特許第6104909号(P6104909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブの特許一覧

特許6104909核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス
<>
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000005
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000006
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000007
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000008
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000009
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000010
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000011
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000012
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000013
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000014
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000015
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000016
  • 特許6104909-核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス 図000017
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104909
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】核融合炉第一壁構成要素およびその作製プロセス
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/11 20060101AFI20170316BHJP
   G21B 1/17 20060101ALI20170316BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G21B1/00 D
   B23K20/00 310F
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-523354(P2014-523354)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(65)【公表番号】特表2014-527627(P2014-527627A)
(43)【公表日】2014年10月16日
(86)【国際出願番号】FR2012000317
(87)【国際公開番号】WO2013017749
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月24日
(31)【優先権主張番号】1102406
(32)【優先日】2011年8月1日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510225292
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】ピエール−エリック、フレシヌ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ、ブッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−マルク、リーボルド
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、リガール
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−263749(JP,A)
【文献】 特開平10−216960(JP,A)
【文献】 特開平11−285859(JP,A)
【文献】 特開2001−225176(JP,A)
【文献】 特開2004−309485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21B 1/11
B23K 20/00
G21B 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金要素(3)と、
ニオブによって形成される中間金属層(6)と、
前記中間金属層(6)と直接接触するベリリウム要素(4)と
を連続して備えるスタックで形成された核融合炉第一壁構成要素において、
前記スタックが、銅から形成されかつ前記中間金属層(6)と前記銅合金要素(3)との間に配置される、機械的応力低減層(8)を含み、
前記スタックが、ニッケルおよび銅の合金によって形成されかつ前記中間金属層(6)と前記機械的応力低減層(8)との間に配置される追加の中間層(15)を含むことを特徴とする、構成要素。
【請求項2】
前記機械的応力低減層(8)が、前記銅合金要素(3)と直接接触することを特徴とする、請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記銅合金が、銅、クロムおよびジルコニウムの合金であることを特徴とする、請求項1または2に記載の構成要素。
【請求項4】
前記銅合金要素(3)の前記機械的応力低減層(8)側とは反対側の表面に接触するステンレス鋼要素(2)を含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の構成要素。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の核融合炉第一壁構成要素を作製するための方法において、次の連続するステップ、
銅合金要素(3)と、ニオブによって形成される中間金属層(6)と、前記中間金属層(6)と直接接触するベリリウム要素(4)と、を連続して備えるスタックの形成ステップと、
熱間静水圧圧縮によって支援される拡散溶接による前記スタックのアセンブリ・ステップと、を含み、
前記アセンブリ・ステップが、銅によって形成された機械的応力低減層(8)を、前記中間金属層(6)と前記銅合金要素(3)との間に載置するステップによって先行され、
加えて、純ニッケルの層(12)が、前記中間金属層(6)の前記ベリリウム要素(4)とは反対側に形成され、その結果、前記アセンブリ・ステップが、前記機械的応力低減層(8)の表層部での前記純ニッケルの拡散を引き起こし、前記機械的応力低減層(8)の前記表層部が、前記アセンブリ・ステップの後に、前記中間金属層(6)と直接接触する、銅およびニッケルの合金の追加の中間層(15)を形成することを特徴とする、方法。
【請求項6】
純ニッケルの前記層(12)が、物理的気相堆積法によって形成されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記機械的応力低減層(8)を載置する前記ステップが
前記銅合金要素(3)の第一の側上への、前記機械的応力低減層(8)の移送、および
前記機械的応力低減層(8)の前記第一の側とは反対側の第二の側上への、前記中間金属層(6)が備えられた前記ベリリウム要素(4)の移送を含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記機械的応力低減層(8)を載置する前記ステップが、
前記銅合金要素(3)の第一の側に接触する前記機械的応力低減層(8)の形成、ならびに
前記機械的応力低減層(8)の前記第一の側とは反対側の第二の側上への前記ベリリウム要素(4)および前記中間金属層(6)を含むアセンブリの移送を含むことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項9】
前記中間金属層(6)が、物理的気相堆積法によって形成されることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
− 銅合金から作られる要素と、
− 中間金属層と、
− 中間金属層と直接接触するベリリウム要素と
を連続して備えるスタックで形成された核融合炉第一壁構成要素に関する。
【0002】
本発明はまた、1つのそのような構成要素を製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
核融合炉については、特に将来の熱核融合炉ITER(国際熱核融合実験炉)については、核融合炉の真空室は、プラズマに直接面している第一壁構成要素によって覆われる。第一壁構成要素の役割は、核融合炉の真空室の周囲の現場で働く要員および核施設を熱放射および中性子束から保護することである。
【0004】
図1は、第一壁構成要素1の概略図を例示する。第一壁構成要素1は、3つの異なる要素、
− 特に316LN型のステンレス鋼から作られる要素2と、
− ヒートシンクとしての役割を果たす、CuCrZr合金などの銅合金から作られる要素3と、
− プラズマ(矢印F)によって放出される熱放射および中性子に直接面しているように設計されかつシールドとしての役割を果たすベリリウム要素4と
のアセンブリによって構成される。
【0005】
これらの3つの要素を構成する材料はすべて、ベリリウムを除いて、ステンレス鋼要素2および銅合金要素3の中に配置された冷却管5に流れる加圧水によって能動的に冷却される。
【0006】
これらの材料のアセンブリは、いくつかの技術によって行われることもあり、それらの中で、一軸加圧成形または熱間静水圧圧縮(Hot Isostatic Compression:HIC)によって支援される拡散溶接技術が、挙げられることもある。HICによって支援される拡散溶接技術は、一般に最もよく使用される。拡散溶接は、ある一定時間内の高圧および高温の同時印加によって接触面全体が溶接されることを可能にする。この溶接技術は、溶接温度がアセンブルされるべき材料の融解温度よりも低いので、実際は固体状態での溶接である。
【0007】
したがって、核融合炉のための第一壁構成要素の製造は従来、冷却管5が備えられた銅合金要素3とのステンレス鋼要素2のHICによって支援される拡散溶接のステップを含む。CuCrZr合金の場合には、このステップの後に、銅合金3中のクロムおよびジルコニウムの析出物を溶解して元に戻し、過飽和固溶体を得るために、熱処理ステップが続き、水またはガスでの焼き入れによって完了する。最後に、最終ステップは、HICによって支援される拡散溶接によってベリリウム要素4を銅合金要素3とアセンブルすることにある。
【0008】
ベリリウム要素4と銅合金要素3との間のアセンブリ・ステップは、第一壁構成要素を作製するための方法では依然として細心の注意を要するステップのままである。ベリリウムと銅合金との間の接合部(Be/Cu合金)は実際、いくつかの理由により核融合炉のための第一壁構成要素の適用分野で不十分な機械的挙動を提示することもあり、その理由は以下の通りである:
− ベリリウムおよび銅は、400℃より上で互いに反応して金属間化合物を形成する。これらの金属間化合物は、ベリリウムと銅合金との間の接合部を弱め、最終の機械加工が行われるときにまたはその機械的挙動を試験するように設計された試験中の早期に、後者の破壊をもたらすこともあり得る。
【0009】
− ベリリウムは、その表面に非常に熱的に安定な酸化物層を有し、その酸化物層は、ベリリウムと銅合金との界面での拡散を減速し、したがって、拡散溶接されたアセンブリの質を低下させることもあり得る。
【0010】
− ベリリウムおよび銅合金は、異なる熱膨張係数およびヤング率を有する材料であり、そのことは、界面での残留製作応力の発生を引き起こす。
【0011】
Be/Cu合金接合部のアセンブリおよび機械的挙動を改善するために、多くの研究が、アセンブリの前にベリリウム要素4と銅合金要素3との間に1つまたは複数の層を挿入することによってこれらの2つの要素間の拡散による溶接を行うことを提案する。これらの層は、様々な機能性を有する。ある種の層は、アセンブリの機械的応力を低減し、おそらくはベリリウムと銅合金との間の結合を促進するように設計された柔軟層とすることができる。他の層はまた、拡散バリアとしての役割を果たすこともできる。
【0012】
例えば、T.Kuroda他は、文献「Development of joining technology for Be/Cu−alloy and Be/SS by HIP」(Journal of Nuclear Materials 第258〜263巻(1998)258〜264頁)で、拡散バリアとしての役割を果たすように設計された異なる中間層の使用を試験した。多数の成分が、これらの中間層のために試験された。試験は、特にベリリウム要素(Be)と銅合金要素(DSCuもしくはアルミナ分散によって強化された銅)との間に配置された金属単層(Al、Ag、OF−Cuもしくは酸素のないCu、BeCu、Ti、Cr、Si、Mo)についてか、またはBe要素とDSCu要素との間に配置された単層の連続した積み重ねによって形成された多層(Ti/Ni、Ti/Ni/Cu、Al/Ti/Cu、Al/Ni/Cu、Al/Mo/CuおよびCr/Cu)について行われた。その層は、堆積法、物理的気相堆積法もしくは電解析出法によってか、または小さい厚さ(50μm)のフォイル(箔)を使用することによって形成される。
【0013】
中性子衝撃の下で活性化されるので、原子力産業では使用されるはずがない銀を除いて、拡散バリアとして使用されるその他の要素は一般に、温度安定性が非常に高い酸化物(Al、Cr、SiO、TiO)の形成を引き起こす。しかしながら、バリア層の表面でのこれらの酸化物の形成は、拡散過程を制限し、それによってBe/拡散バリア/銅合金アセンブリの機械的強度を低減することもある。
【0014】
これらの酸化物の形成を防止するために、上で述べられたバリア層は一般に、銅合金とのより大きい親和性を有し、一方でそれと同時に温度耐久性がより低い酸化物を形成する他の金属層によって真空中で覆われてもよい。これらの層は一般に、純銅または純ニッケルから作られる。それらの層は、前に述べられたバリア層の銅合金上へのアセンブリを容易にするので、例えば米国特許第6164524号では結合促進層と呼ばれる。一般に純粋状態の金属の形で物理的気相堆積法によって堆積されると、銅および純ニッケルは両方とも、低い弾性限界および高い延性を提示するので、これらの層はまた、柔軟層(または機械的応力低減層)となる機能も有する。それ故に、拡散溶接作業が行われるときにアセンブリを強化することに加えて、それらの層はまた、いったんBe/銅合金接合部が塑性変形によって作製されたならば、Be/銅合金接合部での応力の発生を制限もする。
【0015】
それ故に、米国特許第6164524号では、拡散バリアとしての役割を果たす薄層を用いてベリリウム要素および銅合金要素と熱間静水圧圧縮によってアセンブルされる本体を作製することが提案された。バリア層は、ベリリウム要素が熱間静水圧圧縮によって銅合金要素とアセンブルされる前に、ベリリウム要素上に形成され、拡散バリア層は、2つの要素間に配置される。拡散バリア層はさらに、チタン、クロム、モリブデンまたはシリコンなどの金属によって形成される。そのような層の厚さは、使用される金属によって異なる。アセンブルされた本体はさらにまた、
− 5μmから2.5mmの間で構成される厚さをもち、拡散バリア層とベリリウム要素との間に配置されるアルミニウムから作られる機械的応力低減層、
− および/または5μmから500μmの間で構成される厚さをもち、拡散バリア層と銅合金要素との間の、純銅もしくは純ニッケルから作られる結合促進層
を含むこともできる。加えて、本アセンブリ方法は、400℃から650℃の間で構成される温度および20MPaから300MPaの間で構成される圧力で行われる。
【0016】
特許EP0901869は、ベリリウム層、銅合金層およびステンレス鋼層を含む複合材料を述べる。例えばニオブから作られる、追加の層が、ベリリウム層と銅合金層との間に挿入される。異なるステンレス鋼−銅合金−ニオブ−ベリリウムの層が、ホットプレス法によって同時にアセンブルされる。
【0017】
これらの異なる層(拡散バリア層、結合促進層および/または柔軟層)の使用によって達成される改善点を知るために、核融合炉の第一壁構成要素の応力を示す、せん断試験および腐食試験または熱疲労試験が、Be要素とCu合金要素との間のある種のアセンブリについて過去に行われた。
【0018】
しかしながら、試験モデルはしばしば、あまりよく知られていないかつ/または異なる、寸法および冷却条件を有するので、これらの試験の結果は、使用し互いに比較するのが困難である。しかしながら、高強度の過渡的熱流束にさらされる接合部の冷却条件は、その熱疲労挙動に大きく影響を及ぼす。その結果、核融合炉の第一壁構成要素として使用するための柔軟層があるまたはないBe/Cu合金基準接合部と比較して、文献で作られたアセンブリによって提供される改善点を正しく評価することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、特に基準接合部と比較して改善された熱疲労挙動を提示し、一方では同時に金属間化合物の存在を回避しかつ構造体の機械的応力を制限する、核融合炉に適した第一壁構成要素を提案し、作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この目的は、添付の特許請求の範囲によって達成される傾向がある。
【0021】
他の利点および特徴は、非制限的な例のためだけに与えられかつ添付の図面で示される本発明の特定の実施形態の次の説明からよりはっきりと明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】従来技術による核融合炉第一壁構成要素を横断面で概略的に示す図である。
図2】本発明による核融合炉第一壁構成要素の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図3】本発明による核融合炉第一壁構成要素の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図4】本発明による核融合炉第一壁構成要素の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図5】本発明による核融合炉第一壁構成要素の第2の特定の実施形態の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図6】本発明による核融合炉第一壁構成要素の第2の特定の実施形態の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図7】本発明による核融合炉第一壁構成要素の第2の特定の実施形態の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図8】第1および第2の実施形態による構成要素のベリリウム要素を銅合金要素とアセンブルするためのHICによって支援される拡散溶接サイクルの第1の例を示すグラフである。
図9】第1および第2の実施形態による構成要素のベリリウム要素を銅合金要素とアセンブルするためのHICによって支援される拡散溶接サイクルの第2の例を示すグラフである。
図10】本発明による核融合炉第一壁構成要素の第3の実施形態の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図11】本発明による核融合炉第一壁構成要素の第3の実施形態の作製の異なるステップを横断面で概略的に示す図である。
図12】第3の実施形態に従って作製された構成要素についてベリリウムと銅との間の接合部のエネルギー分散型X線分析(EDSまたはEDX)による走査型電子顕微鏡法(SEM)によって得られたスナップショットである。
図13】熱サイクル試験のために使用された基準モデルを横断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
拡散バリア層としてニオブの中間層を用いて、核融合炉第一壁構成要素のベリリウム要素と銅合金要素との間の接合部を作製することが提案される。それ故に、いったんアセンブリが行われたならば、ベリリウム要素と銅合金要素との間の接合部は、これらの2つの要素に加えて、ベリリウム要素と直接接触する中間ニオブ層を含む。
【0024】
ベリリウム要素と直接接触するように設計された中間金属層を形成するための金属としてニオブを選択することは、核融合炉のための第一壁構成要素としての使用に適しかつより具体的には基準接合部(Be/Cupure/Cu合金)と比較して改善された熱疲労抵抗を有する接合部が得られることを可能にする。ニオブは実際、銅との優れた溶接性能力を提示する金属である。その上、ニオブは、ベリリウムおよび銅と冶金学的に相性が良い。ニオブは、一般にベリリウム要素とCu合金との間のアセンブリが基準接合部の場合のように作られるときに現れる、化合物BeCu、BeCuなどのもろい金属間化合物を形成しない。
【0025】
図2から図4は、核融合炉のための第一壁構成要素の第1の実施形態を例示する。
【0026】
図2では、中間ニオブ層6が、ベリリウム要素4と直接接触するためにベリリウム要素4の自由表面に直接形成される。中間ニオブ層6は有利には、1μmから20μmの間、有利には1μmから5μmの間で構成される厚さを提示する。この形成ステップは、物理的気相堆積法(PVD)、真空蒸着法、プラズマ投射法(plasma projection)または電解析出法などの、任意の種類の方法によって行われてもよい。しかしながら、その形成ステップは好ましくは、PVDによって行われる。その上、中間ニオブ層6を受け入れるように設計されたベリリウム要素4の自由表面は、必要ならば中間ニオブ層6の形成の前に洗浄される。このことは、化学エッチングなどの従来の脱脂および脱酸作業によって得られてもよいが、しかしまた、PVDのためのイオン衝撃などの、堆積方法と関連付けられる洗浄技術によって得られてもよい。
【0027】
次いで、図3で例示されるように、中間ニオブ層6およびベリリウム要素4によって形成されたスタックが、銅合金要素3に面して載置され、2つのアセンブリが次いで、熱間静水圧圧縮(図3で矢印F’の記号で表される)によって支援される拡散溶接によってアセンブルされる。HICによって支援される拡散溶接によるアセンブリ作業は、
− ベリリウム要素4、
− 中間ニオブ層6、
− および銅合金要素3、
によって連続して形成されるスタック7を得ることを可能にする。このスタック7はまた、Be/Nb/銅合金とも記され、図4で例示される。この第1の実施形態は、小さなサイズの構成要素にとって特に有利である。
【0028】
中間金属ニオブ層6を銅合金要素3と直接接触して配置することは、小さなサイズの構成要素にとって特に有利である。
【0029】
それにもかかわらず、ある場合には、特により大きなサイズの構成要素については、中間ニオブ層6は有利には、銅またはニッケルから選択される金属によって形成される機械的応力低減層(または柔軟層)と関連付けられてもよい。銅から形成されるまたはニッケルから形成されるによって意味されることは、機械的応力低減層が、純銅または純ニッケルから作られる、すなわち少なくとも99.95%の銅またはニッケルを含有するということである。純銅はまた、Cuc1とも呼ばれる。
【0030】
この機械的応力低減層は特に、中間ニオブ層6と銅合金要素3との間に配置される。その役割は、ベリリウム要素と銅合金要素との間のアセンブリに結び付けられる機械的応力を制限することである。機械的応力低減層はまた、ベリリウム要素および銅合金要素のアセンブリが拡散溶接によって行われるときに、結合を強化する機能を有することもできる。
【0031】
機械的応力低減層を形成するために使用されやすい3つの金属の機械的および熱的特性が、例示を目的として以下の表1で与えられる。
【表1】
【0032】
銅およびニッケルについては、機械的応力低減層8は特に、銅合金要素と直接接触して載置される。
【0033】
図5から図7は、機械的応力低減層8を使用する核融合炉のための第一壁構成要素の第2の実施形態を例示する。
【0034】
図5では、中間ニオブ層6が、ベリリウム要素4と直接接触するためにベリリウム要素4の自由表面に直接形成される。中間ニオブ層6は有利には、1μmから20μmの間、有利には1μmから5μmの間で構成される厚さを提示する。前の実施形態でのように、この形成ステップは、任意の種類の方法によって行われてもよい。しかしながら、その形成ステップは好ましくは、PVDによって行われる。その上、中間ニオブ層6を受け入れるように設計されたベリリウム要素4の自由表面は、必要ならば中間ニオブ層6の形成の前に洗浄される。
【0035】
次いで、図6で例示されるように、例えば省略形CuC1またはCu−OF(無酸素高伝導度)の下で知られている、無酸素高伝導度銅などの純銅から作られる、機械的応力低減層8(また柔軟層とも呼ばれる)が、中間ニオブ層6と銅合金要素3との間に配置される。
【0036】
機械的応力低減層8の載置は例えば、中間ニオブ層6が機械的応力低減層8と面して配置されるように、前記層8を銅合金要素3とベリリウム要素4との間に挿入することによって行われてもよい。
【0037】
特に、図6では、機械的応力低減層8は、銅合金要素3の上に載置され、そのアセンブリは、第1のスタック9を形成する。中間ニオブ層6およびベリリウム要素4によって形成される第2のスタック10が次いで、第1のスタック9に面して載置され、第1および第2のスタック9および10は次いで、熱間静水圧圧縮(図6で矢印F’の記号で表される)によって支援される拡散溶接によってアセンブルされる。この場合には、アセンブリ・ステップは、機械的応力低減層8が単一作業で銅合金要素3にだけでなく、第2のスタック10の中間ニオブ層6にも結合されることを可能にする。
【0038】
代替案によると、機械的応力低減層8はまた、スタック9および10のHIC拡散溶接作業が行われる前に、銅合金要素3の上に直接形成され、したがって、アセンブルされることもあり得る。拡散溶接は次いで、銅合金要素3にその時すでに結合されている機械的応力低減層8に中間ニオブ層6が結合されることを可能にすることになる。
【0039】
どちらの場合も、HIC拡散溶接作業は、
− ベリリウム要素4、
− 中間ニオブ層6、
− 機械的応力低減層8、
− および銅合金要素3
によって連続して形成されるスタック11が得られることを可能にする。このスタック11はまた、Be/Nb/Cupure/銅合金とも記され、図7で例示される。
【0040】
図8および図9は、ベリリウム要素4の銅合金要素3とのアセンブリのために使用されることが可能なHIC支援拡散溶接サイクルの2つの例をグラフで示す。
【0041】
これらの2つの例のサイクルでは、温度および圧力の増加率は、同一である。それらの増加率は、たとえHIC室のパワーおよび製造されるべき構成要素のサイズによってそれぞれ異なる可能性があっても、図8および図9では約280℃/hおよび70Bar/hである。拡散溶接平坦域はどちらの場合も、580℃において140MPa下で2時間発生する。
【0042】
加えて、580℃から周囲温度までの冷却速度は、ベリリウム/銅接合部での残留アセンブリ応力の広がりを制限するように制御される。後者は、通常数十℃/hであるが、しかしより高い速度が、接合部の機械的強度に影響を及ぼすことなく達せられてもよい。最後に、図9では、応力緩和平坦域が、接合部での機械的応力の広がりをさらにもっと低減するために、冷却段階中に加えられる。
【0043】
要素3を形成する銅合金は有利には、CuCrZr合金であるが、一方機械的応力低減層8は有利には、Cu−OFによって形成されてもよい。機械的応力低減層8はまた、純ニッケルから作られてもよい。その上、機械的応力低減層8は一般に、数百マイクロメートルから数ミリメートルの間、より具体的には100μmから4000μmの間で構成される厚さを有する。
【0044】
核融合炉のための第一壁構成要素は当然ながらまた、拡散溶接サイクルを用いてあらかじめ銅合金要素3とアセンブルされる、図1で示される要素などの、例えば316LN型のオーストナイト系ステンレス鋼から作られる要素を含むこともできる。
【0045】
第3の特定の実施形態では、機械的応力低減層8が、純銅から作られるとき、図10から図11で例示されるように、アセンブリを行うために純ニッケル層12を使用することが、有利なこともある。
【0046】
純ニッケル層12はその時有利には、ベリリウム要素4の銅合金要素3とのアセンブリ・ステップの前に、中間ニオブ層6の上に直接形成される。純ニッケル層12は有利には、0.1μmから10μmの間で構成され、有利には0.1から5μmの間で構成される厚さを提示する。
【0047】
その上、中間ニオブ層6についてのように、純ニッケル層12のこの形成ステップは、物理的気相堆積法PVD、真空蒸着法、プラズマ投射法、または電解析出法などの、任意の種類の方法によって行われてもよい。その形成ステップは有利には、PVDによって行われる。最後に、純ニッケル層12を受け入れるように設計された中間ニオブ層6の自由表面は好ましくは、あらかじめ酸素を除かれる。
【0048】
この実施形態は、純ニッケルが、アセンブリの前にニオブ表面の酸化に対する保護を提供し、そのことが、銅との界面での酸化物の存在が妨げられることを可能にするので、アセンブリが、純銅から作られた柔軟層を含むときに特に有利である。この実施形態はまた、ニオブと銅との間のHIC支援拡散溶接作業を容易にもする。
【0049】
いったん純ニッケル層12が、中間ニオブ層6の上に直接形成されたならば、これらの2つの層12および6ならびにベリリウム要素4によって形成されるスタック13は、銅合金要素3および純銅から作られる機械的応力低減層8によって形成されるスタック9に面して配置される。この載置は、純ニッケル層12が純銅層8に面して配置されるように行われる。HIC支援拡散溶接作業が次いで、2つのスタック13および9をアセンブルするために行われる(図10での矢印F’)。このことは次いで、純銅の柔軟層8の表層部での純ニッケルの拡散をもたらす。
【0050】
図11で示されるように、HIC支援拡散溶接作業は、その結果、
− ベリリウム要素4、
− 中間ニオブ層6、
− 中間ニオブ層6と銅の柔軟層14との間に挿入される、銅およびニッケルの合金から作られる追加の中間層15、
− 銅合金要素3と直接接触する、純銅から作られる応力緩和(または柔軟)層14、
− および銅合金要素3
によって連続して形成されるスタックを得ることを可能にする。このスタックはまた、Be/Nb/CuNi/Cupure/銅合金とも記される。
【0051】
図11で14と記される、純銅から作られる柔軟層はその時、ニッケルがHIC支援拡散溶接作業の間に拡散しなかった結果として生じる純銅層8の部分に対応する。柔軟層14は、銅合金要素3と直接接触し、銅およびニッケルの合金から作られる追加の中間層15によって延長される。
【0052】
HIC支援拡散溶接作業に続く純銅層8でのニッケルの拡散は、この第2の実施形態に従って作られた試料の走査型電子顕微鏡法による観察および図12で報告されるようなEDS分析によって確認された。
【0053】
Be/Nb/CuNi/Cupure/CuCrZr接合部およびBe/Cupure/CuCrZr基準接合部をそれぞれもつ、第一壁構成要素を代表する2つのモデルAおよびBが、同一の方法で作製され、次いで熱疲労試験にさらされた。
【0054】
モデルはそれぞれ、次の寸法、30.6×27.3×9mmを有する9つのベリリウム・タイルを含む。例えば、基準モデル(Be/Cupure/CuCrZr)は、図13において横断面で例示される。
【0055】
本モデルはより具体的には、次の方法で作製される:
1− 316LNステンレス鋼基部の上へのCuCrZrの拡散溶接。このアセンブリは、140MPaの圧力を2時間1040℃の温度で加えることによって高温で行われる。
【0056】
2− 銅マトリクス中でCrおよびZrの過飽和固溶体を得るための熱処理サイクル。熱処理サイクルは、980℃で真空中において1時間行われる。温度勾配の終わりに、60℃/minよりも大きい速度でのガス焼き入れが行われる。
【0057】
3− 2つのモデルについて、2つの材料BeとCuCrZrとの間に同じ厚さの純銅の柔軟層を挿入する、CuCrZrの上へのベリリウム・タイルのアセンブリ。
【0058】
モデルAについては、ニオブおよび純ニッケルの2つの層がそれぞれ、ステップ3を行う前に、ベリリウム要素の上にPVDによって連続して堆積された。これらの層はそれぞれ、約3μmおよび0.3μmの厚さを有する。
【0059】
これらのモデルの冷却は、12mmの外径および1mm壁を有し、CuCrZr要素3を通り抜ける、図13で5と記される4つのステンレス鋼管中の加圧水流によって行われる。水の注入および排出は、モデルの同じ側で行われ、管5のそれぞれでの水の流れは、管を2×2の関係で設置する給水ボックス・システムによって確保される。水の流量は、24l/min(すなわち、5m/s)であり、その温度は、周囲温度と同じである。
【0060】
これらの2つのモデルAおよびBは次いで、同じ熱疲労試験にさらされる。このことは、モデルAおよびBのベリリウム表面に高エネルギー電子ビームを照射することにある。過渡的電子衝撃は、急激な温度の上昇および低下を誘発し、そのことは、材料および接合部が熱サイクルを受けることを可能にする。試験中は、温度の上昇段階および低下段階の継続時間は、それぞれ40秒である。試験は、0.5から1.5MW/mまで増加するパワー密度についてモデルの表面の高速走査から始める。次いで各モデルは、
− 1.5MW/mで1000サイクル、
− 次いで2MW/mで200サイクル、
− 次いで2.5MW/mで200サイクル、
− 次いで2.7MW/mで200サイクル、
− 次いで3MW/mで200サイクル
を受ける。パワーは次いで、ベリリウムと銅との間の接合部の破壊が起こるまで、200サイクルごとに0.2MW/mステップずつ増加する。
【0061】
以下の表2は、2つのモデルAおよびBについて行われる連続試験を設定する。
【表2】
【0062】
この試験の経過中に、Be/Nb/CuNi/Cupure/CuCrZr接合部に対応するモデルAは、3.4MW/mのパワーについて180サイクルに至るまで耐えたが、一方Be/Cupure/CuCrZr基準接合部に対応するモデルBは、2.75MW/mのパワーについて200サイクル後に基準接合部での破壊の兆候を提示し、前記基準接合部は、3MW/mでの200サイクル後に屈服したことが、観察された。
【0063】
比較目的のために、相補的な試験が、4つの新しいモデルC、D、EおよびFを作製することによって行われた。最初の3つのモデルCからEは、中間層を形成する金属を除いて(モデルAについてはニオブ、モデルCからEについてはSi、TiおよびCrから作られる。)モデルAと同一の構造を有する。モデルFは、モデルBと同様に、中間層なしでアセンブルされる(基準モデル)。これらの異なるモデルのアセンブリは、モデルAおよびBの条件と同じ条件(同じHICおよび熱処理サイクル)の下で行われた。
【0064】
Ti、CrおよびSiの中間層は、PVDによってベリリウムの表面に堆積され、それらはそれぞれ、Nbの中間層の厚さに匹敵する厚さ(4μm±1μm)を有する。各モデルCからFは、Cu−OF型の純銅から作られかつモデルAおよびBについてと同じ厚さを有する柔軟層を有する。したがって、熱疲労試験を受ける接合部は、
− Be/Si/Cu−OF/CuCrZr(モデルC)、
− Be/Ti/Cu−OF/CuCrZr(モデルD)、
− Be/Cr/Cu−OF/CuCrZr(モデルE)、
− Be/Cu−OF/CuCrZr(基準モデルF)
である。
【0065】
モデルAおよびBについてのように、これらの4つのモデルは、同じ冷却条件(水の流量は24l/min(すなわち、5m/s)であり、その温度は周囲温度の温度である)を使用する同じ設備で熱疲労試験を受けた。
【0066】
すべての試験は、モデルAおよびBについてのような1.5MW/mの代わりに2.7MW/mのパワー密度で始まったので、試験条件だけが、異なる。それにもかかわらず、モデルCからEはすべて、同一の基準モデル(FまたはB)の結果と比較されてもよい。熱疲労試験の結果は、以下の表3で提示される。
【表3】
【0067】
試験する間に、Si中間層で製作されたモデル(モデルC)は、走査段階中に壊れて、この種の中間層で製作されたベリリウムと銅の接合部の質の悪い熱疲労挙動を示した。
【0068】
Tiの中間層で製作されたモデル(モデルD)は、2.7MW/mでたった91サイクル後に壊れたが、一方Crの中間層で製作されたモデル(モデルE)は、2.7MW/mで1000サイクルに耐え、次いで3.4MW/mで133サイクル後に壊れた。モデルFの接合部は、3.4MW/mで100サイクル後に壊れる前に2.7MW/mで1000サイクルに耐えたので、モデルEの結果は、中間層のない基準モデル(モデルF)で得られた結果と同じように良好である。モデルEとモデルFとの間の33サイクルの差は、これらの条件下で行われた熱疲労試験について予期された実験的ばらつきに対応するように思われる。
【0069】
したがって、これらの結果は、同様に冷却される同一形態のモデルについて、Si、TiおよびCrから作られる中間層が、Be/Cu−OF/CuCrZr基準接合部と比較して熱疲労挙動にどんな意味のある改善も提供しないことを示す。Nb中間層だけが、特にそれが純ニッケルの追加の層と関連付けられるときに、これらの特性の顕著な改善が得られることを可能にする。
【符号の説明】
【0070】
1 第一壁構成要素
2 ステンレス鋼要素
3 銅合金要素、CuCrZr要素
4 ベリリウム要素
5 冷却管、ステンレス鋼管
6 中間ニオブ層、中間金属層
7 スタック
8 機械的応力低減層、柔軟層、純銅層
9 第1のスタック
10 第2のスタック
11 スタック
12 純ニッケル層
13 スタック
14 柔軟層、応力緩和層
15 追加の中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13