(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
<デジタル印刷装置の構成>
図1に示すように、反転式シート処理装置としてのデジタル印刷装置1は、供給部としての給紙装置2、処理部としてのデジタル印刷ユニット3及び排出部としての排紙装置4を備える。
【0018】
給紙装置2には、複数のシートS1が積載された積載台21および、その積載台21の最上段のシートS1をフィーダボードFBへ搬送するサッカー装置23が設けられる。サッカー装置23は、第1吸23aおよび第2吸23bを備え、第1吸23aおよび第2吸23bが連続供給バルブ26および間欠供給バルブ27を介して負圧源25と接続される。
【0019】
連続供給バルブ26および間欠供給バルブ27は、共に第1吸23aおよび第2吸23bの負圧源25からの吸引を断接するものであるが、後述するように吸引を断接するタイミングがそれぞれ異なっている。
【0020】
フィーダボードFBのシート搬送方向先端側には、デジタル印刷ユニット3のフレーム3aに揺動自在に支持され、シートS1の一方の端部である先端(くわえ側端部)をくわえて保持する図示しないくわえ爪装置を備えたスイング装置31fが配設される。スイング装置31fには給紙側渡し胴32が対向して配置され、その給紙側渡し胴32がフレーム3aに回転自在に支持される。
【0021】
給紙側渡し胴32には、スイング装置31fのくわえ爪装置により受け渡されるシートS1の先端をくわえた状態で保持するくわえ爪装置32aが設けられる。なおデジタル印刷ユニット3では、スイング装置31fおよび給紙側渡胴32により上流側シート搬送装置を構成している。
【0022】
給紙側渡し胴32には、スイング装置31fよりもシート搬送方向下流側に第2の胴としての印刷胴33が対接配置され、その印刷胴33がフレーム3aに回転自在に支持される。印刷胴33は、給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aからシートS1の先端を受け取って保持する印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cと、この印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cに対応して設けられシートS1を支持する支持面33d、33e、33fとを備え、本実施の形態においては、印刷胴くわえ爪装置と支持面との組が3組設けられた3倍胴として構成されており、その直径も給紙側渡し胴32の3倍の直径を有している。ここで、シートS1を保持する印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cが円周方向に互いに120度位相をずらした状態で設けられる。
【0023】
印刷胴33の支持面33d、33e、33fには複数の吸引用孔が形成されており、その複数の吸引用孔が負圧源と接続される。この印刷胴33の給紙側渡し胴32との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、当該印刷胴33の周面に対向してインクジェットノズル部34が配置される。
【0024】
インクジェットノズル部34には、互いに異なる色のインキがセットされた複数のインクジェットノズルヘッド34a〜34dが印刷胴33の周面に沿ってシート搬送方向に並設され、それぞれが印刷胴33の周面を指向している。インクジェットノズルヘッド34a〜34dは、印刷胴33の支持面33d、33e、33fに全面吸着されたシートS1との隙間が僅かな間隔となるよう印刷胴33に近接して配設される。なお、印刷胴33、インクジェットノズル部34によりシート処理装置としてのシート印刷装置を構成している。
【0025】
印刷胴33のインクジェットノズル部34よりもシート搬送方向下流側には、印刷胴33に対接配置され、シートS1に赤外線や紫外線などの光を照射して当該シートS1上に印刷されたインキを乾燥させる乾燥装置としてのインキ乾燥ランプ35が設けられる。ここで、乾燥とは熱エネルギーを与えてインキの水分を蒸発させることやインキを硬化させることを含むものであり、固化と言い換えることができる。
【0026】
印刷胴33には、インクジェットノズル部34よりもシート搬送方向下流側に、第1の排紙側渡し胴36が対接配置され、その第1の排紙側渡し胴36がフレーム3aに回転自在に支持される。第1の排紙側渡し胴36には、印刷胴33により搬送されるシートS1の先端を印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cから受け取って保持するくわえ爪装置36aが設けられる。
【0027】
第1の排紙側渡し胴36の印刷胴33との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、第2の排紙側渡し胴37が第1の排紙側渡し胴36と対接配置され、その第2の排紙側渡し胴37がフレーム3aに回転自在に支持される。第2の排紙側渡し胴37には、第1の排紙側渡し胴36により搬送されるシートS1の先端を受け取って保持するくわえ爪装置37aが設けられる。
【0028】
第2の排紙側渡し胴37の第1の排紙側渡し胴36との対接部分よりもシート搬送方向下流側には紙取胴38が対接配置され、その紙取胴38がフレーム3aに回転自在に支持される。紙取胴38には、第2の排紙側渡し胴37により搬送されるシートS1の先端を受け取って保持するくわえ爪装置38aが設けられる。
【0029】
紙取胴38の下方には、シートS1を搬送するベルトコンベア状のデリバリーベルト40が配設される。デリバリーベルト40のシート搬送方向先端側には、デジタル印刷ユニット3によりデジタル印刷処理の施されたシートS1を積載する積載台41が設けられる。なお、紙取胴38、デリバリーベルト40、積載台41により排紙装置4を構成し、紙取胴38およびデリバリーベルト40により搬送されるシートS1の経路がシート排出経路を構成する。
【0030】
第2の排紙側渡し胴37の紙取胴38との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、第1の胴としての反転前倍胴39(第1搬送胴)が対接配置され、その反転前倍胴39がフレーム3aに回転自在に支持される。反転前倍胴39は、第2の排紙側渡し胴37の2倍の直径を有する2倍胴であり、第2の排紙側渡し胴37により搬送されるシートS1の先端を受け取って保持するくわえ爪装置39aが設けられる。
【0031】
反転前倍胴39の第2の排紙側渡し胴37との対接部分よりもシート搬送方向下流側には、シートS1の他方の端部としての後端(尻側端部)を受け取って保持するくわえ爪装置120(
図2、
図3)を備えた反転スイング装置31bが当該反転前倍胴39に対向して配置される。
【0032】
反転スイング装置31bは、印刷胴33の第1の排紙側渡し胴36との対接部分よりも印刷胴33の回転方向下流側かつ給紙側渡し胴32との対接部分よりも印刷胴33の回転方向上流側において印刷胴33に対向して配置される。そして、この反転スイング装置31bは、反転前倍胴39により搬送されるシートS1の後端を受け取る破線で示された受取位置(
図1)と、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cにシートS1の後端を受け渡す実線で示された受渡位置(
図1)との間で揺動自在にフレーム3aに支持される。なお、第1の排紙側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37、反転前倍胴39、反転スイング装置31bにより反転機構を構成し、第1の排紙側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37、反転前倍胴39、反転スイング装置31bにより搬送されるシートS1の経路がシート反転経路を構成する。
【0033】
第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aは、紙取胴38のくわえ爪装置38aと反転前倍胴39のくわえ爪装置39aとに選択的にシートS1を受け渡すことが可能に駆動される。また、紙取胴38のくわえ爪装置38aは、第2の排紙側渡し胴37により搬送されるシートS1の先端を選択的に受け取ることが可能に駆動され、これらくわえ爪装置37a、38aはシートS1の搬送先を排紙装置4または反転スイング装置31bに切替える、すなわち、シートS1の搬送経路をシート排出経路またはシート反転経路に切替える搬送経路切替装置を構成する。
【0034】
<反転スイング装置の構成>
次に、反転スイング装置31bが反転前倍胴39により搬送されるシートS1を受け取るべく当該反転前倍胴39に向かってスイング(揺動)し、当該シートS1をくわえ替えした後、反転前倍胴39から離れた逆方向へスイング(揺動)する構成について、
図2及び
図3を用いて説明する。
【0035】
反転スイング装置31bのくわえ爪装置120は、揺動自在に支持されたスイングアーム(図示せず)の先端に設けられおり、反転前倍胴39及び印刷胴33とは別個独立して駆動される。くわえ爪装置120は、回動自在に支持された爪軸121bと、この爪軸121bに固定され爪121aが設けられた爪本体121と、爪軸121bに一端が固定され他端にカムフォロア122が支持されたレバー123とを有している。これにより、後述する固定カム125との係合によるカムフォロア122の揺動によりレバー123、爪軸121b、爪本体121を介して爪121aが揺動する。
【0036】
またくわえ爪装置120は、スイングアームの先端に設けられた爪台保持部(図示せず)に取り付けられた爪台124を有しており、この爪台124は爪121aとの協働によりシートS1をくわえるものである。爪121aの揺動により当該爪121aは爪台124に対して接触離反してシートS1をくわえたり、くわえを解放したりする。この爪121aの揺動動作を爪121aの開閉と呼ぶ。そして、爪121aと爪台124とによりシートS1を挟持することを「閉じる」と呼び、爪121aが爪台124から離間してシートS1を挟持しないことを「開く」と呼ぶ。なお、爪軸121bには爪121aを閉じる方向に付勢する付勢手段(図示せず)が設けられている。
【0037】
反転スイング装置31bは、フレーム3aに固定され、くわえ爪装置120のカムフォロワ122が係合してその外周面上を転がる固定カム125と、スイング軸126sgを中心として回動自在に支持され固定カム125の側面に重ねられ、くわえ爪装置120のカムフォロワ122が係合してその外周面上を転がる移動カム126とを有する。固定カム125は半円弧状に形成され外周部に円弧状のカム面が形成されており、この固定カム125の円弧状のカム面の中心は、移動カム126のスイング軸126sgの中心crと一致している。
【0038】
ここで反転スイング装置31bの固定カム125と、その固定カム125の上に重ねられる移動カム126とによりスイングカムが構成される。すなわち反転スイング装置31bは、くわえ爪装置120およびスイングカム(固定カム125および移動カム126)によって構成される。
【0039】
固定カム125には、大径に形成された第1の爪閉じカム面125d、第2の爪閉じカム面125a、第3の爪閉じカム面125eと、これら第1〜第3の爪閉じカム面125d、125a、125eよりも小径に形成された第1の爪開きカム125c、第2の爪開きカム125bが設けられている。なお、第1の爪閉じカム面125d、第2の爪閉じカム面125a、第3の爪閉じカム面125eのカム面の高さは同じであり、第1の爪開きカム125c、第2の爪開きカム125bのカム面の高さは同じである。因みに第3の爪閉じカム面125eは、くわえ爪装置120が待機する待機位置として機能する。
【0040】
移動カム126は、スイング軸126sgに固定された基部126aと、当該基部126aに設けられた連結部126bと、くわえカム面126mを有するカム部126cとによって構成される。ここで、くわえカム面126mの高さは固定カム125の第1〜第3の爪閉じカム面125d、125a、125eと同じ高さに設定されている。
【0041】
移動カム126の連結部126bは、後述する移動カム回動機構130のアーム128の一端とピン127を介して連結されると共に、当該アーム128の他端が移動カム回動機構130のレバー132とピン133を介して連結される。
【0042】
移動カム回動機構130の回転軸131はフレーム3aに回動自在に支持され、本機の駆動部(図示せず)により回転駆動される。回転軸131にはレバー132の基端部が固定される。つまり回転軸131の回転とともにレバー132も回転される。
【0043】
アーム128は、一端がピン127を介して移動カム126の連結部126bと連結され、他端がピン133を介してレバー132と連結されているので、回転軸131およびレバー132が回転すると、移動カム126がレバー128を介して作動位置と退避位置との間を往復回動する。ここで、作動位置とは、カムフォロア122が第1の爪開きカム面125cと対向するときに当該カムフォロア122がくわえカム面126mと係合する移動カム126の位置(
図3)であり、退避位置とはカムフォロア122が固定カム125の第1の爪開きカム面125cと係合するのを許容する移動カム126の位置(
図2)である。
【0044】
<デジタル印刷装置の印刷動作>
このように構成されたデジタル印刷装置1の印刷動作について、片面印刷モードが選択された場合と、両面印刷モードが選択された場合に分けて説明する。
【0045】
図1に示されるように、作業者の操作により片面印刷モードが選択されると、制御装置(図示せず)は連続供給バルブ26を作動させ、これにより第1吸23aおよび第2吸23bが積載台21のシートS1を吸着しフィーダボードFBへ搬送する。
【0046】
連続供給バルブ26は、印刷胴33の1回転中に当該印刷胴33に設けられた印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cの数と同じ枚数のシートS1を供給するタイミング、換言すると、印刷胴33における印刷胴くわえ爪装置33a乃至33cと、給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aとが対向するタイミング(第1の周期)ごとにバルブが「開」して第1吸23aおよび第2吸23bの負圧源25からの吸引が行なわれるように制御される。このように、印刷胴33の全ての印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cがシートS1をくわえるように当該シートS1を供給することを連続給紙と呼び、連続給紙における連続供給バルブ26の開閉周期を第1の周期と呼ぶ。連続供給バルブ26の作動により、サッカー装置23はシートS1を第1の周期でフィーダボードFBへ搬送する。
【0047】
フィーダボードFBにより搬送されるシートS1はその先端がスイング装置31fのくわえ爪装置によって保持された後に給紙側渡し胴32へ向かって揺動して搬送され、その給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aに当該シートS1の先端がくわえ替えされる。
【0048】
給紙側渡し胴32の回転に伴って搬送されるシートS1は、印刷胴33との対接部分において給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aから印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cの何れかにその先端がくわえ替えされた後、印刷胴33の回転とともに搬送される。このときシートS1の全面は、印刷胴33における複数の吸引用孔を介して当該印刷胴33の支持面33d〜33fに吸着されて当該支持面33d〜33fに密着する。
【0049】
印刷胴33により搬送されるシートS1の表面には、インクジェットノズル部34のインクジェットノズルヘッド34a〜34dから微滴化されたインクが吐出されることによりデジタル印刷処理が施される。シートS1は印刷胴33の支持面33d〜33fに密着しているため、インクジェットノズルヘッド34a〜34dとの間の微小間隔が維持された状態で搬送される。この微小間隔が維持されることにより吐出されたインクがシートS1に高精度で着弾することができ、高品質な印刷を行うことができる。
【0050】
インクジェットノズル部34による印刷が行われたシートS1は、印刷胴33とインキ乾燥ランプ35との間を通過し、当該インキ乾燥ランプ35からの光が照射され、これによりシートS1のインキが乾燥する。その後シートS1は第1の排紙側渡し胴36へ搬送される。
【0051】
図4に示すように、印刷胴33と第1の排紙側渡し胴36との対接部分において印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cから第1の排紙側渡し胴36のくわえ爪装置36aにシートS1の先端がくわえ替えされる。その後、
図5に示すように、第1の排紙側渡し胴36のくわえ爪装置36aに保持されたシートS1は、第1の排紙側渡し胴36と第2の排紙側渡し胴37との対接部分において、第1の排紙側渡し胴36のくわえ爪装置36aから第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aにその先端がくわえ替えされる。
【0052】
片面印刷モードの場合、第2の排紙側渡し胴37と紙取胴38との対接部分において、第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aがシートS1の先端の保持を解除するとともに、紙取胴38のくわえ爪装置38aがシートS1の先端をくわえて保持し、くわえ替えが行なわれる。これによりシートS1は第2の排紙側渡し胴37から紙取胴38へくわえ替えされて搬送される。
【0053】
紙取胴38にくわえ替えされたシートS1は、デリバリーベルト40の上方に紙取胴38のくわえ爪装置38aが位置したタイミングで当該くわえ爪装置38aによる保持が解除され、デリバリーベルト40上に載せられる。
【0054】
デリバリーベルト40上に載せられたシートS1は当該デリバリーベルト40の走行とともに搬送され、表面にデジタル印刷処理の施されたシートS1が積載台41上に排出される。
【0055】
一方、作業者の操作により両面印刷モードが選択された場合、制御装置は間欠供給バルブ27を作動させ、これにより第1吸23aおよび第2吸23bが積載台21のシートS1を吸着しフィーダボードFBへ搬送する。
【0056】
間欠供給バルブ27は、連続給紙のタイミングに対して1枚おきのタイミングでシートS1を供給するタイミング、換言すると、印刷胴33における印刷胴くわえ爪装置33a乃至33cと、給紙側渡し胴32のくわえ爪装置32aとが対向するタイミング(第2の周期)で、バルブが「開」、「閉」、「開」、「閉」、…、となるように制御される。これは、連続給紙の周期の2倍の周期である。このように、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a、33b、33cが一つおきにシートS1をくわえるように当該シートS1を供給することを間欠給紙と呼び、間欠給紙における間欠供給バルブ27の開閉周期を第2の周期と呼ぶ。間欠供給バルブ27の作動により、サッカー装置23はシートS1を第2の周期で1枚おきに間欠的に吸着しフィーダボードFBへ搬送する。
【0057】
サッカー装置23によりフィーダボードFBへ送り出されたシートS1は、片面印刷モードの場合と同様にスイング装置31fおよび給紙側渡し胴32を介して印刷胴33に受け渡されるが、シートS1は間欠給紙のタイミングで送り出されているため、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cは一つおきに給紙側渡し胴32から搬送される新規なシートS1を受取る。
【0058】
その後、シートS1はインクジェットノズル部34に搬送され、その一方の面(表面)に表面用の印刷が施される。ここで、制御装置は、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cの一つおきに保持された新規なシートS1に対して印刷を施し、シートS1を保持していない印刷胴くわえ爪装置33a〜33cに対応する支持面33d〜33fに対して印刷を行なわないようにインクジェットノズル部34の各インクジェットノズルヘッド34a〜34dを制御する。
【0059】
両面印刷モードの場合、インクジェットノズル部34により表面に印刷が施されたシートS1は、第2の排紙側渡し胴37から紙取胴38へ受け渡されずに、反転前倍胴39に受け渡される。
【0060】
このように両面印刷モードの場合であって、表面に印刷が施されているが他方の面(裏面)にはデジタル印刷処理されていない場合には、制御装置の制御により、第2の排紙側渡し胴37と紙取胴38との対接部分において第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aの爪は開かずに閉じたままの状態、すなわちシートS1の先端を保持した状態が維持されるとともに、紙取胴38のくわえ爪装置38aの爪は閉じずに開いた状態が維持される。
【0061】
これによりシートS1は第2の排紙側渡し胴37から紙取胴38へくわえ替えされることなく反転前倍胴39へ搬送される。第2の排紙側渡し胴37と反転前倍胴39との対接部分において、反転前倍胴39のくわえ爪装置39aの爪を閉じてシートS1の先端を保持させるとともに、第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aの爪を開いてシートS1の先端の保持を解除させ、
図6に示すように、第2の排紙側渡し胴37のくわえ爪装置37aから反転前倍胴39のくわえ爪装置39aにシートS1の先端がくわえ替えされる。
【0062】
図7に示すように、反転前倍胴39の回転とともに搬送されるシートS1は、反転前倍胴39の回転とともに搬送されながら、反転スイング装置31bの破線で示される受取位置にシートS1の他方の端部としての後端(尻側端部)が対向したタイミングで当該反転スイング装置31bのくわえ爪装置120によりその尻側端部が保持されると同時に、反転前倍胴39のくわえ爪装置39aによるシートS1の一方の端部としての先端部に対する保持が解除される。
【0063】
この場合の反転スイング装置31bのくわえ爪装置120によるシートS1のくわえ替え動作を具体的に説明する。反転スイング装置31bのくわえ爪装置120が
図2に実線で示される印刷胴33側の位置から反転前倍胴39へ向けて図中反時計方向に回動する際に、カムフォロワ122は、先ず、第3の爪閉じカム面125e、第2の爪開きカム面125b、第1の爪閉じカム面125dの順番に係合する。このとき、爪121aは第3の爪閉じカム面125eの待機位置で閉じている状態から第2の爪開きカム面125bにより
図2に破線で示されるように開き、そして第1の爪閉じカム面125dにより閉じる動作を行なうが、この爪121aの開閉動作ではシートS1のくわえ替えは生じない。
【0064】
さらに、くわえ爪装置120が反転前倍胴39へ向けて移動すると、カムフォロワ122は、第1の爪閉じカム面125d、第1の爪開きカム面125c、第2の爪閉じカム面125aの順番に係合する。このとき、爪121aは閉じている状態から第1の爪開きカム面125cにより開き、そして第2の爪閉じカム面125aにより
図3に破線で示されるように閉じることにより、反転前倍胴39のくわえ爪装置39aにより先端(くわえ側端部)が保持され搬送されるシートS1の後端(尻側端部)をくわえる。その直後、反転前倍胴39のくわえ爪装置39aによるシートS1の先端(くわえ側端部)の保持が解放され、反転前倍胴39から反転スイング装置31bのくわえ爪装置120へのくわえ替えが完了する。
【0065】
このとき、移動カム回転機構130の回転軸131が本機の駆動部(図示せず)により回転し、当該回転軸131と共にレバー132も一緒に回転する。当該レバー132の回転によりアーム128を介して移動カム126がスイング軸126sgを中心として図中反時計回り方向へ回動し、当該移動カム126のくわえカム面126mが
図3に示される作動位置に位置付けられる。
【0066】
図3に示されたように、移動カム126のくわえカム面126mの作動位置は、固定カム125の第1の爪開きカム面125cの側方であり、第2の爪閉じカム面125aとくわえカム面126mと第1の爪閉じカム面125dとによりカム面がカムフォロワ122の移動方向に連続する位置である。これにより、くわえ爪装置120のカムフォロワ122が固定カム125の第1の爪開きカム面125cと対向したときに、当該カムフォロワ122は移動カム126のくわえカム面126mとは対接するが、当該くわえカム面126mより低い位置にある第1の爪開きカム面125cとは対接しないことになる。
【0067】
移動カム126のくわえカム面126mが作動位置に位置付けられ後、反転前倍胴39上のシートS1の後端をくわえた反転スイング装置31bのくわえ爪装置120は、
図3に破線で示される反転前倍胴39側の位置から印刷胴33側へ向けて図中時計方向に回動する。くわえ爪装置120がシートS1をくわえた状態で移動する際、カムフォロワ122は、先ず、第2の爪閉じカム面125a、移動カム126のくわえカム面126m、第1の爪閉じカム面125dの順番に係合する。移動カム126のくわえカム面126mは作動位置に位置付けられているため、カムフォロワ122はくわえカム面126mより低い位置にある第1の爪開きカム面125cと係合することがない。これにより、爪121aは開くことなく閉じたままの状態でシートS1のくわえた状態を維持し、したがってシートS1はくわえ爪装置120に保持されたまま搬送される。
【0068】
そして移動カム回転機構130の回転軸131が本機の駆動部(図示せず)により回転し続けているため、当該回転軸131と共にレバー132も一緒に回転され、アーム128を介して移動カム126が図中時計回り方向へ回転し、当該移動カム126のくわえカム面126mが
図2に示される退避位置に位置付けられる。ここで、くわえカム面126mの退避位置は、固定カム125の第1の爪閉じカム面125dの側方の位置である。
【0069】
その後、くわえ爪装置120のカムフォロワ122が退避位置に位置付けられたくわえカム面126mを通過するが、その際、第1の爪閉じカム面125dとくわえカム面126mとはその高さが同じであるため、カムフォロワ122は第1の爪閉じカム面125dとくわえカム面126mとの両方に接触し、くわえ爪装置120の爪121aはシートS1をくわえて閉じた状態を維持する。
【0070】
ここで、固定カム125の第1の爪閉じカム面125dおよび移動カム120のくわえカム面126mの双方に係合する位置を退避位置とする。これに対して、移動カム120を固定カム125の側面から離し、当該固定カム125と重なることのない位置を移動カム120の退避位置とした場合には、移動カム126が固定カム125に重なる際に、移動カム120がカムフォロア122の側面に不要な負荷や衝撃を与える危険が考えられる。しかしながら、移動カム126は固定カム125の側面に重ねられた状態で作動位置と退避位置との間で移動するので、カムフォロワ122の側面に不要な負荷や衝撃を与える危険がなく、当該移動カム120を円滑に退避位置と作動位置との間で移動させることができる。
【0071】
図2の破線で示されるように反転スイング装置31bのくわえ爪装置120が印刷胴33と対向する位置にくると、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cの何れかが当該くわえ爪装置120と対向する。そのとき、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cがくわえ爪装置120にくわえられているシートS1の後端(尻側端部)をくわえる。その直後にくわえ爪装置120のカムフォロワ122が第2の爪開きカム面125bに対接し、爪121aが開いてシートS1の後端のくわえを解放する。これにより、反転スイング装置31bのくわえ爪装置120から印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cへシートS1の後端のくわえ替えが完了する。
【0072】
その後、反転スイング装置31bのくわえ爪装置120は
図2の実線で示される位置に位置付けられ、その際、カムフォロワ122は第3の爪閉じカム面125e(待機位置)と係合しており、爪121aはシートS1をくわえていない状態で閉じる。
【0073】
ここで、反転前倍胴39のくわえ爪装置39aにより先端がくわえられたシートS1を反転スイング装置31bのくわえ爪装置120で後端をくわえることにより当該シートS1の受け渡しを行なうので、シートS1の見当がずれることなく、高い見当精度を維持したまま反転前倍胴39から反転スイング装置31bへシートS1を受け渡すことができる。
【0074】
そして、反転スイング装置31bのくわえ爪装置120によりくわえられたシートS1の後端を印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cでくわえることにより当該シートS1の受け渡しを行なうため、シートS1の見当がずれることなく、高い見当精度を維持したまま反転スイング装置31bから印刷胴33へシートS1を受け渡すことができる。
【0075】
このように反転スイング装置31bでは、固定カム125と移動カム126とを組み合わせるという簡易な構成で、くわえ爪装置120が反転前倍胴39へ向かって移動する際には爪121aの開閉動作を行なわせ、反転前倍胴39から印刷胴33へ向かって移動する際には爪121aを閉じたままの状態を維持させて開閉動作を行なわせないという、くわえ爪装置120の往路と復路で異なる爪121aの開閉動作を行わせることができる。
【0076】
かくしてシートS1の後端(尻側端部)が印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cの何れかにより保持され、インクジェットノズル部34により既にデジタル印刷処理の施されたシートS1の表面(デジタル印刷処理済みの面)が印刷胴33の周面と対接し、シートS1の裏面(デジタル印刷未処理の面)が露出した状態で当該印刷胴33の回転とともにシートS1がインクジェットノズル部34へ搬送される。
【0077】
このとき反転スイング装置31bのくわえ爪装置31btから受け渡された表裏反転状態のシートS1は、インクジェットノズル部34により既にデジタル印刷処理の施された表面(デジタル印刷処理済みの面)が印刷胴33の支持面33d、33e、33fと対接し、シートS1の裏面(デジタル印刷未処理の面)が露出した状態で、シートS1の後端が印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cにより保持された状態のまま搬送され、すなわちシートS1が表裏反転して搬送されインクジェットノズル部34によりシートS1の裏面にデジタル印刷処理が施される。
【0078】
ここで、制御装置は、反転スイング装置31bのくわえ爪装置120から受け渡された表裏反転状態のシートS1に対しては裏面用の印刷を施し、印刷胴33の印刷胴くわえ爪装置33a〜33cの一つおきに保持された新規なシートS1に対しては表面用の印刷を施すようにインクジェットノズル部34の各インクジェットノズルヘッド34a〜34dを制御する。これにより、インクジェットノズルヘッド34a〜34dは、印刷胴33に交互に保持された新規なシートS1と表裏反転状態のシートS1に対応して表面用の印刷と裏面用の印刷を交互に行うことになる。
【0079】
その後、裏面に裏面用の印刷が施されたシートS1は、片面印刷モードの場合と同様に、第1の排出側渡し胴36、第2の排紙側渡し胴37、紙取胴38を順次介してデリバリーベルト40から排紙装置4の積載台41へ排出される。
【0080】
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、第1の胴としての反転前倍胴39、第2の胴としての印刷胴33及び反転スイング装置としての反転スイング装置31bによりシートS1に対してデジタル印刷処理を行う本発明の反転式シート処理装置としてのデジタル印刷装置1に本発明を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、オフセット印刷処理、検査処理、箔転写処理、型押し処理等の各種処理をシートS1に対して行う反転式シート処理装置に適用するようにしても良い。
【0081】
また、上述した実施の形態においては、3倍胴でなる印刷胴33を用いるようにした場
合について述べたが、本発明はこれに限らず、2倍胴、4倍胴、6倍胴等でなる印刷胴を
用いるようにしてもよい。