(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であるリンク作動装置において、
前記各リンクハブとこれらのリンクハブに連結された前記各端部リンクとの各回転対偶中心軸はそれぞれ互いに交差する位置関係であって、この交点を球面リンク中心と称し、前記基端側および先端側のリンクハブが互いに平行である状態で、一方のリンクハブの前記球面リンク中心を通り対向するリンクハブの前記球面リンク中心に向かって延びる軸線をリンクハブ中心軸と称する場合に、前記基端側のリンクハブと前記先端側のリンクハブとの間に、それぞれ前記基端側および先端側のリンクハブ中心軸上にあってそのリンクハブ中心軸が通る前記球面リンク中心から対向する前記球面リンク中心に対して遠い側に位置する基端側および先端側の線材保持点で両端が保持された線材が配置され、
前記基端側および先端側のリンクハブが互いに平行である状態における前記基端側および先端側の球面リンク中心の中点から前記各球面リンク中心までの距離をDとし、基端側および先端側につき前記球面リンク中心から前記線材保持点までの距離をそれぞれHとした場合に、
H=0.5×D
の関係が成り立つことを特徴とするリンク作動装置。
請求項1または請求項2のリンク作動装置において、前記線材はトルクを伝達可能なフレキシブルシャフトであり、前記基端側のリンクハブに設置した回転アクチュエータの出力軸に前記線材の一端が連結され、前記先端側のリンクハブに対して回転自在に設置された回転架台の回転軸部に前記線材の他端が連結されているリンク作動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、単に各リンク機構の内側の空間に線材を挿通するだけでは、線材がリンク機構を構成する部材と干渉して傷む可能性がある。また、基端側のリンクハブに対して先端側のリンクハブが姿勢変更して、基端側と先端側の各線材保持部間の距離等が変化することにより、各線材保持部から線材に張力および圧縮力が発生し、これにより線材を傷めたり、耐久性を悪化させたりすることがある。一方、線材の張力および圧縮力の反力がリンク機構に作用することで、リンク作動装置を作動させるアクチュエータへの負担が大きくなる。
【0005】
この発明の目的は、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ各リンク機構の内側の空間に挿通される線材を傷めず、しかも線材の曲がりに伴う装置への負担増加を抑えることができるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のリンク作動装置1は、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を、3組以上のリンク機構4を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構4は、それぞれ前記基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材5,6と、これら基端側および先端側の端部リンク部材5,6の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材7とでなり、前記各リンク機構4は、このリンク機構4を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状である。
このリンク作動装置1において、前記各リンクハブ2,3とこれらのリンクハブ2,3に連結された前記各端部リンク5,6との各回転対偶中心軸はそれぞれ互いに交差する位置関係であって、この交点を球面リンク中心P1,P2と称し、前記基端側および先端側のリンクハブ2,3が互いに平行である状態で、一方のリンクハブ2(3)の前記球面リンク中心P1(P2)を通り対向するリンクハブ3(2)の前記球面リンク中心P2(P1)に向かって延びる軸線をリンクハブ中心軸B,Cと称する場合に、前記基端側のリンクハブ2と前記先端側のリンクハブ3との間に、それぞれ前記基端側および先端側のリンクハブ中心軸B,C上にあってそのリンクハブ中心軸B,Cが通る前記球面リンク中心P1,P2から対向する前記球面リンク中心P2,P1に対して遠い側に位置する基端側および先端側の線材保持点Q1,Q2で両端が保持された線材33が配置され、前記基端側および先端側のリンクハブ2,3が互いに平行である状態における前記基端側および先端側の球面リンク中心P1,P2の中点Oから前記各球面リンク中心P1,P2までの距離をDとし、基端側および先端側につき前記球面リンク中心P1,P2から前記線材保持点Q1,Q2までの距離をそれぞれHとした場合に、
H=0.5×D
の関係が成り立つことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、曲げ中心が基端側および先端側の球面リンク中心P1,P2の2点であるため、曲げ中心が1点である一般的な構成と比べて、各リンク機構4の内側の空間9に挿通される線材33の曲げ半径Rが大きく、また基端側のリンクハブ中心軸Bに対する先端側のリンクハブ中心軸Cの屈曲による線材33の長さ変化(L/S)も小さい。特に、線材保持点Q1,Q2の位置をH=0.5×Dとすることで、線材33と線材保持部Q1,Q2との相対変位が最小となる。これにより、線材33がリンク機構4等の他の部材と干渉することの回避が容易となる。また、線材33にかかる張力や圧縮力が低減され、線材33の耐久性が向上する。
【0008】
例えば、線材33が先端側のリンクハブ3に取り付けるツールへの配線である場合、基端側と先端側のリンクハブ中心軸B,Cが互いに屈曲した状態となっても、線材33の長さ変化が極めて少ないので、余裕長さを持たせることなく線材33を各リンク機構4の内側の空間9に設置することができる。そのため、直線長さ分だけの線材33の長さの設置で済み、また屈曲に伴う線材33の大きな長さ変化に対応するスライド機構などの必要がないなど、リンク作動装置1への線材33の設置が簡単である。また、線材33が各リンク機構4の内側の空間9に収まっているため、リンク作動装置1を省スペースで設置できる。さらに、線材33が各リンク機構4の内側の空間9に収まっていると、線材33の保護の点でも有利である。しかも、線材33の長さを短くでき、低コストで済む。
【0009】
この発明のリンク作動装置1において、前記線材33の最小曲げ半径をR
minとし、前記基端側のリンクハブ中心軸Bに対する前記先端側のリンクハブ中心軸Cの最大屈曲角を(2×θ
max)とした場合に、
R
min=D×(1/sinθ
max+1/(2×tanθ
max))
の関係が成り立つと良い。
【0010】
これにより、基端側のリンクハブ中心軸Bに対する先端側のリンクハブ中心軸Cの屈曲角(2×θ)の大きさに関係なく、常に各リンク機構4の内側の空間9に挿通される線材33の曲げ半径Rが許容曲げ半径内に収まる。また、球面リンク中心P1,P2の中点Oから球面リンク中心P1,P2までの距離であるDは、リンク作動装置1に望まれる最大屈曲角(2×θ
max)を得るために必要な最小の値とされている。言い換えると、限定された装置の大きさのなかで、最大の屈曲角(2×θ)が得られる。よって、リンク作動装置1をコンパクトにできる。
【0011】
この発明のリンク作動装置1において、前記線材33は光ファイバーであっても良い。
光ファイバーは、レーザー加工のレーザー伝送ケーブルまたはセンサの信号ケーブル等に使われるが、許容曲げ半径を確保することや、捩じり回しやキンクを避ける必要があり、フレキシブルであるが取扱いには注意を要する。このリンク作動装置1の先端側のリンクハブ3にレーザーヘッドやセンサを設置し、光ファイバーをリンク機構4の内側の空間9の中心に挿通させれば、リンク作動装置1の外部に光ファイバーが露出することがなく、リンク作動装置1の設置スペースをコンパクトにできる。
【0012】
この発明のリンク作動装置1において、前記線材33はトルクを伝達可能なフレキシブルシャフトであり、前記基端側のリンクハブ2に設置した回転アクチュエータ67の出力軸67aに前記線材33の一端が連結され、前記先端側のリンクハブ3に対して回転自在に設置された回転架台61の回転軸部61bに前記線材33の他端が連結されていても良い。
これにより、フレキシブルシャフトの変形による反力を抑えた状態で、省スペースかつ簡単に回転架台61を回転可能とすることができる。フレキシブルシャフトの反力が抑えられると、リンク作動装置1を駆動する回転アクチュエータ67の出力を小さくでき、装置全体が軽量でコンパクトなものとすることができ、かつ低コストとなる。
【発明の効果】
【0013】
この発明のリンク作動装置は、基端側のリンクハブに対し先端側のリンクハブを、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記基端側のリンクハブおよび先端側のリンクハブに一端が回転可能に連結された基端側および先端側の端部リンク部材と、これら基端側および先端側の端部リンク部材の他端に両端がそれぞれ回転可能に連結された中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、このリンク機構を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する基端側部分と先端側部分とが対称を成す形状であり、前記各リンクハブとこれらのリンクハブに連結された前記各端部リンクとの各回転対偶中心軸はそれぞれ互いに交差する位置関係であって、この交点を球面リンク中心と称し、前記基端側および先端側のリンクハブが互いに平行である状態で、一方のリンクハブの前記球面リンク中心を通り対向するリンクハブの前記球面リンク中心に向かって延びる軸線をリンクハブ中心軸と称する場合に、前記基端側のリンクハブと前記先端側のリンクハブとの間に、それぞれ前記基端側および先端側のリンクハブ中心軸上にあってそのリンクハブ中心軸が通る前記球面リンク中心から対向する前記球面リンク中心に対して遠い側に位置する基端側および先端側の線材保持点で両端が保持された線材が配置され、前記基端側および先端側のリンクハブが互いに平行である状態における前記基端側および先端側の球面リンク中心の中点から前記各球面リンク中心までの距離をDとし、基端側および先端側につき前記球面リンク中心から前記線材保持点までの距離をそれぞれHとした場合に、
H=0.5×D
の関係が成り立つため、コンパクトな構成でありながら、精密で広範な作動範囲の動作が可能で、かつ各リンク機構の内側の空間に挿通される線材を傷めず、しかも線材の曲がりに伴う装置への負担増加を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明にかかるリンク作動装置の一実施形態を
図1〜
図6と共に説明する。
図1はリンク作動装置の使用状態を示す図である。同図に示すように、このリンク作動装置1は、上方側となる基端側が天井面30に設置された取付ベース31に取り付けられ、下方側となる先端側に作業装置32が取り付けられている。図の例では、作業装置32はレーザー加工ヘッドであり、このレーザー加工ヘッドに対して、光ファイバーからなる線材33を介して、リンク作動装置1の外部に設置したレーザー発振器(図示せず)からのレーザー光が送られる。前記取付ベース31には、リンク作動装置1を駆動する直動アクチュエータ34が設けられている。
【0016】
図2は、リンク作動装置1のリンク作動装置本体1aを3次元的に表わした斜視図である。リンク作動装置本体1aは、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3を3組以上のリンク機構4を介して姿勢変更可能に連結したものである。リンク機構4の数は例えば3組である。なお、
図1では1組のリンク機構4のみが示されている。
【0017】
図2において、各リンク機構4は、基端側の端部リンク部材5、先端側の端部リンク部材6、および中央リンク部材7で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。基端側および先端側の端部リンク部材5,6はL字状をなし、各リンク機構4の端部リンク部材5,6の基端が、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の球面状をした外周面における円周方向に等間隔の位置にそれぞれ回転自在に連結されている。中央リンク部材7は、両端に基端側および先端側の端部リンク部材5,6の先端がそれぞれ回転自在に連結されている。
【0018】
図3は、リンク作動装置本体1aの一つリンク機構4を直線で表現した図である。3組のリンク機構4における基端側および先端側の端部リンク部材5,6は、球面リンク構造を成す。すなわち、基端側および先端側のリンクハブ2,3とこのリンクハブ2,3に連結された各端部リンク5,6との各回転対偶中心軸はそれぞれ互いに交差する位置関係であって、この交点を球面リンク中心P1,P2と称する。球面リンク中心P1,P2から各端部リンク5,6までの距離は同じである。端部リンク部材5,6と中央リンク部材7との各回転対偶中心軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。
【0019】
つまり、3組のリンク機構4は、幾何学的に同一形状をなす。幾何学的に同一形状とは、
図3のように、各リンク部材5,6,7を直線で表現した幾何学モデル、すなわち各回転対偶と、これら回転対偶間を結ぶ直線とで表現したモデルが、中央リンク部材7の中央部に対する基端側部分と先端側部分が対称を成す形状であることを言う。
【0020】
この実施形態のリンク機構4は鏡像対称タイプで、基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6との位置関係が、中央リンク部材7の中心面である対称面Aに対して鏡像対称となる位置構成になっている。
図2、
図3は、基端側のリンクハブ中心軸Bに対して先端側のリンクハブ中心軸Cが所定の屈曲角をとった状態を示す。リンクハブ中心軸B,Cは、基端側および先端側のリンクハブ2,3が互いに平行である状態で、一方のリンクハブ2(3)の球面リンク中心P1(P2)を通り対向するリンクハブ3(2)の球面リンク中心P2(P1)に向かって延びる軸線を言う。基端側および先端側のリンクハブ中心軸B,Cの交点は、基端側および先端側のリンクハブ中心軸B,Cが同一線上に並ぶときの球面リンク中心P1,P2の中点Oである。各リンク機構4の姿勢が変化しても、基端側と先端側の球面リンク中心P1,P2間の距離は常に一定である。
【0021】
基端側のリンクハブ2と先端側のリンクハブ3と3組のリンク機構4とで、基端側のリンクハブ2に対し先端側のリンクハブ3が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、コンパクトでありながら、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の可動範囲を広くとれる。例えば、基端側のリンクハブ中心軸Bと先端側のリンクハブ中心軸Cの屈曲角(2×θ)(
図2)の最大値である最大屈曲角を約±90°とすることができる。また、基端側のリンクハブ2に対する先端側のリンクハブ3の旋回角φ(
図2)を0°〜360°の範囲に設定できる。屈曲角(2×θ)は、基端側のリンクハブ2の中心軸Bに対して先端側のリンクハブ3の中心軸Cが傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、基端側のリンクハブ中心軸Bに対して先端側のリンクハブ中心軸Cが傾斜した水平角度のことである。
【0022】
このリンク作動装置1において、各リンク機構4における球面リンク中心P1,P2と端部リンク部材5,6の角度、および球面リンク中心P1,P2から端部リンク部材5,6までの長さが等しく、かつ基端側の端部リンク部材5と先端側の端部リンク部材6の幾何学的形状が等しく、かつ中央リンク部材7についても基端側の先端側とで形状が等しいとき、中央リンク部材7の対称面Aに対して、中央リンク部材7と端部リンク部材5,6との角度位置関係を基端側と先端側とで同じにすれば、幾何学的対称性から基端側のリンクハブ2および基端側の端部リンク部材5と、先端側のリンクハブ3および先端側の端部リンク部材6とは同じに動く。例えば、基端側と先端側のリンクハブ2,3にリンクハブ中心軸B,Cと同軸に回転軸を設け、基端側から先端側へ回転伝達を行う場合、基端側と先端側は同じ回転角になって等速で回転する等速自在継手となる。
【0023】
図4は、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶部、および基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7の回転対偶部を示す断面図である。これら回転対偶の構造は、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶部、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶部についても同じである。
【0024】
リンクハブ2(3)は、外周部に半径方向の軸孔11が円周方向3箇所に形成され、各軸孔11内に設けた二つの軸受12により軸部材13がそれぞれ回転自在に支持されている。軸部材13の外側端部はリンクハブ2(3)から突出し、その突出ねじ部13aに端部リンク部材5(6)が結合され、ナット14によって締付け固定されている。
【0025】
前記軸受12は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記軸孔11の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部材13の外周に嵌合している。外輪は止め輪15によって抜け止めされている。また、内輪と端部リンク部材5(6)の間には間座16が介在し、ナット14の締付力が端部リンク部材5(6)および間座16を介して内輪に伝達されて、軸受12に所定の予圧を付与している。
【0026】
端部リンク部材5(6)と中央リンク部材7の回転対偶は、中央リンク部材7の両端に形成された連通孔18に二つの軸受19が設けられ、これら軸受19により、端部リンク部材5(6)の先端の軸部20が回転自在に支持されている。軸受19は、間座21を介して、ナット22によって締付け固定されている。
【0027】
前記軸受19は、例えば深溝玉軸受等の転がり軸受であり、その外輪(図示せず)が前記連通孔18の内周に嵌合し、その内輪(図示せず)が前記軸部20の外周に嵌合している。外輪は止め輪23によって抜け止めされている。軸部20の先端ねじ部20aに螺着したナット22の締付力が間座21を介して内輪に伝達されて、軸受19に所定の予圧を付与している。
【0028】
このように、各リンク機構4における4つの回転対偶、つまり、基端側のリンクハブ2と基端側の端部リンク部材5の回転対偶、先端側のリンクハブ3と先端側の端部リンク部材6の回転対偶、基端側の端部リンク部材5と中央リンク部材7と回転対偶、および先端側の端部リンク部材6と中央リンク部材7の回転対偶に、軸受12,19を設けた構造とすることにより、各回転対偶での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0029】
この軸受12,19を設けた構造では、軸受12,19に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、回転対偶のがたつきを抑えることができ、振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受12,19の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0030】
軸受12を基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3に埋設状態で設けたことにより、リンク作動装置本体1aの外形を大きくすることなく、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3の外形を拡大することができる。そのため、基端側のリンクハブ2および先端側のリンクハブ3を他の部材に取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0031】
図1において、前記直動アクチュエータ34は、シリンダ部34aの基端が取付ベース31に回転可能に連結され、かつピストンロッド34bの先端が基端側の端部リンク5の中間部に回転可能に連結されている。直動アクチュエータ34は、例えば各リンク機構4にそれぞれ設けられるが、リンク機構4の数が3組である場合、2組以上のリンク機構4に設ければ良い。各直動アクチュエータ34を制御して、基端側の端部リンク5を回動させることにより、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3を任意の姿勢に変更させられる。
【0032】
図5は、リンク作動装置1と取付ベース31および作業装置32との取付部の構造を示す断面図である。同図に示すように、基端側のリンクハブ2は、その基端面を取付ベース31の底面板部31aに接触させて、ボルト41により取付ベース31に取り付けられる。また、先端側のリンクハブ3は、その先端面に先端プレート42がボルト43により取り付けられ、前記先端プレート42に対して、レーザー加工ヘッドからなる作業装置32のヘッド取付フランジ44がボルト45で取り付けられる。なお、ヘッド取付フランジ44は、作業装置32にボルト46で固定されている。
【0033】
光ファイバーからなる前記線材33は、フレキシブルなものであり、各リンク機構4の内側の空間9、および各リンクハブ2,3に設けられた貫通孔10に挿通させて配置される。各貫通孔10の中心軸線はリンクハブ中心軸B,Cと一致している。
【0034】
取付ベース31の底面板部31aは基端側のリンクハブ2の貫通孔10と対応する貫通孔50を有し、この貫通孔50に線材保持部材51が嵌め込まれている。線材保持部材51は、ボルト52で取付ベース31に固定される。線材保持部材51は、弾性体53で線材33の外周を覆う状態で線材33を保持する。弾性体53は線材33の外周面に密着しており、線材33における弾性体53で覆われた部分は一定の状態、例えば直線状に保持される。線材33における弾性体53に覆われた部分と貫通孔10内に位置する部分の境界点が、基端側の線材保持点Q1となる。この基端側の線材保持点Q1は、基端側のリンクハブ中心軸B上にあって、基端側の球面リンク中心P1に対し中点Oから遠い側に位置する。
【0035】
また、前記先端プレート42およびヘッド取付フランジ44はリング状で、その中空部に作業装置32の線材導入部32aが突出している。そして、線材33の先端部が前記線材導入部32aに挿入されている。線材33における線材導入部32aに挿入された部分と貫通孔10内に位置する部分の境界点が、先端側の線材保持点Q2となる。この先端側の線材保持点Q2は、先端側のリンクハブ中心軸C上にあって、先端側の球面リンク中心P2に対し中点Oから遠い側に位置する。基端側の球面リンク中心P1から基端側の線材保持点Q1までの距離、および先端側の球面リンク中心P2から先端側の線材保持点Q2までの距離は、互いに等しい。
【0036】
リンク作動装置1の作動に伴い線材33が曲がるが、その場合に線材33を傷めず、しかも線材33の曲がりに伴うリンク作動装置1への負担増加を抑えるために、以下のように各部の寸法が設定されている。
【0037】
[第1の設定]
基端側および先端側の線材保持点Q1,Q2の各位置を、基端側および先端側のリンクハブ2,3が互いに平行である状態における基端側および先端側の球面リンク中心P1,P2間の距離の1/2をDとし、球面リンク中心P1,P2から線材保持点Q1,Q2までの距離をそれぞれHとした場合に、関係式
H=0.5×D ・・・(式1)
で表されるように設定する。
【0038】
上記関係式(式1)の根拠を、
図6と共に説明する。同図におけるSは基端側および先端側のリンクハブ2,3が互いに平行である状態における基端側の線材保持点Q1と先端側の線材保持点Q2間の距離、Dは基端側および先端側の球面リンク中心P1,P2の中点Oと各球面リンク中心P1,P2間の距離、Hは球面リンク中心P1,P2と線材保持点Q1,Q2間の距離であり、これらは互いに式2の関係にある。
S=2(D+H) ・・・(式2)
【0039】
線材33が一様な曲げ剛性の可撓性材であると仮定した場合、基端側のリンクハブ2に対して先端側のリンクハブ3が姿勢変更すると、線材33は円弧状に変形する。基端側のリンクハブ中心軸Bに対する先端側のリンクハブ中心軸Cの屈曲角が(2×θ)である時の線材33の曲げ半径をR、基端側および先端側の線材保持点Q1,Q2間の円弧長さをLとすると、RおよびLは式3、式4で表される。
R=R1+R2=D/sinθ+H/tanθ ・・・(式3)
L=2Rθ ・・・(式4)
【0040】
図7は、リンク作動装置1の作動による屈曲角(2×θ)と線材33の長さ変化(L/S)との関係を、線材保持点Q1,Q2の位置(H/D)がそれぞれ異なる各仕様について比較して示すグラフである。線材33の長さ変化は、(L/S)で無次元化して表している。また、
図8は、リンク作動装置1の作動による屈曲角(2×θ)と線材33の曲げ半径(R/S)との関係を、線材保持点Q1,Q2の位置(H/D)がそれぞれ異なる各仕様について比較して示すグラフである。線材33の曲げ半径は、(R/S)で無次元化して表している。
図7、
図8の関係は計算により求められたものである。なお、このリンク作動装置1のように曲げ中心が2点である構成との比較のために、
図7、
図8には、参考として、一般的な1点で屈曲するリンク作動装置(
図9参照)について行なった計算結果も併せて示してある。
【0041】
図8から、線材保持点Q1,Q2間の距離Sが同じで、屈曲角(2×θ)も同じであるとき、曲げ中心が2点である構成(
図6)は、曲げ中心が1点である構成(
図9)よりも、線材33の曲げ半径Rが大きいことが分かる。また、曲げ中心が2点である場合の仕様比較では、H/Dの値が大きいほど、すなわち線材保持点Q1,Q2の位置が球面リンク中心P1,P2から離れているほど、線材33の曲げ半径Rは小さくなる。可撓性材は曲げ半径Rに下限があり、これにより屈曲角(2×θ)が限定されるが、同じ屈曲角(2×θ)で曲げ半径Rが大きければ、より大きい屈曲角(2×θ)をとることができる。
【0042】
図7から、線材保持点Q1,Q2間の距離Sが同じで、屈曲角(2×θ)も同じであるとき、曲げ中心が2点である構成(
図6)は、曲げ中心が1点である構成(
図9)よりも、線材33の長さ変化(L/S)が小さいことが分かる。また、曲げ中心が2点である場合の仕様比較では、(H/D)が0.5のとき、線材33の長さ変化(L/S)が最も小さくなる。
【0043】
したがって、任意の距離Dに対して、線材保持点Q1,Q2の位置をH=0.5×Dとすることで、線材33と線材保持部Q1,Q2との相対変位が最小となる。これにより、線材33がリンク機構4等の他の部材と干渉することの回避が容易となる。また、線材33にかかる張力や圧縮力が低減され、線材33の耐久性が向上する。
【0044】
図7、
図8から分かるように、曲げ中心が2点である構成は、曲げ中心が1点である構成と比べて、各リンク機構4の内側の空間9に挿通される線材33の曲げ半径Rが大きく、また基端側のリンクハブ中心軸Bに対する先端側のリンクハブ中心軸Cの屈曲による線材33の長さ変化(L/S)も小さい。
【0045】
よって、この実施形態のように、線材33が先端側のリンクハブ3に取り付けるツールへの配線である場合、基端側と先端側のリンクハブ中心軸B,Cが互いに屈曲した状態となっても、線材33の長さ変化(L/S)が極めて少ないので、余裕長さを持たせることなく線材33を各リンク機構4の内側の空間9に設置することができる。そのため、直線長さ分だけの線材33の長さの設置で済み、また屈曲に伴う線材33の大きな長さ変化に対応するスライド機構などの必要がないなど、リンク作動装置1への線材33の設置が簡単である。また、線材33が前記空間9に収まっているため、リンク作動装置1を省スペースで設置できる。さらに、線材33が前記空間9に収まっていると、線材33の保護の点でも有利である。しかも、線材33の長さを短くでき、低コストで済む。
【0046】
[第2の設定]
線材33の最小曲げ半径をR
minとし、基端側のリンクハブ中心軸Bに対する先端側のリンクハブ中心軸Cの最大屈曲角を(2×θ
max)とした場合に、関係式
R
min=D×(1/sinθ
max+1/(2×tanθ
max)) ・・・(式5)
で表されるように設定する。
【0047】
これにより、基端側のリンクハブ中心軸Bに対する先端側のリンクハブ中心軸Cの屈曲角(2×θ)の大きさに関係なく、常に各リンク機構4の内側の空間9に挿通される線材33の曲げ半径Rが許容曲げ半径内に収まる。また、距離Dは、リンク作動装置1に望まれる最大屈曲角(2×θ
max)を得るために必要な最小の値とされている。言い換えると、限定された装置の大きさのなかで、最大の屈曲角(2×θ)が得られる。よって、リンク作動装置1をコンパクトにできる。
【0048】
この実施形態のように線材33が光ファイバーである場合、特に線材33の許容曲げ半径を確保することや、捩じり回しやキンクを避けることが求められる。上記のように各部の寸法が設定されていると、リンク作動装置1の作動に伴う光ファイバーの長さ変化が少ないため、捩じり回しやキンクを避けることができ、取扱い性が向上する。また、リンク作動装置1の外部に光ファイバーが露出することがなく、リンク作動装置1の設置スペースをコンパクトにできる。
【0049】
図10は、線材33がトルクを伝達可能なフレキシブルシャフトである例を示す。このリンク作動装置1は、回転工具等の回転体(図示せず)を姿勢変更可能に支持するものであり、基端側のリンクハブ2が取付ベース31にボルト41で固定され、先端側のリンクハブ3に回転自在に設けられた回転架台61に前記回転体が設置される。
【0050】
回転架台61は、例えば以下のように先端側のリンクハブ3に支持される。この例では、先端側のリンクハブ3の先端面に先端プレート42をボルト43で取り付け、前記先端プレート42に対して回転架台保持フランジ62をボルト63で取り付け、前記回転架台保持フランジ62に軸受64を介して回転架台61の回転軸部61bを回転自在に支持している。なお、回転架台61の回転架台本体61aと回転軸部61bは別体とされ、両者61a,61bはボルト65により互いに結合されている。
【0051】
取付ベース31の内部には、回転架台61を回転駆動する回転アクチュエータ67が設置されている。この回転アクチュエータ67の出力軸67aに、カップリング68を介して、フレキシブルシャフトである線材33の基端が結合される。線材33におけるカップリング68に挿入された部分と基端側のリンクハブ2の貫通孔10内に位置する部分の境界点が、基端側の線材保持点Q1となる。この基端側の線材保持点Q1は、基端側のリンクハブ中心軸B上にあって、基端側の球面リンク中心P1に対し中点Oから遠い側に位置する。
【0052】
また、線材33の先端は、カップリング69を介して、前記回転架台61の回転軸部61bに結合される。線材33におけるカップリング69に挿入された部分と先端側の端部リンク3の貫通孔10内に位置する部分の境界点が、先端側の線材保持点Q2となる。この先端側の線材保持点Q2は、先端側のリンクハブ中心軸C上にあって、先端側の球面リンク中心P2に対し中点Oから遠い側に位置する。基端側の球面リンク中心P1から基端側の線材保持点Q1までの距離、および先端側の球面リンク中心P2から先端側の線材保持点Q2までの距離は、互いに等しい。
【0053】
この場合も、前記第1の設定および第2の設定に基づいて、各部の寸法が設定されている。それにより、フレキシブルシャフトの変形による反力を抑えた状態で、省スペースかつ簡単に回転架台61を回転可能とすることができる。フレキシブルシャフトの反力が抑えられると、リンク作動装置を駆動するアクチュエータの出力を小さくでき、装置全体が軽量でコンパクトなものとすることができ、かつ低コストとなる。
【0054】
上記各実施形態のリンク作動装置1は、各リンク機構4が鏡像対称タイプであるが、
図11に示すように、各リンク機構4が点対称タイプであっても良い。その場合も、第1の設定および第2の設定に基づいて各部の寸法を適正に設定することにより、鏡像対称タイプと同じ作用・効果が得られる。
図11では、鏡像対称である構成と対応させて符号を付してある。