【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係るローラの軸受装置の概略図である。
図2は、実施例1に係るグリース供給溝の寸法の変化を示す図である。
先ず、本実施例のローラの軸受装置が適用される竪型ミルの一例を
図9に示す。
図9は、本発明の実施例に係る竪型ミルを表す概略構成図である。
図9に示すように、竪型ミル10は、石炭(原炭)やバイオマスなどの固形物を粉砕するものである。ここで、バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。
【0022】
本実施例の竪型ミル10において、
図9に示すように、ハウジング11は、円筒の中空形状をなし、上部に石炭供給管12が装着されている。この石炭供給管12は、図示しない石炭供給装置からハウジング11内に石炭を供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向(鉛直方向)に沿って配置され、下端部が下方まで延設されている。
【0023】
ハウジング11は、下部に粉砕テーブル13が配置されている。この粉砕テーブル13は、ハウジング11の中心位置に石炭供給管12の下端部に対向して配置されている。また、この粉砕テーブル13は、下部に鉛直方向に沿った回転軸心を有する回転軸14が連結され、ハウジング11に回転自在に支持されている。この回転軸14は、駆動ギアとしてのウォームホイール15が固結され、ハウジング11に搭載された駆動モータ(図示略)のウォームギア16がこのウォームホイール15に噛み合っている。従って、駆動モータによりウォームギア16、ウォームホイール15、回転軸14を介して粉砕テーブル13が駆動回転可能となっている。
【0024】
また、粉砕テーブル13は、外周側にリング形状をなすテーブルライナ17が固定されている。このテーブルライナ17は、表面(上面)が粉砕テーブル13の外周側に行くほどに高くなる傾斜面となっている。そして、この粉砕テーブル13(テーブルライナ17)の上方に対向して複数の粉砕ローラ18が配置されると共に、各粉砕ローラ18を駆動回転するローラ駆動装置19が設けられている。このローラ駆動装置19は、例えば、モータであって、粉砕ローラ18に駆動力を付与することができる。
【0025】
即ち、支持軸51は、後端部がローラ駆動装置19に支持され、このローラ駆動装置19は、ハウジング11の側壁部に取付軸22に支持されることで、支持軸51の先端部が上下方向に揺動可能となっている。この支持軸51は、先端部が粉砕テーブル13の回転軸心方向を向き、且つ、下方に傾斜するように配置され、粉砕ローラ18が装着されている。
【0026】
また、ローラ駆動装置19は、上方に延びる上部アーム24が設けられ、ハウジング11に固定された押圧装置としての油圧シリンダ25の押圧ロッド26の先端部が、この上部アーム24の先端部に連結されている。ローラ駆動装置19(支持軸51)は、下方に延びる下部アーム27が設けられ、先端部がハウジング11に固定されたストッパ28に当接可能となっている。従って、油圧シリンダ25により押圧ロッド26を前進させると、上部アーム24を押圧し、ローラ駆動装置19及び支持軸51を取付軸22を支点として
図1にて時計回り方向に回動することができる。このとき、下部アーム27がストッパ28に当接することで、ローラ駆動装置19及び支持軸51の回動位置が規定される。
【0027】
つまり、粉砕ローラ18は、粉砕テーブル13(テーブルライナ17)との間で石炭を粉砕するものであり、粉砕ローラ18の表面と粉砕テーブル13(テーブルライナ17)の表面との間に所定隙間を確保する必要がある。そのため、油圧シリンダ25により支持軸51が所定の回動位置に規定されることで、粉砕ローラ18の表面と粉砕テーブル13の表面との間に、石炭を取り込んで粉砕可能な所定隙間が確保される。
【0028】
この場合、粉砕テーブル13が回転すると、この粉砕テーブル13上に供給された石炭は、その遠心力により外周側に移動され、粉砕ローラ18と粉砕テーブル13との間に入り込む。粉砕ローラ18は、粉砕テーブル13側に押圧されているため、粉砕テーブル13の回転力が石炭を介して伝達され、粉砕ローラ18は、この粉砕テーブル13の回転に連動して回転することができる。
【0029】
なお、本実施例にて、粉砕ローラ18を先端部側の径が小さくなるような円錐台形状とし、粉砕ローラ18の表面を平坦として構成したが、この形状に限定されるものではない。例えば、粉砕ローラ18をタイヤ形状としたりしてもよい。また、本実施例にて、粉砕ローラ18は、複数(3個)設けられ、粉砕テーブル13の回転方向に沿って等間隔に配置されている。この場合、粉砕ローラ18の数や配置は、粉砕テーブル13、粉砕ローラ18などの大きさなどに応じて適宜設定すればよいものである。
【0030】
また、ハウジング11は、下部に粉砕テーブル13の外周辺に位置して一次空気が送り込まれる入口ポート31が設けられている。また、ハウジング11は、上部に石炭供給管12の外周辺に位置して粉砕した石炭(微粉炭)を排出する出口ポート32が設けられている。そして、ハウジング11は、この出口ポート32の下方にて、微粉炭を分級する回転式分級機としてのロータリセパレータ33が設けられている。このロータリセパレータ33は、石炭供給管12の外周部に設けられ、駆動装置34により駆動回転可能となっている。また、ハウジング11は、下部に異物排出管35が設けられている。この異物排出管35は、石炭に混在する礫や金属片などの異物(スピレージ)を粉砕テーブル13の外周部から落下させて排出するものである。
【0031】
ここで、本実施例のローラの軸受装置50Aは、ローラ駆動装置19内に設けられ、支持軸を軸支するようにしている。以下、本実施例のローラ軸受装置50Aについて、詳細に説明する。
【0032】
図1に示すように、実施例1に係るローラの軸受装置50Aは、被粉砕物を粉砕する粉砕ローラ18を支持する支持軸51と、該支持軸51を軸支する軸受52と、グリース53が供給され、支持軸51の外周面(又は前記軸受52の内周面)にスパイラル状に形成されるグリース供給溝55が、グリース53の供給側から離れる側に向かって、その溝幅、溝深さ又は溝断面積の少なくとも一つを、漸次又は段階的に縮小するものである。
【0033】
本実施例では、グリース供給溝55の溝幅をグリース53の供給側から離れる側に向かって、
図2に示すように漸次縮小するようにしている。
実施例1の他の実施例に係るローラ軸受装置50Bでは、グリース供給溝55のグリース供給部54を、グリース供給側(粉砕ローラ18側)の起点として、溝の形成長さ(距離)方向に徐々にその溝幅の寸法を縮小するものである。
【0034】
これにより、グリース53の通過するグリース供給溝55の断面積を、グリース供給部54からの距離に応じて徐々に減少させる構造とするので、通過できるグリース53の量が減少し、染み出たグリース53は隙間Sの潤滑面に侵入することで軸受全体にグリースが確実に供給される。これにより、粉砕ローラでの粉砕物のシール性の向上を図ることができる。
【0035】
よって、溝の容積が減少するため、グリースの使用量が減少する。さらに、従来のように、単に素通りするだけで潤滑に寄与しないグリースの量も減少する。
【0036】
ここで、本実施例では、グリース供給溝55を軸受52の内周面に形成しているが、支持軸51側の外周面のいずれか一方又は両方に設ける場合でも適用することができる。
【0037】
ここで、グリース供給溝55の断面積を減少させる構造としては、溝幅、溝深さを減少するものが適用される。
また、溝の幅と深さを同時に変化させる場合、両者を同じ比率で変化させる場合と、異なる比率で変化させるようにしてもよい。
【0038】
また、溝の断面形状が、例えば半円形又は半楕円形の場合は、溝径を減少させることも可能である。
【0039】
ここで、溝の断面積が半円形または半楕円形の場合、溝径を単に一定の比率で減少させると断面積は径の2乗で減少するため、グリース供給部付近に多くのグリースが排出されてグリース排出側において、新規のグリースの供給量が減少することとなり、シール性が低下する。
【0040】
よって、グリースを均一に供給するために、面積が一定の比率で減少することが望ましいため、半径を減少させる場合は、グリース供給溝の「断面積L」を、下記「数
2」の
式(1)の関数に従い、減少させるようにして、グリース供給溝55の断面積を一定の比率で減少させることで、各場所に一定量のグリースを所定量安定して供給することができる。すなわち、
図4に示すように、グリース供給部54側では断面積の減少比率は小さいものの、グリース排出側にいくにつれてその減少比率を大きくすることで、各場所に一定量のグリースを確実に供給することとなる。
ここで、図4に示すように、式(1)中、Lはグリース供給溝の断面積、dは距離、d0はグリース排出側の位置、diはグリース供給側の位置である。
【0041】
【数2】
【0042】
本実施例によれば、グリース供給溝55を、グリース53のグリース供給部54側からグリースの排出側に向かって、その溝径、溝深さ又は溝断面積の少なくとも一つを、漸次又は段階的に縮小するので、グリースが隙間に侵入し、潤滑面へグリースを効率的に供給できる。
【0043】
また、従来に比べて溝長さは同じでも、グリース供給容積が小さくなるので、グリースの使用量及び有効活用されない量を減らせる。
【0044】
さらに、グリース供給の圧損を低減することができるため、グリース供給溝の幅を広くした場合でも、軸受隙間に十分な量のグリースを供給することができる。
【0045】
なお、本実施例では、軸受52に支持軸51を挿入しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばスリーブを支持軸51に締まりばめ、ブッシュを軸受52にすきまばめしてそれぞれ嵌め込み、ブッシュの内側又はスリーブの外側にグリース供給溝を形成するようにしてもよい。
【0046】
また、取付軸22がミル内部から外部側に貫通する配置とするような場合には、粉砕ローラ18の主軸の軸受52と同様のグリース供給溝を形成するようにしてもよい。
【実施例4】
【0053】
次に、実施例4に係るローラ軸受装置について説明する。
図7は、実施例4に係るローラの軸受装置の概略図である。なお、実施例1に係るローラ軸受装置の構成と重複する部材には同一符号を付してその説明は省略する。
本実施例に係るローラ軸受装置50Eでは、
図7に示すように、グリース供給溝55の一部に絞り部59を有するものである。
【0054】
グリース供給溝55の一部において、絞り部59を形成することで狙った位置でグリース53の供給量を増加することが可能となる。
溝を形成した後の後加工において、別に作成した絞り部59の治具を嵌めこんで、接着又は溶接などで固定することも可能であり、肉盛加工なども適用できるので、製作が容易である。なお、既存のグリース供給溝に後加工で設置することもできる。
【0055】
これにより、グリース53を多めに供給する必要があるところに絞り部59を設けて、断面積の減少率を大きくすることでグリース供給量を増加することができる。
また、軸受端部では、端面からのグリースの侵入で一定量の供給があるため、グリースが途切れ始める当たりでグリース溝を絞ってグリースを放出するようにしてもよい。
【0056】
本実施例によれば、絞り部を設けることで、狙った位置でグリースの供給量を増加することが可能となる。