(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1から
図5に、本発明の一実施形態を示している。図中、1は二輪車、2は二輪車用のカバーを示している。
【0030】
この実施形態では、二輪車1として、いわゆるネイキッドタイプと呼ばれるものが例示されている。
【0031】
カバー2は、分離されているフロント部3とリア部4とを組み合わせた構成、つまりツーピース構造になっている。フロント部3とリア部4とは、二輪車1の前後方向の所定領域でオーバーラップするように設定されている。
【0032】
フロント部3は、
図1に示すように、その後部および下部が開放されているとともに、前部が二輪車1の前輪11に引っ掛けられるような袋形状に形成されていて、二輪車1において前輪11からシート14の前端(燃料タンク13の後端)に至るまでの領域を覆うような寸法に形成されている。
【0033】
フロント部3の前部は、前から後に向かって斜め上向きに傾斜した形状になっていて、その最上位置からさらに後に向かって下向きに傾斜した形状になっている。
【0034】
このフロント部3の前下部には、当該前下部を前輪11の前下側部位の外形に倣う形状にするための絞り部31が設けられている。この前下部には不図示の前輪ロック部材(チェーン、U字形ロックあるいはリンク連結部材等)を挿通するための鍵孔ベルト32が設けられている。
【0035】
さらに、フロント部3には、それを二輪車1に装着した状態を保持するための固定手段(符号省略)が設けられている。この固定手段は、胴部絞りベルト5a、プラグ5b、ソケット5cを含む構成になっている。
【0036】
胴部絞りベルト5aは、フロント部3において前開放部分の周縁に取り付けられており、二輪車1のエンジン15の下側に巻き掛けられるものである。
【0037】
プラグ5bおよびソケット5cは、ワンタッチで連結または連結解除されるように構成されたものであって、公知の汎用品とされているので、その詳細な説明は割愛する。
【0038】
プラグ5bは、胴部絞りベルト5aの左端寄りの所定位置に取り付けられており、また、ソケット5cは、胴部絞りベルト5aの右端に取り付けられている。なお、プラグ5bは、胴部絞りベルト5aの左端側に対する取り付け位置を任意に変更できるように構成されている。
【0039】
そして、プラグ5bを二輪車1の前輪11と後輪12との間(エンジン15)の下部空間に二輪車1の幅方向一方(左)から幅方向他方(右)へ向けて差し入れて、ソケット5cに近づけて連結すると、胴部絞りベルト5aがエンジン15の下側部位に巻き掛けられる状態になる。これにより、フロント部3が二輪車1に装着された状態で保持される。
【0040】
リア部4は、
図1および
図3に示すように、その前部および下部が開放されているとともに、後部が二輪車1の後輪12に引っ掛けられるような袋形状に形成されていて、二輪車1において後輪12からシート14を経てフロントフォーク17の手前に至るまでの領域を覆うような寸法に形成されている。
【0041】
このリア部4は、全体的に見て横長の長方体形状に形成されている。このリア部4の前端側は、前から後に向かって斜め上向きに傾斜した形状になっている。
【0042】
このリア部4の左側構成面45における前後方向中間部位の下側には二輪車1のサイドスタンド16を外へ突き出せるようにするためのスタンド孔41が設けられている。また、左側構成面45の後寄りの下部には不図示の後輪ロック部材(チェーン、U字形ロックあるいはリンク連結部材等)を挿通するための鍵孔42が設けられている。さらに、左側構成面45および右側構成面46の各後下部には、当該各後下部およびそれらで挟まれる部位を後輪12の後下側部位の外形に倣う形状にするための絞り部43,44が設けられている。右側構成面46の絞り部44の下端側には、前記後輪ロック部材を挿通するための鍵孔47が設けられている。
【0043】
そして、リア部4には、それを二輪車1に装着した状態を保持するための固定手段(符号省略)が設けられている。この固定手段は、上側のプラグ6aおよびソケット6bと、下側のプラグ7aおよびソケット7bとを含む構成になっている。
【0044】
上側のプラグ6aおよびソケット6bと、下側のプラグ7aおよびソケット7bとは、それぞれ互いにワンタッチで連結または連結解除されるように構成されたものであって、公知の汎用品とされているので、その詳細な説明は割愛する。
【0045】
上側のプラグ6aは、リア部4の左側構成面45の前斜辺212の長手方向中間部位に取り付けられており、また、上側のソケット6bは、リア部4の右側構成面46の前斜辺213の長手方向中間部位に取り付けられている。
【0046】
具体的には、リア部4の前開放部分の長手方向中間部位に長手方向中間部位が縫合されたベルト6cの左端寄りの所定位置に上側のプラグ6aが取り付けられており、また、ベルト6cの右端に上側のソケット6bが取り付けられている。なお、上側のプラグ6aは、ベルト6cの左端側に対する取り付け位置を任意に変更できるように構成されている。そして、上側のプラグ6aとソケット6bとを、フロントフォーク17の長手方向中間部位の前方で連結する。
【0047】
下側のプラグ7aは、リア部4の左側の前斜辺212の下側に一端側が縫合された長尺ベルト7cの自由端寄りの所定位置に取り付けられている。また、下側のソケット7bは、リア部4の右側の前斜辺213の下側に短尺ベルト7dの自由端に取り付けられている。なお、下側のプラグ7aは、長尺ベルト7cの自由端側に対する取り付け位置を任意に変更できるように構成されている。そして、下側のプラグ7aとソケット7bを、前輪11の前下部の前方で連結する。
【0048】
このような上下のプラグ6a,7aおよびソケット6b,7bにより、リア部4が二輪車1に装着された状態で保持される。
【0049】
なお、前記したフロント部3およびリア部4の布生地としては、柔軟性及び透湿防水性を有する材料(例えばポリエステル樹脂、あるいはポリエステル樹脂に透湿防水性を有する合成樹脂フィルムを重ね合わせたもの等)とされるが、その他に、前記柔軟性及び透湿防水性を有する材料からなる布生地の裏側に、柔軟性、透湿防水性ならびに車体に傷をつけにくい性質を有する材料(例えば合成繊維製の不織布等)からなる裏地を重ね合わせることが可能である。さらに、リア部4において二輪車1のマフラー20が当たる部位には、前記柔軟性及び透湿防水性を有する材料からなる布生地に、耐熱性に優れた布生地(ふっ素系樹脂の織布等)を貼り合わせることも可能である。
【0050】
このようなフロント部3およびリア部4は、共に、
図4および
図5に示すような適宜の布生地を裁縫することにより製作される。
【0051】
具体的に、フロント部3の製作手順を説明する。まず、
図4に示す前辺101の上下方向(長手方向)の中間点102と中間切り欠き103の最深位置104とを結ぶ仮想直線からなる折り目線105を山折りすることにより、当該折り目線105よりも上側の面と下側の面とを重ね合わせる。これにより、前記下側の面が縫製後の左側構成面34となり、前記上側の面が縫製後の右側構成面35となる。
【0052】
この状態において、左側構成面34の前端と右側構成面35の前端とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合するとともに、中間切り欠き103の片半分領域の内縁106と残り片半分領域の内縁107とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合する。
【0053】
続いて、
図4に示す下側切り欠き108の片半分領域の内縁109と残り片半分領域の内縁110とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合する。さらに、
図3に示す後下辺111に別体の布生地112を縫合して継ぎ足す。
【0054】
この後、左側構成面34において中間切り欠き103に隣り合う後斜辺113と、右側構成面35において中間切り欠き103に隣り合う後斜辺114と、前記継ぎ足し用の布生地38の自由端縁とに対して胴部絞りベルト5aの長手方向中間部位を縫合するとともに、当該胴部絞りベルト5aの左側部位および右側部位を通すための輪状のベルト通し33を縫合する。この段階では、胴部絞りベルト5aの左端寄りの所定位置にプラグ5bが取り付けられていて、胴部絞りベルト5aの右端にソケット5cが縫合されているものとする。
【0055】
次に、リア部4の製作手順を説明する。まず、
図5において、下側(縫製後の後側)に設けられている凹状切り欠き201の左辺および右辺にそれぞれ沿う位置で上下方向に延長する仮想直線からなる折り目線202,203をそれぞれ山折りする。
【0056】
この状態では、当該2つの折り目線202,203のうちの左側の折り目線202よりも左側の面が縫製後の左側構成面45となり、右側の折り目線203よりも右側の面が縫製後の右側構成面46となる。
【0057】
この状態において、左側構成面45の後辺204と右側構成面46の後辺205とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合するとともに、前記後辺204の右側部位と前記後辺205の左側部位とを凹状切り欠き201の内縁に重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合する。
【0058】
続いて、左側構成面45の切り欠き206の前半分領域の内縁207と後半分領域の内縁208とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合することにより、絞り部43を作る。一方、右側構成面46の切り欠き209の前半分領域の内縁210と後半分領域の内縁211とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合することにより、絞り部44を作る。なお、右側構成面46の切り欠き209の内縁210,211の重ね合わせ部分については、部分的に縫合しないようにすることによって、鍵孔47を作るようにしている。
【0059】
この後、左側の前斜辺212から右側の前斜辺213に跨る領域にベルト6cの長手方向中間部位を縫合する。この段階では、ベルト6cの左端寄りの所定位置にプラグ6aが取り付けられていて、ベルト6cの右端にソケット6bが取り付けられているものとする。
【0060】
さらに、左側の前斜辺212の左端に長尺ベルト7cの一端側を縫合するとともに、右側の前斜辺213の右端に短尺ベルト7dの一端側を縫合する。この段階では、長尺ベルト7cの自由端寄りの所定位置にプラグ7aが取り付けられていて、短尺ベルト7dの自由端にソケット7bが縫合されているものとする。
【0061】
次に、上記したフロント部3とリア部4を二輪車1に装着する手順を説明する。
【0062】
まず、準備段階として、二輪車1のハンドル18を左側に目一杯に動かすことによりハンドルロックできる状態にしておいて、サイドスタンド16を使って左側に傾いた姿勢にする。
【0063】
このような姿勢の二輪車1の後輪12側からリア部4の前開放部分を被せることにより、リア部4の絞り部43,44を後輪12の後下側に引っ掛けるようにしながら、後輪12からシート14を経てエンジン15に至るまでの領域を覆う状態にする。
【0064】
この後、二輪車1を直立する姿勢にして、二輪車1のサイドスタンド16をリア部4のスタンド孔41内に差し入れ、それから二輪車1を左側に傾いた姿勢に戻す。なお、前記準備段階において、二輪車1をそのセンタースタンド(図示省略)を使って直立姿勢にする場合には、サイドスタンド16をスタンド孔41内に差し入れるための動作は不要になる。
【0065】
この状態において、リア部4の上側のプラグ6aを二輪車1の2本のフロントフォーク17の左外側から前方に回り込ませるとともに右外側から後方に引き寄せて、ソケット6bに近づけて連結する。これにより、
図3に示すように、ベルト6cがフロントフォーク17の長手方向中間部位に巻き掛けられるようになる。
【0066】
続いて、下側のプラグ7aを二輪車1の前輪11の前下部の左側から前方に回り込ませるとともに右側から後方に引き寄せて、下側のソケット7bに近づけて連結する。これにより、
図1に示すように、長尺ベルト7cと短尺ベルト7dとが前輪11の前下部に巻き付けられるようになる。
【0067】
このようにした結果、
図3に示すように、リア部4において左側構成面34と右側構成面35とがエンジン15から後輪12に至るまでの二輪車1の側面領域に密着された状態になる。この状態では、リア部4が前後左右のいずれの方向に引っ張られても外れなくなる。
【0068】
そして、二輪車1の前輪11側からフロント部3の後開放部分を被せることにより、フロント部3の絞り部31を前輪11の前下側に引っ掛けるようにしながら、ハンドル18から燃料タンク13の後端に至るまでの領域を覆う状態にする。このとき、フロント部3の最上部がハンドル18の右側バックミラー19の上端に引っ掛かった状態になる。
【0069】
この状態において、フロント部3のプラグ5bを二輪車1の前輪11と後輪12との間(エンジン15)の下部空間に二輪車1の左側から右側へ向けて差し入れて、ソケット5cに近づけて連結する。
【0070】
これにより、胴部絞りベルト5aがエンジン15の下側部位に巻き掛けられるようになる。この状態では、フロント部3の左側構成面34および右側構成面35が前輪11に密着されるとともにリア部4の左側構成面45および右側構成面46の前側領域に密着されるようになるので、フロント部3が前後左右のいずれの方向に引っ張られても外れなくなる。
【0071】
このようにして二輪車1にフロント部3およびリア部4を装着すると、
図1に示すように、フロント部3とリア部4とが二輪車1の前後方向所定領域でオーバーラップする状態になって二輪車1の前後方向全域を覆うようになるとともに、フロント部3およびリア部4の左側構成面34,45と右側構成面35,46とが二輪車1の前後方向全域に密着する状態になる。
【0072】
これにより、二輪車1が雨や風等に曝されなくなるというカバー2本来の保護機能を確実に確保できるようになるとともに、フロント部3およびリア部4が雨や風等によりばたつくことを抑制できるとともに外れることを防止できるようになる。その他、二輪車1の前後方向全域が隠されることになるので、二輪車1の姿を外側から認識できなくなるなど、盗難防止に役立つようになる。
【0073】
ところで、フロント部3およびリア部4を二輪車1に装着した状態では、前記した不図示の前輪ロック部材や後輪ロック部材を装着することが可能であるが、それらの装着動作については、一般的なワンピースタイプのカバーのそれと同様であるので、ここでの説明は割愛する。
【0074】
そして、上記フロント部3およびリア部4を取り外す場合には、フロント部3のプラグ5bをソケット5cから離脱させておいて、フロント部3の最上部を斜め上向きにかつ前方に引っ張ることで、比較的簡単に外すことが可能になる。
【0075】
また、リア部4についても、下側のプラグ7aをソケット7bから離脱させるとともに、上側のプラグ6aをソケット6bから離脱させておいて、リア部4の前上側を斜め上向きにかつ後方に引っ張ることで、比較的簡単に外すことが可能になる。
【0076】
以上説明したように本発明を適用した実施形態では、カバー2をフロント部3とリア部4との2つにセパレートしているから、二輪車1に装着するときに、一人でも比較的簡単に装着することが可能になる。そのことに伴い、フロント部3およびリア部4をその二輪車1に比較的タイトにフィットするスリムな形状にすることが可能になる。このようにスリムな形状にできることに伴い、二輪車1への装着状態において、雨や風等によってフロント部3およびリア部4がばたつくことを抑制できるとともに外れることを防止できるようになる。
【0077】
このようなことから、本発明を適用した実施形態のカバー2は、二輪車1に比較的タイトにフィットするスリムな形状にできるようにしながら、二輪車1に1人で比較的簡単に装着することが可能になる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0079】
(1)
図6から
図10には、スクータータイプと呼ばれる二輪車1に適したカバー2を例に挙げている。
【0080】
このカバー2についても、分離されているフロント部3とリア部4とを組み合わせたツーピース構造になっている。フロント部3とリア部4とは、二輪車1の前後方向の所定領域でオーバーラップせずに離隔するように設定されている。
【0081】
フロント部3は、
図6に示すように、その後部および下部が開放されているとともに、前部が二輪車1の前輪11に引っ掛けられるような袋形状に形成されていて、二輪車1において前輪11からフロントカウル25およびセンターカウル26の前後方向の中間部位に至るまでの領域を覆うような寸法に形成されている。
【0082】
このフロント部3は、全体的に縦長の長方体形状に形成されている。フロント部3の前部は、前から後に向かって斜め上向きに傾斜した形状になっていて、その最上位置からさらに後に向かって下向きに傾斜した形状になっている。
【0083】
このフロント部3の前下部は、前輪11の前下側部位の外形に倣う形状に縫製されていて、この前下部には不図示の前輪ロック部材(チェーン、U字形ロックあるいはリンク連結部材等)を挿通するための鍵孔ベルト32が設けられている。また、フロント部3の後側には、前開放部分を拡大するためのスライドファスナー36が設けられている。
【0084】
さらに、フロント部3には、それを二輪車1に装着した状態を保持するための固定手段(符号省略)が設けられている。この固定手段は、プラグ8a、ソケット8bを含む構成になっている。
【0085】
プラグ8aおよびソケット8bは、互いにワンタッチで連結または連結解除されるように構成されたものであって、公知の汎用品とされているので、その詳細な説明は割愛する。
【0086】
プラグ8aは、フロント部3の後右下部に一端側が縫合された長尺ベルト8cの自由端寄りの任意の位置に取り付けられている。また、ソケット8bは、フロント部3の後左下部に一端側が縫合された短尺ベルト8dの自由端に取り付けられている。なお、プラグ8aは、長尺ベルト8cの自由端側に対する取り付け位置を任意に変更できるように構成されている。
【0087】
そして、プラグ8aとソケット8bをセンターカウル26の下側で連結すると、長尺ベルト8cと短尺ベルト8dとがセンターカウル26の下側に巻き付けられる状態になる。これにより、フロント部3が二輪車1に装着された状態で保持される。
【0088】
リア部4は、
図7および
図8に示すように、その前部および下部が開放されているとともに、後部が二輪車1の後輪12に引っ掛けられるような袋形状に形成されていて、二輪車1においてリアカウル27からシート14の前端に至るまでの領域を覆うような寸法に形成されている。
【0089】
このリア部4は、全体的に見て横長の長方体形状に形成されている。このリア部4の前端側は、前から後に向かって斜め上向きに傾斜した形状になっている。
【0090】
このリア部4の左側構成面45における前後方向中間部位の下側には二輪車1のサイドスタンド16を外へ突き出せるようにするためのスタンド孔41が設けられている。また、左側構成面45の後寄りの下部には不図示の後輪ロック部材(チェーン、U字形ロックあるいはリンク連結部材等)を挿通するための鍵孔42が設けられている。さらに、左側構成面45および右側構成面46の各後下部は、後輪12の後下側部位の外形に倣う形状に縫製されている。左側構成面45の後下端と右側構成面46の後下端とには、それぞれ前記後輪ロック部材を挿通するための鍵孔42,47が設けられている。
【0091】
そして、リア部4には、それを二輪車1に装着した状態を保持するための固定手段(符号省略)が設けられている。この固定手段は、プラグ9a、ソケット9bを含む構成になっている。
【0092】
プラグ9aおよびソケット9bは、ワンタッチで連結または連結解除されるように構成されたものであって、公知の汎用品とされているので、その詳細な説明は割愛する。
【0093】
プラグ9aは、リア部4の前開放部分の右下側に一端側が縫合された長尺ベルト9cの自由端寄りの任意の位置に取り付けられている。ソケット9bは、リア部4の前開放部分の左下側に一端側が縫合された短尺ベルト9dの自由端に取り付けられている。なお、プラグ9aは、長尺ベルト9cの自由端側に対する取り付け位置を任意に変更できるように構成されている。
【0094】
そして、プラグ9aとソケット9bとを、センターカウル26の下側で連結すると、長尺ベルト9cと短尺ベルト9dとがセンターカウル26の下側に巻き付けられる状態になる。これにより、リア部4が二輪車1に装着された状態で保持されることになる。
【0095】
このようなフロント部3およびリア部4は、
図9および
図10に示すような適宜の布生地を裁縫することにより製作される。
【0096】
具体的に、フロント部3の製作手順を説明する。まず、
図9に示す左辺301の長手方向中間点302と右辺303の長手方向中間点304とを結ぶ仮想直線からなる折り目線305を山折りすることにより、当該折り目線305よりも左側の面と右側の面とを重ね合わせる。これにより、前記左側の面が縫製後の前方構成面34aとなり、前記右側の面が縫製後の後方構成面35aとなる。
【0097】
この状態において、前方構成面34aの左側湾曲辺306と後方構成面35aの左側湾曲辺307とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合するとともに、前方構成面34aの右側湾曲辺308と後方構成面35aの右側湾曲辺309とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合する。
【0098】
続いて、
図9に示す前方切り欠き310において前半分領域の内縁311と後半分領域の内縁312とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合する。
【0099】
この後、後方切り欠き313における左半分領域の内縁314に短尺ベルト8dの一端側を縫合する一方、後方切り欠き313における右半分領域の内縁315に長尺ベルト8cの一端側を縫合する。この段階では、長尺ベルト8cの自由端寄りの所定位置にプラグ8aが取り付けられていて、短尺ベルト8dの自由端にソケット8bが縫合されているものとする。
【0100】
次に、リア部4の製作手順を説明する。まず、
図10において、左側布生地401(左側構成面45に相当)の右辺402を中央布生地405の左辺406の長手方向中間部位に縫合し、右側布生地408(右側構成面46に相当)の左辺409を中央布生地405の右辺407の長手方向中間部位に縫合する。
【0101】
続いて、当該中央布生地405の前側約1/3の領域と後側約1/3の領域とを下向きに折り曲げるとともに、左側布生地401および右側布生地408をそれぞれ下向きに折り曲げる。
【0102】
この状態において、左側布生地401の前辺403と中央布生地405の左辺406における前側約1/3の領域とを縫合するとともに、右側布生地408の前辺410と中央布生地405の右辺407において前側約1/3の領域とを縫合する。
【0103】
さらに、左側布生地401の後辺404と中央布生地405の左辺406における後側約1/3の領域とを縫合するとともに、右側布生地408の後辺411と中央布生地405の右辺407における後側約1/3の領域とを縫合する。
【0104】
なお、左側布生地401の後辺404の左端側と中央布生地405の左辺406の下端側とを部分的に縫合しないようにすることによって、鍵孔42を作るようにしている。また、右側布生地408の後辺411の右端側と中央布生地405の右辺407の下端側とを部分的に縫合しないようにすることによって、鍵孔47を作るようにしている。
【0105】
続いて、中央布生地405の切り欠き412の左半分領域の内縁413と右半分領域の内縁414とを重ね合わせて、この重ね合わせ部位を縫合することにより、リア部4の後下部を幅狭にするとともに前方向に湾曲させる。
【0106】
この後、左側布生地401の前辺403の左端側に短尺ベルト9dの一端側を縫合し、さらに、右側布生地408の前辺410の右端側に長尺ベルト9cの一端側を縫合する。この段階では、長尺ベルト9cの自由端寄りの所定位置にプラグ9aが取り付けられていて、短尺ベルト9dの自由端にソケット9bが縫合されているものとする。
【0107】
次に、上記したフロント部3とリア部4を二輪車1に装着する手順を説明する。
【0108】
まず、準備段階として、二輪車1のハンドル18を左側に目一杯に動かすことによりハンドルロックできる状態にしておいて、サイドスタンド16で左側に傾いた姿勢にする。
【0109】
このような姿勢の二輪車1の後輪12側からリア部4の前開放部分を被せることにより、リア部4の後下部を後輪12の後下側に引っ掛けるようにしながら、後輪12からシート14の前端に至るまでの領域を覆う状態にする。
【0110】
この状態において、リア部4のプラグ9aを二輪車1のセンターカウル26の下部空間に二輪車1の右側から左側へ向けて差し入れて、ソケット9bに近づけて連結する。
【0111】
これにより、
図8に示すように、長尺ベルト9cと短尺ベルト9dとがセンターカウル26の下側に巻き付けられるとともに、リア部4において左側構成面45の前下部と右側構成面46の前下部とがセンターカウル26の下側に密着された状態になる。この状態では、リア部4が前後左右のいずれの方向に引っ張られても外れなくなる。
【0112】
そして、二輪車1の前輪11側からフロント部3の後開放部分を被せることにより、フロント部3の前下部を前輪11の前下側に引っ掛けるようにしながら、フロントカウル25からセンターカウル26の前後方向中間部位に至るまでの領域を覆う状態にして、スライドファスナー36を閉じる。このとき、フロント部3の最上部がハンドル18の右側バックミラー19の上端に引っ掛かった状態になる。
【0113】
この状態において、フロント部3のプラグ8aを二輪車1のセンターカウル26の前方下部空間に二輪車1の左側から右側へ向けて差し入れて、ソケット8bに近づけて連結する。
【0114】
これにより、
図6に示すように、長尺ベルト8cと短尺ベルト8dとがセンターカウル26の下側に巻き付けられるとともに、フロント部3の後左下部とフロント部3の後右下部とがセンターカウル26の下側に密着する状態になる。この状態では、フロント部3が前後左右のいずれの方向に引っ張られても外れなくなる。
【0115】
このようにして二輪車1にフロント部3およびリア部4を装着すると、フロント部3およびリア部4が雨や風等によりばたつくことを抑制できるとともに外れることを防止できるようになる。
【0116】
ところで、フロント部3およびリア部4を二輪車1に装着した状態では、前記した不図示の前輪ロック部材や後輪ロック部材を装着することが可能であるが、それらの装着動作については、一般的なワンピースタイプのカバーのそれと同様であるので、ここでの説明は割愛する。
【0117】
そして、フロント部3およびリア部4を二輪車1から取り外す場合には、フロント部3のプラグ8aをソケット8bから離脱させておいて、フロント部3の最上部を斜め上向きにかつ前方に引っ張ることで、比較的簡単に外すことが可能になる。
【0118】
また、リア部4についても、プラグ9aをソケット9bから離脱させておいて、リア部4の前上側を斜め上向きにかつ後方に引っ張ることで、比較的簡単に外すことが可能になる。
【0119】
以上説明したように、この実施形態においても、上記実施形態と同様の作用、効果が得られる。
【0120】
但し、この実施形態では、二輪車1のセンターカウル26の前後方向所定領域をフロント部3およびリア部4で意図的に覆うようにしていない。このようにしている理由を説明する。二輪車1がスクータータイプである関係より、仮にフロント部3およびリア部4をセンターカウル26の前後方向所定領域でオーバーラップさせるようにしていると、雨が降った後で前記オーバーラップ領域の上側に雨水が溜まることが予想される。このような雨水が溜まることを防止するために、フロント部3およびリア部4を意図的にオーバーラップさせずに、センターカウル26の前後方向所定領域を露呈させるようにしているのである。
【0121】
(2)上記実施形態に示した固定手段は、一実施形態であって、これのみに限定されるものではなく、例えば面ファスナー、あるいはそれ以外の公知の部材等とすることが可能である。
【解決手段】カバー2は、二輪車1の前輪11側を覆うためのフロント部3と、二輪車1の後輪12側を覆うためのリア部4とを含む構成とされている。フロント部3およびリア部4には、それぞれ個別に二輪車1に装着した状態を保持するための固定手段(5a,5b,5c,6a,6b,6c,7a,7b,7c,7d)が設けられている。