【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1に記載のセラミック材料によって解決される。このセラミック材料およびこのセラミック材料の製造方法と、このセラミック材料を有する電子セラミックデバイスは、その他の請求項に記載されている。さらに1つの独立請求項には、多層デバイスの製造方法が記載されている。
【0005】
上記の課題は、追加的にKを含み、場合によってはCuを含むチタン酸ジルコン酸鉛を備えたセラミック材料によって解決される。
【0006】
Kおよび場合によってはCuをチタン酸ジルコン酸鉛に添加することにより、このセラミックの製造における結晶粒サイズを制御することができる。この結晶粒サイズは、このセラミックの圧電特性と直接的に関係している。
【0007】
このセラミックにおけるチタン酸ジルコン酸の割合を適切に選択することにより、MPGでの組成を調整することができる。
【0008】
チタン酸ジルコン酸鉛セラミック(PZTセラミック)における機械的張力は、この材料に特有な強誘電体の相転移の結果であり、この相転移は、いわゆるキュリー温度T
Cである約330℃の領域での冷却の際に生じる。この相転移は正方晶歪みおよび結晶相境界(MPG)の領域において同時に部分的な、T
Cより上に存在する立方晶構造の菱面体晶歪みに存在する。これから生じる局所的な機械的張力を極小化するために、ドメインにおけるセラミックの全ての結晶粒が崩壊する。これらのドメインは約10
9個の基本セルを含んでいる。これらのドメインは、正方晶あるいは菱面体晶の(分極の)軸が同じ方向に揃った分域(Bezirke)であり、これらは好ましくは互いに90°の角度で接しており、これによりいわゆるドメイン壁を形成している。この分極の軸を1つの印加された電界に揃える際に、これらのドメイン壁が移動し、この動きはとりわけセラミックの組織における結晶粒界によって妨げられる。セラミックの体積における結晶粒界の密度が小さいほど、平均的結晶粒径は大きくなる。この結果、なによりもまず十分なドメイン壁の移動性を確保するため、およびこれによりPZTセラミックの高い性能を達成するために、十分な結晶粒成長が必要である。
【0009】
チタン酸ジルコン酸鉛は、ペロブスカイト格子を備え、このペロブスカイト格子は、一般式ABO3で記述され、Aはこのペロブスカイト格子のAサイトを表し、BはBサイトを表す。1つのPZT結晶格子の単位格子は、1つの立方体によって記述される。
【0010】
Aサイトは、Pb
2+イオンによって占められ、このPb
2+イオンは、立方体の頂点に配置されている。すべての立方体の面の中央には、それぞれO
2-イオンが配置されている。立方体に中心には、Ti
4+イオンあるいはZr
4+イオンが配置されている。この構造は、金属イオンを他の金属イオンおよび空孔によって置換することに対し大きな許容範囲を備える。これにより、ドーピングは比較的離れた境界においても可能である。
【0011】
ドーピングによって導入されたイオンと置換されたイオンとの間の大きさの違いにより、配位多面体における追加の局所的歪みがもたらされる。
【0012】
可能な様々のドーピングは、このドーピングイオンの価数によって分類される。等原子価ドーピング、すなわち1つのイオンを他の同じ原子価のイオンと置換することは、セラミック材料において可能な空孔に対し影響を与えない。小さな価数のカチオン(アクセプター)を大きな価数のカチオンと置換すると、アニオン格子における空孔が生成される。大きな価数のカチオン(ドナー)は、もしこれらが小さな価数のカチオンと置換された場合は、カチオン格子における空孔を生じる。アクセプターおよびドナーのドーピングは、それぞれ材料特性の特徴的変化をもたらす。
【0013】
本発明の1つの実施形態例においては、Nd,KおよびばあいによってCuは、ペロブスカイト格子におけるAサイトを占める。
【0014】
AサイトへのNd
3+のドーピングは、ドナーのドーピングとなる。ネオジムのイオン半径のために、このネオジムは、Pb
2+のサイトに組み込まれると、その過剰な電荷のためにNd
.の記号で表される。電荷の平衡が、これに対応したPbの空位(V
Pb")の形成によって起こる。ドーピングの効果は、格子の寸法の変化および単位格子間の遠距離に及ぶ相互作用の影響である。
【0015】
K
+でAサイトにドーピングすると、これによりPb
2+の代わりにアクセプタードーピングとなる。ここで格子位置には正電荷が不足するので、この欠陥では格子周囲からの負の過剰電荷が作用する。このためこれらはK'の記号で表される。このアクセプタードーピングは、Nd
3+のドナードーピングにより、このアクセプタードーピングより常に大きい、Nd
.で表される正の過剰電荷で補償され、中性の欠陥対[K'/Nd
.]が形成される。これは、アクセプタードーピングによって、空位V
Pb"の濃度が減少することを意味するが、これはドナードーピングの過剰部分がそれらの形成に寄与しているからである。焼結温度では、これらの欠陥対は解離する。この際2個のNd
.欠陥は、V
Pb"の空位V
O"の形成を誘導し、このV
O"は、結晶粒成長および高密度焼結に特に有効である。冷却処理においては、準中性な[K'/Nd
.]の欠陥対への再結合が行われ、完成したセラミックにおいては、酸素空位濃度が全くないかあるいは極めて僅かに存在する。これに対し、鉛の空位は、ドナードーピングの過剰分に対応してまだ存在している。このドーピングは、材料の結晶粒成長に作用し、持ち込まれたドーピングの濃度に依存している。ここでは僅かなドーピング量は結晶粒成長に寄与するが、これに対し多量のドーピングは、結晶粒成長を阻害しかねない。
【0016】
Nd
.を用いたドナードーピングは、Pb空位V
Pb"の形成のために、ドメイン壁の移動性を高め、これにより印加された電界中でのドメインの方向を揃いやすさを高め、大きな誘電分極の値をもたらすことができる。他方では、このドナードーピングによって、酸素空位の形成が抑制されることから、微結晶の成長が阻害されるので、セラミックにおける結晶粒界の密度が高くなり、ドナードーピングの増加に伴いドメイン壁の移動性がより制限される。これは印加された電界におけるドメインの揃えやすさにおいて逆方向の傾向となり、このため電界を遮断した際に維持される分極である、残留分極の低下をもたらし、結合定数の減少をもたらす。アクセプターを用いた追加的なドーピングによって、ドナーの良い効果が部分的に弱められるが、悪い効果は大幅に取り除かれており、アクセプタードーピングのおかげで焼結温度で形成される酸素空位が結晶粒成長を促進し、ドメイン壁が容易に移動できることが保持され、これが大きな誘電率、大きな圧電定数および大きな結合定数をもたらす。
【0017】
本発明によるアクセプターとドナーのドーピングの組み合わせにより、セラミックがこれら2つのドーピング種のいずれか1つのみでドーピングされた場合に生じる悪い特性が補償される。たとえばアクセプタードーピングのみが行われると、これはしばしば誘電率および圧電定数の低下をもたらし、また結合定数の低下をもたらす。すなわちこれらの定数は、ドーピングされていないセラミックより小さくなる。ドナードーピングのみが行われると、結晶粒成長が阻害され、セラミックの結晶粒は希望した大きさに達しない。本発明によるアクセプターとドナーのドーピングの組合せは、この点においてドーピングされていないセラミックより良くなっている。この組合せは、良好な圧電定数を備え、また良好な結晶粒成長を伴い、これがドーピングされていないPZTセラミックの場合よりももっと低い温度で達成される。
【0018】
結晶粒が小さな材料においては、ドメイン境界が頻繁に結晶粒境界に局在化し、この結晶粒境界で固定されるために、圧電特性に寄与することができない。内部張力は、結晶格子の構造および相の安定性に作用し得る。したがって、結晶粒成長を目的に適うように制御できるようにすることは価値のあることである。これはとりわけPZTセラミックのドーピングにより行われる。
【0019】
1つの好ましい実施形態によれば、このセラミック材料は、以下の式の組成を有する。Pb
1-(3x/2)-a-pNd
xK
2aCu
2pV
Pb(x/2)-a-p(Zr
1-yTi
y)O
3
各パラメータの制限は、0.0001≦x≦0.06,0.0001≦a≦0.03,0.35≦y≦0.60,および0<p<((x/2)−a)であり、好ましい組成領域では、0.015≦x≦0.025,0.002≦a≦0.0125,0.45≦y≦0.55,および0<p<((x/2)−a)である。V
Pbは鉛の空位を示す。
【0020】
さらにもう1つの好ましい実施形態によれば、このセラミック材料は、以下の式の組成を有する。
【0021】
Pb
1-(3x/2)-aNd
xK
2aV
Pb(x/2)-a(Zr
1-yTi
y)O
3
各パラメータの制限は、0.0001≦x≦0.06,0.0001≦a≦0.03,0.35≦y≦0.60であり、好ましい組成領域では、0.015≦x≦0.025,0.002≦a≦0.0125,0.45≦y≦0.55である。V
Pbは鉛の空位を示す。
【0022】
本発明の実施形態は、センサまたはアクチュエータに用いられ、多様な幾何形状で製造することができる。技術的な理由から、たとえば異なる結晶粒サイズまたは異なる相境界のような、組織における特徴が生成される。しかしながらこれらのパラメータは、強誘電体材料の特性に影響を与えるので、結晶相境界(MPG)の組成に対応したこれらのパラメータを調整することは価値のあることである。このMPGでは、正方晶相の他に菱面体晶相が共存することが重要である。本発明によるセラミックの1つの実施形態においては、MPGへの組成のマッチングは、指標yを介して可能であり、この指標を介してTi−Zr比を制御することができる。
【0023】
本発明の1つの実施形態は、圧電アクチュエータである。1つの好ましい実施形態では、この圧電アクチュエータは、Nd,Kおよび場合によってはCuでドーピングされたPZTセラミック材料の2つの層を備え、これらの間に1つの内部電極が存在している。この内部電極は、たとえばCu,Pd,Agまたはこれらの金属の合金で製造されていてよい。好ましくは、この電極はCuから成る。
【0024】
Kおよび場合によってはCuのPZT格子への組込みは、焼結工程の際の高温で生じる、圧電セラミックと内部電極の金属との間の反応を低減あるいは阻害する。たとえば、以下の式のような、Cuの内部電極を有する、Kおよび場合によってはCuでドーピングされていないセラミック材料から成るアクチュエータであったとする。
【0025】
Pb
1-x/2Nd
xK
2aV
Pbx/2(Zr
1-yTi
y)O
3
ここで、0.0001≦x≦0.06,0.45≦y≦0.55であり、V
Pbは鉛の空位を示す。PbとNdの異なる、それぞれ2+と3+の電荷から生じる空位濃度は、内部電極からセラミックへのCuイオンの拡散を可能とし、ここでこのCuイオンが結晶格子の中に組込まれる。この問題は、本発明の実施形態においては、結晶格子のAサイトへのK
+および場合によってはCu
+イオンの組込によって低減あるいは解決される。このようにAサイトにおけるPb空位(V
Pb)の補填は、内部電極からの銅がセラミックに拡散しようとすることを低減し、このCuイオンのマイグレーションを低減し、あるいは完全に阻止すらする。
【0026】
完全あるいは部分的に阻害されたCuイオンの拡散は、本発明によるセラミックから製造された電子セラミックデバイスのための様々な利点を有する。詳細には、この場合これらの内部電極は材料の損失が無く、連続して広がる層を形成し、これは内部電極の良好な導電性をもたらす。
【0027】
正方晶相と菱面体晶相との間の遷移領域は、このセラミックの実施形態では特別に重要である。このセラミック材料においては、2つの結晶構造の間で濃度依存の変化が起こる。このような相境界は、Jaffeeにより「モルフォトロピー」("morphotrop")と命名された。その材料特性は、この領域において幾つかの特徴を示し、これらはとりわけ技術的な応用に対し重要である。PZTセラミックの圧電特性に決定的に影響するいくつかの物質定数、たとえば誘電率ε
r、圧電定数d
33および結合係数kは、この結晶相境界で良好な値、たとえば顕著な極大値を示す。
【0028】
この比誘電率ε
rは、セラミック材料の絶対誘電率と真空の誘電率との比であり、この絶対誘電率は電界における分極しやすさを表している。圧電効果の効果の大きさは、圧電定数d
ijで示され、この圧電定数は、印加された電界強度に対する機械的変形の比、あるいは印加された機械的張力に対する表面電荷密度の比で表される。このパラメータの方向依存性は、対応した添え字で示される。圧電定数の添え字iは、電界の方向を示し、添え字jは、この結晶が電界に反応する、変形の方向を示す。ここで1はx方向、2はy方向、そして3はz方向である。したがって圧電定数d
33は、z軸の方向における縦方向の伸張の振舞いを表す。結合係数kは、圧電効果の程度の指標である。この結合係数は、圧電材料に取り込まれた電気エネルギーの機械的エネルギーへの転換およびこの逆の転換の能力を表している。ここでk
33は、縦方向の振動の結合係数である。縦方向の効果においては、結晶の分極軸は、変形方向に対し同一方向となっている、
Ndのみでドーピングされた以下の式のセラミックの圧電定数d
33と、
0.015PbO+(Pb
0.97V
Pb0.01Nd
0.02)(Zr
0.5515Ti
0.4485)O
3,
(d
33:690pm/V),
追加的にNiを含む以下の式のセラミックの圧電定数d
33とを比較すると、
0.015PbO+(Pb
0.975VPb
0.005Nd
0.02)(Zr
0.5515Ti
0.4485)
0.995Ni
0.005)O
3,
(d
33:740pm/V),
このd
33の値が顕著に上昇していることが分かる。これは同じ電圧を印加した際により大きな伸張が生じることを意味している。本発明による、Nd,Kおよび場合によってはCuでドーピングされたPZTセラミックにより、さらなる改善が得られる。たとえばこの変位パラメータd
33は、NiでドーピングされたPZT標準セラミックに対し33%大きくなる(以下の実施形態例に示す表1で比較)。こうして、改善された圧電特性は、このセラミックを用いた実施形態例の性能を高める。
【0029】
このMPGでの物理特性の極大の原因としては、菱面体晶相と正方晶相との共存がある。この共存は、電界におけるドメインの整列を促進し、これによりセラミックの分極率を改善する。これはさらにPZTセラミックにおけるMPGの重要性および特異な位置を強調している。
【0030】
本発明によるセラミック材料の実施形態は、その良好な圧電特性のおかげで、たとえば多層デバイスでの使用に適している。
【0031】
複数のセラミック層と内部電極とが交互に重なり合って配設されると多層圧電デバイスが得られる。ここでは、「交互に」とは常に所定の数のセラミック層の上に1つの内部電極が続いて配設されることを意味する。
【0032】
本発明のさらなる実施形態の目的は、このセラミック材料の製造方法である。
【0033】
このセラミック材料の製造方法は以下のステップを備える。
【0034】
A1)Pb,Zr,Ti,Ndおよび酸素を含む出発材料を粉砕し混合することによりセラミック原材料混合物を製造するステップ。
【0035】
B1)Kを含む化合物を投入し、場合によってはCuまたはCuを含む化合物を投入するステップ。
【0036】
C1)この原材料混合物をか焼(Kalzinieren)するステップ。
【0037】
D1)セラミックに焼結するステップ。
【0038】
1つの好ましい実施形態においては、第1のセラミック原材料は、Pb,Nd,Zr,TiおよびOを含有する出発化合物により生成され、この原材料はたとえば850℃と970℃の間の温度、好ましくは875℃と925℃の間の温度で第1のか焼ステップA11)が行われる。このか焼されたセラミック原料塊(Keramikrohmasse)が粉砕された後、直接に処理ステップC1)が続いて実行されるか、またはこのステップC1)の前にステップB1)が実行される。すなわちKを含有する化合物および場合によってはCuまたはCuを含有する化合物が投入される。ステップA11)を含むことによって、より完全な転換が行われ、かつこの結果均質なセラミック材料が得られる。
【0039】
ここで出発材料は酸化物であってよい。これらの出発材料の形態は、たとえば金属炭酸塩金属炭酸水素塩または有機金属化合物またはこれらの混合物であってよい。
【0040】
元素ZrおよびTiは、出発材料としては、(Zr,Ti)O
2のような前駆体の形態であってもよい。
【0041】
これらの元素Pb,Zr,Ti,およびNdは、それらの適宜の出発化合物において、元素の化学当量比に対応して、生成されるセラミック材料に混合される。
【0042】
Ndの添加は、通常0.01〜6mol%の範囲で行われ、好ましくは0.5〜3mol%の範囲で行われ、とりわけ好ましくは1.5〜2.5mol%の範囲で行われる。
【0043】
Kを含有する化合物の投入は、か焼(処理ステップC1))の前に行われても、か焼の後に初めて行われてもよい。好ましくは、Kを含有する化合物として、K2CO
3,KOOCCH
3,K
2C
2O
4,またはこれらの混合物が用いられる。
【0044】
Cuの投入は、Cu金属またはCu化合物として行われてよく、好ましくはCu
2Oで行われてよい。好ましくは、CuはステップC1)の後で、かつステップD1)の前に添加される。とりわけ好ましくは、これに加えて焼結助剤、好ましくはPbOが添加される。PbOが添加される場合は、この添加は好ましくは1.5mol%までの量で行われる。
【0045】
Kおよび場合によってはCuの添加は、通常それぞれ0.01〜6mol%の範囲で行われ、好ましくは0.4〜3mol%の範囲で行われ、とりわけ好ましくは、0.4〜2.5mol%の範囲で行われる。この際、Kを含有する化合物および場合によってはCuあるいはCuを含有する化合物が、同様に、生成されるセラミック材料における他の元素に対するKあるいはCuの化学等量比に対応して、添加される。
【0046】
このセラミック原料混合物は、処理ステップC1)においては、たとえば850℃と970℃との間の温度で、好ましくは900℃と950℃との間の温度でか焼される。これはセラミックにおける混合結晶相の形成を可能とする。
【0047】
「生の」あるいは「グリーン」と称されるセラミックは、処理ステップD1)で焼結される。ここでこの焼結温度は、たとえば950℃と1070℃との間である。こうしてこの焼結温度は銅の融点(1083℃)より低くなり、これは、圧電アクチュエータの内部電極を、たとえば銅あるいはその融点が銅の領域にある合金から全部製造することを可能とする。
成型のために、か焼によって生成される混合結晶相は、この間に設けられている追加の処理ステップにおいて再度粉砕され、バインダを添加することによって、セラミック材料塊に転換される。このセラミック材料塊は、所望の形状とすることができ、たとえばグリーンシートとすることができる。このバインダは、最終製品では好ましいものではないため、これは熱的分解あるいは熱水分解可能でなければならない。このためポリウレタン系のバインダが適している。このバインダは、しかしながら焼結の前に事前に行われる熱処理で除去されなければならない。これはさもなければ焼結の際に、金属鉛への還元によってセラミックの劣化が生じるからである。
【0048】
さらに本発明は請求の範囲に、本発明によるセラミックを備えた多層デバイスの製造方法を含む。この多層デバイスの製造方法は、以下の処理ステップを備える。
【0049】
A2)上述の方法の1つによって製造された、セラミックグリーンシートを準備するステップ。
【0050】
B2)セラミックグリーンシートを積層して積層体とするステップ。
【0051】
C2)ラミネーション加工によってこの積層体を固めるステップ。
【0052】
D2)グリーン部品を脱バインダするステップ。
【0053】
E2)このグリーン部品を焼結するステップ。
【0054】
ここでこのセラミックグリーンシートは、既にPb,Zr,Ti,Nd,酸素,K,および場合によってはCuを含む、出発材料を含んでいる。
【0055】
処理ステップC2)のラミネーション加工は、たとえば100〜130トンの押圧力で行われてよい。ここでこの押圧力は、バインダの種類によって調整されてよい。
【0056】
処理ステップD2)における脱バインダは、不活性雰囲気で550℃で行われてよい。これはたとえば銅の内部電極では好ましい条件とされる。しかしながらCuの内部電極が無い場合は、この脱バインダは、空気雰囲気で行われてよい。この際の温度は、たとえばバインダ材料および内部電極の材料で調整される。
【0057】
処理ステップE2)における焼結は、たとえば1070℃までの温度で4時間以上行われてよい。可能な焼結温度範囲は、960℃から1100℃を含むが、ここでは高めの温度が成功をもたらし得る。しかしながら980℃から1040℃の範囲が好ましい。
【0058】
処理ステップE2)における焼結のために、窒素,水素,および水蒸気を含む混合ガスが用いられてよい。
【0059】
この多層デバイスが内部電極(複数)を備える場合は、これらの内部電極用の材料は、処理ステップA2)およびB2)の間で、グリーンシートに取り付けられてよく、たとえば印刷されてよい。
【0060】
さらに、本発明は請求の範囲に、その製造においてセラミックのさらなる実施形態が派生する、多層デバイスの製造方法を含む。
【0061】
このさらなる製造方法は、以下の処理ステップを備える。
【0062】
A3)Pb,Zr,Ti,Nd,および酸素を含む出発材料を粉砕して混合することによって第1のセラミック原材料混合物を製造するステップ。
【0063】
B3)この第1のセラミック原材料混合物をか焼するステップ。
【0064】
C3)このか焼された第1のセラミック原材料混合物を粉砕して、Kを含有する化合物と混合して第2のセラミック原材料混合物を製造するステップ。
【0065】
D3)この第2のセラミック原材料混合物をか焼するステップ。
【0066】
E3)ステップD3)後のセラミック原材料混合物にバインダを添加するステップ。
【0067】
F3)ステップE3)後の混合物からグリーンシートを成型するステップ。
【0068】
G3)ステップF3)後のグリーンシートに、内部電極を印刷するステップ。ここでこの内部電極の材料はCuを含む。
【0069】
H3)ステップG3)後の複数のセラミックグリーンシートを積層して積層体とするステップ。
【0070】
I3)この積層体をラミネーション加工により固めることによってグリーン部品を生成するステップ。
【0071】
J3)このグリーン部品を脱バインダするステップ。
【0072】
K3)このグリーン部品を焼結するステップ。ここで内部電極からCuの一部がセラミック材料に移動し、このセラミック材料に組込まれる。
【0073】
ここで処理ステップH3)において、ステップG3)後のグリーンシートの間に、ステップF3)に対応したグリーンシート、すなわち電極材料が印刷されていないグリーンシートが積層されてもよい。
【0074】
処理ステップE3)では、熱的分解または熱水分解が可能なポリウレタンのバインダを含んでよい。
【0075】
内部電極の材料は、金属銅または銅酸化物を含んでよい。処理ステップG3)においてグリーンシートに印刷することによって、既にCuイオンはセラミック材料に拡散することが可能となる。
【0076】
処理ステップH3)におけるラミネーション加工は、100〜130トンの押圧力で行われてよい。この圧力によってグリーン部品が成型される。
【0077】
処理ステップJ3)における脱バインダは、不活性または空気の雰囲気で550℃で行われてよい。この処理ステップでは、望ましくない、とりわけバインダによってしばしばもたらされる有機成分が焼却されるような温度が選択されなければならない。こうしてバインダの種類によって好ましい脱バインダ温度に調整される。しかしながら内部電極の材料もまた、この脱バインダ温度に関係する。この熱処理は、電極材料からのCuのセラミックへの拡散に対しても寄与する。処理ステップK3)における焼結は、1070℃までの温度で4時間以上行われてよい。可能な焼結温度範囲は960℃〜1100℃を含み、この際980℃〜1040℃の範囲が好ましいが、1100℃以上の温度であっても求められる目的を達成し得る。
【0078】
処理ステップK3)における焼結には、窒素、水素および水蒸気を含む混合ガスが用いられてよい。焼結処理の間に、内部電極からCuイオンがセラミックにマイグレーション(wandern)し、そしてそこでAサイトに組込まれる。
【0079】
多層デバイスは、さらなるステップにおいて削られ、研磨されてよい。はみ出ている内部電極の領域では、たとえば銅ペーストを用いた接続が行われる。このペーストの焼き付けの後、ここでこの多層デバイスには、一般的なボンディング技術を用いて、配線が行われる。こうして以上より圧電アクチュエータが形成される。
【0080】
本発明は、実施形態例を参照した上記の記載により限定されない。むしろ本発明はいかなる特徴およびいかなる特徴の組み合わせ、とりわけ請求項における特徴のあらゆる組み合わせを含んでいる。また、特徴またはこれらの組み合わせ自体が請求項または実施例に顕わに示されていない場合も含んでいる。