(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104688
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】走行駆動装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/02 20060101AFI20170316BHJP
B60K 17/10 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
E02F9/02 A
B60K17/10 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-86498(P2013-86498)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2014-211013(P2014-211013A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 輝彦
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−079838(JP,A)
【文献】
特開2010−149614(JP,A)
【文献】
特開2011−027719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/28
B60K 17/10−17/26
B60K 1/00−8/00
B60W 10/00−20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに収納された油圧モータと、
前記油圧モータの出力軸に連結された減速機と、
前記ケースに対して回転自在に取り付けられ、前記減速機を収納するリングギアと、
を備える走行駆動装置において、
前記ケースと前記リングギアとの間の密閉された空間に、前記出力軸の回転力にて発電する発電機が配置されていることを特徴とする、走行駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行駆動装置において、
前記油圧モータと前記減速機との間に前記発電機が配置されていることを特徴とする、走行駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の走行駆動装置において、
前記発電機のステータが前記ケースの内壁面に固定されており、
前記発電機のロータが前記出力軸に固定されていることを特徴とする、走行駆動装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の走行駆動装置において、
全長がクローラ式建設機械のシューの幅以下とされていることを特徴とする、走行駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル、ホイールローダなどの建設機械の走行駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載の油圧ショベルでは、その走行駆動装置を油圧モータによる駆動ではなく電動モータによる駆動としている。このように、建設機械の分野では、建設機械を構成する様々な機器の電動化が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4527778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械を構成する様々な機器の電動化を進めるには電力を確保する必要がある。ここで、旋回装置を電動化した(旋回装置を電動モータで駆動する)ハイブリッド式建設機械がある。このハイブリッド式建設機械では、旋回停止時に、旋回用の電動モータを発電機として作動させることで電力を回生させている。しかしながら、停止までの時間が短いので回生効率は十分でない。
【0005】
建設機械の本体(例えば上部旋回体)に発電機を搭載して、エンジンの回転力を用いて当該発電機にて発電することで電力を得ることは可能であるが(上記したハイブリッド式建設機械ではこのようになっている)、この場合、発電機の設置スペースを建設機械の本体に確保する必要がある。建設機械の本体(例えば上部旋回体)には、エンジン、作動油タンク、コントロールバルブなど様々な機器が搭載されるので、発電機の設置スペースを建設機械の本体に確保する場合、既存の建設機械を構成する機器のレイアウトを大幅に見直す必要が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、既存の建設機械を構成する機器のレイアウトへの影響を抑えつつ、建設機械を構成する様々な電動機器を駆動するのに必要な電力の一部を補えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ケースに収納された油圧モータと、前記油圧モータの出力軸に連結された減速機と、前記ケースに対して回転自在に取り付けられ、前記減速機を収納するリングギアと、を備える走行駆動装置において、前記ケースと前記リングギアとの間の密閉された空間に、前記出力軸の回転力にて発電する発電機が配置されていることを特徴とする走行駆動装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、走行駆動装置の内部に発電機を設けている。そのため、既存の建設機械を構成する機器のレイアウトへの影響はほとんどない。また、当該発電機により必要な電力の一部を補うことができる。すなわち、本発明の走行駆動装置によれば、既存の建設機械を構成する機器のレイアウトへの影響を抑えつつ、建設機械を構成する様々な電動機器を駆動するのに必要な電力の一部を補うことができる。
また、ケースとリングギアとの間の密閉された空間に発電機を設置するので、発電機の防水防塵対策が必要なく、その設置を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行駆動装置を備える油圧ショベルを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る走行駆動装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の走行駆動装置は、油圧ショベルなどのクローラ式建設機械を駆動するのに好適に用いられる。以下に示す実施形態では、本発明の走行駆動装置を油圧ショベルの走行装置に適用した場合を例示している。
【0011】
(油圧ショベルの構成)
図1(a)および
図1(b)は、それぞれ、油圧ショベル100の側面図、および正面図である。なお、
図1(b)では、ブーム52などのアタッチメントの図示を省略している。
【0012】
油圧ショベル100は、クローラ式の下部走行体50と、下部走行体50の上に旋回可能に取り付けられた上部旋回体51とで構成される。下部走行体50は、クローラ55(履帯)、クローラ55を駆動する走行駆動装置1などを有する。上部旋回体51の前部には、ブーム52、アーム53、バケット54というアタッチメントが取り付けられる。これらのアタッチメントは、それぞれ、油圧シリンダー52a,53a,54aにより駆動される(油圧駆動)。
【0013】
(走行駆動装置の構成)
図2に示したように、走行駆動装置1は、ケース2(固定ケース)内に収納された油圧モータ4と、油圧モータ4の出力軸6に連結された減速機5とを備えている。減速機5は、リングギア3(回転ケース)内に収納されている。ケース2の端にはモータカバー17が取り付けられ、リングギア3のケース2とは反対側の端にはカバー18が取り付けられている。
【0014】
油圧モータ4は、例えば公知の斜板式油圧モータであり、エンジンによって駆動される油圧ポンプから圧油が給排されることにより回転する。その構造の図示は省略している。
【0015】
減速機5は、例えば公知の遊星歯車減速機であり、その減速機構によって油圧モータ4の回転速度を減速することにより大きなトルクを出力するものである。減速機5の構造の図示は省略している。油圧モータ4の出力軸6と減速機5の入力軸7とは相互に同軸で連結される。
【0016】
油圧モータ4を収納するケース2は、円筒形状であって、その外周にはフランジ2aが設けられている。このフランジ2aの部分で油圧ショベル100の車体に走行駆動装置1が取り付けられる。
【0017】
同様にリングギア3も円筒形状であって、その一方の端部の外周にはフランジ3aが設けられている。リングギア3のフランジ3a側の端部は、ケース2の端部に外挿される。この部分には、主軸受8,9が嵌め込まれる。主軸受8,9は、例えばボールベアリングである。リングギア3は、これら主軸受8,9によりケース2に対して回転自在となっている。油圧ショベル100の下部走行体50の一部品である走行用のスプロケット(駆動用スプロケット)に対してこのフランジ3a部が取り付けられる。リングギア3が減速機5を介して油圧モータ4により回転させられることで、クローラ55が駆動される。
【0018】
<発電機>
ここで、ケース2とリングギア3との間のシールリング10,11(パッキン)で密閉された空間であって、油圧モータ4と減速機5との間のスペースには発電機12が配置されている。ここで、発電機12は、主軸受8,9の内側に配置される。
【0019】
この発電機12は、油圧モータ4の出力軸6の回転力にて発電する発電機である。発電機12のステータコイル14(ステータ)は、ケース2の内壁面2bに固定されており、発電機12のロータ13は、油圧モータ4の出力軸6に固定されている。本実施形態では、ロータ13として永久磁石を用いている。なお、ロータ13として電磁石を用いてもよいが、その場合、界磁励磁のための電源回路が必要となる。そのため、ロータ13として永久磁石を用いたほうが構造が簡単で且つ保守が容易である。
【0020】
ステータコイル14にはケーブル19(出力線)の一端が接続されている。ケーブル19の他端は蓄電装置(不図示)に接続されている。このケーブル19は、ケース2に穿孔された穴2dに通されている。発電機12にて発電された電力はこのケーブル19から蓄電装置に送られる。
【0021】
本実施形態のステータコイル14の固定方法について説明する。ステータコイル14は、環状の固定補助部材15を用いて複数のボルト16によりケース2の内壁面2bに固定される。固定補助部材15とステータコイル14とが縫い合わせられるような形態で、固定補助部材15およびステータコイル14がケース2の内壁面2bにボルト16で固定される。なお、ケース2の内壁面2bは、ケース2のうち当該ケース2(走行駆動装置1)の軸方向に直交する内側方向に突出する環状部分2xの側面である。
【0022】
固定補助部材15の外周面に形成された溝にはOリング20(ガスケット)が嵌め込まれ、固定補助部材15の内周面に形成された溝にはシールリング11が嵌め込まれる。固定補助部材15の外周面は、Oリング20とともにケース2の内壁面2c(ケース2(走行駆動装置1)の軸方向に平行なケース2の内壁面)に接触する。このような構造で、固定補助部材15は、ケース2(走行駆動装置1)の軸方向に直交する方向でより動かないようにされている。すなわち、ステータコイル14は、固定補助部材15、ボルト16、シールリング11などにより、ケース2(走行駆動装置1)の軸方向および軸方向に直交する方向でより動かない構造で、ケース2の内壁面2bに固定されている。
【0023】
なお、固定補助部材15は、ステータコイル14の固定を強化する役割だけでなく、発電機12が配置される空間の密閉性を確保する役割を担っている。シールリング10,11、固定補助部材15、およびOリング20で、発電機12が配置される空間の密閉性が高められており、鉄粉などが発電機12に付着することが防止されている。
【0024】
図1に示したように、走行駆動装置1の全長は、油圧ショベル100のクローラ55のシュー56の幅W以下の寸法とされている(
図1(b)において、
図1(a)に示した走行駆動装置1がクローラ55のシュー56から飛び出ていない)。
【0025】
(作用・効果)
本発明では、走行駆動装置1の内部に発電機12を設けている。そのため、油圧ショベル100の上部旋回体51に発電機を搭載するのに比べて、エンジンなどの機器のレイアウトへの影響はない。また、当該発電機12により電動機器に必要な電力の一部を補うことができる。すなわち、本発明の走行駆動装置1によれば、既存の油圧ショベルを構成する機器のレイアウトへの影響を抑えつつ、油圧ショベルを構成する様々な電動機器を駆動するのに必要な電力の一部を当該走行駆動装置1にて補うことができる。これにより、動力の平準化を図ることができ、結果として省エネ性を高めることができる。
【0026】
また、ケース2とリングギア3との間の密閉された空間に発電機12を設置するので、発電機12の防水防塵対策が必要なく、その設置を容易に行える。
【0027】
油圧モータ4と減速機5との間の空きスペースに発電機12を収めているので、走行駆動装置1は肥大化しない。
【0028】
また、本実施形態では、発電機12のステータコイル14をケース2の内壁面2bに固定している。すなわち、油圧モータ4を収納するケースと、発電機12を収納するケースとを共通化している。発電機専用のケースを省いているので、走行駆動装置1の肥大化をより抑制できている。
【0029】
また、走行駆動装置1の全長がクローラ55のシュー56の幅W以下の寸法とされているので、走行駆動装置1の一部がシュー56から飛び出ないようにすることができ、走行駆動装置1の破損を低減できる。
【符号の説明】
【0030】
1 走行駆動装置
2 ケース
3 リングギア
4 油圧モータ
5 減速機
6 出力軸
7 入力軸
8,9:主軸受
10,11 シールリング
12 発電機
13 ロータ(永久磁石)
14 ステータコイル(ステータ)
17 モータカバー
18 カバー