(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の概要を説明するための図である。また、
図2は、
図1のII−II断面の概要を示す図である。ここで、
図1は受光素子118が半田116を介して、パッド115、117上に搭載される前の図面を示す。なお、
図1及び2に示した構成は、一例であって、本実施の形態はこれに限られるものではない。
【0021】
図1及び
図2に示すように、光受信モジュール100は、主に、受光素子118、受光素子118が搭載されるキャリア120、トランスインピーダンスアンプ108、基板107を含む。そして、光信号125は、光ファイバ129内のファイバコア層123を通って出力され、レンズ124によって集光され、受光素子118に形成された吸収層126に入射する。なお、
図1及び2で示した受光素子118は、光信号125が、受光素子118内部を通り、吸収層126に入る、裏面入射型受光素子である。
【0022】
受光素子118は、例えば、ガリウム砒素、インジウムリン、シリコン、シリコンゲルマ等の半導体物質によって形成されるが、使用波長や伝送容量(通信速度)によって使われる材料は異なる。なお、受光素子118を構成する材料は、上記以外であってもよく、また、上記の複合物質であっても良い。
【0023】
受光素子118の吸収層126に入力された光信号125は、電気信号に変換される。当該電気信号は、順に、受光素子118に形成されたシグナルパッド128、キャリア120上のシグナルパッド115、トランスインピーダンスアンプ108上のシグナルパッド114を介して、トランスインピーダンスアンプ108に形成された増幅部(図示せず)に入力される。
【0024】
シグナルパッド128とシグナルパッド115は電気的・機械的に接続される。具体的には、例えば、半田116によって接続される。また、シグナルパッド115とシグナルパッド114はワイヤ112によってボンディング接続により電気的・機械的に接続される。
【0025】
受光素子118には、バイアス電源が供給される。具体的には、例えば、バイアス電源は、外部電源線路(図示せず)からワイヤボンディング112により平板コンデンサ111上の電極を通り、バイアスパッド109に供給される。トランスインピーダンスアンプ108上にはバイアス電源線路(図示なし)がパターニングされており、当該バイアス電源線路を介して、バイアスパッド113に供給される。つまり、バイアス電源は、ワイヤボンディング112、バイアスパッド117、半田116、バイアスパッド127の順に通り、吸収層126に印加される。
【0026】
トランスインピーダンスアンプ108の電源は、外部線路(図示せず)からワイヤ112により平板キャパシタ111上の電極(図示なし)、電源パッド110を通って、トランスインピーダンスアンプ108上の信号増幅回路(図示なし)へ供給される。
【0027】
なお、トランスインピーダンスアンプ108の電源から、受光素子118のバイアス電源を供給してもよい。また、受光素子118へのバイアス電源供給方法は、トランスインピーダンスアンプ108を製造するメーカーによって異なるのが一般的である。
【0028】
トランスインピーダンスアンプ108は、シグナルパッド114から入力された電気信号を増幅し、シグナルパッド105へ出力する。シグナルパッド105が2つあるのは、差動出力をしているためである。そして、差動出力された信号は、基板107上のシグナルパターン103を通って、光受信モジュール100の外部へと出力される。
【0029】
キャリア120は、表面にシグナルパッド115、バイアスパッド117、薄膜抵抗119を含む。なお、キャリア120の材料としては、例えば、アルミナ、アルミナイトライド、ガラス、石英などの1MΩm以上のセラミックを用いるほうが好ましい。
【0030】
シグナルパッド115は、例えば、トランスインピーダンスアンプ108側の略中央部に配置される。そして、当該シグナルパッド115の外周に沿って、シグナルパッド115の周りを囲むように、バイアスパッド117が配置される。また、バイアスパッド117には、少なくともバイアスパッド117の外周の一部に接するように、薄膜抵抗119が配置される。つまり、バイアスパッド117と、薄膜抵抗119が並列接続の関係にあるように薄膜抵抗119を配置する。
【0031】
なお、
図1は、一例として、薄膜抵抗119が、バイアスパッド117のトランスインピーダンスアンプ108と逆側の一辺を覆うように配置される場合を示すが、薄膜抵抗119がバイアスパッド117の外周の少なくとも一部と接するように配置される限り、薄膜抵抗119は、
図1と異なる位置、形状、サイズで配置してもよい。更に、バイアス電源については、トランスインピーダンスアンプ108からではなく、外部からバイアスパッドに供給されるように構成してもよい。具体的には、例えば、
図3に示すように、薄膜抵抗1110をキャパシタ1114と反対側の辺の一部に接するように配置してもよい。
【0032】
次に、
図3を用いて、受光素子118に数GHz以上の高周波光信号が入力された場合のバイアスパッド周辺の電流の流れについて説明する。受光素子118に数GHz以上の高周波光信号が入力されると、受光素子118は、当該周波数に応じた電流をバイアスパッド1111から引き込もうとする。その際、表皮効果によって、高周波信号はバイアスパッド1111の外周及び内周に沿って流れる。つまり、
図3において、それぞれ、第1の電流パス1112、第2の電流パス1113に沿って流れる。
【0033】
ここで、
図3に示すように、第1の電流パス1112は、第2の電流パス1113よりも長い。そのため、第2の電流パス1113を通る高周波電流が共振すると、より低周波側で電磁界放射が起きる。例えば、第2の電流パス1113を通る高周波電流が30GHzで共振すると、第1の電流パス1112を通る高周波電流は20GHzで共振するなどの現象が起きる。
【0034】
近年、100Gbps伝送に使われる、伝送容量25Gbpsの光受信モジュールにとっては、この低周波側の共振のほうが、性能劣化の原因となる。そこで、バイアスパッド1112の外周、つまり、電流パスが長い側のバイアスパッド1112の外周(第1の電流パス1112)の少なくとも一部に接するように抵抗薄膜1110を設けることにより、より低周波側の共振を抑制することができる。なお、上記においては
図3を用いて共振を抑制することができる点について説明したが、これは
図1及び
図2についても同様である。また、当該効果の詳細については後述する。
【0035】
なお、例えば、
図4に示すように、薄膜抵抗119を、バイアスパッド117の内周に接するように配置してもよいが、上記のように外周の少なくとも一部に薄膜抵抗を設ける方が望ましい。例えば、光通信で使われるパターン符合は、低域からある決まった帯域まで必要とする広帯域な伝送容量を必要とし、上記のようにより低周波側の共振を抑制することが望ましいからである。
【0036】
また、薄膜抵抗119は、更に、受光素子118に配置されるバイアスパッドの外周の一部に設けてもよい。例えば、
図5に示すように、薄膜抵抗119に加えて、薄膜抵抗605を、受光素子118のキャリア120に設置される側の面(裏面)に形成されるバイアスパッド604の外周の一部に接するように設けてもよい。具体的には、例えば、バイアスパッド604の外周に接するように、受光部602の両側に2つの薄膜抵抗605を配置する。また、本実施の形態においてはキャリア120上の薄膜抵抗119と受光素子118に設けられた薄膜抵抗605は、どちらかにのみ設けてもよいし、両方に同時に設けても構わない。なお、どちらかがあれば、共振を抑制することができる。
【0037】
上記の場合、
図5に示すように、受光素子118の裏面には、吸収層602、バイアスパッド604、シグナルパッド603が配置される。そして、上記のように当該バイアスパッド604の外周の一部に接するように薄膜抵抗605を設けてもよい。なお、バイアス電源は、バイアスパッド604から供給され、吸収層602において、光信号から電気信号に変換される。また、当該電気信号はシグナルバッド603から出力される。なお、受光素子118をキャリア120に搭載する際には、例えば、キャリア120のシグナルパッド115及びバイアスパッド117と、受光素子601のシグナルパッド603及びバイアスパッド604をそれぞれ半田116によって接続する。
【0038】
次に、薄膜抵抗119とバイアスパッド117との断面における配置についてより具体的に説明する。薄膜抵抗119は、例えば、
図6または
図7に示すように、バイアスパッド117の端部(図中Aで示した部分)と接するように配置する。より具体的には、例えば、
図6に示すように、バイアスパッド117の端部に重ねて薄膜抵抗119を配置する。または、例えば、
図7に示すように、薄膜抵抗119上にバイアスパッド117の端部が位置するように、バイアスパッド117を重ねて配置する。なお、
図2に示すように、バイアスパッド117と薄膜抵抗119を重ねずに、バイアスパッド117の端部と薄膜抵抗119の端部が接するように配置してもよい。
【0039】
上記のようにバイアスパッド117の端部が薄膜抵抗119と接するように配置することにより、高周波電気(電流)信号がバイアスパッド117を流れた場合において、表皮効果によりバイアスパッド117の端部から漏れ出る高周波の電磁界は減衰され、バイアスパッドでの共振を抑制することができる。
【0040】
また、薄膜抵抗119の電気抵抗は、バイアスパッド117よりも電気抵抗を大きくする。例えば、バイアスパッド117は、表面を電気抵抗の小さい金属(たとえばAu)で形成し、薄膜抵抗119は、NiとCrの化合物、TaとNの化合物、Ti、Mo等の電気抵抗が大きい材料で形成する。なお、例えば、NiとCrの化合物、TaとNの化合物、Ti、Mo等の材料で、バイアスパッド117と薄膜抵抗119の位置にパターニングし、その上からバイアスパッド117の部分には、例えば電気抵抗が100nΩm以下の金属(例えば、金、アルミ、白金、銀など)をメッキしてもよい。
【0041】
上記のように、薄膜抵抗119の電気抵抗は、バイアスパッド117よりも電気抵抗が大きいことから、直流電流(DC)のほとんどは、バイアスパッド117を通って、吸収層126まで流れる。しかしながら、高周波周波数域においては、薄膜抵抗119についても電流が流れる。これにより、高周波周波数域での共振抑制やノイズ低減を図ることができる。以下
図1及び
図2に示したキャリア120とトランスインピーダンスアンプ108周辺の簡略化した等価回路等を用いてより具体的に説明する。
【0042】
図8は、
図1に示したキャリアとトランスインピーダンスアンプ周辺の等価回路を示す図である。なお、理解の容易化のために、当該等価回路は簡略化して示す。
【0043】
受光素子118は、受光した光に比例した電流を出力する電流源215と、内部容量214、内部抵抗212を含む素子と考えることができる。よって、
図2においては、受光素子118は、電流源215と、内部容量214、内部抵抗212で表される。また、
図1及び
図2におけるトランスインピーダンスアンプ108は、
図8における増幅回路203及び出力線路202に対応する。また、
図1及び
図2における平板キャパシタ111はキャパシタ210に対応する。また、ワイヤ112は、シグナルワイヤ204、バイアスワイヤ207、208に対応する。
【0044】
図8に示すように、キャリア120上のシグナルパッド(図示せず)、バイアスパッド117は、それぞれ、シグナルワイヤ204、バイアスワイヤ205によって、トランスインピーダンスアンプ108上のシグナルパッド(図示せず)、バイアスパッド(図示せず)に接続される。なお、トランスインピーダンスアンプ201内のバイアス線路206にはフィルタ等を設けてもよい。また、その引き回し方法等は、メーカー各社によって異なる。
【0045】
ここで、当該等価回路の周波数特性には、増幅回路203の性能や受光素子118のキャリア走行時間が影響し、また、バイアスワイヤインダクタンス205、内部容量214、内部抵抗212、シグナルワイヤインダクタンス204が大きく影響する。
【0046】
具体的には、当該等価回路の遮断周波数Fは、F=1/(2*pi*C*R)(C:容量、R:抵抗)・・・(1)で表される。ここで、C、Rは、バイアス線路206から出て、増幅回路203に入るまでの電流パスに内包される容量と、抵抗である。式(1)からわかるように、CとRが小さい方が、遮断周波数Fが大きく、伝送帯域が広くなる。
【0047】
電流源215は、受光信号の周波数に応じた電流をバイアスパッド117から引き込もうとする。ところが、バイアスパッド117とトランスインピーダンスアンプ108のバイアスパッド(図示せず)の間にワイヤインダクタンス205があるため、バイアス線路206とバイアスパッド117の間に電位差を生じる。このような場合、バイアスパッド117は、その形状と、長さに応じて、特定の周波数で共振を起す場合がある。そして、バイアスパッド117上の共振は、増幅回路203に入力されるシグナル信号の劣化を引き起こす。
【0048】
ここで、共振する周波数は、一般に数GHz〜数十GHzまでの高周波である。これらの高周波は、一般に表皮効果と呼ばれる物理現象により、バイアスパッド117の周辺に局在する。そこで、本実施の形態においては、上記のように、薄膜抵抗119をバイアスパッド117と並列接続となるように設ける。したがって、当該薄膜抵抗119にわずかながら高周波電流が流れるようになり、共振効率が下がる。その結果、シグナル信号の劣化を抑制することができる。
【0049】
次に、
図9乃至
図11を用いて、本実施の形態における効果について、シミュレーション結果を用いてより具体的に説明する。なお、シミュレーションにはANSYS社の電磁界シミュレータHFSSを用いた。
【0050】
本シミュレーションにおいては、
図9に示すように、パッケージ基板301上にトランスインピーダンスアンプ302が搭載され、トランスインピーダンスアンプ302上に受光素子304が搭載される。このように、
図9においては、トランスインピーダンスアンプ302上に受光素子304が搭載されている点で、
図1とは異なる。しかし、
図1及び
図9の構成は実質的に同一であり、キャリア303に設けた抵抗薄膜315の有無による性能比較を論じる上では問題ない。また、
図9においては、バイアスパッド306の間に抵抗パターン316を挿入しているが、これは、従来の方法のディメリットを述べるためであり、結果については、後述する。なお、本実施の形態において
図1ではなく
図9に示した構成としてもよいことはいうまでもない。
【0051】
図10A及び
図10Bは、薄膜抵抗を設けない場合に相当するキャリア上の電磁界分布を説明するための図である。
図10Aに示すように、キャリア303上に薄膜抵抗315は設けられていない。
図10Bは、
図10Aに示した場合におけるパッケージ基板301を見たキャリア303上面の電磁界分布を表す。なお、
図10A及び
図10Bは、
図9を上方向から見た平面図を表す。
【0052】
なお、当該シミュレーションにおいては、抵抗パターン316は、0Ωとした。また、受光部に入力される信号は、32.4GHzとした。なお、理解の容易化のため、
図10A及び
図10Bにおいては受光素子304を透明で表す。
【0053】
図10Bに示すように、薄膜抵抗315を設けない場合、受光部314に光信号が入力されると、バイアスパッド306が共振する。具体的には、例えば、
図10Bの斜線部分が空中に飛び出している電磁界を示す。そして、共振電磁界は、バイアスパッド306の内周ではなく外周に集中する。これは、表皮効果といって、高周波電流がバイアスパッドの外周を流れるようになる現象を表すものである。当該共振した電磁界は、バイアスパッド306から空中に飛び出し、光受信モジュールのパッケージ内を飛び交い、トランスインピーダンスアンプ302の誤動作を引き起こす場合がある。
【0054】
図11Aは、本実施の形態における薄膜抵抗315を設けた場合に相当するキャリア303上の電磁界分布を表す図である。具体的には、当該シミュレーションにおいては、
図11Aに示すように、キャリア303上のバイアスパッド306と接するように薄膜抵抗315(270μm×300μm)を配置する。また、抵抗値は、1cm角の正方形で100Ωを示す値である。また、入力される光信号は32.4GHzである。
【0055】
バイアスパッド306を流れる共振は抑制され、電気信号はシグナルパッド305を流れる。つまり、
図10Bと
図11Bを比較するとわかるように、電磁界が空間中に飛び出すことなく、正常に動作する。具体的には、32.4GHzの高周波電流がバイアスパッド306の端部を流れると、わずかながら薄膜抵抗315内を流れる。これにより、共振効率が著しく悪くなり、シグナル信号の劣化が抑制される。
【0056】
図12は、薄膜抵抗315の抵抗値による効果を検証した図面を示す。ここで、
図12においては、縦軸が伝達特性(S21)を示し、横軸が周波数を示す。
図12からわかるように、薄膜抵抗315を設けない場合、32.4GHzの周辺に鋭いディップが見られる。すなわち、この周波数近傍の電磁波は、バイアスパッド306を離れ、空間中に飛び出すことが分かる。
【0057】
しかしながら、薄膜抵抗315を設けると、薄膜抵抗315を設けない場合と比べて、伝達特性劣化が改善していることが分かる。具体的には、10Ω/□(1cmの正方形で10Ω)乃至1000Ω/□の薄膜抵抗315を設けた場合に伝達特性劣化が改善する。より具体的には、特に50Ω/□(1cmの正方形で50Ω)乃至100Ω/□の薄膜抵抗315を設けた場合、ディッピングやピーキングが少なく、よりフラットな伝達特性を実現することができる。
【0058】
図13は、本実施の形態との比較例としてバイアスパッドに直列に抵抗パターンを設けた場合の伝達特性を示す図である。
図13に示すように、当該抵抗パターン316の抵抗値が20Ω〜60Ωのとき、32.4GHzにある共振ディップが小さくなっていることが分かる。しかしながら、この場合、
図12に示した場合と比較すると分かるように、20GHz以下の周波数域において、伝達特性の劣化(低下)が見られる。すなわち、バイアスパッド306に直列に抵抗パターン316を挿入すると、上記(1)式にしたがって、遮断周波数が低下する。これは、伝送帯域の広い高速光ファイバ通信に使われる、光受信モジュールの性能としては不十分である。これに対し、本実施の形態によれば、
図12と
図13を比較するとわかるように、30GHz以下の周波数域及び30GHz以上の周波数域の両周波数域において、伝達特性をよりフラットにすることができる。
【0059】
なお、薄膜抵抗315に使う抵抗値は、バイアスパッド306の形状、大きさ、位置によって異なるが、たとえば10Ω/□程度の小さな抵抗値から1000Ω/□程度の抵抗値ぐらいまでが、製造上、無理のない範囲と言える。
【0060】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0061】
具体的には、例えば、
図14に示すように、上記光受信モジュール100は、4チャンネル光受信モジュールとして構成してもよい。具体的には、
図14に示すように、アレイ受光素子1817は、4チャンネルの吸収層を持ち、それぞれのチャンネルにシグナルパッド(図示なし)、バイアスパッド(図示なし)を有する。そして、上記と同様に、アレイ受光素子1817の各パッドは、半田1816によってキャリア1812上のシグナルパッド1813、バイアスパッド1814上に搭載される。なお、キャリア1812上のバイアスパッド1814は、
図14においては、各チャンネルで独立しているが、全チャンネルで共通化されていても良い。
【0062】
また、上記と同様に、各チャンネルのバイアスパッド1814には、抵抗薄膜1815が、バイアスパッド1814の外周に接するようにされている。これにより、キャリア1812上のバイアスパッド1814の共振を防止することができる。なお、詳細については、上記光受信モジュール100と同様であることから、説明を省略する。
【0063】
アレイ受光素子1817において光信号は電気信号に変換され、トランスインピーダンスアンプ1811において、チャンネル毎に増幅・出力される。出力するためのパッドは、2つのGNDパッド1809の間に、2つの差動のシグナルパッド1810があるが、これはGSSG構造とよばれる出力パッドの並びである。また、
図14においては、アレイ受光素子1817のバイアスは、トランスインピーダンスアンプ1811から供給されているがトランスインピーダンスアンプ1811を経ずに、外部からバイアスを供給してもよい。その場合、バイアスパッド1814は、チャンネル毎で独立させてもよいし、一部を共通化させても良い。
【0064】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施の形態においては、バイアスパッド413に印加するバイアス電源を、外部から、ワイヤ407、平板コンデンサ409等を介して供給する点等が、主に、第1の実施形態と異なる。なお、下記において第1の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0065】
図15は、本発明の第2の実施形態について説明するための図である。
図15に示すように、バイアスパッド413に印加するバイアス電源は、トランスインピーダンス410のパッドから供給するのではなく、外部からワイヤ407、平板コンデンサ409上の電極を経て供給する。
【0066】
また、上記第1の実施形態と同様に、バイアスパッド413の外周の一部に薄膜抵抗412を設ける。具体的には、例えば、本実施の形態においては、バイアスパッド413は、L字形状を有し、薄膜抵抗412は、シグナルパッド416と反対側に位置する外周の2辺に接するように設ける。なお、当該バイアスパッド413の形状は、一例であって、これに限定されるものではない。
【0067】
更に、上記第1の実施形態と同様に、ある周波数の光信号が受光素子417に入力され、その周波数に対応した電流をバイアスパッド413から引き込んだ場合、表皮効果の影響が少ないDC〜数GHzの電流であれば、電流はバイアスパッド413の全体にわたって通ることになり、薄膜抵抗412の影響を受けることはない。しかし、数GHz以上の高周波になると、電流密度はバイアスパッド413の縁に局在するようになり、わずかながら、薄膜抵抗412の内部を通るようになる。そのため、バイアスパッド413での共振は抑えられ、バイアスパッド413から電磁界放射の発生を防止することができる。
【0068】
本発明は、上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0069】
[第3の実施形態]
図16は、本発明の第3の実施形態を説明するための図である。本実施の形態においては、いわゆるパッケージ基板701に光受信モジュールである点が上記第2の実施形態と主に異なる。なお、下記において第2の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0070】
具体的には、
図16は、トランスインピーダンスアンプ705やキャリア715を上方からみた概要を示す図である。
図16に示すように、パッケージ基板701は、一般的にはステムともよばれ、同軸形状を有する。当該パッケージ基板701は、CAN型パッケージ等として知られている。当該パッケージ基板701の材質としては、例えば、コバール、鉄、SUS、CuW等に金メッキしたものを用いる。
【0071】
受光素子713へのバイアス電源やトランスインピーダンスアンプ705への電源は、リードピン709、719によって外部から供給される。また、トランスインピーダンスアンプ705から出力される電気信号は、シグナルピン704によって、光受信モジュールの外部へ出力される。
【0072】
なお、受光素子713等は、外気からの湿度・ゴミ等の影響をさけるため、気密封止してもよい。その場合、パッケージ基板701上には、レンズ付きCAPを溶接搭載する。また、誘電体703、710、720としては、例えば、気密性に優れたガラスやセラミックなどの無機材質を用いる。
【0073】
バイアス電源には、フィルタ抵抗基板718と、平板コンデンサ702が搭載されており、当該平板コンデンサ702は、外部からバイアスピン719を通って、受光素子713に入るノイズを低減する。
【0074】
ここで、上記第1及び第2の実施形態と同様に、平板コンデンサ702とバイアスパッド721の間にはワイヤ711があるため、特に高周波域において電位がわずかにずれる。そのため、キャリア715上のバイアスパッド721は、その寸法と形状に応じて、ある特定の周波数において共振を起しやすくなる。共振が起きた場合、その電磁界は、バイアスパッド721から光受信モジュール内部の空間中に放出される。その電磁界ノイズが、トランスインピーダンスアンプ705上にシグナルや電源パッドから入力され、増幅出力されると、光受信モジュールの性能は著しく劣化する。
【0075】
そこで、本実施の形態においても、上記第1及び第2の実施形態と同様に、抵抗薄膜714をバイアスパッド721の外周に接するように形成する。これにより、共振による電磁界ノイズ放出を抑制することができる。
【0076】
図17は、
図16に示した構成の等価回路の概要を示す図である。上記第1の実施形態と同様に、受光素子713は、内部抵抗813、電流源812、内部容量810で表される。また、シグナルワイヤ711等が、ワイヤインダクタンス814等で表される点も上記第1の実施形態と同様であるので、詳細な説明については省略する。
【0077】
図17に示すように、受光素子713は、キャリア715上に搭載され、キャリア715とトランスインピーダンスアンプ705の間にはワイヤインダクタンス814が配置される。ここで、平板コンデンサ806とフィルタ抵抗804は、光受信モジュール外部にあるバイアス電源802から進入するノイズを防ぐ。
【0078】
しかしながら、高周波領域では、平板コンデンサ806の電位と、バイアスパッド721の電位は、わずかながら一致しない。そのため、バイアスパッド721は、ある周波数において、共振を起しやすい。しかしながら、上記第1の実施形態と同様に、薄膜抵抗714がバイアスパッド721に並列接続されていることから、共振効率が低下し、電磁界ノイズ放射が抑制されている。
【0079】
本発明は、上記第1乃至第3の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0080】
[第4の実施形態]
図18は、本発明の第4の実施形態を説明するための図である。本実施の形態においては、バイアスパッドとは別に、薄膜抵抗に接するパッドを設ける点が、主に、上記第3の実施形態と異なる。なお、下記において第3の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0081】
図18に示すように、キャリア915上のバイアスパッド921の外周の一部に接するように、薄膜抵抗914を設ける。本実施の形態においては、更に、当該薄膜抵抗914に接するように、また、バイアスパッド921とは接しないようにパッド924を形成する。
【0082】
ここで、パッド924は、薄膜抵抗914よりも抵抗値を低くする。具体的には、例えば、パッド924には、DCが通るように、例えば、0.1Ω以下となるように金メッキ等を行う。
【0083】
図19は、本実施の形態の効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図である。具体的には、
図19は、30Ω/□の薄膜抵抗914を設けた場合において、パッド924を設けた場合と設けなかった場合における伝達特性と周波数の関係を示す。
図19からわかるように、パッド924を設けた方が、設けない場合に比べて伝達特性をよりフラットにすることができる。なお、横軸が周波数を表す等については、上記第1の実施形態と同様である説明を省略する。また、
図19においては、パッド924を第2電極として示す。
【0084】
図20は、
図18で示した光受信モジュールの等価回路の概要を示す。
図20に示すように、キャリア1017上のバイアスパッド921には、薄膜抵抗914を介して、パッド924が配置される。
【0085】
ここで、上記第1乃至第3の実施形態と同様に、光信号が受光素子913に入射された場合、電流源1012は、電流パス1019にしたがって、電流を引き込もうとする。電流がDC〜数GHzの低周波であれば、電流は、薄膜抵抗914やパッド924の影響を受けることはない。
【0086】
しかし、電流が、数GHz以上になると、電流は、薄膜抵抗914及びパッド924の影響を受けるようになる。つまり、薄膜抵抗914やパッド924がバイアスパッド921に対して並列となり、薄膜抵抗914やパッド924を流れるようになる。なお、当該影響による効果の詳細については、
図19を用いて上記において説明したとおりである。
【0087】
なお、本実施の形態によれば、シグナルパッド912とパッド924にプローブ等を押しつけることにより、受光素子913のDC特性や高周波特性を検査することもできる。
【0088】
本発明は、上記第1乃至第4の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0089】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施の形態においては、主に、第4の実施形態と同様にバイアスパッドと並列に接続された抵抗薄膜及び当該抵抗薄膜に接するパッドを設ける点に加え、更に、バイアスパッドに直列に接続された抵抗薄膜を設ける点が異なる。なお、下記において第4の実施形態と同様である点については説明を省略する。
【0090】
図21は、本発明の第5の実施形態について説明するための図である。具体的には
図21は、本実施の形態における光受信モジュールの概要を表す斜視図である。また、
図22は、受光素子1305の裏面(キャリア1301に設置する側の面)からみた平面図である。
【0091】
図21及び
図22に示すように、受光素子1305上のシグナルパッド1317、バイアスパッド1316、半田パッド1314は、半田1303によって、それぞれ、シグナルパッド1302、バイアスパッド1312、半田パッド1304上に搭載される。半田パッド1304は、受光素子1305とキャリア1301との接着強度を高めるためのものである。
【0092】
受光素子1305へのバイアス電源は、外部からワイヤ1307、平板コンデンサ1308上のパッドを介して、バイアスパッド1311に印加される。つまり、外部から入力されるDCから数GHzの電流は、電流パス1313に示すように、バイアスパッド1311に印加される。
【0093】
ここで、本実施の形態においては第1の抵抗薄膜1306を、バイアスパッド1311とバイアスパッド1312の間に配置する。つまり、第1の抵抗薄膜1306が、電流パス1313に沿って、バイアスパッド1311及びバイアスパッド1312と直列になるように設ける。したがって、第1の抵抗薄膜1306をすべての周波数の電流が通る。そのため、遮断周波数を小さくすることができる。これにより、本実施の形態によれば、第1の抵抗薄膜1306を所定の位置に所定の形状で設けることにより、所望の性能を持った光受信モジュールを提供することができる
【0094】
また、上記第4の実施形態と同様に、バイアスパッド1311に接するように第2の薄膜抵抗1310を設け、更に、第2の抵抗薄膜1310に接するようにパッド1309を設ける。当該第2の抵抗薄膜1310及びパッド1309は、電流パス1313の中にないため、DC〜数GHzでは、ほとんど影響をもたらさない。しかしながら、数GHz以上で効果を発揮し、抵抗薄膜1310、パッド1309の大きさ・形状に応じておきる共振を抑制する。
【0095】
上記のように、上記第4の実施の形態の効果に加え、本実施の形態によれば、所望の性能を持った光受信モジュールを提供することができる。
【0096】
本発明は、上記第1乃至第5の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。
【0097】
例えば、上記第2の抵抗薄膜1310を
図23に示す位置に設けてもよい。この場合、上記と同様に、受光素子1305に対するバイアス電源は、ワイヤ1307、平板コンデンサ1308上のパッドを介して供給される。DC〜数GHzという比較的低い周波数の電流は、第1の抵抗薄膜1306、バイアスパッド1311の経路、すなわち、電流パス1313にしたがって流れる。全周波数の電流が流れる第1の抵抗薄膜1306は、遮断周波数を低くする。そして、数GHz以上の高周波になると、バイアスパッド1311に流れた電流の一部が、第2の抵抗薄膜1310にも流れるようになる。そのため、バイアスパッド1311での共振を抑制することができる。すなわち、第1の抵抗薄膜1306と、第2の抵抗薄膜1310をバイアスパッド1311につける位置、組み合わせによって、所望の性能を持った光受信モジュールを提供することができる。
【0098】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施の形態においては、トランスインピーダンスアンプ1501上に、受光素子1504を設ける点が、主に、上記第1の実施形態と異なる。なお、下記において第1の実施形態等と同様である点については説明を省略する。
【0099】
図24は、本実施の形態における光受信モジュールについて説明するための図である。
図24に示すように、受光素子1504は、例えば、接着剤等によりトランスインピーダンスアンプ1501上に搭載固定される。
【0100】
上記第1の実施形態と同様に、トランスインピーダンスアンプ1501の電源は、外部よりワイヤ1505、平板キャパシタ1512上のパッドを経て、電源パッド1511に供給される。受光素子1504のバイアスは、トランスインピーダンスアンプ1501内で電源から生成または分岐され、バイアスパッド1503から受光素子1504上のバイアスパッド1506に供給される。
【0101】
ここで、受光素子1504は、吸収層1508が表面(
図24の上側)に位置する表面入射型受光素子である。よって、シグナルパッド1507、バイアスパッド1506も、受光素子1504の表面側にある。
【0102】
上記第1の実施形態と同様に、抵抗薄膜1509を、バイアスパッド1506の外周に沿ってバイアスパッド1506と並列接続となるように配置する。これにより、バイアスパッド1506における共振を抑制することができる。
【0103】
本発明は、上記第1乃至第6の実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。例えば、上記においては、トランスインピーダンスアンプを用いた場合を例として説明したが、プリアンプ、リミッティングアンプ、オートゲインコントローラ等のアンプを用いてもよい。