(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
キャリアで保持されたガラス素板を、2枚の研磨パッドで狭持し、前記ガラス素板上に研磨液を供給した状態で、前記ガラス素板と前記研磨パッドとを相対的に移動させて、前記ガラス素板の両主表面を同時に研磨する研磨工程を備え、
前記キャリアの熱伝導率が、2W/m・K以上であり、
前記キャリアが、樹脂と炭素繊維とを含有し、前記炭素繊維の含有量によって、前記熱伝導率が調整されたキャリアであることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
磁気、光及び光磁気等を利用することによって、情報を情報記録媒体に記録する情報記録装置が知られている。このような情報記録装置としては、代表的なものとして、例えば、ハードディスクドライブ装置等が挙げられる。ハードディスクドライブ装置は、基板上に記録層を形成した情報記録媒体としての磁気ディスク(ハードディスク)に、磁気ヘッドによって磁気的に情報を記録し(書き込み)、記録した情報を再生する(読み出す)装置である。このような情報記録媒体の基材、いわゆるサブストレートとしては、ガラス基板が好適に用いられている。
【0003】
また、ハードディスクドライブ装置は、磁気ディスクに情報を記録したり、読み出したりする際、磁気ヘッドを、磁気ディスクに接触させるのではなく、磁気ディスクに対し浮上させておくものである。そして、磁気ヘッドの浮上量を低減させることによって、記録密度の向上が図れることが知られている。近年は、磁気ヘッドの浮上量を、数nm程度にまで減少させて、磁気ディスクの記録密度の高密度化を図ることによって、磁気ディスクの記憶容量を高めている。これらのことから、磁気ヘッドの浮上量をより低減させて、記録密度をより高めるためには、情報記録媒体用ガラス基板の平滑性が高いことが求められる。
【0004】
このような情報記録媒体用ガラス基板は、溶融ガラスから得られたガラス素板(ガラスブランクス)を切削加工した後、研磨加工を施すこと等によって、製造される。具体的には、切削加工されたガラス素板に対して、まず、酸化セリウムを研磨材として含む研磨液で研磨する粗研磨工程を施し、さらに、コロイダルシリカを研磨材として含む研磨液で研磨する精密研磨工程を施す方法等が挙げられる。このように、複数回にわたって研磨加工を施すことによって、平滑性の高い情報記録媒体用ガラス基板を得ていた。
【0005】
また、磁気ディスクの記憶容量を高めるという要求をさらに満たすために、記録密度の高めるだけではなく、磁気ディスクの端部付近まで、磁気ヘッドを通過するようにして、磁気ディスクに端部付近まで、情報を記録できるようにすることが検討されている。
【0006】
このように、磁気ディスクの端部付近まで、磁気ディスクを利用しようとした場合、上記のように平滑性を高めたガラス基板を用いて得られた磁気ディスクであっても、磁気ディスクの端部付近を磁気ヘッドが通過する際には、不具合が発生しやすかった。具体的には、磁気ディスクの端部付近は、中央部と比較して、板厚や平坦度等の均一性が低下しやすく、これが原因で、端部付近を通過する磁気ヘッドの浮上姿勢が乱れ、フラッタリング特性が悪化しやすかった。また、情報の記録や再生の速度を高めるために、磁気ディスクの回転速度の高速化も検討されている。このように、磁気ディスクの回転速度を高速化した場合、上記のフラッタリング特性の悪化の発生が顕著となった。これらのことから、磁気ディスクの端部付近まで、磁気ディスクを利用しようとした場合、情報記録媒体用ガラス基板の端部付近における形状の乱れが少ないことが要求されている。すなわち、情報記録媒体用ガラス基板の板厚や平坦度等の均一性が、端部付近まで高いことが要求されている。
【0007】
このような端部付近まで形状の乱れを抑制することを考慮としたガラス基板の製造方法としては、特許文献1に記載の方法が挙げられる。
【0008】
特許文献1には、ガラス素板の両主平面を研磨する研磨工程において、ガラス素板の両主平面を同時に研磨したときの両面研磨装置の上定盤の内周端側で測定した表面温度tp1と外周端側で測定した表面温度tp2との差Δtp(tp1−tp2)の絶対値が3℃以下である磁気記録媒体用ガラス基板の製造方法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0027】
本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、以下のような研磨工程を備える。すなわち、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、以下のような研磨工程を備えていれば、特に限定されない。
【0028】
前記研磨工程は、キャリアで保持されたガラス素板を、2枚の研磨パッドで狭持し、前記ガラス素板上に研磨液を供給した状態で、前記ガラス素板と前記研磨パッドとを相対的に移動させて、前記ガラス素板の両主表面を同時に研磨する工程である。そして、前記キャリアとして、熱伝導率が2W/m・K以上であるキャリアを用いる。
【0029】
上記のような研磨工程を備えることによって、端部付近まで板厚が均一であって、フラッタリング特性に優れた情報記録媒体を得ることができる情報記録媒体用ガラス基板を製造することができる。このことは、以下のことによると考えられる。
【0030】
まず、ガラス素板を保持するためのキャリアの熱伝導率が、従来のキャリアより高いので、キャリアへの研磨液の供給量等を調整することなく、キャリアにおけるガラス素板の位置による温度差の発生を抑制することができると考えられる。このことにより、研磨パッドを支持する定盤やキャリア等の熱変形が不均一に起こるということも抑制されると考えられる。すなわち、上記のような、ガラス素板にかかる摩擦力の差異や温度むら等の発生を充分に抑制できると考えられる。これらのことから、得られたガラス基板は、端部付近であっても、形状にばらつきが発生することを充分に抑制でき、フラッタリング特性が充分に優れたものになると考えられる。
【0031】
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、上述したように、前記研磨工程を備えていれば、特に限定されない。具体的には、研磨工程が、上記のような工程であること以外、特に限定されず、従来公知の製造方法であればよい。また、従来の一般的な製造方法では、主表面を研磨する研磨工程として、粗研磨工程と精密研磨工程とを含む複数回の研磨を行うことが一般的である。本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法においては、前記研磨工程が、いずれの研磨工程であってもよいが、平滑性等がより求められる精密研磨工程として、本実施形態に係る研磨工程を行うことが好ましく、いずれの研磨工程としても、本実施形態に係る研磨工程を行うことがより好ましい。そうすることによって、形状のばらつきを全面的により抑制でき、フラッタリング特性のより優れたガラス基板が得られる。また、形状のばらつきとは、例えば、ガラス基板の板厚のばらつきであり、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であれば、板厚のばらつきが抑制されたガラス基板が得られる。なお、ガラス基板の板厚は、例えば、マイクロメータ、レーザ変位計、及びレーザ干渉計等を用いて測定することができる。
【0032】
また、本実施形態でいうフラッタリング特性とは、ガラス基板の高速回転時の振幅量(面振れ)を意味し、下記式(I)のような関係式で規定される。
【0033】
【数1】
式(I)中、Fはフラッタリング特性(単位:nm)であり、aはガラス基板の外半径を示し、νはガラス基板のポアソン比を示し、Eはガラス基板のヤング率を示し、ξはガラス基板の減衰係数を示し、hはガラス基板の厚みを示し、λ
4はモデル関数パラメータである。この場合、ガラス基板の外半径および厚みを一定にすれば、ポアソン比は化学組成による差があまりなく、フラッタリング特性Fは、最右辺により関係付けられる。
【0034】
すなわち、フラッタリング特性は、上記のようにガラス基板の高速回転時の振幅量であることから、これを小さくすることが好ましい。上記式のようにヤング率および減衰係数を大きくすることが一般的に有利であると考えられてきたが、より高密度化を狙う基板においてはフライングハイトが低くなってきていることから、より精密なフラッタリング特性が求められる。
【0035】
本実施形態においては、情報記録媒体用ガラス基板、例えば、HDD用ガラス基板は、直径を60〜70mmとし、厚みを0.7〜0.9mmとする場合、回転数15000rpm時のフラッタリング特性は、120nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、48nm以下であることがさらに好ましい。また、同様に、回転数10000rpm時のフラッタリング特性は、100nm未満であることが好ましく、50nm未満であることがより好ましい。また、同様に、回転数7000rpm時のフラッタリング特性は、40nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、18nm以下であることがさらに好ましい。これにより、ハードディスクドライブ等に該HDD用ガラス基板をセットし高速回転させた場合において、ヘッドと該HDD用ガラス基板とが接触することを防止でき、ヘッドを損傷する等の不都合を防止することができる。
【0036】
ここで、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研磨工程について、説明する。
【0037】
この研磨工程で用いるキャリアは、その熱伝導率が、2W/m・K以上であり、5W/m・K以上であることが好ましく、10W/m・K以上であることがより好ましい。キャリアの熱伝導率が低すぎると、端部付近の、形状のばらつきの発生を充分に抑制できず、フラッタリング特性を充分に高めることができない傾向がある。このことは、ガラス素板にガラス素板にかかる摩擦力の差異や温度むら等の発生を充分に抑制できなくなることによると考えられる。また、キャリアの熱伝導率は、高ければ高いほど好ましいが、例えば、キャリアが後述するような炭素繊維と樹脂とを含有して構成されるものであれば、形状の維持等の点から、100W/m・K程度が限界である。このことから、キャリアの熱伝導率としては、100W/m・Kが上限値となる。なお、ここでの熱伝導率は、例えば、レーザフラッシュ法等で測定することができる。
【0038】
また、前記キャリアは、熱伝導率が2W/m・K以上であって、研磨工程のキャリアとして使用可能なものであれば、特に限定されない。前記キャリアの形状等も特に限定されないが、具体的な形状としては、後述する形状であればよい。また、前記キャリアの材質としては、以下のようなものが挙げられる。前記キャリアとしては、例えば、樹脂と炭素繊維とを含有し、前記炭素繊維の含有量によって、熱伝導率が上記範囲内になるように調整したキャリアが好ましく用いられる。また、前記樹脂としては、耐熱性の観点から、熱硬化性樹脂等の硬化樹脂であることが好ましい。前記樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、炭素繊維としては、例えば、PAN系炭素繊維やピッチ系炭素繊維等が挙げられる。また、前記キャリアは、樹脂及び炭素繊維以外の成分を含有していてもよい。例えば、樹脂及び炭素繊維以外の成分としては、繊維状ではない炭素、すなわち、炭素粉やガラス繊維等が挙げられる。例えば、炭素粉であれば、例えば、キャリア製造時における、樹脂成分を硬化させる際の加熱処理によって、グラファイト化して、キャリアの強度や熱伝導率の向上に寄与することができる。また、ガラス繊維であれば、熱伝導率に大きな影響を与えることなく、キャリアの強度向上に寄与することができる。また、炭素繊維の含有量は、樹脂や炭素繊維の種類や、求められる熱伝導率等によって適宜調整することが可能である。炭素繊維が少なすぎると、キャリアの熱伝導率を充分に高めることができない傾向がある。また、炭素繊維が多すぎると、キャリアの熱伝導率が充分に高まることが期待されるものの、相対的に樹脂の含有量が少なくなり、キャリアとしての機能である、ガラス基板を保持するのに充分な強度を確保することが困難になる傾向がある。また、前記樹脂の含有量も、炭素繊維の含有量と同様、樹脂や炭素繊維の種類や、求められる熱伝導率等によって適宜調整することが可能である。
【0039】
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、キャリアの熱伝導率が高いことにより、ガラス素板の位置による温度差の発生を抑制することができると考えられるので、研磨液の温度や供給量の調整をしなくてもよい。具体的には、研磨工程において、一定温度の研磨液を一定供給量で供給すればよい。また、研磨液の供給量の違い等による、ガラス素板にかかる摩擦力の差異等の発生を抑制するという点から、一定温度の研磨液を一定供給量で供給することが好ましい。
【0040】
次に、研磨工程で用いる研磨装置について説明する。
【0041】
この研磨工程で用いる研磨装置は、情報記録媒体用ガラス基板の製造に用いる研磨装置であれば、特に限定されない。具体的には、
図1に示すような研磨装置1が挙げられる。なお、
図1は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研磨工程で用いる研磨装置の一例を示す概略断面図である。
【0042】
図1に示すような研磨装置1は、ガラス素板の主表面の両面を、同時に研磨可能な装置である。また、この研磨装置1は、装置本体部(研磨本体部)11と、装置本体部11に研磨液(研磨スラリー)を供給する研磨液供給部16とを備えている。
【0043】
装置本体部11は、
図1及び
図2に示すように、互いに対向して配置される2枚の定盤12,13を備えている。なお、
図2には、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研磨工程で用いる研磨装置に備えられる装置本体の一例を示す概略断面図である。それぞれの定盤の位置関係は、上下に限定されないが、例えば、2枚の定盤のうち、上側に配置される定盤を、上定盤12とし、下側に配置される定盤を、下定盤13と称する。すなわち、装置本体部11は、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13とを備えており、それらが互いに平行になるように上下に間隔を隔てて配置されている。そして、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13とが、互いに逆方向に回転する。
【0044】
この円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13との対向するそれぞれの面に、ガラス素板10の表裏の両面を研磨するための研磨パッド15が貼り付けられている。
【0045】
また、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13との間には、回転可能なキャリア14が複数設けられている。このキャリア14は、複数の素板保持用孔14aが形成されており、この素板保持用孔14aにガラス素板10をはめ込んで配置することができる。キャリア14としては、例えば、素板保持用孔14aが100個形成されていて、100枚のガラス素板10をはめ込んで配置できるように構成されていてもよい。そうすると、1回の処理(1バッチ)で100枚のガラス素板を処理できる。具体的には、キャリア14の形状は、
図2に示すようなもの等が挙げられる。そして、研磨工程で用いられるキャリア14としては、上記構成を満たすもの、すなわち、熱伝導率が2W/m・K以上であるキャリアを用いる。また、キャリア14の厚みは、ガラス素板10の厚みより薄い。
【0046】
研磨パッド15を介して定盤12,13に挟まれているキャリア14は、ガラス素板10を保持した状態で、自転しながら、定盤12,13の回転中心に対して下定盤13と同じ方向に公転する。なお、円盤状の上定盤12と円盤状の下定盤13とは、別駆動で動作することができる。このように動作している研磨装置1において、研磨液17を、上定盤12とガラス素板10との間、及び下定盤13とガラス素板10との間に、それぞれ供給することによって、ガラス素板10の研磨を行うことができる。
【0047】
また、研磨液供給部16は、液貯留部110と液回収部120とを備えている。液貯留部110は、液貯留部本体110aと、液貯留部本体110aから装置本体部11に延ばされた吐出口110eを有する液供給管110bとを備えている。液回収部120は、液回収部本体120aと、液回収部本体120aから装置本体部11に延ばされた液回収管120bと、液回収部本体120aから研磨液供給部16に延ばされた液戻し管120cとを備えている。
【0048】
そして、液貯留部本体110aに入れられた研磨液17は、液供給管110bの吐出口110eから装置本体部11に供給され、装置本体部11から液回収管120bを介して液回収部本体120aに回収される。また、回収された研磨液17は、液戻し管120cを介して液貯留部110に戻され、再度、装置本体部11に供給可能とされている。
【0049】
ここでは、回収した研磨液を循環して使用する場合(循環使用)について説明したが、研磨に供された研磨液を回収せずに、常に新たな研磨液を使用する、いわゆる、かけ流しで研磨液を使用する場合(かけ流し使用)であってもよい。研磨液をかけ流しで使用する理由は、研磨によって発生する研磨スラッジ(研磨くず、ガラススラッジ)が、研磨液中に存在すると、ガラス基板の表面に傷を発生させる可能性があるからである。
【0050】
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、上述したように、粗研磨工程として、本実施形態に係る前記研磨工程を行い、精密研磨工程を別途行うことが好ましい。このような精密研磨工程としては、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における一般的な精密研磨工程であればよく、特に限定されない。前記精密研磨工程は、粗研磨工程(上記研磨工程)で得られた平坦平滑な主表面を維持しつつ、例えば、主表面の表面粗さ(Rmax)が0.3nm程度以下である平滑な鏡面に仕上げる鏡面研磨処理である。この精密研磨工程は、例えば、上記研磨工程で使用したものと同様の研磨装置等を用いて行ってもよい。なお、精密研磨工程で研磨する表面は、研磨工程で研磨する表面と同様、主表面である。
【0051】
また、研磨工程で用いられる研磨パッドは、ガラス基板の両主表面を研磨加工するための加工工具であり、情報記録媒体用ガラス基板を製造する際の研磨工程に用いられるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、粗研磨工程で用いられる研磨パッドとしては、硬質ウレタンパッド等の、硬質の研磨パッドを用い、精密研磨工程で用いられる研磨パッドとしては、スエードパッド等の、軟質の研磨パッドを用いること等が挙げられる。また、粗研磨工程及び精密研磨工程のともに、研磨パッドとして、スエードパッド等の、軟質の研磨パッドを用いることも考えられる。スエードパッドとは、表面部(研磨層)が、軟質発泡ポリウレタン等の軟質発泡樹脂で構成されるスエードタイプの軟質発泡樹脂パッドである。また、スエードパッドは、気泡が表面(パッド面)に開放されており、気泡を仕切る壁が軟らかいものが相対的に多い研磨パッドである。そして、研磨パッドのパッド面の硬さが、アスカーC硬度で、60〜90であることが好ましく、70〜84であることがより好ましく、75〜84であることがさらに好ましい。また、パッド面に開放されている気泡の直径(開放径)が、20〜80μmであることが好ましい。また、研磨パッドの表面に配置される研磨層の密度が、0.55〜0.62g/m
3であることが好ましい。また、研磨パッドのパッド面をバフ研磨していない、いわゆるノンバフの研磨パッドであることが好ましい。また、研磨工程で用いられる研磨パッドとしては、具体的には、ポリウレタン製のスエードパッドが使用され、例えば、Filwel製のNP178(アスカーC硬度82)が使用される。また、硬質の研磨パッドとしては、例えば、硬さがアスカーC硬度で90を超える研磨パッド等が挙げられ、より具体的には、硬質ウレタンパッド等等が挙げられる。
【0052】
また、研磨工程で用いる研磨液としては、研磨工程で用いられる研磨液を適宜選択して使用すればよく、特に限定されない。具体的には、粗研磨工程で用いる研磨液としては、粗研磨工程で一般的に用いられる研磨液を用いることができる。より具体的には、粗研磨工程で用いる研磨液としては、研磨材として酸化セリウムを含む研磨液等が挙げられる。また、精密研磨工程で用いる研磨液としては、精密研磨工程で一般的に用いられる研磨液を用いることができる。より具体的には、精密粗研磨工程で用いる研磨液としては、研磨材として、コロイダルシリカ等のシリカ系砥粒を含む研磨液等が挙げられる。
【0053】
また、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法としては、前記研磨工程を備えていればよいが、その他の工程を備えていてもよい。例えば、円盤加工工程、研削工程(ラッピング工程)、内外研削工程、端面研磨工程、化学強化工程、研磨工程(ポリッシング工程)、及び洗浄工程を備える方法等が挙げられる。そして、前記各工程を、この順番で行うものであってもよいし、研磨工程の後に化学強化工程を行うものであってもよい。さらに、これら以外の工程を備える方法であってもよい。また、研磨工程は、上記研磨工程を行うものである。
【0054】
前記円盤加工工程は、原料ガラスを、
図3に示すような、内周及び外周が同心円となるように、中心部に貫通孔10aが形成された円盤状のガラス素板10に加工する工程である。具体的には、原料ガラスを、溶融炉で溶融して、溶融ガラスとするガラス溶融工程と、溶融ガラスを円盤状のガラス素板に形成する成形工程と、形成された円盤状のガラス素板の中心部に貫通孔10aを形成するコアリング加工を施し、
図3に示すような、円盤状のガラス素板10に加工するコアリング加工工程等を備える。なお、
図3は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法で用いられるガラス素板を示す上面図である。
【0055】
前記ガラス溶融工程は、原料ガラスを、溶融炉で溶融して、溶融ガラスとすることができれば、特に限定されない。原料ガラスとしては、特に限定されず、例えば、SiO
2、Na
2O、及びCaOを主成分とするソーダライムガラス、SiO
2、Al
2O
3、及びR
12O(式中、R
1は、K、Na、又はLiを示す。)で表される酸化物を主成分とするアルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、Li
2O−SiO
2系ガラス、Li
2O−Al
2O
3−SiO
2系ガラス、R
2O−Al
2O
3−SiO
2系ガラス(式中、R
2は、Mg、Ca、Sr、又はBaを示す。)等が挙げられる。より具体的には、例えば、ガラス組成が、SiO
2が55〜75質量%、Al
2O
3が5〜18質量%、Li
2Oが1〜10質量%、Na
2Oが3〜15質量%、K
2Oが0.1〜5質量%、MgOが0.1〜5質量%、CaOが0.1〜5質量%であるもの等が挙げられる。これらの中でも、アルミノシリケートガラス、及びボロシリケートガラスが、耐衝撃性や耐振動性に優れる点で好ましい。また、原料ガラスの溶融方法としては、特に限定されず、通常は上記ガラス素材を公知の温度、時間にて高温で溶融する方法を採用することができる。
【0056】
前記成形工程は、溶融ガラスを円盤状のガラス素板に形成することができれば、特に限定されない。具体的には、溶融ガラスをプレス成形により、円盤状のガラス素板を形成するプレス工程等が挙げられる。また、前記成形工程は、プレス工程に限らず、例えば、ダウンドロー法やフロート法等で形成したシートガラスを研削砥石で切り出して、円盤状のガラス素板を作製する工程であってもよい。なお、フロート法とは、例えば、ガラス素材を溶融させた溶融液を、溶融したスズの上に流し、そのまま固化させる方法である。得られたガラス素板は、一方の面がガラスの自由表面であり、他方の面が、ガラスとスズとの界面であるため、平滑性の高い、例えば、算術平均粗さRaが0.001μm以下の鏡面を備えたものとなる。また、ガラス素板の厚みとしては、例えば、0.95mmのものが挙げられる。なお、ガラス素板やガラス基板の表面粗さ、例えばRaやRmaxは、一般的な表面粗さ測定機を用いて測定することができる。
【0057】
また、前記コアリング加工工程は、前記成形工程で形成された円盤状のガラス素板の中心部に貫通孔10aを形成するコアリング加工を施す工程である。そうすることによって、
図3に示すような、中心部に貫通孔10aが形成された円盤状のガラス素板10が得られる。コアリング加工は、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成する穴あけ加工であれば、特に限定されない。例えば、ダイヤモンド砥石等を備えたコアドリルや、円筒状のダイヤモンドドリル等で研削することで、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成させる方法等が挙げられる。そうすることで、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成され、平面視で円環状のガラス素板が得られる。
【0058】
前記円盤加工工程によって、例えば、外径r1が2.5インチ(約64mm)、1.8インチ(約46mm)、1インチ(約25mm)、0.8インチ(約20mm)等で、厚みが2mm、1mm、0.63mm等の円盤状のガラス素板が得られる。また、外径r1が2.5インチ(約64mm)のときは、例えば、内径r2が0.8インチ(約20mm)等に加工される。
【0059】
前記研削工程(ラッピング工程)は、前記ガラス素板を所定の板厚に加工する工程である。具体的には、例えば、ガラス素板の両面を研削(ラッピング)加工する工程等が挙げられる。そうすることによって、ガラス素板の平行度、平坦度及び厚みを調整する。また、このラッピング工程は、1回であってもよいし、2回以上であってもよい。例えば、2回行う場合、1回目のラッピング工程(第1ラッピング工程)で、ガラス素板の平行度、平坦度及び厚みを予備調整し、2回目のラッピング工程(第2ラッピング工程)で、ガラス素板の平行度、平坦度及び厚みを微調整する。また、研削工程を2回行う場合、第1ラッピング工程と第2ラッピング工程とを連続で行ってもよいが、これらの工程の間に、後述する、内外研削工程、及び端面研磨工程を行ってもよい。
【0060】
また、研削工程で用いる研削装置は、情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における研削工程で用いる研削装置として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、前記研磨工程で用いる研磨装置と同様のものであって、研磨パッドの代わりに、固定砥粒としてダイヤモンドを使用した樹脂シート(研削シート)を用いたものが挙げられる。
【0061】
また、前記第1ラッピング工程としては、ガラス素板の表面全体が略均一の表面粗さとなるようにした工程等が挙げられる。また、第1ラッピング工程で用いる研削シートとしては、例えば、固定砥粒の平均粒子径が、6〜12μmのものを用いることが好ましい。また、前記第1ラッピング工程は、ガラス素板の算術平均粗さRaを複数個所測定した際に、得られたRaの最小値と最大値との差が、0.01〜0.4μm程度にすることが好ましい。
【0062】
また、前記第2ラッピング工程としては、大きなうねり、欠け、ひび等の欠陥を除去したガラス素板が得られるようにした工程等が挙げられる。また、第2ラッピング工程で用いる研削シートとしては、例えば、固定砥粒の平均粒子径が、0.5〜4μmのものを用いることが好ましく、1〜2μmのものを用いることが好ましい。また、前記第2ラッピング工程は、得られたガラス素板のRmaxが、0.5〜2μmにすることが好ましい。また、Raが、0.1〜0.5μmにすることが好ましい。前記第2ラッピング工程後のガラス素板の表面が荒れすぎていると、前述の研磨工程を施しても、平滑性が充分に高いガラス基板が得られにくい傾向がある。また、前記第2ラッピング工程後のガラス素板は、表面が平滑であればあるほど、つまり、Raが小さいほど好ましいが、ラッピング工程では、0.01μm程度が限界であり、この0.01μmが前記第2ラッピング工程後のガラス素板の算術平均粗さRaの下限値になると考えられる。
【0063】
前記内外研削工程は、ガラス素板の外周端面及び内周端面を研削する工程である。具体的には、鼓状のダイヤモンド砥石等の研削砥石により、ガラス素板の外周端面および内周端面を研削する工程等が挙げられる。
【0064】
前記端面研磨工程は、ガラス素板の外周端面及び内周端面を研磨する工程である。具体的には、前記内外研削工程を施したガラス素板を複数枚、例えば、100枚程度積み重ねて積層し、その状態で外周端面及び内周端面の研磨加工を、端面研磨機を用いて研磨する工程等が挙げられる。
【0065】
前記化学強化工程は、特に限定されず、具体的には、ガラス素板を化学強化液(強化処理液)に浸漬して、ガラス素板に化学強化層を形成する工程等が挙げられる。このような工程を施すことによって、ガラス素板の表面、例えば、ガラス素板表面から5μmの領域に化学強化層を形成することができる。そして、化学強化層を形成することで耐衝撃性、耐振動性及び耐熱性等を向上させることができる。
【0066】
より詳しくは、化学強化工程は、加熱された化学強化処理液にガラス素板を浸漬させることによって、ガラス素板に含まれるリチウムイオンやナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンをそれよりイオン半径の大きなカリウムイオン等のアルカリ金属イオンに置換するイオン交換法によって行われる。イオン半径の違いによって生じる歪みにより、イオン交換された領域に圧縮応力が発生し、ガラス素板の表面が強化される。すなわち、この化学強化工程により、ガラス素板に強化層が好適に形成されると考えられる。
【0067】
化学強化処理液としては、磁気情報記録媒体用ガラス基板の製造方法における化学強化工程で用いられる化学強化処理液であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、カリウムイオンを含む溶融液、及びカリウムイオンやナトリウムイオンを含む溶融液等が挙げられる。
【0068】
これらの溶融液としては、例えば、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸カリウム、及び炭酸ナトリウム等を溶融させて得られた溶融液等が挙げられる。この中でも、硝酸カリウムを溶融させて得られた溶融液と硝酸ナトリウムを溶融させて得られた溶融液とを組み合わせて用いることが、融点が低く、ガラス素板の変形を防止する観点から好ましい。その際、硝酸カリウムを溶融させて得られた溶融液と硝酸ナトリウムを溶融させて得られた溶融液とを、ほぼ同量ずつの混合させた混合液であることが好ましい。
【0069】
前記洗浄工程は、ガラス素板を洗浄する工程である。洗浄工程は、各工程の後に適宜行うことが好ましい。また、前記洗浄工程のうち、前記研磨工程により研磨されたガラス基板を洗浄する最終洗浄工程としては、例えば、スクラブ洗浄が挙げられる。スクラブ洗浄とは、湿式の物理洗浄方法であり、ガラス基板の表面に洗浄液を供給しながら、スクラブ部材をガラス基板に押圧した状態で、スクラブ部材とガラス基板とを相対的に移動させる方法である。そうすることで、ガラス基板の表面上の汚れをこすり取ることができる。また、このスクラブ洗浄を行う装置(スクラブ洗浄装置)としては、情報記録媒体用ガラス基板をスクラブ洗浄できる装置であれば、特に限定されない。具体的には、スクラブ部材が円筒形のロールスクラブであるロールスクラブ洗浄装置や、スクラブ部材がカップ型のカップスクラブ洗浄装置等が挙げられる。
【0070】
また、この最終洗浄工程等の洗浄工程を施す前のガラス素板やガラス基板は、表面への異物が付着されることを防止するために、ガラス素板やガラス基板を液体と接触させておくことが好ましい。
【0071】
また、最終洗浄工程としては、スクラブ洗浄をした後、超音波による洗浄を行うことが好ましい。
【0072】
また、最終洗浄後は、ガラス基板を乾燥させる。その乾燥方法としては、例えば、IPA蒸気による乾燥、スピン乾燥、及び温水乾燥等が挙げられる。
【0073】
次に、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体について説明する。
【0074】
図4は、本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法により製造された情報記録媒体用ガラス基板を用いた磁気記録媒体の一例である磁気ディスクを示す一部断面斜視図である。この磁気ディスクDは、円形の情報記録媒体用ガラス基板101の主表面に形成された磁性膜102を備えている。磁性膜102の形成には、公知の常套手段による形成方法が用いられる。例えば、磁性粒子を分散させた熱硬化性樹脂を情報記録媒体用ガラス基板101上にスピンコートすることによって磁性膜102を形成する形成方法(スピンコート法)や、情報記録媒体用ガラス基板101上にスパッタリングによって磁性膜102を形成する形成方法(スパッタリング法)や、情報記録媒体用ガラス基板101上に無電解めっきによって磁性膜102を形成する形成方法(無電解めっき法)等が挙げられる。磁性膜102の膜厚は、スピンコート法による場合では、約0.3〜1.2μm程度であり、スパッタリング法による場合では、約0.04〜0.08μm程度であり、無電解めっき法による場合では、約0.05〜0.1μm程度である。薄膜化および高密度化の観点から、スパッタリング法による膜形成が好ましく、また、無電解めっき法による膜形成が好ましい。
【0075】
磁性膜102に用いる磁性材料は、公知の任意の材料を用いることができ、特に限定されない。磁性材料は、例えば、高い保持力を得るために結晶異方性の高いCoを基本とし、残留磁束密度を調整する目的でNiやCrを加えたCo系合金等が好ましい。より具体的には、Coを主成分とするCoPt、CoCr、CoNi、CoNiCr、CoCrTa、CoPtCr、CoNiPt、CoNiCrPt、CoNiCrTa、CoCrPtTa、CoCrPtB、CoCrPtSiO等が挙げられる。磁性膜102は、ノイズの低減を図るために、非磁性膜(例えば、Cr、CrMo、CrV等)で分割された多層構成(例えば、CoPtCr/CrMo/CoPtCr、CoCrPtTa/CrMo/CoCrPtTa等)であってもよい。磁性膜102に用いる磁性材料は、上記磁性材料の他、フェライト系や鉄−希土類系であってもよく、また、SiO
2、BN等からなる非磁性膜中にFe、Co、FeCo、CoNiPt等の磁性粒子を分散した構造のグラニュラー等であってもよい。また、磁性膜102への記録には、内面型および垂直型のいずれかの記録形式が用いられてよい。
【0076】
また、磁気ヘッドの滑りをよくするために、磁性膜102の表面には、潤滑剤が薄くコーティングされてもよい。潤滑剤として、例えば液体潤滑剤であるパーフロロポリエーテル(PFPE)をフレオン系などの溶媒で希釈したものが挙げられる。
【0077】
さらに必要により磁性膜102に対し下地層や保護層が設けられてもよい。磁気ディスクDにおける下地層は、磁性膜102に応じて適宜に選択される。下地層の材料として、例えば、Cr、Mo、Ta、Ti、W、V、B、Al、Ni等の非磁性金属から選ばれる少なくとも一種以上の材料が挙げられる。例えば、Coを主成分とする磁性膜102の場合には、下地層の材料は、磁気特性向上等の観点からCr単体やCr合金であることが好ましい。また、下地層は、単層とは限らず、同一または異種の層を積層した複数層構造であってもよい。このような複数層構造の下地層は、例えば、Cr/Cr、Cr/CrMo、Cr/CrV、NiAl/Cr、NiAl/CrMo、NiAl/CrV等の多層下地層が挙げられる。磁性膜102の摩耗や腐食を防止する保護層として、例えば、Cr層、Cr合金層、カーボン層、水素化カーボン層、ジルコニア層、シリカ層等が挙げられる。これら保護層は、下地層および磁性膜102と共にインライン型スパッタ装置で連続して形成することができる。また、これら保護層は、単層としてもよく、あるいは、同一または異種の層からなる複数層構成であってもよい。なお、上記保護層上に、あるいは、上記保護層に代えて、他の保護層が形成されてもよい。例えば、上記保護層に代えて、Cr層の上にSiO
2層が形成されてもよい。このようなSiO
2層は、Cr層の上にテトラアルコキシシランをアルコール系の溶媒で希釈した中に、コロイダルシリカ微粒子を分散して塗布し、さらに焼成することによって形成される。
【0078】
このような本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101を基体とした磁気記録媒体は、情報記録媒体用ガラス基板101が上述した組成により形成されるので、情報の記録再生を長期に亘り高い信頼性で行うことができる。
【0079】
なお、上述では、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101を磁気記録媒体(磁気ディスク)に用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、本実施形態における情報記録媒体用ガラス基板101は、光磁気ディスクや光ディスク等にも用いることが可能である。
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0081】
[実施例1]
まず、原料ガラスとして、SiO
2、Al
2O
3、R
2O(R=K、Na、Li)を主成分としたアルミノシリケートガラスを用いて、円盤加工工程を行った。具体的には、原料ガラスを、公知の方法により、溶融し、得られた溶融ガラスをプレス成形して、外径が67mmの円盤状のガラス素板を得た。また、このガラス素板の厚みが、1.0mmとなるように成形した。
【0082】
次に、得られたガラス素板の両主表面を、両面研削機を用いて研削加工した。その後、研削加工を施したガラス素板に、コアリング工程を施し、ガラス素板の中心部に貫通孔を形成した。具体的には、研削加工を施したガラス素板の中心部に、円筒状のダイヤモンド砥石を備えたコアドリルを用いて、直径が約19.6mmの円形の中心孔(貫通孔)を開けた。
【0083】
次に、ガラス素板に対して、内外研削工程を施した。具体的には、鼓状のダイヤモンド砥石を用いて、ガラス素板の外径が65mm、内径が20mmとなるように、ガラス素板の外周端面及び内周端面を研削した。その後、ガラス素板に対して、端面工程を施した。具体的には、ガラス素板を100枚重ねた状態で、そのガラス素板の外周端面および内周端面を、端面研磨機を用いて研磨加工した。研磨機のブラシ毛として、直径が0.2mmのナイロン繊維を用いた。研磨液は、平均一次粒子径が3μmの酸化セリウムを砥粒として含有するスラリーを用いた。その後、ガラス素板の両表面を、両面研削機にてダイヤモンドシートを用いて加工を行った。
【0084】
このようにして得られたガラス素板に対して、研磨工程を施した。具体的には、ガラス素板の両主表面を、
図1及び
図2に示すような研磨装置を用いて研磨加工した。具体的には、上記研磨工程が施されたガラス基板に対して、まず、キャリアとして、表1に示すように、熱伝導率が2W/m・Kであるキャリアを用いる以外、公知の方法で、粗研磨工程を施した。粗研磨工程を行った。その後、粗研磨工程が施されたガラス基板に対して、キャリアとして、表1に示すように、熱伝導率が2W/m・Kであるキャリアを用いる以外、公知の方法で、精密研磨工程を施した。
【0085】
なお、キャリアは、エポキシ樹脂と炭素繊維とを、種々の配合比で配合させることによって、作製した。その後、作製したキャリアの熱伝導率を、レーザフラッシュ法で測定し、所望の熱伝導率のキャリアを選択した。このようにして、種々の熱伝導率のキャリアを作製した。
【0086】
次に、精密研磨工程を施したガラス基板に対して、最終洗浄工程を行った。具体的には、まず、スクラブ洗浄を行った。その際、洗浄液として、洗浄能力を高めるために非イオン界面活性剤を添加して得られた液体を用いた。その後、ラス基板の表面に残る洗浄液を除去するために、水リンス洗浄工程を超音波槽で2分間行い、IPA洗浄工程を超音波槽で2分間行った。最後に、IPA蒸気により表面を乾燥させた。そうすることによって、ガラス基板が得られた。
【0087】
[実施例2及び実施例3]
実施例2及び実施例3は、研磨工程におけるキャリアとして、表1に示す熱伝導率のキャリアを用いること以外、実施例1と同様である。
【0088】
[比較例1]
比較例1は、研磨工程におけるキャリアとして、従来から用いられているキャリアを用いること以外、実施例1と同様である。具体的には、キャリアとしては、エポキシ樹脂とガラス繊維とを配合することに得られたキャリア、すなわち、ガラスエポキシからなるキャリアを用いた。
【0089】
[比較例2]
比較例2は、定盤の温度調整をしたこと以外、比較例1と同様である。なお、実施例1〜3及び比較例1は、このような定盤の温度調整をしていなかった。
【0090】
[評価]
上記実施例及び比較例を、以下の方法により評価した。
【0091】
(板厚差)
各実施例及び比較例において、得られたガラス基板の複数個所の厚みを、株式会社ミツトヨ製のマイクロメータを用いて、測定した。具体的には、ガラス基板の内周側端部付近、中央部付近、外周端部付近等、様々な箇所を10箇所程度の厚みを測定した。その最大値と最小値との差を算出した。その差を、板厚差として評価した。
【0092】
(フラッタリング特性)
フラッタリング特性は、
図5に示すような方法で測定した。具体的には以下のような測定方法である。
【0093】
まず、各実施例及び比較例において、得られたガラス基板(測定対象物)40を、エアスピンドルモータ41によって、矢符Aの方向に高速回転(10000rpm)させた。その回転させた測定対象物40の外周端部付近に向かって、レーザ振動計42からレーザ光を照射させた。そして、測定対象物40の表面Pで反射された反射光をレーザ振動計42で検知し、その反射光の波長を測定した。その際、この波長は、測定対象物40の上下方向(スピンドルの軸方向)の振動により変化するので、測定対象物が1周回転する間の波長の変化を測定した。すなわち、この測定した波長の変化量が、測定対象物40の外周端部付近の振れ量に相当する。この振れ量に相当する、波長の変化量でフラッタリング特性を評価した。
【0094】
この波長の変化量が、50nm未満であれば、「◎」と評価し、50nm以上100nm未満であれば、「○」と評価し、100nm以上であれば、「×」と評価した。
【0095】
上記評価結果を、キャリアの熱伝導率等とともに表1に示す。
【0096】
【表1】
表1から、熱伝導率が2W/m・K以上のキャリアを用いた場合(実施例1〜3)は、熱伝導率が2W/m・K未満のキャリアを用いた場合と比較して、板厚差が小さく、フラッタリング特性に優れたガラス基板が得られることがわかった。
【0097】
また、熱伝導率が2W/m・K未満のキャリアを用いた場合であっても、定盤の温度調整をすることによって、板厚差は小さくすることができるものの、フラッタリング特性まで優れたガラス基板を得ることができなかった。
【0098】
これらのことから、キャリアとしては、熱伝導率が2W/m・K以上であることが好ましく、また、実施例2及び実施例3から、5W/m・K以上であることが好ましいことがわかる。