(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記くさび作動部材(11,81)は、上記第2部材(2,60)に摺接して上記連れ廻り摩擦力を発生させる摺接部(12,85)を有している請求項2または3に記載の角度調整金具(3)。
背部(46)の上縁に、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の角度調整金具(3)を介してヘッドレスト部(48)を取付けて、該ヘッドレスト部(48)の起立方向(A)への揺動を可能としつつ、傾倒方向(B)への揺動を規制可能としたソファーに於て、
上記角度調整金具(3)が、ギア部(34)と、該ギア部(34)に噛合可能な歯面(37)を有する上記浮動くさび部材(6)の一つである規制用小ギア部材(36)とを具備し、上記ヘッドレスト部(48)が上記起立方向(A)に揺動する際には、上記角度調整金具(3)の上記ギア部(34)と上記歯面(37)を非接触遊離状態に保持する一方、上記傾倒方向(B)への所定小角度の引返し操作によって、上記角度調整金具(3)の上記ギア部(34)と上記歯面(37)とを噛合状態とし、上記ヘッドレスト部(48)の姿勢を保持するように構成されたことを特徴とするソファー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の角度調整金具は、浮動くさび部材が、弾発板ばね部材の弾発付勢力によって常時ギア部に押し付けられていた。このため、第1部材に対して第2部材を一方向に揺動させる場合に、浮動くさび部材がギア部を乗り越えるとき、浮動くさび部材の歯面がギア部に衝突し、カチカチという騒音が発生していた。
例えば、本願の
図10に示すソファーは、背部46の上縁にヘッドレスト部48が角度調整金具3によって取付けられている。そして、ヘッドレスト部48の傾斜角度を調整する場合、座部47に座る人の耳元で、角度調整金具3からカチカチという騒音が鳴ると、耳障りであるという欠点があった。
また、座椅子や(折畳み式)ベッド等であっても同様である。起立・傾倒作動を行う背部,ヘッドレスト部,傾動床部等の傾斜角度を調整する場合に、これらを揺動可能に枢支する角度調整金具から、カチカチ等の騒音が発生すると、耳障りであるといった問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、揺動操作する際に、カチカチという騒音の発生を低減した角度調整金具を提供することを目的とする。
また、座部に座る人の耳元で耳障りな騒音を発生することなく、ヘッドレスト部の角度調整を行えるソファーを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る角度調整金具は、
くさび面(8)を有する第1部材(1)と、ギア部(4)を有する第2部材(2)と、を揺動可能に枢結し、
上記くさび面(8)と上記ギア部(4)との間に形成されたくさび形空間内に移動自在に配設され、かつ、上記ギア部(4)に噛合可能な歯面(7)を有する浮動くさび部材(6)を具備し、上記第1部材(1)に対する上記第2部材(2)の一方向(A)への相対的揺動を可能とし、他方向(B)への相対的揺動を規制する角度調整金具に於て、
上記一方向(A)への揺動の際に、上記浮動くさび部材(6)の上記歯面(7)と上記ギア部(4)とを非接触に遊離して保持する非接触遊離保持手段(10)を備えたものである。
【0007】
また、上記非接触遊離保持手段は、上記第2部材との連れ廻り摩擦力によって小角度の範囲で回動するくさび作動部材を備え、
上記第1部材に対する上記第2部材の上記一方向(A)への揺動によって、上記くさび作動部材が上記浮動くさび部材の上記歯面を上記ギア部から非接触に遊離して非接触遊離状態とし、
さらに、上記他方向(B)への上記小角度の揺動によって、上記第1部材側に形成されたくさび面と上記ギア部との間に上記浮動くさび部材を押し込んで、該浮動くさび部材の上記歯面と上記ギア部とを噛合状態とし、該浮動くさび部材のくさび作用により、上記第1部材に対する上記第2部材の上記他方向(B)への相対的揺動を規制するように構成されたものである。
【0008】
そして、上記非接触遊離保持手段は、上記第2部材との連れ廻り摩擦力によって小角度の範囲で回動するくさび作動部材を備え、
上記第1部材に対する上記第2部材の上記一方向(A)への揺動によって、上記くさび作動部材が上記浮動くさび部材の上記歯面を上記ギア部から非接触に遊離して非接触遊離状態とし、
さらに、上記他方向(B)への上記小角度の揺動によって、上記第1部材側に形成されたくさび面と上記ギア部との間に上記浮動くさび部材を押し込んで、該浮動くさび部材の上記歯面と上記ギア部とを噛合状態とし、該浮動くさび部材のくさび作用により、上記第1部材に対する上記第2部材の上記他方向(B)への相対的揺動を規制するように構成されたものであってもよい。
【0009】
さらに、上記くさび作動部材は、上記第2部材に摺接して上記連れ廻り摩擦力を発生させる摺接部を有しているものである。
【0010】
また、本発明に係るソファーは、背部(46)の上縁に、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の角度調整金具(3)を介してヘッドレスト部(48)を取付けて、該ヘッドレスト部(48)の起立方向(A)への揺動を可能としつつ、傾倒方向(B)への揺動を規制可能としたソファーに於て、
上記角度調整金具(3)が、ギア部(34)と、該ギア部(34)に噛合可能な歯面(37)を有する
上記浮動くさび部材(6)の一つである規制用小ギア部材(36)とを具備し、上記ヘッドレスト部(48)が上記起立方向(A)に揺動する際には、上記角度調整金具(3)の上記ギア部(34)と上記歯面(37)を非接触遊離状態に保持する一方、上記傾倒方向(B)への所定小角度の引返し操作によって、上記角度調整金具(3)の上記ギア部(34)と上記歯面(37)とを噛合状態とし、上記ヘッドレスト部(48)の姿勢を保持するように構成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の角度調整金具によれば、浮動くさび部材の歯面とギア部との噛合により、滑らず確実に、所望の角度で第1部材・第2部材を静止可能である。そして、第1部材・第2部材の角度を調整する場合に、浮動くさび部材の歯面とギア部とを非接触で遊離した状態に保持でき、静粛に揺動できる。
即ち、浮動くさび部材の歯面とギア部との衝突で発生していたカチカチという騒音の発生を防止できる。
【0012】
また、本発明のソファーによれば、座部に座る人の耳元で耳障りなカチカチという騒音の発生を防止でき、ヘッドレスト部を静かに揺動できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る角度調整金具の実施形態を、添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態に係る角度調整金具3は、第1部材1と、ギア部4を有する第2部材2と、ギア部4に噛合可能な歯面7を有する浮動くさび部材6と、を配設している。そして、第1部材1と第2部材2とは、枢結軸24によって軸心Lを中心として揺動可能に組み付けられている。
【0015】
本発明に係る角度調整金具3は、ソファー、座椅子、(折畳み式)ベッド等に適用可能である。より具体的には、起立・傾倒作動を行うヘッドレスト部、背部、傾動床部等の揺動自在な枢支部に適用可能である。
【0016】
浮動くさび部材6は、一面側が歯面7とされ、他面側が当接面9とされている。上記当接面9は、第1部材1側に形成されたくさび面8に当接する。そして、
図1に示すように、浮動くさび部材6は、当接面9がくさび面8に当接し、かつ、歯面7とギア部と4が噛合する場合に、くさび作用により、第1部材1に対して第2部材2が図中矢印B方向へ揺動することを阻止する。
【0017】
第1部材1は、一対の対面壁部17,17と取付部18とを一体化したものである。対面壁部17,17には、枢結軸24が挿通されているとともに、くさび形窓部5が形成されている。くさび形窓部5は、円弧状のくさび面8を有し、浮動くさび部材6をギア部4から離間させた状態で収納するための退避空間15を有している。くさび形窓部5は、くさび面8がギア部4に次第に接近するように形成されている。このため、くさび面8とギア部4の外周歯面とによって、
図1の側面視で時計回り方向に縮小するくさび形空間が形成され、このくさび形空間に浮動くさび部材6が移動自在に配設されている。
【0018】
第2部材2は、2枚のギア板部45,45と、取付部19とを、一体化したものである。そして、相互に平行に配置した2枚のギア部4,4は、第1部材1の対面壁部17,17の間に装入される。ギア板部45,45の円弧状外周縁部に、例えば、中心角が100°〜120°を成す範囲にわたって形成されている。図例では、浮動くさび部材6の歯面7に5本〜6本の歯が形成されている。そして、上記歯面7とギア部4とは左右幅方向の2箇所で噛合しているとともに、歯面7の全ての歯がギア部4に同時に噛合している。ギア部4の始端部・終端部には、突起部14,14が配設されている。ギア板部45,45には、枢結軸24が挿通されている。なお、浮動くさび部材6の歯面7には、13本〜20本の歯が形成されていても良い。また、ギア部4には、40本以上の歯、より好ましくは45本〜65本の歯が形成されていても良い。これにより、角度調整段数は40段以上とすることができる。
【0019】
図2に示すように、第1部材1に対して第2部材2を図中矢印A方向へ(相対的に)揺動することができる。そして、第2部材2をA方向に揺動する際に、浮動くさび部材6をギア部4から非接触に遊離して保持するための非接触遊離保持手段10を設けてある。
【0020】
非接触遊離保持手段10は、第2部材2との連れ廻り摩擦力によって、軸心L廻りに小角度の範囲で回動するくさび作動部材(作動プレート)11を備えている。
くさび作動部材11は、枢結軸24が挿通される孔部21を有している。そして、くさび作動部材11は、ギア板部45,45の間に装入された状態で、第1部材1,第2部材2に枢結軸24を介して一体に枢結されている。
図7に示すように、くさび作動部材11には、浮動くさび部材6を移動自在に保持する開口窓部20が形成されている。開口窓部20は、孔部21の中心点(軸心L)から見て外側に円弧面22を有するとともに、円弧面22の一端縁と鋭角φを成すテーパー面23を有している。くさび作動部材11の外側面には、凹部25が形成されている。
【0021】
図1〜
図6に於て、第1部材1とくさび作動部材11との間に板ばね部材16が介設されている。板ばね部材16は、長手方向中間部に凸部13を有し、長手方向両端部が第1部材1に支持されている。板ばね部材16は、凸部13がくさび作動部材11の凹部25に対応するように配設されている。このため、
図1および
図2に示すように、凸部13が凹部25に摺接しつつ、くさび作動部材11と第2部材2とが連れ廻り摩擦力によって一緒に回動する。一方、
図4および
図5に示すように、凸部13が凹部25から離脱するとともに、くさび作動部材11の外側面に圧接した状態では、くさび作動部材11と第2部材2とが連れ廻り摩擦力によって一緒に回動しない。
【0022】
図7および
図9に示すように、くさび作動部材11は、第2部材2に摺接して連れ廻り摩擦力を発生させる摺接部12を有している。
くさび作動部材11は、一対の側壁部27,27が連結部28によって連結されている。摺接部12は、くさび作動部材11の側壁部27,27の一部を外方に突出(膨出)させている。摺接部12は、孔部21の周囲に複数個配設されている。摺接部12は、くさび作動部材11の側壁部27,27をコ字状に切欠いて舌片29を形成し、この舌片29を板ばね状に曲げ起こして形成されている(
図9)。また、平行な一対のスリットを形成して、スリットの内側を三角山状に隆起させても良い(図示省略)。くさび作動部材11は、複数の摺接部12が、第2部材2のギア板部45,45の内面に圧接して連れ廻り摩擦力を発生させる。この連れ廻り摩擦力により、第2部材2とくさび作動部材11とが共廻りする。
【0023】
図11ないし
図13に示すように、くさび作動部材11には、孔部21の周縁部に波状内環部31と波状外環部32とを設けても良い。
図12および
図13に示すように、波状外環部32は、側壁部27との連結残部30を残して断続的な(複数の)円弧状スリット35を設け、ついで、円弧状スリット35の内側を湾曲させることにより、複数の隆起部33を形成してある。波状内環部31は、隆起部33との連結部38を残して断続的な(複数の)円弧状スリット39を設け、ついで、円弧状スリット39の内側を凸状に盛り上げ、外方に突出させることにより、複数の摺接部12を形成してある。波状内環部31と波状外環部32とは、弾性変形が可能である。このため、摺接部12が弾性変形し、第2部材2のギア板部45,45の内面に圧接し、適度な連れ廻り摩擦力を発生させる。この結果、くさび作動部材11と第2部材2とは連れ廻り摩擦力によって共廻りする。
【0024】
上述した本発明の角度調整金具の使用方法(作用)について説明する。
図1から
図2に示すように、第1部材1に対して第2部材2を矢印A方向へ揺動させる折畳み操作M
0を行う。これにより、くさび作動部材11と第2部材2とが連れ廻り摩擦力によって(図の反時計回りに)共廻りする。このため、浮動くさび部材6は、くさび作動部材11のテーパー面23に上端面を押される。この結果、浮動くさび部材6は、くさび形窓部5(くさび形空間)内で下方へ移動しながら、くさび形窓部5の誘導勾配面26に摺接し、ギア部4から離反する方向へ小さく移動する。浮動くさび部材6は、くさび形窓部5(くさび形空間)の下部でくさび面8寄りに配設される。このため、歯面7とギア部4との間に僅かな隙間が生じ、非接触遊離状態となる(
図8参照)。非接触遊離状態では、浮動くさび部材6とギア部4とは当接せず、音を発生することなく、静粛に第2部材2が一方向Aに揺動する。浮動くさび部材6は、くさび作動部材11のテーパー面23と、くさび形窓部5の誘導勾配面26と、くさび面8とによって形成される略扇形の空間に保持される。そして、くさび作動部材11と第2部材2との間に連れ廻り摩擦力が発生している限り、浮動くさび部材6が上方からくさび作動部材11に押圧され、浮動くさび部材6とギア部4とは噛合しない。
つまり、折畳み操作M
0をしている間は、浮動くさび部材6をガタつかせることなく保持し、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とは非接触遊離状態に保たれる。
【0025】
次に、
図3に示すように、折畳み操作M
0の途中で、第1部材1に対して第2部材2を矢印B方向へ揺動させるべく引返し操作M
1を行うと、くさび作動部材11と第2部材2とが連れ廻り摩擦力によって(図の時計回りに)共廻りする。くさび作動部材11は、浮動くさび部材6の下端面を下方から押し上げて、浮動くさび部材6をくさび形窓部5(くさび形空間)の上部へ移動させる。このため、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とが噛合状態となる。浮動くさび部材6は、くさび面8とギア部4との間の次第に狭くなる空間に押し込まれ、くさび作用により、第2部材2のB方向への揺動を規制する。この結果、第1部材1と第2部材2との傾斜角度は維持(固定保持)される。
図3に示す噛合状態では、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4との噛合により、滑ることなく確実に第1部材1と第2部材2との傾斜角度を停止保持する。
【0026】
そして、
図4に示すように、折畳み操作M
0によって第2部材2をさらにA方向に揺動させ、起立状の最終折畳位置P
0とする。これにより、一方の突起部14が浮動くさび部材6の上端面を押圧し、くさび形窓部5(くさび形空間)の下部の退避空間15に浮動くさび部材6を移動させる。この際、くさび作動部材11は、浮動くさび部材6の下端面に押され、
図2の非接触遊離状態から(図の反時計回りに)さらに回動する。これを退避状態と呼ぶ。退避状態下では、浮動くさび部材6が退避空間15に収納され、かつ、くさび作動部材11が板ばね部材16の凸部13に係止している。従って、第2部材2をB方向へ揺動しても、くさび作動部材11は板ばね部材16の凸部13に係止しているので、第2部材2とくさび作動部材11とは共廻りしない。このため、ギア部4と歯面7との噛合が解除された状態を保ち、第1部材1に対して第2部材2はB方向への揺動が可能となる。
【0027】
次に、
図5に示すように、展開操作M
2によって第2部材2をB方向へ揺動すると、第1部材1に対して第2部材2が直線状となる最終展開位置P
1(
図6参照)の直前で、他方の突起部14が浮動くさび部材6の下端面に当接する。
そして、
図5および
図6に示すように、第2部材2を少し強くB方向へ押すと、突起部14が浮動くさび部材6の下端面を押圧するので、退避空間15から上方へ浮動くさび部材6が移動する。この際、浮動くさび部材6の移動に伴って、浮動くさび部材6の上端面がくさび作動部材11のテーパー面23を押し上げるので、くさび作動部材11が図の時計回りに回動する。くさび作動部材11は、板ばね部材16との係止状態が解除され、第2部材2との摩擦力によって共廻りする。このため、浮動くさび部材6がくさび形窓部5(くさび形空間)の上部へ移動し、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とが噛合状態となる。
【0028】
図10に示すように、背部46の上縁に角度調整金具3を介してヘッドレスト部48を取付けてある。このため、上記角度調整金具3は、ヘッドレスト部48の起立方向Aへの揺動を可能としつつ、傾倒方向Bへの揺動を規制するソファーに使用するのに好適である。
図8に示すように、角度調整金具3が、ギア部34と、ギア部34に噛合可能な歯面37を有する規制用小ギア部材36(浮動くさび部材6)とを、具備している。
図10に於て、ヘッドレスト部48が起立方向Aに揺動する際には、角度調整金具3のギア部34と歯面37とが非接触遊離状態に保持される。そして、ヘッドレスト部48に傾倒方向Bへの所定小角度の引返し操作を行うことにより、角度調整金具3のギア部34と歯面37とが噛合状態となり、ヘッドレスト部48の姿勢が保持される。
【0029】
なお、本発明は、設計変更可能であって、例えば、くさび形窓部5を有さずに、代りに、浮動くさび部材6の当接面9を押圧する板片状部材等を用いることも自由である。
また、くさび作動部材11は、開口窓部20を有さずに、浮動くさび部材6の上端面・下端面を押圧する上下一対の当接面を有する形状であれば良く、板片状部材を用いる等、デザインや寸法比率を自由に変更可能である。
【0030】
以上のように、本発明に係る角度調整金具は、第1部材1と、ギア部4を有する第2部材2とを、揺動可能に枢結し、ギア部4に噛合可能な歯面7を有する浮動くさび部材6を具備し、第1部材1に対する第2部材2の一方向Aへの相対的揺動を可能とし、他方向Bへの相対的揺動を規制する角度調整金具3である。そして、一方向Aへの揺動の際に浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とを非接触に遊離して保持する非接触遊離保持手段10を設けた。このため、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4との噛合により、滑らず確実に、所望の角度で第1部材1・第2部材2を静止可能である。また、第1部材1・第2部材2の角度調整の際に、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とが非接触に遊離した非接触遊離状態に保持でき、静粛に揺動できる。即ち、従来、浮動くさび部材とギア部とが衝突することで発生していたカチカチ音の発生を防止できる。
【0031】
また、非接触遊離保持手段10は、第2部材2との連れ廻り摩擦力によって小角度の範囲で回動するくさび作動部材11を備え、第1部材1に対する第2部材2の一方向Aへの揺動によって、くさび作動部材11が浮動くさび部材6の歯面7をギア部4から非接触に遊離して非接触遊離状態とする。さらに、他方向Bへの小角度の揺動によって、第1部材1側に形成されたくさび面8とギア部4との間に浮動くさび部材6を押し込んで、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とを噛合状態とすることにより、浮動くさび部材6のくさび作用により、第1部材1に対する第2部材2の他方向Bへの相対的揺動を規制する。このため、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4との噛合により、滑らず確実に、所望の角度で第1部材1・第2部材2の姿勢を保持できる。また、第2部材2を一方向Aへ揺動する間は、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とを、非接触に遊離した非接触遊離状態に確実に保持できる。
【0032】
また、くさび作動部材11は、第2部材2に摺接して連れ廻り摩擦力を発生させる摺接部12を有している。このため、くさび作動部材11と第2部材2とが確実に共廻りする。この結果、浮動くさび部材6の歯面7とギア部4とを、非接触遊離状態と噛合状態とに切換えることができる。この結果、第1部材1と第2部材2を適度な摩擦抵抗力で揺動させることができる。
【0033】
また、本発明に係るソファーは、背部46の上縁に角度調整金具3によってヘッドレスト部48を取付けて、ヘッドレスト部48の起立方向Aへの揺動を可能としつつ、傾倒方向Bへの揺動を規制可能としてある。そして、角度調整金具3が、ギア部34と、ギア部34に噛合可能な歯面37を有する規制用小ギア部材36とを、具備している。このため、ヘッドレスト部48が起立方向Aに揺動する際には、角度調整金具3のギア部34と歯面37とを非接触遊離状態に保持する。そして、ヘッドレスト部48に傾倒方向Bへ所定小角度の引返し操作を行うことにより、角度調整金具3のギア部34と歯面37とを噛合状態とし、ヘッドレスト部48の姿勢を保持する。したがって、ヘッドレスト部48が起立方向Aに揺動する際に、耳元で耳障りな騒音が発生するのを防止でき、ヘッドレスト部48を静かに揺動できる。
【0034】
本発明に係る角度調整金具3の第2実施形態は、
図14ないし
図32に示すように、第1部材50と、第2部材60と、浮動くさび部材70と、非接触遊離保持手段80と、第1,第2カバー90,92と、を備え、枢結軸94を介し、軸心Lを中心として揺動可能に一体化されている。
【0035】
上記第1部材50は、
図15および
図16に示すように、取付部51と、上記取付部51の一端部を挟持し、かつ、平行に対向する一対の対面壁部52,53と、を備えている。そして、上記取付部51に上記対面壁部52,53が2本のリベット54,54でかしめ固定されている。
なお、固定方法は前述のかしめ固定に限らず、例えば、ボルトナットあるいは溶接で固定してもよい。また、取付部51と対面壁部52,53とのいずれか一方に、突出し加工で嵌合突起を設ける一方、残る他方に嵌合孔を設けて一体化してもよい。
【0036】
上記対面壁部52,53は鏡面対称に形成され、その一方側に軸孔56を設けてあるとともに、その他方側の内向面に位置規制ピン57を突設してある(
図17)。そして、対面壁部52,53は、上記軸孔56と位置規制ピン57との間に、くさび形窓部58を設けてある。なお、上記位置規制ピン57は、突出し加工で形成してもよく、別体の金属製ピンを取り付けて形成してもよい。
【0037】
上記位置規制ピン57は、
図27に示すように、一対の対面壁部52,53に、同一軸心上に位置するようにそれぞれ配置されている。そして、上記位置規制ピン57は、後述するくさび作動部材81の板ばね部材83をガイドすることにより、上記くさび作動部材81のガタツキを防止する。また、上記板ばね部材83に係止することにより、上記くさび作動部材81を位置規制する。
【0038】
上記くさび形窓部58は、
図17に示すように、円弧状のくさび面58aを有している。そして、上記くさび面58aは、後述する第2部材60のギア部66に次第に接近するように形成されている(
図25)。また、上記くさび形窓部58は、浮動くさび部材70をギア部66から離間させた状態で収納するための退避空間58bを有している。さらに、上記くさび形窓部58は、上記退避空間58bに連続する誘導勾配面58cを形成してある。
そして、
図25に示すように、くさび面58aとギア部66の外周歯面とによって、時計回り方向に沿って縮小するくさび形空間が形成される。上記くさび形空間内には、後述する浮動くさび部材70が移動自在に組み込まれる。
【0039】
上記第2部材60は、
図15および
図16に示すように、取付部61と、上記取付部61の一端部を挟持し、かつ、平行に対向する一対のギア板部62,63と、を備えている。そして、上記取付部61に上記ギア板部62,63が2本のリベット64,64でかしめ固定されている。なお、固定方法は前述のかしめ固定に限らず、例えば、ボルトナットあるいは溶接で固定してもよい。また、取付部61とギア板部62,63とのいずれか一方に、突出し加工で嵌合突起を設ける一方、残る他方に嵌合孔を設けて一体化してもよい。
【0040】
上記ギア板部62,63は、鏡面対称に形成され、枢結軸94を挿通するための軸孔65,65をそれぞれ有する。また、上記ギア板部62,63は、その一端側の円弧状外周縁部に、例えば、中心角100°〜120°の範囲でギア部66を形成してある。さらに、上記ギア部66の始端部には押下げ用突起部67が設けられている。また、上記ギア部66の終端部には押上げ用突起部68が設けられている。
そして、第2部材60の2枚のギア板部62,63は、上記第1部材50の対面壁部52,53の間に装入され、後述する枢結軸94を介して揺動可能に連結される。
【0041】
本実施形態では、上記第1,第2部材50,60を3枚の構成部品でそれぞれ形成することが開示されているが、必ずしもこれに限らない。上記第1,第2部材50,60は、例えば、鏡面対称に形成した2枚の構成部品を重ね合わせ、溶接、カシメ固定、ボルトナット、あるいは、嵌合突起等を利用して一体化してもよい。
【0042】
上記浮動くさび部材70は、
図18に示すように、一面側が当接面71とされ、他面側が歯面72とされている。上記当接面71は、
図28に示すように、第1部材50側に形成されたくさび面58aに当接する。そして、浮動くさび部材70は、当接面71がくさび面58aに当接し、かつ、歯面72とギア部66とが噛合する場合に、くさび作用により、第1部材50に対する第2部材60の図中矢印B方向へ揺動を阻止する。
【0043】
なお、
図24に示すように、浮動くさび部材70の歯面72に5本〜6本の歯が形成されている。この歯面72とギア部66とは、左右幅方向の2箇所で噛合し、かつ、歯面72の全ての歯がギア部66に同時に噛合している。
また、例えば、浮動くさび部材70の歯面72に13本〜20本の歯を形成し、ギア部66に40本以上の歯、より好ましくは45本〜65本の歯を形成してもよい。これにより、角度調整段数を40段以上としてもよい。
【0044】
上記非接触遊離保持手段80は、
図15および
図16に示すように、第2部材60との連れ廻り摩擦力によって、軸心L廻りに小角度の範囲で回動するくさび作動部材(作動プレート)81を備えている。
【0045】
上記くさび作動部材81は、
図19および
図20に示すように、1枚の金属板をプレス加工で打ち抜き、折り重ねて形成されている。そして、上記くさび作動部材81は、その中央に設けた開口窓部82と、上記開口窓部82の一方側に設けた一対の板ばね部材83,83と、上記開口窓部82の他方側に設けた軸孔84と、を有している。また、上記くさび作動部材81は、ギア板部62,63の間に装入された状態で第2部材60と共に揺動可能に支持されている。
【0046】
上記開口窓部82は、浮動くさび部材70を移動自在に保持するためのものであり、中心点(軸心L)から見て外側に円弧面82aを有している。上記円弧面82aは、その一端縁に鋭角φを成すテーパー面82bを有している。また、上記円弧面82aは、その他端縁に段部82cを設けてある。
【0047】
上記板ばね部材83は、上記くさび作動部材81の他方側縁部に沿って縦長のスリットを設け、切り残した部分を略直角にそれぞれ曲げ起こして形成されている。このため、板ばね部材83は、長手方向の両端部がくさび作動部材81に連結されている。
また、上記板ばね部材83は、長手方向の中間部に外方に突出する凸部83aを有している。そして、上記板ばね部材83は、上記凸部83aの一方側の基部に係止用凹部83bを形成してある。この係止用凹部83bに位置規制ピン57が係止することにより、くさび作動部材81が、第2部材60との連れ廻り摩擦力によって回動しないように位置規制される。また、上記板ばね部材83は、上記凸部83aの他方側にガイド用凹部83cを形成してある。上記ガイド用凹部83c内に位置規制ピン57が位置している場合は、上記位置規制ピン57に上記板ばね部材83がガイドされながら、くさび作動部材81が第2部材60と一緒に連れ廻り摩擦力によって回動する。
なお、上記位置規制ピン57は、上記ガイド用凹部83cにガイドされていればよく、常に摺接している必要はない。
また、上記板バネ部ばね83必ずしも一対、設ける必要はなく、片側1枚であってもよい。
【0048】
上記軸孔84は、後述する枢結軸94を挿通するためのものである。そして、上記軸孔84の周縁部に摺接部として波状環部85を設けてある。波状環部85は複数の隆起部85aを有している。上記隆起部85aは、軸孔84の周縁部に連結残部85bを残して不連続な(複数の)円弧状スリット85cを設け、ついで、上記円弧状スリット85cの内側部分を板厚方向に湾曲させて形成されている。
そして、上記波状環部85は弾性変形するので、隆起部85aが、第2部材60のギア板部62,63の内向面に弾性的に圧接する。このため、くさび作動部材81と第2部材60との間に適度な連れ廻り摩擦力が発生する。この結果、上記連れ廻り摩擦力によってくさび作動部材81と第2部材60とが共廻りする。
【0049】
なお、上記くさび作動部材81は、
図21および
図22に示すように、上記波状環部85の内周縁部に環状摺接部86を設けておいてもよい。上記環状摺接部86を設けることにより、上記波状環部85が補強され、耐久性が向上するとともに、揺動動作が円滑かつ安定するという利点がある。
【0050】
また、くさび作動部材81は、前述の実施形態に限らず、1枚の金属板に貫通孔およびスリットを設けることにより、開口窓部82と、上記開口窓部82の一方側に軸孔84と、上記開口窓部82の他方側に板ばね部材83と、を切削加工で形成してもよい。
【0051】
第1,第2カバー90,92は、上記浮動くさび部材70の脱落を防止するためのものである。そして、第1,第2カバー90,92は、上記第1部材50の対面壁部52,53の外周面を被覆する正面形状を有するとともに、軸孔91,93をそれぞれ備えている。
【0052】
次に、前述の構成部品の組み付け方法について説明する。
一体化した第2部材60のギア板部62,63の間にくさび作動部材81を挿入して位置決めする。そして、第1部材50の対面壁部52,53の間に、上記ギア板部62,63およびくさび作動部材81を挿入して位置決めする。さらに、上記対面壁部52に第1カバー90を位置決めした後、軸孔91,56,65,84,65,56に枢結軸94を挿通して仮止めする。ついで、対面壁部53のくさび形窓部58から浮動くさび部材70を開口窓部82におよび対面壁部52のくさび形窓部58に挿入する。そして、第2カバー92の軸孔93を枢結軸94に嵌合し、上記浮動くさび部材70の脱落を防止する。最後に、枢結軸94の両端をかしめることにより、前述の構成部品を連結一体化する。
【0053】
次に、第2実施形態に係る角度調整金具3の使用方法について説明する。
図28に示すように、第1部材50に対して第2部材60を矢印B方向に倒すと、浮動くさび部材70の歯面72とギア部66とが噛合状態になる。また、浮動くさび部材70は、くさび面58aとギア部66との間に形成される次第に狭くなる空間に押し込まれる。このため、浮動くさび部材70は、くさび作用により、第2部材60のB方向への揺動を規制し、第1部材50と第2部材60との傾斜角度が維持(固定保持)される。
すなわち、
図28に示す噛合状態では、浮動くさび部材70の歯面72とギア部66との噛合により、第2部材60が滑ることなく、第1部材50と第2部材60との傾斜角度を確実に保持する。
【0054】
逆に、第2部材を矢印A方向に揺動させると、
図29に示すように、波状環部85のバネ力に基づいて生じる連れ廻り摩擦力により、第2部材60と一緒にくさび作動部材81が共廻りを開始する。このため、浮動くさび部材70は、くさび形窓部58内で下方へ移動する。そして、浮動くさび部材70の上端面がくさび作動部材81のテーパー面82bに押される。このため、浮動くさび部材70は、くさび形窓部58の誘導勾配面58cを摺接しながら、ギア部66から離反する方向へ小さく移動する。そして、浮動くさび部材70はくさび形窓部58の下部でくさび面58a寄りに移動する。この結果、歯面72とギア部66との間に微小な隙間が生じ、浮動くさび部材70は非接触遊離状態となる(
図29)。非接触遊離状態では、浮動くさび部材70は、くさび形窓部58の誘導勾配面58cと、くさび作動部材81のテーパー面82bと、段部82cと、の3点によって支持されている。非接触遊離状態では、浮動くさび部材70とギア部66とが接触することがないので、耳障りなカチカチ音が生ぜず、第2部材60が矢印A方向に静かに揺動する。また、くさび作動部材81と第2部材60との間に連れ廻り摩擦力が発生する間、浮動くさび部材70はくさび作動部材81に上方から押圧されるので、歯面72とギア部66とが噛み合うことはない。
すなわち、矢印A方向に第2部材60を揺動する操作を行っている間は、浮動くさび部材70はガタツキを生じることなく保持され、浮動くさび部材70の歯面72とギア部66との非接触状態を保持する。
【0055】
図30に示すように、第2部材60を更に矢印A方向に揺動させ、一方の押下げ用突起部67で浮動くさび部材70の上端面を押圧すると、くさび作動部材81が共廻りするとともに、浮動くさび部材70がくさび作動部材81を押し下げる。このため、くさび作動部材81に設けた板ばね部材83の凸部83aが位置規制ピン57を乗り越える。この結果、位置規制ピン57が係止用凹部83bに係止する。そして、浮動くさび部材70の下端面が退避空間58bに収納され、退避状態となる。
退避状態下では、浮動くさび部材70が退避空間58b内に収納され、かつ、板ばね部材83の係止用凹部83bが位置規制ピン57に係止している。このため、第2部材60をB方向へ揺動しても、位置規制ピン57に係止する板ばね部材83のばね力で、ギア部66と歯面72とが噛合していない状態を保つ。この結果、くさび作動部材81は共廻りせず、第1部材50に対して第2部材60はB方向に自由に揺動できる。
【0056】
次に、
図32に示すように、第2部材60を矢印B方向へ揺動すると、第1部材50に対して第2部材60が直線状となる最終展開位置の直前で、押上げ用突起部68が浮動くさび部材70の下端面に当接する。
そして、第2部材60を少し強く矢印B方向へ揺動すると、押上げ用突起部68が浮動くさび部材70の下端面を押し上げ、退避空間58bから浮動くさび部材70を上方へ移動させる。この際、浮動くさび部材70の移動に伴って、浮動くさび部材70の上端面がくさび作動部材81のテーパー面82bを押し上げる。このため、くさび作動部材81が軸心Lを中心として
図32の時計回りに回動する。この結果、板ばね部材83の係止用凹部83bと位置規制ピン57との係止状態が解除され、位置規制ピン57が板ばね部材83のガイド用凹部83cに変位する。そして、くさび作動部材81と第2部材60との摩擦力により、両者は共廻りする。この結果、浮動くさび部材70がくさび形窓部58(くさび形空間)の上部へ移動し、浮動くさび部材70の歯面72とギア部66とが噛合状態となる。
【0057】
なお、本実施形態では、第1部材50に対して第2部材60が直線状(180度)となった位置を、最終展開位置としているが、必ずしもこれに限らない。ギア部66を設ける中心角の範囲を適宜選択することにより、例えば、第1部材50に対して第2部材60が120度の角度を形成した位置を、最終展開位置としてもよい。
【0058】
ついで、第2部材60を、再度、矢印A方向に揺動させると、波状環部85のバネ力に基づく連れ廻り摩擦力により、第2部材60と一緒にくさび作動部材81が共廻りを開始する。このため、浮動くさび部材70は、くさび形窓部58内で下方へ移動する。そして、浮動くさび部材70の上端面がくさび作動部材81のテーパー面82bに押される。このため、浮動くさび部材70は、くさび形窓部58の誘導勾配面58cを摺接しながら、ギア部66から離反する方向へ小さく移動する。この結果、浮動くさび部材70はくさび形窓部58の下部でくさび面58a寄りに配置されるので、歯面72とギア部66との間に微小な隙間が生じ、再び、浮動くさび部材70は非接触遊離状態となる(
図29)。したがって、カチカチ音は発生しない。そして、第2部材60を矢印B方向に揺動させると、浮動くさび部材70の歯面72とギア部66とが噛合状態になる。さらに、浮動くさび部材70は、くさび面58aとギア部66との間に形成される次第に狭くなる空間に押し込まれる。このため、浮動くさび部材70は、くさび作用により、第2部材60のB方向への揺動を規制し、第1部材50と第2部材60との傾斜角度は維持(固定保持)され、
図28に図示された状態に戻る。