【実施例】
【0052】
実施例1:ハイドロゲル内でのインサイチューの孔形成
画像化および機械的特性試験を介して証明される、ハイドロゲル内のインサイチュー孔形成が、
図1に示される。
図1Aに示されるように、急速分解性ハイドロゲル(赤色の球)から構成されたミクロビーズを、第2のハイドロゲル形成性重合体材料と混合し、それをビーズの周りに架橋させた。インサイチューのミクロビーズの分解の後、完全なハイドロゲルネットワーク(桃色)が、孔のネットワークと共に残った。標準ハイドロゲル(左バー)または孔形成性ハイドロゲル(右バー)の弾性率測定を決定した(
図1D)。0日目には、孔が形成されていなかったため、孔形成性複合物と標準ハイドロゲルとの間に全体的な硬度の統計的有意差は存在しなかった;しかしながら、4日後、複合物の率は、孔形成のゆえに、実質的に下落する。
【0053】
本明細書に記載されたハイドロゲルの生成に関連した付加的な方法は、以下の通りである。Bouhadir et al.Polymer 1999;40:3575-84(参照により本明細書に組み入れられる)は、過ヨウ素酸ナトリウムによるアルギン酸の酸化を記載し、反応を特徴決定している。Bouhadir et al.Biotechnol.Prog.2001;17:945-50(参照により本明細書に組み入れられる)は、アルギン酸ジアルデヒド(アルギン酸ジアルデヒドは、アルギン酸内の糖のあるパーセント(例えば、5%)がアルデヒドを形成するよう酸化されている高M
Wアルギン酸である)を形成するための高分子量アルギン酸の酸化、およびハイドロゲルを急速に分解させるための適用を記載している。Kong et al.Polymer 2002;43:6239-46(参照により本明細書に組み入れられる)は、グルロン酸(GA)含量を実質的に低下させることなく、グルロン酸(GA)リッチアルギン酸の重量平均分子量(M
W)を低下させるための、ガンマ照射の使用を記載している(例えば、ガンマ照射は、アルギン酸のマンヌロン酸、MAブロックを選択的に攻撃する)。アルギン酸は、GAブロックおよびMAブロックから構成され、アルギン酸にその硬度(弾性率)を与えるのはGAブロックである。Kong et al.Polymer 2002;43:6239-46(参照により本明細書に組み入れられる)は、高M
W GAリッチアルギン酸と、照射された低M
W高GAアルギン酸との二成分組み合わせが、カルシウムにより架橋されて硬いハイドロゲルを形成するが、同一の全体重量濃度の高M
W GAリッチアルギン酸のみから作成されたハイドロゲルより、急速に分解し、低い溶液粘性も有することを示している。Alsberg et al.J Dent Res 2003;82(11):903-8(参照により本明細書に組み入れられる)は、照射された低M
W GAリッチアルギン酸から作成されたハイドロゲルの分解プロファイルを、骨組織工学への適用と共に記載している。Kong et al.Adv.Mater 2004;16(21):1917-21(参照により本明細書に組み入れられる)は、ガンマ照射手法を酸化反応と組み合わせることによる、ハイドロゲル分解プロファイルの制御、および軟骨工学への適用を記載している。
【0054】
水素バイオマテリアルの分解を制御するための技術は、当技術分野において周知である。例えば、Lutolf MP et al.Nat Biotechnol.2003;21:513-8(参照により本明細書に組み入れられる)は、哺乳動物酵素(MMP)を介して分解するよう操作された、ポリ(エチレングリコール)に基づく材料を記載している。Bryant SJ et al.Biomaterials 2007;28(19):2978-86(US 7,192,693 B2;参照により本明細書に組み入れられる)は、マクロスケールの孔を有するハイドロゲルを作製するための方法を記載している。孔鋳型(例えば、ポリ-メタクリル酸メチルビーズ)をバルクハイドロゲル内に封入し、次いで、バルクハイドロゲルを完全なまま残して、ポロゲンを抽出するため、アセトンおよびメタノールを使用する。Silva et al.Proc.Natl.Acad.Sci USA 2008;105(38):14347-52(参照により本明細書に組み入れられる;US 2008/0044900)は、アルギン酸スポンジからの内皮前駆細胞の配備を記載している。スポンジは、アルギン酸ハイドロゲルを形成し、次いで、それを凍結乾燥することにより作成される(氷晶が孔を形成する)。これらの材料は、(単独で送達された細胞と比較して)細胞の治療効果を改善するが、これらの材料は、外科的に植え込まれなければならず(即ち、注射不可能であり)、細胞封入を適用できず(細胞は凍結乾燥時に死滅するであろう)、この方法は、弾性率を制御することにより細胞の運命を制御することを困難にする。Ali et al.Nat Mater 2009(参照により本明細書に組み入れられる)は、樹状細胞を動員し、抗腫瘍応答を誘発するようプログラムするための、多孔性足場の使用を記載している。Huebsch et al.Nat Mater 2010;9:518-26(参照により本明細書に組み入れられる)は、封入された間葉系幹細胞の分化を制御するための、ハイドロゲルの弾性率の使用を記載している。
【0055】
(1)注射可能であり;(2)使用者が不溶性の合図を使用して細胞の運命を制御することを可能にし;かつ(3)細胞を配備するかまたは動員するための孔を時間経過とともに形成する、材料を生成するための、ハイドロゲルの接着リガンド提示および/または弾性率(即ち、堅さ)などの不溶性の合図の使用が、本明細書に記載される。具体的には、本明細書に記載された方法は、孔形成相(以後「ポロゲン」と呼ぶ)または非分解性もしくは緩徐分解性の相(以後「バルク」と呼ぶ)のいずれかへ細胞が封入されることを可能にする過程を使用して、孔形成性ハイドロゲルを作出する。本明細書に記載された方法において、ポロゲンは、溶媒ではなく加水分解により分解する。このことは、細胞がポロゲンまたはその周りのバルクゲルのいずれかへ封入され、ゲルへ封入されたタンパク質またはその他の生理活性化合物が変性する確率は極めて低いことを意味する。
【0056】
以下に詳細に記載されるように、ポロゲンは、封入の間には完全性を保つが、急速に分解して、走査型電子顕微鏡検により可視である空隙を生じ、複合材料の弾性率および破壊靱性の損失をもたらした。具体的には、走査型電子顕微鏡写真(SEM)は、形成直後(0日目)の孔形成性ハイドロゲルは、ほぼ完全なネットワークを保有しているが;製作の10日後までに、有意な孔形成が観察されることを示した(
図1E)。複合材料(50%ポロゲン体積分率)の弾性率は、標準ハイドロゲル(ポロゲンなし)の弾性率と実質的に異なっていなかった;しかしながら、空隙が形成されるにつれ、複合物の率は実質的に下落する(
図1Fおよび
図1G)。1週間目の複合物の弾性率の減少は、空隙の密度に対応し、低いポロゲン密度では、空隙の密度と複合物の弾性率の減少との間に直線的な関係が存在する。複合材料(25%ポロゲン体積分率)の破壊靱性は、ポロゲンを含まない標準ハイドロゲルの破壊靱性に初期には類似していたが、初期値の数分の一にまで減少する(
図HおよびI)。弾性率と同様に、破壊靱性の減少は、非直線的ではあるが、ポロゲンの密度と相関する。これらの結果は、ポロゲンが、封入の間には完全性を保ち、インサイチューで分解して空隙を形成することを証明している。
【0057】
実施例2:インビトロおよびインビボの細胞の放出
分解性アルギン酸ポロゲンを、骨髄間質幹細胞(D1)と共に、高分子量バルクアルギン酸ゲルへ封入することにより、孔形成性ハイドロゲルを形成した。ポロゲンは、20mg/mLアルギン酸ジアルデヒド(高Mw高グルロン酸含量アルギン酸内のアルギン酸糖残基の7.5%の理論上の酸化)と、7.5mg/mL高Mw高グルロン酸(GA)含量アルギン酸との二成分混合物により形成された。この重合体混合物を、重合体を架橋するため、0.1M CaCl
2および0.1M HEPESの槽へ同軸窒素気流によりガラス噴霧器を通して押し出した。ポロゲンを、無血清細胞培養培地により徹底的に洗浄した。バルクハイドロゲルは、アルギン酸重合体1本当たり2個のRGDペプチドにより修飾された、20mg/mL高Mw高GA含量アルギン酸で形成された。D1細胞およびポロゲンを、注射器を使用して、バルクハイドロゲル材料へ混合し、次いで、複合物を硫酸カルシウムで架橋した。インビトロでの時間経過とともにこの系から放出されたD1細胞の数が、
図2に示される。(1)ポロゲンを形成するために使用されるCaCl
2の濃度を制御することにより、(2)ポロゲンの組成(酸化度)を変動させることにより、そして(3)細胞の区画化(ポロゲン内かバルクゲル内か)を変動させることにより、放出の動力学を修飾することができた。
【0058】
具体的には、インビトロの間葉系幹細胞配備が、
図2に例示される。幹細胞は、インビトロで孔形成性ハイドロゲルから放出され、この放出は、ポロゲンの組成の変動、および細胞をポロゲン内に区画化するかバルク内に区画化するか、によって調整され得た。細胞充実性および孔形成性ハイドロゲルからの流出に対するポロゲン密度(0〜80体積パーセント)の効果は、
図2Cに示される。具体的には、孔形成性ハイドロゲルの蛍光顕微鏡写真において、インビトロの4〜10日後、生存している間葉系幹細胞(MSC)(カルセイン-AM、緑色)または死細胞(エチジウムホモダイマー、赤色)について染色した。球状の細胞形態は、ナノ多孔性材料に限局している細胞を示し、短い時間枠では両方の材料に存在するが、より長い時間枠では標準ハイドロゲルにのみ存在する。ポロゲン体積密度の関数としての、12日後に放出されたMSCの累積数が、
図2Dに示される。
【0059】
図2Dに示されるように、ポロゲンのサイズは、複合材料全体のサイズに関係する。具体的には、材料の完全性を保つためには、ポロゲン直径は、複合物全体の最も小さな寸法の<10%である。ポロゲンの密度は、細胞動員および細胞放出の両方のため、全体積の10〜80パーセント、例えば、全体積の15%〜75%、20%〜70%、25%〜65%、30%〜60%、または35%〜55%である。好ましくは、ポロゲンの密度は、全体積の少なくとも50%である。
【0060】
相互接続された空隙の形成の動力学、およびそれに対応する間葉系幹細胞放出の動力学を決定するため、物理学的研究およびインビトロ研究を実施した(それぞれ、
図2Aおよび
図2E)。クローン由来の市販のマウス間葉系幹細胞株(D1)を、これらのインビトロの研究のために使用した。キャピラリーアッセイを、空隙の形成を査定するために使用した。簡単に説明すると、まず、緩衝液を飽和させた複合孔形成性ゲルを計量し、次いで、ペーパータオルでゲルの表面にそっと触れて水を吸い取った後、ゲルを再計量することにより、相互接続された空隙の密度を測定した。質量の相対変化に基づき、空隙分率を計算した。インビトロ細胞放出アッセイについては、孔形成性ハイドロゲルのバルク成分は、2 RGDペプチド/アルギン酸重合体により修飾されており、60kPaの弾性率を有していた。(浸透極限;80%を超える)極めて高い分率のポロゲンが存在しない限り、最初の7日間で相互接続された空隙が形成された。浸透ポロゲン密度未満では、実質的な相互接続された空隙の形成は観察されなかった。ポロゲンへ封入されたD1細胞について、ポロゲン製作条件の関数としての、孔形成性ハイドロゲルのポロゲン相からのMSC配備の動力学が、
図2Fに例示される。
【0061】
その後、マウスMSC株で、放出研究を実施した。全体孔密度、およびミクロンスケール限局の損失を反映する細胞形態の緩徐な変化に比例して、細胞放出が観察された。ハイドロゲル内の細胞充実性および細胞増殖に対する孔形成の効果を決定するための実験を実施した。カルセイン-AM染色を使用して、細胞充実性を定性的に決定し、Ki-67発現についての免疫染色により定性的に、または
3H-チミジン取り込みを測定することにより定量的に、増殖を決定した。孔形成性ハイドロゲルの全体に分布させたカルセイン-AM染色細胞の三次元再構築は、
図2Bに提示される。孔形成性ハイドロゲルにおいては、細胞形態の実質的な変化が、遊走し増殖する細胞の能力を示しているが、標準ハイドロゲルにおいては、細胞は低密度で、円形のままであった。Ki-67免疫蛍光は、孔形成性ハイドロゲルにおいて、標準ハイドロゲルと比較して、より高い細胞充実性、および増加した増殖を示した。
3H-チミジン取り込みの定量分析は、RGD依存的に増強された細胞増殖を示した(
図2G)。
【0062】
化学組成またはポロゲンを形成するために使用される架橋条件を変動させることにより、細胞放出の動力学がモジュレートされるか否かを決定するための研究を実施した(Bouhadir KH,Lee KY,Alsberg E,Damm KL,Anderson KW,Mooney DJ.Degradation of Partially Oxidized Alginate and Its Potential Application for Tissue Engineering.Biotechnol.Prog.2001;17:945-50)。
図2Hは、細胞放出動力学が、細胞をポロゲンへ区画化するか、その周囲のバルクゲルへ区画化するかにより制御されたこと、およびより低い濃度のカルシウムで架橋されたポロゲンが、より緩徐に分解し、より遅い時点で細胞を放出したことを示している。ポロゲンを製作するために使用されるカルシウムの濃度が低いほど、架橋はより均質になった。
【0063】
一定のバルク成分(2 RGD/重合体、60kPa)および一定のポロゲン密度(50%)で、ポロゲン組成を変動させて、孔形成性ハイドロゲルを形成した。アルギン酸重合体の理論上の酸化度を変動させることにより、ポロゲンの化学組成を操作した。酸化反応中の過ヨウ素酸ナトリウムとアルギン酸との比率を変動させることにより、酸化度を制御した(Bouhadir 2001)。20mg/mL酸化型アルギン酸と、5mg/mL未修飾高M
Wアルギン酸との二成分混合物を、ポロゲンを形成するために使用した。25〜100mM CaCl
2の槽において架橋することにより、ポロゲンを形成した。細胞放出に対するアルギン酸酸化度の効果が、
図2Hに示される。ポロゲンを架橋するためのカルシウムのレベルが一定(100mM)の時、3%から7.5%へ酸化度を増加させると、放出される細胞の総数が実質的に増加し、酸化度を低下させると、細胞放出がわずかに遅延した。ポロゲンの酸化度が一定(7.5%)の時、ポロゲンを架橋するために使用されるカルシウムの濃度を25mMから100mMへ増加させると、放出される細胞の総数が低下し、細胞放出の開始がわずかに遅延した。
【0064】
実施例3:インビボの間葉系幹細胞の配備、生着、および増殖の制御
最後に、インビボのMSCの放出動力学を操作するために、孔形成性ハイドロゲルを使用し得るか否かを決定するためのインビボ研究を実施した。そのため、mCherryを発現するマウスMSCを、ヌードマウスへ皮下移植した。細胞の生着、増殖、および配備を、非侵襲性の蛍光画像化により観察した。これは、孔形成性ゲルが、生理食塩水で送達された細胞と比較して、生着を遅延させることのみならず、これらの材料が、最終的により大きな増殖をもたらすことを示した。ハイドロゲルは、孔が形成された後、増殖に適した微小環境を提供する。最後に、これらの材料が、インビボのMSCの放出および拡張を促進するのに有用であったため、ヒトMSCを、ヌードラットの頭蓋欠損を再生するために投与した。これは、初期の時点ですら、石灰化された骨の再生の改善をもたらした。
【0065】
具体的には、インビボ研究のため、D1細胞を、検出可能マーカー、例えば、mCherryまたは緑色蛍光タンパク質(GFP)を構成的に発現するよう修飾し、ポロゲンを含まない標準バルクゲル、孔形成性ハイドロゲルのいずれかへ封入するか、または生理食塩水と混合した。次に、細胞を18ゲージ針を通してヌードマウスの背部に注射した。IVIS系(Caliper Life Sciences)上で観察されたmCherry蛍光を介して、時間経過による細胞の放出および増殖をモニタリングした。これらのデータは、孔形成性ハイドロゲルからの細胞の放出および増殖が、標準ゲルより有意に多いことを明らかにした(
図3)。さらに、単純な生理食塩水注射により送達された場合にも、細胞は増殖したが、孔形成性ハイドロゲルからの配備は、(1)局所的な細胞の送達および増殖の動力学を改変し、(2)実質的により多数の細胞を最終的に送達した(
図3)。
【0066】
具体的には、ポロゲンの組成を変動させることにより、インビボの細胞放出の動力学を操作する能力を決定するための実験を実施した。
図3に示されるように、ヌードマウスの皮下空間においてインビボで孔形成性ハイドロゲルから幹細胞を放出させた。標準ハイドロゲル(左)、100mMもしくは50mM CaCl
2によりポロゲンが架橋された孔形成性ハイドロゲル(中央)、または生理食塩水(右)での注射の7日後または30日後に、2×10
6個のmCherry発現MSCを、ヌードマウスへ配備した。ハイドロゲルのバルク成分は、2 RGD/重合体鎖で修飾されていた。初期には、生理食塩水のみの条件においてより多くの細胞が生着したが、後の時点では、この条件ではより少ない細胞が生着し、孔形成性ハイドロゲルから放出された時、実質的に多い細胞が最終的に生着した。孔形成性ハイドロゲル、標準ハイドロゲル、または生理食塩水で注射されたmCherry-MSCの(細胞密度に比例する)相対放射効率の定量化が、
図3Bに示される。ポロゲンを架橋するために使用されるカルシウムの密度を減少させると、放出される細胞の全密度が実質的に減少し、配備の動力学がわずかに遅延した(
図3C;エラーバーはSEM、n=4〜6である)。ヒト間葉系幹細胞により媒介される骨再生を増強する、孔形成性ハイドロゲルの能力を、ヌードラット頭蓋欠損モデルにおいて証明した(
図3D)。臨界サイズの欠損を、ヌードラット(Charles River)の頭蓋において形成した。欠損形成直後に、市販のヒト間葉系幹細胞(Lonza)を、生理食塩水(「細胞のみ」)、標準ハイドロゲル(2 RGD/アルギン酸重合体、60kPa)、または孔形成性ハイドロゲルのいずれかで、欠損空間へ移植した。
図3Dの上列は、埋め込みの4週間後の頭蓋欠損部における新たな骨形成のマイクロコンピュータによる断層撮影分析の代表的な横断面を示す。孔形成性ハイドロゲルを介して細胞が送達された欠損部において、実質的に多くの新たな骨が形成された。埋め込み後12週間目の新たに形成された骨へのドキシサイクリン取り込み(緑色)は、孔形成性ハイドロゲルが、皮下組織の偽陽性染色ではなく、組織内の陽性ドキシサイクリン染色をもたらすことを証明している。
【0067】
実施例4:2種の異なる細胞集団の別個の時点におけるインビトロ放出
孔形成性ハイドロゲルを、実施例1および2に記載されたようにして形成した。等しい数(複合孔形成性ハイドロゲル1mL当たりおよそ106細胞)のGFP発現筋芽細胞および成長内皮細胞(OEC、血管前駆細胞)を、この材料の別々のコンパートメントへ封入した。5日間のインビトロ培養の後、放出された細胞および組織培養プラスチックへ接着した細胞を、エチジウムホモダイマー(EtD-1;赤色)により染色した。
図4に示されるように、バルクゲルへ封入された細胞型は、より急速に配備された。配備のこのパターンは、GFP-筋芽細胞より緩徐に遊走し、GFP-筋芽細胞ほど広範に増殖しないOECですら起こった(等しい数の両方の細胞型が添加された基質の分析に基づく;
図4d)。
【0068】
具体的には、異なる時点で別個の集団を放出するための孔形成性ハイドロゲルの使用は、
図4に示される。孔形成性ハイドロゲルにおける4日間の培養の後の、組織培養プラスチックへ接着したGFP発現筋芽細胞および成長内皮細胞(OEC)の蛍光顕微鏡写真が、
図4A〜4Cに示される。ここで、ポロゲンを形成するために使用される化学を変化させ、異なる細胞型を別個のコンパートメントに初めに置いた。
図4Aは、バルク成分への筋芽細胞、ポロゲン成分へのOECを示し、
図4Bは、ビーズ成分への筋芽細胞、ポロゲン成分へのOECを示している。
図4Cは、バルク成分への筋芽細胞およびOECの両方を示している。等しい数のGFP-筋芽細胞およびOECをプラスチック基質へ播種した(
図4D)。筋芽細胞はOECよりも増殖した。細胞をエチジウムホモダイマー(赤色)で染色したため、GFP-筋芽細胞は黄色に見え、OECは赤色に見える。
【0069】
実施例5:異なるポロゲン製剤を含む孔形成性ハイドロゲルによる皮下組織からの宿主リンパ球の動員
孔形成性ハイドロゲルを、実施例1および2に記載されるようにして形成した。ポロゲン相を形成するため、7.5mg/mLの高Mw GAリッチアルギン酸重合体を、20mg/mLのアルギン酸ジアルデヒド(7.5%の理論上の酸化度)、またはアルデヒド基がアルコール基に還元されたアルギン酸ジアルデヒドのいずれかと組み合わせた。細胞が封入されていない孔形成性ハイドロゲルを、次に、C57/BL6マウスまたはBalb/cマウスの背部に注射した。14日後、宿主樹状細胞の動員を組織学的検査により観察した。
【0070】
以下に詳細に記載されるように、孔形成性ハイドロゲルを、ケモカインにより媒介される細胞動員のために利用した。最初は糖であったものをアルコール基に置換するため、アルギン酸を、まず酸化し、次いで、水素化ホウ素ナトリウムにより還元した。
図5Aおよび
図5Bは、標準分解性アルギン酸ハイドロゲルによる樹状細胞(DC)動員と、孔形成性アルギン酸ハイドロゲルによる樹状細胞(DC)動員との比較を示す。ハイドロゲルの両方のセットに、2ugの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を負荷した。これは、ハイドロゲル隣接組織(画像の端に近い細胞充実性が高い区域)からの、孔形成性ハイドロゲルへの細胞の浸潤の方が、実質的に多かったことを示している。
図5Cおよび5Dは、GM-CSFを含まないアルギン酸ジアルデヒド(
図5C)または還元型アルギン酸ジアルデヒド(
図5D)からポロゲンが形成された孔形成性ハイドロゲルへの基線DC侵入の比較を示す。GM-CSFが存在しない場合には、実質的に少ない基線細胞浸潤が起こった。組織学的検査のため、樹状細胞がCD11c(緑色)およびNIHC-II(赤色)について染色され、核がヘキストで対比染色されている(青色)。この図は、酸化型アルギン酸から形成されたポロゲンを含む材料による宿主細胞動員と、還元型アルギン酸から形成されたポロゲンを含む材料による宿主細胞動員との違いを示している。
【0071】
実施例6:バルク相組成を変動させることによる孔形成性ハイドロゲルにおける幹細胞増殖の制御
このアプローチの目的は、不溶性の合図を使用して、細胞の拡張および放出を操作することである。従って、接着リガンドの密度、およびポロゲン周囲の非分解性ハイドロゲルの機械的特性が、細胞に対する効果を有するか否かを決定した。
図6に示されるように、リガンドの密度は、DNA合成を有意に改変し、弾性率の改変は、1週間にわたりDNA合成および細胞放出の両方を改変した。
図6Dに組織像により示されるように、接着リガンド密度などの不溶性の合図は、長い時間枠で、細胞に対する効果を有した。
【0072】
具体的には、孔形成性ハイドロゲルのバルク成分の組成が、インビボの細胞の増殖および生着をモジュレートするか否かを決定するための研究を実施した。60kPaの率を有するバルクゲルにおけるRGDペプチドの密度、または10 RGDペプチド/アルギン酸重合体を提示するバルクハイドロゲルの弾性率の関数としての、(DNA合成に比例する)間葉系幹細胞による24hr
3H-チミジン取り込み(D1;赤色曲線)または7日間の培養の後の孔形成性ハイドロゲルからの累積的なMSC配備(青色曲線)の分析(データは平均値+/-SEM、n=3〜5である)が、
図6Aおよび6Bに示される。RGD密度は、細胞増殖に対する有意な効果を有し、弾性率は、増殖および放出の両方に対する効果を有した(p<0.05、ANOVA)。孔形成の関数としてのDNA合成の分析は、
図6Cに示される。50日間の培養の後の、凍結切片化された孔形成性ハイドロゲルの中のD1細胞におけるKi-67(増殖マーカー、緑色)についての染色が、
図6Dに示される。
【0073】
配備された幹細胞の運命の、バルクハイドロゲルの組成を介した制御
孔形成性ハイドロゲルを、実施例1に記載されるようにして形成した。バルクハイドロゲルの組成(インテグリン結合RGDペプチドの密度および弾性率)を操作することにより、インビトロの間葉系幹細胞(MSC)の増殖および放出を制御することが可能であった。インビボで、RGDペプチドの密度をアルギン酸重合体鎖1本当たり2ペプチドから10ペプチドへ増加させることにより、皮下空間へ配備されたmCherry標識マウスMSCの全体密度を増加させることができた(
図6E)。治療的研究のため、ヒトMSCをヌードラットの頭蓋欠損部へ配備した。4週間後、ラットを安楽死させ、(新たな骨形成による)治癒の程度を、ヘマトキシリン/エオシン染色により査定した。簡単に説明すると、「治癒パーセント」計量を生成するため、欠損部内の新たに形成された骨の面積を、欠損部の全面積で割った。この定量的計量を使用して、孔形成性ハイドロゲルでのMSC送達が、新たな骨形成を誘導する能力に関して、標準ハイドロゲルまたは生理食塩水を介した送達より実質的に優れていることが見出された(
図6F)。さらに、60kPa、10 RGD/アルギン酸重合体バルク相を含む孔形成性ハイドロゲルからの配備は、8kPa、10 RGD/アルギン酸重合体バルク相を含む孔形成性ハイドロゲルからの配備より、有意に多い骨形成をもたらしたように(p<0.05、両側t検定)、バルクハイドロゲル成分の弾性率は、4週間目の新たな骨形成に対する実質的な効果を有していた。
【0074】
従って、mCherry標識D1を、孔形成性ハイドロゲルを介してヌードマウスの皮下組織へ配備した時、バルク成分のRGD密度が2 RGDペプチド/アルギン酸重合体から10 RGDペプチド/アルギン酸重合体へ増加すると、細胞配備動力学には有意に影響せずに、生着した細胞の総数が実質的に増加した。
【0075】
本明細書に記載されるように、本実施例は、細胞により媒介される組織再生に対するバルクハイドロゲルの弾性の効果を証明したが、バルクハイドロゲル相の他の多くの局面、例えば、マトリックスに結合した増殖因子またはそのペプチド模倣体の提示が、細胞により媒介される組織再生に影響を及ぼすために操作される。
【0076】
実施例7:二成分アルギン酸から形成されたハイドロゲルの機械的特性およびインビトロ分解
20mg/mLの一定の密度の酸化型アルギン酸(5%の理論上の酸化度)と未修飾高M
Wアルギン酸との二成分組み合わせを架橋することにより形成されたバルクハイドロゲルの弾性率および分解が、
図7Aおよび
図7Bに示される。インビトロでの4日後の乾燥質量を、初期乾燥質量と比較することにより、分解を査定した。20mg/mL酸化型アルギン酸と7.5mg/mL未修飾アルギン酸との二成分混合物から形成されたポロゲンの直径は、
図7Cに示される。ポロゲン直径は、アミノフルオレセイン標識アルギン酸から調製されたポロゲンの蛍光顕微鏡写真の処理により測定された。
【0077】
他の態様
本発明を、その詳細な説明と共に記載したが、上記の説明は、本発明を例示するためのものであって、添付の特許請求の範囲の範囲により定義される本発明の範囲を制限するためのものではない。他の局面、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0078】
本明細書において言及された特許および科学文献は、当業者が利用可能な知識を確立する。本明細書に引用された米国特許および公開されたまたは未公開の米国特許出願は、全て、参照により組み入れられる。本明細書に引用された公開された外国特許および特許出願は、全て、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用されたアクセッション番号により示されるGenbankおよびNCBIの寄託は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書に引用されたその他の公開された参照、文書、原稿、および科学文献は、全て、参照により本明細書に組み入れられる。
【0079】
本発明の好ましい態様を参照しながら、本発明を具体的に示し記載したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細の様々な変化をそれらに施し得ることが、当業者には理解されるであろう。