特許第6104803号(P6104803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6104803非円形状メニスカス壁を備える液体メニスカスレンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104803
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】非円形状メニスカス壁を備える液体メニスカスレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20170316BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20170316BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G02C7/04
   G02C7/06
   G02B3/14
【請求項の数】30
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-531710(P2013-531710)
(86)(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公表番号】特表2013-540285(P2013-540285A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】US2011053414
(87)【国際公開番号】WO2012044607
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2014年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/387,510
(32)【優先日】2010年9月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/232,453
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ピュー・ランドール・ビー
(72)【発明者】
【氏名】オッツ・ダニエル・ビー
(72)【発明者】
【氏名】トナー・アダム
(72)【発明者】
【氏名】カーニック・エドワード・アール
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ジェームズ・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】スヌーク・シャリカ
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526517(JP,A)
【文献】 特開2009−276450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0020285(US,A1)
【文献】 特開2006−178469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 − 13/00
G02B 1/10 − 1/18
G02B 6/35
G02B 26/00 − 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトレンズであって、
前方レンズ外面と、前方レンズ内面とを備える前方レンズと、
後方レンズ内面と、後方レンズ外面とを備え、前記前方レンズ内面及び前記後方レンズ内面がそれらの間に空洞を形成するように、前記前方レンズに隣接して配置される、後方レンズと、
前記前方レンズ内面と前記後方レンズ内面との間に形成される前記空洞内に収容されるある体積の生理食塩水溶液及び油であって、それらの間にメニスカスを構成する、ある体積の生理食塩水溶液及び油と、
前記前方レンズ内面のある領域に形成され、前記レンズの光軸に対し直交する面に沿った断面が非円形状であり、プロフィールで見たときに円錐台の形状を備えるメニスカス壁と、を備える、コンタクトレンズ。
【請求項2】
前記前方レンズ及び前記後方レンズの少なくとも1つが、本質的に平坦である、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記前方レンズと前記後方レンズのそれぞれが、弓形レンズである、請求項1に記載のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記メニスカス壁の少なくとも一部分上に導電性コーティングを更に備える、請求項3に記載のコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記油の体積が、前記空洞内に収容される前記生理食塩水溶液の体積未満である、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記油の体積が、前記生理食塩水溶液の量と比較して、66体積%以上である、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項7】
前記油の体積が、前記生理食塩水溶液の量と比較して、90体積%以下である、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項8】
前記油が、前記生理食塩水溶液の密度と等しい密度を有する、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項9】
前記油の密度が、前記生理食塩水溶液の密度の±10%以内である、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項10】
前記油の密度が、前記生理食塩水溶液の密度の±5%以内である、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記導電性コーティングが、前記空洞の内側の区域から前記空洞の外側の区域に延在する、請求項4に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
前記空洞の外側の前記導電性コーティングの区域が、液体メニスカスレンズに電位を供給するための電気端子を形成する、請求項11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
前記生理食塩水溶液及び前記油がメニスカスを形成し、電位を前記空洞の外側の前記導電性コーティングの区域に印加することにより、前記メニスカス壁に沿った前記メニスカスの接触位置に変化をもたらす、請求項11に記載のコンタクトレンズ。
【請求項14】
前記電位が、前記端子に直流を供給することにより与えられる、請求項12に記載のコンタクトレンズ。
【請求項15】
前記電位が、5.0ボルト〜60.0ボルトの間にある、請求項12に記載のコンタクトレンズ。
【請求項16】
前記電位が、20.0ボルトである、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項17】
前記電位が、5.0ボルトである、請求項15に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
前記電位が、3.5ボルト〜7.5ボルトの間にある、請求項12に記載のコンタクトレンズ。
【請求項19】
前記前方レンズ外面が、0以外の屈折力を有する、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項20】
前記前方レンズ内面が、0以外の屈折力を有する、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項21】
前記後方レンズ外面が、0以外の屈折力を有する、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項22】
前記後方レンズ内面が、0以外の屈折力を有する、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項23】
前記前方レンズ及び前記後方レンズのうちの1つ又は両方を通るチャネルと、前記チャネルを充填する導電材料とを更に備える、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項24】
前記チャネルを充填する前記導電材料と電気的に導通している端子を更に備える、請求項23に記載のコンタクトレンズ。
【請求項25】
電位を前記端子に印加することにより、前記メニスカスの形状に変化をもたらす、請求項24に記載のコンタクトレンズ。
【請求項26】
前記前方レンズの前記内面の少なくとも一部分に沿って絶縁体コーティングを更に備え、前記絶縁体コーティングが、電気絶縁体を備える、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項27】
前記絶縁体コーティングが、パリレンC(Parylene C)(商標)及びテフロン(登録商標)AF(Teflon AF)のうちの1つを含む、請求項26に記載のコンタクトレンズ。
【請求項28】
前記絶縁体コーティングが、前記導電性コーティングと、前記前方レンズと前記後方レンズとの間の前記空洞に収容される生理食塩水溶液との間の分離を維持するための境界区域を備える、請求項26に記載のコンタクトレンズ。
【請求項29】
前記メニスカス壁の角度が、前記レンズの光軸に対して30°〜50°の間にある、請求項5に記載のコンタクトレンズ。
【請求項30】
前記メニスカス壁に隣接するメニスカスの角張った部分を更に備え、前記角張った部分が、前記ある体積の生理食塩水溶液と及び油の間に形成された前記メニスカスの動きを抑制するための角度を持つ、請求項29に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2010年9月29日出願の米国特許仮出願第61/387510号、表題「Liquid meniscus LENS WITH NON−SPHERICAL MENISCUS WALL」、並びに2011年4月27日出願の米国非暫定的特許出願第13/095786号、表題「ARCUATE LIQUID MENISCUS LENS」の一部継続出願として、及び2011年5月31日出願の同第13/149105号、表題「LENS WITH CONICAL FRUSTUM MENISCUS WALL」の一部継続出願として優先権を主張するものであり、参照することによりこれらのそれぞれの内容に依拠し、かつこれらを援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に液体メニスカスレンズに関し、より具体的には、断面が非円形状であり、弓状であってもよいメニスカス壁を備える液体メニスカスレンズを含む。
【背景技術】
【0003】
液体メニスカスレンズは、様々な産業において公知である。図1A及び1Bを参照しながら以下により詳細に説明されるように、既知の液体メニスカスレンズは、直線である軸線から固定された距離の点により形成される周囲表面によって円柱形状に設計されていた。既知の液体メニスカスレンズは、一般に第2の内面に平行であり、それぞれが円柱軸線に対して垂直である第1の内面を有する設計に制限されてきた。液体メニスカスレンズの使用の既知の例としては、電子カメラ等の装置が挙げられる。
【0004】
従来、コンタクトレンズ及び眼内レンズ等の眼科用装置には、矯正、美容又は治療的性質を有する生体適合性装置が挙げられている。例えば、コンタクトレンズは、視力矯正機能、美容強化、及び治療効果のうちの1つ以上を提供することができる。それぞれの機能は、レンズの物理的特性によって提供される。レンズに屈折性質を組み込む設計は、視力矯正機能を提供することができる。レンズに組み込まれる顔料は、美容強化を提供することができる。レンズに組み込まれる活性薬剤は、治療的機能を提供することができる。
【0005】
最近では、電子成分がコンタクトレンズの中に組み込まれている。いくつかの成分は、半導体装置を含むことができる。しかしながら、液体メニスカスレンズの大きさ、形状及び制御態様を含む物理的制約が、眼科用レンズにおけるそれらの使用を不可能にしてきた。一般に、「ホッケーパック」形状と呼ばれることがある、液体メニスカスレンズの円柱形状は、ヒトの眼の環境で機能できる何かを助長してこなかった。
【0006】
加えて、湾曲した液体メニスカスレンズは、平行側面及び/又は光学窓を有する液体メニスカスレンズの従来の設計に必然的に存在しない物理的課題を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、弓形前方湾曲レンズと弓形後方湾曲レンズとを含む液体メニスカスレンズを提供する。本発明には、レンズ内に収容される液体を引き寄せる、及び退ける、のうちの1つ又は両方を助長し、別の液体とメニスカスを形成する物理的特色を有し、断面が非円形状であるメニスカス壁が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、第1の弓形形状の光学部品は、第2の弓形形状の光学部品に隣接し、それらの間に空洞を形成する。生理食塩水溶液及び油は、空洞内に維持される。一般に、第1の弓形光学部品及び第2の弓形光学部品のうちの1つ又は両方の周囲区域に位置するメニスカス壁に電位を印加することにより、空洞内に維持される生理食塩水溶液と油との間に形成されるメニスカスの物理的形状が変化する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】第1状態における先行技術の円柱形液体メニスカスレンズの例を図示。
図1B】第2状態における先行技術の円柱形液体メニスカスレンズの例を図示。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、代表的な液体メニスカスレンズのプロファイル切り出し断面を図示。
図3】本発明のいくつかの実施形態による、代表的な弓形液体メニスカスレンズの一部分の横断面を図示。
図4】弓形液体メニスカスレンズの更なる代表的な態様を図示。
図5】本発明のいくつかの実施形態による、弓形液体メニスカスレンズ内のメニスカス壁の要素を図示。
図6】弓形液体メニスカスレンズ内の非円形状メニスカス壁の上面断面図を図示。
図7】液体メニスカスの一部を示す、弓形液体メニスカスレンズ内の非円形状メニスカス壁の上面直交図を図示。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、液体メニスカスレンズのメニスカス空洞を画定する前方湾曲レンズ及び後方湾曲レンズのうちの少なくとも1つを有する液体メニスカスレンズを提供する。
【0011】
用語
本発明を目的とする本説明及び「特許請求の範囲」において、以下の定義が適用される様々な用語が使用され得る。
【0012】
接触角:液体メニスカス境界線とも呼ばれる油/生理食塩水溶液の界面が、メニスカス壁と接触する角度。線形メニスカス壁の場合、接触角は、メニスカス壁と、液体メニスカス境界線がメニスカス壁と接触する点の液体メニスカス境界線に接する線との間の角度として測定される。湾曲したメニスカス壁の場合、接触角は、メニスカス壁に接する線と、それらが接触する点の液体メニスカス境界線との間の角度として測定される。
【0013】
レンズ:本明細書で使用するとき、レンズは、例えば可視光線等の放射線の波長の予め画定された範囲に対して光透過性である、前面及び背面を有する物品を意味する。レンズは、本質的に平坦である前面及び背面のうちの1つ若しくは両方、又は弓形の形状である前面及び背面のうちの1つ若しくは両方を含んでよい。
【0014】
液体メニスカス境界線:生理食塩水溶液と油との間の弓形表面界面。一般に、表面は、片側が凹面であり、もう一方が凸面であるレンズを形成する。
【0015】
メニスカス空洞:油及び生理食塩水溶液が維持される前方湾曲レンズと後方湾曲レンズとの間の弓形液体メニスカスレンズの空間。
【0016】
メニスカス壁:前方湾曲レンズの内側の特定領域であり、そのためメニスカス空洞内にあり、それに沿って液体メニスカス境界線が移動する。
【0017】
光学ゾーン:本明細書で使用するとき、眼科用レンズの装用者がそこを通して見ることになる、眼科用レンズの領域を指す。
【0018】
角張った部分:光学部品上の2つの予め画定された液体の接触線の位置を含むのに十分な前方湾曲レンズ又は後方湾曲レンズの片のいずれかの内面の幾何学的特色。角張った部分は、通常、内角よりも外角である。液体の観点から、角張った部分は、180°より大きい角度である。
【0019】
ここで図1Aを参照すると、シリンダ110内に収容される油101及び生理食塩水溶液102を有する先行技術のレンズ100の断面図が図示される。シリンダ110は、2つの光学材料106のプレートを含む。各プレート106は、本質的に平坦である内面113〜114を含む。シリンダ110は、本質的に回転対称である内面を含む。一部の先行技術の実施形態では、1つ以上の表面は、疎水性コーティングを含むことができる。電極105も、シリンダの周囲上又はその周りに含まれる。電気絶縁体もまた、電極105に隣接して使用され得る。
【0020】
先行技術によると、内面113〜114のそれぞれは、本質的に平坦又は平面的である。界面表面112Aは、生理食塩水溶液102Aと油101との間で画定される。図1Aに示すように、界面112Aの形状は、生理食塩水溶液102A及び油101の屈折率特性と組み合わされて、第1の内面113を通して入射光108を受容し、第2の内面114を通して発散光109を提供する。油101と生理食塩水溶液102との間の界面表面の形状は、電極105に電位を印加することにより変化し得る。
【0021】
図1Aは、100で図示される先行技術のレンズの斜視図を図示する。
【0022】
ここで図1Bを参照すると、先行技術のレンズ100は、通電された状態で図示される。電圧を付加された状態は、電極115に電圧114を印加することによって達成される。油101と生理食塩水溶液102Bとの間の界面表面112Bの形状は、電極115に電位を印加することにより変化する。図1Bに示すように、油101及び生理食塩水溶液102Bを通過する入射光108Bは、集束された光パターン111に集束される。
【0023】
ここで図2を参照すると、液体メニスカスレンズ200の断面図は、前方湾曲レンズ201と、後方湾曲レンズ202とを有する。様々な実施形態では、前方湾曲レンズ201及び後方湾曲レンズ202は、弓形レンズ又は実質的に平坦なレンズを含んでよい。一部の好ましい実施形態では、前方湾曲レンズ201及び後方湾曲レンズ202は、相互に隣接して位置し、それらの間に空洞210を形成する。前方湾曲レンズ201は、凹状弓形内側レンズ表面203と、凸状弓形外側レンズ表面204とを含む。凹状弓形内側レンズ表面203は、1つ以上のコーティング(図2に図示せず)を有することができる。コーティングは、例えば、導電性の材料又は電気的に絶縁性の材料、疎水性材料又は親水性材料のうちの1つ以上を含むことができる。凹状弓形内側レンズ表面203及びコーティングのうちの1つ又は両方は、空洞210内に収容される油208と液体及び光学連通している。
【0024】
後方湾曲レンズ202は、凸状弓形内側レンズ表面205と、凹状弓形外側レンズ表面206とを含む。凸状弓形内側レンズ表面205は、1つ以上のコーティング(図2に図示せず)を有することができる。コーティングは、例えば、導電性の材料又は電気的に絶縁性の材料、疎水性材料又は親水性材料のうちの1つ以上を含むことができる。凸状弓形内側レンズ表面205及びコーティングのうちの少なくとも1つは、空洞210内に収容される生理食塩水溶液207と液体及び光学連通している。生理食塩水溶液207は、イオン導電性である1つ以上の塩又は他の成分を含み、そのため、電荷に引き寄せられるか、又はそれによって退けられるかのいずれかであり得る。
【0025】
本発明によると、導電性のコーティング209は、前方湾曲レンズ201及び後方湾曲レンズ202のうちの1つ又は両方の周辺部の少なくとも一部分に沿って位置する。導電性のコーティング209は、金又は銀を含むことができ、好ましくは生体適合性である。電位を導電性のコーティング209に印加することにより、生理食塩水溶液207中のイオン導電性の塩又は他の成分を引き寄せるか、又は退けるかのいずれかを生じさせる。
【0026】
前方湾曲レンズ201は、凹状弓形内側レンズ表面203及び凸状弓形外側レンズ表面204を通過する光に関して屈折力を有する。屈折力は、0であるか、又は正若しくは負の力であってもよい。一部の好ましい実施形態では、屈折力は、非限定的な例として、−8.0〜+8.0ジオプターの力等の矯正コンタクトレンズに典型的に見られる力である。
【0027】
後方湾曲レンズ202は、凸状弓形内側レンズ表面205及び凹状弓形外側レンズ表面206を通過する光に関して屈折力を有する。屈折力は、0であるか、又は正若しくは負の力であってもよい。いくつかの実施形態では、屈折力は、非限定的な例として、−8.0〜+8.0ジオプターの力等の矯正コンタクトレンズに典型的に見られる力である。光学軸212は、後方湾曲レンズ202及び前方湾曲レンズ201を通って形成される。
【0028】
様々な実施形態はまた、生理食塩水溶液207と油208との間に形成される液体メニスカス211の形状の変化に関連する屈折力の変化も含むことができる。いくつかの実施形態では、屈折力の変化は、例えば、0〜2.0ジオプターの変化の変化のように、比較的小さくてよい。他の実施形態では、液体メニスカスの形状の変化に関連する屈折力の変化は、最大約30又はそれ以上のジオプターの変化であってよい。一般に、液体メニスカス211の形状の変化に関連するより大きな屈折力の変化は、比較的大きいレンズ厚213に関連する。
【0029】
コンタクトレンズ等の眼科用レンズに含まれ得るそれらの実施形態等の本発明のいくつかの実施形態によると、弓形液体メニスカスレンズ200の横断レンズ厚213は、最大約1,000マイクロメートルの厚さである。比較的より薄いレンズ200の代表的なレンズ厚213は、最大約200マイクロメートルの厚さである。好ましい実施形態は、約600マイクロメートルの厚さのレンズ厚213を有する液体メニスカスレンズ200を含むことができる。一般に、前方湾曲レンズ201の横断厚は、約35マイクロメートル〜約200マイクロメートルであってよく、後方湾曲レンズ202の横断厚はまた、約35マイクロメートル〜約200マイクロメートルであってもよい。典型的には、断面プロファイルは、レンズ200内の異なる位置における厚さの画定された変化を含む。
【0030】
本発明によると、集合屈折力は、前方湾曲レンズ201、後方湾曲レンズ202、及び油208と生理食塩水溶液207との間に形成される液体メニスカス211の屈折力の集合である。いくつかの実施形態では、レンズ200の屈折力は、前方湾曲レンズ201、後方湾曲レンズ202、油208及び生理食塩水溶液207のうちの1つ以上の間での屈折率の差も含む。
【0031】
コンタクトレンズに組み込まれる弓形液体メニスカスレンズ200を含むそれらの実施形態では、コンタクト着用者が動くため、生理食塩水207及び油208が弓形液体メニスカスレンズ200内のそれらの相対位置で安定した状態を保つことが、更に望ましい。一般に、着用者が動くときに、生理食塩水207に対して油208が浮遊し、動かないようにすることが好ましい。したがって、油208と生理食塩水溶液207との組み合わせは、好ましくは同一又は同様の密度で選択される。加えて、油208及び生理食塩水溶液207は、生理食塩水溶液207と油208とが混合しないように、好ましくは、比較的低い混和性を有する。
【0032】
一部の好ましい実施形態では、空洞210内に収容される生理食塩水溶液207の体積は、空洞210内に収容される油208の体積より大きい。加えて、一部の好ましい実施形態は、後方湾曲レンズ202の内面205の全体と本質的に接触する生理食塩水溶液207を含む。いくつかの実施形態は、生理食塩水溶液207の量と比較して、約66体積%以上である体積の油208を含むことができる。いくつかの更なる実施形態は、生理食塩水溶液207の量と比較して、油208の体積が約90体積%以下である弓形液体メニスカスレンズを含むことができる。
【0033】
ここで図3を参照すると、端部分の弓形液体メニスカスレンズ300の断面が図示される。上述のように、弓形液体メニスカスレンズ300は、組み合わされた前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302成分を含む。前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302は、少なくとも部分的に透明である1つ以上の材料で形成され得る。いくつかの実施形態では、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方は、例えば、PMMA、Zeonor及びTPX等のうちの1つ以上の一般に光学的に明澄なプラスチックを含む。
【0034】
前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方は、例えば、単刃ダイヤモンド旋削旋盤加工、射出成形、デジタルミラー装置自由形成等のうちの1つ以上のプロセスによって成形され得る。
【0035】
前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方は、図示される導電性コーティング303を含むことができ、導電性コーティング303は、309〜310までの周囲部分に沿って延在する。一部の好ましい実施形態では、導電性コーティング303は、金を含む。金は、スパッタプロセス、蒸着又は他の公知のプロセスによって塗布され得る。代替的な導電性コーティング303は、非限定的な例として、アルミニウム、ニッケル、及びインジウムスズ酸化物を含むことができる。一般に、導電性コーティング303は、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方の周囲区域に塗布される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態では、後方湾曲レンズ302は、特定の区域に塗布される導電性コーティング304を有する。例えば、後方湾曲レンズ302の周囲の周りの部分は、第1の境界線304−1〜第2の境界線304−2まで被覆され得る。金コーティングは、例えば、スパッタプロセス又は蒸着によって塗布され得る。いくつかの実施形態では、前方湾曲レンズ301又は後方湾曲レンズ302の1つ以上の周囲部分の周りに、所定のパターンで、金又は他の導電材料を塗布するために、マスクが使用され得る。代替の導電材料は、様々な方法を使用し、かつ後方湾曲レンズ302の様々な区域を被覆することにより塗布され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、例えば後方湾曲レンズ302の1つ以上の穴又はスロット等を通る導電性通路は、例えば導電性エポキシ等の導電性充填剤材料で充填され得る。導電性充填剤は、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方の内面上の導電性コーティングとの電気的導通を提供することができる。
【0038】
本発明の別の態様において、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方は、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302(図示せず)の一般に中央区域の光学ゾーンが光学的に透明な材料を含むことができ、周辺部ゾーンが導電性の材料を含む光学的に不透明な区域を含むことができる、複数の異なる材料から作製され得る。光学的に不透明な区域はまた、制御回路及びエネルギー源のうちの1つ以上を含むこともできる。
【0039】
更に別の態様において、いくつかの実施形態では、絶縁体コーティング305が前方湾曲レンズ301に塗布される。非限定的な例として、絶縁体コーティング305は、第1の領域305−1〜第2の領域305−2に延在する区域に塗布される。絶縁体は、例えば、パリレンC(Parylene C)(商標)、テフロン(登録商標)AF(Teflon AF)、又は様々な電気的及び機械的特性並びに電気抵抗を備える他の材料を含むことができる。
【0040】
一部の特定の実施形態では、絶縁体コーティング305は、導電性コーティング303と、前方湾曲レンズ301と後方湾曲レンズ302との間の空洞内に収容される生理食塩水溶液306との間の分離を維持するための境界区域を作り出す。したがって、いくつかの実施形態は、正に帯電した導体303と負に帯電した生理食塩水溶液306とが接触するのを防止するために、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方の1つ以上の区域でパターン化され、かつそこに位置付けられる絶縁体コーティング305を含み、導体303と生理食塩水溶液306との接触は、短絡をもたらす。実施形態は、正に帯電した生理食塩水溶液306及び負に帯電した導体303を含むことができる。
【0041】
更に他の実施形態は、レンズ300の操作に関連する回路のリセット機能として、導体303と生理食塩水溶液306との間の短絡を可能にしてよい。例えば、短絡状態は、レンズに印加される電位を均一にし、生理食塩水溶液306及び油307をデフォルト位置に回復させる。
【0042】
一部の好ましい実施形態は、空洞311の内側上の区域309〜空洞311の外側の区域310に延在する導体303を含む。他の実施形態は、例えば防水導電性エポキシ等の導電材料313で充填され得る、前方湾曲レンズ又は後方湾曲レンズを通るチャネル312を含むことができる。導電材料313は、空洞の外側に電気端子を形成する、又はそれに接続され得る。電位は、端子に印加され、チャネル312内の導電材料313を介してコーティングに伝導され得る。
【0043】
絶縁体コーティング305の厚さは、レンズ性能のパラメータとして変化し得る。本発明によると、生理食塩水溶液306及び導体303を含む帯電した成分は、一般に、絶縁体コーティング305のいずれかの側に維持される。本発明は、絶縁体コーティング305の厚さと、生理食塩水溶液306と導体303との間の電場との間に間接的関係を提供し、生理食塩水溶液306及び導体303がより遠く離れて維持されるほど、電場は弱くなる。
【0044】
一般に、本発明は、絶縁体コーティング305の厚さが増すと、電場の強さが劇的に低下することを提供する。場がより近ければ、一般に円形状液体メニスカス境界線308を移動するためのエネルギーがより利用可能になる。生理食塩水溶液306と導体303との間の距離が増すと、生理食塩水溶液306と導体コーティング303の静電荷がより遠くに離れ、したがって、円形状液体メニスカス境界線308を移動させることがより困難になる。その反対に、絶縁体コーティング305が薄くなると、レンズが絶縁体コーティング305の欠点の影響をより受けやすくなる。一般に、絶縁体コーティング305の比較的小さい穴であっても短絡がもたらされ、レンズは、電気湿潤式では機能しない。
【0045】
いくつかの実施形態では、同様にレンズ300内に収容される油307の密度と一般に同じ密度で生理食塩水溶液306を含むことが望ましい。例えば、生理食塩水溶液306は、好ましくは、油307の密度の10%以内である密度を含み、より好ましくは、生理食塩水溶液306は、油の密度の5%以内の密度、最も好ましくは約1%以下の密度を含む。いくつかの実施形態では、生理食塩水溶液306内の塩又は他の成分の濃度は、生理食塩水溶液306の密度を調節するように調節され得る。
【0046】
本発明によると、弓形液体メニスカスレンズ300は、前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302に関して油307の移動を制限することにより、より安定した光学品質を提供する。弓形前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302のうちの1つ又は両方に関して油307の移動の安定性を維持する1つの方法は、油307と生理食塩水溶液306の相対的に一致する密度を維持することである。加えて、前方湾曲レンズ301と後方湾曲レンズ302の両方の内面の湾曲設計により、生理食塩水溶液306の層の相対的な深度又は厚さは、従来の円柱レンズ設計と比較して減少する。このシナリオでは、空洞内の液体に作用する界面張力は、摂動を受けない液体メニスカス境界線308の維持に対する貢献が比較的大きい。その結果、このような場合においては、密度一致要件がより緩和されてよい。いくつかの実施形態では、液体層の相対厚は、液体レンズ境界線308を更に支持する。
【0047】
一部の好ましい実施形態では、生理食塩水溶液306は、比較的高い屈折率を提供する油307と比較して、低い屈折率を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態では、油307と比較して高い屈折率を有する生理食塩水溶液306を含むことが可能であるが、そのような場合、油307は、比較的低い屈折率を提供する。
【0048】
前方湾曲レンズ301及び後方湾曲レンズ302を相互に隣接した位置に固定するために接着剤314が使用されてよく、それによって、油307及び生理食塩水溶液306をそれらの間に保持する。接着剤314は、湾曲した液体メニスカスレンズ300からの生理食塩水溶液306又は油307の漏れがないように、シールとしての機能を果たす。
【0049】
ここで図4を参照すると、生理食塩水溶液406と油407との間の液体メニスカス境界線401を備える湾曲した液体メニスカスレンズ400が図示される。一部の好ましい実施形態によると、メニスカス壁405は、402と403との間に延在する弓形壁の第1の角度破断によって前方湾曲レンズ404に画定される。液体メニスカス境界線401は、電位が1つ以上の導電性コーティング又は導電材料408に沿って印加及び除去されると、メニスカス壁405を上下に移動させる。
【0050】
一部の好ましい実施形態では、導電性コーティング408は、生理食塩水溶液406及び油407を保有する空洞409の内側の区域から、生理食塩水溶液406及び油407を収容する空洞409の外側の区域に延在する。そのような実施形態では、導電性コーティング408は、空洞409の外側の点において導電性コーティング408に印加された電位の、空洞409内の導電性コーティング408の区域への管路であり、生理食塩水溶液406と接触してもよい。
【0051】
ここで図5を参照すると、前方湾曲レンズ501及び後方湾曲レンズ502を有する弓形液体メニスカスレンズ500の端部分の断面図が示される。弓形液体メニスカスレンズ500は、生理食塩水溶液503及び油504を収容し得る。弓形液体メニスカスレンズ500の幾何学構造並びに生理食塩水溶液503及び油504の特性は、生理食塩水溶液503と油504との間の液体メニスカス境界線505の形成を容易にする。
【0052】
一般に、液体メニスカスレンズは、前方湾曲レンズ501及び後方湾曲レンズ502上に存在する、又はそれらを通る導電性コーティング、絶縁体コーティング、経路、及び材料のうちの1つ以上を有するコンデンサとして見ることができる。本発明によると、液体メニスカス境界線505の形状、したがって、液体メニスカス境界線505と前方湾曲レンズ501との間の接触角は、前方湾曲レンズ501及び後方湾曲レンズ502のうちの1つ又は両方の少なくとも一部分の表面に印加される電位に応じて変化する。
【0053】
本発明によると、導電性コーティング又は材料によって生理食塩水溶液503に印加される電位の変化は、メニスカス壁506に沿って液体メニスカス境界線505の位置を変更する。移動は、第1の角張った部分506−1と第2の角張った部分506−2との間で生じる。
【0054】
好ましい実施形態では、液体メニスカス境界線505は、第1の規模の電位がレンズに印加されるとき、例えば、電圧及び電流が非屈折状態、つまり静止状態と相関するとき等、第1の角張った部分506−1にある、又はその付近にある。
【0055】
第1の屈折状態とも呼ばれることのある第2の規模の電位の印加は、一般に第2の角張った部分506−2の方向へのメニスカス壁506に沿った液体メニスカス境界線505の移動と相関し、液体メニスカス境界線の形状を変化させることができる。
【0056】
第1の屈折状態と第2の屈折状態との間を遷移させるための印加電圧には、例えば、約5ボルト〜約60ボルトの直流電圧が挙げられてよい。他の実施形態では、交流電圧も使用することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、メニスカス壁506は、絶縁体コーティングの厚さに関して平滑な表面である。平滑なメニスカス壁506の表面は、絶縁体コーティングの欠点を最小にすることができる。加えて、表面の構造の無作為な不規則性は、不均等な液体運動をもたらし、したがって、レンズを通電にしたとき、又は非通電にしたときに、不均等な、又は予測不可能なメニスカス運動を生じる場合があるため、平滑なメニスカス壁506が好ましい。一部の好ましい実施形態では、平滑なメニスカス壁は、メニスカス壁506に沿って約1.25ナノメートル〜5.00ナノメートルの範囲の山谷測定値を含む。
【0058】
別の態様において、いくつかの実施形態では、メニスカス壁506が疎水性であることが望ましく、この場合、ナノ構造表面等の定義された構造は、弓形液体メニスカスレンズの設計に組み込まれ得る。
【0059】
更に別の態様において、いくつかの実施形態では、メニスカス壁506は、レンズの光学軸に対して角度をなしてよい。角度は、0°(又は光学軸に平行)〜90°又はそれ付近(光学軸に対して垂直)の範囲であることができる。図示されるように、一部の好ましい実施形態では、メニスカス壁506の角度は、弓形液体メニスカスレンズが液体メニスカス境界線505と絶縁体被覆されたメニスカス壁506との間の所与の電流接触角で機能するために、一般に、約30°〜50°である。異なる材料を使用することにより、又は望遠視覚等の異なる光対物レンズにより、メニスカス壁506の角度は、0°又は90°に近くてよい。
【0060】
本発明によると、メニスカス壁506の角度は、特定の電圧の印加時に、メニスカス壁506に沿った移動の規模に適応するように設計され得る。いくつかの実施形態では、メニスカス壁506の角度が増加すると、レンズの屈折を変更する能力は、一般に、所与のレンズの大きさ及び電圧パラメータ内で減少する。加えて、メニスカス壁506が光学軸に対して0°である、又はそれ付近である場合、液体メニスカス境界線505は、前方光学部品上にほぼ直線に導かれる。メニスカス壁の角度は、レンズ性能に様々な成果を提供するように調整され得るいくつかのパラメータのうちの1つである。
【0061】
一部の好ましい実施形態では、メニスカス壁506は、長さが約0.265mmである。しかしながら、全体的なレンズの大きさとともに、メニスカス壁506の角度は、様々な設計でメニスカス壁506の長さに自然と影響を及ぼす。
【0062】
一般に、油504が後方湾曲レンズ502に接触する場合、弓形液体メニスカスレンズ500は機能しないと考えられ得る。したがって、好ましい実施形態では、メニスカス壁506は、その最も近い点で、第1の角張った部分506−1と後方湾曲レンズ502との間に50マイクロメートルの最小隙間を持たせるように設計される。他の実施形態では、隙間が減少すると、レンズが機能しないリスクは増加するが、最小隙間は、50マイクロメートル未満であり得る。更に他の実施形態では、隙間は、レンズが機能しないリスクを軽減するように増加され得るが、望ましくない可能性がある全体的なレンズの厚さも増加する。
【0063】
本発明の一部の好ましい実施形態の更に別の態様では、メニスカス壁506に沿って移動するとき、液体メニスカス境界線505の挙動は、ヤングの式を使用して推定され得る。ヤングの式は、乾燥表面上への水分の滴下により生じる力の平衡を定義し、完全に平坦な表面を仮定するが、基本的な性質が、弓形液体メニスカスレンズ500内に作り出される電気湿潤レンズ環境に適用され得る。
【0064】
第1の規模の電気エネルギーは、例えばレンズが非屈折状態になるとき等、レンズに印加されてよい。第1の規模の電気エネルギーの印加中は、油504と生理食塩水溶液503との間で界面エネルギーの平衡が達成される。このような状態は、本明細書において液体メニスカス境界線505と呼ばれることがある。油504とメニスカス壁506、及び生理食塩水溶液503とメニスカス壁506は、液体メニスカス境界線505とメニスカス壁506との間に平衡接触角を形成する。電圧の規模の変化が弓形液体メニスカスレンズ500に適用されるとき、界面エネルギーの平衡が変化し、液体メニスカス境界線505とメニスカス壁506との間の接触角の対応する変化が得られる。
【0065】
絶縁体被覆されたメニスカス壁506を有する液体メニスカス境界線505の接触角は、液体メニスカス境界線505の移動におけるヤングの式でのその役割だけでなく、接触角が、メニスカスの移動を制限するために弓形液体メニスカスレンズ500の他の特色と組み合わせて使用されるため、弓形液体メニスカスレンズ500の設計及び機能において重要な要素である。
【0066】
液体メニスカス接触角において、角張った部分のうちの1つを越えて液体メニスカス境界線505を移動させる十分に大きい変化をもたらすには、印加電位の顕著な変化を必要とするため、角張った部分506−1及び506−2等の、メニスカス壁506の両端での不連続性は、液体メニスカス505の移動において境界線として機能する。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、メニスカス壁506を有する液体メニスカス境界線505の接触角は、15°〜40°の範囲であり、一方、第2の角張った部分506−2を超えるステップ507を有する液体メニスカス境界線505の接触角は、おそらく、90°〜130°の範囲であり、一部の好ましい実施形態では、約110°である。
【0067】
レンズには電圧を印加してよく、その結果、液体メニスカス境界線505を、メニスカス壁506に沿って第2の角張った部分506−2方向に移動させる。液体メニスカス境界線505と絶縁体被覆されたメニスカス壁506との自然接触角は、顕著により大きい電圧が供給されない限り、液体メニスカス境界線505を第2の角張った部分506−2にとどまらせる。
【0068】
メニスカス壁506の一端で、第1の角張った部分506−1は、一般に、液体メニスカス境界線505が典型的に超えて移動しない限度を1つ画定する。いくつかの実施形態では、第1の角張った部分506−1は、鋭い縁として構築される。他の好ましい実施形態では、第1の角張った部分506−1は、欠点の可能性があまりないように作製され得る画定された小さい半径方向の面を有する。導電性、絶縁体、及び他の可能な所望のコーティングは、鋭い縁上に均一かつ予測可能に堆積されない場合があり、一方、画定された半径方向の面の半径方向の縁は、より確実に被覆され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1の角張った部分506−1は、約10マイクロメートルの画定された半径を有する約90°の角度で構築される。この角張った部分はまた、90°未満の角度で作製されてもよい。いくつかの実施形態では、90°より大きい角度の角張った部分は、角張った部分の頑丈さを増加するために使用され得るが、設計は、より大きいレンズ空間を取る。
【0070】
様々な実施形態では、角張った部分506−1及び/又は506−2の画定された半径は、5マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲であり得る。より大きい画定された半径は、コーティングの確実度を向上するが、レンズ設計の厳密な制約内でより大きい空間を使用するという代償を払って使用され得る。これにおいて、他の多くのレンズ設計の区域のように、構成の容易さ、レンズ機能の最適化、及び大きさの最小化の間で、トレードオフが存在する。機能的で、確実な弓形液体メニスカスレンズ500は、広範な変動要素を使用して作製され得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、より大きい角張った部分半径は、2つの隣接する角張った部分間の側壁の改善された表面仕上げと共に使用され得る。いくつかの実施形態では、第1の半径(角張った部分)から第2の半径(角張った部分)までの表面が平滑であり、不連続部分が存在しないことが望ましく、同一のツールで角張った部分を成形するために用いられる成形型を切込むのに役立つ。角張った部分に含まれる半径は、成形ツールの表面への切込みであってよく、成形ツール表面の半径は、角張った部分半径よりも大きい。成形ツール表面が1つ以上の角張った部分及び側壁を含む連続表面の場合、より大きいツール半径は、一般に、対応する切込みのより平滑な表面仕上げに関連する。
【0072】
第2の角張った部分506−2は、電圧が弓形液体メニスカスレンズ500に印加されるとき、油の移動を制限するように設計された特色を含む。第2の角張った部分506−2はまた、いくつかの実施形態では、一般に尖った端部を含むこともできるか、あるいは他の実施形態では、第2の角張った部分506−2は、5〜25マイクロメートル、最も好ましくは10マイクロメートルの画定された半径を含むことができる。10マイクロメートルの半径は、角張った部分として良好に機能し、単刃ダイヤモンド旋削旋盤又は射出成形プロセスを使用して作製され得る。
【0073】
前方湾曲レンズ501の光学区域508の開始部分まで延在する、垂直又はほぼ垂直のステップ507は、メニスカス壁506に対向する第2の角張った部分506−2の側に含まれてよい。いくつかの実施形態では、ステップ507は120マイクロメートルの高さであるが、50〜200マイクロメートルの範囲であってよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、ステップ507は、光学軸から約5°の角度をなしてよい。他の実施形態では、ステップ507の角度は、1°若しくは2°程であるか、又は5°を超える角度であってもよい。メニスカス壁506からステップ507上に移動するには、液体メニスカス境界線505の接触角のより大きな変化を必要とするため、光学軸からより小さい角度をなすステップ507は、一般に、メニスカス移動のより効果的なリミッタとして機能する。ステップ507から光学区域508の開始部分への遷移は、25マイクロメートルの半径である。より大きい半径は、レンズ設計内の空間を不必要により多く消費する。より小さい半径が可能であり、空間の増加が必要ならば、行われ得る。この区域並びにレンズの他の区域に理論的角張った部分よりも画定された半径を使用するという決定は、一部、レンズ要素の射出成形プロセスへの潜在的な移行に基づく。ステップ507と光学区域508の開始部分との間の湾曲は、射出成形プロセス中の塑性流を向上させ、最適な強度及び応力対処特性を備えたレンズをもたらす。
【0075】
ここで図6を参照すると、弓形液体メニスカスレンズの非円形状メニスカス壁601成分の上面断面図が示される。図6では、非円形状メニスカス壁601の形状は、強調するために拡大されている。実際の縮尺を用いて描かれた場合、図6はごくわずかに非円形状形状であるメニスカス壁を示すため、肉眼には円形状に見えるであろう。多くの好ましい実施形態では、非円形状メニスカス壁は、楕円形形状で作製される。したがって、円環形状レンズは、若干楕円形の液体メニスカスで作製されてよい。
【0076】
好ましい実施形態は、円形状の弓形液体メニスカスレンズアセンブリ内に非円形状メニスカス壁601を含む。他の実施形態は、非円形状の弓形液体メニスカスレンズアセンブリ内に非円形状メニスカス壁601を含む。
【0077】
ここで図7を参照すると、弓形液体メニスカスレンズ内の非円形状メニスカス壁701の上面直交図が、第1の角張った部分702と、第2の角張った部分703と、光学区域704とを含んだ状態で描かれている。図7においてもまた、図6と同様に、楕円の規模が拡大されている。液体メニスカスは、線705において非円形状メニスカス壁701と接触する。この描写では、液体メニスカス接触線705は、屈折状態であり、第2の角張った部分703の方に近い。非屈折状態では、液体メニスカス接触線705は、第1の角張った部分702にあるか、この角張った部分の方に近い。
【0078】
構造が楕円形であるメニスカス壁を使用すると、第1の弓形形状光学部品と第2の弓形形状光学部品との間の空洞を非円形状にすることができ、結果として生じる油及び生理食塩水溶液がトーラスセグメントの形状となる。結果として生じるレンズは、乱視を矯正できる円筒屈折力、軸、及び屈折力を含む。特定の円筒屈折力は、メニスカス壁の楕円形の規模を変化させることによって達成される。軸は、弓形液体メニスカスレンズアセンブリ内で楕円形が位置合わせされる回転度によって制御される。第1の電圧を印加すると、液体メニスカスが第1の状態へと移動し、非円形状メニスカス壁を備える弓形液体メニスカスレンズ内で、乱視の矯正に加えて遠見用の特定の屈折力を達成することができる。第2の、より高い電圧レベルを印加すると液体メニスカスを更に移動させることができ、近見用の屈折力矯正がもたらされる。あるいは、弓形液体メニスカスレンズを封入するレンズ内で、遠見用の屈折力矯正を生じさせることができる。それに対して、乱視及び近見は、非円形状メニスカス壁を備える弓形液体メニスカスレンズ内で矯正される。
【0079】
円形状メニスカス壁を備える液体メニスカスレンズは、乱視矯正用に眼の上でレンズを適切な位置に保持するための様々なレンズ安定化方法を含む。安定化は、バラスティング又はより高度なASD(アクセラレイテッドスタビライゼーションデザイン)等の技術を用いて達成される。安定化技術は、弓形液体メニスカスレンズ内又は弓形液体メニスカスレンズを封入するレンズ内で実施される。
【0080】
本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われ、その要素が同等のものと置き換えられることがあり得ることは、当業者によって理解されるであろう。更に、発明の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対し、特定の状況又は材料を適合するように、多くの修正が行われ得る。
【0081】
したがって、本発明は、本発明を実施するうえで考えられる最良の態様として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、付属の請求項の範囲及び趣旨に包含されるすべての実施形態を含むものである。
【0082】
〔実施の態様〕
(1) 光学レンズであって、
前方レンズ外面と、前方レンズ内面とを備える前方レンズと、
後方レンズ内面と、後方レンズ外面とを備え、前記前方レンズ内面及び前記後方レンズ内面がそれらの間に空洞を形成するように、前記前方レンズに隣接して配置される、後方レンズと、
前記前方レンズ内面と前記後方レンズ内面との間に形成される前記空洞内に収容されるある体積の生理食塩水溶液及び油であって、それらの間にメニスカスを構成する、ある体積の生理食塩水溶液及び油と、
断面が非円形状である、一般に円錐台の形状を備えるメニスカス壁と、を備える、光学レンズ。
(2) 前記前方レンズ及び前記後方レンズの少なくとも1つが、本質的に平坦である、実施態様1に記載の光学レンズ。
(3) 前記前方レンズ及び前記後方レンズが、弓形レンズを備える、実施態様1に記載の光学レンズ。
(4) 前記メニスカス壁の少なくとも一部分上に導電性コーティングを更に備える、実施態様3に記載の光学レンズ。
(5) 前記油の体積が、前記空洞内に収容される前記生理食塩水溶液の体積未満である、実施態様4に記載の光学レンズ。
【0083】
(6) 前記油の体積が、生理食塩水溶液の量と比較して、約66体積%以上を構成する、実施態様5に記載の光学レンズ。
(7) 前記油の体積が、生理食塩水溶液の量と比較して、約90体積%以下を構成する、実施態様5に記載の光学レンズ。
(8) 前記ある体積の油が、前記生理食塩水溶液の密度とほぼ等しい密度を有する、実施態様4に記載の光学レンズ。
(9) 前記ある体積の油が、前記生理食塩水溶液の密度の約10%以内の密度を有する、実施態様4に記載の光学レンズ。
(10) 前記ある体積の油が、前記生理食塩水溶液の密度の約5%以内の密度を有する、実施態様4に記載の光学レンズ。
【0084】
(11) 前記導電性コーティングが、前記空洞の内側の区域から前記空洞の外側の区域に延在する、実施態様4に記載の光学レンズ。
(12) 前記空洞の外側の前記導電性コーティングの区域が、液体メニスカスレンズに電位を供給するための電気端子を形成する、実施態様11に記載の光学レンズ。
(13) 前記生理食塩水溶液及び前記油がメニスカスを形成し、電位を前記空洞の外側の前記導電性コーティングの区域に印加することにより、前記メニスカス壁に沿った前記メニスカスの接触位置に変化をもたらす、実施態様11に記載の光学レンズ。
(14) 前記電位が直流を構成する、実施態様11に記載の光学レンズ。
(15) 前記電位が、約5.0ボルト〜60.0ボルトを含む、実施態様11に記載の光学レンズ。
【0085】
(16) 前記電位が、約20.0ボルトを含む、実施態様15に記載の光学レンズ。
(17) 前記電位が、約5.0ボルトを含む、実施態様15に記載の光学レンズ。
(18) 前記電位が、約3.5ボルト〜約7.5ボルトを含む、実施態様11に記載の光学レンズ。
(19) 前記前方湾曲レンズ外面が、約0以外の屈折力を有する、実施態様5に記載の光学レンズ。
(20) 前記前方湾曲レンズ内面が、約0以外の屈折力を有する、実施態様5に記載の光学レンズ。
【0086】
(21) 前記後方湾曲レンズ外面が、約0以外の屈折力を有する、実施態様5に記載の光学レンズ。
(22) 前記後方湾曲レンズ内面が、約0以外の屈折力を有する、実施態様5に記載の光学レンズ。
(23) 前記前方湾曲レンズ及び前記後方湾曲レンズのうちの1つ又は両方を通るチャネルと、前記チャネルを充填する導電材料とを更に備える、実施態様5に記載の光学レンズ。
(24) 前記チャネルを充填する前記導電材料と電気的に導通している端子を更に備える、実施態様23に記載の光学レンズ。
(25) 電位を前記端子に印加することにより、前記メニスカスの形状に変化をもたらす、実施態様24に記載の光学レンズ。
【0087】
(26) 前記前方湾曲レンズの前記内面の少なくとも一部分に沿って絶縁体コーティングを更に備え、前記絶縁体コーティングが、電気絶縁体を備える、実施態様5に記載の光学レンズ。
(27) 前記絶縁体が、パリレンC(Parylene C)(商標)及びテフロン(登録商標)AF(Teflon AF)のうちの1つを含む、実施態様26に記載の光学レンズ。
(28) 前記絶縁体が、前記導電性コーティングと、前記前方湾曲レンズと前記後方湾曲レンズとの間の前記空洞に収容される生理食塩水溶液との間の分離を維持するための境界区域を備える、実施態様26に記載の光学レンズ。
(29) 前記メニスカス壁を構成する前記円錐台の角度が、約30°〜50°を含む、実施態様5に記載の光学レンズ。
(30) 前記メニスカス壁に隣接するメニスカス角張った部分(meniscus sharp)を更に備え、前記角張った部分が、前記ある体積の生理食塩水溶液及び油を収容するための角度特色を備える、実施態様29に記載の光学レンズ。
【0088】
(31) 前記角張った部分が、半径方向の表面部分を備える、実施態様30に記載の光学レンズ。
(32) 前記半径方向の表面部分が、5マイクロメートル〜25マイクロメートルの範囲の半径を備える、実施態様31に記載の光学レンズ。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7