(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【実施例1】
【0014】
図1に示すように、本実施例の眼科装置は、被検眼100を検査するための測定部10を有している。測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0015】
干渉光学系14は、光源12と、光源12からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されている。
【0016】
光源12は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源12から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼の深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。
【0017】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構40と、入射角調整機構46と、ホットミラー48によって構成されている。光源12から出射された光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、焦点調整機構40、ガルバノミラー46、及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ガルバノミラー46、焦点調整機構40、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28、及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。0点調整機構30と焦点調整機構40と入射角調整機構46については、後で詳述する。
【0018】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と参照ミラー22によって構成されている。光源12から出射された光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、干渉計20内に配置され、その位置が固定されている。このため、本実施例の眼科装置では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
【0019】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0020】
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、干渉光学系の光源12からの光を反射する一方で、観察光学系の光源からの光を透過する。このため、本実施例の眼科装置では、干渉光学系による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0021】
ここで、測定光学系に設けられる0点調整機構30と焦点調整機構40と入射角調整機構46について説明する。0点調整機構30は、コーナキューブ32と、コーナキューブ32をミラー28,34に対して進退動させる第2駆動装置56(
図2に図示)を備えている。第2駆動装置56がコーナキューブ32を
図1の矢印Aの方向に駆動することで、光源12から被検眼100までの光路長(すなわち、測定光学系の物体光路長)が変化する。
図3に示すように、光源12から被検眼100の検出面(
図3では角膜表面)までの物体光路長(詳細には、光源12〜検出面+検出面〜受光素子26)と、光源12から参照ミラー22までの参照光路長(詳細には、光源12〜参照ミラー22+参照ミラー22〜受光素子26)とに光路差Δzが存在する場合、光路差Δzが大きくなるほど、検出面から反射される反射光と参照光とを合成した干渉光の強度は弱くなる。逆に、光路差Δzが小さいほど、干渉光の強度は強くなる。このため、本実施例では、0点調整機構30により物体光路長を変化させることで、参照光路長と物体光路長とが一致する位置(いわゆる、0点)を角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。
【0022】
焦点調整機構40は、光源12側に配置される凸レンズ42と、被検眼100側に配置される凸レンズ44と、凸レンズ42に対して凸レンズ44を光軸方向に進退動させる第3駆動装置58(
図2に図示)を備えている。凸レンズ42と凸レンズ44は、光軸上に配置され、入射する平行光の焦点の位置を変化させる。すなわち、第3駆動装置58が凸レンズ44を
図1の矢印Bの方向に駆動することで、被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の深さ方向に変化する。具体的には、凸レンズ44から照射される光が平行光となるように凸レンズ42と凸レンズ44との間隔を調整した状態から、凸レンズ44を凸レンズ42から離れる方向に移動させると、凸レンズ44から照射される光は収束光となり、凸レンズ44を凸レンズ42に近づく方向に移動させると、凸レンズ44から照射される光は発散光となる。このため、凸レンズ42と凸レンズ44との間隔を調整することで、
図4(a),(b)に示すように、正常視の被検眼100に対して、照射される光の焦点の位置を角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。また、
図4(c)、(d)に示す近視眼に対しても、照射される光の焦点の位置が網膜106の位置となるように調整することができる。このように、被検眼100に照射される光の焦点の位置を被検眼100の角膜102の表面や網膜106の表面に一致させることで、これらの面から反射される光の強度を強くでき、これらの面の位置を精度よく検出することができる。
【0023】
入射角調整機構46は、ガルバノミラー46aと、ガルバノミラー46aを駆動する第4駆動装置60を備えている。ガルバノミラー46aは、光軸上に配置されており、光軸に対して所定の角度範囲(例えば、±1°)で傾動可能となっている。第4駆動装置60がガルバノミラー46aを所定の角度範囲に振ることで、被検眼100に照射される光の入射位置と入射角が変化する。すなわち、
図5に示すように、ガルバノミラー46aの振り角θに応じて、角膜102への光の入射位置と入射角が変化し、それによって、水晶体104への光の入射位置と入射角が変化し、さらに、網膜への光の入射位置も変化する。このため、水晶体104の法線方向が視軸からずれていても、水晶体104に略垂直に光を照射することができる。これにより、水晶体104からの反射光の強度が強くなり、水晶体104の位置を精度よく検出することができる。また、白内障等によって水晶体104に白濁部位があっても、その白濁部位を避けて光を照射することができる。これにより、水晶体104を透過する光の強度が強くなり、網膜106の位置を精度よく検出することができる。
【0024】
なお、本実施例の眼科装置では、被検眼100に照射される光の入射位置が横方向(左右の目を繋ぐ方向)に変化するように、ガルバノミラー46aの傾動方向が設定されている。このため、光源12からの光が瞼やまつ毛等によって被検眼100に照射されないといった事態が発生することが防止される。
【0025】
また、本実施例の眼科装置では、被検眼100に対して測定部10(詳細には、測定部10のうち干渉計20を除いた部分の光学系)の位置を調整するための位置調整機構16(
図2に図示)と、その位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(
図2に図示)を備えている。
図5より明らかなように、被検眼100に対する測定部10の位置を調整し、被検眼100からガルバノミラー46aまでの距離Lが変化すると、それに応じて被検眼100に照射される光の入射位置も変化する。したがって、被検眼100からガルバノミラー46aまでの距離Lを調整することで、水晶体104の所望の範囲に光を入射させることができる。これによって、水晶体104の混濁部位等を適切に避けることができる。なお、被検眼100に照射される光が瞳孔の範囲内で変化するように、被検眼100からガルバノミラー46aまでの距離Lを調整することが好ましい。
【0026】
次に、本実施例の眼科装置の制御系の構成を説明する。
図2に示すように、眼科装置は演算装置64によって制御される。演算装置64は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。演算装置64には、光源12と、第1〜第4駆動装置54〜60と、モニタ62と、観察光学系50が接続されている。演算装置64は、光源12のオン/オフを制御し、第1〜第4駆動装置54〜60を制御することで各機構16,30,40,46を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。また、演算装置64には、受光素子26が接続され、受光素子26で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力する。演算装置64は、受光素子26からの干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。なお、演算装置64による被検眼100の各部位の位置を特定する処理の詳細については後述する。
【0027】
次に、本実施例の眼科装置を用いて眼軸長を測定する際の手順を説明する。
図8に示すように、まず、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼100に対して測定部10の位置合わせを行う(S10)。すなわち、演算装置64は、検査者の操作部材の操作に応じて、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動する。これによって、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。また、演算装置64は、第2,第3駆動装置56,58を駆動して、0点調整機構30及び焦点調整機構40を調整する。これによって、光源12から被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、角膜102の前面)となり、また、物体光路長と参照光路長が一致する0点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、角膜102の前面)となる。
【0028】
次に、演算装置64は、第4駆動装置60を駆動して、ガルバノミラー46aを走査角範囲内の1の走査角に調整する(S12)。これによって、光源12からの光は、調整された走査角に対応した入射位置及び入射角度で被検眼100に入射することとなる。
【0029】
ガルバノミラー46aの調整が終わると、演算装置64は、光源12から照射される光の周波数を変化させながら、受光素子26で検出される信号を取り込む(S14)。既に説明したように、光源12から照射される光の周波数を変化させると、測定光と参照光とが干渉して干渉波を生じる位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、受光素子26から出力される干渉信号は、
図6に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号となる。そこで、演算装置64は、受光素子26から入力する信号をフーリエ変換することで、その信号から被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された反射光による干渉信号成分を分離する。これにより、演算装置64は、被検眼100の各部の位置を特定することができる。なお、光源12から照射される光の周波数を変化させることで、干渉波が生じる位置を被検眼100の深さ方向に変化させることを、本明細書ではAスキャンという。
【0030】
次に、演算装置64は、上述したステップS14の測定を、全ての走査角(すなわち、全ての入射位置及び入射角)について実施したか否かを判断する(S16)。全ての走査角についてステップS14の測定を実施していない場合(ステップS16でNO)は、ステップS12に戻って、ステップS12からの処理が繰り返される。これによって、ガルバノミラー46aを走査する各走査角について、Aスキャンにより得られる干渉信号が取得される。なお、ガルバノミラー46aの走査角(振り角θ)を変化させることで、光源12からの光が入射する位置および入射角度を変化させることを、本明細書ではBスキャンという。
【0031】
全ての走査角についてステップS14の測定を実施している場合(ステップS16でYES)は、演算装置64は、各走査角について得られた干渉信号から、被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置を特定する(S18)。具体的には、各走査角についてステップS14の処理を実行すると、各走査角について干渉信号の情報(Aスキャン情報)が取得される。したがって、
図7に示すように、各走査角の数(n個)だけ干渉信号情報(Aスキャン情報)が並んだ2次元情報が得られる。このため、演算装置64は、各干渉信号情報に含まれる被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置情報の平均値を算出することで、被検眼100の各部位の位置を特定する。被検眼100の各部位の位置が特定できると、演算装置64は、被検眼100の眼軸長を算出する。このように算出された被検眼100の各部位の位置及び眼軸長は、モニタ62に表示される。
【0032】
上述の説明から明らかように、本実施例に係る眼科装置では、ガルバノミラー46aの振り角θを走査することで、被検眼100への光の入射位置及び入射角度を所定の範囲で走査する。そして、ガルバノミラー46aの各走査角(振り角θ)について眼軸方向の干渉信号波形を取得し、これらの干渉信号波形から被検眼100の各部位(すなわち、角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)の位置を特定する。したがって、水晶体104に様々な入射角度で光が入射されてAスキャン情報が取得されるため、得られた測定結果の中には水晶体104からの反射光の強度が充分となるAスキャン情報が含まれることとなる。したがって、水晶体104の位置を精度良く特定することができる。また、水晶体104に光が入射する位置が変化するため、白内障等で水晶体104に白濁部位があったとしても、得られた測定結果の中には白濁部位を避けて測定されたAスキャン情報が含まれることとなる。したがって、白内障等で水晶体104に白濁部位があったとしても、被検眼100の各部位の位置を精度良く特定することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0034】
例えば、上述した実施例では、ガルバノミラー46aによって被検眼100に照射される光の入射角度と入射位置を調整(変更)したが、被検眼100に照射される光の入射角度のみを変更するものとしてもよい。このような構成によっても、水晶体104に種々の角度で光を入射できるため、水晶体104の位置を精度良く特定することができる。
【0035】
また、上述した実施例では、被検眼100に照射される光の入射角及び入射位置を変更するためにガルバノミラー46aを用いたが、それ以外の構成によって被検眼に照射される光の入射角と入射位置を変更するようにしてもよい。例えば、ミラーと、そのミラーを駆動する電磁石によって、被検眼に照射される光の入射角と入射位置を変更するようにしてもよい。
図9〜12に示す例では、ハウジング70は、軸受80a,80bを介してシャフト72の両端を回転可能に支持する。シャフト72には、ミラー74と複数の磁石76a,76bが取付けられている。磁石76aはシャフト70の左側に配置され、磁石76bはシャフト70の右側に配置されている。各磁石76a,76bに対向する位置には、電磁石78a,78bが配置される。かかる構成において、シャフト72の左側に配置された電磁石78aに流す電流と、シャフト72の右側に配置された電磁石78bに流す電流と、の比を変更すると、それによって左右の電磁石78a,78bから磁石76a,76bに作用する磁力が変化する。その結果、シャフト72はハウジング70に対して回転し、
図11に示す状態(シャフト72の左側に配置された磁石76aが、シャフト72の左側に配置された電磁石78aに吸引された状態)から
図12に示す状態(シャフト72の右側に配置された磁石76bが、シャフト72の右側に配置された電磁石78bに吸引された状態)まで変位する。したがって、左右の電磁石78a,78bに流れる電流比を制御することで、シャフト72の回転角を制御することができる。シャフト72の回転角が変化すると、シャフト72に取付けられたミラー74への光の入射角も変化する。このため、上記の構成によると、左右の電磁石78a,78bに流れる電流比を制御することで、被検眼に照射される光の入射角と入射位置を変更することができる。
【0036】
また、電磁石によってミラーを駆動する構成を採る場合も、
図9〜12に示す構成には限られず、種々の構成を採ることができる。例えば、
図13〜15に示す例では、シャフト84が、ハウジング82に対して回転可能に支持されている。シャフト84にはミラー86が取付けられる。シャフト84の上端部には、コイルホルダ88が取付けられている。コイルホルダ88には、図示しないコイルが巻回されている。コイルホルダ88の対向する2辺には、磁石部90が配置されている(
図14,15参照)。磁石部90は、ハウジング82の上面に設置されている。磁石部90は、コイルホルダ88を上下方向から挟む一対の磁石を備えている。この一対の磁石によって、コイルホルダ88の上方から下方に向かう磁界が形成されている。また、コイルホルダ88の外周面には磁石92が取付けられ、ハウジング82にも磁石94が取付けられている。磁石92と磁石94は互いに対向するように配置され、磁石92と磁石94の間には斥力が作用するようになっている。かかる構成において、コイルホルダ88に巻回されたコイルに電流を流していない状態では、磁石92と磁石94の斥力によってコイルホルダ88に時計回りのモーメントが作用し、コイルホルダ88は
図14に示す状態に付勢されている。一方、コイルホルダ88に巻回されたコイルに電流を流すと、コイルホルダ88に反時計回りのローレンツ力が作用する。その結果、ローレンツ力が磁石92と磁石94の斥力とが釣合う位置まで、コイルホルダ88が反時計回りに回転する(例えば、
図15に示す状態)。したがって、コイルホルダ88に巻回されたコイルに流れる電流量を制御することで、コイルホルダ88に作用するローレンツ力を制御でき、コイルホルダ88の回転角を制御することができる。コイルホルダ88が回転すると、コイルホルダ88と一体にシャフト84も回転し、シャフト84に取付けられたミラー86への光の入射角が変化する。これによって、被検眼に照射される光の入射角と入射位置を変更することができる。このため、上記の構成によっても、被検眼に照射される光の入射角と入射位置を変更することができる。
【0037】
また、上述した実施例では、被検眼100に照射される光の焦点の位置及び0点の位置を被検眼100の所定の位置となるように調整し、その位置で光源12から照射される光の周波数を変化させたが、被検眼100の各部位の位置を特定する手順としては種々の方法を採ることができる。例えば、被検眼100に照射される光の焦点の位置及び0点の位置を被検眼100の角膜102の前面の位置に合わせ、その位置で光源12から照射される光の周波数を変化させ、角膜102の前面と後面の位置のみに関する干渉光信号を取得する。次いで、被検眼100に照射される光の焦点の位置及び0点の位置を被検眼100の水晶体104の前面の位置に合わせ、その位置で光源12から照射される光の周波数を変化させ、水晶体104の前面と後面の位置のみに関する干渉光信号を取得する。最後に、被検眼100に照射される光の焦点の位置及び0点の位置を被検眼100の網膜106の表面の位置に合わせ、その位置で光源12から照射される光の周波数を変化させ、網膜106の表面の位置のみに関する干渉光信号を取得する。このように、被検眼100の各部位に焦点の位置及び0点の位置を合せて複数回の測定を行うことで、各部位からの反射光による干渉光の強度が強くなり、各部位の位置を精度良く特定することができる。
【0038】
また、上述した実施例では、Aスキャン及びBスキャンをすることにより得られた二次元情報を単純に平均することで、被検眼100の各部位の位置を特定したが、このような方法に限られない。例えば、網膜106とその他の部位(角膜102、水晶体104)を特定する場合とで、その方法を変更してもよい。すなわち、網膜106からの反射光による干渉信号は、Bスキャンによる依存性が小さい。網膜106では入射した光が拡散反射するため、入射角による依存性は小さいためである。そこで、網膜106の位置を特定する際は、全ての走査角について得られた位置情報を加算して平均を取ることで、網膜106の位置を特定する。全ての走査角について得られた位置情報を加算することで、ノイズが除去され、S/N比を向上することができる。一方、角膜102や水晶体104からの反射光による干渉信号は、Bスキャンによる依存性が大きい。角膜102や水晶体104では、入射した光が鏡面反射するためである。そこで、角膜102や水晶体104の位置を特定する際は、干渉信号の強度が強くなる角度範囲について得られた位置情報のみを加算して平均値を取ることで、角膜102や水晶体104の位置を特定する。これによって、Bスキャンの影響を低減し、角膜102と水晶体104の位置を精度良く特定することができる。
【0039】
また、上述した実施例では、検査者が操作部材を操作することで測定部10の位置を調整したが、眼科装置が被検眼100に対して測定部10の位置を自動調整する機構を有していてもよい。さらに、上述した実施例は、フーリエドメイン方式の干渉計を利用した例であったが、タイムドーメイン方式の干渉計を利用してもよい。
【0040】
また、上述した実施例で示した光学系の構成は一例であり、種々の態様を採り得る。例えば、上述した実施例では、焦点調整機構40を2枚の凸レンズ42,44によって構成したが、焦点調整機構は、光源側に配置した凸レンズと、被検眼側に配置した凹レンズによって構成することもできる。この場合も、上述した実施例と同様に、凹レンズから被検眼に照射される光が平行光となるように凸レンズと凹レンズとの間隔を調整した状態から、凹レンズを凸レンズから離れる方向に移動させると、凹レンズから被検眼に照射される光は収束光となり、凹レンズを凸レンズに近づく方向に移動させると、凹レンズから被検眼に照射される光は発散光となる。
【0041】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。