【実施例】
【0128】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0129】
<合成例1:A−Cブロックコポリマー−1の合成>
還流管、窒素ガス導入装置、温度計、及び撹拌装置を取り付けた1Lセパラブルフラスコに、有機溶剤としてジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、BDGと略記)を368.7部、ヨウ素を3.2部、メタクリル酸メチル(以下、MMAと略記)を44.0部、メタクリル酸ブチル(以下、BMAと略記)44.0部、メタクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2−EHMAと略記)を22.0部、ポリ(n=2〜4)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(日油社製、以下、PME200と略記)を34.0部、メタクリル酸(以下、MAAと略記)を15.0部、触媒としてジフェニルメタン(以下、DPMと略記)を0.3部、重合開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製、以下、V−70と略記)を13.5部仕込み、窒素を流しながら40℃で5.5時間重合してAブロックを形成し、ポリマー溶液(A1)を得た。このポリマー溶液(A1)の固形分を測定したところ、32.3%であり、換算した重合転化率はほぼ100%であった。また、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)を展開溶媒とするGPC測定を行ったところ、数平均分子量が5700、PDIが1.26であった。このポリマー溶液(A1)の一部を水に添加したところ、樹脂が析出した。このことは、得られたポリマーは水に不溶であることを示している。
【0130】
また、エタノール/トルエンを溶媒とした0.1NのKOHエタノール溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬として滴定にて測定したAブロックの樹脂酸価は54.0mgKOH/gであり、ほぼ理論値どおりであった。以下、酸価については、上記の方法で測定し、その値を示した。
【0131】
次いで、下記のようにして、上記で得たAブロックにCのポリマーブロックを導入した。まず、上記で得たポリマー溶液(A1)に、一般式(2)の構造を有するメタクリル酸ベンジルジメチルアンモニウムクロライドエチル(以下、DMQ−1と略記)を30.1部、メタクリル酸ベンジル(以下、BzMAと略記)を88.1部、BDG70.2部を予め混合均一化させた溶液を添加した。そして、さらにV−70を2.4部添加し、同じ温度で4時間重合してCブロックを形成し、ポリマー溶液(A1−C1)を得た。得られたポリマー溶液(A1−C1)の固形分は40.3%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。GPC測定を行ったところ、ピークが小さく不明瞭であった。これは第4級アンモニウム塩のTHFへの溶解性が悪いことと、カラムに吸着したことによるためと考えられる。
【0132】
上記で得られたポリマー溶液(A1−C1)の一部を水に添加したところ、ほぼ透明に溶解した。これは、Cブロックの構成成分である第4級アンモニウム塩は、水に溶解する性質を有しているため、この第4級アンモニウム塩が導入されたことにより、Cブロックの部分が水に溶解し、水に不溶のAブロック部分が微細な粒子となって分散したためと考えられる。このことから、得られたポリマーは、AブロックにCブロックが導入されたA−Cブロックコポリマーであることが示唆された。これをA−Cブロックコポリマー−1と称す。
【0133】
<合成例2:A−Cブロックコポリマー−2の合成>
合成例1で用いたと同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを382.8部、ヨウ素3.2部、MMAを44.0部、BMAを44.0部、2−EHMAを22.0部、PME200を34.0部、MAAを15.0部、触媒としてDPMを0.3部、V−70を13.5部使用した以外は、合成例1と同様に重合してAブロックを形成してポリマー溶液(A2)を得た。このポリマー溶液(A2)の固形分を測定したところ、31.5%であり、換算した重合転化率はほぼ100%であった。GPC測定による数平均分子量は5700、PDIは1.26であった。また、Aブロックの樹脂酸価は54.5mgKOH/gであった。
【0134】
次いで、上記で得たポリマー溶液(A2)に、DMQ−1を19.9部、BzMAを88.1部、BDGを46.4部、を予め混合均一化させた溶液を添加し、さらにV−70を2.2部添加した以外は、合成例1と同様にして重合してCブロックを形成し、ポリマー溶液(A2−C2)を得た。このポリマー溶液(A2−C2)の固形分は40.5%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。
【0135】
合成例1の場合と同様にGPC測定を行ったが、ピークが小さく不明瞭でうまく測定できなかった。また、ポリマー溶液(A2−C2)の一部を水に添加したところ、若干白濁して溶解した。これは、合成例1の場合と比べて第4級アンモニウム塩の量が少ないため、水への溶解性が低下したためと考えられる。しかし、Aブロックが水に不溶であったのと比べて、得られたポリマー溶液(A2−C2)は水への溶解性を示したことから、目的とするA−Cブロックコポリマーが得られたものと考えられる。これをA−Cブロックコポリマー−2と称す。
【0136】
<合成例3:A−Cブロックコポリマー−3の合成>
合成例1で用いたと同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを365.0部、ヨウ素を3.2部、MMAを44.0部、BMAを44.0部、2−EHMAを22.0部、PME200を34.0部、MAAを15.0部、触媒としてDPMを0.3部、V−70を13.5部使用した以外は、合成例1と同様に重合してAブロックを形成し、ポリマー溶液(A3)を得た。このポリマー溶液(A3)の固形分は32.5%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。GPC測定したところ数平均分子量は5600、PDIは1.26であった。また、Aブロックの樹脂酸価は54.3mgKOH/gであった。
【0137】
次いで、上記で得たポリマー溶液(A3)に、DMQ−1を42.0部、BzMAを88.1部、BDGを98.0部、を予め混合均一化させた溶液を添加し、さらにV−70を2.6部添加した以外は、合成例1と同様に重合してCブロックを形成し、ポリマー溶液(A3−C3)を得た。このポリマー溶液(A3−C3)の固形分は40.0%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。
【0138】
合成例1の場合と同様にGPC測定を行ったが、ピークが小さく不明瞭でうまく測定できなかった。また、ポリマー溶液(A3−C3)の一部を水に添加したところ、ほぼ透明に溶解したことからA−Cブロックコポリマーが得られたものと考えられる。これをA−Cブロックコポリマー−3と称す。
【0139】
<合成例4:A−Cブロックコポリマー−4の合成>
合成例1で用いたと同様の装置を使用し、有機溶剤としてBDGを362.1部、ヨウ素3.2部、MMAを44.0部、BMAを44.0部、2−EHMAを22.0部、PME200を34.0部、MAAを15.0部、触媒としてDPMを0.3部、V−70を13.5部使用した以外は、合成例1と同様に重合してAブロックを形成し、ポリマー溶液(A4)を得た。このポリマー溶液(A4)の固形分を測定したところ、31.5%であり、換算した重合転化率はほぼ100%であった。GPC測定による数平均分子量は5600、PDIは1.25であった。また、Aブロックの樹脂酸価は54.4mgKOH/gであった。
【0140】
次いで、上記で得たポリマー溶液(A4)に、DMQ−1を48.2部、BzMAを88.1部、BDGを112.6部、を予め混合均一化させた溶液を添加し、さらにV−70を2.7部添加した以外は、合成例1と同様にして重合してCブロックを形成し、ポリマー溶液(A4−C4)を得た。このポリマー溶液(A4−C4)の固形分は40.5%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。
【0141】
合成例1の場合と同様にGPC測定を行ったが、ピークが小さく不明瞭でうまく測定できなかった。また、得られたポリマー溶液(A4−C4)の一部を水に添加したところ、合成例1と同様に、ポリマー溶液(A4−C4)は水への溶解性を示したことから、目的とするA−Cブロックコポリマーが得られたものと考えられる。これをA−Cブロックコポリマー−4と称す。
【0142】
<合成例1〜4で得たA−Cブロックコポリマーの物性>
上記の合成例1〜4で得た各A−Cブロックコポリマーのそれぞれについて、重合開始化合物1モルに対するAモノマーのモル数(Aブロックを形成するために使用した全モノマー数。以下同じ。)、重合開始化合物1モルに対するCモノマーのモル数(Cブロックを形成するために使用した全モノマー数。以下同じ。)、AブロックとCブロックの質量比、A−Cブロックコポリマー1g中に含まれる第4級アンモニウム塩のモル数(ミリモル)を算出した。これをまとめて表1に示した。
【0143】
【0144】
<比較合成例1:ランダム共重合による比較ポリマーの合成>
合成例1で用いたと同様の装置を使用し、BDGを438.9部、ヨウ素を3.2部、MMAを44.0部、BMAを44.0部、2−EHMAを22.0部、PME200を34.0部、MAAを15.0部、DMQ−1を30.1部、BzMAを88.1部、触媒としてDPMを0.3部、V−70を13.5部仕込み、窒素を流しながら40℃で6時間重合して、ポリマー溶液(R1)を得た。このポリマー溶液(R1)の固形分は40.2%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。上記で得られたポリマーは、合成例1のA−Cブロックコポリマー−1と同一の組成で、ランダム共重合した比較ランダ
ムコポリマーである。
【0145】
<実施例1:色素ポリマーR−1の合成>
3Lのビーカーに、アシッドレッド289(以下、AR−289と略記、分子量676.7)を15部、水を985部仕込んで、撹拌して均一化させて染料溶液を得た。この一部をろ紙にスポットしたところ、染料が裏抜けし、染料が溶解していることを確認した。次いで、合成例1で得たA−Cブロックコポリマー−1を154.0部と、イオン交換水を154.0部の混合溶液を、上記染料溶液に徐々に添加したところ増粘が見られた。そのまま1時間撹拌し、得られた溶液の一部をろ紙にスポットしたところ、樹脂の析出が確認され、染料のブリードはほとんど見られなかった。これは、A−Cブロックコポリマー−1の第4級アンモニウム塩クロライドの塩化物イオンと、上記染料溶液中のAR−289のナトリウムイオンとが塩化ナトリウムとして脱離する一方で、第4級アンモニウム塩とAR−289のスルホナートイオンが塩を形成することにより、ブロックコポリマーは不溶化したと考えられる。すなわち、A−Cブロックコポリマー−1に色素が導入され、本発明で規定する構造のA−Bブロックコポリマーが得られたと考えられる。
【0146】
この溶液をろ過したところ、ろ液は透明であり、さらにイオン交換水で洗浄しても、ろ液が透明であったことから、色素はポリマーと結合していることが示唆された。その後、80℃の乾燥機で乾燥し、粉砕して本実施例のA−Bブロックコポリマーを得た。これを色素ポリマーR−1と称す。このA−Bブロックコポリマーに色素が導入した色素ポリマーR−1中に占める色素モノマー単位の含有量は、A−Bブロックコポリマー中に26.4%であり、Bブロック中に49.5%含有されていた。この色素ポリマーを赤外分光光度計(IR)にて測定を行った。その結果を
図1に示したが、A−Cブロックコポリマー−1由来のピークと、AR−289由来のピークが確認できた。
【0147】
<実施例2、3:色素ポリマーR−2、3の合成>
実施例1に使用した合成例1のA−Cブロックコポリマー−1に替えて、合成例2で得たA−Cブロックコポリマー−2又は合成例3で得たA−Cブロックコポリマー−3をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にしてA−Bブロックコポリマーを合成した。具体的には、実施例2としてA−Cブロックコポリマー−2を228.0部、実施例3としてA−Cブロックコポリマー−3を115.4部、それぞれ使用した以外は実施例1と同様にしてA−Bブロックコポリマーを合成した。なお、ポリマーの使用量は、いずれの実施例も、AR−289の有するスルホン酸に対して、A−Cブロックコポリマーの第4級アンモニウム塩がほぼ等モルで反応する量となるようにした。
【0148】
得られたA−Bブロックコポリマーはいずれも、実施例1と同様の現象がみられ、本発明で規定するA−Bブロックコポリマーとなっていることが確認された。実施例2のA−Bブロックコポリマーを色素ポリマーR−2、実施例3のA−Bブロックコポリマーを色素ポリマーR−3と称す。色素ポリマーR−2の色素モノマー単位の含有量はA−Bブロックコポリマー中に18.8%であり、Bブロック中に39.4%含有されていた。また、色素ポリマーR−3における色素モノマー単位の含有量は、A−Bブロックコポリマー中に33.4%であり、Bブロック中に58.0%含有されていた。
【0149】
<実施例4:色素ポリマーR−4の合成>
実施例1に使用したAR−289に替えて、アシッドレッド52(以下、AR−52と略記、分子量:580.6)を30部、水を1970部、合成例1で得たA−Cブロックコポリマー−1に替えて、合成例4で得たA−Cブロックコポリマー−4を236.3部、イオン交換水236.3部をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様にしてA−Bブロックコポリマーを合成した。なお、上記のポリマーの使用量は、AR−52の有するスルホン酸に対して、A−Cブロックコポリマーの第4級アンモニウム塩がほぼ等モルで反応する量となるようにした。
【0150】
得られたA−Bブロックコポリマーは、いずれも実施例1と同様の現象がみられ、本発明で規定するA−Bブロックコポリマーとなっていることが確認された。実施例4のA−Bブロックコポリマーを色素ポリマーR−4と称す。色素ポリマーR−4の色素モノマー単位の含有量はA−Bブロックコポリマー中に36.3%であり、Bブロック中に62.8%含有されていた。
【0151】
<実施例5:色素ポリマーB−1の合成>
3Lのビーカーに、ダイレクトブルー86(以下、DB−86と略記、分子量780.2)を15部、水985部を仕込んで、撹拌して均一化させて染料溶液を得た。ろ紙へのスポットは裏抜けし、染料が溶解していることを確認した。次いで、合成例2で得たA−Cブロックコポリマー−2を196.2部と、イオン交換水を196.2部の混合溶液を、上記染料溶液に徐々に添加したところ、実施例1の場合と同様に増粘が確認された。1時間撹拌した後、ろ紙にスポットしたところ、樹脂の析出が確認できた。ブリードはほとんどなく、ほとんどの色素が反応したと考えられる。すなわち、Cブロックに、DB−86の色素分子が導入され、本発明で規定する構造のA−Bブロックコポリマーになったと考えられる。これを色素ポリマーB−1と称す。この色素ポリマーB−1における、色素モノマー単位の含有量は、A−Bブロックコポリマー中に20.7%であり、Bブロック中に42.3%で含有されていた。この色素ポリマーの赤外分光光度計(IR)にて測定を行った。
図2にその結果を示したが、A−Cブロックコポリマー−2由来のピークと、DR−86由来のピークが確認できた。
【0152】
<実施例6:色素ポリマーY−1の合成>
3Lのビーカーに、ダイレクトイエロー142(以下、DY−142と略記、分子量794.7)を15部、水を985部仕込んで、撹拌して均一化させて染料溶液を得た。ろ紙へのスポットは裏抜けし、染料が溶解していることを確認した。次いで、合成例3で得たA−Cブロックコポリマー−3を98.6部と、イオン交換水を98.6部の混合溶液を、上記染料溶液に徐々に添加したところ、実施例1の場合と同様に増粘が確認された。1時間撹拌した後、ろ紙にスポットしたところ、樹脂の析出が確認できた。ブリードはほとんどなく、ほとんどの色素が反応したと考えられる。すなわち、CブロックにDY−142の色素分子が導入され、本発明で規定する構造のA−Bブロックコポリマーになったと考えられる。これを色素ポリマーY−1と称す。この色素ポリマーY−1の赤外分光光度計(IR)にて測定を行った。その結果を
図3に示した。この色素ポリマーY−1における色素モノマー単位の含有量は、A−Bブロックコポリマー中に36.1%であり、Bブロック中に60.8%で含有されていた。
図3に示したIRの測定結果から、A−Cブロックコポリマー−3由来のピークと、DY−142由来のピークが確認できた。
【0153】
実施例1〜6で得た各色素ポリマーについて、表2にまとめて示した。
【0154】
<合成例5:A−Cブロックコポリマー−5の合成>
合成例1と同様の装置を使用し、有機溶剤としてトリエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、BTG)を355.4部、BzMAを99部、MAAを22.7部、N−アイオドコハク酸イミドを0.22部、ヨウ素を1.5部、V−70を6.5部仕込んで、合成例1と同様に5時間重合を行い、Aブロックを形成し、ポリマー溶液(A5)を得た。このポリマー溶液(A5)の固形分を測定したところ、26.3%であり、換算した重合転化率はほぼ100%であった。また、数平均分子量は6800、PDIは1.23であった。また、合成例1と同様にして樹脂の酸価を測定したところ、121.7mgKOH/gであった。また、このポリマー溶液(A5)を水に添加したところ、析出したことが確認され、ポリマーが水に不溶であることを確認した。
【0155】
次いで、合成例1と同様に、上記で得たポリマー溶液(A5)に、DMQ−1を25.4部、BTGを59.54部、BzMAを79.2部仕込んだ後、4時間重合してCブロックを形成し、ポリマー溶液(A5−C5)を得た。このポリマー溶液(A5−C5)の固形分は40.0%であり、換算した重合率はほぼ100%であった。分子量は不明瞭であり、確実なる分子量測定はできなかった。また、このポリマー溶液(A5−C5)を水に添加したところ、半透明の微粒子分散することが確認された。Aブロックが水に不溶微粒子を形成し、Cブロックが水に溶解したためと考えられる。これをA−Cブロックコポリマー−5と称す。
【0156】
<合成例6:A−Cブロックコポリマー−6の合成>
合成例5と同様にして、Aブロックを形成するモノマーとしてMAAを使用するが、その量を半減させた以外は、合成例5と同様にして重合を行い、Aブロックを形成した。重合転化率はほぼ100%であり、得られたポリマーの数平均分子量は5600、PDIは1.19であった。樹脂の酸価は61.0mgKOH/gであった。
【0157】
次いで、合成例5と同様の組成で重合を行い、Cブロックを形成し、ポリマー溶液(A6−C6)を得た。このポリマー溶液(A6−C6)の固形分は40.2%であり、ほぼ100%重合していることを確認した。分子量は不明瞭であった。また、このポリマー溶液(A6−C6)を水に添加したところ、半透明の微粒子分散することが確認された。これをA−Cブロックコポリマー−6と称す。
【0158】
<合成例7:A−Cブロックコポリマー−7の合成>
合成例5と同様に、Aブロックを形成するモノマーとしてMAAを使用するが、その量を倍増させた以外は、合成例5と同様にして重合を行い、Aブロックを形成した。重合転化率はほぼ100%であり、得られたポリマーの数平均分子量は7800、PDIは1.35であった。樹脂の酸価は205.0mgKOH/gであった。
【0159】
次いで、合成例5と同様の組成で重合を行い、Cブロックを形成し、ポリマー溶液(A7−C7)を得た。このポリマー溶液(A7−C7)の固形分は40.2%であり、ほぼ100%重合していることを確認した。分子量は不明瞭であった。また、このポリマー溶液(A7−C7)を水に添加したところ、半透明の微粒子分散することが確認された。これをA−Cブロックコポリマー−7と称す。
【0160】
上記合成例5〜7について、Aブロックの酸価、重合開始化合物1モルに対するAモノマーのモル数、重合開始化合物1モルに対するCモノマーのモル数、AブロックとCブロックの質量比、A−Cブロックコポリマー1g中に含まれる第4級アンモニウム塩のモル数(mmol)を算出した。これをまとめて表3に示した。
【0161】
【0162】
<実施例7:処理ブルー顔料−1の調製>
5Lのフラスコに、微細化されたPB−15:6(A−037、大日精化工業社製、固形分28.8%、平均一次粒子径30nm)の水ペーストを347.2部(顔料分が100部)、銅フタロシアニンモノスルホン酸を5.0部(分子量656.1、以下、MSと記す)仕込んで、顔料濃度が5%になるように水にて希釈した。本実施例で使用したMSは、顔料のシナジストとして作用しながら、本発明を特徴づけるスルホン酸基を有する色素としても働く。次いで、ホモジナイザーで撹拌しながら、AR−289を15.0部添加し、5000rpmで1時間撹拌し解膠し、顔料を含有した色素溶液を得た。その一部を採り、ろ紙にスポットした。
【0163】
次いで、合成例1で得たA−Cブロックコポリマー−1を205.5部と、イオン交換水205.5部との混合溶液を、上記で調製した顔料を含有した色素溶液に徐々に添加した。ある時点で増粘し、その後、減粘することが確認できた。この増粘は、第4級アンモニウム塩を有することにより、水に溶解していたA−Cブロックコポリマー−1が、AR−289及びMSの有するスルホン酸塩と塩交換することにより、CブロックがBブロックとなって、顔料表面に析出し、顔料表面がA−Bブロックコポリマー由来の疎水性となったことにより、流動性が出なくなったためと考えられる。次いで、そのまま1時間撹拌し、再び一部を採り、ろ紙にスポットした。その結果を、解膠時のものと合わせて
図4に示した。
【0164】
図4の左側が解膠時にスポットしたものであるが、中央が顔料で、その周りに染料のAR−289がブリードしていることがわかる。
図4の右側は、A−Cブロックコポリマー−1を添加した後にスポットしたものであるが、明らかにAR−289のブリードが見られなかった。これらのことから、A−Cブロックコポリマー−1とAR−289とが塩交換して染料が不溶化して、本発明で規定するA−Bブロックコポリマーとなって顔料を処理したものになったと考えられる。
【0165】
次いで、この溶液をろ過、洗浄した。ろ過が速く、ろ液や洗浄液の着色がなかった。このことからも、A−Bブロックコポリマーとなっていることが推測される。次いで、80℃で24時間乾燥し、ミルにて粉砕した。
【0166】
得られた粉砕物は、使用した顔料100部に対し、後述するように理論的に約100.0%で得られたものであり、色素としてのMSとAR−289が、A−Cブロックコポリマー−1に反応して脱塩化ナトリウムすることで、A−Bブロックコポリマーで顔料が処理された樹脂処理顔料になっている。上記の例では、MSとAR−289のスルホン酸基に対しA−Cブロックコポリマー−1の第4級アンモニウム塩をほぼ等モルで反応させた。これを処理ブルー顔料−1と称す。
【0167】
上記で得た処理ブルー顔料−1では、本発明を特徴づける一般式(1)で表される色素モノマー単位は、A−Bブロックコポリマー中に26.5%、Bブロック中に49.8%と高い比率で含有されている。顔料100部に対する処理に使用したA−Bブロックコポリマー−1の比率は、101.2%であり、得られた樹脂処理顔料中に含有される顔料分は49.7%である。これらの含有量については、すべて理論計算値である。この点について、以下に簡単に説明する。
【0168】
使用したMSの5g(以下の説明においては、部数を「g」として扱う。)は、7.6mmolであり、同様に、AR−289は22.2mmol(15g)使用されるので、全スルホン酸基は29.8mmolとなる。一方、A−Cブロックコポリマーは、ポリマー分で82.8g使用したため、ポリマー中に含有されている第4級アンモニウム塩は、29.8mmolとなり、MSとAR−289の全スルホン酸基と等モルとなる。これを反応させることで、MS由来の脱塩化水素は7.6mmol(0.28g)、AR−289由来の脱塩化ナトリウムは22.2mol(1.30g)であり、トータルで1.58g減量する。よって、A−Bブロックコポリマーの量は、5+15+82.8−0.28−1.30=101.2gとなり、すなわち、顔料100部は、約101.2部のA−Bブロックコポリマー−1で処理されることとなる。この結果、処理顔料中に含まれる顔料の割合は、上記したように49.7%となる。
【0169】
一方、反応して得られるA−Bブロックコポリマー中の一般式(1)で表される色素モノマー単位に関しては、MSを反応させて得られるメタクリレート(以下、MSのメタクリレートと記す)の分子量は903.4であり、AR−289を反応させて得られるメタクリレート(以下、AR−289のメタクリレートと記す)の分子量は902.1である。実施例7において、MS及びAR−289は、すべてA−Cブロックコポリマーと反応するため、得られるA−Bブロックコポリマーには、使用したMSとAR−289のモル数が導入されることとなる。すなわち、A−Bブロックコポリマー中に、MSのメタクリレートが6.9g、AR−289のメタクリレートが20.0g導入されて、色素含有メタクリレートは、総量で26.9gとなる。上述したように、得られたA−Bブロックコポリマーは101.2gであるので、A−Bブロックコポリマー中に含まれる色素含有メタクリレート(色素モノマー単位)は、26.5%となる。
【0170】
また、実施例7において、使用したA−Cブロックコポリマー(固形分40.3%)のAブロックとCブロックの比率は57:43であることから、使用したA−Cブロックコポリマー(205.5g)中に含まれるAブロックは47.2gとなる。A−BブロックコポリマーにおけるAブロックの含有量は、A−Cブロックコポリマーと変わらず、47.2gのままであり、よって、生成したA−Bブロックコポリマー101.2g中におけるBブロックの含有量は54.0gとなる。上記した色素含有メタクリレートは26.9gなので、Bブロック中における色素モノマー単位の比率は、26.9÷54.0×100=49.8%となる。以下、同様にして計算して算出した。
【0171】
<実施例8:処理ブルー顔料−2の調製>
実施例7と同様にして、合成例1で得られたA−Cブロックコポリマー−1の替わりに、合成例2で得られたA−Cブロックコポリマー−2(固形分40.5%)を306.6部使用した以外は、実施例7と同様にして樹脂処理顔料の調製を行って粉砕物を得た。その結果、実施例7と同様の現象が見られ、顔料がA−Bブロックコポリマーで処理されたことが確認できた。
【0172】
前述した実施例7と同様の理論計算によれば、得られた樹脂処理顔料は、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約142.6%で処理された顔料である。また、上記の例でも、MSとAR−289のスルホン酸基に対しA−Cブロックコポリマー−2の第4級アンモニウム塩をほぼ等モルで反応させた。これを処理ブルー顔料−2と称す。
【0173】
<実施例9〜11:処理ブルー顔料−3〜5の調製>
実施例7と同様にして、合成例1で得られたA−Cブロックコポリマー−1の替わりに、合成例3で得られたA−Cブロックコポリマー−3(固形分40.0%)を、それぞれ下記の量で使用した以外は、いずれも実施例7と同様にして実施例9〜11の樹脂処理顔料(粉砕物)の調製を行った。具体的には、合成例3で得られたA−Cブロックコポリマー−3を、実施例9では155.2部の量で使用し、実施例10では194.0部の量で使用し、実施例11では232.8部の量で使用した。いずれにおいても実施例7と同様の現象が見られ、顔料がA−Bブロックコポリマーで処理された、該A−Bブロックコポリマーが高い比率を占める樹脂処理顔料となっていることが確認できた。
【0174】
実施例7と同様の理論計算値によれば、実施例9で得られた樹脂処理顔料は、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約80.5部(80.5%)で処理された顔料である。また、この例でも、MSとAR−289のスルホン酸基に対しA−Cブロックコポリマーの第4級アンモニウム塩をほぼ等モルで反応させた。これを処理ブルー顔料−3と称す。
【0175】
実施例7と同様の理論計算によれば、実施例10で得られた樹脂処理顔料は、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約96.0部(96.0%)で処理された顔料である。この例は、AR−289のスルホン酸基に対しA−Cブロックコポリマーの第4級アンモニウム塩が1.25モル倍過剰な条件で反応させたもので、第4級アンモニウム塩が残っているものである。これを処理ブルー顔料−4と称す。
【0176】
実施例7と同様の理論計算によれば、実施例11で得られた樹脂処理顔料は、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約111.6部(111.6%)で処理された顔料である。この例は、AR−289のスルホン酸基に対しA−Cブロックコポリマーの第4級アンモニウム塩が1.5モル倍過剰な条件で反応させたもので、第4級アンモニウム塩が残っているものである。これを処理ブルー顔料−5と称す。
【0177】
<実施例12:処理ブルー顔料−6の調製>
実施例7と同様にして、実施例7で使用したAR−289の替わりにAR−52を30部、合成例1で得られたA−Cブロックコポリマー−1の替わりに、合成例4で得られたA−Cブロックコポリマー−4(固形分40.5%)を236.3部使用した以外は、実施例7と同様にして樹脂処理顔料の調製を行って粉砕物を得た。その結果、実施例7と同様の現象が見られ、顔料がA−Bブロックコポリマーで処理されたことが確認できた。
【0178】
実施例7と同様の理論計算によれば、得られた樹脂処理顔料は、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約127.4%で処理された顔料である。この例では、実施例7と同様に、MSとAR−52のスルホン酸基に対しA−Cブロックコポリマーの第4級アンモニウム塩をほぼ等モルで反応させた。これを処理ブルー顔料−6と称す。
【0179】
上記で得た処理ブルー顔料−6において、本発明を特徴づける一般式(1)で表される色素モノマー単位は、実施例7と同様の理論計算によれば、A−Bブロックコポリマー中に38.1%、Bブロック中に64.1%で含有され、また、得られた樹脂処理顔料中に含有される顔料分は44.0%である。これらの含有量は、すべて理論計算値である。
【0180】
<実施例13:処理レッド顔料−1の調製>
5Lのフラスコに、PR−254顔料(商品名:Irgazin Red L3630、BASF社製)を微細処理した、PR254顔料水ペースト(固形分23.7%、平均粒子径30nm)を421.9部(顔料分が100部)、PR−254のモノスルホン化物を5.0部(分子量371.2、以下、254Sと記す)仕込んで、顔料濃度5%になるように水にて希釈して、顔料を含有した色素溶液を得た。上記で用いた254Sは、顔料のシナジストとして作用しながら、本発明を特徴づけるスルホン酸基を有する色素として働く。ホモジナイザーで撹拌しながら、AR−52を15.0部添加し、5000rpmで1時間撹拌し解膠した。
【0181】
次いで、合成例4で得たA−Cブロックコポリマー−4を179.7部と、イオン交換水179.7部との混合溶液を、上記で調製した顔料を含有した色素溶液に徐々に添加した。実施例7と同様の現象が見られ、顔料がA−Bブロックコポリマーで処理されたことが確認できた。この樹脂処理顔料を、ろ過、洗浄した後、80℃で24時間乾燥し、ミルにて粉砕した。
【0182】
実施例7と同様の理論計算によれば、得られた樹脂処理顔料は、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約90.7部で処理された顔料である。また、上記の例でも、254SとAR−52のスルホン酸基に対して、A−Cブロックコポリマー−4の第4級アンモニウム塩をほぼ等モルで反応させた。これを処理レッド顔料−1と称す。
【0183】
上記で得た処理レッド顔料−1において、本発明を特徴づける一般式(1)で表される色素モノマー単位は、実施例7と同様の理論計算によれば、A−Bブロックコポリマー中に32.1%、Bブロック中に55.1%で含有され、また、得られた樹脂処理顔料中に含有される顔料分は52.4%である。これらの含有量は、すべて理論計算値である。
【0184】
<比較例1:比較処理ブルー顔料−1の調製>
比較合成例1で得られた、合成例1と同組成の、比較ランダ
ムコポリマー溶液を使用した以外は、実施例7と同様にして、比較例の樹脂処理顔料を作製した。実施例7と同様の現象が見られ、ランダムコポリマーでも顔料の樹脂処理が可能であり、このことから、脱塩する反応自体の作用は、ランダムコポリマーでも同様にして起こり、顔料の処理は可能であることが確認された。これを比較処理ブルー顔料−1と称す。
【0185】
<比較例2:比較処理ブルー顔料−2の調製>
実施例12と同様にして、合成例4で得られたA−Cブロックコポリマー−4の替わりに、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド(商品名:コータミンD86P、有効成分75%、分子量:586.5、花王社製)を46.3部使用した以外は、実施例12と同様にして処理した。その結果、実施例12と同様の現象が見られ、顔料が染料と処理されていることが確認できた。
【0186】
実施例12と同様の理論計算によれば、得られた処理顔料は、顔料100部に対し、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドにて理論的に約34.7部で処理された顔料である。また、上記の例でも、MSとAR−52のスルホン酸基に対し、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドをほぼ等モルで反応させた。これを比較処理ブルー顔料−2と称す。
【0187】
上記で得た比較処理ブルー顔料−2において、得られた脂処理顔料中に含有される顔料分は60.1%である。これらの含有量については、すべて理論計算値である。
【0188】
<比較例3:比較処理ブルー顔料−3の調製>
実施例12と同様にして、合成例4で得られたA−Cブロックコポリマー−4の替わりに、Disperbyk−2000(アクリル系ブロック共重合物、第4級アンモニウム塩1.09mmol/g、固形分40.0%、ビックケミー・ジャパン社製)を136.0部、使用した以外は、実施例12と同様にして樹脂処理顔料の調製を行って、粉砕物を得た。顔料がDisperbyk−2000で処理されていることが確認できた。
【0189】
実施例12と同様の理論計算によれば、得られた処理顔料は、顔料100部に対し、Disperbyk−2000にて理論的に約54.4%で処理された顔料である。また、上記の例でも、MSとAR−52のスルホン酸基に対しDisperbyk−2000をほぼ等モルで反応させた。これを比較処理ブルー顔料−3と称す。
【0190】
上記で得た比較処理ブルー顔料−3において、得られた処理顔料中に含有される顔料分は53.7%である。これらの含有量については、すべて理論計算値である。
【0191】
上記した実施例6〜12及び比較例1〜3の各樹脂処理顔料について、本発明を特徴づける一般式(1)で表される色素含有メタクリレート(色素モノマー単位)の、A−Bブロックコポリマー中における含有量及びBブロック中における含有量、並びに、顔料に対するA−Bブロックコポリマー(色素ポリマー)の比率、樹脂処理顔料中に含まれる顔料由来成分の割合を算出した。そして、求めた理論計算値を表4にまとめて示した。なお、比較例1については、ランダムコポリマーにおける比率である。また、比較例2については、低分子第四級アンモニウム塩により処理された処理顔料の比率であり、比較例3については、市販の第4級アンモニウム塩を有するアクリル系ブロック共重合物により処理された処理顔料の比率である。
【0192】
【0193】
【0194】
<応用例:カラーフィルター用着色剤>
実施例7〜13及び比較例1〜3で得た各樹脂処理顔料を、表5に示す量(部)で配合し、ディゾルバーで2時間攪拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機「ダイノミル0.6リットルECM型」(商品名、シンマルエンタープライゼス社製、ジルコニア製ビーズ 径0.65mm)を使用し、周速10m/sで分散処理して顔料分散液をそれぞれ調製した。これらを、それぞれ応用例1〜7、比較応用例1〜3とした。また、従来公知の着色剤の通常の分散を模した例として、銅フタロシアニンモノスルホン酸5%で処理されているPB−15:6(以下、比較ブルー顔料と称す)を、市販の顔料分散剤を用いて従来と同様にして分散して、これを比較応用例4とした。表5に、顔料分散液の配合をまとめて示した。なお、比較応用例4の組成については、表5−2中に示した。
【0195】
【0196】
【0197】
表6に、上記した応用例のそれぞれの顔料分散液における、顔料分散液中に含まれる顔料の数平均粒子径の測定結果、顔料分散液の初期の粘度、及び45℃で10日間放置した後(保存後)の粘度の測定結果をまとめて示した。なお、数平均粒子径は、粒度測定器「NICOMP 380ZLS−S」(商品名、インターナショナル・ビジネス社製)にて測定した。以下、同様にして行った。
【0198】
【0199】
表6に示したように、本発明の実施例の樹脂処理顔料を用いた顔料分散液は、良好な分散性と保存安定性を示した。一方、比較例1の樹脂処理顔料は、ランダム構造であるため、樹脂処理は可能であるものの、本発明の実施例の樹脂処理顔料を用いたと同様の効果を発揮することはできないことが確認された。これは、ランダム構造であるため、ポリマー分子が多粒子間顔料に吸着したり、逆に顔料を凝集したりしてしまうためと考えられる。また、比較応用例2は、本発明のA−Bブロックコポリマーで処理されておらず、さらに、顔料分散剤を加えていないため分散性が悪く分散液の流動性が初期から全く無く、分散できないことが確認できた。比較応用例3では、本発明のA−Bブロックコポリマーを使用せず、市販のアクリル系ブロック共重合物を用いたため、分散液の初期粘度は、約10mPa・sで良好であったが、保存後に流動性が無くなり保存安定性が不良であることが分かった。よって、この場合では、顔料分散剤や分散樹脂の併用が必須であることが示唆された。
【0200】
表6に示したように、本発明の色素ブロックコポリマーにより顔料を処理した樹脂処理顔料を用いてなる顔料分散液は、通常の着色剤に使用されている、すなわち、比較応用例4の、通常の顔料分散剤で顔料を分散処理した顔料分散液の場合と同様の分散性と保存安定性を達成できることが確認された。これに加えて、本発明の実施例の樹脂処理顔料を使用した場合は、比較応用例4のように分散樹脂としてのアクリル樹脂溶液を添加せずとも、顔料を微細に分散させることができ、且つ、その安定性を保つことができることが確認された。また、応用例3〜7の結果から、第4級アンモニウム塩が多く残留することで、粘度が若干高めに出る傾向があることがわかった。しかし、保存安定性は良好であり、問題はない。
【0201】
また、表6に示されているように、本発明の実施例の樹脂処理顔料を使用した各応用例の顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径は、いずれも約50nm以下であり、微細化された顔料が十分に微分散されていることが確認された。また、いずれの応用例の顔料分散液も、その初期の粘度は10mPa・s前後であり、初期の粘度と保存後の粘度とを比較すると、粘度変化は小さいことが明らかである。この結果、応用例の顔料分散液は、いずれも十分な安定性を有することが確認された。
【0202】
(応用例8〜11、比較応用例5、6:疑似カラーフィルター用顔料着色剤の調製)
次に、上記の応用例1、2及び6、7並びに、比較応用例4及び3で得た顔料分散液をそれぞれ使用して、表7に示す量(部)で配合し、混合機で十分混合して、ブルー、及びレッドの疑似カラーフィルター用顔料着色剤(疑似カラーレジスト)を得た。
【0203】
【0204】
なお、表7中の「感光性アクリル樹脂ワニス」には、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂を含むワニスを用いた。このアクリル樹脂のMnは6000であり、PDIは2.38であり、酸価は110mgKOH/gであった。また、表7中の、「TMPTA」は、トリメチロールプロパントリアクリレートを示し、「HEMPA」は2−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオン酸を示し、「DEAP」は2,2−ジエトキシアセトフェノンを示す。
【0205】
次いで、シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。そして、応用例8〜11、比較応用例5、6で作製した疑似カラーフィルター用顔料着色剤を300rpmで5秒間の条件で、それぞれガラス基板上にスピンコートした。そして、120℃で10分間プリベイクを行った後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で露光し、それぞれの青色ガラス基板を製造した。
【0206】
得られたそれぞれのガラス基板(以下、カラーガラス基板と記載)は、いずれも優れた分光カーブ特性を有した。
図5に、比較応用例2の比較ブルー顔料を用いた比較応用例5の塗膜と、本発明の樹脂処理顔料をそれぞれに用いた応用例8、9の塗膜について、それぞれの分光カーブを示した。その結果、
図5に示した通り、本発明の色素ブロックコポリマー由来の吸収が確認された。
【0207】
また、この露光前のガラス基板を、250℃で一時間放置し、その透過率の変化を調べて、結果を
図6に示した。その結果、本発明の樹脂処理顔料を用いた応用例8、9の疑似カラーフィルター用顔料着色剤の場合は、熱による透過率の減少が少ないが(
図6−1及び6−2)、一方、比較応用例5の場合は、透過率が減少していることがわかる(
図6−3)。この理由は、顔料粒子の表面が本発明のA−Bブロックコポリマー(色素ブロックコポリマー)によって処理されることによって、特に、イオン性を有するBブロックによって処理されたことで、その耐熱性が良好になったものと考えられる。また、本発明の色素ブロックコポリマーでは染料がポリマー化しているので、熱による染料の揮散がないことも確認された。
【0208】
次に、下記のようにしてアルカリ現像性試験を行った。すなわち、応用例8〜11、比較応用例5、6の各疑似カラーフィルター用顔料着色剤を用いてスピンコートしてプリベイクを行ったカラーガラス基板に、0.1Nのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液を5秒ごとにスポットし、「何秒後に塗膜の露光部が溶解するか」といった現像試験を行った。その結果を表8に示した。
【0209】
【0210】
表8に示したように、本発明の樹脂処理顔料を用いた応用例8〜11の着色剤を使用した場合は、従来の比較応用例5、6の着色剤を使用した場合と比較して現像時間が短い結果が得られた。また、その溶解挙動も膜状のカスが出ず、さらに、溶解せずに残存した塗膜の端部(エッジ)を顕微鏡で観察したところ、シャープであることがそれぞれ確認できた。これは、本発明の樹脂処理顔料の有するAブロックがアルカリにて中和され、且つ、Bのポリマーが顔料に吸着しているため、水に溶解して現像性が良好になったものと考えられる。一方、比較応用例5、6の着色剤を使用した場合は、溶解時間が若干かかり、溶解挙動も小片の膜となって脱離しているだけでなく、エッジが若干残っていることが確認された。これらは、比較応用例5、6の着色剤では顔料分散剤がアルカリ現像できないものであるためと考えられる。すなわち、本発明の樹脂処理顔料を用いた着色剤を用いることで、現像時間を短縮することができ、生産性を向上させることが可能になること期待される。
【0211】
(比較応用例7)
次に、ジオキサジン系バイオレット顔料PV−23の微細化品、及び銅フタロシアニンモノスルホン酸を顔料に対して5%処理した顔料(以下、「比較バイオレット顔料」と記す)を使用して、比較応用例4と同様にして、市販の顔料分散剤にて分散し、比較バイオレット顔料分散液を調製した。これは、従来公知の着色剤の分散を模した比較用の顔料分散液である。この比較用の顔料分散液を用いて、表5に示した比較応用例4で使用したPB−15:6を、PB−15:6とPV−23との比が85:15になるように配合したこと以外は、比較応用例4と同様にして顔料分散液を調製した。得られた顔料分散液を用いて比較応用例5と同様にしてブルーの疑似カラーフィルター用顔料着色剤(疑似カラーレジスト)を得、これを、比較応用例7とした。
【0212】
(比較応用例8)
次に、実施例13で使用した微細化したPR−254顔料に254Sを顔料に対して5%処理した顔料を市販の顔料分散剤(商品名:BYK−21116、ビックケミージャパン社製)を使用して横型メディアミルにて分散してPR−254顔料分散液を調製した。また、下記化学式で表される化合物を顔料に対して5%処理したアントラキノン系レッド顔料PR−177の微細化品(以下、「比較レッド顔料」と記す)を使用して、上記と同様にして、BYK−21116にて分散し、PR−177顔料分散液を調製した。これらは、従来公知の着色剤の分散を模した比較用の顔料分散液である。この比較用の顔料分散液を用いて、PB−254顔料分散液とPR−177顔料分散液との比が90:10になるように配合したこと以外は、比較応用例と同様にして顔料分散液を調製した。得られた顔料分散液を用いて比較応用例5と同様にしてレッドの疑似カラーフィルター用顔料着色剤(疑似カラーレジスト)を得、これを、比較応用例8とした。
【0213】
【0214】
得られた比較応用例7、8の着色剤を用い、先に述べたと同様にガラス基板上にスピンコートした。そして、90℃で2分間プリベイクを行った後、230℃で30分ポストベイクを行い、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cm
2の光量で露光し、青色ガラス基板を製造した。
【0215】
上記ブリベイク及びポストベイクの際における、コントラスト(CR)及び透明性の指標であるY値を測定した。具体的には、コントラスト測定機(コントラストテスター CT−1 壺坂電機社製)にて、青色ガラス基板については、y=0.074として、赤色ガラス基板については、x=0.650として、コントラスト(CR)、透明性の指標であるY値の測定を行った。その結果を表9に示した。なお、測定結果は、比較応用例7、比較応用例8の着色剤を用いた場合のプリベイクのCR、Y値を100%とし、相対的に示した。応用例8〜11の着色剤を用いた場合における各値についても、併せて表9に示した。
【0216】
【0217】
表9に示されているように、通常の顔料分散液を用いた比較応用例7、8の着色剤に比べて、本発明の樹脂処理顔料を用いた応用例8〜11の着色剤の場合は、色素由来の発色、透明性において、高コントラスト性、高透明性を得ることができた。また、耐熱性が良好で、高温であっても、物性値の低下はほとんどみられなかった。
【0218】
次に、応用例8〜10及び比較応用例7でそれぞれ得た青色ガラス基板、応用例11及び比較合成例8でそれぞれ得た赤色ガラス基板を用い、スーパーUV試験機にて、耐光性試験を行った。60mW/cm
2で30時間照射し、照射前と照射後の色差を測定した。比較応用例7で得た従来の着色剤を用いた青色ガラス基板の色差ΔEは0.2、比較応用例8で得た従来の着色剤を用いた赤色ガラス基板の色差ΔEは0.3であり、顔料由来の耐光性が確認できた。一方で、本発明の樹脂処理顔料を含む着色剤を用いた青色ガラス基板の色差ΔEは、応用例8では0.4、応用例9では0.4、応用例10では0.6であり、赤色ガラス基板の色差は、応用例11では0.4であり、比較応用例7、8に比べて耐光性が劣る結果ではあったものの、十分に耐光性が高く、使用に適する範囲であり、特に問題はなかった。
【0219】
以上のように、本発明の実施例の樹脂処理顔料を用いてなる着色剤は、分散性、保存安定性、光学特性、耐熱性、アルカリ現像性、耐光性に優れていることが分かり、特に、カラーフィルター用の着色剤として非常に有用であることが示された。
【0220】
<実施例14:処理シアン顔料−1の調製>
5リッターフラスコに、PB−15:3(A−220JC、大日精化工業社製)の水ペースト(固形分29.6%)を337.8部仕込み、さらに、スルホン酸基を有する界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(分子量348.5、以下、「SDS」とも記載)を1.5部、イオン交換水を59.2部添加した後、ディスパーで撹拌して、ミルベースを作成した。次いで、前記した横型メディア分散機を使用し、同様にしてミルベース中に顔料を十分に分散させ、顔料分散液を得た。
【0221】
上記で得られた顔料分散液を、顔料濃度5%になるように水にて希釈した。ホモジナイザーで撹拌しながら、ダイレクトブルー199(Sirius Turcoise S−FBL、ダイスタージャパン社製、以下DB−199、理論分子量909.4、平均分子内に1個のスルホン酸ナトリウム基を有する)を15部仕込んだ。5000rpmで1時間撹拌し、顔料と染料を解膠した後、一部を採り、ろ紙にスポットした。次いで、合成例1で得られたA−Cブロックコポリマー−1の溶液を144.4部とイオン交換水を144.4部混合して均一化した水溶液を徐々に添加しところ、ある時点で増粘することが確認できた。次いで、そのまま1時間撹拌した。その後、溶液の一部をスポットし、その結果を前記したスポットと合わせて
図7に示した。
【0222】
図7は、スポットしたものの表面の状態であり、左側のものが、顔料と染料を解膠した時点でのスポットである。中心の顔料と、ブリードしている染料が確認できる。また、右側のものは、A−Cブロックコポリマー−1を添加し、増粘した後にスポットしたものであるが、染料のブリードは確認できない。このことから、A−Cブロックコポリマー−1の有する塩化物イオンと染料の有するナトリウムイオンとが脱塩反応を起こして、A−Bブロックコポリマーとなり、不溶化、析出して、顔料が処理されたことが確認できた。
図7の結果は、A−Bブロックコポリマーで顔料が処理されたことが推測される。
【0223】
次いで、ろ過して水でよく洗浄したところ、ろ過性は非常に良好であり、透明で染料が流れていないことを確認できた。このことからも、本発明で規定する色素ポリマーのA−Bブロックコポリマーが形成され、顔料が処理されたと考えられる。このようにして樹脂処理顔料を得たが、その水ペーストの固形分は35.5%であった。上記で調製した樹脂処理顔料は、予めスルホン酸基を有する界面活性剤であるSDSにて微細に分散された顔料を有する水系溶媒中で調製を行うことで、処理された顔料も微細な状態で処理されることを意図したものである。この場合は、分散剤として使用したドデシルベンゼンスルホン酸(SDS)も、一部のA−Cブロックコポリマー−1と塩交換して、吸着に寄与すると考えられる。このため、SDSが導入されたものは色素として扱わないが、塩交換反応されたモノマーを含むのでA−Bブロックコポリマーであるとして扱う。
【0224】
上記で得られた樹脂処理顔料は、先に説明した実施例7と同様の理論計算によれば、顔料100部に対し、A−Bブロックコポリマーにて理論的に約73.1%で処理された顔料である。なお、上記したようにSDSが導入されたものは色素として扱わないが、A−Bブロックコポリマーであるとした。また、SDSとDB−199のスルホン酸基に対し、A−Cブロックコポリマー−1の第4級塩をほぼ等モルで反応させたものである。これを処理シアン顔料−1と称す。この処理シアン顔料−1は、本発明で規定する色素含有メタクリレート(色素モノマー単位)のA−Bブロックコポリマー中における含有量は32.3%であり、Bブロック中の含有量は46.5%であり、さらに、顔料100部に対するA−Bブロックコポリマーは73.1部であり、処理顔料に含有される顔料分は57.8%である。
【0225】
(応用例12:シアン水性顔料分散液の調製)
上記で得た処理シアン顔料−1の水ペーストを487.3部、BDGを20部、ジエタノールアミンを5部、イオン交換水43.3部を混合した後、ディスパーで撹拌してミルベースを作成した。最初は流動性のない状態であったが、撹拌するにしたがって流動性が出てきた。十分混合した後、次いで、前記した横型メディア分散機を使用し、周速10m/sで分散処理し、ミルベース中に顔料を十分に分散させた。得られたミルベースを10μmのメンブレンフィルターでろ過し、次いで5μmのメンブレンフィルターでろ過した。この際、フィルターの詰まりはまったく観察されなかった。顔料分を15質量%になるようにイオン交換水を加えて調整し、本発明で規定するシアン水性顔料分散液を得た。得られたシアン水性顔料分散液に含まれる顔料の数平均粒子径は103nmであり微分散されていた。また、粘度は、E型粘度計を用いて測定したところ、25℃、60rpmで3.30mPa・sであり、顔料に対して処理されている樹脂分が高いにもかかわらず、低粘度を示した。その理由は、溶解しているポリマー成分がないためと考えられる。
【0226】
(比較応用例9:比較シアン水性顔料分散液の調製)
上記で得たシアン水性顔料分散液と比較するため、実施例14で使用した前記のPB−15:3の顔料を、従来公知の分散剤を用いて分散し、比較シアン水性顔料分散液を調製した。詳しくは、分散剤として、ランダムポリマー型の分散剤である、スチレンマレイン酸共重合体(酸価200mgKOH/g、数平均分子量5000、PDI2.3、ジエタノールアミン中和水溶液、固形分25%)を使用して、顔料100部に対して、分散剤を固形分で30部使用した以外は、応用例12と同様にして分散し、比較シアン水性顔料分散液を得た。得られた比較シアン水性顔料分散液に含まれる顔料の数平均粒子径は99nmであり微分散されていた。また、E型粘度計を用いて測定したところ、粘度は、25℃、60rpmで3.69mPa・sであった。
【0227】
応用例12で得られたシアン水性顔料分散液と、比較応用例9で得た比較シアン水性顔料分散液の保存安定性試験を、以下の方法で行った。ガラス瓶に入れ、70℃に設定された恒温槽に、それぞれの分散液を入れ、1週間放置した後の粘度と平均粒子径の変化について試験した。その結果、本発明の樹脂処理顔料を用いたシアン水性顔料分散液の平均粒子径は103nmであり、粘度は3.21mPa・sであり、保存による物性の変化は見られず、高度な分散安定性を保持していることが確認できた。これは、本発明のA−Bブロックコポリマーが、顔料に著しく吸着して保存安定性を高めることによるものと考えられる。一方、比較シアン水性顔料分散液では、平均粒子径135nm、粘度5.6mPa・sであり、顔料が凝集しており、増粘も見られ、保存安定性が悪いという結果であった。
【0228】
次いで、両方の顔料分散液を使用して、シアン顔料分3%、BDG1.8%、1,2−ヘキサンジオール5%、グリセリン15%、サーフィノール465を1%となるように残量を水で調整してインクを作成した。そして、それぞれのインク中の顔料の平均粒子径、粘度及び保存安定性試験を、前記した方法で行った。得られた結果を表10に示した。
【0229】
【0230】
上記の結果より、本発明の樹脂処理顔料を使用したインクは、顔料分散液の場合と同様に、長期保存安定性に優れていることが確認された。
【0231】
次いで、上記で作製した各インクをカートリッジに装填し、プリンタにてベタ印刷し、印刷適性を評価した。その際、プリンタは、セイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンタEM930Cを用いて、専用写真用光沢紙(PGPP)、米国ゼロックス社製ゼロックス紙4024、専用フォトマット紙に、それぞれフォト720dpiでの印刷モードでベタ印刷を行った。この結果、応用例12の本発明のシアン水性顔料分散液を使用したインクは、長期に印刷を続けてもスジやヨレ、ドットの抜けなどが確認されなかった。また、イングシェットのノズルから問題なく吐出可能であることが確認された。一方で、比較応用例9シアン水性顔料分散液を使用したインクでは、10枚を過ぎた時に、スジが発生することが確認された。これは、溶解している分散剤がランダムポリマーの分散剤であるため、粘性に不良があったためと考えられる。以上の結果から、本発明の樹脂処理顔料を使用した応用例のインクは吐出安定性が良好であることを確認できた。
【0232】
また、フォトマット紙に替えて、普通紙にて印画を行った。両方のインクとも同様の画質が得られ、水滴を落としても変化が見られなかった。すなわち、染料のような水に溶解する色素をインクジェットインク(以下、IJインクと記す)として使用した場合、水滴で染料が溶解し滲みが生じるが、本発明の色素ポリマーを用いた場合では、染料である色素はポリマーと結合しているため、水で滲みなどが生じなかったと考えられる。以上の結果から、本発明の応用例のインクは耐水性が良好であることが確認できた。
【0233】
また、上記した各インクの印刷試験後、それぞれのインクジェットインクヘッドを45℃で24時間乾燥することにより、ヘッドでインクを乾燥させて吐出不可能にし、その後、プリンタのヘッドクリーニング操作を1回行い、再吐出性について評価した。応用例12の本発明のシアン水性顔料分散液を使用したインクは、問題なく吐出することができた。すなわち、本発明の顔料分散液は、いったん乾燥しても乾燥物は再度溶解、分散し、再溶解性、再分散性が良好であるとことが明らかである。これは、Aブロックがカルボキシル基を含みイオン中和されてイオンを形成しており、乾燥しても水などの液媒体に容易に溶解するためと考えられる。このことから、本発明のA−Bブロックコポリマーで処理された顔料は、Aブロックの効果により、再溶解性が良好であることが確認された。
【0234】
また、上記で得られた各フォトマット紙の印刷物の色相を、光学濃度(「マクベスRD−914」商品名、マクベス社製)により測定し、評価した。その結果、比較応用例9の顔料分散液を用いたインクによって形成した印刷物に比べて、本発明の顔料分散液を使用したインクによって形成した印刷物は、発色性に優れ、色彩範囲も拡大していることが分かった。
【0235】
<実施例15:処理マゼンタ顔料−1の調製>
5Lのフラスコに、PR−122(CFR−130P、大日精化工業社製)の水ペースト(固形分30.0%)を333.3部仕込み、顔料濃度が5%になるように水にて希釈した。次いで、ホモジナイザーで撹拌しながら、AR−289を12部仕込んだ。5000rpmで1時間撹拌し、顔料と染料を解膠した後、一部を採り、ろ紙にスポットした。次いで、合成例5で得られたA−Cブロックコポリマー−5の溶液を110.8部とイオン交換水110.8部を混合して均一化した水溶液を徐々に添加したところ、ある時点で増粘することが確認できた。次いで、そのまま1時間撹拌した。その後、溶液の一部を採り、ろ紙にスポットし、その結果を前記したスポットと合わせて
図8に示した。
【0236】
図8に示したように、
図7に示した実施例14の場合と同様の結果を示しており、左側のものが、顔料と染料を解膠した時点でのスポットであるが、中心の顔料及びブリードしている染料が確認できる。また、右側のものは、A−Cブロックコポリマーを添加して増粘した後にスポットしたものである。染料のブリードは確認できないことから、A−Cブロックコポリマーの有する塩化物イオンと染料の有するナトリウムイオンとが脱塩反応を起こして、A−Bブロックコポリマーとなり、不溶化、析出して、顔料を処理したことが確認できた。
【0237】
次いで、ろ過して水でよく洗浄した。ろ過性は非常に良好であり、透明で染料が流れていないことを確認できた。このことからも、本発明で規定する色素ポリマーのA−Bブロックコポリマーが形成され、顔料が処理されたと考えられる。このようにして樹脂処理顔料を得、この水ペーストの固形分は33.3%であった。これを処理マゼンタ顔料−1と称す。
【0238】
上記で得られた樹脂処理顔料は、先に説明した実施例7と同様の理論計算によれば、顔料100部に対し、AR−289がA−Cブロックコポリマー−5に反応して得られるA−Bブロックコポリマーにて理論的に約55.3%で処理された顔料である。樹脂処理顔料中に含まれる顔料分は64.4%である。また、AR−289のスルホン酸に対しA−Cブロックコポリマー−5の第4級塩をほぼ等モルで反応させたものである。また、本発明の色素含有メタクリレートのA−Bブロックコポリマー中の含有量は28.9%であり、Bブロック中の含有量は49.2%である。
【0239】
<実施例16、17>
実施例15で使用した、合成例5で得られたA−Cブロックコポリマー−5の替わりに、実施例16では、合成例6で得られたA−Cブロックコポリマー−6を105.0部用い、実施例17では、合成例7で得られたA−Cブロックコポリマー−7を122.3部用いた以外は、いずれも実施例15と同様にして、樹脂処理マゼンタ顔料をそれぞれ調製した。いずれの場合も実施例15と同様の現象が見られ、A−Bブロックコポリマーで顔料が処理されたことが確認でき、本発明で規定する樹脂処理顔料を得ることができた。実施例16で得たものを処理マゼンタ顔料−2、実施例17で得たものを処理マゼンタ顔料−3と称す。また、顔料100部に対するA−Bブロックコポリマーの割合、樹脂処理顔料に含まれる顔料分、A−Bブロックコポリマー中の色素含有メタクリレート(色素モノマー単位)の含有量、Bのブロックコポリマー中の色素含有メタクリレートの含有量をそれぞれ、実施例15と合わせて表11に示した。
【0240】
【0241】
(応用例13:マゼンタ顔料分散液及びそれを用いたインクの調製)
応用例12と同様にして、実施例15〜17で得られた処理マゼンタ顔料−1、処理マゼンタ顔料−2或いは処理マゼンタ顔料−3を使用して、それぞれの顔料分散液を作成し、さらに、これを用いて応用例12と同様にして各インクを作成した。これらのすべての顔料分散液及びインクは、応用例12の、本発明の樹脂処理顔料を使用したシアン水性顔料分散液及びそれを用いたインクの場合と同様に、分散性、保存安定性、耐水性、印刷特性である吐出安定性、再溶解性において、いずれも良好な性能を示すことを確認した。このことから、Aブロックが様々な酸価を有する場合でも、本発明のA−Bブロックコポリマーは、同様に優れた効果を示し、本発明の樹脂処理顔料の有用性が確認された。
【0242】
(比較応用例10:比較マゼンタ顔料分散液及びそれを用いた比較インクの調製)
上記のマゼンタ顔料分散液との比較のため、比較マゼンタ顔料分散液を調製した。具体的には、比較応用例9で使用したPB−15:3の替わりに、マゼンタ顔料であるPR−122を使用した以外は、比較応用例9と同様にして比較マゼンタ顔料分散液を得た。そして、同様にして比較マゼンタインクを作成した。
【0243】
応用例13で得た処理マゼンタ顔料−1を用いて作製したインク、及び、応用比較例7で得た比較マゼンタインクを用いて、応用例12と同様にしてインクジェットプリンターにて印画し、その印画物をフォトマット紙の印刷物の色相、光学濃度(「マクベスRD−914」商品名、マクベス社製)の測定を行った。その結果、本発明の顔料分散液を用いた場合は、比較例に比べて、発色性に優れ、色彩範囲も拡大していることが分かった。
【0244】
(応用例14:紫外線硬化性IJインク用着色剤への応用)
紫外線硬化性IJインク用着色剤への応用を検討した。前記実施例14で得た処理シアン顔料−1を40部(顔料分20部)、イソボルニルアクリレート60部、添加混合して、ディゾルバーで2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、前記した横型メディア分散機を使用して分散処理して顔料分散液を調製した。得られた顔料分散液を10μmのフィルター及び5μmのフィルターを通した。この際、フィルターの詰まりはまったくなかった。得られたシアン色顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径は100nmであり、粘度は19.2mPa・sであった。このように、モノマーと樹脂処理顔料を分散するだけで、良好な顔料分散液が得られた。
【0245】
上記で得た顔料分散液を70℃で1週間放置した後の平均粒子径と、粘度(保存後の粘度)とを測定した。その結果、平均粒子径は98nm、粘度は19.0mPa・sであった。先に記載したように、試験前の顔料分散液に含まれる顔料の平均粒子径は100nm前後と微細であり、さらに、初期の粘度が低くかったが、保存安定性試験でも、平均粒子径と粘度の変化はほとんどなく、非常に安定していた。
【0246】
また、先にも述べたように、本発明の樹脂処理顔料は、予め顔料分散剤として機能するA−Bブロックコポリマーで処理されたものであるため、溶媒であるモノマーに添加して分散するだけで、高度に分散され、高安定性を保持することが確認された。
【0247】
次いで、上記で得た顔料分散液を使用して以下の配合で、紫外線硬化性IJインクを調製した。
上記の顔料分散液 12.5部
イソボロニルアクリレート 44.5部
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 25部
トリメチロールプロパントリアクリレート 7部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 3部
ルシリンTPO(光重合開始剤 BASF社製) 3部
イルガキュア819(光重合開始剤 BASF社製) 2部
イルガキュア127(光重合開始剤 BASF社製) 3部
インクを十分撹拌した後、ポアサイズ10μmのメンブランフィルターで、次いで5μmのメンブランフィルターでろ過を行い、IJインクを得た。
【0248】
上記で調製したインク中の顔料粒子径を測定したところ、98nmで、インクの粘度は3.7mPa・sであった。褐色サンプル瓶にインクを装填し、前記した保存安定性の試験を行なったところ、上澄み、沈降がまったく見られず、保存後のインク中の顔料の平均粒子径は99nmで、粘度は3.6mPa・sであった。本発明の樹脂処理顔料を用いることで、その顔料吸着部が顔料から脱離することなく吸着することが達成され、インクの保存安定性が良好になることがわかった。
【0249】
次いで、上記で得た紫外線硬化性IJインクをカートリッジに装填し、コニカミノルタ社製EB100インクジェットプリンターを使用し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにベタ印刷を1時間連続して行って印画した。この結果、ヘッドの詰まりがなくスムースに印画でき、その画像であるベタ印刷に筋やよれなどがまったく見られず、また、長時間印刷を行っても、良好な吐出安定性を示した。
以上の如く、本発明で規定した樹脂処理顔料を使用したインクは、多くのモノマーを含有した紫外線硬化性のインクのような場合であっても、良好な吐出安定性、筋やよれのない印画物を与えることを確認した。