【実施例1】
【0016】
<ロボット10の構成>
図1〜
図3に基づいて、本発明に係る回転駆動機構が搭載されたロボット10の概略構成について説明する。
図1はロボット10の正面図であり、
図2はロボット10の左側面図であり、
図3はロボット10の背面図である。なお、本実施例では、ロボット10の進行方向をx軸正方向、ロボット10からみて左手方向をy軸正方向、ロボット10における反重力方向をz軸正方向としたとき、x軸がロール軸、y軸がピッチ軸、z軸がヨー軸である。したがって、x軸回りの回転がロール動作、y軸回りの回転がピッチ動作、z軸回りの回転がヨー動作となる。また、本実施例における上方向とは、z軸正方向、すなわち反重力方向であり、一方で下方向とは、z軸負方向、すなわち重力方向とし、左右方向はロボット10から見たときの左右方向であり、y軸正方向が左方向、y軸負方向が右方向となる。
【0017】
ロボット10は、人間型ロボットであり、人間の骨格構造を模したボディを有している。概略的には、
図1においてz軸方向に延在している背骨部14及び後述する板金で形成された各種の骨部14a〜14d、背骨部14を支持するように背骨部14に連結された
腰骨部15、更に腰骨部15を支持し図示しないロボット10の一対の脚部が接続される骨盤部16によってロボット10の上半身の骨格構造(以下、単に「上半身骨格構造」という)が形成されている。そして、背骨部14には、ロボット10の首部13が接続され、更にその上に頭部11が配置されている。なお、頭部11には、外部を撮影するためのカメラ12が搭載されている。この首部13を介した頭部11の背骨部14との接続により、頭部11は背骨部14に対してロール動作、ヨー動作が可能となるが、これらの動作のためのロボット内部構造は本発明の中核をなすものではないので、本明細書ではその詳細な説明は省略する。
【0018】
また、ロボット10には、その上半身の駆動を司る駆動ユニット20が右上半身と左上半身のそれぞれに対応して配置されている。ここで、
図4に示すように、背骨部14には、ロボット10の肩部分に位置する部位で、ロボット前面側の前方鎖骨部14aとロボット背面側の背面鎖骨部14bが接続されている。更に、背骨部14には、ロボット10の胸部分(肩部分より下方の部位)に位置する部位で、ロボット前面側の前方胸骨部14cとロボット背面側の背面胸骨部14dが接続されている。これらの骨部14a〜14d及び背骨部14によって、背骨部14を挟んだロボット10の上半身内の左右に所定の空間が形成され、当該左右の所定の空間に駆動ユニット20がそれぞれ収まるように配置され、各骨部14a〜14dに対して駆動ユニット20が接続されることになる。これにより、2つの駆動ユニット20がロボット10内に取り付けられることになる。骨部14a〜14dは、背骨部14に対して平板状の板金で形成されているため、背骨部14に対する駆動ユニット20の取り付けは、比較的弾性的に行われることになる。
【0019】
図4には、ロボット10の左側の腕部50と、それに対応する左上半身用の駆動ユニット20とが一体となって、ロボット10の上半身骨格構造から取り外された状態が示されている。このように駆動ユニット20は、対応する腕部50とともにロボット10の上半身骨格構造から取り外し可能となるように構成されることで、ロボット10の組立性やメンテナンス性が好適に維持される。この駆動ユニット20内に、腕部50をピッチ回転するためのアクチュエータと、当該アクチュエータの出力を腕部50まで伝達する伝達機構が搭載されているが、駆動ユニット20そのものは本発明の中核をなすものではないので、本明細書ではその詳細な説明は省略する。
【0020】
<腕部50の構成>
ここで、
図5〜
図8に基づいて、腕部50の構成について説明する。
図5は、腕部50を構成する2つの腕部材であって、上腕側の第1腕部材51と下腕側の第2腕部材52の相対的な回転駆動を司る関節部、すなわち肘関節部54を示す外観図である。なお、
図5は、当該肘関節部54の構成の把握が容易となるように、
図1等に示す各腕部材を覆うカバー部材の記載は省略されている。また、
図6〜
図8は、当該肘関節部54を形成する第1リンク部53と第2リンク部55の動きを説明するための図であり、第1腕部材51、第2腕部材52及び肘関節部54を、腕部50の長軸方向に沿った断面で示した断面図である。
【0021】
第1腕部材51は、その長軸方向に沿った一対の板状フレーム51aと該一対の板状フレーム51aが接続されるベースフレーム51bを有している。また、第2腕部材52についても、同じようにその長軸方向に沿った一対の板状フレーム52aと該一対の板状フレーム52aが接続されるベースフレーム52bを有している。ここで、第2腕部材52側の板状フレーム52a間の距離は、第1腕部材51側の板状フレーム51a間の距離と概ね同じになるように設定されている。そして、一対の板状フレーム51aの長軸方向の開口側と、一対の板状フレーム52aの長軸方向の開口側とは互いに対向するように配置される。そのため、一対の板状フレーム51a、52a及びベースフレーム51b、52bによって概ね囲まれた空間が形成され、この囲まれた空間に、肘関節部54を回転駆動
するためのアクチュエータ57、及び当該アクチュエータ57の出力を各腕部材に伝達するための、本発明の回転駆動機構に相当する肘関節部54のためのリンク機構が収容された状態となる。
【0022】
先ず、アクチュエータ57について説明する。アクチュエータ57は、サーボモータと、本体部と、アクチュエータの軸方向に直線移動する出力軸57aとを有する、直動アクチュエータである。出力軸57aの外周面には螺旋状のねじ溝が形成されており、本体部には、出力軸57aのねじ溝に螺合するボールねじナット(図示せず)が軸線の回りの回転のみが許容された状態で収納されている。そして、サーボモータが当該ボールねじナットを回転させるように本体部と接続されており、本体部内でボールねじナットの軸線方向の移動が制限されているため、サーボモータの駆動により出力軸57aが軸方向に直線運動、すなわち直動する。
【0023】
そして、アクチュエータ57の出力軸57aは、肘関節部54を構成する第1リンク部53と第2リンク部55のうち第1リンク部53に接続される。そして、第1リンク部53は、
図5に示すように、基部53cの両端から同方向に延出した2つの壁部53aを有しており、そして、両壁部53aを繋ぐように基部53cに平行となるブリッジ53bが設けられている。この第1リンク部53は、第1腕部材51に対して回転自在となるようにベアリングで支持され、その回転軸が61で表され、第1回転軸61と称する。更に、第1リンク部53は、第2腕部材52に対しても回転自在となるようにベアリングで支持され、その回転軸が62で表され、第2回転軸62と称する。なお、第1回転軸61と第2回転軸62は、互いに平行な回転軸である。
【0024】
また、ブリッジ53bに、アクチュエータ57の出力軸57aが、第1リンク部53との向きが可変となるように接続され、その接続点は57bとされる(
図6〜
図8を参照)。そして、アクチュエータ57は、第1腕部材51の一対の板状フレーム51a間に配置されるが、後述するようにアクチュエータ57から第1リンク部53に出力が付与されたときに、第1リンク部53の姿勢に応じてアクチュエータ57の出力軸の向きが適切に調整されるように、アクチュエータ57は、第1腕部材51、すなわち一対の板状フレーム51aに対して回転自在となるようにベアリングで支持され、その回転軸が56で表される。すなわち、この回転軸56は、第1リンク部53の第1回転軸61回りの回転による、出力軸57aとブリッジ53bとの接続点57bの変位に応じて、アクチュエータ57を第1腕部材51に対して適切に傾けるためのものである。
【0025】
このように構成される第1リンク部53は、第1腕部材51と第2腕部材52をそれぞれ第1回転軸61と第2回転軸62を介してそれぞれ回転自在に接続する、二軸関節を形成する。このとき第1回転軸61と第2回転軸62との間の軸間距離は所定距離開いているため、各回転軸を中心に回転する第1腕部材51と第2腕部材52のそれぞれは、干渉しにくい状況に置かれている。ただし、アクチュエータ57の出力軸57aは第1リンク部53側にのみ接続されているため、アクチュエータ57の出力が直接には第2腕部材62には伝達する構成ではない。そこで、第1腕部材51と第2腕部材52とをつなぐ第2リンク部55が設けられている。
【0026】
第2リンク部55は、上記の通り肘関節部54を形成するリンク部の一つである。具体的には、第2リンク部55は、第1腕部材51の一対の板状フレーム51a間をつなぐように設けられた第1支持軸63と、第2腕部材52の一対の板状フレーム52a間をつなぐように設けられた第2支持軸64とに接続される。ここで、回転駆動面において第1支持軸63と第2支持軸64とをつなぐ直線は、第1回転軸61と第2回転軸62とをつなぐ直線と交差するように、第1回転軸61と第2回転軸62に対して、第1支持軸63と第2支持軸64が配置されるとともに、第1支持軸63及び第2支持軸64は、第1回転
軸61及び第2回転軸62と互いに平行な軸とされる。これにより、後述の、アクチュエータ57による第1腕部材51、第2腕部材52、第1リンク部53、第2リンク部55の回転駆動は、同一の回転駆動面上で行われることになる。そして、第2リンク部55は、そのリンク本体により第1支持軸63と第2支持軸64をつなぐことにより、両支持軸間の軸間距離を一定の距離に保つ。このような構成により、それぞれの回転軸を有する第1腕部材51と第2腕部材53との間に相関を形成させることでき、以て、第2腕部材53をアクチュエータ57の出力に連動させることができる。なお、第2リンク部55は、第1リンク部53の2つの壁部53aに挟まれるように配置されている。
【0027】
ここで、第1支持軸63と第2支持軸64は、それぞれ、対向する板状フレーム51a、52aに渡されるように配置されるため、
図5に示す肘関節部54が形成されている状態では、第1リンク部53の内部に第1支持軸63がその軸長さ方向に挿入され通過する第1ガイド貫通孔53dと、第2支持軸64がその軸長さ方向に挿入され通過する第2ガイド貫通孔53eが形成されている(
図6〜
図8を参照)。より具体的には、第1ガイド貫通孔53dは、第1リンク部53の2つの壁部53aのそれぞれに設けられており、その形状は、第1リンク部53が第1回転軸61を中心に回転したときの第1支持軸63の軌跡に沿って延在する形状であって、その延在方向における長さは第1の所定長さとなる。したがって、第1ガイド貫通孔53dは、例えば
図6に示すように、当該回転時の軌跡として延在する方向において有限の長さを有する貫通孔であって、その延在方向の両側にはそれぞれ第1ガイド貫通孔53dの端部が存在することになる。そのため、第1支持軸63は、第1ガイド貫通孔53dの延在方向の範囲においてのみ、第1リンク部53に対して相対的移動が可能となる。
【0028】
更に、第2ガイド貫通孔53eは、第1リンク部53の基部53cに設けられており、その形状は、第1リンク部53が第2回転軸62を中心に回転したときの第2支持軸64の軌跡に沿って延在する形状であって、その延在方向における長さは第2の所定長さとなる。したがって、第2ガイド貫通孔53eは、例えば
図6に示すように、当該回転時の軌跡として延在する方向において有限の長さを有する貫通孔であって、その延在方向の両側にはそれぞれ第2ガイド貫通孔53eの端部が存在することになる。そのため、第2支持軸64は、第2ガイド貫通孔53eの延在方向の範囲においてのみ、第1リンク部53に対して相対的移動が可能となる。これらの第1ガイド貫通孔53dと第2ガイド貫通孔53eが、本発明に係るガイド貫通孔に相当する。
【0029】
ここで、
図6〜
図8に基づいて、上述した第1リンク部53と第2リンク部55で形成される肘関節部54の動作について説明する。
図6は、腕部50が真っ直ぐに伸長した状態、すなわち、第1腕部材51の軸中心と第2腕部材52の軸中心が回転駆動面で一直線上に位置する状態を示している。なお、当該状態が、本発明に係る最大伸長状態に相当する。そして、アクチュエータ57の出力軸57aが第1リンク部53側に伸びていくことで、次第に第2腕部材52が第1腕部材51に対して回転し、折れ曲がっていく(
図7に示す状態)。そして、最終的には、
図8に示すように、第2腕部材52が第1腕部材51に対して最も折れ曲がった状態、すなわち、第1腕部材51の回転内側側面51cと、第2腕部材52の回転内側側面52cとが為す角(以下、「折り曲げ角度」という)が最も小さくなる状態が形成される。以下、各リンク部の動作について詳細に説明する。
【0030】
図6に示す最大伸長状態では、第1腕部材51と第2腕部材52が真っ直ぐに伸長した状態となっている。このとき、第1腕部材51側の第1支持軸63は、
図6において第1ガイド貫通孔53dの右側の端部(すなわち、第2腕部材52寄りの端部)に当接した状態となっている。それとともに、第2腕部材53側の第2支持軸64は、
図6において第2ガイド貫通孔53eの右側の端部に当接した状態となっている。すなわち、最大伸長状態は、第1支持軸63と第2支持軸64は、それぞれに対応するガイド貫通孔53d、5
3eの端部に突き当たって、その動きが阻止された状態となることで、腕部50として形成される状態である。
【0031】
また、当該最大伸長状態を含み、第1腕部材51と第2腕部材52とが概ね伸長した状態(本発明に係る所定の伸長状態に相当する状態)では、
図6に示すように、接続点57bは、回転駆動面での出力軸57aの延在方向(
図6において一点鎖線で示す方向。また、第1回転軸61から上記一点鎖線に対する垂線を、図中破線で示している。なお、後述の
図7、
図8においても同様。)に沿った可動範囲において、第1回転軸61に対して左側に位置している。なお、当該可動範囲は、
図6に示す最大伸長状態において接続点57bがその一方の端部(上記破線と一点鎖線との交点より左側の端部であり、換言すれば第1回転軸61に対して第1腕部材52側に位置する端部)に位置し、後述の
図8に示す最大折り曲げ状態において接続点57bが他方の端部(上記破線と一点鎖線との交点より右側の端部であり、換言すれば第1回転軸61に対して右側に位置する端部)に位置することで特定される、接続点57bが変位し得る範囲である。したがって、接続点57bは、回転駆動面において出力軸57aの延在方向に沿って第1回転軸61を挟んで左右両側に変位するように構成される。このように接続点57bの可動範囲を設定することで、後述するように出力軸57aを駆動した際に、第1腕部材51に対するアクチュエータ57の傾きを可及的に小さくすることができ、第1腕部材51のコンパクト化や、折り曲げ時の第1腕部材51と第2腕部材52との干渉を回避しやすくなる。
【0032】
この最大伸長状態から、アクチュエータ57の駆動によりその出力軸57aが第1リンク部53側に飛び出していき、接続点57bが図中の破線に近づいていく。そうすると、第1腕部材51を中心に見ていくと、
図7に示すように第1リンク部53が第1回転軸61を中心として時計回りに回転する。このとき、上述したように第1支持軸63と第2支持軸64とをつなぐ直線と、第1回転軸61と第2回転軸62とをつなぐ直線とが交差するように、これらの4つの軸が配置され、第2リンク部55によって第1支持軸63と第2支持軸64が繋がれているため、上記第1リンク部53の時計回りの回転が生じると、第2腕部材52に対して第2回転軸62を中心とした時計回りの回転モーメントが作用する。この結果、折り曲げ角度が次第に閉じていき、例えば、
図7に示す状態では、概ね折り曲げ角度が90度となっている。なお、この状態では、第1支持軸63は、第1ガイド貫通孔53dの延在長さの概ね中央部分に位置し、第2支持軸64は、第2ガイド貫通孔53eの延在長さの概ね中央部分に位置している。また、第1リンク部53が時計回りに回転することで、アクチュエータ57の出力軸57aとブリッジ53bとの接続点57bの位置が、図中の破線上となり、
図6に示す位置と比べて図面上方に移動する。しかし、アクチュエータ57は、回転軸56を中心に第1腕部材51に対して傾き可能となるように取り付けられていることから、例えば、
図7に示すように、上記接続点57bが上方に移動したとしても、アクチュエータ57から第1リンク部53への出力の付与は好適に継続される。
【0033】
そして、アクチュエータ57の出力軸57aが、更に第1リンク部53側に飛び出し、接続点57bが図中の破線の右側へ、すなわち上記可動範囲の他方の端部側へ変位していくと、第1リンク部53が第1回転軸61を中心に更に時計回りに回転され、それに合わせて第2腕部材52が第2回転軸62を中心に更に時計回りに回転されることで、
図8に示す最大折り曲げ状態が形成されることになる。なお、この最大折り曲げ状態は、第1支持軸63が、第1ガイド貫通孔53dの左側の端部(すなわち、第1腕部材51寄りの端部)に当接し、
図6に示す最大伸長状態からの第1支持軸63の第1ガイド貫通孔53d内の移動が阻止された状態となることで、腕部50として形成される状態である。
【0034】
このように構成される第1腕部材51と第2腕部材52の肘関節部54は、第1リンク部53に対して、第1腕部材51と第2腕部材52をそれぞれ対応する第1回転軸61、
第2回転軸62を介して接続している。そして、第1回転軸61と第2回転軸62との間の軸間距離は所定距離に設定されているため、各回転軸を中心とした各腕部材の回転範囲同士が干渉する領域を可及的に小さくすることができる。その結果、
図8に示すように、第1腕部材51及び第2腕部材52の外側表面の形状に大きな変更を加えることなく、腕部50における最大折り曲げ角度を可及的に小さくできる。また、第1腕部材51と第2腕部材52とは、第2リンク部55によって繋がれていることで、一台の直動アクチュエータ57によって、二軸結合された第1腕部材51と第2腕部材52の相対的な回転駆動が実現される。これにより両腕部材の回転駆動のためのアクチュエータが占める空間容積を小さくできる。
【0035】
さらに、接続点57bの可動範囲が上記の通りに設定されたときに、回転駆動面において、接続点57bと第1支持軸63は、第1回転軸61と第2回転軸62とをつなぐ直線に対して同じ側に位置している。ここで、接続点57bが
図6に示す状態から
図8に示す状態に変位すると、第2リンク部55が時計回りに回転し、そして第1回転軸61と第2回転軸62とをつなぐ直線と、第1支持軸63と第2支持軸64とをつなぐ直線は交差するように構成されている。しかし、上記のように接続点57bと第1支持軸63の位置を設定することで、第2リンク部55が時計回りに回転したときに、その回転方向が第1回転軸61や第2回転軸62から遠ざかる方向となるため、両軸と干渉しにくくなる。このことは、第1腕部材51に対する第2腕部材52の相対的な回転駆動の範囲を可及的に広く確保することを意味し、極めて有用な回転駆動機構に関する構成と言える。
【0036】
また、第1腕部材51と第2腕部材52の相対的な回転駆動において、最も腕部50が伸びた最大伸長状態と、最も腕部50が折り曲げられた最大折り曲げ状態では、第2リンク部55が接続された第1支持軸63、第2支持軸64の少なくとも何れかが、それぞれに対応するガイド貫通孔の端部に当接した状態となっている。この結果、第1腕部材51と第2腕部材52の相対的な回転駆動の範囲を機械的に制限するストッパを容易に形成することが可能となり、換言すれば、容易なストッパ構成でも、第1腕部材51と第2腕部材52の相対的な回転駆動における不都合、例えば、第1腕部材51と第2腕部材52の回転衝突等を適切に抑制することが可能となる。
【0037】
<変形例>
また、肘関節部54の変形例について、
図9及び
図10に基づいて説明する。
図9は
図6と同じように、腕部50が最大伸長状態に置かれた状態を表しており、また、
図10は
図8と同じように最大折り曲げ状態に置かれた状態を表している。なお、
図9及び
図10においては、
図6〜
図8に示した構成に基本的に対応する構成は同一の参照番号を付し、その詳細な説明は割愛する。
【0038】
ここで本変形例が、
図6〜
図8に示した実施例と異なる点は、接続点57bの位置と、各腕部材の回転状態との相関である。具体的には、最大伸長状態を含み、第1腕部材51と第2腕部材52とが概ね伸長した状態では、
図9に示すように、接続点57bは、回転駆動面での出力軸57aの延在方向(
図8、9において一点鎖線で示す方向。また、第1回転軸61から上記一点鎖線に対する垂線を、図中破線で示している。)に沿った可動範囲において、第1回転軸61に対して右側に位置している。なお、当該可動範囲は、
図9に示す最大伸長状態において接続点57bがその一方の端部(上記破線と一点鎖線との交点より右側の端部であり、換言すれば第1回転軸61に対して第2腕部材52側に位置する端部)に位置し、後述の
図10に示す最大折り曲げ状態において接続点57bが他方の端部(上記破線と一点鎖線との交点より左側の端部であり、換言すれば第1回転軸61に対して第1腕部材51側に位置する端部)に位置することで特定される、接続点57bが変位し得る範囲である。したがって、接続点57bは、回転駆動面において出力軸57aの延在方向に沿って第1回転軸61を挟んで左右両側に変位するように構成される。この
ように接続点57bの可動範囲を設定することで、
図6〜
図8に示した実施例と同じように、出力軸57aを駆動した際に、第1腕部材51に対するアクチュエータ57の傾きを可及的に小さくすることができ、第1腕部材51のコンパクト化や、折り曲げ時の第1腕部材51と第2腕部材52との干渉を回避しやすくなる。
【0039】
この最大伸長状態から、アクチュエータ57の駆動によりその出力軸57aがアクチュエータ57内に引き込まれていくことで、第1リンク部53が反時計回りに回転され、それに合わせて第2腕部材52が第2回転軸62を中心に反時計回りに回転されることで、最終的には
図10に示すように、接続点57bが図中の破線の左側、すなわち上記可動範囲の最も左側の端部に位置し、最大折り曲げ状態が形成される。
【0040】
このように接続点57bの可動範囲が設定されたときに、回転駆動面において、接続点57bと第1支持軸63は、第1回転軸61と第2回転軸62とをつなぐ直線を挟んでそれぞれ反対側に位置している。ここで、接続点57bが
図9に示す状態から
図10に示す状態に変位すると、第2リンク部55が反時計回りに回転し、そして第1回転軸61と第2回転軸62とをつなぐ直線と、第1支持軸63と第2支持軸64とをつなぐ直線は交差するように構成されている。しかし、上記のように接続点57bと第1支持軸63の位置を設定することで、第2リンク部55が反時計回りに回転したときに、その回転方向が第1回転軸61や第2回転軸62から遠ざかる方向となるため、両軸と干渉しにくくなる。このことは、第1腕部材51に対する第2腕部材52の相対的な回転駆動の範囲を可及的に広く確保することを意味し、極めて有用な回転駆動機構に関する構成と言える。
【0041】
ここで、本変形例と上述の実施例とを比較すると、本変形例に係る肘関節部54では、アクチュエータ57の出力軸57aを引っ込めることで、第1腕部材51に対して第2腕部材52を折り曲げることになり、一方で上述の実施例に係る肘関節部54では、アクチュエータ57の出力軸57aを飛び出させることで、第1腕部材51に対して第2腕部材52を折り曲げることになる。このように出力軸57aの直動方向と肘関節部54の折り曲げ方向との相関が両例では異なっているが、ロボットにおける肘関節部54としては、様々な理由により何れからの形態を適宜選択し適用すればよい。例えば、アクチュエータ57において、出力軸57aの特定の直動方向において好ましい摩擦特性が得られる場合には、その摩擦特性を考慮して出力軸の直動方向を決定した上で、その場合の回転駆動面における接続点57bと第1支持軸63の配置を、上記の開示に基づいて決定することで、回転駆動範囲の広い肘関節部54を形成することができる。