特許第6105113号(P6105113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105113
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】同調チャネルを伴うコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6471 20110101AFI20170316BHJP
   H01R 13/6477 20110101ALI20170316BHJP
   H01R 12/72 20110101ALI20170316BHJP
【FI】
   H01R13/6471
   H01R13/6477
   H01R12/72
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-46513(P2016-46513)
(22)【出願日】2016年3月10日
(62)【分割の表示】特願2014-525095(P2014-525095)の分割
【原出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2016-146352(P2016-146352A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/521,245
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/542,620
(32)【優先日】2011年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591043064
【氏名又は名称】モレックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】ケント イー レグニール
(72)【発明者】
【氏名】パトリック アール キャッシャー
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−532214(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/030638(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6471
H01R 12/72
H01R 13/6477
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタであって、
実装側及び嵌合側を有する筐体と、
該筐体に支持される第1のウェハであって、第1の端子を含む複数の端子の第1組を支持する第1のウェハと、
前記筐体に支持され、前記第1のウェハの隣に位置する第2のウェハであって、第2の端子を含む複数の端子の第2組を支持する第2のウェハと、
前記筐体に支持され、前記第2のウェハの隣に位置する第3のウェハであって、第3の端子を含む複数の端子の第3組を支持する第3のウェハと、
前記筐体に支持され、前記第3のウェハの隣に位置する第4のウェハであって、第4の端子を含む複数の端子の第4組を支持する第4のウェハとを備え、
前記第1〜第4のウェハは組をなし、前記第1〜第4の端子は各々トラスによって支持され、該トラスは、第1〜第4の端子のそれぞれの両側に空隙が形成されるように、第1〜第4の端子のそれぞれの両側に位置付けされたチャネルであってウェハを厚さ方向に貫通するチャネルによって画定され、該チャネルはウェハがそれぞれの端子を支持する距離の過半にわたって延在し、前記第1〜第4のウェハはグランド、信号、信号、グランド同調伝送チャネルを提供する、
コネクタ。
【請求項2】
前記トラスは、コネクタの第1の側から第2の側へ実質的に延在する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1の側は前記嵌合側に隣接し、前記第2の側は前記実装側に隣接する、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記トラスは、前記第1の側において水平方向に延在し、前記第2の側において垂直方向に延在する、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1、第2、第3及び第4組の各端子はそれぞれのトラスによって支持される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1、第2、第3及び第4組の各組における端子のうちの2つは第1のカードスロットに延在する、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第1、第2、第3及び第4組の各組における端子のうちの他の2つは第2のカードスロットに延在する、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1、第2、第3及び第4の各端子を支持するトラスは、それぞれ、各端子と位置合わせされた第1、第2、第3及び第4の空気チャネルであって、各端子を露出させる空気チャネルを有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記第1、第2、第3及び第4の空気チャネルは、それぞれ、第1、第2、第3及び第4の幅であって、同一でない第1、第2、第3及び第4の幅を有する、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記第1及び第2の端子間の電気的結合に関連する第1の誘電定数と、前記第2及び第3の端子間の電気的結合に関連する第2の誘電定数と、前記第3及び第4の端子間の電気的結合に関連する第3の誘電定数とがあり、前記第1及び第3の誘電定数は第2の誘電定数と異なる、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記第1及び第3の誘電定数は、実質的に同じである、請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
少なくとも1つのポートを画定するケージを更に備え、該ケージは、該ケージの両側に位置するケージ前部及びケージ後部を有し、前記筐体は、前記ケージ後部に隣接し、前記ケージ前部から離間している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記筐体はカードスロットを画定し、前記第1、第2、第3及び第4の端子は前記カードスロットの一側に位置する、請求項12に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、両方とも参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、2011年8月8日に出願された米国仮特許出願第61/521,245号、および2011年10月3日に出願された米国仮特許出願第61/542,620号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、コネクタの分野に関し、より具体的には、より高いデータ転送速度に好適なコネクタの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
適度に高いデータ転送速度に好適なコネクタが知られている。例えば、Infiniband Trade Associationは、1チャネル当たり10Gbpsの12チャネルコネクタを必要とする標準を承認した。同様のコネクタは、他の標準での使用が承認されている、またはその承認過程である。加えて、4チャネルシステムにおいて1チャネル当たり10Gbpsを提供するコネクタもまた使用されている(例えば、QSFP型コネクタ)。これらの既存のコネクタは、10Gbpsチャネルでの使用に非常に好適である一方、将来の通信要件では、16Gbpsまたは25Gbps等のデータ転送速度が必要になると見込まれている。既存のIOコネクタは、とてもこれらの要件を満足することができるように、およびこれらのより高いデータ転送速度を適正にサポートすることができるようには設計されていない。さらに、素晴らしい性能を提供する既存の技術は、費用がかかる、または他の負の副次的影響を及ぼす。それ故に、コネクタシステムにおけるさらなる改善が、特定の個人に喜ばれ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
同調データチャネルを伴うコネクタが提供される。データチャネルは、複数の端子を支持するウェハを含むことができる。隣接するウェハ内の端子は、ブロードサイドが共に結合されるように構成される。ウェハ構造および各端子は、比較的高速なデータ転送速度をサポートすることができる同調チャネルを提供するように構成される。実施形態では、同調は、異なる長さのチャネルで異なるように構成することができる。別の実施形態では、同調を、グランドウェハおよび信号ウェハで異ならせることができる。
【0005】
本発明は、一例として図示され、同様の参照番号が類似要素を指す添付の図面に限定されず、図面は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】例示的なコネクタシステムの実施形態の斜視図である。
図2図1に描写される実施形態の分解斜視図である。
図3】部分分解簡略化コネクタシステムの斜視図である。
図4】ウェハのセットの実施形態の部分分解斜視図である。
図5】ウェハの実施形態の立面側面図である。
図6図4に描写される実施形態の線6−6に沿った断面の立面正面図である。
図7図6に描写されるウェハセットの斜視図である。
図8図7に描写される実施形態の立面正面図である。
図9図8に描写される実施形態の拡大図である。
図10】ウェハセットの実施形態の斜視図である。
図11】例示的なコネクタシステムの別の実施形態の斜視図である。
図12】コネクタの実施形態の斜視図である。
図13図12に描写されるコネクタの部分分解斜視図である。
図14図13に描写される実施形態の別の斜視図である。
図15図13に描写される実施形態の別の斜視図である。
図16図13に描写されるウェハセットの4つのウェハの簡略化斜視図である。
図17図16に描写される実施形態の別の斜視図である。
図18図16に描写される実施形態の分解斜視図である。
図19図16に描写されるウェハの一部分の拡大図である。
図20図19に描写されるウェハのうちの1つの一部分の別の斜視図である。
図21図16に描写される実施形態の線21−21に沿った断面の立面正面図である。
図22図21に描写される実施形態の拡大図である。
図23図16に描写される実施形態の線23−23に沿った断面の立面正面図である。
図24図23に描写される実施形態の拡大図である。
図25】例示的なコネクタシステムの別の実施形態の斜視図である。
図26図25に描写される実施形態の部分分解斜視図である。
図27図25に描写される実施形態の簡略化部分分解斜視図である。
図28図27に描写されるコネクタの簡略化斜視図である。
図29図28に描写される実施形態の部分分解斜視図である。
図30図28に描写される実施形態の線30−30に沿った断面の斜視図である。
図31図30に描写される実施形態の立面正面図である。
図32図31に描写される実施形態の一部分の拡大斜視図である。
図33図30に描写される実施形態の線33−33に沿った断面の斜視図である。
図34図30に描写される実施形態の線34−34に沿った断面の斜視図である。
図35】12dB尺度での挿入損失のプロットを図示する。
図36】1dB尺度での挿入損失のプロットを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明は、例示的な実施形態を記載し、明示的に開示される組み合わせに限定されることは意図されない。したがって、特に断りのない限り、本明細書に開示される特長は、簡潔さのために特に示されていない追加の組み合わせを形成するように、共に組み合わせられてもよい。
【0008】
本明細書に開示される図面から理解することができるように、筐体と、積層IOポートを提供するケージとを含む、特定の実施形態が開示される。ポートを積層することによって、レセプタクルを通して基板に結合することができるケーブルコネクタの密度を増加させることができる。しかしながら、特定の特長は、シングルポートレセプタクル(各ポート内に2つのカードスロットを有しても有さなくてもよい)に容易に使用することができるため、本明細書に開示される特長は、積層レセプタクルに限定されず、また、3つ以上のポートが積層される設計にも使用することができる。大部分の状況では、ポートがすべて同一の機能性を提供することが意図される場合、2つの積層ポートが最大の性能対費用(少なくともレセプタクルの観点から)をもたらすことが分かった。当然、システムレベル性能および費用は、異なる結果となり得る。
【0009】
理解することができるように、描写される実施形態では、端子の経路に沿って端子溝が提供される。一般的に、端子溝の使用は、端子の誘電定数を制御するのを助長するのに有用であることが証明されており、2つの端子間の結合の斜行を管理するのを助長するため、および/または2つの端子間の結合を制御するのを助長するために使用されてきた。しかしながら、今まで、これらの努力は、信号周波数が増加される際に生じる問題に完全に対処していない。例えば、NRZ符号化システムにおいて、データ転送速度が28Gbpsに近づく際、コネクタシステムが14GHzまで正常に機能することが有益であり、多くのアプリケーションでは、コネクタシステムが20〜21GHz(例えば、ナイキスト周波数)まで正常に機能することが好ましい。
【0010】
電気的に言えば、単一のカードスロットを伴うSMT型レセプタクル等の非常に短いコネクタでは、コネクタがとても短いため、一部において技術的な問題を最小限にすることが可能である。しかしながら、端子の電気的長さが増加すると、端子とレセプタクルコネクタの接合部分での反射エネルギーとの間(例えば、レセプタクルコネクタと支持回路基板との間、およびレセプタクルコネクタと嵌合プラグコネクタとの間)のクロストークによって共振が生じる可能性がある。したがって、これに対処するために、コネクタに、グランド端子をコモニング(同極化)するのを助長する、ピンまたは他の電気素子が提供される場合がある。これは、グランド端子の電気経路を短くするのを助長し、一般的に、そうでなければ信号を提供するエネルギーが信号端子を通過する際にグランド端子に生じる意図されないモードによって引き起こされ得る関心のある信号周波数での共振を回避するのを助長する。加えて、ある個人は、損失材料を追加することによって、グランド端子内を伝搬されるエネルギーに対処することを試みた。
【0011】
上記の方法は、有用である可能性がある一方、それらには、特定の欠点があることが分かっている。損失材料の使用は、例えば、エネルギーの損失をもたらし、総チャネル長に望ましくない効果を有し得る(特に、信号が対応するチャネルに沿って進行するだけで急速に減衰される、より高い周波数で)。ピン止めは、このエネルギー損失は回避するが、アセンブリに費用および複雑性を追加する傾向がある。
【0012】
コネクタの性能を改善するのを助長するために、一対の信号を慎重に同調された伝送チャネルとして取り扱うことは、従来の解決策に関連する問題なく、大幅に性能を改善する可能性があることが分かった。しかしながら、伝送チャネルを同調させる従来の試みとは異なり、本明細書に提供される開示は、大幅に優れて機能する同調伝送チャネルを可能にした。同調伝送線は、グランドコモニング等の他の特長の必要性を除去することができるが、依然として、同調伝送チャネルと共にグランドコモニングを使用することができる(例えば、FEXTおよび/またはNEXTが十分に問題である場合)という可能性があることに留意されたい。典型的に、同調伝送チャネルは、コネクタの性能目標を満足するのに十分であろう。
【0013】
一般的に言えば、筐体と、ケージとを含むレセプタクルを提供することができ、レセプタクルは、ブロードサイド結合端子を提供するように構成される。ブロードサイド結合端子は、組み立てる前に筐体に組み合わせることができる、または筐体に直列に挿入されてもよい、別個のウェハによって支持される。ブロードサイド結合端子は、望ましく同調される場合に、NRZ符号化を使用する16Gbpsを超えるデータ転送速度で、許容可能な電気的性能を提供することができる、同調伝送チャネルを可能にする。もちろん、また、描写される実施形態は、データ転送速度が16Gbps未満のシステムでも使用することができ、したがって、特に断りのない限り、可能なデータ転送速度は、限定であることは意図されない。
【0014】
図1図10は、上部および下部ポート上に同調伝送チャネルを提供することができる実施形態の詳細を図示する。コネクタシステム10は、複数の上部ポート11aおよび下部ポート11bを提供するケージ20を含む。ケージ20は、ケージ本体21と、ケージ床部22と、ケージ後部25と、ケージ前部23と、ガスケット24と、ベゼル29(ケージ前部およびガスケットに適合する開口部を含む限り、任意の望ましい形状であってもよい)とを含む。コネクタシステム10は、回路基板15上に実装することができ、ポート間に位置付けられる任意選択の挿入部26を含むことができ、また、光導体28も含んでもよい。筐体50は、ケージ20内に位置付けられ、ウェハセット60を支持し、同時に、2つのカードスロット51aおよび51bを提供する。
【0015】
実施形態では、理解することができるように、カードスロット51a/51bはそれぞれ、単一の嵌合プラグコネクタと接合することが意図され、それぞれのカードスロット51aおよび51bは、1つの伝送および受信伝送チャネルを提供する(したがって、典型的に1Xポートと称される伝送チャネルを提供する)。以下にさらに記載されるように、例えば、4Xまたは10Xポートであるが、これらに限定されない、いくつかの他の数の伝送チャネルを各ポート内に提供することができる。
【0016】
ウェハセット60は、ウェハ61a、61b、61c、および61dを含む、複数のウェハを含む。実施形態では、61aおよび61dは同一であってもよいが、本明細書では、明確化のために、別個の番号が付けられている。各ウェハは、同調チャネルを含み、したがって、ウェハ61aは、同調チャネル62aを有し、ウェハ61bは、同調チャネル62bを有し、ウェハ61cは、同調チャネル62cを有し、ウェハ61dは、同調チャネル62dを有する。また、各ウェハに、図5に描写される同調チャネル63b等の追加の同調チャネルも提供することができる。したがって、同調チャネルの数は、所望のコネクタ構成に依存する。
【0017】
理解することができるように、単一の同調チャネルは、所望のデータ転送速度で動作することができる伝送チャネルを提供するには不十分である。一般的に、伝送チャネルが所望のデータ転送速度で動作し、かつスプリアスノイズに対する十分な耐性を提供するためには、差動結合が必要である。したがって、伝送チャネルは、少なくとも2つの信号同調チャネルを含むと予想され得る。実際には、典型的に、基準またはグランド端子が有益であり、多くの場合、ブロードサイド結合信号対の両側にグランド端子を有することが望ましい。したがって、描写される伝送チャネルは、グランド同調チャネル(62a)と、第1の信号同調チャネル(62b)と、第2の信号同調チャネル(62c)と、グランド同調チャネル(62d)とを含む。伝送チャネルの平衡性質(例えば、グランド、信号、信号、グランド構成)は、伝送チャネル性能に有益な影響をもたらすことが分かった。
【0018】
図5は、信号ウェハ61bの立面側面図であり、端子はそれぞれ、尾部51を含む。尾部の設計は、所望に応じて調節することができ、圧入係合(示されるような針の目構築を使用した)またはいくつかの他の所望の尾部構成のために構成することができる。同調チャネル62bは、第1の縁部75bと、第2の縁部76bとを有するトラス74bを含む。図9および図10から理解することができるように、また、各トラスは、ウェハ61aの端子溝77aおよび78a、ウェハ61bの端子溝77b、78b、ウェハ61cの端子溝77c、78c、ならびにウェハ61dの端子溝77d、78d等の端子溝も含む。
【0019】
理解することができるように、端子79a〜79dは、Wg=Wsとなるように寸法決定される。これは、要求されず(図21および図22から理解することができるように)、一般的に、方程式Wg≧Wsは、許容可能な性能を提供する。加えて、特定の状況では、Wg<1.5(Ws)は、望ましい性能を提供する有用限界を提供する。理解することができるように、Tgは、Tsと等しいように示されている。しかしながら、方程式Tg≦Tsは、大部分の用途において好適な性能をもたらし、したがって、必ずしもTs=Tgである必要はないことに留意されたい。
【0020】
特定のモデルでは、端子溝の高さを調節することが有益である可能性があることが分かった。例えば、高さHsおよびHgを、Hg>Hsとなるように調節することによって、多くの場合、同調伝送チャネルの性能を大幅に改善することができる。特定の実施形態では、TgがHgの少なくとも2倍である、好ましくはTgがHgの少なくとも3倍である場合、さらなる改善が可能である。しかしながら、Hg対Hsの好ましい比率は、Wg、Ws、Tg、およびTs(ならびにそれらの比率およびウェハに使用される材料)に依存するため、Hg対Hsの比率の実際の選択は、当業者の範囲内であり、以下にさらに記載されるANSYS HSFFソフトウェアを使用した、ある反復法を必要とする可能性が高い。
【0021】
3つのウェハシステムを用いて、Hg>Hsを提供する、繰り返しのグランド、信号、信号パターンを提供することが可能であることが発見された。描写される実施形態は、上列および下列の端子に沿って機能することに留意されたい。必然的に、十分な垂直空間によって、中央の2列の端子もまた、同調伝送チャネルを提供することができる。しかしながら、2つの差動信号対(1つのTXおよび1つのRXチャネル)のみを必要とする用途(SFP型用途等)では、描写される実施形態は、第1および第2のSFPケーブルをコネクタに嵌合し、同時に、両方に高データ転送速度をもたらすことを可能にする(描写される構成および任意選択の構成では、プラグのうちの1つが上下逆であってもよいことが理解される)。
【0022】
図11図24は、カードスロット151aを有するポート111aと、カードスロット151bを有するポート111bとを伴う、ケージ120を含む、コネクタ110の実施形態を図示する。筐体150は、ケージ120内に位置付けられ、筐体150は、ウェハセット160を支持する。描写されるように、筐体は、ウェハセット160を適切な位置に固定するのを助長する後部支持体150aを含む。加えて、ウェハセット160が、3つの別個のウェハを含む際、後部支持体150aは、陥凹輪郭142(陥凹142aおよび142bによって描写されるように形成される)と合致する突出輪郭152を含む。筐体150は、確実にウェハセット160が筐体150に適切に挿入されるようにするのを助長するように、上部輪郭143に係合する、肩輪郭158を含む。具体的には、ウェハ上部輪郭143a(グランドウェハの一部である)は、ウェハ上部輪郭143b(信号ウェハの一部である)とは異なり、したがって、確実に上部輪郭143が肩輪郭158と整合されるようにするのを助長する。所望により、輪郭の追加の変形を使用することができる。これらの嵌合/合致輪郭の利益は、筐体150に対するウェハセット160の位置の改善された制御である。加えて、輪郭は、確実に適正なウェハ構成が使用されるようにする、追加の確認を提供することができる(例えば、グランドおよび信号ウェハの適切なパターンのみ組み立てることができる)。
【0023】
描写されるように、ウェハセット160は、ウェハセットの端部上に描写される信号ウェハ161cを含み、また、グランドウェハ161aも、ウェハセット160の端部上に提供することができることが理解される。各ウェハは、改善された信号性能を提供する、同調チャネルを提供することができる。ウェハ構築において従来的であるように、各同調チャネルは、接触部から尾部に延在する本体を伴う端子(端子199a〜199d等)を含む。
【0024】
3つのウェハシステムの実施形態では、ウェハは、グランドウェハ161a、信号ウェハ161b、信号ウェハ161c、およびグランドウェハ161dパターンで配設することができる(ウェハは、両側がグランドウェハによって包囲された、または端部が余剰なグランドウェハによって包囲された、2つの信号ウェハを効率的に提供する、繰り返しパターンを提供するように構成されるという理解のもと)。もちろん、所望により、いくつかの他の数のウェハを使用することができる。
【0025】
描写されるパターンは、グランドウェハ161a内の同調チャネル162aと、ウェハ161b内の同調チャネル162bと、ウェハ161c内の同調チャネル162cと、ウェハ161d内の同調チャネル162dとを含む。したがって、4つの同調チャネルは、左から右に並んで162a、162b、162c、162dと提供され、同調伝送チャネルを形成する。信号端子を包囲するトラスの寸法は、グランド端子を包囲するトラスの寸法とは異なってもよいことに留意されたい。しかしながら、以下にさらに記載されるように、そのような同調はすべての場合に要求されるわけではない。グランドおよび信号対上のトラスおよび端子が異なる寸法を有することの利益は、ANSYS HSFFソフトウェアで簡略化チャネルを適切に同調させる所望の構成を見つけるのがより容易である場合があることである(以下に記載されるように)。
【0026】
描写されるように、Hg>HsおよびWg>Wsである。より大きい端子本体の使用は、隣接する同調伝送チャネル間に遮蔽を提供する(および潜在的にクロストークを低減する)のを助長する。2つの端子間のより小さい端子溝の使用は、2つの信号端子間のエネルギーを集束させるのを助長すると考えられ(空気は、ウェハによって形成されるプラスチックより低損失な媒体である)、したがって、また、クロストークを低減するのも助長する。特定の実施形態では、サイズの比率は、Hg=1.1(Hs)〜約Hg=1.4(Hs)の範囲に及ぶことができる。Hgの選択は、それぞれのトラス厚Tg、Tsに加えて、所望のインピーダンスおよび端子のサイズの幅にいくらか依存することに留意されたい。Hgが十分に小さい場合、HsをHgより小さく設定することが困難となり、信頼性のある製造プロセスを可能にすることが困難となる。そのような状況では、Hsをゼロに設定することができる。しかしながら、Hsがゼロより大きい場合、Hg<1.5Hsであることが好ましい。そして、以下の記載から理解することができるように、また、他の因子が適切に寸法決定されるとすると、Hg=Hsであることも可能である。
【0027】
上記から理解することができるように、同一の端子厚が使用されるとすると、端子の幅、端子の両側に提供される空気溝の高さ(空気溝が提供されるとすると)、およびトラス厚を変化させることが可能である。これらの因子の組み合わせは、差動信号対として機能する2つの信号端子によって提供される、結果としてもたらされる通信チャネルの性能を、各ウェハの設定が一定に保たれる場合(例えば、各端子本体の周囲に提供されるチャネルが同調されていない場合)に可能であり得る性能より優れた性能にすることを可能にする。
【0028】
理解することができるように、特定の実施形態では、カードスロット当たり1列の端子のみがトラスを伴って構成される。他の実施形態では、上列の端子および下列の端子の両方がトラスを含んでもよく、また、好適な性能を提供するように構成される空気路も含んでもよい。
【0029】
特定の実施形態では、上部カードスロットと関連付けられる端子は、図11図24に描写されるように、下部カードスロットと関連付けられる端子より実質的に長い。理解することができるように、上部ポート111aおよび下部ポート111bを提供するケージ120を有するコネクタ110が開示される。コネクタ110は、ケージ120内に位置付けられる筐体150を含み、筐体150は、ポート111a、111bとそれぞれ整合される第1のカードスロット151aおよび第2のカードスロット151bを含み、筐体150は、後部支持体150aと共に、ウェハセット160を支持する。改善された空気流のために、筐体は、筐体の前面から後面に延在する空気路154を含み、有利に、モジュールが対応するポートに挿入されていない場合に、筐体150および後部支持体150aによって支持されるウェハ161a内の同調チャネル162a、182a、192a、132aと共に、構造的支持および改善された空気流の両方を提供する。
【0030】
ウェハセット160は、第1のウェハ161aと、第2のウェハ161bと、第3のウェハ161cと、第4のウェハ161dとを含む。描写されるように、第1および第4のウェハは、同一に構成され、一方、第2および第3のウェハは、異なるように構成される。したがって、描写されるシステムは、3つのウェハが繰り返すシステムと見なすことができる。ウェハをグランド−信号−信号の繰り返しパターンに整合させることによって、各対の信号ウェハ(筐体に挿入される前に共に接続されてもよい)に、グランド、信号、信号、グランド構造が提供され、同調伝送チャネルを提供する。これは、各同調伝送チャネルが、高データ転送速度を必要とする用途に好適なように構成され、各差動対がグランド端子によって分離される、接触部の列を可能にする。
【0031】
描写されるように、各ウェハ161a〜161dは、4つの同調チャネルを有し、ウェハ161aは、同調チャネル162a、163a、164a、および165aを有し、一方、ウェハ161bは、同調チャネル162b、163b、164b、165bを有する。同様に、ウェハ161cは、同調チャネル162c、163c、164c、および165cを有する。ウェハ161d(ウェハ161aの繰り返しである)は、同調チャネル162d、163d、164d、および165dを有する。それぞれの描写されるウェハは、端子と整合される端子溝を有し、端子を支持するトラス(ウェハ161a〜161d内の最上部端子をそれぞれ支持するために使用されるトラス174a〜174d等)を含む。したがって、また、描写されるウェハ161dは、トラス184d、194d、および134dも含み、一方、ウェハ161cは、下部カードスロット151bのためのトラス194cおよび134cを含んでもよく、ウェハ161bは、トラス184b、194b、および134bを含む。各トラスは、概してTと称することができる厚さを有し、信号端子は、それらが平衡化通信チャネルを提供するように、同一の厚さのトラスを有することができる。したがって、トラス194bおよび194cは、同一の厚さTsを有する。しかしながら、描写されるように、トラス194aおよび194d(グランド端子を支持するトラスである)は、Tsより大きい厚さTgを有する。理解することができるように、複数の特長によってトラス厚を画定することができる。例えば、上述されるように、スロットおよび/またはウェハの縁部によって、トラス厚を画定することができる。必然的に、溝、縁部、および開口の任意の所望の組み合わせによって、トラス厚を画定することができる。その点について、ウェハの縁部付近の同調チャネルは、ウェハ縁部によって部分的に画定するのに非常に好適であり、一方、縁部からある距離横断する同調チャネルは、溝および/または開口の組み合わせによって画定するのにより好適である。
【0032】
図21図24は、上部ポートおよび下部ポートの両方に高データ転送速度を提供するように構成される積層構成(2つのポートで使用することが意図される、図12に描写される2つのカードスロット等)で望ましい性能を提供するために使用することができる、同調伝送チャネルの詳細を図示する。また、そのような構成は、各ポートに積層カードスロットを提供するコネクタ構成(INFINIBAND仕様によって定義されるCXP型コネクタまたはSAS/SATA仕様によって定義されるminiSAS HD型コネクタで提供されるもの等)にも使用することができる。
【0033】
上述されるように、幅Wgを伴うグランド端子199a、199d、幅Wsを伴う2つの信号端子199b、199cを提供する、グランド、信号、信号、グランドパターンの端子199a〜199dを提供するように、ウェハを構成することができる。信号端子間の端子溝197a〜197d及び198a〜198dは、高さHsを有し、グランド端子と信号端子との間の端子溝は、高さHgを有する。描写されるように、信号間の端子溝は、信号/グランドおよびグランド/グランドの両方の組み合わせの間の高さHgより小さい高さHsを有する。したがって、信号ウェハは、2つの異なる高さを伴う端子溝を有し、別の信号ウェハに隣接する側の端子溝の高さは、反対方向を向く端子溝の高さより小さい。
【0034】
電気的性能をさらに向上させるために、信号端子本体を支持するトラスは、グランド端子を支持するトラス厚Tgより大きい厚さTsを有する。しかしながら、グランド端子本体の幅Wgは、信号端子本体の幅Wsより大きい。したがって、描写されるように、グランド端子199a、199dは、より幅が広く、一方、グランドトラスは、より薄い。上述されるように、各値の範囲の所望の組み合わせは、選択される材料および所望の性能ならびに端子のピッチに依存する。
【0035】
用途の潜在的な範囲に関して、1つの可能な用途は、0.75mmのピッチを有することができる。従来的な高データ転送速度IOコネクタ(SFPまたはQSFPコネクタ等)は、典型的に、0.8mmピッチを有する。0.75mmのピッチは、0.8mmのピッチと酷似するが、製造ばらつきにずっと敏感であることが分かっており、性能を調整することは、実質的により困難である。性能ニーズに対処する1つの潜在的な方法は、オフセット構築を使用することである。例えば、図22について理解することができるように、信号端子は、距離D1が距離D2と等しくないため、オフセットされる。これは、一方の側に他方の側より深い空気溝を有することによって補償することができる一方、結果としてもたらされる構成は、信号対を包囲する誘電材料が同一ではないため、不平衡な同調チャネルを提供する可能性があることが分かっている。これは、潜在的に、信号対に、一方のグランド端子での、他方グランド端子での意図されないモードより強い、意図されないモードを形成させ、これは、より高いレベルのクロストークをもたらす可能性がある。特にピッチが0.75mmである場合に有用であることが分かっている、1つの可能性のある解決策は、2つの信号端子間の中央に延在するが、ウェハ縁部からオフセットされている中心線C1が、両側に実質的に同一の誘電材料の断面積を有するように、任意選択の切り欠きN(破線で示されている)を提供することである。
【0036】
理解することができるように、縁部169aおよび縁部168bは、トラス194aとトラス194bとの間に、それらの間に空間が存在するように構成される。対照的に、トラス194bのウェハ161bの縁部169bおよびトラス194cのウェハ161cの縁部168cはそれぞれ、それらが同一平面上になるように位置付けられる。要求はされないが、信号ウェハを、それらが相互に対して同一平面上になるように位置付けることは、ある追加の減衰レベルを提供するのを助長するため、チャネルがより短い場合(積層コネクタの下部ポートを支持するチャネル等)に、より優れた性能を発揮する同調チャネルを提供する傾向があると判断された。
【0037】
しかしながら、幾分驚いたことに、特定の実施形態では、上部ポートの同調伝送チャネルは、ウェハがわずかに離間している(例えば、信号ウェハ間にウェハ−ウェハが存在する)場合に、より優れた性能をもたらすことが分かった。例えば、図24に描写される同調伝送チャネルは、トラスが図22に描写されるものと同様の構成を有するように、表面175a〜175dおよび表面176a〜176dによって画定されるトラス厚を伴う、トラス174a〜174dを図示する。また、トラスは、図21および図22の端子幅WgおよびWsに対して端子幅Wg’およびWs’を有する端子も支持する。加えて、177a〜177dおよび178a〜178d等の端子溝は、図22に描写される端子溝の高さと同様に変化するHg’およびHs’を伴う高さで構成される。しかしながら、図21および図22の伝送チャネルとは異なり、図23および図24の伝送チャネルは、信号ウェハの縁部間に空間を有する。別の言い方をすれば、縁部169aおよび168cは、トラス174bとトラス174cとの間に空間が提供され、一方、トラス194bとトラス194cとの間の空間が削除されるように構成される。
【0038】
したがって、図21および図22は、下部伝送チャネルの断面の実施形態を表し、一方、図23および図24は、上部伝送チャネルの断面の実施形態を図示する。図23および図24では、信号端子間の空気溝の高さHs’は、図21および図22の高さHsが高さHgより低いように、信号/グランドまたはグランド/グランドの間の高さHg’より低い。信号端子幅Ws’は、グランド端子幅Wg’以下である(示されるように)ことができる。しかしながら、上述されるように、信号端子を支持するトラスの厚さTs’は、グランド端子を支持するトラスの厚さTg’以上である(示されるように)。
【0039】
下部同調チャネルと同様に、中心線C2の両側の誘電材料を平衡化する方法で誘電材料が提供されるように、切り欠きN1を提供することができる。したがって、切り欠きN1の使用は、より高いデータ転送速度向けのシステムのさらなる向上をもたらし、より短い同調チャネルおよびより長い同調チャネルの両方に使用することができる。加えて、切り欠きの使用は、0.75mmピッチのシステムに有益であることが発見された。
【0040】
描写される実施形態の利益の一部は、より長いチャネルが、本質的に、より大きい損失を有する(したがって、より長いチャネルは、ウェハ−ウェハ間隙が取り除かれる場合にもたらされる増加した減衰から得られる利益がより少ない)ということである。例えば、下部カードスロット内の端子の下部列と関連付けられる端子を、上部カードスロットの上部列と関連付けられる端子の長さの半分未満にすることができる。このチャネル長の差は、それぞれのデータチャネル(例えば、上部および下部データチャネル)の性能の管理に関する異なる問題を生じる傾向がある。結果として、下部データチャネルを、隣接するウェハが相互に対して同一平面上に位置付けられる(隣接するトラス間に実質的に間隙が存在しない)ように構成することができる。しかしながら、上部データチャネルでは、フレームを小さい距離(0.1mm未満、および潜在的には0.05mm未満等)だけ分離させることができる。可変の分離を提供することの利益は、下部ポートが、短い同調チャネルの減衰を増加させるために、分離を削除することができ、一方、上部ポートは、より長い同調チャネルを有する際、増加したチャネル長のために必然的により大きい減衰を含むため、分離によって提供される効率の改善を生かすということである。したがって、少量の分離を含むことは、まさに、より長いチャネルが、上部および下部チャネルの相互に対する性能を平衡化するのを助長する。
【0041】
上記の実施形態は、各ウェハ内に複数のチャネルを含むが、代替えの実施形態では、ウェハは、単一の同調チャネルを支持してもよいことに留意されたい。理解することができるように、切り欠きの使用および分離のレベルは、効率を増加させる必要があるか否か、または同調チャネルにある追加の減衰を追加する必要があるか否かに依存し得る。
【0042】
図25図34は、コネクタの代替えの実施形態の特長を図示する。理解することができるように、コネクタ210(完全コネクタの簡略化部分実施形態である)は、2つのカードスロット251a、251bを提供し、PCB215によって支持される、筐体250(ウェハセット260の構築に関する追加の詳細を提供するために、部分的に描写される)を含む。動作中、嵌合状態に影響を及ぼすように、縁部カード214a、214bを嵌合コネクタによって支持し、対応するカードスロットに挿入することができる。コネクタ210は、ウェハ261a、261b、261c、および261d(ウェハ261aおよびウェハ261dは、複製ウェハであってもよく、したがって、261aおよび261dが同一のウェハである、261a、261b、261c、261d、261b、261c、261dのウェハパターンを効率的に提供することが理解される)を含む、ウェハセット260を有する。
【0043】
各ウェハは、4つのトラスを含む。例えば、ウェハ261aは、トラス274a、284a、294a、および234aを含み、各トラスは、同調チャネルを提供する。4つのウェハは共に(グランド、信号、信号、グランド構成で)、同調伝送チャネルを画定し、描写されるように、図30に描写される実施形態では垂直方向に離間した4つの同調伝送チャネルを提供する。例えば、1つの同調伝送チャネルは、トラス274a、274b、274c、および274dによって画定される。描写されるように、トラス274aの表面275aおよび276aは、トラス274bの表面275bおよび276bと同一となるように構成される(例えば、Tg’は、Ts’と同一である)。加えて、Hg”は、Hs”と同一であり、Tg”=Ts”であり、端子279aおよび279bの幅は、同一ではなく、端子279aは、端子279bの幅Ws”より大きい幅Wg”を有する。したがって、同調伝送チャネルは、同一の高さである端子溝277a、278a、277b、278b、277c、および278cで構成され、同一の厚さを伴うトラスを有し、信号端子がグランド端子と比較して異なる幅を伴う端子を有する(ウェハ261aは、ウェハ261dと同一であることが理解される)。
【0044】
トラスは、同様に寸法決定されているように見えるが、端子の各対の間の結合(例えば、G−SまたはS−SまたはS−G)と関連付けられる誘電定数は、同一ではないことに留意されたい。具体的には、ウェハ261a(グランドウェハ)の縁部269aとウェハ261b(信号ウェハ)の縁部268bとの間の空間は、ウェハ261bの縁部269bとウェハ261cの縁部268cとの間の空間より大きい。相対オフセットは、信号対を形成する端子のそれぞれを、それらの相互との関係と比較して、隣接するグランド端子からオフセットさせる。別の言い方をすれば、差動対を形成する一対の端子間の結合と関連付けられる誘電定数は、信号端子と隣接するグランド端子との間の結合と関連付けられる誘電定数とは異なる。同調伝送チャネルを、この差が差動対に対して対称となるように平衡化することは、高データ転送速度(NRZ符号化システムにおける16Gbpsまたはさらには25Gbps等)が可能な同調伝送チャネルを提供するのに有益であると考えられる。したがって、特定の用途では、同一の幾何学形状が両方の伝送チャネルでうまく機能するように、より長い伝送チャネルおよびより短い伝送チャネルを、反復的に同調させることが可能である。しかしながら、特定の用途では、より短い同調伝送チャネルおよびより長い同調伝送チャネルで、異なる幾何学形状を有することが好ましい場合がある。
【0045】
理解することができるように、伝送チャネルを同調させることは、高データ転送速度をサポートすることが意図される用途に有用である。そのような用途では、幾何学形状の小さい変化でさえ、意図されない影響を及ぼす可能性がある場合が多い。これは、溝内の間隙およびリブ内の空洞(モールドを適切に充填することを可能にするためにしばしば要求される)が、電気的性能問題を引き起こす可能性があることを意味する。伝送チャネルの応答をスムーズに保つのを助長するために、この問題に対処する1つの潜在的な方法が、図33および図34に描写されている。具体的には、端子溝は、端子溝の2つの側間の充填線としての機能を果たすプラスチックのリブによって遮断される。リブの影響を最小限にするために、第1の側のリブは、第2の側のリブからオフセットされる。これは、伝送チャネルの経路に沿った誘電定数の変化を最小限にするのを助長する。加えて、これは、グランド端子/信号端子結合と信号端子/信号端子結合との間の誘電定数の相対差の変化を最小限にする。
【0046】
上述から理解することができるように、同調伝送チャネルを提供する、同調チャネルの様々な構成を提供することができる。トラス厚、端子幅、端子溝高さ、およびウェハ−ウェハ間隙等の寸法はすべて、所望の同調伝送チャネルを提供するように修正することができる。チャネルが好適に同調されているか否かを判定するために、ANSYS HSFFソフトウェアで簡略化モデルを使用することが有益であることが分かった。例えば、HSFFで、トラスの幾何学形状(その厚さおよび端子溝高さを含む)ならびに端子を含む、単純な25mmモデルを生成することができる。当業者に既知であるように、単純なモデルが好適に同調されているかを見るために、図35に描写されるような挿入損失プロットを生成することができる。出願人が留意する1つの問題は、挿入損失が10または12dBの範囲を見る従来の方法論が、挿入損失のいくらかの低下(除去することが望ましい共振であると考えられる)を、比較的重要ではないように見えさせるということである。出願人は、図36に示されるように尺度を1dBに縮尺することが、伝送チャネルが望ましく同調されているか否かを判定するのに有用であると判断した。
【0047】
理解することができるように、上部破線は、十分に同調された伝送チャネルを示し、一方、下部線は、それほど望ましく同調されていない伝送チャネルを表す。より具体的には、チャネルにおいて、関心周波数範囲内の0.2dBの低下は、性能に著しい悪影響を及ぼす可能性がある共振を表し、したがって、同調伝送チャネルではない。しかしながら、挿入損失の低下が0.2dB未満、およびより好ましくは0.1dB未満に保たれる場合、伝送チャネルを同調伝送チャネルと見なすことができる。したがって、NRZ符号化を使用して16Gbpsを提供しようとしている用途では、12GHzまで0.2dB未満の挿入損失の低下が望ましく、0.1dB未満の挿入損失の低下が好ましい。さらに、NRZ符号化を使用して25Gbpsを提供しようとしている用途では、約20GHzまで0.2dB未満の挿入損失の低下が望ましく、0.1dB未満の挿入損失の低下が好ましい。図35に示される破線から理解することができるように、十分な反復を用いて、0.05dB未満の低下を有する応答を得ることが可能であり、これは、より長いチャネルにおいて有用である。
【0048】
伝送チャネルが同調されている場合を判定することは、いくらか反復プロセスであることに留意されたい。そうでなければ、同調伝送チャネルは、いくつかの他のパラメータ(所望のシステムインピーダンスまたはFEXTまたはNEXT等)を満足することができないため、反復法のいくつかが生じる場合がある。同調伝送チャネルと見なすことができることを実証するために、単純なモデルを試験する能力は、設計プロセスを大幅に簡略化し、比較的迅速な開発を可能にすることができる。
【0049】
したがって、理解することができるように、トラス厚、端子幅、端子溝高さ、およびウェハ−ウェハ間隙の所望の比率は、用途にいくらか依存する。例えば、下部インピーダンスが望ましい場合、より幅が広い端子を有することが必要である場合がある。逆に、より高いインピーダンス(100オーム等)を得るために、より幅が狭い信号端子が必要である場合がある。より短いチャネル長は、追加の損失を提供するように、より多くのプラスチックの含有から利益を享受し得(そのような損失は、損失材料が使用される場合に経験する損失より大幅に小さいが)、一方、より長いチャネルは、より多くの空気の使用から利益を享受し得る。また、特定の用途では、他の因子もまた、伝送チャネルが適切に機能するか否かに関与することにも留意されたい。近接して位置付けられたウェハ(例えば、0.75mm以下等の非常に詰まったピッチのコネクタ)、または非常に密度の高いコネクタは、望ましくないクロストークを生じるほど相互と近接した信号対という状況を生じる場合がある。加えて、構造の不連続性は、クロストークを生じる反射を引き起こす可能性がある。したがって、同調伝送チャネルは、他の設計検討事項が考慮されていない場合に、依然として望むように機能しない場合があり、十分に短いチャネルでは、同調伝送チャネルの利益は、クロストークおよび/または挿入損失(または他の関連問題)の低減の利益と比較して二次的である場合がある。しかしながら、これらの他の検討事項は、高データ転送速度に好適なコネクタを設計する当業者に周知であり、したがって、本明細書ではこれ以上議論しない。
【0050】
本明細書に提供される開示は、その好ましい、および例示的な実施形態に関して、特長を記載する。本開示を検討することによって、当業者は、添付の特許請求の範囲および趣旨内の数々の他の実施形態、修正、および変形を思い付くであろう。
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