(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
旅客航空機に搭載される航空機用ギャレーは、乗客数を増加させるためにシート数を増加させたり、乗客の乗り心地を考慮してシート間の距離を確保するために、ギャレーユニット自体の省スペース化が求められている。
その一方で、国際線等の長時間のフライトとなる場合には、例えばトイレに立つ等で自分の定められたシートから離席することがある。また、長時間シートベルトを着用した状態でシートに着席し続けることは、乗客にとって少なからず負担となっている。
【0003】
このような乗客の負担を軽減するために、従来は、例えば航空機のシートが設けられる領域の一部に、天井から床面までを遮る複数の側壁で閉スペースを形成したモジュールを配置し、当該モジュールの内部の閉スペースにソファーやテーブル、遊び道具等を配置することにより、乳幼児用のケア室や子供用の遊戯室もしくは大人も使用できる休憩室として利用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたモジュールは、航空機のキャビン内に自由に利用できる閉スペースを形成できる点での利点はあるものの、閉スペースであるために室内へのアプローチはドア等の入口のみに限られるため、当該モジュールで使用するスペースへのアクセス性の面で十分ではない。
また、航空機のキャビン内に追加的な側壁又はモジュールユニットを取り付ける必要があるため、航空機の製造コストや重量を低減することが困難となる。
そこで、本発明の目的は、乗客の誰もが自由に利用できるスペースを簡素な構成で製造できるとともに、アクセス性を向上した航空機用ギャレーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の航空機用ギャレーユニットは、上面に設けられたテーブルと、側面に設けられた収納部と、を備えた床側ユニットを含む航空機用ギャレーユニットであって、前記床側ユニットの外周は、すべて通路に囲繞されて
おり、前記床側ユニットの上方の天井部に取り付けられ、収納部を有する天井側ユニットをさらに備えている。
【0007】
本発明の航空機用ギャレーユニットの一実施例において
、前記天井側ユニットと前記床側ユニットとを連結する複数の支柱を備えている。
さらに、前記床側ユニットの側面と前記天井部又は前記天井側ユニットの側面との間で、展開又は収納可能に取り付けられた遮断部を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の航空機用ギャレーユニットによれば、乗客の誰もが自由に利用できるスペースを簡素な構成で製造できるとともに、アクセス性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明による航空機に搭載されるギャレーユニットの概要を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明のギャレーユニット10は、航空機キャビン内の床面1の中間領域に配置される。このため、ギャレーユニット10の左右には、通路を挟んで化粧室4等の設備が配置される(化粧室4に代えて座席3、他のギャレーユニット、収納庫(クローゼット)、あるいはバーユニット等を設けてもよい)。
また、ギャレーユニット10の前後にも通路を挟んで座席3等の設備が配置される。
【0011】
本発明のギャレーユニット10は、床側ユニット11を含む。床側ユニット11は床面1に載置された箱状の構造物であって、上面に設けられたテーブル12と、側面からアプローチする収納部13と、を備える。
テーブル12は、床側ユニット11の上面に位置し、乗務員が食べ物や飲み物等を準備するための作業台としての機能と、食べ物や飲み物等を並べて置いておくための載置台としての機能と、を備える。
【0012】
収納部13は、食べ物や飲み物等のストックやカート等を内部に収納する。また、収納部13は、電子レンジ、コーヒーメーカ、冷蔵庫、冷凍庫、引き出し式のシンク等のユニットを内部に収納することもできる。
図1に示すギャレーユニット10において、床側ユニット11の収納部13には開閉式のドアを備える態様が示されているが、当該ドアに代えて個別の引き出し付きの収納ユニットを備える構成としてもよい。また、これらのドアや引き出しの構成は、使用する領域ごとに使い分けることも可能である。
また、収納部13は、床側ユニット11の一面側だけでなく、例えば対向する二面側に設けてそれぞれの面からアプローチするように構成してもよい。
【0013】
これらの構成を備えることにより、本発明のギャレーユニット10は、乗客の誰もが自由に利用できるスペースを簡素な構成で製造できるとともに、ギャレーユニットへのアクセス性を向上することができる。
具体的には、従来は乗客の誰もが自由に利用できるスペースを形成するために追加的な側壁によって閉スペースを形成していたが、本発明のギャレーユニット10は、周囲を囲繞する形で通路が配置され、かつ床側ユニット11の上面にテーブル12を備える。
このため、側壁の仕切りを設ける代わりにギャレーユニット10を囲繞する通路によって座席以外の自由に利用できるスペースを形成することができる。
また、ギャレーユニット10の周囲を通路が囲繞しているため、当該ギャレーユニット10のテーブル12上に食べ物や飲み物等を載置しておけば、乗客が360°のどの方向からでもアプローチすることができ、アクセス性が向上する。
【0014】
なお、
図1では、テーブル12が床側ユニットの上面全体に設けられる態様を示しているが、当該テーブル12をいくつかの領域に分けて機能に応じて使い分けるように構成してもよい。
このような構成を採用すれば、テーブル12の一部に開閉式の蓋と水栓及びシンクとを設け、飲み水を供給したり洗い物作業を行う等の機能を追加することができる。
また、
図1では、床側ユニット11は床面に平行な断面が四角形の構造物として例示されているが、断面が円形や多角形のものであってもよい。
このような構成を採用することにより、人間の心理として他人と同一の側面に横並びで立つと窮屈に感じるのに対して、本発明のギャレーユニット10を使用する乗務員や乗客が対向する側面(アクセス面)が増えるため、本発明のギャレーユニット10を同時に利用する利用者数を増やすことができる。
特に、断面が円形ものを採用した場合、上記した側面の同一性を意識することが薄れるため、360°からのアクセス性が向上するとの効果がより顕著となる。
【0015】
本発明のギャレーユニット10は、
図1に示すように、床側ユニット11の上方の天井に取り付けられた天井側ユニット14を追加的に備えてもよい。
天井側ユニット14は、天井面2に取り付けられた箱状の構造物であって、内部に収納部15を備える。収納部15は、食べ物や飲み物等のストックもしくはトレーや消耗品等の比較的軽量な収納物を内部に収納する。
図1に示すギャレーユニット10において、天井側ユニット14の収納部15には開閉式のドアを備える態様が示されているが、当該ドアに代えて個別の引き出し付きの収納ユニットを備える構成や、リフタを取り付けて収納ユニットが上下動する構成としてもよい。また、これらのドアや引き出しの構成は、使用する領域ごとに使い分けることも可能である。
さらに、収納部15は、天井側ユニット14の一面側だけでなく、例えば対向する二面側に設けてそれぞれの面からアプローチするように構成してもよい。
【0016】
これらの構成を備えることにより、本発明のギャレーユニット10は、天井側ユニット14に収納部15を設けて収納スペースを確保することにより、ユニット全体でより多くの荷物や備品を収納することが可能となる。
また、従来のギャレーユニットと同等の収納スペースを確保すれば十分である場合は、ギャレーユニット10の床側ユニット11又は天井側ユニット14の断面積を減らすことができるため、座席以外の自由に利用できるスペースを広げることができる。
【0017】
なお、
図1では、天井側ユニット14は床面に平行な断面が四角形の構造物として例示されているが、断面が円形や多角形のものであってもよい。特に、断面が円形ものを採用した場合、上記した360°からのアクセス性が向上するとの効果がより顕著となる。
また、
図1では、床側ユニット11と天井側ユニット14との床面に平行な断面が同一である場合を例示しているが、両ユニットの断面が異なるものを採用してもよい。例えば、床側ユニット11と天井側ユニット14とを異なる断面形状とすることにより、天井面や床面のスペースを別々に有効活用することができ、かつレイアウトのデザイン裕度を増すことができる。
【0018】
さらに、天井側ユニット14の下面(床側ユニット11と対向する面)には、例えばテーブル13を照らす照明等のユニットを取り付けることもできる。
このような構成を採用することにより、深夜に運航する旅客機でキャビン内の照明が弱い場合であっても、テーブル12の近傍を明るくすることができるため、ギャレーユニット10の利用者の利便性を高めるとともに、就寝中の他の乗客に迷惑をかけることを防止できる。
【0019】
図2は、本発明のギャレーユニット10の第1の変形例を示す側面図である。
図2に示すように、本発明のギャレーユニット10は、天井側ユニット14の側面にコイル状に巻かれたシート20を取り付ける。また、床側ユニット11の側面には、上記シート20の一端を固定する固定部を設ける。
シート20は、
図2の左側に示されるように、通常は巻き取られた状態で保持されているが、必要に応じてシート20の一端を引き出して上記床側ユニット11の固定部に固定することにより、テーブル12上のみを外部から遮断する遮断部を形成する。
ここで、シート20は天井側ユニット14のすべての側面に設けてもよいが、必要に応じてシート20を設ける側面と設けない側面とを選択してもよい。
【0020】
このような構成を備えることにより、通常はすべての方向からのアプローチを可能としつつ、例えば乗務員が配膳等の準備作業を行う間のみ他の乗客からテーブル12上での作業を外部から遮断できる。
また、シート20を遮音性の高い材料で形成すれば、テーブル12上で音の出る作業を行う場合でも周囲の乗客に迷惑をかけることを防止できる。
さらに、シート20を遮光性の高い材料で形成すれば、例えば深夜に運航する旅客機でキャビン内の照明を弱くした場合に、テーブル12と座席との間を遮光できる。
【0021】
なお、
図2においては、天井側ユニット14の側面にシート20を配置し、床側ユニット11の側面にシート20の一端の固定部を配置する場合を例示したが、シート20と固定部との位置関係を逆としてもよい。
また、
図2においては、天井側ユニット14を設ける場合を例示したが、天井側ユニット14を設けない場合であっても、天井面と床側ユニット11との間に上記シート20と固定部とを配置して遮断部を形成することもできる。
さらに、上記効果を奏する遮断部を形成できる手段であれば、コイル状に巻かれたシート20に代えて、例えばカーテンやブラインド等の手段を適用してもよい。
【0022】
図3は、本発明のギャレーユニット10の第2の変形例を示す正面図である。
図3に示すように、本発明のギャレーユニット10は、床側ユニット11と天井側ユニット14との間に複数の支柱30を設けることにより、床側ユニット11と天井側ユニット14とを結合する。
支柱30は、図示上横方向からの荷重に対して屈曲しない程度の強度及び剛性を備えた中空又は中実の部材で形成される。このとき、上記強度及び剛性を備えるものであれば、支柱30の断面は円形であっても多角形であってもよい。
【0023】
このような構成を備えることにより、通常はすべての方向からのアプローチを可能としつつ、複数の支柱30によって床側ユニット11と天井側ユニット14とが一体となるため、ギャレーユニット10全体としての強度及び剛性が高まる。
また、ギャレーユニット10全体が一体物として床面1と天井面2との間に固定されるため、例えば飛行中の悪天候等により機体が振動したりする場合であっても、床面ユニット11が大きく振動の影響を受けることがなく、テーブル13上に載置された物が落下する等の被害を防止できる。
【0024】
また、本発明のギャレーユニットは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
その他、本発明のギャレーユニットは、その構成の一部について、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、その他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0025】
例えば、テーブルの一部に磁石を配置し、鉄製の缶やトレー等を磁力で吸着保持するように構成してもよい。
また、テーブルの外周部に起立部(壁部)を形成し、テーブル上に載せた物が転がり落ちるのを防止するように構成してもよい。
【0026】
本発明のギャレーユニットは、上記した実施例及び変形例を組み合わせて適用することも可能である。
例えば、床側ユニットと天井側ユニットとを複数の支柱で結合した上で、当該支柱にレールを形成し、コイル状のシートをガイドして遮断部を形成する等の構成も採用できる。