(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしならが、上述した従来技術にのうち、特に、本発明が関わる上記特許文献2に開示される熱式のナノインプリント法や装置は、25ナノメートル以下の微細パターンの正確/精密な形成には好適であるが、しかしながら、シリコンウエハをスタンパとして用いることから、当該スタンパを加熱して被転写体であるフィルムの表面に均一な圧力で押圧しなければならず、また、加熱・押圧時の昇温と冷却サイクルに時間を要するため、転写のスループットが必ずしも十分ではない。
【0008】
これに対して、上記の特許文献3、特に、その
図5及び
図6には、ローラから供給される樹脂フィルムを、ランプヒーターや電気式の内蔵式カートリッジヒータによって樹脂フィルムのガラス転移点温度以上に加熱/保持された平板上に、平板状のモールドと共に搭載し、その表側及び裏側に設けたローラにより、当該平板を樹脂フィルムやモールドと共に挟み込み、そして、当該ローラをその状態で回転/移動させながら微細パターンを正確/精密に転写する装置が開示されている。
しかしながら、かかる従来技術においても、以下の様な課題が存在する。
【0009】
即ち、平板を均一な温度で加熱/保持することは難しく、特に、ガラス転移点温度を超えて加熱した場合には、ローラから供給される樹脂フィルム、或いは微細パターン転写後樹脂フィルムに係る張力により切断されることが考えられる。加えて、パターン転写面がピンチロールに挟まれるために、微細パターン転写面が汚れる虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みて達成されたものであり、特に、ナノメートル単位の微細パターンを樹脂フィルムの表面に確実に形成できるナノインプリント方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、ナノメートル単位の微細パターンを樹脂フィルムの表面に転写した後、微細パターン転写面の汚れを低減できるナノインプリント方法及びそのための装置を提供することを他の目的とする。
更に、本発明は、樹脂フィルムの表面に微細パターンを転写する時のスループットの優れたナノインプリント方法及びそのための装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために、少なくとも下記の特徴を有する。
本発明は、凹凸パターンを有する板状のスタンパにシート状の被転写体を供給しながら前記凹凸パターンを転写する供給転写ステップと、転写された前記被転写体を前記スタンパから剥離しながら、剥離された前記被転写体を前記供給した側に引き込む剥離引込ステップと、前記引き込まれた前記被転写体を巻き取る巻取りステップと、を有し、前記巻取りステップの後に前記供給転写ステップからの各前記ステップを行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、シート状の被転写体を巻回している原反リールを有し、凹凸パターンを有する板状のスタンパに向けて前記被転写体を供給する供給手段と、前記原反リールから前記被転写体を前記スタンパに供給しながら前記凹凸パターンを転写する供給転写手段と、転写された前記被転写体を前記スタンパから剥離しながら剥離された前記被転写体を前記供給手段側に引き込む剥離引込手段と、前記引き込まれた前記被転写体を巻き取る巻取りリールを有する巻取り手段と、を有することを特徴とする。
【0013】
さらに、前記供給転写は、前記スタンパの一面上であって前記被転写体を前記巻き取る方向と直交する方向の線状領域を加熱、加圧し、前記線状領域を前記巻き取る方向とは反対方向に移動させて前記転写を行ってもよい。
【0014】
また、前記スタンパへの前記被転写体の供給速度は、前記線状領域の移動速度と協調制御させて行ってもよい。
さらに、前記供給した側への引き込みは、前記スタンパへ前記被転写体を供給する側に設けられたピンチローラで行い、引き込まれた前記被転写体は、前記ピンチローラに到達しないようにしてもよい。
【0015】
また、前記引き込まれた前記被転写体の巻き取る量は、前記巻取りステップの終了位置から前記供給転写ステップの終了位置までの長さとしてもよい。
さらに、前記スタンパから巻き取る側に搬送される前記被転写体の被転写面は、前記スタンパの転写面と略同一の高さであってもよい。
【0016】
また、前記剥離時に、前記スタンパの前記凹凸パターンを有する転写面を冷却してもよい。
さらに、前記成形ローラは、前記被転写体の前記スタンパへの供給角度及びスタンパからの剥離角度をそれぞれ規定する剥離ローラを有してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ナノメートル単位の微細パターンを樹脂フィルムの表面に確実に形成できるナノインプリント方法及びそのための装置を提供できる。
また、本発明によれば、ナノメートル単位の微細パターンを樹脂フィルムの表面に転写した後、微細パターン転写面の汚れを低減できるナノインプリント方法及びそのための装置を提供できる。
さらに、本発明によれば、樹脂フィルム(ナノインプリント材料)の表面に微細パターンを転写のスループットの優れたナノインプリント方法及びそのための装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1であるナノインプリント装置100の正面図(a)及びその側面図(b)を示す。ナノインプリント装置100は、パーソナルコンピュータの表示画面上に取り付けられる反射防止膜として、透光性のインプリントフィルムの表面に外光の反射防止を目的としたナノレベルの微細な凹凸加工を施すための連続式微細加工装置の例である。なお、この装置は、連続するシート状の基板(被転写体)、例えば樹脂フィルムの表面に、板状のスタンパ(金型)により、連続的に反射防止パターンを転写するものである。
【0020】
図1に示すように、ナノインプリント装置100では、長尺の基材である樹脂フィルムFを供給し巻取る供給巻取りユニット40と、樹脂フィルムにナノレベルの微細な凹凸成形加工を施す
加工ユニット20とを有する。
【0021】
供給巻取りユニット40は、樹脂フィルムFを加工ユニット20に供給する供給部10と、ナノレベルの微細な凹凸加工が施された樹脂フィルムを巻取る巻取り部30と、後述するダンサローラ部50とを有する。
【0022】
供給部10は、未成形の樹脂フィルムFが巻回された原反リール11と、原反リールを矢印Aの方向に回転させる原反リール駆動機構15、とを有する。原反ローラ駆動部15は、ドライブローラ16を有し、ドライブローラを成形面でない樹脂フィルムFの裏面に常に所定の圧力で当接させ、所定の速度で回転させる。この原反リール駆動機構15によって、原反リール11の樹脂フィルムFが巻かれている径によらず、ドライブローラ16の回転速度で規定される長さの樹脂フィルムを送り出すことができる。ドライブローラ16は、ゴム等の弾性材を被覆して形成されている。
なお、以後、樹脂フィルムFの成形面を表面、成形面でない面を裏面という。
【0023】
ダンサローラ部50は、供給部10と
加工ユニット20の間に設けられる。ダンサローラ部50は、原反リール11の中心を支点として回動するダンサローラ51と、ダンサローラをVの字状に保持するためのピンチローラ52、53とを有する。また、ダンサローラ部50は、後述するように、転写後の剥離過程において、ピンチローラ53と対となって、樹脂フィルムFをVの字状のダンサローラ部50に送り込む駆動ローラ54と、ダンサローラ51の供給時開始位置を検出する接触型の位置検出器55とを有する。
【0024】
ダンサローラ51の供給時開始位置とは、供給部10から樹脂フィルムFの供給する時の位置である。供給部10は、後述する転写工程で一定の長さL送りこみ、その長さL分だけダンサローラ部50で吸収し、その長さL分だけ巻き取る。このダンサローラ部50での吸収において、ダンサローラ51は、
図1に示す矢印Kのように、供給時開始位置から長さL分だけ下降し、長さL分だけ上昇して元の供給時開始位置に戻る。即ち、ダンサローラ51が元の供給時開始位置に戻ったことで巻き取り長さを検出できる。
接触型の位置検出器55での供給時開始位置は、
図1で示すダンサローラ51が位置検出器55に接触している位置である。なお、位置検出器は、接触型に限らず、例えば光の遮光によって検出する光検出型でもよい。
【0025】
巻取り部30は、成形された樹脂フィルムFsを巻取る巻取りリール31と、巻取りリールの軸37を軸駆動させる図示しない巻取り駆動機構と、巻取りリールの巻取り径を測定する巻取り径測定器36とを有する。径測定器
36の測定結果により巻取りリール
31の回転速度を段階的又は連続的に変える。即ち、巻取り径が大きい時は回転速度を抑え、巻取り径が小さい時は回転速度を上げ、樹脂フィルムFの巻取り速度、即ち樹脂フィルムFに係る張力を所定の範囲に収める。
なお、以後、樹脂フィルムの添え字sのない符号Fは、成形されていな
い場合、
及び、一般的に述べる場合に用いる。
【0026】
ピンチローラ38は、後述する加工ユニット20に設けられたピンチローラ76から樹脂フィルムを中継する役目を果たす。ピンチローラ38の位置は、樹脂フィルムFsの送り面が成形された樹脂フィルムFsの裏面(未成形面)がピンチローラ76と当接するように、ピンチローラ76より下方に設けられる。同様に、巻取りリール31の最外殻の高さ位置は、成形された樹脂フィルムFsの裏面が必ずピンチローラ38に当接するように、ピンチローラ38の送り面の高さ位置以下になるように設ける。
これら高さ関係によって、成形された樹脂フィルムFsは、ピンチローラ38から浮き上がることなく、即ち板状のスタンパ21(
図2参照)の端部から浮き上がることなく、安定して、巻取りリール31から張力を受けることができる。
【0027】
次に、
図1乃至
図3を用いて加工ユニット20を説明する。
図2は、
図1に示す加工ユニット20が実線位置、即ち原点位置における樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素を主体に図示的に示した図である。
図3は、加工ユニット20
の構成のうち、微細パターンを転写する基本構成を抜粋して示した図である。
加工ユニット20は、スタンパ21(金型)の上部に設けられた上部成形部60と、スタンパ21の下部に設けられた下部成形部70とを有する。スタンパ21は、
図1(b)に示すように装置100の構造部に固定され、下面に転写用の凹凸パターンを有する。樹脂フィルムFは、
図2に示す樹脂フィルムFの搬送系によって、スタンパ21の下面と下部成形部70との間に、間欠的に搬送される。
【0028】
上部成形部60は、樹脂フィルムFの転写剥離後、即ち凹凸の微細パターンを形成後の搬送方向Cと直交する方向に細長い電磁誘導加熱部61を有する。
図3に示すように、誘導加熱体部61は、パターン転写時は、前記搬送方向Cとは反対方向に移動し、微細パターン転写面とは反対の面に向かって交流磁界を発生する。このとき、鉄製のスタンパ21は誘導加熱によって、樹脂フィルムFのパターン形成層を、ガラス転移点付近から融点以下の所定温度で、例えばガラス転移付近で加熱し、凹凸の微細パターンを転写する。電磁誘導加熱部61は、例えば、高周波の(例えば、数10KHz)電流を供給するための、所謂、IH(電磁誘導加熱)電源64により駆動される。電磁誘導加熱部61は、
図1に示す実線で示す位置とドットで示す位置間を移動する。
【0029】
下部成形部70は、
図1に示すように、電磁誘導加熱部61と同様に搬送方向Cと直交する方向に細長い形状を有し、スタンパ21を下から加圧する加圧部71と、微細パターンを転写した後、剥離工程においてスタンパ21を冷却する冷却部81と、加圧部71と冷却部81と固定する下部ステージ85とを有する。
加圧部71は、電磁誘導加熱部61によって所定の温度に加熱された搬送方向Cと直交する方向に細長い線状領域を加圧し、微細パターンを樹脂フィルムFに転写する。下部ステージ85は、ステージ駆動部(図示しない)のリニアレール86上を、
図1に実線で示す原点位置とドットで示す転写終了位置の間を移動する。即ち、加圧部71と冷却部81とは一体になって移動する。冷却は、転写後少し遅れて行う、或いは後述するように、剥離工程で行うので、別々に設けてもよい。
【0030】
加圧部71は、スタンパ21を下から加圧しながら回転移動する成形ローラ72と、樹脂フィルムFのスタンパ21から剥離時にスタンパに対し所定の角度θを維持する剥離ローラ75と、成形ローラ72と剥離ローラ75を昇降するシリンダ73と、シリンダ73の昇降動作をガイドするガイド部74とを有する。成形ローラ72、剥離ローラ75は、その表面に、例えば、ゴム等の弾性材を被覆して形成されている。
成形ローラ72は、微細パターンの転写時は所定圧力で、剥離時は所定圧力より小さいフィルムを支える程度の圧力で加圧される。
【0031】
なお、上記では剥離ローラ75は、所定の角度θで維持したが、図示しない角度設定手段、例えばシリンダで剥離ローラ75を上下させ、角度θを樹脂フィルムFのスタンパ21への供給工程とスタンパからの剥離工程とで変更できるようにしてもよい。供給工程の場合は、角度θを小さくし引き込む空気量を抑える。一方、剥離工程の場合は、剥離ローラ75をスタンパ21から離間させ、角度θを大きくし剥離力を大きくする。特に、成形ローラ72の径が小さい場合は、供給工程と剥離過程で角度を変更することが望まれる。
【0032】
冷却部81は、樹脂フィルムFの剥離時に、スタンパ21に当接して冷却する冷却ローラ82と、冷却ローラ82を昇降させるシリンダ83と、図示しない冷却装置とを有する。シリンダ83は、冷却ローラ82をスタンパ21に当接するだけでよいので加圧力は小さくてよいので、ガイド部は必要がない。
【0033】
次に、
図2乃至
図7を用いて、実施例1におけるナノインプリント装置100による微細パターンの転写方法を説明する。
まず、
図2を主体に、転写工程に入る位置である原点位置における樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態を説明する。
図2、
図3に示すように、原点位置においては、成形ローラ72は、シリンダ73により上昇し、所定圧力で前述したスタンパ21の線状領域に当接される。このとき、電磁誘導加熱部61は、線状領域を事前に所定温度に加熱するために、スタンパ21を挟んで成形ローラ72と対応する位置のやや前に配置され、成形ローラ72と同期して移動する。
また、冷却ローラ82はスタンパ21に当接していない。
図2では、電磁誘導加熱部61を成形ローラ72と同期して移動させたが、電磁誘導加熱部61を線状領域に平行に複数設けて、転写工程においてそれらを切り替えて或いは全てONさせて線状領域を加熱してもよい。
【0034】
樹脂フィルムFは、原反リール11から、ダンサローラ51、ピンチローラ53、剥離ローラ75を介して、更に剥離ローラ75で反転して、スタンパ21と成形ローラ72に挟まれ、巻取りリール
31に所定の張力で張り巡らされている。 なお、成形ローラ72から先の成形された樹脂フィルムFsには、既に凹凸微細パターンが転写されている。
【0035】
この状態で、
図4に示す転写工程に入る。
図4は、転写工程の途中の状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示した図である。
成形ローラ72と電磁誘導加熱部61は、
図3、
図4に示す矢印B方向に同期して移動し、スタンパ21の下面に形成された凹凸の微細パターンを樹脂フィルムFに転写していく。このとき、剥離ローラ75と原反リール11間にある樹脂フィルムFに余計な力が掛からない所定の張力になるように、樹脂フィルム7の特性を利用して、ドライブローラ16の送り速度は、
成形ローラ72の移動速度と協調制御される。樹脂フィルムFの特性とは、原反リール11に巻回された時に押えられていた樹脂フィルムの縮む力が、原反リールから開放された時にその縮み力が開放されて、樹脂フィルム7は縮み、短くなることである。その短くなる長さは、時間が経つにつれて短くなる。
そこで、例えば原反リール11に貼られたラベルの日時をみて、成形ローラ72の移動速度に対するドライブローラ16の送り速度を変える。この協調制御により
成形ローラ72の移動量に見合った長さの樹脂フィルムFが原反リール11から供給され、樹脂フィルムFに加わる張力は、破断力に対して十分小さくなり、且つ安定したものとなる。勿論、所定の時間が経てば、成形ローラ72の移動速度とドライブローラ16の送り速度とを同一にすることもできる。
【0036】
また、供給部10の構成で説明したように、原反リール11からの樹脂フィルムFの供給量は、ドライブローラの半径に依存し、原反リール11に巻回されている樹脂フィルムFの半径に依存しないから、供給量の協調制御はし易いものとなっている。この協調制御によって、原反リール11から成形ローラ72の間に存在する樹脂フィルムに係る張力が、大幅に低減される。
【0037】
また、成形ローラ72と電磁誘導加熱部61による微細パターンの転写中は、スタンパ21で既に微細パターンが形成(転写、剥離)された巻取りリール31側の樹脂フィルムFsは、移動しないでその場所に留まっている。この結果、転写中の樹脂フィルムFには、巻取りリールからの張力を受けない。
また、ピンチローラ76の送り面は、スタンパ21の転写面と略同じ高さに設けられている。高いと、樹脂フィルムFsがスタンパ21の端面と干渉し、低いと、
図4から解るように転写された樹脂フィルムFに剥離力が作用するからである。
【0038】
以上説明したように、
転写工程において、樹脂フィルムFに係る張力は、低く抑えられ、樹脂フィルムFを破断する可能性を大幅に低減でき、安定して樹脂フィルムFへの転写を行うことができる。
さらに、成形ローラ72と剥離ローラ75とで形成される角度、即ちスタンパ21への樹脂フィルムFの供給角度θを小さくすることで、成形時のスタンパ21と樹脂フィルムFとの間の空気を容易に押出しながら成形でき、空気溜りによる成形不良を防ぐことができる。
【0039】
図5は、スタンパ21の長さ分だけの転写工程が終わり、電磁誘導加熱部61及び成形ローラ72が
図1にドットで示す位置にきたときの状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示した図である。
【0040】
この状態で、電磁誘導加熱部61よる加熱を停止すると共に、冷却ローラ82を上昇させ、スタンパ21に当接し、次の微細パターンの成形に備えてスタンパ21を冷却し始める。
この冷却は、再び
図1、
図2に示した原点位置に戻るまで行われる。また、このとき成形ローラ72は、樹脂フィルムFを支持する程度の弱い加圧力を有する。
【0041】
図6は、
図5からの剥離工程の途中の状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示した図である。
剥離工程において、冷却ローラ82は成形ローラ72と一体となって、転写工程と反対方向である矢印Dの方向に、スタンパ21の転写面を冷却しがら移動する。一方、電磁誘導加熱部61は、剥離工程の各構成要素の動きに制約されることなく、
図2に示す原点位置に移動する。
【0042】
剥離工程に入る前には、駆動ローラ54が下降し、ピンチローラ53と共に樹脂フィルムFを挟み込み、剥離された樹脂フィルムFをダンサローラ51側に引き込む。
この時の引込力は、即ち、剥離され引き込まれた樹脂フィルムFsをダンサローラ部50で吸収する。但し、引き込まれた樹脂フィルムFsを駆動ローラ54が挟み込まないように、言い換えればダンサローラ部50に入らないように、駆動ローラ54とピンチローラの位置を設定する。このように設定することにより、剥離された樹脂フィルムFsの表面、即ち転写、剥離された形成面がピンチローラ53と接触しないので、成形面が汚れることがなく、成形面の品質を保つことができる。
【0043】
この時、原反リール11は、ダンサローラ部50に引き込まれた樹脂フィルムFを巻き取る動作はしない。また、スタンパ21で既に微細パターンが形成(転写、剥離)された巻取りリール31側の樹脂フィルムFsも、剥離工程同様、巻取り動作をしなく、その場所に留まっている。
【0044】
従って、この時樹脂フィルムFに係る張力は、剥離される樹脂フィルムFに係る駆動ローラ54による引張力だけであり、樹脂フィルムFが破断する可能性を大幅に低減できる。
即ち、従来の方法では、前記引張力の他に、剥離するために剥離力が加わる。しかし、本実施例では、成形ローラ72が樹脂フィルムFsを押えているので、剥離力は樹脂フィルムFsに作用しなく、駆動ローラ54による引張力だけが作用する。
また、本実施例では、剥離ローラ75を成形ローラ72に隣接して且つ角度θを持って設けることにより、剥離ローラ75による樹脂フィルムFsの剥離を確実に安定して行うことができる。
【0045】
図7は、樹脂フィルムFsがスタンパ21から完全に剥離され、巻取り工程に入る状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示した図である。
図6に示す剥離工程が終わると、駆動ローラ54は、上昇しピンチローラ53から離間する。巻取りリール31が矢印Eのように回転し、ダンサローラ部50で吸収された樹脂フィルムFsをG方向に移動させて巻き取る。ダウンローラ51は、原反リール11から供給される新たな樹脂フィルムがないので、徐々に上昇していく。従って、この時の巻取りリール31の負荷は、即ち樹脂フィルムFsに掛かる張力は、ダウサローラ51による負荷分だけである。
【0046】
また、この時、樹脂フィルムFの巻き取る長さLは、
図5と
図7とにおいて成形ローラ72が移動する距離である。この巻き取る長さLは、ダンサローラ部50の構成で説明したように、転写工程等で原反リール11から供給される樹脂フィルムFの長さでもある。
実施例1では、冷却ローラ82があるので、
図7に示すように成形ローラ72はオバーランするが、他の方法で冷却し冷却ローラ82を無くすことができれば、巻き取る長さLをスタンパ21の転写する長さにすることができる。
【0047】
従って、巻取り工程においても樹脂フィルムFに掛かる張力は低く抑えられ、樹脂フィルムFが破断する可能性を大幅に低減でき、樹脂フィルムFsの巻取りを確実に安定して行うことができる。
また、
図1で説明したように、ピンチローラ38の送り面は、ピンチローラ76の送り面より低く、且つ巻取りリール31の最外殻の高さ位置は、ピンチローラの送り面より低い位置に設けているので、樹脂フィルムFsの成形面でない裏面が必ずピンチローラ38に当接することができ、樹脂フィルムの成形面(表面)の汚れを防止できる。
【0048】
図7で示す巻取工程が終わると、
図2に示す原点位置に戻り、
図4から
図6に示す各工程を繰り返す。即ち、実施例1は、スタンパ21の成形長さ毎に間欠的に微細パターンを転写する。
【0049】
以上説明した実施例によれば、ナノメートル単位の微細パターンを樹脂フィルムの表面に確実に形成できるナノインプリント方法及びそのための装置を提供できる。
また、以上説明した実施例によれば、ナノメートル単位の微細パターンを樹脂フィルムの表面に転写した後、微細パターン転写面の汚れを低減できるナノインプリント方法及びそのための装置を提供できる。
【0050】
さらに、以上説明した実施例1によれば、樹脂フィルムFへの加工(転写、剥離)をほぼ連側的に確実に行うことができ、スループットの優れたナノインプリント方法及びそのための装置を提供することができる。
また、実施例1は、後述する実施例3に比べコンパクトにできる効果がある。
【0051】
(実施例2)
図8は、本発明の実施例2であるナノインプリント装置を示す図である。実施例2は、微細パターンの樹脂フィルムへの転写を上から行うことができるナノインプリント装置である。
【0052】
図8(a)は、実施例1の
図2に対応する図で、転写工程に入る位置である原点位置における樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示す図である。
図8(b)は、実施例1の
図4に対応する転写工程の途中の状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示す図である。
図8(c)は、実施例1の
図6に対応する剥離工程の途中の状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示す図である。
図8(d)は、実施例1の
図7に対応する樹脂フィルムFsがスタンパ21から完全に剥離され、巻取り工程に入る状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示す図である。
【0053】
図8(a)乃至
図8(d)を見て解るように、実施例2は、基本的には、実施例1をスタンパ21の転写面を境にして上下面対称(図面上では線対称)にした構造を有する。その他の違う第1の点は、電磁誘導加熱部61の配置位置である。電磁誘導加熱部61は、要は加圧されている線状領域を所定の温度に加熱できれば良い。従って、実施例1では電磁誘導加熱部61と成形ローラ72とをスタンパ21を挟んで近接して配置して移動させたが、実施例2では、電磁誘導加熱部61を成形ローラ72側に、且つパワーを上げたうえで離間して設け、移動させてもよい。
【0054】
第2の点は、冷却部81の替わり冷媒をスタンパ21の送り込み回収する冷却装置88を設けた点である。冷却方法は、実施例1や2で示した他、スタンパ21の転写面に冷媒を送風する方法等がある。第3の点は、スペースを縮小するために、原反リール駆動機構15の方向を変えた点である。その他の点は実施例1と同じである。従って、同じ構成を有するものは、同じ符号を付している。
【0055】
以上説明した実施例2は、微細パターンの樹脂フィルムへの転写を上から行うことの他、実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0056】
(実施例3)
図9は、本発明の実施例3であるナノインプリント装置を示す図である。実施例1、2では、原反リール11及び巻取りリール31を加工ユニット20に対して同一側に対して設けた。実施例3では、原反リール11及び巻取りリール31を加工ユニット20に対して両側に別々に設けている。
【0057】
図9(a)は、実施例1の
図2に対応する図で、転写工程入る位置である原点位置における樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示す図である。
図9(b)は、実施例1の
図4に対応する転写工程の途中の状態、動作を図示的に示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態を示す図である。
図9(c)は、実施例1の
図6に対応する剥離工程の途中の状態、動作を図示的に示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態を示す図である。
図9(d)は、実施例1の
図7に対応する樹脂フィルムFsがスタンパ21から完全に剥離され、巻取り工程に入る状態を示す図で、樹脂フィルムFの搬送及び成形加工を司る構成要素の状態、動作を図示的に示す図である。
【0058】
図9(a)乃至
図9(d)を見て解るように、実施例3は、基本的には、原点位置をスタンパ21の左側から右側に変更し、成形ロール72と冷却ロール82の位置を左右反対にした構造を有する。しかし、ダンサローラ51のストロークは多少変動するが、ダンサローラ部50の構造及び配置位置(原反ロール11と成形ロール72の間)ということは変わらない。この点は、実施例2も同様である。上記の構造の変化によって、転写工程が巻取りリール31側から原反リール11に向けて行われる。逆に、剥離工程が原反リール11から巻取りリール31側に向けて行われる。
【0059】
その他の実施例1と違う点は、各図を見て解るように、原反リール11から供給された樹脂フィルムFが成形ローラ72にある程度の角度で入射しているので、剥離ローラ75を設けていないことである。勿論、剥離ローラ75を設けることを否定するものではない。その他の点は実施例1と同じである。従って、同じ構成を有するものは、同じ符号を付している。
【0060】
以上説明した実施例3は、剥離ローラ75が有する効果を奏することができないが、その他の効果は実施例1と同様に効果を奏することができる。
以上の実施の形態では、被転写膜の熱硬化を誘導加熱部で行ったが、光やヒータによる加熱等で行ってもよい。
また、以上の実施の形態では、スタンパとして平板状のものを用いたが、円柱又は円筒状のものであってもよい。
【0061】
以上のように本発明の実施の形態について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。