特許第6104706号(P6104706)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104706
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】粘着シートおよび積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/00 20060101AFI20170316BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20170316BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20170316BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20170316BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20170316BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170316BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20170316BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C09J7/00
   C09J133/10
   C09J133/06
   C09J133/14
   C09J133/08
   C09J11/06
   C09J4/00
   B32B27/00 M
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-107143(P2013-107143)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-227453(P2014-227453A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】宝田 翔
(72)【発明者】
【氏名】水谷 昌紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/077808(WO,A1)
【文献】 特開2014−125524(JP,A)
【文献】 特開2014−196442(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061611(WO,A1)
【文献】 特開2012−087240(JP,A)
【文献】 特開2012−173354(JP,A)
【文献】 特開2012−017386(JP,A)
【文献】 特開2011−099073(JP,A)
【文献】 特開2009−155503(JP,A)
【文献】 特開2007−328092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差部を有する透明板と、可撓性フィルムとの貼り合せに用いられる粘着シートであって、
粘着シートを構成する粘着剤組成物は、重量平均分子量が80万以下でありゲル分率が50%以下のアクリル系ベースポリマーを50重量%以上含有し、さらに光重合開始剤および未架橋の多官能モノマーを含有する光硬化性粘着剤であり、
80℃における貯蔵弾性率G’が4〜40kPaであり、損失正接tanδが1.0以上である、粘着シート。
【請求項2】
25℃における貯蔵弾性率が50kPa以上である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系ベースポリマーが、モノマーユニットとして、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有する、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系ベースポリマーが、モノマーユニットとして、ヒドロキシ基含有モノマーおよび窒素含有モノマーを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記アクリル系ベースポリマーは、構成モノマー成分全量に対する前記ヒドロキシ基含有モノマーと前記窒素含有モノマーの含有量の合計が、3〜50重量%である、請求項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記アクリル系ベースポリマーが、モノマーユニットとして、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
粘着シートを構成する粘着剤組成物が、軟化点が80℃以上の可塑剤をさらに含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
粘着シートを構成する粘着剤組成物が、シランカップリング剤をさらに含有する請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤硬化後の85℃における貯蔵弾性率が30kPa以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項10】
段差部を有する透明板と、可撓性フィルムとが、請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着シートを介して貼り合わせられた積層体。
【請求項11】
前記可撓性フィルムは、少なくとも一方の面に透明電極層を備える、請求項10に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明板と可撓性フィルムとの貼り合わせに用いられる粘着シートに関する。さらに、本発明は、透明板と可撓性フィルムとが粘着シートを介して貼り合わせられた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、カーナビゲーション装置、パソコン用モニタ、テレビ等の各種画像表示装置として、液晶表示装置や有機EL表示装置が広く用いられている。画像表示パネル(液晶パネルや有機ELパネル)の外表面からの衝撃による画像表示パネルの破損防止等を目的として、画像表示パネルの視認側に、透明樹脂板やガラス板等の前面透明板(「ウインドウ層」等とも称される)が設けられることがある。視認側表面にタッチパネルを有する画像表示装置では、タッチパネルの視認側に前面透明板が設けられる。
【0003】
画像表示パネルやタッチパネルの前面に前面透明板を配置する方法として、粘着材層を介して両者を貼り合わせる「層間充填構造」が採用されている。層間充填構造では、パネルと前面透明板との間が粘着剤で充填されるため、界面の屈折率差が減少し、反射や散乱に起因する視認性の低下が抑制される。また、粘着剤が充填されることにより、画像表示装置全体の強度が増すため、前面透明板等が破損した場合でも、その形成材料であるガラス等の飛散を防ぐといった効果も得られる(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
前面透明板のパネル側の面の周縁部には、装飾や光遮蔽を目的とした着色層が、印刷により形成される。透明板の周縁部に着色層が形成されると、10μm〜数十μm程度の印刷段差が生じる。層間充填剤としてシート状粘着剤を用いた際は、この印刷段差周辺に気泡が生じ易い。かかる問題に鑑み、特許文献3では、貯蔵弾性率の小さい粘着剤を用いることにより、前面透明板との貼り合せ時の、印刷段差周辺における粘着剤の残留応力を低減させて段差追従性(段差吸収性)を付与し、気泡の発生を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−8851号公報
【特許文献2】特開2008−281997号公報
【特許文献3】特開2011−74308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、印刷段差を有する前面透明板とパネルとの貼り合せに用いられる粘着シートに関しては、剛性部材であるパネル表面に前面透明板を貼り合せる際の、気泡の抑制を中心に種々の検討がなされていた。一方、デバイスの薄型化および軽量化の観点から、フィルムタッチパネルの採用が進んでおり、可撓性フィルム上に透明電極層が形成された透明導電性フィルムを、前面透明板に貼り合せる形態が採用されるようになっている。また、パネル側表面に透明電極層を有する前面透明板と、可撓性フィルム基材の一方の面に透明電極層が形成された透明導電性フィルムとを、粘着シートを介して貼り合せた「ウィンドウタイプ」の静電容量方式タッチパネルの需要も高まっている。
【0007】
印刷段差を有する前面透明板と可撓性フィルムとを粘着剤を介して貼り合せると、図4に示すように、印刷段差部72の近辺で、フィルム形状に歪が生じる場合がある。このような形状歪が生じると、段差部周辺で光の屈折が生じるため、画面の額縁近辺領域721の画像が歪み、外観異常が発生することが問題視されている。
【0008】
かかる現状に鑑み、本発明は、印刷段差を有する前面透明板と可撓性フィルムとの貼り合せに用いた際に、段差部周辺でのフィルム形状の歪を抑制し得る粘着シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑みて検討の結果、粘着シートに所定の粘弾特性を持たせることで上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
本発明は、段差部を有する透明板と、可撓性フィルムとの貼り合せに用いられる粘着シートに関する。本発明の粘着シートは、80℃における損失正接tanδが1.0以上であることが好ましい。また、本発明の粘着シートは、25℃における貯蔵弾性率が50kPa以上であることが好ましい。
【0010】
粘着シートを構成する粘着剤組成物は、アクリル系ベースポリマーを50重量%以上含有することが好ましい。アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量は80万以下であることが好ましい。また、アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとして、分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。
【0011】
アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとして、ヒドロキシ基含有モノマーおよび窒素含有モノマーを含有することが好ましい。構成モノマー成分全量に対するヒドロキシ基含有モノマーと窒素含有モノマーの含有量の合計は、3〜50重量%が好ましい。また、アクリル系ベースポリマーは、モノマーユニットとして、カルボキシ基含有モノマーを実質的に含有しないことが好ましい。
【0012】
本発明において、粘着シートを構成する粘着剤組成物は、軟化点が80℃以上の可塑剤をさらに含有することが好ましい。また、粘着剤組成物中にはシランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。
【0013】
本発明の粘着シートは、光重合開始剤および多官能モノマーを含有する、光硬化性の粘着剤であることが好ましい。光硬化性の粘着剤からなる粘着シートは、硬化後の、85℃における貯蔵弾性率が30kPa以上であることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明は、段差部を有する透明板と可撓性フィルムとが、上記粘着シートを介して貼り合わせられた積層体に関する。一実施形態において、可撓性フィルムは、少なくとも一方の面に透明電極層を備える透明導電性フィルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘着シートを、印刷段差を有する透明板とフィルムとの貼り合せに用いると、印刷段差部周辺でのフィルム形状の歪が低減される。そのため、画像表示装置の画面の額縁近辺領域の画像の歪による外観異常が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】粘着シートの使用例を模式的に表す断面図である。
図2】粘着シートの使用例を模式的に表す断面図である。
図3】前面透明板の構成例を模式的に表す平面図である。
図4】フィルム形状の歪によって印刷段差近辺に画像の歪が生じる様子を説明するための概念図である。
図5】実施例の評価用パネルのスクリーンへの投影像である。
図6】比較例の評価用パネルのスクリーンへの投影像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の粘着シートは、段差部を有する透明板と、可撓性フィルムとの貼り合せに用いられる。図1および図2は、本発明の粘着シートの使用例を表す模式的断面図である。図1の積層体101および図2の積層体102は、ウィンドウタイプのタッチパネルであり、液晶パネルや有機ELパネル(不図示)の表面に配置して用いられる。
【0018】
図1の積層体101は、可撓性フィルム基材31の表面に透明電極層35を備える透明導電性フィルム30aと、剛性の透明板71の表面に透明電極層75を備える透明電極付き前面透明板70aを備える。透明板71周縁部には、印刷段差部72が形成されている。前面透明板70aと透明導電性フィルム30aとは、本発明の粘着シート20により貼り合せられている。図2の積層体102は、可撓性フィルム基材31の両面に透明電極層37,39を備える透明導電性フィルム30bと、前面透明板70bを備える。透明板71の周縁部には、印刷部72が形成されている。これらの使用例において、前面透明板70と透明導電性フィルム30とは、本発明の粘着シート20により貼り合せられている。
【0019】
粘着シート20は、いわゆる「層間充填剤」であり、各部材の固着に加えて、界面の屈折率差を低減し、光の反射や散乱に起因する視認性の低下を抑制する機能を有する。また、層間充填剤は、液晶セル等の表示パネル(不図示)への外表面からの衝撃や押圧に対するクッション層としての作用も有する。
【0020】
[粘着シートの物性]
本発明の粘着シート20は、粘着剤がシート状に形成されたものである。粘着シート20は、80℃における損失正接tanδが1.0以上であることが好ましい。損失正接tanδは、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の比G”/G’である。貯蔵弾性率G’は、材料が変形する際に弾性エネルギーとして貯蔵される部分に相当し、硬さの程度を表す指標である。一方、損失弾性率G”は、材料が変形する際に内部摩擦等により散逸される損失エネルギー部分に相当し、粘性の程度を表す。tanδが大きいほど粘性の傾向が強く、変形挙動が液体的となり、反発弾性エネルギーが小さくなる傾向がある。
【0021】
前面透明板70とフィルム30との貼り合わせ時の加圧により、粘着シートは、印刷段差部72の近辺が、他の箇所に比して大きく変形する。貼り合せ圧力が解放されると、粘着シートは、元の形状に戻ろうとする力(弾性回復力)が作用する。そのため、図4に模式的に示すように、粘着シート220の弾性回復によって、可撓性フィルム30が印刷段差部72近辺で変形し、歪を生じる場合がある。一般に、前面透明板70とフィルム30との貼り合わせは、80℃程度の加熱環境下で行われる。本発明の粘着シート20は、このような加熱貼り合せ環境における損失正接tanδが大きいため、貼り合せ時の加圧による粘着シートの変形に伴う弾性応力が、損失エネルギーとして散逸される。そのため、貼り合せ圧力が解放された後も、フィルム30の変形が抑制される。
【0022】
粘着シートの80℃における損失正接tanδは、1.05以上がより好ましく、1,1以上がさらに好ましく、1.2以上が特に好ましく、1.3以上が最も好ましい。tanδが大きいほど、段差部近辺でのフィルムの変形が抑制される傾向がある。一方、tanδが過度に大きいと、加熱貼り合せ環境における粘着剤の流動性が大きくなり、粘着剤の移着や端面からのはみ出し等の不具合を生じる傾向がある。そのため、粘着シートの80℃における損失正接tanδは、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.2以下がさらに好ましく、2.0以下が特に好ましい。
【0023】
粘着シートの80℃における貯蔵弾性率G’は、3kPa〜80kPaが好ましく、3.5kPa〜50kPaがより好ましく、4kPa〜40kPaがさらに好ましく、4.5kPa〜30kPaが特に好ましい。80℃におけるG’が上記範囲内であれば、粘着剤が適度な柔らかさを有するため、前面透明板とフィルムとの貼り合せ時の加圧によって、粘着剤が変形し、段差部の形状に追従しやすい。そのため、段差部近辺でのフィルムの変形が抑制される傾向がある。なお、粘着シートを構成する粘着剤が光硬化型または熱硬化型の粘着剤である場合、硬化前の80℃における貯蔵弾性率G’が上記範囲内であることが好ましい。
【0024】
粘着シートの80℃における損失弾性率G”は、4Pa〜100kPaが好ましく、4.5kPa〜80kPaがより好ましく、5Pa〜60kPaがさらに好ましく、6kPa〜50kPaが特に好ましい。80℃における損失弾性率G”が上記範囲内であれば、粘着剤が適度な粘性を有するため、前面透明板とフィルムとの貼り合せ時の弾性応力が散逸され、段差部近辺でのフィルムの変形が抑制される。なお、粘着シートを構成する粘着剤が光硬化型または熱硬化型の粘着剤である場合、硬化前の80℃における損失弾性率G”が上記範囲内であることが好ましい。
【0025】
粘着シートの25℃における貯蔵弾性率G’25℃は、50kPa以上が好ましく、80kPa以上がより好ましく、100kPa以上がさらに好ましい。25℃(常温)における貯蔵弾性率G’25℃が上記範囲であれば、粘着シートのハンドリング時や、粘着シートを所定サイズにカットする際の、端面からの粘着剤のはみ出しや移着等の不具合が抑制される。G’25℃の上限は特に限定されないが、粘着シートの取扱いの容易性等の観点から、1000kPa以下が好ましい。
【0026】
なお、本明細書において、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、および損失正接tanδは、JIS K7244−1「プラスチック−動的機械特性の試験方法」に記載の方法に準拠して、周波数:1Hz、ねじり変形モードで、−50〜150℃の範囲で昇温速度5℃/分で測定した際の、所定温度における値を読み取ることにより求められる。
【0027】
本発明の粘着シートは、表示装置等の透明部材の貼り合わせに用いられるものであるため、透明性が高いことが好ましい。粘着シートのヘイズは1%以下が好ましく、全光線透過率は90%以上が好ましい。ヘイズおよび全光線透過率は、ヘイズメータを用いて、JIS K7136に準じて測定される。
[粘着剤の組成]
粘着シート20を構成する粘着剤としては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点から、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
【0028】
本発明の粘着シート中のアクリル系ベースポリマーの含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。アクリル系ベースポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットを主骨格とするものである。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソトリドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸アラキル等が挙げられる。
【0030】
粘着剤に粘性を付与して、損失弾性率G”を高める観点から、アクリル系ベースポリマーは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのモノマーユニットとして、アルキル基が分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。前記例示のモノマーの中でも、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸イソオクタデシル等が好適に用いられる。なお、分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは2種以上を併用することもできる。また、これらの分枝アルキル(メタ)アクリル酸エステルは、直鎖アルキル(メタ)アクリル酸エステルと併用して用いられてもよい。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、ベースポリマーを構成するモノマー成分全量に対して40重量%以上であることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分全量に対する、アルキル基が分枝を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましい。
【0032】
アクリル系ベースポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて、極性の高いモノマーユニットを含有することが好ましい。ベースポリマーが極性モノマーユニットを含有することにより、層間充填剤として用いられた場合の、高温高湿下での粘着剤の白濁が抑制される。極性モノマーユニットとしては、例えば、窒素含有モノマー、水酸基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等が挙げられる。中でも、粘着剤の白濁を抑制しつつ、高い接着性と保持力を得られるとの理由から、窒素含有モノマーおよび水酸基含有モノマーが好適に用いられる。
【0033】
前記窒素含有モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。中でも、N−ビニルピロリドンおよび(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく用いられる。粘着剤中に窒素含有モノマーユニットを含有することで、粘着剤の凝集力を向上させて粘着シート20の被着体に対する接着性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁を抑制できる。
【0034】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルや(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のアルコール性ヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく用いられる。ベースポリマー中にヒドロキシ基含有モノマーユニットを含有することで、粘着剤の飽和水分率が高くなるため、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向があり、粘着シートのヘイズ率を小さくできる。また、ヒドロキシ基含有モノマーユニットを含有することにより、ベースポリマー中に架橋点が導入される。そのため、架橋剤や多官能モノマー成分を含有する光硬化性粘着剤では、ポリマー鎖間に架橋構造を導入し、凝集性を高めることができる。
【0035】
なお、本発明の粘着シート20が、透明電極付き透明板や透明導電性フィルム等の貼り合せに用いられる場合、粘着シートを構成する粘着剤は、透明電極を劣化させないものが好ましい。透明電極を構成する金属や金属酸化物は、酸により腐食されやすいため、粘着シート中には遊離酸を含有しないことが好ましい。粘着剤中の遊離酸は、主に未反応のモノマー成分に由来する。そのため、本発明においては、ベースポリマーが酸性モノマー成分を実質的に含有しないことが好ましい。したがって、上記ヒドロキシ基含有モノマーは、(メタ)アクリル酸等のカルボキシ基含有モノマーを包含しないことが好ましい。
【0036】
ベースポリマー中の極性基含有モノマー成分の割合は特に制限されないが、構成モノマー成分全量に対して、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。極性基含有モノマーの含有量が5重量%以上であれば、接着性が高められるとともに、高温高湿環境下での粘着剤の白濁を抑制できる。一方、極性基含有モノマーの含有量が過度に大きいと、粘着剤の凝集力が高くなりすぎ、応力緩和性が低下する場合がある。
【0037】
上記極性基含有モノマーは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。特に、本発明の粘着シートは、粘着剤を構成するベースポリマーが、窒素含有モノマー成分およびヒロドキシ基含有モノマー成分の両方を含有することが好ましい。ベースポリマー中の窒素含有モノマーの割合は、構成モノマー成分全量に対して、3〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましく、10〜20重量%がさらに好ましい。
【0038】
ベースポリマー中の水酸基含有モノマーの割合は、構成モノマー成分全量に対して、2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、8〜18重量%がさらに好ましい。水酸基含有モノマーの割合が2重量%以上であれば、粘着剤の飽和水分率が高くなり、高温高湿環境下での粘着剤の白濁が抑制される傾向がある。一方、水酸基含有モノマーの割合が25重量%以下であれば、高湿下での水分率が大きくなり過ぎることが抑制される。常態下と高湿下とにおける水分率の差が過度に大きいと、環境変化に伴う粘着シートの誘電率変化が大きくなるために、タッチパネルの動作不良等が生じやすくなる傾向がある。
【0039】
ベースポリマーが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと上記極性モノマーとの共重合体である場合、構成モノマーの並びはランダムであっても、ブロックであってもかまわない。また、ベースポリマーは、複数種の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、複数種の極性モノマーの共重合体であってもよい。
【0040】
上記のアクリル系ポリマーは、上記モノマー成分を公知の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマーの重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法や活性エネルギー線照射による重合(活性エネルギー線重合法)等が挙げられる。透明性、耐水性、コスト等の点で、溶液重合法、または活性エネルギー線重合法が好ましい。
【0041】
上記のアクリル系ポリマーの調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤(光開始剤)や熱重合開始剤等の重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤の使用量は、特に制限はされないが、例えば、アクリル系ベースポリマーを形成するモノマー成分全量100重量部に対して0.01〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.4重量部である。
【0042】
ベースポリマーの分子量は適宜に調整され得る。tanδを1.0以上とする観点から、ベースポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、80万以下が好ましく、70万以下がより好ましく、65万以下がさらに好ましい。また、粘着剤に適度の貯蔵弾性を付与する観点から、ベースポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、5万以上が好ましく、7万以上がより好ましく、10万以上がさらに好ましい。
【0043】
上記ベースポリマーは、必要に応じて架橋構造を有していてもよい。架橋構造の形成は、例えば、ベースポリマーの重合後に、架橋剤を添加することにより行われる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、金属キレート系架橋剤等の一般に用いられているものを使用できる。
【0044】
架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、通常、0〜5重量部の範囲であり、好ましくは0〜3重量部である。架橋剤の含有量が多すぎると、貯蔵弾性率G’が増大し、粘着剤の柔軟性が低下するために、被着体への密着性が低下する場合がある。また、貯蔵弾性率G’の増大に伴って、損失正接tanδが小さくなる傾向がある。そのため、架橋剤の含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、0.15重量部以下が好ましく、0.1重量部以下がさらに好ましい。また、アクリル系ベースポリマーのゲル分率は、50%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下がさらに好ましい。ゲル分率は、酢酸エチル不溶分として求めることができ、具体的には、アクリル系粘着剤層を酢酸エチル中に23℃で7日間浸漬した後の不溶成分の、浸漬前の試料に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。一般に、ポリマーのゲル分率は架橋度に等しく、ポリマー中の架橋された部分が多いほど、ゲル分率が大きくなる。
【0045】
粘着剤組成物中に架橋剤を含有する場合、被着体との貼り合わせ前に、加熱による架橋処理が行われ、架橋構造が形成されることが好ましい。架橋処理における加熱温度や加熱時間は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜設定されるが、通常、20℃〜160℃の範囲で、1分から7日程度の加熱により架橋が行われる。
【0046】
粘着剤層中には、接着力の調整を目的として、シランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を、単独で、あるいはは2種以上を併用して用いることができる。粘着剤にシランカップリング剤が添加される場合、その添加量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対し通常0.01〜5.0重量部程度であり、0.03〜2.0重量部程度であることが好ましい。
【0047】
粘着剤中には、必要に応じて可塑剤を用いることができる。可塑剤としては、一般に粘着付与剤として用いられるものが好適に採用され得る。例えば、テルペン系、スチレン系、フェノール系、ロジン系、エポキシ系、ジシクロペンタジエン系、ポリアミド系、ケトン系、エラストマー系等の材料が用いられる。
【0048】
上記可塑剤は、粘着剤の貯蔵弾性率に温度依存性を付与することにも寄与し得る。すなわち、粘着剤中に可塑剤を含有させることで、被着体との貼り合わせ時の加熱環境(例えば80℃程度)における貯蔵弾性率G’が小さくなるため、tanδを大きくすることができる。粘着剤層の貯蔵弾性率に所期の温度依存性を付与する観点から、上記可塑剤の軟化点は、80℃〜150℃程度であることが好ましく、85℃〜140℃程度であることがより好ましい。軟化点は、JIS K2207「環球式軟化点試験方法」により測定することができる。
【0049】
前記範囲の軟化点を有し、かつアクリル系ベースポリマーとの相溶性を持たせる観点から、上記可塑剤は、重量平均分子量が200〜5000程度、好ましくは500〜3000程度のものが好適に用いられる。また、可塑剤として、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、フェノール系樹脂等の炭化水素樹脂が用いられる場合、アクリル系粘着剤との相溶性を改善すると共に、透明性を確保する観点から、水素添加(水添)されたものを用いることが好ましい。
【0050】
粘着剤が可塑剤を含有する場合、その含有量は、アクリル系ベースポリマー100重量部に対して、5〜300重量部が好ましく、10〜150重量部がより好ましい。可塑剤の含有量が過度に大きいと、粘着剤の割れが発生したり、80℃における貯蔵弾性率G’が過度に低下する場合がある。
【0051】
粘着剤中には、上記のアクリル系ベースポリマー以外に、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系等のポリマーを含有してもよい。透明板とフィルムとの貼り合わせに用いられる場合の粘着シートの透明性や、フィルムの歪抑制の観点から、粘着剤組成物の全量100重量部に対する上記アクリル系ベースポリマーの含有量は、前述のごとく50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、55重量%以上がさらに好ましい。
【0052】
本発明の粘着シートを構成する粘着剤は、光硬化型または熱硬化型の粘着剤であることが好ましい。粘着剤が光硬化型または熱硬化型である場合、被着体との貼り合せ時(硬化前)において、粘着剤は適度の接着性および流動性を有する。貼り合せ時やオートクレーブ等での加熱処理を行った後に、活性光線照射や加熱により粘着剤の硬化を行うことで、粘着剤の貯蔵弾性率が大きくなるために、接着不良等の不具合を抑制できる。被着体との貼り合わせ後の接着信頼性を高める観点から、光硬化後の粘着シートの85℃における貯蔵弾性率G’は、30kPa以上が好ましく、35kPa以上がより好ましく、40kPa以上がさらに好ましい。
【0053】
硬化のタイミングの制御や、確実性等の観点からは、光硬化性の粘着剤が特に好適に用いられる。光硬化の方法としては、光硬化性モノマーまたは光硬化性オリゴマーと光ラジカル発生剤を含有する系に紫外線等の活性光線を照射する方法が好ましい。特に、光感度の高さや、選択できる材料が豊富であることから、エチレン性不飽和化合物と光ラジカル発生剤を用いたシステムが好ましい。
【0054】
光硬化性のエチレン性不飽和化合物は、単官能化合物であってもよく、多官能化合物であってもよい。単官能のエチレン性不飽和化合物としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレートを例示できる。これらの(メタ)アクリレートフェノキシエチル(メタ)アクリレート(PO)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート(CH)、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートおよびテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ-3フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0055】
多官能のエチレン性不飽和化合物としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ブタジエン(メタ)アクリレート、イソプレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記の光硬化性化合物は、モノマーまたはオリゴマーとして粘着剤中に含まれることが好ましい。また、光硬化性のモノマーまたはオリゴマーは、2種以上が併用されてもよい。なお、上記光硬化性のモノマー成分として、(メタ)アクリル系のベースポリマーを構成するモノマー成分や架橋剤と同様の化合物が用いられてもよい。光硬化性粘着剤を構成するための光硬化性化合物は、粘着剤中にモノマーまたはオリゴマーとして存在させる必要がある。そのため、ベースポリマーを重合後、必要に応じて架橋が行われた後に、系中に光硬化性化合物が添加されることが好ましい。
【0057】
光硬化性化合物の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、2〜50重量部が好ましく、5〜30重量部がより好ましい。光硬化性化合物(モノマーおよび/またはオリゴマー)の含有量を前記範囲とすることで、硬化前、硬化後の両方の粘弾特性を好ましい範囲に調整することができる。光硬化性化合物の含有量が過度に大きいと、硬化前の粘着剤層の貯蔵弾性率が低くなり、粘着シートのカット時や、貼り合せ時等に不具合を生じる場合がある。
【0058】
光硬化性の粘着剤は、光ラジカル発生剤を含有することが好ましい。光ラジカル発生剤としては、1個または複数のラジカル発生点を分子中に有する化合物が用いられ、例えば、ヒドロキシケトン類、ベンジルジメチルケタール類、アミノケトン類、アシルフォスフィンオキサイド系、ベンゾフェノン系、トリクロロメチル基含有トリアジン誘導体等が挙げられる。光ラジカル発生剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、単官能型光ラジカル発生剤と多官能型光ラジカル発生剤とを適宜併用してもよい。光ラジカル発生剤の含有量は、粘着剤組成物全体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜8重量部がより好ましい。
【0059】
なお、光ラジカル発生剤として、上記のアクリル系ポリマーの重合に用いられる光重合開始剤と同様のものを用いることもできる。ただし、ポリマーの重合に用いられる光重合開始剤は、重合反応により大半が失活しているため、光硬化性の粘着剤組成物の調製に際しては、ポリマーの重合後に改めて上記光ラジカル発生剤が添加されることが好ましい。
【0060】
上記例示の各成分の他、粘着剤中には、軟化剤、劣化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤等の添加剤を、本発明の特性を損なわない範囲で用いることができる。
【0061】
[粘着シートの形成]
上記の粘着剤組成物溶液を適宜の支持体上に塗布・乾燥することにより、粘着シートが得られる。粘着シートの形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。これらの中でも、ダイコーターを使用することが好ましく、特にファウンテンダイ、スロットダイを用いるダイコーターを使用することがより好ましい。
【0062】
塗布後の粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜15分、特に好ましくは10秒〜10分である。
【0063】
粘着剤層の厚みは、透明板70の印刷段差72の厚みtよりも大きいことが好ましい。また、粘着剤層の厚みは、25μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。粘着剤層の厚みが前記範囲より小さいと、印刷段差72付近での気泡混入や、フィルム30の形状の歪み等の不具合を生じる場合がある。粘着剤層の厚みの上限は特に制限されないが、生産性等の観点からは、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。
【0064】
粘着シート上には、必要に応じて保護シートが剥離可能に貼着される。保護シートは、粘着シートがフィルムや透明板等の被着体との貼り合わせに用いられるまでの間、粘着剤の露出面を保護する目的で用いられる。保護シーの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体等の適宜な薄葉体等が挙げられるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0065】
プラスチックフィルムとしては、粘着剤層の表面を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。
【0066】
保護シートの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜150μm程度である。保護シートは、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型等の帯電防止処理もすることもできる。特に、保護シートの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理を適宜おこなうことにより、実用に供する際に、粘着シートからの剥離性をより高めることができる。なお、粘着剤層の形成時に用いられた支持体を、そのまま粘着シートの保護シートとして用いてもよい。
【0067】
[粘着シートの用途]
前述のように、本発明の粘着シート20は、印刷段差部72を有する透明板70と可撓性フィルム30との貼り合せに用いられる。
【0068】
図3は、透明板70の構成例を模式的に表す平面図である。図1〜3に示すように、透明板70の周縁部には、粘着シート20との被着面側に、印刷部72が設けられている。印刷部の厚みtは、一般に10μm〜数十μm程度である。印刷部72の幅wは、数mm〜数十mm程度の範囲である。
【0069】
ウィンドウタイプのタッチパネルでは、図1に示すように、前面透明板上に透明電極層75が設けられる場合がある。透明電極層75の材料としては、酸化インジウム錫(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)等の導電性酸化物や金属薄膜等が用いられる。透明電極層75は、図1に示すようにパターニングされたものでもよい。透明電極層75の厚みは、一般に10nm〜数十nmの範囲であり、印刷段差部72の厚みtの1/1000程度であるため、透明電極層75による段差は特に問題とはならない。
【0070】
フィルム30は、可撓性フィルムであり、透明フィルムや偏光板等が用いられる。また、フィルム30は、基材フィルム31の少なくとも一方の表面に透明電極層35,37,39を備える透明導電性フィルムであってもよい。透明導電性フィルムの透明電極層35,37,39としては、前面透明板70上の透明電極層と同様のものが採用され得る。透明導電性フィルム上の透明電極層も、パターニングされたものであってもよい。例えば、図1に示す形態では、透明電極層75のパターニング方向と透明電極層35のパターニング方向とが直交している。図2に示す形態では、透明導電性フィルム上の透明電極層37のパターニング方向と透明電極層39のパターニング方向とが直交している。これら1対の透明電極層は、それぞれがX電極およびY電極を構成する。
【0071】
透明板70と可撓性フィルム30とを粘着シート20を介して貼り合わせる際の、貼り合せ手順や、貼り合わせ方法等は特に限定されない。印刷段差部72のような非平坦部を有する部材との貼り合わせに際しては、非平坦部付近の気泡を除去するために、脱泡が行われることが好ましい。脱泡方法としては、加熱、加圧、減圧等の適宜の方法が採用され得る。例えば、減圧・加熱下で気泡の混入を抑制しながら貼り合わせが行われ、その後、ディレイバブルの抑制等を目的として、オートクレーブ処理等により、加熱と同時に加圧が行われることが好ましい。加熱により脱泡が行われる場合、加熱温度は、一般的に25℃〜90℃程度、好ましくは30℃〜80℃、さらに好ましくは40℃〜80℃の範囲である。また、加圧が行われる場合、圧力は一般に0.05MPa〜2MPa程度、好ましくは0.1MPa〜1.5MPa,より好ましくは0.2MPa〜1MPaの範囲内である。
【0072】
本発明の粘着シート20は所定の粘弾性特性を有しているため、可撓性フィルム30が、印刷段差部72を有する前面透明板70と貼り合わせられた後も、図4に示すようなフィルムの形状歪が生じ難い。そのため、画像表示装置の画面の額縁近辺領域の画像の歪による外観異常が抑制される。
【実施例】
【0073】
以下に実施例および比較例を挙げてさらに説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
[測定方法]
<ベースポリマーの重量平均分子量>
ベースポリマーの重量平均分子量は、東ソー製のGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)装置(製品名「HLC−8120GPC」により測定した。測定サンプルは、ベースポリマーをテトラヒドロフランに溶解して0.1重量%の溶液としたものを、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。GPCの測定条件は下記の通りである。
(測定条件)
カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm(合計カラム長さ:90cm)
カラム温度:40℃・流量:0.8mL/min
注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
【0075】
<ゲル分率>
各実施例および比較例の粘着シートを20mm×20mmのサイズに切り出して、セパレータを剥離し、100mm×100mmのサイズに切り出した多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(日東電工社製、商品名「NTF−1122」、厚さ:85μm)で包み、包んだ口をタコ糸(太さ:1.5mm×長さ100mm)で縛った。この試料の重量から、予め測定された多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜及びタコ糸の重量の合計(A)を差し引いて、粘着シート試料の重量(B)を算出した。多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で包まれた粘着シート試料を、約50mLの酢酸エチル中に、23℃で7日間浸漬させ、粘着剤のゾル成分を、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜外へ溶出させた。浸漬後、多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜で包まれた粘着シート試料を取出し、130℃で2時間乾燥させ、約20分間放冷した後、乾燥重量(C)を測定した。
粘着剤のゲル分率は、次式により算出した。
ゲル分率(%)=100×(C−A)/B
【0076】
<粘着剤層の貯蔵弾性率>
各実施例および比較例の粘着シートからセパレータを剥離し、複数の粘着シートを積層して厚さ約1.5mmとしたものを測定用サンプルとした。Rheometric
Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System(ARES)」を用いて、以下の条件により、動的粘弾性測定を行い、測定結果から、各温度における貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”および損失正接tanδの値を読み取った。光硬化後の粘着剤層についても同様の測定方法により、貯蔵弾性率G’を測定した。
(測定条件)
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:−50〜150℃の範囲
形状:パラレルプレート 8.0mmφ
【0077】
<ヘイズ、全光線透過率の測定>
両面粘着シートから一方のセパレータを剥離して、該両面粘着シートを無アルカリガラス(厚さ0.8〜1.0mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.2%)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータを剥離して、両面粘着シート(アクリル系粘着剤層)/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。この試験片の可視光領域における全光線透過率およびヘイズを、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所製、装置名「HM−150」)を用いて測定した。測定値から無アルカリガラスのヘイズ値(0.2%)を差引いた値を粘着シートのヘイズ値とした。全光線透過率は、測定値をそのまま採用した。
【0078】
[実施例1]
(ベースポリマーの重合)
温度計、攪拌機、還流冷却管および窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を63重量部、メタクリル酸メチル(MMA)を9重量部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を13重量部、N−ビニルピロリドン(NVP)を15重量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.2重量部、および酢酸エチル233重量部を投入した後、窒素ガスを流し、攪拌しながら約1時間窒素置換を行った。その後、65℃にフラスコを加熱して、重合を行い、重量平均分子量(Mw)52万のアクリル系ポリマーを得た。
【0079】
(粘着剤組成物溶液の調製)
上記で得られたアクリル系ポリマー溶液に、ポリマーの固形分100重量部に対して、下記の化合物を配合して、粘接着剤組成物溶液を調製した。
架橋剤:キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学製、商品名「タケネートD110N」)0.05重量部
光重合性の多官能モノマー:ポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村工業化学製、商品名「NKエステルAPG400」)10重量部;およびトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセル・サイテック製、商品名「IRR214−K」)5重量部
シランカップリング剤:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製、商品名「KBM−403」)0.3重量部
光重合開始剤:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティケミカル製、商品名「イルガキュア184」)0.2重量部
【0080】
(粘着シートの作製)
離型処理されたPETフィルム(軽剥離セパレータ)上に、乾燥後厚みが150μmとなるように上記粘着剤組成物溶液を塗布・加熱乾燥して、粘着剤層を得た。その後、50℃で48時間加熱して、架橋処理を行った。この粘着剤層上に別のPETフィルム(重剥離セパレータ)を積層貼着して、両面保護フィルム付きの粘着シートを得た。加熱乾燥後の粘着剤の架橋度は15%であった。
【0081】
(評価用パネルの作製)
上記の粘着シートを50mm×100mmのサイズに切り出し、軽剥離セパレータを剥離した。軽剥離セパレータ剥離後の粘着剤の露出面を、厚み100μmのPETフィルム上にハンドローラを用いて貼り合わせた。その後、粘着シートの重剥離セパレータを剥離し、粘着剤の露出面上に、黒色インクが周縁部に枠状に印刷されたガラス板(0.7mm×50mm×100mm、インク印刷厚みt=45μm、インク印刷幅w=5mm)を載置して、真空熱圧着装置で熱圧着して、貼り合せ(温度:80℃、真空度:30Pa、貼り合わせ面圧:0.3MPa、貼り合わせ時間:10秒)を行った。その後、オートクレーブ処理(50℃、0.5MPa、30分)を行った。
【0082】
オートクレーブ処理後に、ガラス板側からメタルハライドランプ(300mW/cm)で紫外線を照射し、粘着剤の硬化を行った(積算光量:3000mJ/cm)。このようにして、印刷段差部を有する透明板と可撓性フィルムとが粘着シートを介して貼り合わせられた評価用パネルを得た。
【0083】
[実施例2]
(ベースポリマーの重合)
ベースポリマーの分子量が表1に示すように変更されたこと以外は、実施例1と同様にしてベースポリマーの重合を行った。
【0084】
(粘着剤組成物溶液の調製)
上記で得られたアクリル系ポリマー溶液に、ポリマーの固形分100重量部に対して、表1に示す化合物を配合して、粘接着剤組成物溶液を調製した。なお、可塑剤として用いた「YSレジンSX−85」は、ヤスハラケミカル製のスチレンオリゴマーであり、軟化点は85℃である。
【0085】
(粘着シートの作製および評価用パネルの作製)
粘着剤層形成後の架橋処理が行われなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、粘着シートが作製された。得られた粘着シートを用いて、上記実施例1と同様にして、評価用パネルが作製された。
【0086】
[実施例3]
(ベースポリマーの重合)
ベースポリマーのモノマー比および分子量が表1に示すように変更されたこと以外は、実施例1と同様にしてベースポリマーの重合を行った。
【0087】
(粘着剤組成物溶液の調製)
上記で得られたアクリル系ポリマー溶液に、ポリマーの固形分100重量部に対して、表1に示す化合物を配合して、粘接着剤組成物溶液を調製した。なお、可塑剤として用いた「YSポリスターNH」は、ヤスハラケミカル製の水素添加テルペンフェノール樹脂であり、軟化点は130℃、テルペン比率は0.5モルである。「YSポリスターNH」は、フェノールのベンゼン環も水素添加された核水添型のテルペンフェノール樹脂である。
【0088】
(粘着シートの作製および評価用パネルの作製)
粘着剤層形成後の架橋処理が行われなかったこと以外は、上記実施例1と同様にして、粘着シートが作製された。得られた粘着シートを用いて、上記実施例1と同様にして、評価用パネルが作製された。
【0089】
[実施例4]
粘着剤組成物溶液の調製において可塑剤が添加されなかったこと以外は実施例3と同様にして、粘着シートの作製および評価用パネルの作製が行われた。
【0090】
[比較例1〜5]
ベースポリマーのモノマー比および分子量、ならびに粘着剤組成物に添加される化合物が表1に示すように変更されたこと以外は、上記各実施例と同様にして、粘着シートの作製および評価用パネルの作製が行われた。比較例1および5では、粘着剤層形成後に、上記実施例1と同様に架橋処理が行われた。比較例2〜4では、架橋処理は行われなかった。なお、表1において、ISAはイソステアリルアクリレートであり、APG400はポリプロピレングリコールジアクリレート(新中村工業化学製、商品名「NKエステルAPG700」、前述のAPG400よりもプロピレングリコールの重合度が大きいもの)である。
【0091】
[投影評価]
暗室内にて、白色光源を備えるプロジェクタとスクリーンとの間に、各実施例および比較例で得られた評価用パネルを配置し、プロジェクタを全白表示として、スクリーンに映し出された評価用パネルの影像を観察した。透明板周縁の印刷段差部の影の内側にフィルムの形状歪による影がみられないもの(図5参照)を歪無し(良好)、形状歪による影が確認されるもの(図6参照)を歪有り(不良)と判断した。
【0092】
上記各実施例および比較例の粘着シートを構成する粘着剤の組成を表1に、その評価結果を表2に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
表2に示すように、80℃における損失正接tanδが1.0以上である、実施例1〜4の粘着シートを用いた場合は、歪がなく良好な結果が得られた。
【0096】
実施例3と実施例4との対比によれば、粘着剤組成物中に可塑剤を含有することで、85℃における貯蔵弾性率G’が低下している。貯蔵弾性率が低下した結果、実施例3の方が、実施例4よりも損失正接tanが大きくなっている。なお、一般には、可塑剤の添加によりヘイズが上昇する傾向があるが、ポリマーとの相溶性に優れる可塑剤を選択することにより、実施例2,3のように、ヘイズの上昇を抑制できることが分かる。
【0097】
比較例3と比較例4との対比によれば、ベースポリマーの分子量の増大に伴って、85℃における貯蔵弾性率G’損失弾性率G”の両方が上昇する傾向がみられる。貯蔵弾性率の増加量の方が相対的に大きいため、結果として、ベースポリマーの分子量が大きい比較例4の方が、損失正接tanδが小さくなっている。
【0098】
以上の結果から、粘着剤のベースポリマーや添加物の組成を調整することにより、所期の損失正接tanδを有する粘着シートが得られることが分かる。
【符号の説明】
【0099】
20 :粘着シート
30 :可撓性フィルム
31 :可撓性フィルム基材
35,37,39:透明電極層
70 :前面透明板
71 :透明板
72 :印刷段差部
75 :透明電極層
101,102:積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6