(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マスク形成工程において、前記マスク形成用液体として、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクを用い、前記予め設定された領域へ前記液体吐出ヘッドにより前記マスク形成用液体を吐出することにより、前記設定領域被覆マスクを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のアルミニウム材着色物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている方法においては、上記のように、電解着色、又は、電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させることにより、着色を行う。しかし、近年、例えば工業製品の製造工程において、より適切に着色を行う方法(例えば、より短時間で着色が可能な方法や、より低コストでの着色が可能な方法等)が望まれている。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるアルミニウム材着色物の製造方法、着色方法、及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の発明者は、鋭意研究により、インクジェット方式で液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いてマスクを形成し、染料によりアルミニウム材への着色を行うことにより、アルミニウム材への着色を効率的に適切に行い得ることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0006】
(構成1)アルミニウム材に着色をしたアルミニウム材着色物の製造方法であって、アルミニウム材において予め設定された領域を覆う設定領域被覆マスクを形成するマスク形成工程と、アルミニウム材において設定領域被覆マスクにより覆われていない領域を染料により着色する着色工程と、着色工程の後にアルミニウム材から設定領域被覆マスクを剥離するマスク剥離工程とを備え、マスク形成工程において、インクジェット方式で液体を吐出する液体吐出ヘッドを用い、設定領域被覆マスクの形成に使用する液体であるマスク形成用液体を液体吐出ヘッドでアルミニウム材上へ吐出
し、マスク形成工程において、酸性溶液によるエッチングを行ったアルミニウム材に対し、マスク形成用液体としてアクリル系の紫外線硬化型インクを用い、予め設定された領域へ液体吐出ヘッドによりマスク形成用液体を吐出することにより、設定領域被覆マスクを形成し、着色工程において、染料を溶解可能な溶剤又は水を溶媒とする染料溶液を使用して、設定領域被覆マスクにより覆われていない領域を着色し、かつ、着色工程において、中性付近のpHで、染料による着色を行う。
【0007】
このように構成した場合、液体吐出ヘッドを用いて設定領域被覆マスクを形成することにより、例えばフォトマスク方式で設定領域被覆マスクを形成する場合等と比べ、短時間かつ低コストで適切に設定領域被覆マスクを形成できる。また、アルミニウム材への着色を、染料を用いて行うことにより、例えば電解着色や、電気泳動法によって顔料粒子を泳動・析出させることで着色を行う場合等と比べ、容易かつ適切に着色を行うことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、アルミニウム材への着色を、例えば短時間かつ低コストで、適切に行うことができる。
【0008】
尚、アルミニウム材とは、例えば、少なくとも着色を行う領域に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウムの部材である。このアルミニウム材は、アノダイジング処理(アルマイト処理)がされたアルミニウムであってよい。この処理において、アルミニウムは、例えば硫酸等の酸性液を用いて酸化処理がされることが好ましい。
【0009】
(構成2)マスク形成工程において、マスク形成用液体としてアクリル系の紫外線硬化型インクを用い、予め設定された領域へ液体吐出ヘッドによりマスク形成用液体を吐出することにより、設定領域被覆マスクを形成し、着色工程において、染料を溶解可能な溶剤又は水を溶媒とする染料溶液を使用して、設定領域被覆マスクにより覆われていない領域を着色する。マスク形成工程においては、例えば、アルミニウム材へマスク形成用液体が着弾した後に紫外線を照射することにより、マスク形成用液体を硬化させて、設定領域被覆マスクを形成する。
【0010】
染料溶液(染料インク)を使用して、設定領域被覆マスクにより覆われていない領域を着色する場合、設定領域被覆マスクには、設定領域被覆マスクの下に染料が浸透しないこと、染料の溶媒(溶剤)に溶解しないこと、及び着色後に剥離しやすいことといった条件が求められる。これに対し、本願の発明者は、染料を溶解可能な溶剤(有機溶剤)又は水(以下、染料可溶溶媒という)を溶媒とする染料を用いる場合について、アクリル系の紫外線硬化型インクをマスク形成用液体として用いることにより、これらの条件を適切に満たす設定領域被覆マスクを形成し得ることを見出した。
【0011】
より具体的には、例えば染料ではなく、顔料を用いて着色を行う場合において、顔料の粒子は、通常、染料を構成する分子と比べてサイズが大きい。そのため、顔料を用いて着色を行う場合、着色しない領域をマスクで覆えば、マスクで覆われていない領域のみに対し、適切に着色を行うことができる。
【0012】
これに対し、本願の発明者は、染料を用いて着色を行う場合について、顔料の粒子と比べてサイズの小さい染料の分子が溶媒中に溶けているため、染料がマスクとアルミニウム材との間に染み込み、マスクで覆われている領域の一部にまで着色がされてしまう場合が生じやすいことを見出した。また、このように染料が染み込む現象は、例えばマスクの素材によってアルミニウム材上でのマスクの耐久性が小さくなる場合や、マスクとアルミニウム材との密着性が不十分な場合に生じることを見出した。
【0013】
そして、更なる鋭意研究により、本願の発明者は、上記のように、染料可溶溶媒を溶媒とする染料を用いる場合について、アクリル系の紫外線硬化型インクをマスク形成用液体として用いることにより、アルミニウム材上での設定領域被覆マスクの耐久性を十分に高め、かつ、アルミニウム材と設定領域被覆マスクとを十分に密着させ、染料が浸透しないという条件を適切に満たし得ることを見出した。また、この構成により、更に、染料の溶媒(溶剤)に溶解しないことや、着色後に剥離しやすいことといった条件も満たし得ることを見出した。そのため、このように構成すれば、例えば、染料可溶溶媒を溶媒とする染料を用いる場合において、設定領域被覆マスクをより適切に形成できる。また、これにより、アルミニウム材への着色をより適切に行うことができる。
【0014】
尚、設定領域被覆マスクに求められる条件について、染料が浸透しないこととは、例えば、必要な着色の精度に応じた許容度の範囲で、設定領域被覆マスクにより覆われている領域にまで染料が浸透しないことである。染料の溶媒(溶剤)に溶解しないこととは、必ずしも設定領域被覆マスクが全く溶解しないことではなく、例えば、着色の工程において、設定領域被覆マスクの機能を発揮できる範囲で、設定領域被覆マスクの一部が溶解する場合も含む。また、着色後に剥離しやすいこととは、例えば、マスク剥離工程において、例えばIPA(イソプロピルアルコール)等の剥離液を用いて設定領域被覆マスクを適切に剥離できることである。また、アクリル系の紫外線硬化型インクとしては、例えば、アクリル酸エステルを50重量%以上含むインクを好適に用いることができる。
【0015】
(構成3)マスク形成工程において、マスク形成用液体として、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクを用い、予め設定された領域へ液体吐出ヘッドによりマスク形成用液体を吐出することにより、設定領域被覆マスクを形成する。硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクとは、例えば、硬化後に弾力性を有する樹脂となる紫外線硬化型インクのことである。
【0016】
このように構成すれば、例えば、設定領域被覆マスクとアルミニウム材との密着性をより適切に高めることができる。また、これにより、設定領域被覆マスクの下に染料が浸透しないという条件をより適切に満たすことができる。更には、このように構成した場合、着色後により剥離しやすい設定領域被覆マスクを形成することもできる。そのため、このように構成すれば、設定領域被覆マスクをより適切に形成できる。
【0017】
(構成4)マスク形成工程において、酸性溶液によるエッチングを行ったアルミニウム材に対し、アクリル系の紫外線硬化型インクにより、設定領域被覆マスクを形成する。このエッチングは、例えば、アルミニウム材の陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を溶解させるエッチングの処理である。また、この酸性溶液としては、例えば、硫酸溶液を好適に用いることができる。
【0018】
本願の発明者は、鋭意研究により、設定領域被覆マスクの材料としてアクリル系の紫外線硬化型インクを用いた場合、インクの組成によっては、耐アルカリ性が小さくなる場合があることを見出した。また、その結果、着色工程の行い方によっては、染料が設定領域被覆マスクを通り抜けるおそれがあることを見出した。例えば、硬化後に大きく伸びる特性(例えば、200%以上伸びる特性)のアクリル系の紫外線硬化型インクを用いる場合、インクが極めて柔らかくなるため、着色工程における着色時のpHがアルカリ性であると、設定領域被覆マスクの硬化被膜のアルカリ耐性が不足し、染料が設定領域被覆マスクを通り抜ける場合がある。
【0019】
これに対し、このように構成すれば、例えば、アルカリ水溶液によるエッチングを行ったアルミニウム材を用いる場合等と比べ、着色工程における着色時のpHを中性付近(例えば、pHが6〜8程度)に適切に設定できる。そのため、このように構成すれば、例えば、設定領域被覆マスクのアルカリ耐性が小さい場合にも、染料が設定領域被覆マスクを通り抜けることを適切に防ぐことができる。また、これにより、アルミニウム材への着色をより適切に行うことができる。
【0020】
(構成5)マスク形成工程において、アルミニウム材において着色がされるべき被着色領域の中で予め設定された領域以外の領域に対し、マスク形成用液体を吐出することにより、予め設定された領域以外の領域を覆う第1マスクを形成し、第1マスクが形成されたアルミニウム材に対し、設定領域被覆マスクの材料となる液体を塗布して、その後に第1マスクを除去することにより、予め設定された領域に設定領域被覆マスクを形成する。
【0021】
このように構成した場合、インクジェット方式で設定領域被覆マスクを直接形成するのではなく、インクジェット方式で形成した第1マスクを利用して、設定領域被覆マスクを形成する。そのため、この構成において、設定領域被覆マスクの形成は、インクジェット方式以外の方法で行うこともできる。例えば、設定領域被覆マスクの形成は、第1マスクの形成後に、設定領域被覆マスクの材料となる液体をスプレー等でコートすることで行うこともできる。そのため、このように構成した場合、設定領域被覆マスクの材料として、インクジェット方式で吐出可能な液体以外の様々な液体を用いることができる。また、これにより、設定領域被覆マスクの材料として、染料の溶液に対して強い耐性を有する材料等をより自由に選択できる。そのため、このように構成すれば、例えば、設定領域被覆マスクをより適切に形成できる。また、これにより、アルミニウム材への着色をより適切に行うことができる。
【0022】
尚、この構成において、マスク形成用液体は、設定領域被覆マスクの形成に直接使用されるのではなく、第1マスクの形成に使用されることにより、間接的に、設定領域被覆マスクの形成に使用される。第1マスクは、例えば、設定領域被覆マスクの材料となる液体に溶けない材料で形成することが好ましい。また、マスク形成用液体としては、例えば、設定領域被覆マスクの材料となる液体に溶けない状態でアルミニウム材に定着する液体を用いることが好ましい。
【0023】
(構成6)マスク形成工程は、紫外線硬化型インクである第1のマスク形成用液体を用いて設定領域被覆マスクの縁部を形成する縁部形成工程と、アルミニウム材へ定着させるために溶媒を蒸発させることが必要なインクである第2のマスク形成用液体とを用いて、設定領域被覆マスクの縁部に囲まれる領域であるマスク内部領域を形成する内部領域形成工程とを有し、縁部形成工程において、第1のマスク形成用液体を吐出する第1の液体吐出ヘッドにより、設定領域被覆マスクの縁部となる領域へ第1のマスク形成用液体を吐出し、かつ、アルミニウム材へ着弾した第1のマスク形成用液体へ紫外線を照射することにより、設定領域被覆マスクの縁部を形成し、内部領域形成工程において、第2のマスク形成用液体を吐出する第2の液体吐出ヘッドにより、縁部形成工程により形成された縁部に囲まれる領域へ第2のマスク形成用液体を吐出することにより、設定領域被覆マスクのマスク内部領域を形成する。
【0024】
このように構成した場合、縁部形成工程において、先ず、設定領域被覆マスクのパターンの縁部(エッジ)のみをUV硬化させて形成する。この場合、第1のマスク形成用液体については、アルミニウム材への着弾後、速やかに紫外線を照射して、硬化させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、設定領域被覆マスクの縁部を高解像度で形成することができる。また、これにより、所望のパターンの形状で高い精度で適切に形成することができる。
【0025】
また、このように構成した場合、縁部形成工程の後に、内部領域形成工程において、パターンの内部を形成する。そのため、この場合、例えば、パターンの内部について、例えば紫外線硬化型インクを直ちに硬化させる場合等と異なり、アルミニウム材に着弾した第2のマスク形成用液体のドットを十分に広げることができる。また、これにより、パターンの内部について、穴のない均質な状態にできる。そのため、このように構成すれば、例えば、高解像度かつ均質な設定領域被覆マスクをより適切に形成できる。
【0026】
尚、第2のマスク形成用液体について、アルミニウム材へ定着させるために溶媒を蒸発させることが必要なインクとは、例えば、インクをアルミニウム材へ定着させるために、加熱乾燥又は自然乾燥により溶媒を除去することが必要なインクである。第2のマスク形成用液体としては、例えば、ソルベントUVインクや、ラテックスインクを好適に用いることができる。また、例えば、樹脂のカプセルを含むインクや、常温では固体状態のインクであるソリッドインク等を用いることも考えられる。
【0027】
(構成7)アルミニウム材に着色をする着色方法であって、アルミニウム材において予め設定された領域を覆う設定領域被覆マスクを形成するマスク形成工程と、アルミニウム材において設定領域被覆マスクにより覆われていない領域を染料により着色する着色工程と、着色工程の後にアルミニウム材から設定領域被覆マスクを剥離するマスク剥離工程とを備え、マスク形成工程において、インクジェット方式で液体を吐出する液体吐出ヘッドを用い、設定領域被覆マスクの形成に使用する液体であるマスク形成用液体を液体吐出ヘッドでアルミニウム材上へ吐出する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0028】
(構成8)アルミニウム材において予め設定された領域を覆う設定領域被覆マスクの形成に用いる液体吐出装置であって、設定領域被覆マスクの形成に使用する液体であるマスク形成用液体をインクジェット方式で吐出する液体吐出ヘッドを備え、設定領域被覆マスクは、アルミニウム材を染料により着色する着色工程において、アルミニウム材の予め設定された領域を覆い、かつ、着色工程の後に、アルミニウム材から剥離される。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、例えば、アルミニウム材への着色を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアルミニウム材着色物の製造方法の一例を示すフローチャートであり、アルミニウム材に対して染料で着色をすることでアルミニウム材着色物を製造する工程の一例を示す。アルミニウム材とは、例えば、少なくとも着色を行う領域に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウムの部材である。このアルミニウム材は、アノダイジング処理(アルマイト処理)がされたアルミニウム(金属のアルミニウム、又は、アルミニウム合金)であってよい。また、本例において、アルミニウム材着色物の製造方法は、準備工程S102、マスク形成工程S104、着色工程S106、マスク剥離工程S108、及び後処理工程S110を少なくとも備える。尚、以下に説明する点を除いて、各工程は、アルミニウム材への着色を行う場合に従来行われている工程と同一又は同様であってよい。
【0032】
準備工程S102は、着色の対象となるアルミニウム材を準備する工程であり、例えば、金属のアルミニウム又はアルミニウム合金の部材に対してアノダイジング処理(アルマイト処理)を行うことにより、表面に陽極酸化被膜が形成されたアルミニウム材を準備する。より具体的に、準備工程S102は、金属のアルミニウム又はアルミニウム合金の部材に対し、例えば脱脂、水洗、エッチング、水洗、中和、電解、及び水洗の各処理を順次行うことにより、着色の対象となるアルミニウム材を準備する。また、このエッチング処理は、アルミニウム材の陽極酸化皮膜の細孔底部のバリヤー層の露出部表面を溶解させるエッチング処理であり、例えば、硫酸等の酸性液を用いて酸化処理を行う。
【0033】
マスク形成工程S104は、アルミニウム材において着色を行わない領域を覆う着色用マスクを形成する工程である。本例において、マスク形成工程S104では、着色マスクの形成に使用する液体であるマスク形成用液体を吐出する液体吐出装置を用いて、着色用マスクを形成する。液体吐出装置とは、例えば、インクジェットヘッド方式で液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いて液体を吐出する装置である。また、この着色用マスクは、アルミニウム材において予め設定された領域を覆う設定領域被覆マスクの一例である。着色用マスクの形成については、後に更に詳しく説明をする。
【0034】
着色工程S106は、アルミニウム材において着色用マスクにより覆われていない領域を染料により着色する工程である。着色工程S106では、例えば、着色用マスクが形成されたアルミニウム材を染料インクに浸漬することにより、アルミニウム材への着色を行う。また、染料インクとして、染料を溶解可能な溶剤又は水である染料可溶溶媒を溶媒とする染料溶液を使用する。このようにすれば、例えば、アルミニウム材において着色用マスクにより覆われていない領域に対し、適切に着色を行うことができる。
【0035】
尚、着色工程S106においては、例えば、染料インクを満たした容器へアルミニウム材を投入することにより、アルミニウム材を染料インクに浸漬する。染料可溶溶媒としては、適切に着色が行える溶媒であれば、各種の有機溶剤又は水等を使用できる。また、着色工程S106において、例えば、液体吐出ヘッドにより染料インクをアルミニウム材へ吐出することにより、アルミニウム材を染料インクに浸漬することも考えられる。この場合、例えば、着色をすべき位置を選んで染料インクを吐出することができるため、より少ない染料インクにより効率的に着色を行うことができる。
【0036】
マスク剥離工程S108は、着色工程S106の後にアルミニウム材から着色用マスクを剥離する工程である。マスク剥離工程S108では、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)等の剥離液を用いて、アルミニウム材から着色用マスクを剥離する。マスク剥離工程S108は、例えば、剥離液にアルミニウム材を20分程度浸漬する工程であってよい。
【0037】
後処理工程S110は、着色後のアルミニウム材の表面状態を整えるための工程である。後処理工程S110では、例えば、封孔、水洗、及び乾燥等の処理を順次行うことにより、アルミニウム材の表面状態を整える。封孔処理とは、例えば温水や蒸気等で加熱を行うことによりアルマイト被膜の微細な孔を封じる処理である。封孔処理を行うことにより、アルミニウム材に染料を適切に定着させることができる。また、その後に洗浄及び乾燥の処理を行うことにより、アルミニウム材の表面を適切に清浄化できる。
【0038】
本例によれば、例えば、液体吐出装置の液体吐出ヘッドを用いて着色用マスクを形成することにより、短時間かつ低コストで適切に着色用マスクを形成できる。また、アルミニウム材への着色を、染料を用いて行うことにより、容易かつ適切に着色を行うことができる。そのため、本例によれば、例えば、アルミニウム材への着色を、例えば短時間かつ低コストで、適切に行うことができる。
【0039】
尚、上記においては、説明を簡単にするために、1色の染料インクのみを用いる場合について、説明を行った。しかし、例えば多色の着色を行う場合には、複数色の染料インクを用いることも考えられる。この場合、例えば、マスク形成工程S104〜マスク剥離工程S108の工程を複数回繰り返すことにより、それぞれの色の染料インク毎に、アルミニウム剤への着色を行うことが考えられる。このようにすれば、複数色の着色を適切に行うことができる。また、例えば、地色を着色済のアルミニウム材に対して上記のように更に着色を行うことで部分加飾を行うことも考えられる。更には、YMCKの各色の染料インクを用い、マスク形成工程S104〜マスク剥離工程S108の工程を4回繰り返すことにより、フルカラー画像の着色を行うこと等も考えられる。
【0040】
続いて、マスク形成工程S104〜マスク剥離工程S108について、更に詳しく説明をする。
図2は、着色用マスクの一例について説明をする図である。
図2(a)は、着色用マスクの形成に用いる液体吐出装置10の構成の一例を示す。本例において、液体吐出装置10は、複数の液体吐出ヘッド12、紫外線光源14、及びテーブル16を備える。
【0041】
尚、液体吐出装置10は、例えば、インクジェットプリンタと同一又は同様の構成を有する装置であってよい。例えば、液体吐出装置10として、公知のインクジェットプリンタを用いることも考えられる。また、詳しい説明は省略したが、液体吐出装置10は、例えば、公知のインクジェットプリンタにおける各構成と同一の各構成を更に備えてよい。
【0042】
複数の液体吐出ヘッド12は、インクジェット方式で液体を吐出するヘッド部である。液体吐出ヘッド12としては、例えば公知のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。また、マスク形成工程S104(
図1参照)では、少なくとも一の液体吐出ヘッド12により、着色用マスクの形成に使用する液体であるマスク形成用液体を、アルミニウム材20上へ吐出する。これにより、アルミニウム材20上に着色用マスクを形成する。
【0043】
尚、液体吐出ヘッド12は、例えば公知のインクジェットプリンタにおけるインクジェットヘッドと同様にして、所定のY方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作や、Y方向と直交するX方向へアルミニウム材20に対して相対的に移動する副走査動作等を行う。これにより、液体吐出ヘッド12は、アルミニウム材20の各位置に対し、マスク形成用液体を吐出する。また、マスク形成工程S104においては、例えば2以上の液体吐出ヘッド12を用いて、マスク形成用液体の吐出を行ってもよい。
【0044】
紫外線光源14は、紫外線硬化型インクを硬化させるための紫外線を発生する光源である。本例において、紫外線光源14は、複数の液体吐出ヘッド12の並びのY方向における一端側及び他端側にそれぞれ設けられており、アルミニウム材20上に着弾したマスク形成用液体に紫外線を照射することにより、マスク形成用液体を硬化させる。テーブル16は、アルミニウム材20を載置する台状部材であり、上面にアルミニウム材20を載置することにより、アルミニウム材20と液体吐出ヘッド12とを対向させる。
【0045】
本例によれば、アルミニウム材20上の所望の位置へ適切にマスク形成用液体を吐出し、かつ、アルミニウム材20上に着弾したマスク形成用液体を適切に硬化できる。また、これにより、アルミニウム材20上において、所望の形状の着色用マスクを適切に形成できる。
【0046】
図2(b)は、アルミニウム材20上に形成された着色用マスク102の構成の一例を示す。本例において、アルミニウム材20は、金属のアルミニウムの状態のアルミ金属部22の表面にアルマイト被膜24が形成された構成を有する。また、マスク形成工程S104において、着色用マスク102は、アルマイト被膜24上の一部の領域を覆うように形成される。そのため、着色工程S106においてアルミニウム材20を染料インクに浸漬した場合、アルミニウム材20の表面において着色用マスク102に覆われていない領域のみが、染料インクと接する。また、その結果、着色用マスク102に覆われていない領域のみが、染料インクにより着色される。
【0047】
図2(c)は、着色がされたアルミニウム材20の構成の一例を示す図であり、後処理工程S110(
図1参照)が完了した後のアルミニウム材20の状態の一例を示す。図に示すように、この状態のアルミニウム材20においては、着色用マスク102に覆われていた領域以外の部分に、染料による着色がされている。そのため、本例によれば、アルミニウム材20に対し、形成する着色用マスク102の形状に応じて、所望の領域への着色を適切に行うことができる。
【0048】
ここで、本例において用いるマスク形成用液体及び染色用の染料溶液(染料インク)について、更に詳しく説明をする。本例のように、染料溶液を使用して着色用マスク102により覆われていない領域を着色する場合、着色用マスク102には、着色用マスク102の下に染料が浸透しないこと(着色剤の非浸透性)、染料の溶媒(溶剤)に溶解しないこと、及び着色後に剥離しやすいことといった条件が求められる。これに対し、染料を用いて着色を行う場合、顔料の粒子と比べてサイズの小さい染料の分子が溶媒中に溶けている溶液を用いるため、例えばアルミニウム材20上での着色用マスク102の耐久性が不十分な場合や、着色用マスク102とアルミニウム材20との密着性が不十分であると、染料が着色用マスク102とアルミニウム材20との間に染み込み、着色用マスク102で覆われている領域の一部にまで着色がされてしまうおそれがある。また、着色用マスク102の耐久性や密着性は、例えば着色用マスク102の素材によって変化すると考えられる。
【0049】
また、本例の染料溶液において使用する染料は、水に溶解可能な染料、又は有機溶剤に溶解可能な染料を用いることができる。より具体的に、水に溶解可能な染料としては、例えば、酸性染料、反応性染料、直接染料等のアニオン性染料、塩基性染料、分散染料、媒染染料、建染染料等が使用可能である。このうち、分散染料とは、例えば、穴の中に侵入することで対象物を染色する染料である。媒染染料とは、例えば、金属との反応により不溶性の金属錯塩を形成することで対象物を染色する染料である。また、建染染料とは、例えばインジゴ等の染料である。また、有機溶剤に溶解可能な染料としては、例えば、酒精染料、油溶性染料等が使用可能である。
【0050】
そして、本例においては、これらの染料のうち、特に、耐光性に優れた染料、より具体的には、例えば含金染料を用いることが好ましい。また、水性の含金染料としては、例えば、アゾ系やフタロシアニン系の含金酸性染料が特に好ましい。有機溶剤に溶解可能な染料としては、例えば、アルコールやケトンのような極性溶剤に溶解可能な酒精染料や、芳香族炭化水素やグリコールエーテル系溶剤等に溶解可能な油溶性含金染料等を用いることが考えられる。また、染料溶液、特に水性染料溶液においては、アルミニウム材の表面に形成された多孔質の酸化被膜層への染料溶液の濡れ性や浸透性を高めるために、水溶性有機溶剤又は界面活性剤を含むことが好ましい。
【0051】
また、これらの染料溶液を用いる場合、マスク形成用液体として、例えば、アクリル系の紫外線硬化型インクを用いることが好ましい。アクリル系の紫外線硬化型インクとしては、例えば、アクリル酸エステルを50重量%以上含むインクを好適に用いることができる。この場合、インクとは、例えば、インクジェット方式で液体吐出ヘッド12から吐出可能な液体のことである。このインクは、例えばクリアインク等の透明のインクであってもよく、カラー印刷用のインク等のように有色のインクであってもよい。
【0052】
尚、マスク形成用液体(アクリル系の紫外線硬化型インク)の具体的な組成については、使用する染料溶液の種類に応じて選択することが好ましい。例えば、水性染料溶液を用いる場合において、pHがアルカリ性である場合、紫外線硬化型インクの酸価が100以上であるとマスク効果が低くなるおそれもある。そのため、このような場合には、酸基を有さないアクリル成分を使用することが好ましい。
【0053】
このようなマスク形成用液体を用いることにより、例えば、染料可溶溶媒を溶媒とする染料インクを用いる場合において、アルミニウム材20上における着色用マスク102の耐久性や、着色用マスク102とアルミニウム材20との密着性を適切に高めることができる。また、これにより、着色用マスク102の下に染料が浸透しない条件を適切に満たすことができる。また、染料の溶媒(溶剤)に溶解しないことや、着色後に剥離しやすいことといった条件も適切に満たすことができる。そのため、本例によれば、各種の条件を満たす着色用マスク102を適切に形成できる。
【0054】
また、マスク形成用液体としては、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクを用いることが、より好ましい。硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクとは、例えば、硬化後に弾力性を有する樹脂となる紫外線硬化型インクのことである。このように構成すれば、例えば、着色用マスク102とアルミニウム材20との密着性をより適切に高めることができる。また、これにより、着色用マスク102の下に染料が浸透しないという条件をより適切に満たすことができる。更には、このように構成した場合、着色後により剥離しやすい着色用マスク102を形成することもできる。そのため、このように構成すれば、着色用マスク102をより適切に形成できる。
【0055】
尚、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクについて、例えば伸びる量が大きすぎる場合、インクが柔らかくなり過ぎ、染料の溶媒(溶剤)の種類によっては、溶媒に溶けやすくなることも考えられる。そのため、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクとしては、例えば、120〜160%程度伸びるインク、より好ましくは、例えば、130〜150%程度伸びるインクを好適に用いることができる。インクが120〜160%(又は130〜150%)伸びるとは、例えば、硬化後のインクにおける面積の最大伸びが120〜160%となることである。
【0056】
また、このような伸びるインクとしては、例えば、多官能モノマー(例えば、二アクリル酸ヘキサメチレン等)を20〜30重量%含み、単官能モノマー(例えばアクリル酸エステル)を55〜65重量%含む紫外線硬化型インク等を好適に用いることができる。また、より具体的に、このような伸びるインクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング社製のLF−140型の紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。LF−140型の紫外線硬化型インクは、140%程度伸びるインクであり、アクリル酸エステルを55〜65重量%、二アクリル酸ヘキサメチレンを20〜30重量%、重合の開始剤を10〜15重量%、キナクリドンマゼンタ等の顔料を0.1〜5重量%、添加剤を0.1〜5重量%含む。マスク形成用液体としてLF−140型の紫外線硬化型インクを用いることにより、例えば、染料可溶溶媒を溶媒とする染料インクを用いる場合において、着色用マスク102が染料インクの溶媒に溶解することを適切に防ぎ、鮮明な着色像を適切に得ることができる。また、着色用マスク102の下に染料が浸透しない条件や、剥離液にIPAを用いる場合において、着色用マスク102を剥離しやすいことといった条件を適切に満たすことができる。
【0057】
また、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング社製のLF−200型の紫外線硬化型インク等の更に大きく伸びるインクを用いることも考えられる。LF−200型の紫外線硬化型インクは、200%程度伸びるインクであり、イソボニルアクリレート、アミン変性アクリル酸オリゴマー、テトラヒドロフルフリルアクレート、開始剤(ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン=オキシド)、アクリル酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、アクリル酸エステル、添加剤(増感剤、分散剤、重合禁止剤)を含む。このようなマスク形成用液体を用いた場合にも、鮮明な着色用マスク102を適切に形成できる。
【0058】
但し、このように大きく伸びるインクを用いる場合、上記のように、インクが柔らかくなり過ぎ、染料の溶媒に溶けやすくなることも考えられる。例えば、LF−200型の紫外線硬化型インクを用いる場合、硬化被膜の耐アルカリ性が不足し、染料が硬化被膜を通り抜けやすくなることも考えられる。そのため、この場合、アルミニウム材20を準備する準備工程S102(
図1参照)において、エッチングを硫酸等の酸性溶液を用いて行うことが好ましい。このようにした場合、例えば、更に染料インクによる着色時において、pHを中性付近(例えばphが6〜8の範囲)に適切に設定できる。また、これにより、着色用マスク102のアルカリ耐性が小さい場合にも、着色用マスク102を染料が通り抜けることを適切に防ぐことができる。
【0059】
また、LF−200型の紫外線硬化型インクを用いる場合、紫外線の照射により着色用マスク102を硬化させた後に、更に加熱を行うことが好ましい。このようにすれば、例えば、硬化皮膜の硬度をより高めることができる。また、これにより、着色用マスク102の耐久性をより高めることができる。この加熱の効果は、例えばドライヤーで数分程度加熱することにより得ることができる。また、硬化皮膜の硬度をより適切に高めるためには、例えばオーブンにより、50〜60℃で1時間程度加熱することが好ましい。
【0060】
また、着色の条件や目的によっては、マスク形成用液体として、硬化後に伸びる特性の紫外線硬化型インクではなく、硬化後に実質的に伸びないインクを用いることも考えられる。硬化後に実質的に伸びないインクとは、例えば、インクが伸びることを目的として成分が調整されていない通常の紫外線硬化型インクのことである。また、このようなインクとしては、例えば硬質の紫外線硬化型インクを好適に用いることができる。
【0061】
この場合、例えば伸びるインクを用いる場合と比べて染料の溶媒等に対する耐久性が高くなるため、例えば着色用マスク102の膜厚が薄い場合でも、着色用マスク102の耐久性を適切かつ十分に高めることができる。また、着色用マスク102の膜厚を薄くすることにより、例えば、より微細なパターンを高精度で形成することも可能になる。そのため、このようにすれば、例えば、より高精細な着色を適切に行うことができる。
【0062】
硬質の紫外線硬化型インクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング社製のLH−100型の紫外線硬化型インクを用いることが考えられる。LH−100型の紫外線硬化型インクは、アクリル酸エステルを50〜60%、二アクリル酸ヘキサメチレンを30〜35重量%、開始剤(ジフェニル−2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィン=オキシド)を10〜15重量%、添加剤を0.1〜5%含む。
【0063】
尚、硬質の紫外線硬化型インクを用いる場合、着色用マスク102が染料インクの溶媒に溶解することを適切に防ぎ、鮮明な着色像を適切に得る条件や、着色用マスク102の下に染料が浸透しない条件については、適切に満たし得る。しかし、伸びるインクを用いる場合と比べると、着色用マスク102の剥離性が低下するおそれがある。そのため、マスク形成用液体として硬質の紫外線硬化型インクを用いる場合、剥離工程S106では、剥離液にアルミニウム材20を浸漬する時間をより長くすることが好ましい。
【0064】
また、上記以外にも、マスク形成用液体として、例えば、紫外線硬化型のプライマーインク等を用いることも考えられる。この場合、より具体的には、例えば、ミマキエンジニアリング社製のPR−100型の紫外線硬化型インクを用いることが考えられる。PR−100型の紫外線硬化型インクは、アクリル酸エステルを80〜90%、開始剤を10〜15重量%、添加剤を0.1〜5%含む。
【0065】
但し、PR−100型の紫外線硬化型インクを用いる場合、例えば上記のLF−140型やLH−100型の紫外線硬化型インクを用いる場合と比べて、染料の溶媒等に対する着色用マスク102の耐久性が低下するおそれがある。また、その結果、例えば染料の溶媒に着色用マスク102が溶解し、適切に着色を行えないおそれがある。
【0066】
そのため、PR−100型の紫外線硬化型インクを用いる場合には、LF−200型の紫外線硬化型インクを用いる場合について上記に説明したのと同様に、紫外線の照射により着色用マスク102を硬化させた後に、更に加熱を行うことが好ましい。このようにすれば、例えば、硬化皮膜の硬度をより高めることができる。また、これにより、着色用マスク102の耐久性をより高めることができる。
【0067】
また、マスク形成用液体として、例えば、紫外線硬化型インク以外のインク(液体)を用いることも考えられる。例えば、紫外線硬化型インクに揮発性有機溶剤を添加したソルベントUVインク(SUVインク)や、水性ポリマー等のポリマー素材を含むラテックスインクを用いることも考えられる。また、樹脂のカプセルを含むインクや、常温では固体状態のインクであるソリッドインク等を用いることも考えられる。これらの場合も、液体吐出ヘッド12を用いてアルミニウム材20上へ吐出することにより、アルミニウム材20上において、所望の形状の着色用マスクを適切に形成できる。また、マスク材料として、ソリッドインク(ロウ:カルナバワックス・ミツロウ等の天然ワックス及びパラフィン系の合成ワックス等)を使うこと等も考えられる。
【0068】
続いて、マスク形成工程S104における着色用マスク102の形成の仕方の変形例について、説明をする。
図3は、着色用マスク102の形成の仕方についての第1の変形例を示す。
図3(a)、(b)、(c)は、本変形例において着色用マスク102を形成する各工程の一例を示す。
【0069】
尚、以下に説明する点を除き、本変形例における着色用マスク102の形成の仕方は、
図1及び
図2を用いて説明した場合と同一又は同様である。また、本変形例においても、
図2(a)に示した構成と同一又は同様の構成の液体吐出装置10を用いる。
【0070】
本変形例においては、液体吐出ヘッド12(
図2参照)から吐出するマスク形成用液体により直接着色用マスク102を形成するのではなく、先ず、マスク形成用液体で中間マスク104を形成し、中間マスク104を利用して着色用マスク102を形成する。この中間マスク104は、予め設定された領域以外の領域を覆う第1マスクの一例である。
【0071】
より具体的に、本変形例においては、マスク形成工程S104にて、先ず、
図3(a)に示すように、その後に着色用マスク102を形成すべき領域以外の部分へマスク形成用液体を吐出することにより、この部分を覆う中間マスク104を形成する。着色用マスク102を形成すべき領域以外の部分とは、例えば、アルミニウム材20において着色がされるべき被着色領域である。
【0072】
そして、中間マスク104に形成後に、
図3(b)に示すように、アルミニウム材20に対し、着色用マスク102の材料となる液体を塗布して、着色用マスク材料層106を形成する。着色用マスク102の材料となる液体の塗布は、例えば、インクジェット方式以外の方法で行ってもよい。例えば、着色用マスク102の材料となる液体の塗布は、スプレー等でコートすることで行うことができる。また、着色用マスク102の材料となる液体の塗布は、中間マスク104の形成時とは異なる液体吐出ヘッド12を用いることにより、インクジェット方式で行ってもよい。
【0073】
そして、その後、
図3(c)に示すように、中間マスク104を除去することにより、必要な領域のみに着色用マスク102の材料を残し、所定のパターンの着色用マスク102を形成する。このように構成した場合、上記のように、着色用マスク102の形成を、インクジェット方式以外の方法で行うこともできる。そのため、着色用マスク102の材料として、インクジェット方式で吐出可能な液体以外の様々な液体を用いることができる。また、これにより、着色用マスク102の材料として、染料の溶液に対して強い耐性を有する材料等をより自由に選択できる。
【0074】
また、マスク形成用液体で形成される中間マスク104は、着色用マスク102を形成する途中の工程で用いられるのみである。そのため、中間マスク104について、染料インクの溶媒に対する耐久性等は要求されない。従って、このように構成した場合には、例えば、液体吐出ヘッド12により吐出するマスク形成用液体についても、着色用マスク102の材料となる液体に溶けない状態でアルミニウム材20に定着する液体であれば、様々な液体を使用することが可能となる。そのため、このように構成した場合も、例えば、着色用マスク102を適切に形成できる。また、これにより、アルミニウム材20への着色を適切に行うことができる。
【0075】
図4は、着色用マスク102の形成の仕方についての第2の変形例を示す。
図4(a)、(b)は、本変形例において着色用マスク102を形成する各工程の一例を示す。尚、以下に説明する点を除き、本変形例における着色用マスク102の形成の仕方は、
図1及び
図2を用いて説明した場合と同一又は同様である。また、本変形例においても、
図2(a)に示した構成と同一又は同様の構成の液体吐出装置10を用いる。
【0076】
本変形例においては、マスク形成工程において、縁部形成工程と、内部領域形成工程とを行う。また、これにより、着色用マスク102の形成を、縁部の形成と、内部領域の形成との2段階で行う。また、マスク形成用液体として、縁部形成用の第1のマスク形成用液体と、内部領域形成用の第2のマスク形成用液体とを用いる。そして、液体吐出装置10においては、複数の液体吐出ヘッド12を用い、それぞれの液体吐出ヘッド12により、第1及び第2のマスク形成用液体のそれぞれを吐出する。
【0077】
より具体的に、本変形例において、第1のマスク形成用液体としては、紫外線硬化型インクを用いる。そして、マスク形成工程S104の縁部形成工程にて、先ず、第1の液体吐出ヘッド12により、着色用マスク102の縁部となる領域へ第1のマスク形成用液体を吐出し、紫外線光源14(
図2参照)により、アルミニウム材20へ着弾した第1のマスク形成用液体へ紫外線を照射する。これにより、
図4(a)に示すように、着色用マスク102の縁部108を形成する。このようにして、本変形例では、縁部形成工程において、先ず、着色用マスク102のパターンの縁部(エッジ)のみをUV硬化させて形成する。
【0078】
そして、縁部形成工程に続いて、内部領域形成工程において、第2の液体吐出ヘッド12により、縁部108に囲まれる領域へ第2のマスク形成用液体を吐出することにより、着色用マスク102の内部領域110を形成する。また、本変形例において、第2のマスク形成用液体としては、アルミニウム材20へ定着させるために溶媒を蒸発させることが必要なインクを用いる。アルミニウム材20へ定着させるために溶媒を蒸発させることが必要なインクとは、例えば、インクをアルミニウム材20へ定着させるために、加熱乾燥又は自然乾燥により溶媒を除去することが必要なインクである。第2のマスク形成用液体としては、例えば、ソルベントUVインクや、ラテックスインクを好適に用いることができる。また、例えば、樹脂のカプセルを含むインクや、常温では固体状態のインクであるソリッドインク等を用いることも考えられる。
【0079】
このように構成した場合、例えば、着色用マスク102のパターンの内部について、アルミニウム材20着弾した第2のマスク形成用液体のドットを十分に広げることができる。また、これにより、パターンの内部について、穴のない均質な状態にできる。そのため、このように構成すれば、例えば、高解像度かつ均質な着色用マスク102をより適切に形成できる。
【0080】
尚、縁部形成工程において、第1のマスク形成用液体については、アルミニウム材20への着弾後、速やかに紫外線を照射して、硬化させることが好ましい。このように構成すれば、例えば、着色用マスク102の縁部を高解像度で形成することができる。また、これにより、所望のパターンの形状で高い精度で適切に形成することができる。
【0081】
また、縁部形成工程及び内部領域形成工程による2段階での着色用マスク102の形成は、例えば着色用マスク102の全体ではなく、一部の領域に対してのみ行ってもよい。例えば、着色用マスク102において、幅の狭い一部の領域については、第1のマスク形成用液体のみを用いてパターンを形成すること等が考えられる。また、縁部の形状について高い精度が必要でない一部の領域に対しては、第2のマスク形成用液体のみを用いてパターンを形成すること等も考えられる。これらの場合も、例えば、着色用マスク102の各部をそれぞれに適した方法で形成することにより、高解像度かつ均質な着色用マスク102をより適切に形成できる。
【0082】
また、
図1〜
図4を用いて説明をした各方法を更に応用することにより、アルミニウム材に対して、複数色の着色を行うことも考えられる。そこで、以下、複数色の着色を行う方法の例について、説明をする。
【0083】
図5は、アルミニウム材20に対してフルカラーの着色を行う方法の一例を示す。
図5(a)は、アルミニウム材20に対してフルカラーの着色を行う方法の第1の例を示す。
図5(b)は、アルミニウム材20に対してフルカラーの着色を行う方法の第2の例を示す。
【0084】
図1に関連して説明をしたように、例えば、YMCKの各色の染料インクを用い、
図1に示したマスク形成工程S104〜マスク剥離工程S108の工程を4回繰り返すことにより、フルカラー画像の着色を行うことができる。そして、この場合、例えば
図2に示した構成の液体吐出装置10(
図2参照)を用い、複数の液体吐出ヘッド12(
図2参照)のそれぞれにより、アルミニウム材20におけるアルマイト被膜の細孔202の中へYMCKの各色のインクを吐出することが考えられる。
【0085】
また、この場合、より具体的には、例えば、
図5(a)に示すように、一の細孔202へ複数色のインクを充填することにより、一の細孔202の中で複数の色を重ねることが考えられる。このように構成すれば、例えば、YMCKの各色のインクを適宜重ねることにより、様々な色を表現して、フルカラーの着色を行うことができる。また、例えば、
図5(b)に示すように、一の細孔202に充填するインクの色は一色のみとして、アルミニウム材20の表面の平面内の方向へ各色のインクを並設させることも考えられる。この場合も、例えばインクジェットプリンタによる一般的な印刷の方法と同様にして、フルカラーの着色を行うことができる。また、これらの構成において、液体吐出ヘッド12から吐出するインクとして、顔料インクを用いることも考えられる。
【0086】
また、アルミニウム材20に対して複数色の着色を行う方法としては、フルカラーの着色以外に、特定の複数色による多色の着色を行う方向も考えられる。例えば、赤、黒等の特定の二色の染料インクを用い、
図1に示したマスク形成工程S104〜マスク剥離工程S108の工程を2回繰り返すことにより、二色の着色を行うことが考えられる。また、この場合、例えば、それぞれの染料インクにより着色される着色領域をアルミニウム材20上の別の部分にそれぞれ設定することにより、色が異なる着色領域が重ならないようにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、二色の着色をより適切に行うことができる。また、着色の用途によっては、例えば、色が異なる着色領域の一部又は全体を重ねてもよい。この場合、例えば、着色用マスクとしてメッシュマスク等を用いることにより、中間色の着色を行うこと等も考えられる。
【0087】
また、更に多くの色の染料インクを用い、多色(N色)の着色を行うことも考えられる。この場合、例えば、赤、黒等の二色の染料インクに加え、他の色(X1色、X2色・・等)を用いる構成が考えられる。この場合も、例えば、それぞれの染料インクにより着色される着色領域をアルミニウム材20上の別の部分にそれぞれ設定することにより、色が異なる着色領域が重ならないようにすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、N色の着色をより適切に行うことができる。また、着色の用途によっては、例えば、色が異なる着色領域の一部又は全体を重ねてもよい。この場合も、例えば、着色用マスクとしてメッシュマスク等を用いることにより、中間色の着色を行ってもよい。
【0088】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。