特許第6105091号(P6105091)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105091
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】関節運動アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20170316BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20170316BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20170316BHJP
   A61F 2/74 20060101ALI20170316BHJP
   A61F 2/60 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B25J11/00 Z
   A61H1/02 G
   A61H3/00 B
   A61F2/74
   A61F2/60
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-556689(P2015-556689)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2014050309
(87)【国際公開番号】WO2015104832
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年7月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502265286
【氏名又は名称】山本 圭治郎
(74)【代理人】
【識別番号】110002332
【氏名又は名称】特許業務法人綾船国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭治郎
【審査官】 中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/043095(WO,A1)
【文献】 特開2000−051289(JP,A)
【文献】 特開2007−282991(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/036906(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/035814(WO,A1)
【文献】 特開2007−130234(JP,A)
【文献】 特開2008−260089(JP,A)
【文献】 特開2013−075342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
A61F 2/60
A61F 2/74
A61H 1/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部位と2つの第2部位とを接続している接続部位を含む骨格構造を有する所定対象物に装着し、前記所定対象物の前記第1部位と前記接続部位とを接続している関節の機構、及び、前記所定対象物の前記2つの第2部位それぞれと前記接続部位とを接続している2つの関節の機構を利用する関節運動をアシストする外骨格型の関節運動アシスト装置であって、
前記第1部位が前記接続部位から延びる方向に沿って、前記第1部位に装着される第1外骨格部材と;
前記2つの第2部位のうちの一の第2部位が前記接続部位から延びる方向に沿って、前記一の第2部位に装着される一の第2外骨格部材と;
前記2つの第2部位のうちの他の第2部位が前記接続部位から延びる方向に沿って、前記他の第2部位に装着される他の第2外骨格部材と;
前記関節運動をアシストする力を発生する第1膨縮部材、及び、2つの第2膨縮部材と;
前記第1外骨格部材に固定的に接続されるとともに、前記第1膨縮部材の一方側端部に接続される第1接続部材と;
前記一の第2外骨格部材に固定的に接続されるとともに、前記2つの第2膨縮部材のうちの一の第2膨縮部材の一方側端部に接続される一の第2接続部材と;
前記他の第2外骨格部材に固定的に接続されるとともに、前記2つの第2膨縮部材のうちの他の第2膨縮部材の一方側端部に接続される他の第2接続部材と;
前記第1接続部材と前記一の第2接続部材及び前記他の第2接続部位との間に配置され、前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部前記一の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部及び前記他の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部を、関節の回動運動方向に回動可能に取り付けるとともに、前記第1膨縮部材の他方側端部及び前記2つの第2膨縮部材それぞれの他方側端部に接続される取付部材と;を備え、
前記所定対象物の接続部位は、人体の骨盤部位であり、
前記第1外骨格部材は腰椎に対応する位置に装着され、
前記一の第2外骨格部材は左側の大腿部に装着され、前記他の第2外骨格部材は右側の大腿部に装着され、
前記第1膨縮部材前記一の第2膨縮部材及び前記他の第2膨縮部材の少なくとも一つの膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、前記取付部材に回動可能に取り付けられている前記第1外骨格部材と前記一の第2外骨格部材とが交差する角度、及び、前記取付部材に回動可能に取り付けられている前記第1外骨格部材と前記他の第2外骨格部材とが交差する角度の少なくとも一方の角度が変化し、前記関節運動をアシストする、
ことを特徴とする関節運動アシスト装置。
【請求項2】
前記第1接続部材は前記第1外骨格部材側に配置されるとともに、前記一の第2接続部材は前記一の第2外骨格部材側に配置され、前記他の第2接続部材は前記他の第2外骨格部材側に配置され、
前記第1膨縮部材の他方側端部は、前記取付部材の前記第1外骨格部材側における関節の伸展側に接続され、
前記一の第2膨縮部材の他方側端部は、前記取付部材の前記一の第2外骨格部材側における関節の伸展側に接続され
前記他の第2膨縮部材の他方側端部は、前記取付部材の前記他の第2外骨格部材側における関節の伸展側に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項3】
前記第1膨縮部材及び前記2つの第2膨縮部材の収縮行程により、関節を屈曲状態から伸展状態にする、ことを特徴とする請求項2に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項4】
前記第1膨縮部材及び前記2つの第2膨縮部材の膨張行程により、関節を伸展状態から屈曲状態にする、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項5】
前記第1膨縮部材内及び前記2つの第2膨縮部材内の作動流体圧を調整する調整部を更に備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項6】
前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部は、腰仙関節に対応する位置で腰仙関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられ、
前記一の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、左股関節に対応する位置で左股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられ、
前記他の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、右股関節に対応する位置で右股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項7】
前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部は、仙腸関節に対応する位置の周りを回動しつつ、腰仙関節の回動軸を回動中心軸として腰仙関節の回動方向に回動可能に、前記取付部材に取り付けられ、
前記一の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、左股関節に対応する位置で左股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられ、
前記他の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、右股関節に対応する位置で右股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項8】
前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部には、腰仙関節に対応する位置で腰仙関節の回動運動方向に沿って歯部が形成された歯車部材が固定され、
前記取付部材における仙腸関節に対応する位置には、前記第1外骨格部材に固定された歯車部材に噛合する歯車部材が固定され、
前記第1外骨格部材は、前記第1外骨格部材に固定された歯車部材と前記取付部材に固定された歯車部材との噛合が確保され、前記取付部材に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項7に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項9】
前記第1膨縮部材は、腰仙関節の伸展側に配置され、
前記一の第2膨縮部材は、左股関節の伸展側に配置され、前記他の第2膨縮部材は、右股関節の伸展側に配置される、
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の関節運動アシスト装置。
【請求項10】
前記取付部材は、骨盤部位の左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨に沿った形状の着用部材を備え、
前記着用部材は、左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨に沿って、骨盤部位の後方及び左右の外側面に固定される、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の関節運動アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節運動アシスト装置に係り、より詳しくは、所定対象物の関節運動をアシストする外骨格型の関節運動アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、要介護者・要看護者の介護・看護に用いられる様々な装置が提案されている。こうした装置の中には、介護者が、身体の自由が効かない寝たきりの高齢者等の被介護者を抱き起したり、抱き下ろしたり、あるいは移動させるための介護用の外骨格型の筋力補助装置がある。
【0003】
かかる筋力補助装置の一つとして、内部に供給される空気により膨張する袋体(以下、当該袋体を、「エアバック」とも記す)をアクチュエータとして用いたものがある(特許文献1参照:以下、「従来例」と呼ぶ)。こうしたエアバック等の膨縮可能なアクチュエータを用いた筋力補助装置は、空気圧シリンダ型アクチュエータやマッキベン型空気圧アクチュエータを用いる方式の装置よりも軽量であるため、実用性が高い。また、エアバック等の伸縮可能なアクチュエータは、低圧での駆動が可能であるため、ダイヤフラム式ポンプやベーン式ポンプなどの低振動、低騒音のポンプを使用することができる。こうした点からも、エアバック等の膨縮可能なアクチュエータを用いた筋力補助装置は、実用性が高いといえる。
【0004】
この従来例の技術では、一端部を中心に相互に揺動自在に連結された2つの板材、及び、当該2つの板材の間に配置され内部に供給される空気により膨張する袋体からなるアクチュエータ要素を重ねた空気圧アクチュエータを人体における所定箇所に装着した装着部に取り付ける。そして、空気圧アクチュエータにおける袋体を膨張させて、肘関節、腰関節及び股関節、並びに、膝関節の運動を補助するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−051289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来例の技術では、腰関節及び股関節を含む腰部周辺に、1つの空気圧アクチュエータを装着している。そして、腰部周辺の腰関節及び股関節の運動アシストは、当該1つの空気圧アクチュエータへの空気供給による袋体の膨張を、リンク機構によって関節の伸展力に変換することによって行われている。
【0007】
こうした従来例の構造では、腰関節及び股関節の運動を、1つの空気圧アクチュエータでアシストする。このため、当該空気圧アクチュエータにより腰関節の伸展アシスト力を発生させた状態を維持しているときには、左右の足部を交互に移動して行われる前進歩行又は後進歩行を妨げ、不自然な歩行動作を強いられてしまうことがある。したがって、関節運動アシスト装置の装着者が歩行する際に、違和感なくスムーズな動作を行うことができない場合がある。また、従来例の構造では、上述したリンク機構を採用していることから、空気圧アクチュエータが発生する力の腰部周辺の関節部分への伝達効率が低下することがある。さらに、従来例の構造では、上述したリンク機構が背後に大きく突出していることから、後方に作業空間を確保する必要がある。
【0008】
このため、外骨格型の関節運動アシスト装置を利用する際に、スムーズな歩行動作を実現して、当該歩行動作状態において装置の装着者に与える違和感を低減させ、かつ、空気圧式のアクチュエータが発生する力を効率良くアシスト対象の関節に伝達することができる技術が望まれている。また、外骨格型の関節運動アシスト装置を利用する際に、腰部装着ユニットが背後に大きく突出することのない技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0009】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、関節運動を適切にアシストしつつ、スムーズな関節運動を実現することができる関節運動アシスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1部位と2つの第2部位とを接続している接続部位を含む骨格構造を有する所定対象物に装着し、前記所定対象物の前記第1部位と前記接続部位とを接続している関節の機構、及び、前記所定対象物の前記2つの第2部位それぞれと前記接続部位とを接続している2つの関節の機構を利用する関節運動をアシストする外骨格型の関節運動アシスト装置であって、前記第1部位が前記接続部位から延びる方向に沿って、前記第1部位に装着される第1外骨格部材と;前記2つの第2部位のうちの一の第2部位が前記接続部位から延びる方向に沿って、前記一の第2部位に装着される一の第2外骨格部材と;前記2つの第2部位のうちの他の第2部位が前記接続部位から延びる方向に沿って、前記他の第2部位に装着される他の第2外骨格部材と;前記関節運動をアシストする力を発生する第1膨縮部材、及び、2つの第2膨縮部材と;前記第1外骨格部材に固定的に接続されるとともに、前記第1膨縮部材の一方側端部に接続される第1接続部材と;前記一の第2外骨格部材に固定的に接続されるとともに、前記2つの第2膨縮部材のうちの一の第2膨縮部材の一方側端部に接続される一の第2接続部材と;前記他の第2外骨格部材に固定的に接続されるとともに、前記2つの第2膨縮部材のうちの他の第2膨縮部材の一方側端部に接続される他の第2接続部材と;前記第1接続部材と前記一の第2接続部材及び前記他の第2接続部位との間に配置され、前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部前記一の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部及び前記他の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部を、関節の回動運動方向に回動可能に取り付けるとともに、前記第1膨縮部材の他方側端部及び前記2つの第2膨縮部材それぞれの他方側端部に接続される取付部材と;を備え、前記所定対象物の接続部位は、人体の骨盤部位であり、前記第1外骨格部材は腰椎に対応する位置に装着され、前記一の第2外骨格部材は左側の大腿部に装着され、前記他の第2外骨格部材は右側の大腿部に装着され、前記第1膨縮部材前記一の第2膨縮部材及び前記他の第2膨縮部材の少なくとも一つの膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、前記取付部材に回動可能に取り付けられている前記第1外骨格部材と前記一の第2外骨格部材とが交差する角度、及び、前記取付部材に回動可能に取り付けられている前記第1外骨格部材と前記他の第2外骨格部材とが交差する角度の少なくとも一方の角度が変化し、前記関節運動をアシストする、ことを特徴とする関節運動アシスト装置である。
【0011】
この関節運動アシスト装置では、所定対象物に当該装置が装着された場合に、第1膨縮部材の一方側端部が、第1外骨格部材に固定された第1接続部材に接続され、第1膨縮部材の他方側端部が、第1外骨格部材を関節の回動運動方向に回動可能に取り付けた取付部材に接続されている。また、この関節運動アシスト装置では、一の第2膨縮部材の一方側端部が、一の第2外骨格部材に固定された一の第2接続部材に接続され、一の第2膨縮部材の他方側端部が、一の第2外骨格部材を関節の回動運動方向に回動可能に取り付けた取付部材に接続されている。また、この関節運動アシスト装置では、他の第2膨縮部材の一方側端部が、他の第2外骨格部材に固定された他の第2接続部材に接続され、他の第2膨縮部材の他方側端部が、他の第2外骨格部材を関節の回動運動方向に回動可能に取り付けた取付部材に接続されている。
【0012】
そして、第1膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、第1外骨格部材が取付部材に対して回動する。また、一の第2膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、一の第2外骨格部材が取付部材に対して回動する。さらに、他の第2膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、他の第2外骨格部材が取付部材に対して回動する。この結果、第1膨縮部材第2膨縮部材のうちの一の第2膨縮部材及び他の第2膨縮部材の少なくとも一つの膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、所定対象物の第1部位が固定された第1外骨格部材と、所定対象物の第2部位が固定された第2外骨格部材とが交差する角度が変化し、受動的に、第1部位と接続部位とを接続している関節、一の第2部位と接続部位とを接続している関節、及び、他の第2部位と接続部位とを接続している関節の運動がアシストされる。
このため、骨盤と腰椎とを接続している関節の運動、並びに、骨盤と左側の大腿部とを接続している関節の運動、及び、骨盤と右側の大腿部とを接続している関節の運動を、それぞれ独立にアシストすることができる。また、この場合には、関節運動アシスト装置が背後に大きく突出することなく、構造をコンパクトにすることができる。
【0013】
したがって、本発明の関節運動アシスト装置によれば、関節運動を適切にアシストしつつ、スムーズな関節運動を実現することができる。
【0014】
ここで、「所定対象物」は、人体であってもよいし、骨格構造を有する人体以外の対象物であってもよい。
【0015】
本発明の関節運動アシスト装置では、前記第1接続部材は前記第1外骨格部材側に配置されるとともに、前記一の第2接続部材は前記一の第2外骨格部材側に配置され、前記他の第2接続部材は前記他の第2外骨格部材側に配置され、前記第1膨縮部材の他方側端部は、前記取付部材の前記第1外骨格部材側における関節の伸展側に接続され、前記一の第2膨縮部材の他方側端部は、前記取付部材の前記一の第2外骨格部材側における関節の伸展側に接続され、前記他の第2膨縮部材の他方側端部は、前記取付部材の前記他の第2外骨格部材側における関節の伸展側に接続される、ようにすることができる。
【0016】
第1接続部材及び2つの第2接続部材、並びに、第1膨縮部材及び2つの第2膨縮部材を上述のように配置した場合に、前記第1膨縮部材及び前記2つの第2膨縮部材の収縮行程により、関節を屈曲状態から伸展状態にする、ようにすることができる。この場合には、第1膨縮部材及び第2膨縮部材の少なくとも一方を収縮させることで、関節を伸展状態にすることができる。また、こうした配置とした場合には、前記第1膨縮部材及び前記2つの第2膨縮部材の膨張行程により、関節を伸展状態から屈曲状態にする、ようにすることができる。この場合には、第1膨縮部材及び第2膨縮部材の少なくとも一方を膨張させることで、関節を屈曲状態にすることができる。
【0017】
また、本発明の関節運動アシスト装置では、前記第1膨縮部材内及び前記2つの第2膨縮部材内の作動流体圧を調整する調整部を更に備える、構成とすることができる。この場合には、調整部が第1膨張部材及び2つの第2膨張部材内の作動流体圧を調整するため、第1膨縮部材及び2つの第2膨縮部材は、調整部により調整された関節運動をアシストする力を発生することができる。
【0019】
また、本発明の関節運動アシスト装置では、一の構成として、前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部は、腰仙関節に対応する位置で腰仙関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられ、前記一の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、左股関節に対応する位置で左股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられ、前記他の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、右股関節に対応する位置で右股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられる、ようにすることができる。

【0020】
この場合には、第1外骨格部材が、取付部材に対して腰仙関節に対応する位置で、腰仙関節の回動運動方向に回動する。また、一の第2外骨格部材が、取付部材に対して左股関節に対応する位置で、左股関節の回動運動方向に回動する。さらに、他の第2外骨格部材が、取付部材に対して右股関節に対応する位置で、右股関節の回動運動方向に回動する。このため、腰仙関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができるとともに、左側の股関節及び右側の股関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができる。
【0021】
また、骨盤に対する腰椎の関節運動、並びに、骨盤に対する左側の大腿部及び右側の大腿部の関節運動をアシストする場合の他の構成として、前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部は、仙腸関節に対応する位置の周りを回動しつつ、腰仙関節の回動軸を回動中心軸として腰仙関節の回動方向に回動可能に、前記取付部材に取り付けられ、前記一の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、左股関節に対応する位置で左股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられ、前記他の第2外骨格部材における前記接続部位側の端部は、右股関節に対応する位置で右股関節の回動方向に回動可能に前記取付部材に取り付けられる、ようにすることができる。
【0022】
この場合には、第1外骨格部材が、取付部材に対して、仙腸関節に対応する位置の周りを回動しつつ、腰仙関節の回動軸を回動中心軸にして腰仙関節の回動方向に回動する。また、一の第2外骨格部材が、取付部材に対して左股関節に対応する位置で、左股関節の回動運動方向に回動する。さらに、他の第2外骨格部材が、取付部材に対して右股関節に対応する位置で、右股関節の回動運動方向に回動する。このため、腰仙関節及び仙腸関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができるとともに、左側の股関節及び右側の股関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができる。
【0023】
ここで、第1外骨格部材における接続部位側の端部を、仙腸関節の周りを回動しつつ、腰仙関節を中心にして腰仙関節の回動方向に回動可能に取付部材に取り付ける構成を採用した場合に、前記第1外骨格部材における前記接続部位側の端部には、腰仙関節に対応する位置で腰仙関節の回動運動方向に沿って歯部が形成された歯車部材が固定され、前記取付部材における仙腸関節に対応する位置には、前記第1外骨格部材に固定された歯車部材に噛合する歯車部材が固定され、前記第1外骨格部材は、前記第1外骨格部材に固定された歯車部材と前記取付部材に固定された歯車部材との噛合が確保され、前記取付部材に取り付けられる、ようにすることができる。
【0024】
この場合には、取付部材を相対静止させた系において、第1外骨格部材に固定された歯車部材が、第1膨縮部材の膨張行程又は収縮行程により、取付部材に固定された歯車部材の周りを公転しつつ自転する。これにより、第1外骨格部材が、仙腸関節に対応して固定された歯車部材の中心軸を中心にして公転するとともに、腰仙関節に対応して固定された歯車部材の中心軸を中心にして自転する。このため、歯車部材を使用した簡易な構成で、腰仙関節及び仙腸関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを実現することができる。
【0025】
また、人体の腰仙関節、並びに、左側の股関節及び右側の股関節の運動をアシストする場合に、前記第1膨縮部材は、腰仙関節の伸展側に配置され、前記一の第2膨縮部材は、左股関節の伸展側に配置され、前記他の第2膨縮部材は、右股関節の伸展側に配置される、ようにすることができる。この場合には、第1膨縮部材が、腰仙関節の運動をアシストする力を効率良く発生する。また、一の第2膨縮部材が、左股関節の運動をアシストする力を効率良く発生し、他の第2膨縮部材が、右股関節の運動をアシストする力を効率良く発生する。このため、効率良く関節運動をアシストすることができる。



【0026】
また、腰仙関節、並びに、左右の股関節の運動をアシストする場合に、前記取付部材は、骨盤部位の左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨に沿った形状の着用部材を備え、前記着用部材は、左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨に沿って、骨盤部位の後方及び左右の外側面に固定される、ようにすることができる。この場合には、着用部材が、左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨に沿って、骨盤部位にフィットして確実に固定されるため、取付部材が骨盤部位に確実に固定される。この結果、第1膨縮部材、及び、2つの第2膨縮部材が膨張したり収縮した際にも、取付部材は、ぐらつくことなく骨盤部位に確実に固定される。
【0027】
これにより、第1膨縮部材が発生した力を、効率良く腰仙関節に伝達することができる。また、一の第2膨縮部材が発生した力を、効率良く左股関節に伝達することができ、他の第2膨縮部材が発生した力を、効率良く右股関節に伝達することができる。このため、腰仙関節並びに左股関節及び右股関節の独立した関節運動に際して、第1外骨格部材及び2つの第2外骨格部材は、スムーズな関節運動を行い、安定した関節運動を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の関節運動アシスト装置によれば、関節運動を適切にアシストしつつ、スムーズな関節運動を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】人体の腰部周辺の骨格構造を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態に係る関節運動アシスト装置の外観図(左側面図)である。
図3図2の関節運動アシスト装置の外観図(正面図)である。
図4図2の関節運動アシスト装置の外観図(背面図)である。
図5図2の腰部外骨格部材の構成を説明するための図(平面図、底面図)である。
図6図4の第2接続部材の構成を説明するための図(平面図)である。
図7図2図4の取付部材の構成を説明するための図(左側面図、平面図、底面図)である。
図8図7(B),(C)の着用部材の構成を説明するための図(正面図、背面図)である。
図9図2の調整部の構成を説明するための図である。
図10】ベローズ膨張時の図2の関節運動アシスト装置の状態を説明するための図である。
図11】関節運動アシスト装置の変形例(その1)を説明するための図である。
図12】ベローズ収縮時の図11の関節運動アシスト装置の状態を説明するための図である。
図13】関節運動アシスト装置の変形例(その2)を説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
100,100B,100C…関節運動アシスト装置、110,110C…腰部外骨格部材(第1外骨格部材)、111L,111R,111CL…腰部側面装着部材、112…背部装着部材、113…腰椎外骨格部材、118,119…ベルト部材、120L,120R…大腿部外骨格部材(第2外骨格部材)、121L,121R…大腿部外側外骨格部材、122L,122R…大腿部内側外骨格部、127L,127R…太腿保持部材、129L,129R…ベルト部材、131,131B…第1接続部材、141L,141R,141BL,141BR…第2接続部材、150,150C…取付部材、151L,151R…腰部側面取付部材、152…背部取付部材、153…固定用部材、160…着用部材、161…ウエストバンド部、162…後面被覆部、163…前面被覆部、AX1L,AX1R,AX2L,AX2R…軸部材、171…第1ベローズ(第1膨縮部材)、172L,172R…第2ベローズ(第2膨縮部材)、180…調整部、181…加圧ポンプ、182…減圧ポンプ、183…電気−空気圧制御弁、184…制御部、185,186…配管、191,192L,192R…配管、210L,250L…外歯歯車(歯車部材)、CBL…連接部材
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態を、図1図10を参照して説明する。なお、本実施形態においては、所定対象物としての人体の腰関節及び左右の股関節の機構を利用して行われる関節運動をアシストする関節運動アシスト装置を例示して説明する。また、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
[骨格構造]
本実施形態に係る関節運動アシスト装置の説明に先立って、人体の腰部周辺の骨格構造について説明する。
【0033】
人体の腰部付近の骨格は、図1に示されるように、「腰椎」に「仙骨」が接続され、当該仙骨に「尾骨」が接続されて、脊柱の下方部分が形成されている。そして、仙骨は、左右の「仙腸関節」により左右一対の「寛骨」と接続されている。この寛骨は、「腸骨」、「坐骨」、「恥骨」が癒合した骨である。そして、左側の寛骨には左股関節により左大腿骨が接続され、右側の寛骨には右股関節により右大腿骨が接続されている。
【0034】
ここで、腰椎と仙骨とは、「腰仙関節」によって接続されている。また、左右の2つの寛骨、仙骨、尾骨から「骨盤」が形成されている。
【0035】
なお、「仙腸関節」、「腰仙関節」と同義の用語として、「腰関節」との用語を用いることがある。
【0036】
[構成]
図2図4には、一実施形態に係る関節運動アシスト装置100の外観図が示されている。図2図4における座標系(X,Y,Z)は、関節運動アシスト装置100が人体に装着された場合に、人体の正面方向を+X方向、人体の右側から左側へと向かう方向を+Y方向、鉛直上方方向を+Z方向とする座標系である。このため、当該座標系(X,Y,Z)では、Y軸方向と腰関節の前後の回動運動の回動軸方向とが略平行となっているとともに、Y軸方向と左右の股関節の前後の回動運動の回動軸方向とが略平行となっている。
【0037】
ここで、図2は、人体の腰部及び左右の大腿部に装着される関節運動アシスト装置100を、腰関節及び左右の股関節が伸展状態にあるときに人体の左側面から眺めた左側面図(XZ平面視図)である。また、図3は、関節運動アシスト装置100を、人体の正面から眺めた正面図(YZ平面視図)である。また、図4は、関節運動アシスト装置100を、人体の背面から眺めた背面図(YZ平面視図)である。
【0038】
図2図4により総合的に示されるように、関節運動アシスト装置100は、第1外骨格部材としての腰部外骨格部材110と、ベルト部材118,119と、第2外骨格部材の1つとしての大腿部外骨格部材120Lと、第2外骨格部材の他の1つとしての大腿部外骨格部材120Rと、太腿保持部材127L,127Rと、ベルト部材129L,129Rを備えている。また、関節運動アシスト装置100は、第1接続部材131と、2つの第2接続部材141L,141Rと、取付部材150と、軸部材AX1L,AX1Rと、軸部材AX2L,AX2Rとを備えている。
【0039】
さらに、関節運動アシスト装置100は、第1膨縮部材としての第1ベローズ171と、第2膨縮部材としての2つの第2ベローズ172L,172Rとを備えている。また、関節運動アシスト装置100は、調整部180と、配管191と、配管192L,192R図2図4において、配管192Rは不図示)とを備えている。
【0040】
なお、図2では、調整部180及び配管191,192Lは外観ではなく、関節運動アシスト装置100との関係が概念的に示されている。また、図3,4に示される関節運動アシスト装置では、調整部180及び配管191,192Lの図示を省略している。
【0041】
<腰部外骨格部材110の構成>
上記の腰部外骨格部材110の構成について説明する。腰部外骨格部材110は、腰部及び背部に装着される。腰部外骨格部材110は、図2図4、及び、図5(A),(B)により総合的に示されるように、腰部側面装着部材111L,111Rと、背部装着部材112と、腰椎外骨格部材113とを備えている。そして、これらの腰部側面装着部材111L,111R、背部装着部材112及び腰椎外骨格部材113が一体となって、腰部外骨格部材110が形成されている。
【0042】
ここで、図5(A)は、腰部外骨格部材110を+Z方向側から視た平面図である。また、図5(B)は、腰部外骨格部材110を−Z方向側から視た底面図である。また、図中に示した2点鎖線は、腰部外骨格部材110以外の構成要素を示している。
【0043】
上記の腰部側面装着部材111L,111Rは、例えば、鋼鉄製の板状部材であり、XZ平面視でL字状に成形加工されている(腰部側面装着部材111Lについては、図2参照)。この腰部側面装着部材111Lは、板面の法線方向がY軸と平行になるように腰部の左側に配置されている。また、腰部側面装着部材111Rは、腰部側面装着部材111Lと面対称的な形状であり、板面の法線方向がY軸と平行になるように腰部の右側に配置されている。そして、腰部側面装着部材111L及び腰部側面装着部材111Rは、例えば、腹部を被覆する布製のベルト部材118により、人体に装着されている。
【0044】
腰部側面装着部材111Lの−Z方向側端部には、Y軸と平行な軸を軸方向とする軸部材AX1Lを挿入する軸穴が成形加工されている。また、腰部側面装着部材111Rの−Z方向側端部には、Y軸と平行な軸を軸方向とする軸部材AX1Rを挿入する軸穴が成形加工されている。ここで、腰部側面装着部材111L及び腰部側面装着部材111Rの軸穴は、関節運動アシスト装置100が人体に装着された場合に、腰仙関節に対応する位置に成形されるようになっている。
【0045】
上記の背部装着部材112は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長方体部と、当該長方体部に接続され、長方体部の+Y方向側端部及び−Y方向側端部から+X方向に延びた板状の2つの延長部とを有している(図5(A),(B)参照)。そして、長方体部の+Y方向側端部から延びた延長部に腰部側面装着部材111Lが固定的に接続され、長方体部の−Y方向側端部から延びた延長部に腰部側面装着部材111Rが固定的に接続されている。
【0046】
上記の腰椎外骨格部材113は、例えば、鋼鉄製の部材であり、棒状に成形されている。この腰椎外骨格部材113は、−Z方向側端部が背部装着部材112の長方体部に固定的に接続され、腰部が腰関節から背部へと延びる方向に沿って、腰椎に対応する位置に配置されている。そして、腰椎外骨格部材113は、例えば、胸部を被覆する布製のベルト部材119により、人体に装着される。
【0047】
<大腿部外骨格部材120L,120Rの構成>
次に、上記の大腿部外骨格部材120L,120Rの構成について説明する。
【0048】
《大腿部外骨格部材120Lの構成》
大腿部外骨格部材120Lは、左大腿部に装着される。大腿部外骨格部材120Lは、図2図4(特に、図3,4参照)により総合的に示されるように、大腿部外側外骨格部材121Lと、大腿部内側外骨格部材122Lとを備えている。
【0049】
上記の大腿部外側外骨格部材121L及び大腿部内側外骨格部材122Lは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板状に成形されている。この大腿部外側外骨格部材121Lは、左大腿部が股関節から延びる方向に沿って、当該左大腿部の外側に配置されている。また、大腿部内側外骨格部材122Lは、左大腿部が股関節から延びる方向に沿って、当該左大腿部の内側に配置されている。そして、大腿部外側外骨格部材121L及び大腿部内側外骨格部材122Lは、金属製のベルト部材129Lにより左大腿部に装着されている。本実施形態では、ベルト部材129Lには、左大腿部の太腿を裏側から保持する金属製の太腿保持部材127Lが取り付けられている(図4参照)。
【0050】
また、大腿部外側外骨格部材121Lの+Z方向側端部には、Y軸と平行な軸を軸方向とする軸部材AX2Lを挿入する軸穴が成形加工されている。ここで、大腿部外側外骨格部材121Lの軸穴は、関節運動アシスト装置100が人体に装着された場合に、左股関節に対応する位置に成形されるようになっている。
【0051】
《大腿部外骨格部材120Rの構成》
大腿部外骨格部材120Rは、右大腿部に装着される。大腿部外骨格部材120Rは、図2図4(特に、図3,4参照)により総合的に示されるように、大腿部外側外骨格部材121Rと、大腿部内側外骨格部材122Rとを備えている。
【0052】
上記の大腿部外側外骨格部材121R及び大腿部内側外骨格部材122Rは、例えば、鋼鉄製の部材であり、長板状に成形されている。この大腿部外側外骨格部材121Rは、右大腿部が股関節から延びる方向に沿って、当該右大腿部の外側に配置されている。また、大腿部内側外骨格部材122Rは、右大腿部が股関節から延びる方向に沿って、当該右大腿部の内側に配置されている。そして、大腿部外側外骨格部材121R及び大腿部内側外骨格部材122Rは、金属製のベルト部材129Rにより右大腿部に装着されている。本実施形態では、ベルト部材129Rには、右大腿部の太腿を裏側から保持する金属製の太腿支持部材127Rが取り付けられている(図4参照)。
【0053】
また、大腿部外側外骨格部材121Rの+Z方向側端部には、Y軸と平行な軸を軸方向とする軸部材AX2Rを挿入する軸穴が成形加工されている。ここで、大腿部外側外骨格部材121Rの軸穴は、関節運動アシスト装置100が人体に装着された場合に、右股関節に対応する位置に成形されるようになっている。
【0054】
<第1接続部材131の構成>
上記の第1接続部材131は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長方体形状に成形されている(図2,4参照)。そして、第1接続部材131の+Z方向側端面は、腰部外骨格部材110の背部装着部材112に固定的に接続されている。また、第1接続部材131の−Z方向側端面は、第1ベローズ171の一方側端部と接続されている。
【0055】
<第2接続部材141L,141Rの構成>
上記の第2接続部材141Lは、例えば、鋼鉄製の部材であり、図2,4,6により総合的に示されるように、長方体部と、当該長方体部に接続され、長方体部の+Y方向側端部から+X方向に延びた長板状の延長部とを有している。そして、第2接続部材141Lの延長部の+X方向側端部は、大腿部外側外骨格部材121Lに固定的に接続されている。また、第2接続部材141Lの長方体部の+Z方向側端面は、第2ベローズ172Lの一方側端部と接続されている。ここで、図6は、第2接続部材141L,141Rを+Z方向側から視た平面図である。また、図中に示した2点鎖線は、第2接続部材141L,141R以外の構成要素を示している。
【0056】
上記の第2接続部材141Rは、例えば、鋼鉄製の部材であり、図2,4,6により総合的に示されるように、長方体部と、当該長方体部に接続され、長方体部の−Y方向側端部から+X方向に延びた長板状の延長部とを有している。そして、第2接続部材141Rの延長部の+X方向側端部は、大腿部外側外骨格部材121Rに固定的に接続されている。また、第2接続部材141Rの長方体部の+Z方向側端面は、第2ベローズ172Rの一方側端部と接続されている。
【0057】
<取付部材150の構成>
次に、上記の取付部材150の構成について説明する。取付部材150は、骨盤形状に沿って腰部周辺に装着されて、ぐらつくことなく骨盤部位に確実に固定される。また、取付部材150は、腰部外骨格部材110及び大腿部外骨格部材120L,120Rを取り付けている。取付部材150は、図2図4、及び、図7(A)〜(C)により総合的に示されるように、腰部側面取付部材151L,151Rと、背部取付部材152と、固定用部材153と、着用部材160とを備えている。そして、これらの腰部側面取付部材151L,151R、背部取付部材152、固定用部材153及び着用部材160が一体となって、取付部材150が形成されている。
【0058】
ここで、図7(A)は、取付部材150を+Y方向側から視た左側面図である。また、図7(B)は、取付部材150を+Z方向側から視た平面図である。また、図7(C)は、取付部材150を−Z方向側から視た底面図である。また、図中に示した2点鎖線は、取付部材150以外の構成要素を示している。なお、図7(B),(C)の取付部材150については、関節運動アシスト装置100を装着する人体により不可視となる部分についても実線で示すとともに、部材自体により不可視となる部分については、点線で示している。
【0059】
上記の腰部側面取付部材151L,151Rは、例えば、鋼鉄製の部材であり、XZ平面視で、−Z方向側に突出部を有した略平板状に成形加工されている(腰部側面取付部材151Lについては、図7(A)参照)。この腰部側面取付部材151Lは、平板面の法線方向がY軸と平行になるように腰部の左側に配置され、腰部側面取付部材151Rは、平板面の法線方向がY軸と平行になるように腰部の右側に配置されている。そして、腰部側面取付部材151L及び腰部側面取付部材151Rの−X方向側端部に、背部取付部材152が固定的に接続されている。
【0060】
腰部側面取付部材151Lには、略中央部に軸部材AX1Lを挿入する軸穴が成形加工されているとともに、突出部に軸部材AX2Lを挿入する軸穴が成形加工されている。ここで、当該略中央の軸穴は、関節運動アシスト装置100が人体に装着された場合に、腰仙関節に対応する位置に成形されるようになっている。また、当該突出部の軸穴は、左股関節に対応する位置に成形されるようになっている。
【0061】
そして、腰部側面取付部材151Lは、腰部側面装着部材111Lの−Y方向側に配置され、軸部材AX1Lにより、当該腰部側面装着部材111Lを腰関節の前後の回動運動方向に回動可能に取り付けている。また、腰部側面取付部材151Lは、大腿部外側外骨格部材121Lの−Y方向側に配置され、軸部材AX2Lにより、当該大腿部外側外骨格部材121Lを左股関節の前後の回動運動方向に回動可能に取り付けている。
【0062】
腰部側面取付部材151Rには、略中央部に軸部材AX1Rを挿入する軸穴が成形加工されているとともに、突出部に軸部材AX2Rを挿入する軸穴が成形加工されている。ここで、当該略中央の軸穴は、関節運動アシスト装置100が人体に装着された場合に、腰仙関節に対応する位置に成形されるようになっている。また、当該突出部の軸穴は、右股関節に対応する位置に成形されるようになっている。
【0063】
そして、腰部側面取付部材151Rは、腰部側面装着部材111Rの+Y方向側に配置され、軸部材AX1Rにより、当該腰部側面装着部材111Rを腰関節の前後の回動運動方向に回動可能に取り付けている。また、腰部側面取付部材151Rは、大腿部外側外骨格部材121Rの+Y方向側に配置され、軸部材AX2Rにより、当該大腿部外側外骨格部材121Rを右股関節の前後の回動運動方向に回動可能に取り付けている。
【0064】
上記の背部取付部材152は、例えば、鋼鉄製の部材であり、長方体形状に成形されている(図7(A)参照)。そして、背部取付部材152の+Z方向側端面は、第1ベローズ171の他方側端部と接続されている。また、背部取付部材152における−Z方向側端面の+Y方向側は、第2ベローズ172Lの他方側端部と接続され、背部取付部材152における−Z方向側端面の−Y方向側は、第2ベローズ172Rの他方側端部と接続されている。
【0065】
上記の固定用部材153は、着用部材160を、腰部側面取付部材151L,151R及び背部取付部材152に固定する。本実施形態では、固定用部材153は、+Z方向側で、腰部側面取付部材151L,151R及び背部取付部材152と後述するウエストバンド部161とを固定する平板状の金属部材と、弾性部材とで構成され、当該弾性部材は空気を注入可能な袋体となっている。そして、当該袋体に空気を注入することにより、固定用部材153は、着用部材160を、腰部側面取付部材151L,151R及び背部取付部材152にぐらつくことなく、確実に固定するようになっている。
【0066】
《着用部材160の構成》
次いで、上記の着用部材160の構成について説明する。この着用部材160は、固定用部材153により、腰部側面取付部材151L,151R及び背部取付部材152に固定されるとともに、人体に直接装着されて骨盤を形成する左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨に沿って、骨盤部位の左右の外側面及び骨盤部位の後方に確実に固定される。
【0067】
着用部材160は、図7(B),(C)及び図8(A),(B)により総合的に示されるように、ウエストバンド部161と、後面被覆部162と、前面被覆部163とを備えている。ここで、図8(A)は着用部材160を+X方向側から視た正面図であり、図8(B)は着用部材160を−X方向側から視た背面図である。また、図中に示した2点鎖線は、着用部材160以外の構成要素を示している。
【0068】
上記のウエストバンド部161は、例えば、骨盤部位を形成する左右の腸骨稜(図1参照)の稜線に沿った形状に成形加工された所定の厚みを有する金属製の部材である。このウエストバンド部161は、後面で後面被覆部162に連結されるとともに、前面被覆部163に連結されている。そして、ウエストバンド部161は、左右の腸骨稜の稜線に沿って、人体後方から腰部を包被するようにして骨盤部位の左右の外側面に固定されている。
【0069】
上記の後面被覆部162は、例えば、線状の金属製部材を略T字状にした枠部分を成形し、当該枠部分内を布で覆うことにより形成される(図8(B)参照)。この後面被覆部162は、骨盤部位を形成する仙骨、尾骨(図1参照)の形状に沿った形に成形加工されている。そして、後面被覆部162は、仙骨、尾骨に対応する腰部後方を被覆するようにして、骨盤部位の後方に固定される。
【0070】
上記の前面被覆部163は、例えば、布製であり、下腹部を被覆し、骨盤部位の左右の前外側面に固定される。この前面被覆部163は、臍部付近でウエストバンド部161に連結されているとともに、股下部分で後面被覆部162に連結されている。
【0071】
この結果、取付部材150は、骨盤に確実に固定されるようになっている。
【0072】
<第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172R
次に、上記の第1ベローズ171及び第2ベローズ172L,172Rについて説明する。
【0073】
第1ベローズ171は、等間隔の環状溝を有する膨縮自在な樹脂製の部材であり、腰仙関節の伸展側(−X方向側)に配置される(図2,4参照)。第1ベローズ171の一方側端部は、第1接続部材131に接続されるとともに、第1ベローズ171の他方側端部は、取付部材150における背部取付部材152の+Z方向側端面に接続される。そして、第1ベローズ171と調整部180との間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管191を通じて、第1ベローズ171内の空気圧が変化すると、第1ベローズ171が膨縮する。この結果、第1ベローズ171が腰関節の関節運動をアシストする力を発生させる。
【0074】
第2ベローズ172Lは、等間隔の環状溝を有する膨縮自在な樹脂製の部材であり、左股関節の伸展側(−X方向側)に配置される(図2,4参照)。第2ベローズ172Lの一方側端部は、第2接続部材141Lに接続されるとともに、第2ベローズ172Lの他方側端部は、取付部材150における背部取付部材152の−Z方向側端面の+Y方向側に接続される。そして、第2ベローズ172Lと調整部180との間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管192Lを通じて、第2ベローズ172L内の空気圧が変化すると、第2ベローズ172Lが膨縮する。この結果、第2ベローズ172Lが左股関節の関節運動をアシストする力を発生させる。
【0075】
第2ベローズ172Rは、第2ベローズ172Lと同様に、等間隔の環状溝を有する膨縮自在な樹脂製の部材である。この第2ベローズ172Rは、右股関節の伸展側(−X方向側)に配置される(図4参照)。第2ベローズ172Rの一方側端部は、第2接続部材141Rに接続されるとともに、第2ベローズ172Rの他方側端部は、取付部材150における背部取付部材152の−Z方向側端面の−Y方向側に接続される。そして、第2ベローズ172Rと調整部180との間を連通している可撓性を有する樹脂製の配管192Rを通じて、第2ベローズ172R内の空気圧が変化すると、第2ベローズ172Rが膨縮する。この結果、第2ベローズ172Rが右股関節の関節運動をアシストする力を発生させる。
【0076】
以上のように、本実施形態では、第1接続部材131は腰部外骨格部材110側に配置され、第2接続部材141L,141Rは大腿部外骨格部材120L,120R側に配置されている。また、本実施形態では、第1ベローズ171の他方側端部は、取付部材150を構成する背部取付部材152の+Z方向側における腰関節の伸展側で接続されている。また、本実施形態では、第2ベローズ172L,172Rの他方側端部は、取付部材150を構成する背部取付部材152の−Z方向側における股関節の伸展側で接続されている。
【0077】
<調整部180の構成>
次いで、上記の調整部180の構成について説明する。調整部180は、配管191を介して第1ベローズ171と連通している。また、調整部180は、配管192Lを介して第2ベローズ172Lと連通しているとともに、配管192Rを介して第2ベローズ172Rと連通している。そして、調整部180は、配管191,192L,192Rを介して、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172R(以下、すべてのベローズを総称して、単に、「ベローズ」とも記す)からの空気の強制的排出、及び、ベローズへの空気の強制的供給を行い、ベローズ内の空気圧を調整する。
【0078】
かかる機能を有する調整部180は、図9に示されるように、加圧ポンプ181と、減圧ポンプ182と、電気−空気圧制御弁183と、制御部184と、配管185,186とを備えている。
【0079】
上記の加圧ポンプ181は、配管185を介して、電気−空気圧制御弁183のポンプ側接続口の一方側と接続されている。この加圧ポンプ181は、ベローズへの空気の強制的供給を行う際に利用される。上記の減圧ポンプ182は、配管186を介して、電気−空気圧制御弁183のポンプ側接続口の他方側と接続されている。この減圧ポンプ182は、ベローズからの空気の強制的排出を行う際に、利用される。
【0080】
上記の電気−空気圧制御弁183は、流路切換弁と、圧力制御弁(比例ソレノイドバルブ)とを備えて構成されている。この流路切換弁の入口側の一方が加圧ポンプ181に接続されているとともに、入口側の他方が減圧ポンプ182に接続されている。
【0081】
そして、流路切換弁は、制御部184による制御のもとで、ベローズへの空気の強制的供給を行う際には、加圧ポンプ181に接続されている配管185と指定されたベローズと連通している配管とを接続して流路を形成する。また、流路切換弁は、制御部184による制御のもとで、ベローズからの空気の強制的排出を行う際には、減圧ポンプ182に接続されている配管186と指定されたベローズと連通している配管とを接続して流路を形成する。
【0082】
例えば、第1ベローズ171への強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管191とを接続して流路を形成する。また、第1ベローズ171からの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管191とを接続して流路を形成する。
【0083】
また、第2ベローズ172Lへの強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管192Lとを接続して流路を形成する。また、第2ベローズ172Lからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管192Lとを接続して流路を形成する。さらに、第2ベローズ172Rへの強制的供給を行う際には、流路切換弁は、配管185と配管192Rとを接続して流路を形成する。また、第2ベローズ172Rからの空気の強制的排出を行う際には、流路切換弁は、配管186と配管192Rとを接続して流路を形成する。
【0084】
また、圧力制御弁は、制御部184による制御のもとで、空気圧力を制御して、ベローズ内の空気圧を変化させる。
【0085】
上記の制御部184は、ベローズからの空気の強制的排出、及び、ベローズへの空気の強制的供給の切り換え、並びに、ベローズ内の空気圧の制御を行う。かかる制御に際して、ベローズへの空気の強制的供給を行う場合には、制御部184は、電気−空気圧制御弁183が加圧ポンプ181と関節運動をアシストするベローズとを接続する流路を形成し、ベローズ内の空気圧力を調整するように、制御する。また、ベローズからの空気の強制的排出を行う場合には、制御部184は、電気−空気圧制御弁183が減圧ポンプ182と関節運動をアシストするベローズとを接続する流路を形成し、ベローズ内の空気圧力を調整するように制御する。
【0086】
こうした制御は、実験、シミュレーション、経験等を加味した関節を駆動する筋力に関する生体情報に基づいて行われるようになっている。ここで、関節を駆動する筋力に関する生体情報は、不図示の検出部が、筋電図、筋肉の硬さ等を検出することで、取得するようにすることができる。
【0087】
[動作]
以上のようにして構成された関節運動アシスト装置100の動作、すなわち、腰関節及びの左右の股関節の機構を利用する関節運動のアシスト動作を説明する。
【0088】
なお、関節運動アシスト装置100では、当初においては、調整部180によるベローズ内の空気圧調整は行われておらず、ベローズの内圧は大気圧になっているものとする。また、当初においては、図2に示されるように、腰関節及び左右の股関節は、伸展状態にあるものとする。
【0089】
<関節の伸展状態から屈曲状態へのアシスト動作>
この関節運動のアシスト動作は、腰関節及び左右の股関節を伸展状態から屈曲状態にする際には、調整部180が、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rへの空気の強制的供給を行うための制御を行う。調整部180により、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rへの空気の強制的供給が行われると、各ベローズ内の空気圧が上昇する。こうしてベローズ内の空気圧が上昇すると、ベローズが膨張する。
【0090】
第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rが膨張する膨張行程において、各ベローズが膨張したときの関節運動アシスト装置100の状態が図10に示されている。図2の状態から図10の状態に遷移する第1ベローズ171の膨張行程により、第1ベローズ171の一方側端部に接続されている第1接続部材131が、第1ベローズ171の他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX1L,AX1Rを中心軸にして+X方向側に回転する。この結果、アシスト装置が装着された場合における腰部外骨格部材110と取付部材150とがなす人体の前側の角度が狭くなり、腰関節が伸展状態から屈曲状態になる。
【0091】
また、第2ベローズ172Lの膨張行程により、第2ベローズ172Lの一方側端部に接続されている第2接続部材141Lが、第2ベローズ172Lの他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX2Lを中心軸にして+X方向側に回転する。この結果、アシスト装置が装着された場合における大腿部外骨格部材120Lと取付部材150とがなす人体の前側の角度が狭くなり、左股関節が伸展状態から屈曲状態になる。
【0092】
また、第2ベローズ172Rの膨張行程により、第2ベローズ172Rの一方側端部に接続されている第2接続部材141Rが、第2ベローズ172Rの他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX2Rを中心軸にして+X方向側に回転する。この結果、アシスト装置が装着された場合における大腿部外骨格部材120Rと取付部材150とがなす人体の前側の角度が狭くなり、右股関節が伸展状態から屈曲状態になる。
【0093】
<関節の屈曲状態から伸展状態へのアシスト動作>
腰関節及び左右の股関節が屈曲状態であるとき(図10参照)に、各関節を屈曲状態から伸展状態にする際には、調整部180が、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。調整部180により、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rからの空気の強制的排出が行われると、各ベローズ内の空気圧が下降する。こうしてベローズ内の空気圧が下降すると、ベローズが収縮する。
【0094】
第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rが収縮する収縮行程において、各べローズが収縮したときの関節運動アシスト装置100の状態が図2に示されている。図10の状態から図2の状態に遷移する第1ベローズ171の収縮行程により、第1ベローズ171の一方側端部に接続されている第1接続部材131が、第1ベローズ171の他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX1L,AX1Rを中心軸にして−X方向側に回転する。この結果、アシスト装置が装着された場合における腰部外骨格部材110と取付部材150とがなす人体の前側の角度が広くなり、腰関節が屈曲状態から伸展状態になる。
【0095】
また、第2ベローズ172Lの収縮行程により、第2ベローズ172Lの一方側端部に接続されている第2接続部材141Lが、第2ベローズ172Lの他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX2Lを中心軸にして−X方向側に回転する。この結果、アシスト装置が装着された場合における大腿部外骨格部材120Lと取付部材150とがなす人体の前側の角度が広くなり、左股関節が屈曲状態から伸展状態になる。
【0096】
また、第2ベローズ172Rの収縮行程により、第2ベローズ172Rの一方側端部に接続されている第2接続部材141Rが、第2ベローズ172Rの他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX2Rを中心軸にして−X方向側に回転する。この結果、アシスト装置が装着された場合における大腿部外骨格部材120Rと取付部材150とがなす人体の前側の角度が広くなり、右股関節が屈曲状態から伸展状態になる。
【0097】
<歩行時のアシスト動作>
歩行時のアシスト動作は、まず、調整部180が、腰関節を伸展状態にするために、第1ベローズ171からの空気の強制的排出を行うための制御を行う。そして、左足部を前方へ移動させるときには、調整部180は、左足部を屈曲状態にするとともに、右足部を伸展状態するにするための制御を行う。すなわち、調整部180は、第2ベローズ172Lへの空気の強制的供給を行うとともに、第2ベローズ172Rからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。
【0098】
また、右足部を前方へ移動させるときには、調整部180は、右足部を屈曲状態にするとともに、左足部を伸展状態するにするための制御を行う。すなわち、調整部180は、第2ベローズ172Rへの空気の強制的供給を行うとともに、第2ベローズ172Lからの空気の強制的排出を行うための制御を行う。この結果、スムーズな歩行動作を実現することができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態では、調整部180により、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rへの空気の強制的供給が行われると、各ベローズが膨張する。そして、第1ベローズ171の膨張により、第1ベローズ171の一方側端部に接続されている第1接続部材131が、第1ベローズ171の他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX1L,AX1Rを中心軸にして回転する。この結果、腰関節が伸展状態から屈曲状態になる。
【0100】
また、第2ベローズ172Lの膨張行程により、第2ベローズ172Lの一方側端部に接続されている第2接続部材141Lが、第2ベローズ172Lの他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX2Lを中心軸にして回転する。この結果、左股関節が伸展状態から屈曲状態になる。また、第2ベローズ172Rの膨張行程により、第2ベローズ172Rの一方側端部に接続されている第2接続部材141Rが、第2ベローズ172Rの他方側端部に接続されている取付部材150に対して、軸部材AX2Rを中心軸にして回転する。この結果、右股関節が伸展状態から屈曲状態になる。
【0101】
このため、膨縮部材である第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rを膨張させる膨張行程を制御して、腰関節及び左右の股関節を伸展状態から屈曲状態に移行する運動をアシストすることができる。
【0102】
また、本実施形態では、調整部180により、第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rからの空気の強制的排出が行われると、各ベローズが収縮する。そして、第1ベローズ171の収縮により、第1接続部材131が、取付部材150に対して軸部材AX1L,AX1Rを中心軸にして回転する。この結果、腰関節が屈曲状態から伸展状態になる。
【0103】
また、第2ベローズ172Lの収縮行程により、第2接続部材141Lが、取付部材150に対して軸部材AX2Lを中心軸にして回転する。この結果、左股関節が屈曲状態から伸展状態になる。また、第2ベローズ172Rの収縮行程により、第2接続部材141Rが、取付部材150に対して軸部材AX2Rを中心軸にして回転する。この結果、右股関節が屈曲状態から伸展状態になる。
【0104】
このため、膨縮部材である第1ベローズ171、第2ベローズ172L,172Rを収縮させる収縮行程を制御して、腰関節及び左右の股関節を屈曲状態から伸展状態に移行する運動をアシストすることができる。
【0105】
また、本実施形態では、調整部180は、左足部を前方へ移動させるときには、腰関節を伸展状態にして、左足部を屈曲状態にするとともに、右足部を伸展状態するにするための制御を行う。また、調整部180は、右足部を前方へ移動させるときには、腰関節を伸展状態にして、右足部を屈曲状態にするとともに、左足部を伸展状態するにするための制御を行う。このため、腰関節の伸展アシスト力を発生させた状態を維持しつつ、スムーズな歩行動作を実現することができる。
【0106】
また、本実施形態では、腰部外骨格部材110は、腰関節に対応する位置で腰関節の回動方向に回動可能に取付部材150に取り付けられている。また、大腿部外骨格部材120Lは、左股関節に対応する位置で左股関節の回動方向に回動可能に取付部材150に取り付けられ、大腿部外骨格部材120Rは、右股関節に対応する位置で右股関節の回動方向に回動可能に取付部材150に取り付けられている。このため、腰関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができるとともに、左股関節及び右股関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができる。
【0107】
また、本実施形態では、第1ベローズ171は腰関節の伸展側に配置され、第2ベローズ172Lは左股関節の伸展側に配置され、第2ベローズ172Rは右股関節の伸展側に配置されている。このため、腰関節の運動をアシストする力、左股関節の運動をアシストする力、右股関節の運動をアシストする力を効率良く発生することができる。
【0108】
また、本実施形態では、着用部材160は、骨盤部位を形成する左右の腸骨稜の稜線、仙骨、尾骨の形状に沿って、骨盤部位にフィットして確実に固定されるため、取付部材150が骨盤部位に確実に固定される。この結果、第1ベローズ171、及び、第2ベローズ172L,172Rが膨張したり収縮した際にも、取付部材150は、ぐらつくことなく骨盤部位に確実に固定されている。これにより、第1ベローズ171が発生した力を、効率良く腰仙関節に伝達することができる。また、第2ベローズ172Lが発生した力を、効率良く左股関節に伝達することができ、第2ベローズ172Rが発生した力を、効率良く右股関節に伝達することができる。このため、腰関節並びに左股関節及び右股関節の独立した関節運動に際して、スムーズな関節運動を行い、安定した関節運動を実現することができる。
【0109】
したがって、本実施形態によれば、関節運動を適切にアシストしつつ、スムーズな関節運動を実現することができる。
【0110】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0111】
例えば、上記の実施形態では、第1接続部材131を腰部外骨格部材110側に配置するとともに、第2接続部材141L,141Rを大腿部外骨格部材121L,121R側に配置するようにした。また、本実施形態では、第1ベローズ171の他方側端部は、取付部材150を構成する背部取付部材の+Z方向側で接続されるとともに、第2ベローズ172L,172Rの他方側端部は、取付部材150を構成する背部取付部材の−Z方向側で接続されることとした。
【0112】
これに対して、図11,12に示される関節運動アシスト装置100Bのように、第1接続部材131Bを大腿部外骨格部材121L,121R側に配置するとともに、第2接続部材141BL,141BRを腰部外骨格部材110側に配置するようにしてもよい。そして、こうした構成を採用した場合には、第1ベローズ171の他方側端部は、取付部材150を構成する背部取付部材の−Z方向側で接続されるとともに、第2ベローズ172L,172Rの他方側端部は、取付部材150を構成する背部取付部材の+Z方向側で接続されるようにする。なお、図12に示される関節運動アシスト装置100Bでは、調整部180及び配管191,192L,192Rの図示を省略している。
【0113】
ここで、図11は、各ベローズが膨張したときの関節運動アシスト装置100Bの状態であり、図12は、各ベローズが収縮したときの関節運動アシスト装置100Bの状態である。このように、関節運動アシスト装置100Bでは、第1ベローズ及び2つの第2ベローズを膨張させることで、腰関節及び股関節を屈曲状態から伸展状態にするとともに、第1ベローズ及び2つの第2ベローズを収縮させることで、腰関節及び股関節を伸展状態から屈曲状態にすることができる。
【0114】
また、上記の実施形態では、腰部外骨格部材110は、腰仙関節に対応する位置で、軸部材AX1L,AX1Rにより取付部材150に取り付けられるようにした。これに対して、例えば、図13に示される構成の関節運動アシスト装置100Cとしてもよい。関節運動アシスト装置100Cは、上述した実施形態の関節運動アシスト装置100と比べて、腰部外骨格部材110に代えて腰部外骨格部材110Cを備える点、取付部材150に代えて取付部材150Cを備える点、及び、軸部材AX1L,AX1Rに代えて連接部材CBL,CBR(連接部材CBRは不図示)を備える点が異なっている。
【0115】
腰部外骨格部材110Cは、上述した実施形態の腰部外骨格部材110と比べて、腰部側面装着部材111L,111Rに代えて腰部側面装着部材111CL,111CR(腰部側面装着部材111CRは不図示)を備える点、及び、当該腰部側面装着部材111CL,111CRに固定される外歯歯車(歯車部材)210L,210R(外歯歯車210Rは不図示)を更に備える点が異なっている。
【0116】
外歯歯車210Lは、腰部側面装着部材111CLの−Z方向側端部であって、腰仙関節に対応する位置に固定される。この外歯歯車210Lには、腰仙関節の回動運動方向に沿った歯部が形成されている。また、外歯歯車210Rは、腰部側面装着部材111CRの−Z方向側端部であって、腰仙関節に対応する位置に固定される。この外歯歯車210Rには、腰仙関節の回動運動方向に沿った歯部が形成されている。
【0117】
取付部材150Cは、上述した実施形態の取付部材150と比べて、腰部側面取付部材151L,151Rに固定される外歯歯車(歯車部材)250L,250R(外歯歯車250Rは不図示)を更に備える点が異なっている。
【0118】
外歯歯車250Lは、腰部側面取付部材151Lにおける仙腸関節に対応する位置に固定される。この外歯歯車250Lには、外歯歯車210Lに噛合する歯部が形成されている。そして、外歯歯車250Lは、外歯歯車210Lと噛合し、当該噛合が連接部材CBLにより確保されている。また、外歯歯車250Rは、腰部側面取付部材151Rにおける仙腸関節に対応する位置に固定される。この外歯歯車250Rには、外歯歯車210Rに噛合する歯部が形成されている。そして、外歯歯車250Rは、外歯歯車210Rと噛合し、当該噛合が連接部材CBRにより確保されている。このように、関節運動アシスト装置100Cでは、腰部外骨格部材110Cは、連接部材CBL ,CBRにより取付部材150Cに取り付けられるようになっている。
【0119】
上記のようにして構成された関節運動アシスト装置100Cでは、取付部材150Cを相対静止させた系において、腰部外骨格部材110Cに固定された外歯歯車210L,210Rのそれぞれが、第1ベローズ171の膨張行程又は収縮行程により自転しつつ、取付部材150Cに固定された外歯歯車250L,250Rの周りを公転する。これにより、腰部外骨格部材110Cが、仙腸関節に対応して固定された外歯歯車250L,250Rの中心軸を中心にして公転するとともに、腰仙関節に対応して固定された外歯歯車210L,210Rの中心軸を中心にして自転する。なお、関節運動アシスト装置100Cでは、連接部材CBL,CBRは、腰仙関節と仙腸関節との間に存在する仙骨(図1参照)に対応した機能を果たすようになっている。
【0120】
このため、関節運動アシスト装置100Cでは、腰仙関節及び仙腸関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができるとともに、左股関節及び右股関節の動きに対応したスムーズな関節運動のアシストを行うことができる。
【0121】
なお、関節運動アシスト装置100Cでは、腰部外骨格部材110C及び取付部材150Cには外歯歯車が固定されるようにしたが、当該外歯歯車に代えて、回転力を伝達可能なゴム部材を採用するようにしてもよい。
【0122】
また、上記の実施形態では、腰部外骨格部材は、腰仙関節に対応する位置で取付部材に取り付けられるようにしたが、仙腸関節に対応する位置で仙腸関節の回動方向に回動可能に取付部材に取り付けられるようにしてもよい。また、腰部外骨格部材は、取付部材に対して、腰仙関節に対応する位置の近辺、仙腸関節に対応する位置の近辺、又は、腰仙関節及び仙腸関節の近辺に取り付けられてもよいことは勿論である。
【0123】
また、上記の実施形態では、太腿を裏側から保持する太腿保持部材を備えるようにしたが、当該太腿保持部材を省略するようにしてもよい。
【0124】
また、上記の実施形態では、関節を駆動する筋肉に関する生体情報を、筋電図、筋肉の硬さ等の生体信号としたが、利用者の脳波を当該生体情報として採用するようにしてもよい。
【0125】
また、実施形態においては、樹脂製のベローズを採用したが、伸縮自在であり、人体に装着される装置の重さ等の負担をかけることがない素材であれば、他の素材であってもよい。
【0126】
また、本発明の関節運動アシスト装置は、作動流体を空気としたが、他の気体や、水や油等の液体であってもよい。
【0127】
本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野で利用する場合には、介護者がパワーアシスト用の装置として装着するだけでなく、力が弱っている被介護者がパワーアシスト用又はリハビリテーション用の装置としても利用することができる。また、本発明の関節運動アシスト装置は、介護や福祉の分野以外で重量物を持ち上げる等の場合のパワーアシスト装置としても利用することができる。
【0128】
また、上記の実施形態においては、人体の関節運動をアシストする関節運動アシスト装置に本発明を適用したが、関節機構を有する人体以外の外骨格形の哺乳類、外骨格形のロボット等の所定対象物の関節運動アシスト装置にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本発明の関節運動アシスト装置は、所定対象物の関節運動をアシストする関節運動アシスト装置に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13