーマルヘッド7とともに、図4中、反時計方向(第1の回動方向とは反対方向の第2の回動方向)に回動させる。
したがって、プラテンローラー8のロックピン14がカバーロック50のプラテンローラーロック係合部12から離脱した状態となり、サーマルヘッド7およびプラテンローラー8とを互いに離反させ、その間にラベル連続体9を装填可能となる。
かくして、開放用押しボタン43の回動により、当接傾斜プレート51を介してカバーロック50をプラテンローラー8から離反可能としている。
【0046】
また、プラテンローラーロック係合部12の上方端部には、前記テーパー面16を形成してあり、開閉カバー3の閉鎖作動時にプラテンローラー8のロックピン14がテーパー面16に当接したのち、プラテンローラーロック係合部12に係合しやすくしている。
【0047】
とくに図4に示すように、開放用押しボタン43における防水用密着面45の下方側先端部は、用紙切断用端部52としてあり、用紙切断用端部52がサーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間から発行口53に移送されてきたラベル連続体9に対向し、所定の部位でラベル連続体9(台紙34、ラベル片35)を切断可能である。
なお、開放用押しボタン43(用紙切断用端部52)の材料としては、ラベル連続体9その他の印字用紙の種類に応じて、一般的には所定の剛性および弾性を有する合成樹脂材料を採用することができる。
【0048】
さらに、とくに図3に示すように、当該携帯式プリンター20は、サーマルヘッド7がプラテンローラー8より上方に位置するようにこれを携帯可能であるとともに、とくに図4に示すように、開放用押しボタン43の下方側先端部(用紙切断用端部52)は、プ開閉カバー3より外方側に位置している。
すなわち、用紙切断用端部52が開閉カバーの先端部2の外表面より、わずかに(図4に示す間隔D)分だけ外方側に位置していることにより、雨天その他の時に開放用押しボタン43を伝って水滴Wが用紙切断用端部52に至っても、庇のように出ている用紙切断用端部52から開閉カバー3に触れることなく地上に垂れ落ちるのみであり、プリンターハウジング2内に侵入するおそれは軽減されている。
このような開閉カバー3の閉鎖状態においては、開閉カバー開閉装置31における開放用押しボタン43は、そのボタン本体44は外部に露出しているが、かつその開放操作自体は確保されているが、ボタン付勢スプリング47の付勢力により防水用密着面45がプリンターハウジング2の内壁面2Aに所定押圧力で密着しているため、この部分からの水の侵入を防止可能である。
【0049】
こうした構成の携帯式プリンター20の開閉カバー開閉装置31において、図1に示す開閉カバー3の閉鎖状態から、図2に示す開閉カバー3の開放状態にするには、ボタン付勢スプリング47(図2図4)の付勢力に抗して開放用押しボタン43をプリンターハウジング2の内方に押し込む。
開放用押しボタン43の押込み操作により、押込み用突出部48がカバーロック50の当接傾斜プレート51を、ヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗してヘッド軸10まわりに、開放用押しボタン43の押込み用突出部48の回動移動に沿うように、図4中、反時計方向に回動させ、プラテンローラーロック係合部12とロックピン14との係合を解除してプラテンローラー8を開閉カバー3とともに図2の開放状態とし、サーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間にラベル連続体9を挿通装填可能とする。
この開放状態で供給部21内にロール状のラベル連続体9を収納し、開閉カバー3をプリンターハウジング2方向に閉鎖すればプラテンローラー8のロックピン14がカバーロック50のテーパー面16に当接する。ヘッド付勢スプリング11の付勢力に抗して開閉カバー3(プラテンローラー8)をさらに閉鎖方向に押し込めば、ロックピン14がプラテンローラーロック係合部12に係合するに至り、開閉カバー3を閉鎖し、またサーマルヘッド7およびプラテンローラー8の間にラベル連続体9を挟持して、これを押圧した状態とすることができる。
【0050】
かくして、開閉用押しボタン43による開閉カバー3の開放操作を比較的少ない力で行うことができ、開閉用押しボタン43やカバーロック50(当接傾斜プレート51)などの部品の摩耗や損傷を回避可能として、屋外での携帯式プリンター20の使用にあたっても操作の容易性を確保可能である。
もちろん、卓上型プリンターその他のプリンターにも本発明による開閉カバー開閉装置を採用することが可能である。
【0051】
さらにまた、上述の実施例においては、印字ヘッド(サーマルヘッド7)は、これをプリンターハウジング2に取り付け、プラテンローラー8は、これを開閉カバー3に取り付けているとともに、開放用押しボタン43は、プリンターハウジング2に対してこれを回動可能とし、印字ヘッド(サーマルヘッド7)は、これをカバーロック50に取り付けている構造を説明したが、本発明においては、プリンターの使用条件や使用形態に応じて、それぞれの部品ないし相対関係について任意の組み合わせを選択することにより設計の自由度を上げることができる。
たとえば、印字ヘッド(サーマルヘッド7)は、これを開閉カバー3に取り付け、プラテンローラー8は、これをプリンターハウジング2に取り付けることができる。
あるいは、開放用押しボタン43は、開閉カバー3に対してこれを回動可能とすることもできる。
さらに、プラテンローラー8は、これをカバーロック50に取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0052】
1 携帯式プリンター(図6
2 プリンターハウジング
2A プリンターハウジング2の内壁面(図4
3 開閉カバー
4 印字部
5 開閉用押しボタン
6 カバーロック
7 サーマルヘッド(印字ヘッド)
7A サーマルヘッド7の発熱素子
8 プラテンローラー
9 ラベル連続体(印字用紙)
10 サーマルヘッド7のヘッド軸
11 ヘッド付勢スプリング
12 プラテンローラーロック係合部
13 プラテンローラー軸
14 ロックピン
15 被押圧プレート
16 テーパー面
17 開閉カバー3のカバー軸
20 携帯式プリンター(プリンター、実施例、図1
21 供給部
22 位置検出部
23 印字部
24 充電バッテリー
25 バッテリー収納室
26 アダプター接続端子
27 入力部
28 表示部
29 制御部
30 電源スイッチ
31 携帯式プリンター20の開閉カバー開閉装置(実施例、図4
32 ベルト掛け部
33 肩掛けベルト
34 ラベル連続体9の台紙
35 ラベル片
36 位置検出用マーク
37 位置検出センサー
38 駆動モーター
39 プラテンローラー8のプラテンローラーギア
40 連結ギア
41 ACアダプター
42 エラストマーなどによるクッション材
43 開放用押しボタン
44 開放用押しボタン43のボタン本体
45 開放用押しボタン43の防水用密着面
46 開放用押しボタン43のボタン軸
47 開放用押しボタン43のボタン付勢スプリング
47A ボタン付勢スプリング47のスプリング先端部分(図4(2))
48 開放用押しボタン43の押込み用突出部
49 ボタン付勢スプリング47の当接軸部
50 カバーロック
51 カバーロック50の当接傾斜プレート
52 開放用押しボタン43の用紙切断用端部
53 印字済みラベル連続体9の発行口
D 開放用押しボタン43の用紙切断用端部52と開閉カバー3の先端部の外表面との間の間隔(図4
W 雨天その他の時に開放用押しボタン43を伝って用紙切断用端部52に至る水滴
図1
図2
図3
図4
図5
図6