(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理水を前記第1の脱イオン水製造ユニットの前記第1の脱塩室に供給する第1の被処理水供給流路と、前記第1の被処理水供給流路から分岐して、前記第1の脱イオン水製造ユニットの前記第1及び第2の濃縮室、及び前記第2の脱イオン水製造ユニットの前記第1及び第2の濃縮室に前記被処理水の一部を供給する第2の被処理水供給流路と、を有する、請求項1に記載の電気式脱イオン水製造装置。
前記第1の脱塩室と並列に設けられた第1の副脱塩室と、前記第2の脱塩室と並列に設けられた第2の副脱塩室の、少なくともいずれかを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
前記第1の脱塩室は50%を上回る体積比でカチオン交換体が充填され、または前記第2の脱塩室は50%を上回る体積比でアニオン交換体が充填され、または前記第1の脱塩室は50%を上回る体積比でカチオン交換体が充填され前記第2の脱塩室は50%を上回る体積比でアニオン交換体が充填されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
前記第1の脱塩室は80%以上の体積比で前記カチオン交換体が充填され、または前記第2の脱塩室は80%以上の体積比で前記アニオン交換体が充填され、または前記第1の脱塩室は80%以上の体積比で前記カチオン交換体が充填され前記第2の脱塩室は80%以上の体積比で前記アニオン交換体が充填されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
前記第1の脱塩室は前記カチオン交換体だけが充填され、または前記第2の脱塩室は前記アニオン交換体だけが充填され、または前記第1の脱塩室は前記カチオン交換体だけが充填され前記第2の脱塩室は前記アニオン交換体だけが充填されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
前記前段の電気式脱イオン水製造ユニットと前記後段の電気式脱イオン水製造ユニットとの間に、前記前段の電気式脱イオン水製造ユニットを流出した水を昇圧して前記後段の電気式脱イオン水製造ユニットに流入させるポンプを有している、請求項1から7のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
前記第1及び第2の脱イオン水製造ユニットと直列に接続され、各々が、陽極室及び陰極室と、前記陽極室と前記陰極室との間に位置し、直列に接続され、イオン交換膜で仕切られた第1及び第2の脱塩室と、を有する第3〜第Nの脱イオン水製造ユニット(ここで、Nは3以上の自然数)をさらに有し、
前記第1〜第Nの脱イオン水製造ユニットにそれぞれ水を流入させる第1〜第Nの入口ラインと、
前記第1〜第Nの脱イオン水製造ユニットからそれぞれ水を流出させる第1〜第Nの出口ラインと、
前記第Jの出口ラインと前記第J+1の入口ライン(ここで、Jは1からN−1の全ての自然数)とをそれぞれ接続するN−1個の接続ライン、及び前記第Nの出口ラインと前記第1の入口ラインとを接続する接続ラインと、
を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の電気式脱イオン水製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の脱イオン水製造装置のいくつかの実施形態について説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る脱イオン水製造装置の概略構成図である。脱イオン水製造装置1は、第1の脱イオン水製造ユニット11と、第2の脱イオン水製造ユニット12と、を有している。第1の脱イオン水製造ユニット11と第2の脱イオン水製造ユニット12は直列に接続されており、被処理水はまず第1の脱イオン水製造ユニット11に流入し、次いで第2の脱イオン水製造ユニット12に流入する。
【0019】
第1の脱イオン水製造ユニット11の入口側には、被処理水を第1の脱イオン水製造ユニット11に流入させる給水ポンプ9が設けられている。第1の脱イオン水製造ユニット11と第2の脱イオン水製造ユニット12との間には、第1の脱イオン水製造ユニット11に流出した水を昇圧して第2の脱イオン水製造ユニット12に流入させる昇圧ポンプ9’が設けられている。昇圧ポンプ9’は第1の脱イオン水製造ユニット11で生じた圧力損失を補償するために設けられており、第2の脱イオン水製造ユニット12の入口で十分な圧力が得られる場合は省略することができる。
【0020】
本実施形態では、第1の脱イオン水製造ユニット11と第2の脱イオン水製造ユニット12は同一の構成を有しているが、別々の構成を有していてもよい。
【0021】
以下、第1の脱イオン水製造ユニット11を代表として、その構成を説明する。
図2は、第1の脱イオン水製造ユニット11の概略構成図である。
【0022】
第1の脱イオン水製造ユニット11は、中間イオン交換膜mによって仕切られた第1及び第2の脱塩室D1,D2と、第1及び第2の脱塩室D1,D2の外側に各々位置する第1及び第2の濃縮室C1,C2と、さらにその外側に位置する第1及び第2の副脱塩室S1,S2と、さらにその外側に位置する陰極室E1及び陽極室E2と、を有している。
【0023】
第1及び第2の脱塩室D1,D2は陽極室E2と陰極室E1との間に位置し、イオン交換体が充填されている。より具体的には、第1の脱塩室D1は、第1の脱塩室D1の陰極室E1側に位置するカチオン交換膜c1と、第1の脱塩室D1の陽極室E2側に位置する中間イオン交換膜mと、によって画定されている。第2の脱塩室D2は、中間イオン交換膜mと、第2の脱塩室D2より陽極室E2側に位置するアニオン交換膜a1と、によって画定されている。第1の脱塩室D1は第2の脱塩室D2よりも陰極室E1側に位置している。第1の脱塩室D1の出口と第2の脱塩室D2の入口とは脱塩室接続流路5によって接続されており、この結果、第1の脱塩室D1と第2の脱塩室D2とは、直列に接続されている。
【0024】
第1の脱塩室D1が第2の脱塩室D2の前段にあるのは、被処理水に含まれるCa
2+,Mg
2+等の硬度成分を優先して除去するためである。第2の脱塩室D2は水分解によってOH
−が発生し、アルカリ性に傾いている。OH
−は被処理水の硬度成分と反応し、Ca(OH)
2、Mg(OH)
2等の水酸化物のスケールとなって中間イオン交換膜mに付着する。このため中間イオン交換膜mの電気抵抗が上昇し、水分解も阻害される。被処理水を第1の脱塩室D1に先に通し、硬度成分を除去することによって、スケールの発生を防止することができる。被処理水の水質によっては、被処理水を先に第2の脱塩室D2に通すことも可能である。
【0025】
一実施形態では、第1の脱塩室D1にはカチオン交換体だけが充填されており(カチオン交換体の単床充填)、被処理水中のカチオン成分(Na
+、Ca
2+、Mg
2+等)が除去される。カチオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。カチオン交換体の種類としては、弱酸性カチオン交換体、強酸性カチオン交換体等が挙げられる。
【0026】
一実施形態では、第2の脱塩室D2にはアニオン交換体だけが充填されており(アニオン交換体の単床充填)、被処理水中のアニオン成分(Cl
−、CO
32−、HCO
3−、SiO
2(シリカは、特別な形態をとることが多いため、一般のイオンとは異なった表示とする。)等)が除去される。アニオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。アニオン交換体の種類としては、弱塩基性アニオン交換体、強塩基性アニオン交換体等が挙げられる。
【0027】
第1の脱塩室D1にはアニオン交換体がさらに充填されていてもよい。一実施形態では、第1の脱塩室D1は80%以上の体積比でカチオン交換体が充填され、残りのイオン交換体はアニオン交換体であってよい。他の実施形態では、第1の脱塩室D1は50%を上回る体積比でカチオン交換体が充填され、残りのイオン交換体はアニオン交換体であってよい。第1の脱塩室D1にアニオン交換体がさらに充填されている場合、第1の脱塩室D1に充填されるイオン交換体の充填形態としては、カチオン交換体とアニオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0028】
同様に、第2の脱塩室D2にはカチオン交換体がさらに充填されていてもよい。一実施形態では、第2の脱塩室D2は80%以上の体積比でアニオン交換体が充填され、残りのイオン交換体はカチオン交換体であってよい。他の実施形態では、第2の脱塩室D2は50%を上回る体積比でアニオン交換体が充填され、残りのイオン交換体はカチオン交換体であってよい。第2の脱塩室D2にカチオン交換体がさらに充填されている場合、第2の脱塩室D2に充填されるイオン交換体の充填形態としては、アニオン交換体の単床形態、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態または複床形態が挙げられる。
【0029】
第1の脱塩室D1に、体積比で、カチオン交換体がアニオン交換体よりも多く充填され、第2の脱塩室D2に、体積比で、アニオン交換体がカチオン交換体よりも多く充填されている限り、カチオン交換体とアニオン交換体の充填比率は自由に決定することができる。例えば、第1の脱塩室D1に80%の体積比でカチオン交換体が充填され、第2の脱塩室D2に80%の体積比でアニオン交換体が充填されていてもよく、第1の脱塩室D1に90%の体積比でカチオン交換体が充填され、第2の脱塩室D2に70%の体積比でアニオン交換体が充填されていてもよい。第1の脱塩室D1におけるカチオン交換体の充填比率と、第2の脱塩室D2におけるアニオン交換体の充填比率は、上述の条件を満たす限り、互いに独立して定めることができる。
【0030】
中間イオン交換膜mの種類は、被処理水の水質、脱イオン水(処理水)に求められる水質、第1及び第2の脱塩室D1,D2に充填されるイオン交換体の種類等を勘案して選択することができる。中間イオン交換膜mは、アニオン交換膜もしくはカチオン交換膜の単一膜、または、アニオン交換膜とカチオン交換膜の両方を備えた、バイポーラ膜などの複合膜のいずれであってもよい。
【0031】
第1の脱塩室D1の陰極室E1側には、カチオン交換膜c1を介して第1の脱塩室D1に隣接する第1の濃縮室C1が設けられている。第2の脱塩室D2の陽極室E2側には、アニオン交換膜a1を介して第2の脱塩室D2に隣接する第2の濃縮室C2が設けられている。第1及び第2の濃縮室C1,C2には、被処理水の一部、または他の水源から供給された水が流入する。第1の濃縮室C1に供給された水は、第1の脱塩室D1から排出されるカチオン成分を取り込み、第1の脱イオン水製造ユニット11の外部に放出する。第2の濃縮室C2に供給された水は、第2の脱塩室D2から排出されるアニオン成分を取り込み、第1の脱イオン水製造ユニット11の外部に放出する。第1の脱イオン水製造ユニット11の電気抵抗を抑えるために、第1及び第2の濃縮室C1,C2にイオン交換体が充填されていてもよい。
【0032】
第2の濃縮室C2と陽極室E2の間には第1の副脱塩室S1が設けられている。同様に、第1の濃縮室C1と陰極室E1との間には第2の副脱塩室S2が設けられている。第2の濃縮室C2と第1の副脱塩室S1とはカチオン交換膜c2で、第1の副脱塩室S1と陽極室E2とはカチオン交換膜c3で、それぞれ仕切られている。第1の濃縮室C1と第2の副脱塩室S2とはアニオン交換膜a2で、第2の副脱塩室S2と陰極室E1とはアニオン交換膜a3で、それぞれ仕切られている。第1の副脱塩室S1は第1の脱塩室D1と同様の構成を有しているが、カチオン交換体だけが単床充填されている。第2の副脱塩室S2は第2の脱塩室D2と同様の構成を有しているが、アニオン交換体だけが単床充填されている。
【0033】
第1の副脱塩室S1は第1の脱塩室D1と並列に接続されており、第2の副脱塩室S2は第2の脱塩室D2と並列に接続されている。一方、第1の脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1と、第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2とは、脱塩室接続流路5によって、直列に接続されている。
【0034】
図示は省略するが、第1の副脱塩室S1と第2の副脱塩室S2のいずれか一方または両方を省略することもできる。本実施形態において第2の副脱塩室S2を省略する場合、第1の濃縮室C1と陰極室E1がアニオン交換膜a2を介して隣接するが、カチオン交換膜を介して両者が隣接してもよく、さらに第1の濃縮室C1と陰極室E1を一体化(共用化)してもよい。同様に、第1の副脱塩室S1を省略する場合、第2の濃縮室C2と陽極室E2がカチオン交換膜c2を介して隣接するが、アニオン交換膜を介して両者が隣接してもよく、さらに第2の濃縮室C2と陽極室E2を一体化(共用化)してもよい。
【0035】
陰極室E1は陰極3を収容している。陰極3は、金属の網状体あるいは板状体からなっており、例えばステンレス製の網状体あるいは板状体を用いることができる。
【0036】
陽極室E2は陽極4を収容している。陽極4は金属の網状体あるいは板状体からなっている。被処理水がCl
−を含む場合、陽極4に塩素が発生する。このため、陽極4には耐塩素性能を有する材料を用いることが望ましく、一例として、白金、パラジウム、イリジウム等の金属、あるいはチタンをこれらの金属で被覆した材料が挙げられる。
【0037】
陰極室E1及び陽極室E2には、被処理水の一部、または他の水源から供給された水が、電極水として流入する。第1の脱イオン水製造ユニット11の電気抵抗を抑えるために、陰極室E1及び陽極室E2にイオン交換体が充填されていることが好ましい。イオン交換体は陽極室E2と陰極室E1のいずれか一方だけに充填されてもよい。陰極室E1及び陽極室E2に充填するイオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、モノリス状多孔質イオン交換体等が挙げられ、最も汎用的なイオン交換樹脂が好適に用いられる。陽極室E2には弱酸性カチオン交換体、強酸性カチオン交換体等のカチオン交換体が単床充填される。陰極室E1には、弱塩基性アニオン交換体、強塩基性アニオン交換体等のアニオン交換体が単床充填される。これによって、後述するように、水素イオンの第1の副脱塩室S1への移動及び水酸化物イオンの第2の副脱塩室S2への移動が円滑に行われる。陽極室E2にはアニオン交換体がさらに充填されていてもよく、陰極室E1にはカチオン交換体がさらに充填されていてもよい。これらの場合、陽極室E2及び陰極室E1のイオン交換体は、アニオン交換体とカチオン交換体との混床形態または複床形態で充填することができる。
【0038】
図3に示すように、第1及び第2の脱塩室D1,D2は複数組設けることもできる。この場合、第1の副脱塩室S1と第2の副脱塩室S2の間に3以上の濃縮室C1〜CN(Nは3以上の自然数)が設けられ、隣接する濃縮室の間に第1及び第2の脱塩室D1,D2の組が配置される。複数の第1の脱塩室D1は互いに並列に接続することが望ましく,複数の第2の脱塩室D2も互いに並列に接続することが望ましい。
【0039】
陰極室E1、陽極室E2、第1及び第2の脱塩室D1,D2、第1及び第2の濃縮室C1,C2、第1及び第2の副脱塩室S1,S2は各々、積層され互いに密着して設けられた多数の枠体2(図では、全体を符号2で示している)によって形成された内部空間に形成されている。枠体2の材料は、絶縁性を有し被処理水が漏洩しないものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリカーボネート、m−PPE(変性ポリフェニレンエーテル)等の樹脂を挙げることができる。
【0040】
第1の脱イオン水製造ユニット11に流入した被処理水の一部は第1の脱塩室D1に流入する。被処理水の残りは、一部が第1及び第2の脱塩室D1,D2、陽極室E2及び陰極室E1の少なくともいずれかに流入する場合を除き、第1の副脱塩室S1に流入する。第1の脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1から流出した被処理水は第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2に供給される。
【0041】
次に、被処理水の流れと脱イオンの原理について説明する。給水ポンプ9を起動し、被処理水を第1の脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1、さらに第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2に、順次流入させる。被処理水の一部、または他の水源から供給された水を陰極室E1及び陽極室E2に電極水として流入させる。同様に、第1及び第2の濃縮室C1,C2にも被処理水の一部、または他の水源から供給された水を流入させる。
【0042】
本実施形態では、
図1に示すように、処理水の一部を陰極室E1及び陽極室E2に電極水として流入させ、被処理水の一部を第1及び第2の濃縮室C1,C2に流入させている。この状態で、陽極陰極間に所定の電圧を印加する。なお、
図1他に表記されている「脱塩室」は、第1の脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1と、第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2とが直列に接続された構成を示し、「濃縮室」は第1及び第2の濃縮室C1,C2を示し、「電極室」は陰極室E1及び陽極室E2を示している。陰極室E1と陽極室E2は並列に接続されてもよく、直列に接続されてもよく、後者の場合、どちらが前段にあっても構わない。
【0043】
被処理水は、第1の脱塩室D1でカチオン成分が除去される。具体的には、Na
+等のカチオン成分が、第1の脱塩室D1で、第1の脱塩室D1に充填されたカチオン交換体に吸着される。第1の脱塩室D1と第2の脱塩室D2の界面では、水分解反応によって水が水素イオン(H
+)と水酸化物イオン(OH
−)とに解離する反応が連続的に進行している。H
+は陰極側に移動する途中でカチオン交換樹脂に吸着したNa
+等のカチオン成分と交換され、第1の脱塩室D1に充填されたカチオン交換体が再生される。除去されたNa
+等のカチオンは陽極陰極間の電位によって陰極側に引き寄せられ、除去されたカチオンはカチオン交換膜c1を通過して第1の濃縮室C1に流入し、第1の脱イオン水製造ユニット11の外部に放出される。
【0044】
第1の副脱塩室S1では、Na
+等のカチオン成分は、第1の副脱塩室S1に充填されたカチオン交換体に吸着される。陽極室E2では、電気分解反応(2H
2O→O
2+4H
++4e
−)によって水から酸素ガスとH
+とが生成される反応が、連続的に進行している。酸素ガスは陽極室E2内を上昇し、電極水とともに第1の脱イオン水製造ユニット11の外へ排出される。H
+は第3のカチオン交換膜c3を通って第1の副脱塩室S1に流入する。第1の副脱塩室S1に流入したH
+は、カチオン交換体に吸着したカチオン成分と交換され、カチオン交換体が再生される。除去されたNa
+等のカチオン成分は陽極陰極間の電位によって陰極側に引き寄せられ、第2のカチオン交換膜c2を通過して陽極側濃縮室C2に流入し、系外に放出される。
【0045】
このようにしてNa
+等のカチオン成分が除去された被処理水は、第2の脱塩室D2に流入する。被処理水は、第2の脱塩室D2でアニオン成分が除去される。具体的には、Cl
−等のアニオン成分が、第2の脱塩室D2で、第2の脱塩室D2に充填されたアニオン交換体に吸着される。第2の脱塩室D2では、第1の脱塩室D1と第2の脱塩室D2の界面での水分解反応によってOH
−が連続的に発生している。OH
−はアニオン交換樹脂に吸着したCl
−等のアニオン成分と交換され、アニオン交換体が再生される。除去されたCl
−等のアニオン成分は陽極陰極間の電位によって陽極側に引き寄せられ、除去されたアニオン成分はアニオン交換膜a1を通過して第2の濃縮室C2に流入し、第1の脱イオン水製造ユニット11の外へ放出される。
【0046】
第2の副脱塩室S2では、Cl
−等のアニオン成分は、第2の副脱塩室S2に充填されたアニオン交換体に吸着される。陰極室E1では、電気分解反応(2H
2O+2e
−→H
2+2OH
−)によって水から水素ガスとOH
−とが生成される反応が、連続的に進行している。水素ガスは陰極室E1内を上昇し、電極水とともに第1の脱イオン水製造ユニット11の外へ排出される。OH
−は第3のアニオン交換膜a3を通って第2の副脱塩室S2に流入し、アニオン交換体に吸着したアニオン成分と交換され、アニオン交換体が再生される。除去されたCl
−等のアニオン成分は陽極陰極間の電位によって陽極側に引き寄せられ、第2のアニオン交換膜a2を通過して第1の濃縮室C1に流入する。第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2でアニオン成分が除去された被処理水は合流し、脱イオン水となって第1の脱イオン水製造ユニット11の外へ排出される。
【0047】
脱塩室が第1の脱塩室D1と第2の脱塩室D2の2つの脱塩室に区画され、各々の外側に第1及び第2の濃縮室C1,C2が隣接する構成(脱塩室2室構成)は、被処理水の多段処理が可能であり、脱イオン性能の向上に効果的である。しかも第1の脱塩室D1と第2の脱塩室D2との間に濃縮室を設ける必要がないため、陽極陰極間の印加電圧が抑えられ、消費電力が下がり運転費の低減を図ることが可能である。
【0048】
また、被処理水は、第1の脱塩室D1及び第1の副脱塩室S1でカチオン成分を除去され、第1の脱塩室D1のカチオン交換体は第1の脱塩室D1で生成されたH
+により再生され、第1の副脱塩室S1のカチオン交換体は陽極室E2で生成されたH
+により再生される。同様にして、被処理水は、第2の脱塩室D2及び第2の副脱塩室S2でアニオン成分を除去され、第2の脱塩室D2のアニオン交換体は第2の脱塩室D2で生成されたOH
−により再生され、第2の副脱塩室S2のアニオン交換体は陰極室E1で生成されたOH
−により再生される。従って、陰極室E1及び陽極室E2で発生し、従来は利用されることなく捨てられていたH
+及びOH
−をイオン交換体の再生に有効利用することができる。陽極室E2及び陰極室E1におけるH
+及びOH
−の生成効率は高いため、電圧が低くても十分な量のH
+及びOH
−が第1の副脱塩室S1及び第2の副脱塩室S2に移動する。このため、電極間の印加電圧を抑え、第1の脱イオン水製造ユニット11の運転費用を低減することができる。
【0049】
さらに、脱イオン水製造装置1を2つの脱イオン水製造ユニット11,12の直列構成としたことで、個々の脱イオン水製造ユニット11,12の負荷が低減するため、脱イオン水製造ユニット11,12を流れる電流を抑えることができる。印加電流が減少するため、焼けなどによるイオン交換膜(アニオン交換膜a1〜a3、カチオン交換膜c1〜c3、中間イオン交換膜m)の抵抗増加が発生しにくく、陽極陰極間の印加電圧の増加が抑制される。これに対し、1つの脱イオン水製造装置だけで被処理水を処理する場合、印加電流は2つの脱イオン水製造ユニットを流れる電流の和に概ね等しいが、陽極陰極間の印加電圧が増加しやすく、消費電力が増加する傾向にある。
【0050】
本実施形態では、第1の脱塩室D1に、体積比で、カチオン交換体がアニオン交換体よりも多く充填され、第2の脱塩室D2に、体積比で、アニオン交換体がカチオン交換体よりも多く充填されているため、さらに電気抵抗が減少し、一層の消費電力の抑制が可能となる。
図4は、脱塩室2室構成における中間イオン交換膜m近傍のイオン交換樹脂の分布を示す模式図である。同図(a)は、第1の脱塩室D1がカチオン交換体の単床充填、第2の脱塩室D2がアニオン交換体の単床充填の場合を、同図(b)は、2つの脱塩室にカチオン交換体とアニオン交換体が同じ体積だけ混床充填されている場合を示している。いずれの場合でも、中間イオン交換膜mを挟んで互いに隣接するカチオン交換体Cとアニオン交換体Aの界面で水分解反応が生じ、H
+とOH
−が発生する。
【0051】
図4(a)の場合、発生したH
+は陰極側へ、OH
−は陽極側へと、互いに離れる方向に移動し、互いに遭遇する可能性が低いため、H
+とOH
−はそのままの状態を保ちながら、第1の脱塩室D1及び第2の脱塩室D2の中を電気泳動する。これに対し
図4(b)の場合、発生したH
+とOH
−の一部は、中間イオン交換膜mを通って反対面に移動する。ここで、図ではH
+とOH
−が共に中間イオン交換膜mを通過するように示しているが、実際には、中間イオン交換膜mの特性により、H
+とOH
−のいずれかだけが中間イオン交換膜mを通過する。例えば、H
+が中間イオン交換膜mを通過する場合、中間イオン交換膜mの反対面にはOH
−が存在しており、中間イオン交換膜mを通過したH
+と、中間イオン交換膜mの反対面に存在するOH
−との間で逆反応が生じ、H
+とOH
−が消滅する。
【0052】
すなわち、
図4(a)の場合、イオンの流れが整流化され、水分解反応に寄与する反応面が広く取れるのに対し、
図4(b)の場合、水分解反応に寄与する反応面が小さくなってしまう。しかも、
図4(b)の場合は、中間イオン交換膜mを介してカチオン交換体とアニオン交換体が隣接する可能性自体も小さく、水分解反応に寄与する反応面がさらに小さくなる。これを補うためには陽極陰極間の電圧を上げ、より多くの水分解反応を発生させる必要が生じる。つまり、電気抵抗が増えたのと同じ現象が生じる。換言すれば、
図4(a)の場合には、電気抵抗が減少したのと同じ効果が生じる。
【0053】
図4(b)は、カチオン交換体及びアニオン交換体が混床充填された例を示しているが、第1の脱塩室D1に相対的にカチオン交換体が多く充填され、第2の脱塩室D2に相対的にアニオン交換体が多く充填されていれば、程度の差はあれ、
図4(a)に示すのと同様の効果が得られる。
【0054】
本願発明者は、1つの脱塩室内でのカチオン交換体及びアニオン交換体の充填比率(カチオン交換体及びアニオン交換体の合計体積に対するカチオン交換体の体積比)を変えて電気抵抗を測定した。この測定例では
図4に示すような中間イオン交換膜mは存在しないが、H
+とOH
−の生成と消滅について、
図4と同様の状況が模擬されている。
【0055】
測定の結果、カチオン交換体とアニオン交換体が等体積ずつ充填されている場合(すなわち、充填比率が50%の場合)に電気抵抗が最も高くなった。一方、充填比率が50%よりも高く、あるいは、低くなるにつれ、電気抵抗が低下し、アニオン交換体だけが充填されている場合(すなわち、充填比率が0%の場合)またはカチオン交換体だけが充填されている場合(すなわち、充填比率が100%の場合)に、電気抵抗が最も低くなった。具体的には、充填比率0%の場合の電気抵抗は、充填比率50%の場合の電気抵抗の約1/5となった。また、充填比率100%の場合の電気抵抗は、充填比率50%の場合の電気抵抗の約1/10となった。
【0056】
また、充填比率が20%と80%の付近に変曲点が認められた。具体的には、充填比率20%の場合の電気抵抗は、充填比率50%の場合の電気抵抗の約2/5となった。また、充填比率80%の場合の電気抵抗は、充填比率50%の場合の電気抵抗の約1/3となった。
【0057】
このことより、第1の脱塩室D1は80%以上の体積比でカチオン交換体が充填され、第2の脱塩室D2は80%以上の体積比でアニオン交換体が充填されることが望ましい。
【0058】
(第2の実施形態)
本実施形態は、各脱イオン水製造ユニットの構成は第1の実施形態と同様であるが、脱イオン水製造ユニット間の接続の態様が第1の実施形態と異なっている。本実施形態では、第1の脱イオン水製造ユニット11と第2の脱イオン水製造ユニット12の通水順序を切り替えることができる。
図5,6は、共に本実施形態の脱イオン水製造装置1’の構成を示しているが、それぞれが異なる運転モードを示している。通水されるラインは太線で示している(電極室、濃縮室を除く)。
【0059】
脱イオン水製造装置1’は、第1の脱イオン水製造ユニット11に水を流入させる第1の入口ライン21と、第2の脱イオン水製造ユニット12に水を流入させる第2の入口ライン22と、を有している。第1及び第2の入口ライン21,22は、給水ポンプ9の設けられている共通ライン23から分岐している。同様に、脱イオン水製造装置1’は、第1の脱イオン水製造ユニット11から水を流出させる第1の出口ライン24と、第2の脱イオン水製造ユニット12から水を流出させる第2の出口ライン25と、を有している。第1及び第2の出口ライン24,25は、共通の出口ライン26に合流している。第1の入口ライン21と第2の出口ライン25は第1の接続ライン27によって接続され、第2の入口ライン22と第1の出口ライン24は第2の接続ライン28によって接続されている。各ライン21〜28には図示しない弁が設けられている。
【0060】
図5に示す運転モードでは、太線に示すように、第1の脱イオン水製造ユニット11に先に通水され、その後第2の脱イオン水製造ユニット12に通水される。
図6に示す運転モードでは、太線に示すように、第2の脱イオン水製造ユニット12に先に通水され、その後第1の脱イオン水製造ユニット11に通水される。直列に連結された2つの脱イオン水製造ユニットで脱イオン水製造装置を構成する場合、一般的には前段の脱イオン水製造ユニットの方が負荷が高いため、装置全体の稼働可能時間は、前段の脱イオン水製造ユニットの稼働可能時間で支配される。本実施形態では、第1の脱イオン水製造ユニット11と第2の脱イオン水製造ユニット12の通水順序を切り替えることができるため、脱イオン水製造ユニット11,12の負荷を均等化し、装置全体の稼働可能時間を長くすることができる。後段の脱イオン水製造ユニットの方が負荷が高い場合も、同様に通水順序を切り替えることによって、同様の効果を奏することができる。
【0061】
(第3の実施形態)
本実施形態も、各脱イオン水製造ユニットの構成は第1の実施形態と同様であるが、脱イオン水製造ユニット間の接続の態様が第1の実施形態と異なっている。本実施形態では、3以上のイオン水製造ユニットが直列に接続されており、かつ脱イオン水製造ユニットの通水順序を切り替えることができる。
図7〜9は、共に本実施形態の脱イオン水製造装置1”の構成を示しているが、それぞれが異なる運転モードを示している。通水されるラインは太線で示している。
図7〜9では電極室及び濃縮室の図示は省略している。
【0062】
脱イオン水製造装置1”は、第1及び第2の脱イオン水製造ユニット11,12に加え、第3〜第Nの脱イオン水製造ユニット13〜1N(ここで、Nは3以上の自然数)をさらに有している。第1〜第Nの脱イオン水製造ユニット11〜1Nは直列に接続されている。各脱イオン水製造ユニット11〜1Nは、第1の実施形態の脱イオン水製造ユニットと同じ構成とすることができ、各々が、陽極室E2及び陰極室E1と、陽極室E2と陰極室E1との間に位置し、直列に接続され、イオン交換膜で仕切られた第1及び第2の脱塩室D1,D2と、第1及び第2の濃縮室C1,C2と、第1及び第2の副脱塩室S1,S2と、を有している。
【0063】
第1〜第Nの脱イオン水製造ユニット11〜1Nは、それぞれに水を流入させる第1〜第Nの入口ライン31〜3Nに接続されており、それぞれから水を流出させる第1〜第Nの出口ライン41〜4Nに接続されている。第Jの出口ラインと第J+1の入口ライン(ここで、Jは1からN−1の全ての自然数)は、それぞれ接続ライン51〜5N−1(合計N−1個)で接続されており、第Nの出口ラインと第1の入口ラインは接続ライン5Nで接続されている。
【0064】
従って、
図7に示すように第1の脱イオン水製造ユニット11から、第2、第3、・・、第Nの脱イオン水製造ユニット1Nまで直列で接続し、この順で通水することができる。また、
図8に示すように、第2の脱イオン水製造ユニット12から、第3、第4、・・、第N、第1の脱イオン水製造ユニット11の順で通水することができる。一般化すれば、任意の第K(ここで、Kは1からNの全ての自然数)の脱イオン水製造ユニットから、第K−1(K=1の場合は、第N)の脱イオン水製造ユニットまで、順次通水することができる。さらに、
図9に示すように、一部の脱イオン水製造ユニット(ここでは第1の脱イオン水製造ユニット11)を脱イオン水製造装置1”から隔離することもできる。この場合、運転を継続しながら、所望の脱イオン水製造ユニットのメンテナンスを行うことができる。
【0065】
(実施例)
図10に示す構成の脱イオン水製造装置を用いて本発明の効果を確認した。
図10(a)は本発明の実施例に係る脱イオン水製造装置の構成図、
図10(b)は比較例に係る脱イオン水製造装置の構成図を示す。実施例は
図2に示すのと同じ構成の脱イオン水製造ユニットを2基直列に接続しており、比較例は実施例と同じ脱イオン水製造ユニットを1つだけ備えている。RO(逆浸透膜)装置を通過した被処理水を実施例及び比較例の脱イオン水製造装置脱イオン水製造装置に供給した。実施例では、前段の脱イオン水製造ユニットの消費電力が156Wであったのに対し、後段の脱イオン水製造ユニットではその約三分の一であり、トータルの消費電力は211Wであった。これに対し、比較例では、トータルの消費電力は464Wであった。実施例で得られた水質は比較例で得られた水質よりも良好であったことから、仮に比較例と同等の水質で足りる場合、実施例の消費電力はさらに低減される。
【0066】
実施例では、前段、後段の脱イオン水製造ユニットとも、陽極陰極間の印加電圧が100Vを多少上回る程度であったのに対し、比較例では232Vであった。比較例は電流値も2.0Aと実施例より大きかったため、イオン交換膜の抵抗が増加し、それによって印加電圧も増加し、消費電力が増加したものと考えられる。