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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6104918
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】脈動流量計
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/32 20060101AFI20170316BHJP
   G01F 1/42 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G01F1/32 V
   G01F1/42 A
【請求項の数】29
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-534744(P2014-534744)
(86)(22)【出願日】2012年10月5日
(65)【公表番号】特表2014-528587(P2014-528587A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】US2012058848
(87)【国際公開番号】WO2013052728
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】13/253,724
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506018363
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】ヌイ―メヒディ,モハメド,ナビール
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−148818(JP,U)
【文献】 特開平10−115538(JP,A)
【文献】 特公昭54−3741(JP,B2)
【文献】 特開昭55−35245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下流方向にプロセス流体を運搬するように構成されるプロセス流体流導管内の流体流量を判定するための脈動流量計であって、脈動流量計は、
縦方向のハウジングの長さおよび半径方向のハウジングの直径を有するハウジングの内部を画定し、さらに、縦軸を画定する、ハウジングであって、
外殻と、
前記プロセス流体流導管から前記ハウジングの内部にプロセス流体を受容するための入口と、
前記ハウジングの内部から前記プロセス流体流導管にプロセス流体を送達するための出口と、を有する、ハウジングと、
前記ハウジング内に配置される鈍頭物体と、
前記ハウジング内に配置され、かつオリフィスを有するオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記鈍頭物体の下流に位置し、前記オリフィス板は、前記オリフィス板が、前記オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、前記鈍頭物体から所定の距離に位置し、
さらに、前記オリフィス板は、オリフィス板の厚さによって特徴付けられ、前記オリフィス板の厚さは、前記ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内であり、
前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の40〜60パーセントの距離である、オリフィス板と、
前記脈動流の前記脈動周波数を検出し、前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するための手段と、によって特徴付けられる、脈動流量計。
【請求項2】
前記脈動流量計を前記プロセス流体流導管と流体接続して連結するための手段によってさらに特徴付けられる、請求項1に記載の脈動流量計。
【請求項3】
前記脈動周波数を検出し、前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するための手段は、
前記脈動流によって生じる圧力差を感知することによって、前記脈動流の前記脈動周波数を検出するように動作可能な感知器と、
前記感知器によって感知された前記圧力差に基づいて、流量測定信号を生成するように動作可能な、前記感知器と通信する伝送器と、
前記流量測定信号を受容し、前記流体流量を判定するように動作可能な、前記伝送器と通信するプロセッサと、によってさらに特徴付けられる、請求項1〜2のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項4】
前記流体流量を表示するように動作可能な、前記プロセッサと通信する表示手段によってさらに特徴付けられる、請求項1〜3のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項5】
前記鈍頭物体は、円筒形である、請求項1〜4のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項6】
前記鈍頭物体は、前記ハウジングの直径の10〜20パーセントの直径を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項7】
前記鈍頭物体は、前記ハウジングの直径の16パーセントの直径を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項8】
前記鈍頭物体は、前記縦軸に対して横方向に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項9】
前記オリフィス板は、オリフィス板の直径によってさらに特徴付けられ、前記オリフィス板の直径は、前記ハウジングの直径と等しい、請求項1〜8のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項10】
前記オリフィスは、前記ハウジングの直径の60パーセントであるオリフィスの直径によって特徴付けられる、請求項1〜9のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項11】
前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の50パーセントの距離である、請求項1〜10のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項12】
前記ハウジングの直径は、前記ハウジングの長さの25パーセントである、請求項1〜11のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項13】
前記鈍頭物体は、前記ハウジングの長さの10パーセントの前記入口からの距離に位置する、請求項1〜12のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項14】
前記鈍頭物体は、前記鈍頭物体が前記外殻から前記ハウジングの軸を通って延在するように、前記ハウジング内に配置される、請求項1〜13のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項15】
前記オリフィスは、前記ハウジングの軸を中心とする、請求項1〜14のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項16】
前記ハウジングは、円筒形である、請求項1〜15のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項17】
前記ハウジングの直径は、前記ハウジングの長さに関して一定のままである、請求項1〜16のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項18】
前記鈍頭物体の下流に先細セクションが存在しないことによってさらに特徴付けられる、請求項1〜17のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項19】
下流方向にプロセス流体を運搬するように構成されるプロセス流体流導管内の流体流量を判定するための脈動流量計であって、
内部容積と、前記プロセス流体流導管から内部容積内にプロセス流体を受容するための入口と、前記内部容積から前記プロセス流体流導管内に前記プロセス流体を送達するための出口と、を有するハウジングであって、前記ハウジングは、縦方向のハウジングの長さおよび半径方向のハウジングの直径を有する前記ハウジングの内部を画定し、前記ハウジングは、さらに、縦軸を画定し、前記ハウジングの直径は、前記ハウジングの長さの20〜30パーセントである、ハウジングと、
円筒形状を有する、前記ハウジング内に配置される鈍頭物体であって、前記鈍頭物体は、前記ハウジングの直径の10〜20パーセントの直径を有し、前記鈍頭物体は、前記ハウジングの長さの5〜15パーセントの前記入口からの距離に位置する、鈍頭物体と、
オリフィス、オリフィス板の厚さ、およびオリフィス板の直径を有する、前記ハウジング内に配置されるオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記オリフィス板が、前記オリフィスを通過した結果として前記プロセス流体に脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、前記鈍頭物体から所定の距離で前記鈍頭物体の下流に位置し、前記オリフィスの厚さは、前記ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内にあり、前記オリフィス板の直径は、前記ハウジングの直径と実質的に等しく、前記オリフィスは、前記ハウジングの直径の60パーセントであり、前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の40〜60パーセントの距離である、オリフィス板と、
前記脈動流の前記脈動周波数を検出し、前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するための手段と、によって特徴付けられる、脈動流量計。
【請求項20】
前記鈍頭物体は、前記鈍頭物体が前記ハウジングの軸を通って延在するように、前記ハ
ウジング内に配置される、請求項19に記載の脈動流量計。
【請求項21】
前記オリフィスは、前記ハウジングの軸を中心とする、請求項19〜20のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項22】
前記ハウジングは、円筒形である、請求項19〜21のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項23】
前記ハウジングの直径は、前記ハウジングの長さに関して一定のままである、請求項19〜22のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項24】
前記鈍頭物体の下流に先細セクションが存在しないことによってさらに特徴付けられる、請求項19〜23のいずれかに記載の脈動流量計。
【請求項25】
二相または三相流体流のうちの少なくとも一相の流体流量を判定するための脈動流量計であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に横方向に配置される鈍頭物体と、
前記ハウジング内に配置され、かつオリフィスを有するオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記鈍頭物体の下流に位置し、前記オリフィス板は、前記オリフィス板が、前記オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、前記鈍頭物体から所定の距離に位置する、オリフィス板と、によって特徴付けられ、
前記脈動流量計は、前記流体流量を判定するために、前記脈動周波数および前記脈動振幅を使用するように適合され、
さらに、前記オリフィス板は、オリフィス板の厚さによって特徴付けられ、前記オリフィス板の厚さは、前記ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内であり、
前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の40〜60パーセントの距離である、脈動流量計。
【請求項26】
前記脈動流量計は、複数の異なる流体相組成と、対応する脈動周波数および脈動振幅値を有する複数の異なる総容積流体流量と、に対する相関データで較正される、請求項25に記載の脈動流量計。
【請求項27】
プロセス流体流導管内の流体流量を判定するための方法であって、
プロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能な脈動流量計を通って前記プロセス流体を流すステップであり、前記脈動流量計は、
縦方向のハウジングの長さおよび半径方向のハウジングの直径を有するハウジングの内部を画定し、さらに、縦軸を画定する、ハウジングであって、
外殻と、
前記プロセス流体流導管から前記ハウジングの内部にプロセス流体を受容するための入口と、
前記ハウジングの内部から前記プロセス流体流導管にプロセス流体を送達するための出口と、を有する、ハウジングと、
前記ハウジング内に配置される鈍頭物体と、
前記ハウジング内に配置され、かつオリフィスを有するオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記鈍頭物体の下流に位置し、前記オリフィス板は、前記オリフィス板が、前記オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、前記鈍頭物体から所定の距離に位置し、
さらに、前記オリフィス板は、オリフィス板の厚さによって特徴付けられ、前記オリフィス板の厚さは、前記ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内であり、
前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の40〜60パーセントの距離である、オリフィス板と、
前記脈動流の前記脈動周波数を検出し、前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するための手段と、によって特徴付けられる、脈動流量計である、前記プロセス流体を流すステップと、
前記脈動周波数を検出するステップと、
前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するステップと、によって特徴付けられる、方法。
【請求項28】
プロセス流体流導管内の流体流量を判定するための方法であって、
プロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能な脈動流量計を通って前記プロセス流体を流すステップであり、前記脈動流量計は、
内部容積と、前記プロセス流体流導管から内部容積内にプロセス流体を受容するための入口と、前記内部容積から前記プロセス流体流導管内に前記プロセス流体を送達するための出口と、を有するハウジングであって、前記ハウジングは、縦方向のハウジングの長さおよび半径方向のハウジングの直径を有する前記ハウジングの内部を画定し、前記ハウジングは、さらに、縦軸を画定し、前記ハウジングの直径は、前記ハウジングの長さの20〜30パーセントである、ハウジングと、
円筒形状を有する、前記ハウジング内に配置される鈍頭物体であって、前記鈍頭物体は、前記ハウジングの直径の10〜20パーセントの直径を有し、前記鈍頭物体は、前記ハウジングの長さの5〜15パーセントの前記入口からの距離に位置する、鈍頭物体と、
オリフィス、オリフィス板の厚さ、およびオリフィス板の直径を有する、前記ハウジング内に配置されるオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記オリフィス板が、前記オリフィスを通過した結果として前記プロセス流体に脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、前記鈍頭物体から所定の距離で前記鈍頭物体の下流に位置し、前記オリフィスの厚さは、前記ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内にあり、前記オリフィス板の直径は、前記ハウジングの直径と実質的に等しく、前記オリフィスは、前記ハウジングの直径の60パーセントであり、前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の40〜60パーセントの距離である、オリフィス板と、
前記脈動流の前記脈動周波数を検出し、前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するための手段と、によって特徴付けられる、脈動流量計である、前記プロセス流体を流すステップと、
前記脈動周波数を検出するステップと、
前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するステップと、によって特徴付けられる、方法。
【請求項29】
プロセス流体流導管内の流体流量を判定するための方法であって、
プロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能な脈動流量計を通って前記プロセス流体を流すステップであり、前記脈動流量計は、
ハウジングと、
前記ハウジング内に横方向に配置される鈍頭物体と、
前記ハウジング内に配置され、かつオリフィスを有するオリフィス板であって、前記オリフィス板は、前記鈍頭物体の下流に位置し、前記オリフィス板は、前記オリフィス板が、前記オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、前記鈍頭物体から所定の距離に位置する、オリフィス板と、によって特徴付けられ、
前記脈動流量計は、前記流体流量を判定するために、前記脈動周波数および前記脈動振幅を使用するように適合され、
前記オリフィス板は、オリフィス板の厚さによってさらに特徴付けられ、前記オリフィス板の厚さは、前記ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内であり、
前記オリフィス板と前記鈍頭物体との間の前記所定の距離は、前記ハウジングの直径の40〜60パーセントの距離である、脈動流量計である、前記プロセス流体を流すステップと、
前記脈動周波数を検出するステップと、
前記検出された脈動周波数に基づいて前記流体流量を判定するステップと、によって特徴付けられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス流体に脈動流を与えるように動作可能な流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流体が物体または妨害物のそばを通過すると、振動が発生し得る。自然に生じるこれらの振動の例は、木々の枝による風の唸り、急速に流れる川において岩の下流に生成される渦、および風による旗の揺動を含む。これらの例の全てにおいて、流れが遅くなると、振動は止まることに留意されたい。すなわち、風がやむと唸りは止まり、川が急速に流れていないと水は岩の周りを静かに流れ、および穏やかなそよ風で旗は揺動しない。
【0003】
渦流量計は、同一の原理の下で動作する。渦流量計は、通常、プロセス流体流導管内に直列に設置されて、流体の流量を測定する。渦流量計は、流体が、パイプシステムの内部で、通常は鈍頭物体と呼ばれる障害物の周りを流れるときに発生する、渦放出として周知の流体不安定性に基づいている。流体流動は、境界層効果に起因して障害物の輪郭に付着しないため、鈍頭物体の後方に流動分離が発生し、それによって、物体の後方で圧力が低くなる渦を形成する。これらの渦は、下流で交互に生じて、カルマン渦列と呼ばれる流動不安定性を生成する。これらの渦は、パイプ内の流量と比例する所定の周波数で、鈍頭物体の一方の側から他方の側へ交互に放出される。揺動する旗と同様に、渦放出の周波数は、流体流動の増加と共に増加する。これらの種類の流量計において、形成され、放出される渦によって生じる差圧は、渦放出メカニズムと比例する周波数を測定する感知器によって感知され、伝送器は、測定された周波数に基づいて流量測定信号を生成する。
【0004】
図1は、公知の渦流量計10の等角図を示す。プロセス流体12は、渦流量計10に入り、鈍頭物体20を流れ過ぎ、次に、交互に生じる渦22の形成を引き起こす。図2は、同一の渦流量計10の上面図を示す。図3は、カルマン渦列の計算流動シミュレーションを示す。見られるように、渦は、鈍頭物体の後方に交互に生じる形で生成される。さらに、鈍頭物体の所定のジオメトリでは、カルマン列渦周波数は、流量と比例する。
【0005】
渦流量計は、水、低温液体、ボイラー給水、炭化水素、化学物質、空気、窒素、工業用ガス、および、蒸気等の、パイプ内の液体、気体、および蒸気の速度を測定する。しかしながら、渦流量計内の感知器は低流量でオフになるため、渦流量計の範囲の下限近くで流量測定が必要とされる用途において、渦流量計には周知の不足点が存在する。感知器がオフになる速度は、典型的には、液体の場合、0.3メートル/秒(1フィート/秒)である。しかしながら、気体/蒸気の場合、感知システムを動作させるために必要とされる気体/蒸気の比較的低い密度に起因して、遮断はかなり高い。したがって、現在の流量計は、気体の場合、低流量を許容しない。
【0006】
概して、鈍頭物体または流量計ハウジングのサイズが小さくなるにつれて、渦周波数は増加する。さらに、周波数が増加するにつれて、圧力感知器信号強度は低下する。したがって、ハウジングサイズの減少は、圧力感知器信号強度の低下に繋がる。当然ながら、そのため、これが流量計サイズの許容範囲を限定する。
【0007】
渦流量計の精度に影響を及ぼすさらなる問題は、雑音である。ポンプ、弁、上流の流量制限、圧縮機等によって発生する雑音は、感知器により高い出力信号を読み取らせ得、それによって、不正確な流量の読み取りに繋がる。読み取りにおけるプロセス雑音の影響は、感知器の信号対雑音比が最大値の場合に低減し得る。液体では、雑音問題はそれほど大きな問題ではないが、しかしながら、蒸気および気体流体は、特に低流量ではプロセス雑音から区別することが困難であり得る、比較的低い感知器信号強度を生成する。
【0008】
プロセス雑音の除去に役立つようにフィルターが使用されているが、しかしながら、これらのフィルターは、低流量遮断の閾値を上昇させ、さらなる読み違いを導く。その結果として、プロセス雑音を除去するためにフィルタリングが使用されるほど、流量計の正味範囲は減少する。
【0009】
渦周波数は、流速、プロセス流体の特性、および流量計のサイズに応じて、典型的には、1パルス/秒から数千パルス/秒に及ぶ。気体サービスにおいて、例えば、周波数は、液体用途よりも約10倍高い傾向がある。渦流量計は、流量密度に流速の二乗値を掛けた値に基づいた流量限界を有する。したがって、(液体よりも低い密度値を有する)気体用途では、最大速度および結果としての周波数限界は、液体用途よりもずっと高い。
【0010】
したがって、特に、低流量または低密度に関連する問題を抱える流体の場合、従来の渦流量計よりもより正確な流量計を有することが有利であろう。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、これらの必要性のうちの少なくとも1つを満たす脈動流量計および方法を対象とする。一実施形態において、脈動流量計は、ハウジング、鈍頭物体、およびオリフィス板を含むことができる。一実施形態において、ハウジングは、内部、縦方向の長さ、半径方向のハウジングの直径、および縦軸を画定する。一実施形態において、ハウジングは、外殻、プロセス流体流導管からハウジングの内部にプロセス流体を受容するための入口、およびハウジングの内部からプロセス流体流導管にプロセス流体を送達するための出口を含むことができる。一実施形態において、鈍頭物体は、ハウジング内に配置される。鈍頭物体は、鈍頭物体が、鈍頭物体を通って流れるプロセス流体に渦流パターンを与えるように動作可能なように、形作られ、渦流パターンは、渦周波数を有する。オリフィス板は、ハウジング内に配置され、かつオリフィスを有する。一実施形態において、オリフィス板は、鈍頭物体の下流に位置する。オリフィス板は、オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動流を与えるように動作可能なように、鈍頭物体から所定の距離に位置し、脈動流は、脈動周波数を有する。別の実施形態において、脈動流量計は、脈動流の脈動周波数を検出し、検出された脈動周波数に基づいて流体流量を判定するための手段を含むことができる。
【0012】
別の実施形態において、脈動流量計は、脈動流量計をプロセス流体流導管と流体接続して連結するための手段をさらに含むことができる。別の実施形態において、脈動周波数を検出し、検出された脈動周波数に基づいて流体流量を判定するための手段は、脈動流によって生じる圧力差を感知することによって、脈動流の脈動周波数を検出するように動作可能な感知器と、感知器によって感知された圧力差に基づいて、流量測定信号を生成するように動作可能な、感知器と通信する伝送器と、流量測定信号を受容し、流体流量を判定するように動作可能な、伝送器と通信するプロセッサと、をさらに含む。別の実施形態において、脈動流量計は、プロセッサと通信する表示手段をさらに含むことができ、表示手段は、流体流量を表示するように動作可能である。
【0013】
一実施形態において、鈍頭物体は、ハウジングの直径の約10〜20パーセント、より好ましくは、ハウジングの直径の約16パーセントの直径を有する。別の実施形態において、鈍頭物体は、縦軸に対して実質的に横方向に配置される。
【0014】
別の実施形態において、オリフィス板は、オリフィス板の厚さを有し、オリフィス板の厚さは、ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内である。別の実施形態において、オリフィス板は、オリフィス板の直径を有し、オリフィス板の直径は、ハウジングの直径と実質的に等しい。別の実施形態において、オリフィスは、ハウジングの直径の約60パーセントであるオリフィスの直径を有する。
【0015】
一実施形態において、オリフィス板と鈍頭物体との間の所定の距離は、ハウジングの直径の約40〜60パーセント、好ましくは、約50パーセントの距離である。別の実施形態において、ハウジングの直径は、ハウジングの長さの約20〜30パーセント、好ましくは、約25パーセントである。別の実施形態において、鈍頭物体は、ハウジングの長さの約5〜15パーセント、好ましくは、10パーセントの入口からの距離に位置する。別の実施形態において、鈍頭物体は、鈍頭物体がプロセス流体の流れに対して横方向に動作可能なように、鈍頭物体が外殻からハウジングの軸を通って延在するように、ハウジング内に配置される。別の実施形態において、オリフィスは、ハウジングの軸を中心とする。別の実施形態において、ハウジングは、実質的に円筒形である。別の実施形態において、ハウジングの直径は、ハウジングの長さに関して実質的に一定のままである。別の実施形態において、脈動流量計は、鈍頭物体の下流に先細セクションを有さない。
【0016】
別の実施形態において、脈動流量計は、内部容積と、プロセス流体流導管から内部容積内にプロセス流体を受容するための入口と、内部容積からプロセス流体流導管内にプロセス流体を送達するための出口と、を有するハウジングを含むことができ、ハウジングは、縦方向のハウジングの長さおよび半径方向のハウジングの直径を有するハウジングの内部を画定し、ハウジングは、さらに、縦軸を画定し、ハウジングの直径は、ハウジングの長さの約25パーセントである。また、脈動流量計は、鈍頭物体が、鈍頭物体を通って流れるプロセス流体に渦周波数を有する渦流パターンを与えるように動作可能なように、実質的に円筒形状を有する、ハウジング内に配置される鈍頭物体を含み、鈍頭物体は、ハウジングの直径の約16パーセントの直径を有し、鈍頭物体は、ハウジングの長さの約10パーセントの入口からの距離に位置する。また、脈動流量計は、オリフィス、オリフィス板の厚さ、およびオリフィス板の直径を有する、ハウジング内に配置されるオリフィス板を含み、オリフィス板は、オリフィス板が、オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、鈍頭物体から所定の距離で鈍頭物体の下流に位置し、オリフィスの厚さは、ハウジングの直径の2〜4パーセントの範囲内にあり、オリフィス板の直径は、ハウジングの直径と実質的に等しく、オリフィスは、ハウジングの直径の約60パーセントであり、オリフィス板と鈍頭物体との間の所定の距離は、ハウジングの直径の約50パーセントの距離である。また、脈動流量計は、脈動流の脈動周波数を検出し、検出された脈動周波数に基づいて流体流量を判定するための手段を含むことができる。
【0017】
別の実施形態において、脈動流量計は、流体流量を判定するために、脈動周波数および脈動振幅を使用するように適合される。脈動流量計は、鈍頭物体を通って流れるプロセス流体に渦周波数を有する渦流パターンを与えるように動作可能な鈍頭物体と、ハウジング内に配置され、かつオリフィスを有するオリフィス板であって、オリフィス板は、鈍頭物体の下流に位置し、オリフィス板は、オリフィス板が、オリフィスを通過した結果としてプロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能なように、鈍頭物体から所定の距離に位置する、オリフィス板と、を含むことができる。別の実施形態において、脈動流量計は、複数の異なる流体相組成と、対応する脈動周波数および脈動振幅値を有する複数の異なる総容積流体流量と、に対する相関データで較正することができる。
【0018】
また、本発明の実施形態は、プロセス流体流導管内の流体流量を判定するための方法も提供する。一実施形態において、方法は、プロセス流体に脈動振幅を有する脈動周波数を有する脈動流を与えるように動作可能な脈動流量計を通ってプロセス流体を流すステップと、脈動周波数を検出するステップと、検出された脈動周波数に基づいて流体流量を判定するステップと、を含むことができる。別の実施形態において、方法は、上記の脈動流量計のいずれかを用いて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、特許請求の範囲、および添付の図面に関して、より良く理解されるであろう。しかしながら、図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを例示し、したがって、他の同様に効果的な実施形態を認めることができるため、本発明の範囲を限定するものと見なすべきではないことに留意すべきである。
【0020】
図1】従来公知の渦流量計の斜視図である。
【0021】
図2】従来公知の渦流量計の上面断面図である。
【0022】
図3】従来公知の渦流量計を用いたカルマン渦列の計算流動シミュレーションを表示する。
【0023】
図4】本発明の実施形態による脈動流量計の上面断面図である。
【0024】
図5】本発明の実施形態による脈動流量計の計算流動シミュレーションを表示する。
【0025】
図6】本発明の実施形態による脈動流量計の斜視図である。
【0026】
図7】本発明の実施形態による脈動流量計の別の上面断面図である。
【0027】
図8】従来公知の渦流量計を用いたカルマン渦列によって生じる信号のグラフィック表示である。
【0028】
図9図8のフーリエ変換である。
【0029】
図10】本発明の実施形態による脈動流量計によって生じる信号のグラフィック表示である。
【0030】
図11図10のフーリエ変換である。
【0031】
図12】本発明の実施形態による脈動流量計システムの上面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、いくつかの実施形態に関連して記載されるが、本発明をそれらの実施形態に限定するよう意図されないことが理解されよう。逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に含まれ得る、全ての変更、修正、および等価物を包含するよう意図される。
【0033】
本発明の実施形態において、弱い雑音対流動比を有する用途に対して補正するのに有利に役立つことができる、脈動渦流量計が提供される。実施形態において、オリフィス板は、オリフィス板が、プロセス流体がオリフィス板のオリフィスを通って流れるときに、プロセス流体に(渦放出と対照的な)脈動流を与えるように動作可能なように、鈍頭物体から所定の距離に置かれる。
【0034】
図4は、本発明の実施形態の上面断面図である。プロセス流体12は、入口36を介して外殻35に入る。プロセス流体12は、鈍頭物体20を通って流れ、鈍頭物体20の境界効果に起因して、渦放出の開始を示し始める。しかしながら、オリフィス板40は、プロセス流体が渦放出を完全に受けるのを妨げる。代わりに、プロセス流体は、オリフィス42を通過した後に、脈動50によって示される、脈動周波数を有する脈動流に変換される。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に従って行われる一連の計算流動モデリングからの3つのスナップショットの編集である。図5において見られるように、各脈動は、その先行部から完全に離れており、ならびに高強度の所定の脈動コアを持つ。
【0036】
図6は、脈動流量計30の斜視図である。プロセス流体は、プロセス流体流導管(図示せず)から入口36でハウジング44に入る。プロセス流体は、鈍頭物体20の周りを流れ、オリフィス板40のオリフィス42を通って流れる。プロセス流体は、ハウジング44の内部を通って移動し続けるが、オリフィス42を通過した後、複数の脈動50によって特徴付けられる、脈動流を示し始める。脈動50は、出口38からハウジング44を出、プロセス流体流導管(図示せず)に再び入る。
【0037】
図7は、本発明の実施形態の別の上面断面図である。この実施形態において、脈動流量計30は、半径方向のハウジングの直径D、縦軸60、および縦方向のハウジングの長さLを含む。
【0038】
図8および図9は、先行技術の典型的な渦流量計によって生じる信号のグラフィック表示である。図8は、カルマン渦列によって生じる信号を表す。図9は、特異特性周波数および渦放出の周波数に対応するその高調波を明らかに示す、結果のフーリエ変換を示す。
【0039】
図10および11は、本発明の実施形態に従う脈動流量計の使用によって生じる信号のグラフィック表示である。図10は、脈動メカニズムによって生じる信号を表す。図11は、結果のフーリエ変換を示す。この分析は、脈動周波数が、同一の流動条件(すなわち、パイプおよび鈍頭物体の同一のジオメトリ、同一のレイノルズ数、および同一の粘性)に対して、図8および9に示されるカルマン列渦と比較してより低い周波数を有することを示している。したがって、本発明の実施形態における脈動は、カルマン渦よりも大きい周期を有する。さらに、図11に示されるフーリエ変換スペクトルは、図8および9に示される渦流量計からの信号の強度(0.008)よりも高い、ほぼ0.025の強度を有する、約0.025Hzの特性周波数を示す。したがって、本発明の実施形態は、より良好な雑音対流動比を得る。したがって、本発明の実施形態における雑音フィルタリングは、カルマン渦に基づいた従来の渦流量計よりも生じるエラーが少ない。
【0040】
図12は、脈動流量計システム62の実施形態である。脈動流量計30は、プロセス流体流導管64に接続され、かつプロセス流体流導管64と流体連通する。当業者であれば、流体流導管が、プロセス流体12が流れる、任意の種類のパイプ、管、または他の導管であり得ることを理解するであろう。さらに、脈動流量計30は、図12に示されるように、流体流導管64と直列に接続することができるか、または、流体流導管64と並列に接続することができる。
【0041】
脈動50と比例する周波数を測定する感知器である、感知器66が示され、外殻35に接続される。感知器66は、例えば、容量性、圧電、誘導、または電気力学的変換器等の、脈動50を測定するための任意の種類の感知器であることができる。感知器66は、脈動流によって生じる圧力差を感知することによって、脈動50の脈動周波数を検出するように動作可能である。
【0042】
伝送器68は、感知器66と通信し、感知器66によって感知される圧力差に基づいて流量測定信号を生成するように動作可能である。プロセッサ70は、伝送器68と通信し、ならびに流量測定信号を受信し、流体流量を判定するように動作可能である。別の実施形態において、脈動流量計システム62は、プロセッサ70と通信する表示部72等の表示手段をさらに含むことができ、表示手段は、流体流量を表示するように動作可能である。感知器66、伝送器68、プロセス70、および表示部72の全てまたは一部は、共通のハウジング74内に位置することができる。代替的に、いくつかの要素は、ハウジング74から離れて位置することができる。例えば、表示部72は、プロセッサを有するコンピュータ表示部であることができ、伝送器68は、データをプロセッサに送信して、コンピュータ表示部に表示することができる。
【0043】
本発明は、生成された渦が、両方とも高精度測定に有利な、より強い信号応答およびより高い流動周期を有するという事実に起因して、従来の渦流量計と比較してより良好な精度を有する渦脈動メカニズムに基づいた新しい流動システムを示す。
【0044】
本発明は、その特定の実施形態と併せて記載されたが、多くの変更、修正、および変形が上記の記載に照らして当業者には明らかであることが明白である。したがって、添付の特許請求の精神および幅広い範囲に含まれる、変更、修正、および変形といった全てを包含するよう意図される。本発明は、適切に、開示された要素を含み得るか、開示された要素から成り得るか、または開示された要素から本質的に成り得、開示されていない要素が存在しなくても実施され得る。さらに、第1および第2等の順序づけを指す言語は、例示的な意味であり、限定する意味ではないと理解されるべきである。例えば、特定のステップを組み合わせて単一のステップにすることができることが、当業者によって認識され得る。
【0045】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0046】
任意の、または任意で、は、その後記載される事象または状況が発生し得るか、または発生し得ないことを意味する。その記載は、事象または状況が発生する場合、および発生しない場合を含む。
【0047】
範囲は、本明細書において、約1つの特定の値から、および/または約別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表された場合、別の実施形態は、その範囲内の全ての組み合わせと共に、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までであることが理解されるべきである。
【0048】
特許または刊行物が参照される、本出願を通して、これらの参考文献の開示は、これらの参考文献が本明細書の記載と矛盾する場合を除いて、本発明が属する最新技術をより十分に記述するために、それら全体が参照により本出願に組み込まれるよう意図される。
図1
図2
図4
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図3
図5