特許第6105009号(P6105009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6105009-横編機によるパイル編成方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105009
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】横編機によるパイル編成方法
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/02 20060101AFI20170316BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20170316BHJP
   D04B 7/12 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
   D04B1/02
   D04B1/00 Z
   !D04B7/12
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-175389(P2015-175389)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-53042(P2017-53042A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】515178867
【氏名又は名称】株式会社MODELLISTA
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100166752
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 典子
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 正樹
【審査官】 相田 元
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭31−006091(JP,Y1)
【文献】 実公昭34−004254(JP,Y1)
【文献】 特許第2917146(JP,B2)
【文献】 特開2005−290572(JP,A)
【文献】 特開平09−132841(JP,A)
【文献】 特開平06−173143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 1/00− 1/28
D04B 3/00−19/00
D04B 21/00−21/20
D04B 23/00−39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の編針を進退自在に並列し、歯口を挟んで対向する前後一対のニードルベッドと、上記前後一対のニードルベッドへと糸を供給する給糸キャリアとを備え、上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,が、上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F2,F3,…,に対して所定ピッチ移動可能なリブ式の横編機であって、所定の編成工程によりパイル編地を編成する横編機のパイル編成方法において、
上記編成工程は、上記後ニードルベッドの編針B1が上記前ニードルベッドの編針F1,F2の間に位置するように上記後ニードルベッドを0.5ピッチ右側に移動させた状態で、上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F2,F3,…,と上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,へと、上記給糸キャリアより糸を供給する総針ゴムかけ工程と、
上記総針ゴムかけ工程の後、上記後ニードルベッドの編針B1が上記前ニードルベッドの編針F2からF3の間に位置するように上記後ニードルベッドを1ピッチ右側に移動させて、上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F2,F3,…,および上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,へと上記給糸キャリアより糸を供給して上記前ニードルベッドで緯メリヤスを編む天竺編み工程と、
上記天竺編み工程の後、上記後ニードルベッドの編針B1が上記前ニードルベッドの編針F1と対向するように上記後ニードルベッドを1.5ピッチ左側に移動させ、上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,のうち、一つおきの編針にかかっている糸を、それぞれ対向する上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F3,F5,…,の一つおきの編針へと移す目移し工程と、
上記目移し工程の後、上記後ニードルベッドを上記前ニードルベッドに対して所定ピッチ右側に移動させ、上記後ニードルベッドの編針B1,B2,B3,…,の一つおきの編針に残された糸を、その一つおきの編針からすべて外すはらい行程とからなり、
上記総針ゴム工程および上記天竺編み工程により止め糸を形成し、上記目移し工程および上記はらい工程によりパイル・ループを形成して編地面にパイル編地を編成することを特徴とする横編機によるパイル編成方法。
【請求項2】
上記はらい工程において、上記後ニードルベッドを上記前ニードルベッドに対して1ないし2ピッチ右側に移動させることを特徴とする請求項1に記載の横編機によるパイル編成方法。
【請求項3】
上記目移し工程において、上記後ニードルベッドの一つおきの編針から上記前ニードルベッドの一つおきの編針に目移しするに際して用いられる編針は、後ニードルベッドでは編針B(2n−1;nは整数)、前ニードルベッドで編針F(n2−1;nは整数)とすることを特徴とする請求項1または2に記載の横編機によるパイル編成方法。
【請求項4】
上記目移し工程において、上記後ニードルベッドの一つおきの編針から上記前ニードルベッドの一つおきの編針に目移しするに際して用いられる編針は、後ニードルベッドでは編針B(n+1;nは整数)、前ニードルベッドで編針F(n+1;nは整数)とすることを特徴とする請求項1または2に記載の横編機によるパイル編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地面にリング状のループを出すパイル編成方法に関し、さらに詳しく言えば、横編機にパイル編成専用の部材を付加することなくパイル・ループを編成することができるようにした横編機によるパイル編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
横編機は、主にセーターなどのニット衣料を編む平型の編機であり、成形編みや多様な組織変化が得られる編機である。また、最近ではコンピュータ制御化が進んでおり、付属部分との一体化編成や、各パーツを連続して編んでかがりを不要とするインテグラルニット化も進んでいる。
【0003】
機構的には歯口を挟んで対向する2つのニードルベッド(針床)を逆V字状に配置し、針の出合いをリブ出合いとしたVベッド機が主流であり、平面状のニードルベッドを用い、カムを装着したキャリッジを運動させることによって緯メリヤス(天竺)を編む。
【0004】
横編機にはニードルベッドの構成によってシングル編機とダブル編機とがあり、これらの編機により種々の編地を編成している。なお、シングル編機はニードルベッドに多数の編針が一列に並べられているものであり、ダブル編機はニードルベッドに多数の編針を二列組み合わせたものである。
【0005】
横編機の編地の基本組織としては、シングル編機で編み立てられる天竺編みと呼ばれる平編が一般的であり、ダブル編機では平編みより編地の幅方向に伸びるリブ編みや、弾力性が大きな両面編み等の編地が得られ、それぞれの編地の特性により多種多様な製品に用いられている。
【0006】
ところで、編地の中には、編地面にリング状のループを出したパイル編がある。パイル編みは日本語では「輪奈」とも呼ばれ、図4に示すように、ループを止め糸で留めて編む編成方法であり、止め糸(地糸)RYにパイル糸PYを添えて編み、専用の部材を用いてパイル糸PYのループを拡大し、パイル・ループPを編成する。
【0007】
この場合、平編やゴム編みが応用されるが、仕上げではパイル・ループのまま放置する場合と、パイル・ループを切って羽毛にするものとがあり、パイル編みは、厚地で保温性に富み柔らかいのが特徴である。
【0008】
横編機は、基本的には編地の幅方向の糸にループを形成させ、これらのループを順次連結することにより編地を作る機械である。そのため、編地の面にリング状のループを出すパイル編成を行う場合には、パイル専用の部材を設ける必要がある(特許文献1〜3)。
【0009】
例えば、下記特許文献1では、一方のニードルベッドの上方にパイル引出針を装着した補助用ニードルベッドを設け、補助用ニードルベッドのパイル引出針にパイル糸を係止させた後、それを払い落とすことでパイル・ループを編成することができるようにしている。
【0010】
下記特許文献2では、対向するニードルベッドの針溝に、編針に代えてパイル編成用のスライダ部材を装着させておき、パイル編成時には、スライダ部材を歯口に進出させてパイル糸を掛け渡した後、スライダのリムに形成されているカッティング部材でパイル糸を切断し、カットパイルを形成するようにしている。
【0011】
また、下記特許文献3では、ニードルベッドに併設される編針を、針本体のフックを摺動自在に挟持する2枚の弾性板と、弾性板のタングによりフックをを開閉可能としたスライダー針とで構成する複合針とし、この複合針の動作によりパイル・ループを編成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実公昭34−4254号公報
【特許文献2】米国特許第6612135号明細書
【特許文献3】特許第2917146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているパイル編成技術では、パイル編成専用の部材を装着する補助的なニードルベッドも必要となり、編機が複雑になるだけでなくコスト的にも高価になってしまうという問題がある。
【0014】
また、上記特許文献2のパイル編成技術では、スライダ部材をニードルベッドの針溝に編針に代えて装着する必要があり、通常の編成かパイル編成かのいずれかを選択して編成することは可能でも、両方を同時の編成作業で行うことができないという問題がある。
【0015】
なお、上記特許文献1〜3のうち、特許文献3に開示されているパイル編成技術では、ニードルベッドに並列される編針を複合針とするだけでよいので、上記特許文献1よりは機構的にもコスト的にも有利である。また、上記特許文献2とは異なり、編針を代えることなく編地の一部にパイル編成を行うことができる。
【0016】
しかしながら、特許文献3に開示されているパイル編成技術では、パイル編成を行う前提として、針本体のフックに係止される旧編み目をスライダー上にホールディングし、それによって空になったフックに締糸(止め糸)を給糸し、接合部編目を形成するようにしている。
【0017】
そのため、接合部編目は単にループ形状を呈するのみでまだ固定されておらず、ループ形状が固定されていない複合編目が編幅方向に連続して並ぶことになり、接合部編目の保持状態が悪く、その後に行うパイル編成を行うことが難しくなる。
【0018】
特に、パイル・ループは編地から突出して形成されるものであり、編地が型崩れしないためには、接合部編目(止め糸)によりパイル・ループを確実に止める必要がある。
【0019】
したがって、パイル・ループ編成を行うに際して、複合針間で編糸を下方に押さえるループプレッサーやシンカーなどの付加的なハードウェアを用いなければならず、結果的に高コストにならざるを得ないという問題があった。
【0020】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、横編機によりパイル編成を行うに際して、パイル編成専用の特別な部材を付加することなく、既存の横編機によりパイル編地を編成できるようにしたパイル編成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本第1の発明は、歯口を挟んで対向する前後一対のニードルベッドと、上記前後一対のニードルベッドへと糸を供給する給糸キャリアとを備え、上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,が、上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F2,F3,…,に対して所定ピッチ移動可能なリブ式の横編機であって、所定の編成工程によりパイル編地を編成する横編機のパイル編成方法において、
上記編成工程は、上記後ニードルベッドの編針B1が上記前ニードルベッドの編針F1,F2の間に位置するように上記後ニードルベッドを0.5ピッチ右側に移動させた状態で、上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F2,F3,…,と上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,へと、上記給糸キャリアより糸を供給する総針ゴムかけ工程と、
上記総針ゴムかけ工程の後、上記後ニードルベッドの編針B1が上記前ニードルベッドの編針F2からF3の間に位置するように上記後ニードルベッドを1ピッチ右側に移動させて、上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F2,F3,…,および上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,へと上記給糸キャリアより糸を供給して上記前ニードルベッドで緯メリヤスを編む天竺編み工程と、
上記天竺編み工程の後、上記後ニードルベッドの編針B1,B2,B3,…,が上記前ニードルベッドの編針F1,F3,F5,…,とそれぞれ対向するように上記後ニードルベッドを1.5ピッチ左側に移動させ、上記後ニードルベッドの複数の編針B1,B2,B3,…,のうち、一つおきの編針にかかっている糸を、それぞれ対向する上記前ニードルベッドの複数の編針F1,F3,F5,…,の一つおきの編針へと移す目移し工程と、
上記目移し工程の後、上記後ニードルベッドを上記前ニードルベッドに対して所定ピッチ右側に移動させ、上記後ニードルベッドの編針B1,B2,B3,…,の一つおきの編針に残された糸を、その一つおきの編針からすべて外すはらい行程とからなり、
上記総針ゴム工程および上記天竺編み工程により止め糸を形成し、上記目移し工程および上記はらい工程によりパイル・ループを形成して編地面にパイル編地を編成することを特徴としている。
【0022】
上記はらい工程において、上記後ニードルベッドを上記前ニードルベッドに対して1ないし2ピッチ右側に移動させることが好ましい。
【0023】
上記目移し工程において、上記後ニードルベッドの一つおきの編針から上記前ニードルベッドの一つおきの編針に目移しするに際して用いられる編針は、後ニードルベッドでは編針B(2n−1;nは整数)、前ニードルベッドで編針F(2n−1;nは整数)とするとよい。
【0024】
また、上記目移し工程において、上記後ニードルベッドの一つおきの編針から上記前ニードルベッドの一つおきの編針に目移しするに際して用いられる編針は、後ニードルベッドでは編針B(n+1;nは整数)、前ニードルベッドで編針F(n+1;nは整数)としてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、既存の横編機における前後一対のニードルベッドの動作により、総針ゴム工程、天竺編み工程、目移し工程、はらい工程という編成工程を順次行うことにより編地にパイル・ループを形成することができるため、従来のようなパイル編地を編成するための専用の部材を不要とすることができ、低コストでパイル編地を編成できる。
【0026】
また、専用の部材を用いることなく、既存の横編機の編地編成工程の一部にパイル編成工程である総針ゴム工程、天竺編み工程、目移し工程、はらい工程を組み込むだけで良いため、他の編地模様と組み合わせた多種多様のデザインからなる成形品を編成することができる。
【0027】
さらに、はらい工程において、後ニードルベッドを前ニードルベッドに対して所定ピッチ右側に移動させたのち糸をはらって外すことによりパイル・ループを編成することから編成されたパイル・ループに空気が包みこまれるためそのループに膨らみが生まれ、柔らかい触感のパイル編地を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係るパイル編成工程の第1実施形態を示す説明図。
図2】本実施形態におけるパイル・ループの編目を模式的に示す説明図。
図3】本実施形態に係るパイル編成工程の第2実施形態を示す説明図。
図4】従来のパイル・ループの編目を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1ないし図3を参照して、本発明に係るパイル編成について説明する。なお、本発明のループ編成方法に用いられる横編機は、図示はしていないが、平面状のニードルベッド(針床)を用い、カムを装着したキャリッジを連動させることにより緯メリヤスを編む一般的な横編機である。
【0030】
具体的には、図1および図2に示すように、歯口Sを挟んで対向する前後一対のニードルベッドF,Bと、前後一対のニードルベッドへF,Bに対して糸Yを供給する給糸キャリア(図示省略)とを備え、後ニードルベッドBの複数の編針B1,B2,B3,…,を前ニードルベッドFの複数の編針F1,F2,F3,…,に対して所定ピッチ移動可能なリブ式の横編機である。
【0031】
次に、図1を参照して、本発明に係るパイル編成工程の第1実施形態を説明する。なお、前後ニードルベッドF,Bに供給される糸Yの番手は、ゲージワークにより予め決められるものである。また、前後ニードルベッドF,Bの編針F1,F2,F3,…,B1,B2,B3,…,には、一般的なリブ式の横編機に用いられるべら針が使用されている。
【0032】
まず、図1(a)に示すように、後ニードルベッドBの編針B1,B2,B3,…,を、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,に対して0.5ピッチ右側ずれた状態とし、後ニードルベッドBの編針B1,B2,B3,…,と前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,とに、給糸キャリアより糸Y1をかける(総針ゴム工程)。
【0033】
次に、図1(b)に示すように、後ニードルベッドBの編針B1が前ニードルベッドの編針F2からF3の間に位置するように後ニードルベッドBを1ピッチ右側に移動させて、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,および後ニードルベッドBの編針B1,B2,B3,…,へと給糸キャリアより糸Y2を供給する。
【0034】
そして、キャリッジ(図示省略)を動作させることにより、前ニードルベッドFで緯メリヤス(天竺)を編み、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,のすべてにループR1,R2,R3,…,を形成する(天竺編み工程)。
【0035】
次に、図1(c)に示すように、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,と後ニードルベッドBの編針B1,B2,B3,…,とがそれぞれ対向するように、後ニードルベッドBを前ニードルベッドFに対して1.5ピッチ左側に移動させ、後ニードルベッドBの編針B1,B2,B3,…,のうち、その一つおきの編針B1,B3,B5,…,にかかっている糸Y2を、対向する前ニードルベッドFの一つおきの編針F1,F3,F5,…,へと目移しする(目移し工程)。
【0036】
この場合、前ニードルベッドFの一つおきの編針F1,F3,F5,…,に目移しされた糸Y2は、前ニードルベッドFの一つおきの編針F1,F3,F5,…,でノックオーバーされずタックの状態で保持される。
【0037】
そして、図1(d)に示すように、後ニードルベッドBを前ニードルベッドFに対して、例えば、2ピッチ右側に移動して、後ニードルベッドBの編針B2,B4,B6,…,に残されている糸Y2をはらって外す(はらい工程)。
【0038】
これにより、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,のループR2とループループR4とループR5,…,を跨ぐように、パイル・ループP1,P2,P3,…,が形成される。
【0039】
なお、このはらい工程では、後ニードルベッドBを前ニードルベッドFに対して、2ピッチ右側に移動してから、後ニードルベッドBの編針B2,B4,B6,…,に残されている糸Yをはらっているが、後ニードルベッドBの前ニードルベッドFに対しての移動ピッチは、編針B2,B4,B6,…,から糸Y2をはらいやすい位置とすればよく、例えば、1ピッチから2ピッチ右に移動させればよい。
【0040】
このように、総針ゴム工程(図1(a))、天竺編み工程(図1(b))、目移し工程(図1(c))、はらい工程(図1(d))を順次行うことにより、緯編みされたループR1,R2,R3,…,がウェール(縦列)方向に連結されることにより、従来のパイル・ループの止め糸と同様の機能を持たせることができる。
【0041】
また、図2に示すように、パイル・ループP1,P2,P3,…,は、専用の部材を用いず、通常の緯メリヤス編み編成の一部として形成することができため、他の編地模様と組み合わせて多種多様な成形品を得ることができるほか、従来のようなパーツごとに縫い合わせる縫い代も不要となるため美しい編地を得ることができる。
【0042】
さらに、はらい工程において、後ニードルベッドBを所定ピッチ(この例では2ピッチ)右側に移動した後に糸Y2を外しているため、パイル・ループP1,P2,P3,…,が空気を包んだ状態で形成されるため、柔らかい触感の編地を得ることができる。
【0043】
次に、図3を参照して、本発明に係るパイル編成方法の第2実施形態を説明する。この第2実施形態でも、上記第1実施形態と同様に、総針ゴム工程、天竺編み工程、目移し工程、払い工程の4つの編成工程からなり、図3(a)および図3(b)に示す総針ゴム工程および天竺編み工程は、上記第1実施形態と同様の手順で行われるため、その説明は省略する。
【0044】
この第2実施形態では、図3(c)に示すように、目移し工程において、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,と後ニードルベッドBの編針B1,B2,B3,…,とが対向するように、後ニードルベッドBを前ニードルベッドFに対して1.5ピッチ左側に移動させることは、上記第1実施形態と同じであるが、後ニードルベッドBから前ニードルベッドFに目移しする一つおきの編針が異なっている。
【0045】
すなわち、上記第1実施形態では、後ニードルベッドBから前ニードルベッドFに目移しする一つおきの編針は編針B(2n−1;nは整数)と編針F(2n−1;nは整数)であるが、この第2実施形態では、後ニードルベッドBから前ニードルベッドFに目移しする一つおきの編針は編針B(n+1;nは整数)と編針F(n+1;nは整数)となっている。
【0046】
そのため、図3(c)に示すように、後ニードルベッドBの一つおきの編針B2,B4,B6,…,から、対向する前ニードルベッドFの一つおきの編針F2,F4,F6,…,から糸Y2が目移しされるが、この例においても、前ニードルベッドFの一つおきの編針F2,F4,F6,…,に目移しされた糸Yは、ノックオーバーされずタックの状態で保持される。
【0047】
その後、図3(d)に示すように、上記第1実施形態と同様に、後ニードルベッドBを前ニードルベッドFに対して、例えば2ピッチ右側に移動する。そして、後ニードルベッドBの編針B1,B3,B5,…,に残っている糸Y2をはらって外す。
【0048】
これにより、第2実施形態における編成工程においても、上記第1実施形態と同様に、前ニードルベッドFの編針F1,F2,F3,…,のループR1とループR2,R3とループ4,…,を跨ぐように、パイル・ループP1,P2,P3,…,を形成することができる。
【0049】
このように、本発明では、横編機の通常の編地編成工程のなかに、総針ゴム工程、天竺編み工程、目移し工程およびはらい工程というパイル編成工程を組み込むだけで編地にパイル・ループを編成することができる。
【0050】
したがって、パイル編成のための特別な部材を不要とするとともに、一連の編成工程のなかで編地模様を変化させることができるため、低コストを実現できるとともに作業効率を向上させることができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、編地編成に用いられる糸Y1,2を1本とする例で説明したが、本発明のパイル編成方法では、通常の編地編成工程の一工程とされるため、糸Yを2本以上としてもパイル・ループを編成することができる。
【符号の説明】
【0052】
F 前ニードルベッド
F1,F2,F3,… 前ニードルベッドの編針
B 後ニードルベッド
B1,B2,B3,… 後ニードルベッドの編針
Y1,Y2 糸
S 歯口
R(R1,R2,R3,…) ループ
P(P1,P2,P3,…) パイル・ループ
図1
図2
図3
図4