特許第6104788号(P6104788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104788
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】ローラの軸受装置及び竪型ミル
(51)【国際特許分類】
   B02C 15/04 20060101AFI20170316BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20170316BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B02C15/04
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-265797(P2013-265797)
(22)【出願日】2013年12月24日
(65)【公開番号】特開2015-120122(P2015-120122A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】龍原 潔
(72)【発明者】
【氏名】富永 由道
(72)【発明者】
【氏名】筒場 孝志
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】西浦 謙佑
【審査官】 福永 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−135258(JP,A)
【文献】 米国特許第04961122(US,A)
【文献】 特開2013−145021(JP,A)
【文献】 特開2005−315357(JP,A)
【文献】 特開平10−110732(JP,A)
【文献】 特開2000−354778(JP,A)
【文献】 特開2007−100722(JP,A)
【文献】 米国特許第04989795(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00−25/00
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕物を粉砕する粉砕ローラを支持する支持軸と、該支持軸を軸支する軸受と、前記支持軸と前記軸受との隙間にグリースを供給するグリース供給部とからなり、
前記グリースが供給され、前記支持軸の外周面又は前記軸受の内周面のいずれか一方又は両方に形成されるグリース供給溝の断面形状が半円形または半楕円形であると共に、
その溝断面積を、グリース供給溝の「断面積L」を、下記「数1」の式(1)の関数に従い、前記グリースの供給側から離れる側に向かって減少させることを特徴とするローラの軸受装置。
ここで、式(1)中、Lはグリース供給溝の断面積、dは距離、d0はグリース排出側の位置、diはグリース供給側の位置である。
【数1】
【請求項2】
請求項1において、
前記グリース供給溝の一部に絞り部を有することを特徴とするローラの軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記グリース供給溝の終端部が内面の途中で途切れることを特徴とするローラの軸受装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一つにおいて、
前記グリース供給部が、前記粉砕ローラ側に位置することを特徴とするローラの軸受装置。
【請求項5】
中空形状をなすハウジングと、
前記ハウジング内の下部に鉛直方向に沿う回転軸心をもって駆動回転可能に支持される粉砕テーブルと、
前記粉砕テーブルの上方に対向して配置され、請求項1乃至のいずれか一つのローラの軸受装置によって回転自在に支持される粉砕ローラと、
前記ハウジング内の上部に設けられて粉砕物を分級可能な回転式分級機と、
を備えることを特徴とする竪型ミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭やバイオマスなどの固形物を粉砕する粉砕ローラに用いるローラの軸受装置及び竪型ミルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラ発電などの燃焼設備では、燃料として石炭やバイオマスなどの固形燃料が用いられる。そして、この石炭などを固形燃料として利用する場合、例えば、竪型ミルにより原炭を粉砕して微粉炭を生成し、得られた微粉炭を燃料として用いるようにしている。
【0003】
この竪型ミルは、ハウジングの下部に粉砕テーブルが駆動回転可能に配設されると共に、粉砕荷重を付与可能に配設された粉砕ローラで構成されている。従って、原炭が給炭管から粉砕テーブル上に供給されると、遠心力により全面に分散されて炭層が形成され、この炭層に対して各粉砕ローラが押圧することで粉砕される。粉砕後の微粉炭は、供給空気により乾燥され、分級されて外部に排出される。このような竪型ミルとしては、例えば、下記特許文献1、2に提案されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−047680号公報
【特許文献2】特開2001−017880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、石炭を粉砕する竪型ミルに用いる粉砕ローラで石炭を微粉砕する場合、微粉砕された粉塵が軸受装置内に侵入することを防止するために、軸受内面又は支持軸外面に溝を形成している。
よって、このような軸受装置では、グリースは本来の潤滑以外に、軸周りの隙間を充填して、粉砕された微粉炭などの粉塵の侵入をシールする効果も要求される。
さらに、実使用に際しては、新規のグリースを追加することで隙間のグリースを置換し、侵入した微粉炭などの異物を外部に排出できることも考慮されている。
ここで、軸受にグリースを供給し、潤滑などを行う場合、グリース供給を均一化するために、グリース供給部から離れたところでもグリースを均一に供給する必要がある。
【0006】
しかしながら、グリースの単なる供給の場合では、以下の問題がある。
グリース溝を充填する分だけグリースを余分に使用する。
グリース溝部分を通過するグリースは、素通りするだけであり、潤滑に何ら寄与するものでもない。
隙間部分にグリースを強制的に供給することができない。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、少ないグリースの使用量で、しかも潤滑面へグリースを効率的に供給できるローラの軸受装置及び竪型ミルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被粉砕物を粉砕する粉砕ローラを支持する支持軸と、該支持軸を軸支する軸受と、前記支持軸と前記軸受との隙間にグリースを供給するグリース供給部とからなり、前記グリースが供給され、前記支持軸の外周面又は前記軸受の内周面のいずれか一方又は両方に形成されるグリース供給溝の断面形状が半円形または半楕円形であると共に、その溝断面積を、グリース供給溝の「断面積L」を、下記「数1」の式(1)の関数に従い、前記グリースの供給側から離れる側に向かって減少させることを特徴とするローラの軸受装置にある。ここで、図4に示すように、式(1)中、Lはグリース供給溝の断面積、dは距離、d0はグリース排出側の位置、diはグリース供給側の位置である。
【数1】
【0009】
本発明によれば、グリースの通過距離に応じて溝の断面積が減少することにより、通過できるグリースの量が減少し、潤滑面にグリースが侵入することで、軸受全体にグリースが確実に供給される。グリース供給溝の断面積を一定の比率で減少させることで、各場所に一定量のグリースを所定量安定して供給することができる。
【0010】
の発明は、第1の発明において、前記グリース供給溝の一部に絞り部を有することを特徴とするローラの軸受装置にある。
【0011】
本発明によれば、絞り部を設けることで、狙った位置でグリースの供給量を増加することが可能となる。
【0012】
の発明は、第1又は2の発明において、前記グリース供給溝の終端部が内面の途中で途切れることを特徴とするローラの軸受装置にある。
【0013】
本発明によれば、途中でグリース溝が消失するため、供給したグリースが全て隙間に排出されてムダ無く使用することができる。
【0014】
の発明は、第1乃至のいずれか一つの発明において、前記グリース供給部が、前記粉砕ローラ側に位置することを特徴とするローラの軸受装置にある。
【0015】
本発明によれば、粉塵が多い粉砕ローラ側にグリース供給部を設けるので、粉砕物の侵入を確実にシールすることができる。
【0016】
の発明は、中空形状をなすハウジングと、前記ハウジング内の下部に鉛直方向に沿う回転軸心をもって駆動回転可能に支持される粉砕テーブルと、前記粉砕テーブルの上方に対向して配置され、第1乃至のいずれか一つのローラの軸受装置によって回転自在に支持される粉砕ローラと、前記ハウジング内の上部に設けられて粉砕物を分級可能な回転式分級機と、を備えることを特徴とする竪型ミルにある。
【0017】
本発明によれば、粉砕物の粉塵が多い竪型ミルの粉砕ローラの軸受手段として用いるので、粉砕物の侵入を確実にシールし、安定して長期間に亙って粉砕を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、グリース供給溝を、グリースの供給側からグリースの排出側に向かって、その溝径、溝深さ又は溝断面積の少なくとも一つを、漸次又は段階的に縮小するので、グリースが隙間に侵入し、潤滑面へグリースを効率的に供給できる。
また、従来に比べて溝長さは同じでも、グリース供給容積が小さくなるので、グリースの使用量及び有効活用されない量を減らせる。
グリース供給の圧損を低減することができるため、グリース供給溝の幅を広くした場合でも、軸受隙間に十分な量のグリースを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1に係るローラの軸受装置の概略図である。
図2図2は、実施例1に係るグリース供給溝の寸法の変化を示す図である。
図3図3は、実施例1に係る他のローラの軸受装置の概略図である。
図4図4は、実施例1に係る他のグリース供給溝の断面積の変化を示す図である。
図5図5は、実施例2に係るローラの軸受装置の概略図である。
図6図6は、実施例3に係るローラの軸受装置の概略図である。
図7図7は、実施例4に係るローラの軸受装置の概略図である。
図8図8は、実施例5に係るローラの軸受装置の概略図である。
図9図9は、本発明の実施例に係る竪型ミルを表す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係るローラの軸受装置の概略図である。図2は、実施例1に係るグリース供給溝の寸法の変化を示す図である。
先ず、本実施例のローラの軸受装置が適用される竪型ミルの一例を図9に示す。図9は、本発明の実施例に係る竪型ミルを表す概略構成図である。図9に示すように、竪型ミル10は、石炭(原炭)やバイオマスなどの固形物を粉砕するものである。ここで、バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。
【0022】
本実施例の竪型ミル10において、図9に示すように、ハウジング11は、円筒の中空形状をなし、上部に石炭供給管12が装着されている。この石炭供給管12は、図示しない石炭供給装置からハウジング11内に石炭を供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向(鉛直方向)に沿って配置され、下端部が下方まで延設されている。
【0023】
ハウジング11は、下部に粉砕テーブル13が配置されている。この粉砕テーブル13は、ハウジング11の中心位置に石炭供給管12の下端部に対向して配置されている。また、この粉砕テーブル13は、下部に鉛直方向に沿った回転軸心を有する回転軸14が連結され、ハウジング11に回転自在に支持されている。この回転軸14は、駆動ギアとしてのウォームホイール15が固結され、ハウジング11に搭載された駆動モータ(図示略)のウォームギア16がこのウォームホイール15に噛み合っている。従って、駆動モータによりウォームギア16、ウォームホイール15、回転軸14を介して粉砕テーブル13が駆動回転可能となっている。
【0024】
また、粉砕テーブル13は、外周側にリング形状をなすテーブルライナ17が固定されている。このテーブルライナ17は、表面(上面)が粉砕テーブル13の外周側に行くほどに高くなる傾斜面となっている。そして、この粉砕テーブル13(テーブルライナ17)の上方に対向して複数の粉砕ローラ18が配置されると共に、各粉砕ローラ18を駆動回転するローラ駆動装置19が設けられている。このローラ駆動装置19は、例えば、モータであって、粉砕ローラ18に駆動力を付与することができる。
【0025】
即ち、支持軸51は、後端部がローラ駆動装置19に支持され、このローラ駆動装置19は、ハウジング11の側壁部に取付軸22に支持されることで、支持軸51の先端部が上下方向に揺動可能となっている。この支持軸51は、先端部が粉砕テーブル13の回転軸心方向を向き、且つ、下方に傾斜するように配置され、粉砕ローラ18が装着されている。
【0026】
また、ローラ駆動装置19は、上方に延びる上部アーム24が設けられ、ハウジング11に固定された押圧装置としての油圧シリンダ25の押圧ロッド26の先端部が、この上部アーム24の先端部に連結されている。ローラ駆動装置19(支持軸51)は、下方に延びる下部アーム27が設けられ、先端部がハウジング11に固定されたストッパ28に当接可能となっている。従って、油圧シリンダ25により押圧ロッド26を前進させると、上部アーム24を押圧し、ローラ駆動装置19及び支持軸51を取付軸22を支点として図1にて時計回り方向に回動することができる。このとき、下部アーム27がストッパ28に当接することで、ローラ駆動装置19及び支持軸51の回動位置が規定される。
【0027】
つまり、粉砕ローラ18は、粉砕テーブル13(テーブルライナ17)との間で石炭を粉砕するものであり、粉砕ローラ18の表面と粉砕テーブル13(テーブルライナ17)の表面との間に所定隙間を確保する必要がある。そのため、油圧シリンダ25により支持軸51が所定の回動位置に規定されることで、粉砕ローラ18の表面と粉砕テーブル13の表面との間に、石炭を取り込んで粉砕可能な所定隙間が確保される。
【0028】
この場合、粉砕テーブル13が回転すると、この粉砕テーブル13上に供給された石炭は、その遠心力により外周側に移動され、粉砕ローラ18と粉砕テーブル13との間に入り込む。粉砕ローラ18は、粉砕テーブル13側に押圧されているため、粉砕テーブル13の回転力が石炭を介して伝達され、粉砕ローラ18は、この粉砕テーブル13の回転に連動して回転することができる。
【0029】
なお、本実施例にて、粉砕ローラ18を先端部側の径が小さくなるような円錐台形状とし、粉砕ローラ18の表面を平坦として構成したが、この形状に限定されるものではない。例えば、粉砕ローラ18をタイヤ形状としたりしてもよい。また、本実施例にて、粉砕ローラ18は、複数(3個)設けられ、粉砕テーブル13の回転方向に沿って等間隔に配置されている。この場合、粉砕ローラ18の数や配置は、粉砕テーブル13、粉砕ローラ18などの大きさなどに応じて適宜設定すればよいものである。
【0030】
また、ハウジング11は、下部に粉砕テーブル13の外周辺に位置して一次空気が送り込まれる入口ポート31が設けられている。また、ハウジング11は、上部に石炭供給管12の外周辺に位置して粉砕した石炭(微粉炭)を排出する出口ポート32が設けられている。そして、ハウジング11は、この出口ポート32の下方にて、微粉炭を分級する回転式分級機としてのロータリセパレータ33が設けられている。このロータリセパレータ33は、石炭供給管12の外周部に設けられ、駆動装置34により駆動回転可能となっている。また、ハウジング11は、下部に異物排出管35が設けられている。この異物排出管35は、石炭に混在する礫や金属片などの異物(スピレージ)を粉砕テーブル13の外周部から落下させて排出するものである。
【0031】
ここで、本実施例のローラの軸受装置50Aは、ローラ駆動装置19内に設けられ、支持軸を軸支するようにしている。以下、本実施例のローラ軸受装置50Aについて、詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、実施例1に係るローラの軸受装置50Aは、被粉砕物を粉砕する粉砕ローラ18を支持する支持軸51と、該支持軸51を軸支する軸受52と、グリース53が供給され、支持軸51の外周面(又は前記軸受52の内周面)にスパイラル状に形成されるグリース供給溝55が、グリース53の供給側から離れる側に向かって、その溝幅、溝深さ又は溝断面積の少なくとも一つを、漸次又は段階的に縮小するものである。
【0033】
本実施例では、グリース供給溝55の溝幅をグリース53の供給側から離れる側に向かって、図2に示すように漸次縮小するようにしている。
実施例1の他の実施例に係るローラ軸受装置50Bでは、グリース供給溝55のグリース供給部54を、グリース供給側(粉砕ローラ18側)の起点として、溝の形成長さ(距離)方向に徐々にその溝幅の寸法を縮小するものである。
【0034】
これにより、グリース53の通過するグリース供給溝55の断面積を、グリース供給部54からの距離に応じて徐々に減少させる構造とするので、通過できるグリース53の量が減少し、染み出たグリース53は隙間Sの潤滑面に侵入することで軸受全体にグリースが確実に供給される。これにより、粉砕ローラでの粉砕物のシール性の向上を図ることができる。
【0035】
よって、溝の容積が減少するため、グリースの使用量が減少する。さらに、従来のように、単に素通りするだけで潤滑に寄与しないグリースの量も減少する。
【0036】
ここで、本実施例では、グリース供給溝55を軸受52の内周面に形成しているが、支持軸51側の外周面のいずれか一方又は両方に設ける場合でも適用することができる。
【0037】
ここで、グリース供給溝55の断面積を減少させる構造としては、溝幅、溝深さを減少するものが適用される。
また、溝の幅と深さを同時に変化させる場合、両者を同じ比率で変化させる場合と、異なる比率で変化させるようにしてもよい。
【0038】
また、溝の断面形状が、例えば半円形又は半楕円形の場合は、溝径を減少させることも可能である。
【0039】
ここで、溝の断面積が半円形または半楕円形の場合、溝径を単に一定の比率で減少させると断面積は径の2乗で減少するため、グリース供給部付近に多くのグリースが排出されてグリース排出側において、新規のグリースの供給量が減少することとなり、シール性が低下する。
【0040】
よって、グリースを均一に供給するために、面積が一定の比率で減少することが望ましいため、半径を減少させる場合は、グリース供給溝の「断面積L」を、下記「数」の式(1)の関数に従い、減少させるようにして、グリース供給溝55の断面積を一定の比率で減少させることで、各場所に一定量のグリースを所定量安定して供給することができる。すなわち、図4に示すように、グリース供給部54側では断面積の減少比率は小さいものの、グリース排出側にいくにつれてその減少比率を大きくすることで、各場所に一定量のグリースを確実に供給することとなる。ここで、図4に示すように、式(1)中、Lはグリース供給溝の断面積、dは距離、d0はグリース排出側の位置、diはグリース供給側の位置である。
【0041】
【数2】
【0042】
本実施例によれば、グリース供給溝55を、グリース53のグリース供給部54側からグリースの排出側に向かって、その溝径、溝深さ又は溝断面積の少なくとも一つを、漸次又は段階的に縮小するので、グリースが隙間に侵入し、潤滑面へグリースを効率的に供給できる。
【0043】
また、従来に比べて溝長さは同じでも、グリース供給容積が小さくなるので、グリースの使用量及び有効活用されない量を減らせる。
【0044】
さらに、グリース供給の圧損を低減することができるため、グリース供給溝の幅を広くした場合でも、軸受隙間に十分な量のグリースを供給することができる。
【0045】
なお、本実施例では、軸受52に支持軸51を挿入しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばスリーブを支持軸51に締まりばめ、ブッシュを軸受52にすきまばめしてそれぞれ嵌め込み、ブッシュの内側又はスリーブの外側にグリース供給溝を形成するようにしてもよい。
【0046】
また、取付軸22がミル内部から外部側に貫通する配置とするような場合には、粉砕ローラ18の主軸の軸受52と同様のグリース供給溝を形成するようにしてもよい。
【実施例2】
【0047】
次に、実施例2に係るローラ軸受装置について説明する。
図5は、実施例2に係るローラの軸受装置の概略図である。なお、実施例1に係るローラ軸受装置の構成と重複する部材には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施例に係るローラの軸受装置50Cでは、図5に示すように、グリース供給溝55の溝幅を所定の距離は一定として、本実施例では3段階に、溝径を一定の比率をもって減少させるようにしている。
【0048】
グリース53を多めに供給する必要があるところでは、断面積の減少率を大きくすることでグリース供給量を増加することができる。
軸受端部では、端面からのグリースの侵入で一定量の供給があるが、グリース53が途切れ始める当たりでグリース供給溝55の幅を絞ってグリース53を滲みだし57、放出するようにして、シール性を向上することができる。特に、粉砕ローラ18側では、粉砕物の侵入をシールする必要性から、グリース53の滲みだしによるシール効果が向上することとなる。
【0049】
本実施例によれば、グリース供給溝55を順次段階的に小さくすることで、グリースのはみ出しを増やし、その部分での供給量を増加させることができる。
【実施例3】
【0050】
次に、実施例3に係るローラ軸受装置について説明する。
図6は、実施例3に係るローラの軸受装置の概略図である。なお、実施例1に係るローラ軸受装置の構成と重複する部材には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施例に係るローラの軸受装置50Dでは、図6に示すように、グリース供給溝55の所定長さのグリース流れ方向の端部側に、テーパ部58を有するようにしている。
【0051】
本実施例では、実施例2のように、グリース供給溝55が段階的に急に減少することを防止するために、段階的に減少する最初の部分において、テーパ部58を設けている。このテーパ部58を設け、滑らかにすることで角の部分でのグリース53の滞留を抑制することができる。
【0052】
グリース53は、せん断(ずり)がかからない部分の粘度が増加するため、一度滞留すると、時間の経過とともにますます流れにくくなる。この結果、滞留したグリースは固着したりしてトラブルの原因となるので、これを解消するために、テーパ部58を設け、グリース供給溝55の幅を滑らかに絞ることでグリースの滞留を防止することができる。
【実施例4】
【0053】
次に、実施例4に係るローラ軸受装置について説明する。
図7は、実施例4に係るローラの軸受装置の概略図である。なお、実施例1に係るローラ軸受装置の構成と重複する部材には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施例に係るローラ軸受装置50Eでは、図7に示すように、グリース供給溝55の一部に絞り部59を有するものである。
【0054】
グリース供給溝55の一部において、絞り部59を形成することで狙った位置でグリース53の供給量を増加することが可能となる。
溝を形成した後の後加工において、別に作成した絞り部59の治具を嵌めこんで、接着又は溶接などで固定することも可能であり、肉盛加工なども適用できるので、製作が容易である。なお、既存のグリース供給溝に後加工で設置することもできる。
【0055】
これにより、グリース53を多めに供給する必要があるところに絞り部59を設けて、断面積の減少率を大きくすることでグリース供給量を増加することができる。
また、軸受端部では、端面からのグリースの侵入で一定量の供給があるため、グリースが途切れ始める当たりでグリース溝を絞ってグリースを放出するようにしてもよい。
【0056】
本実施例によれば、絞り部を設けることで、狙った位置でグリースの供給量を増加することが可能となる。
【実施例5】
【0057】
次に、実施例5に係るローラ軸受装置について説明する。
図8は、実施例5に係るローラの軸受装置の概略図である。なお、実施例1に係るローラ軸受装置の構成と重複する部材には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施例に係るローラの軸受装置50Fでは、実施例1のローラ軸受装置において、グリース供給溝55の終端部が内面の途中で消滅部60となり、途切れるようにしている。
【0058】
グリース供給溝55の断面積が0になるまで減少し、途中で消滅されることにより、その時点でグリース53は全て隙間Sに排出され、潤滑に使い切ることが可能である。
【0059】
本実施例によれば、最終的にグリース53をグリース供給溝55から全て排出できるため、ムダ無く使用することができる。
【0060】
よって、本実施例に係るローラ軸受装置を用いるローラ駆動装置19を適用した竪型ミル10とすることで、例えば粉砕物の粉塵が多い粉砕ローラの軸受手段として用いるので、粉砕物の侵入を確実にシールし、安定して長期間に亙って粉砕を行うことができる。
【符号の説明】
【0061】
10 竪型ミル
50A〜50F ローラの軸受装置
51 支持軸
52 軸受
53 グリース
54 グリース供給部
55 グリース供給溝
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9