特許第6105140号(P6105140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6105140
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】負熱膨張材及びそれを含む複合材料
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/45 20060101AFI20170316BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C01B25/45 H
   C08L101/00
   C08K3/32
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-192427(P2016-192427)
(22)【出願日】2016年9月30日
【審査請求日】2016年12月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-199000(P2015-199000)
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-124308(P2016-124308)
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230593
【氏名又は名称】日本化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深沢 純也
(72)【発明者】
【氏名】畠 透
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−256183(JP,A)
【文献】 特開2005−035840(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/007504(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102433454(CN,A)
【文献】 特表2002−517377(JP,A)
【文献】 特開2014−019628(JP,A)
【文献】 SHANG, Rui et al.,Effect of MgO and PVA on the Synthesis and Properties of Negative Thermal Expansion Ceramics of Zr2(,International Journal of Applied Ceramic Technology,2013年 9月,Vol.10, No.5,p.849-856
【文献】 ISOBE, Toshihiro et al.,Preparation and properties of negative thermal expansion Zr2WP2O12 ceramics,Materials Research Bulletin,2009年11月,Vol.44, No.11,p.2045-2049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B25/00−25/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET比表面積が、2m/g以下である球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる負熱膨張材。
【請求項2】
球形度が、0.90以上1以下である請求項1に記載の負熱膨張材。
【請求項3】
更に、副成分元素として少なくともMg及び/又はVを含有する請求項1又は2に記載の負熱膨張材。
【請求項4】
副成分元素の含有量が、0.1質量%以上3質量%以下である請求項1ないし3にいずれか一項に記載の負熱膨張材。
【請求項5】
副成分元素が、Mg及び/又はVである請求項1ないし4にいずれか一項に記載の負熱膨張材。
【請求項6】
平均粒子径が、1μm以上50μm以下である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の負熱膨張材。
【請求項7】
タップ密度が、1.3g/ml以上である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の負熱膨張材。
【請求項8】
球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、一次粒子が集合して二次粒子を形成した凝集粒子である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の負熱膨張材。
【請求項9】
BET比表面積が、1.2m/g以下である請求項8に記載の負熱膨張材。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の負熱膨張材を含むペースト。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の負熱膨張材と正熱膨張材とを含む複合材料。
【請求項12】
正熱膨張材が、金属、合金、ガラス、セラミックス、ゴム及び樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載の複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度上昇に対して収縮する負熱膨張材及びそれを含有した複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの物質は温度が上昇すると、熱膨張によって長さや体積が増大する。これに対して、温めると逆に体積が小さくなる負の熱膨張を示す材料(以下「負熱膨張材」ということもある。)も知られている。負の熱膨張を示す材料は、他の材料とともに用いて、温度変化による材料の熱膨張の変化を抑制することができることが知られている。
【0003】
負の熱膨張を示す材料としては、例えば、β―ユークリプタイト、タングステン酸ジルコニウム(ZrW)、リン酸タングステン酸ジルコニウム(ZrWO(PO)、ZnCd1−x(CN)、マンガン窒化物、ビスマス・ニッケル・鉄酸化物等が知られている。
【0004】
リン酸タングステン酸ジルコニウムの線膨張係数は、0〜400℃の温度範囲で、−3.4〜−3.0ppm/℃であり負熱膨張性が大きく、正の熱膨張を示す材料(以下「正熱膨張材」ということもある。)と併用することで、低熱膨張の材料を製造することができる。
【0005】
リン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法としては、例えば、下記特許文献1に、リン酸ジルコニウム、酸化タングステン及びMgO等の反応促進剤を湿式ボールミルで混合し、得られる混合物を1200℃で焼成する方法が提案されている。下記特許文献2には、リン酸アンモニウム等のリン源と、タングステン酸アンモニウム等のタングステン源及び塩化ジルコニウム等のジルコニウム源を湿式混合した後、仮焼する方法が提案されている。下記非特許文献1には、酸化ジルコニウム、酸化タングステンとリン酸二水素アンモニウムを含む混合物を1200℃で焼成する方法等が提案されている。しかし、特許文献1及び2並びに非特許文献1に従い製造されるリン酸タングステン酸ジルコニウムの粒子形状は破砕状であり、本発明者が知る限り、球状のものは報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−35840号公報、請求項3、0035段落。
【特許文献2】特開2015−10006号公報、0023、0025段落。
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Materials Research Bulletin、44(2009)、2045−2049.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
負熱膨張材としてリン酸タングステン酸ジルコニウムは、超精密加工のための部材として有望視されている。
【0009】
通常、負熱膨張材は、金属、合金、ガラス、セラミックス、樹脂、ゴム等の正熱膨張材に含有させて用いられているが、正熱膨張材への分散性及び充填特性が一層優れた負熱膨張材の開発が望まれている。特に、リン酸タングステン酸ジルコニウムを負熱膨張材として樹脂に多量配合すると樹脂の成形時に粘度が高くなりやすくなることから、樹脂に十分な量のリン酸タングステン酸ジルコニウムを配合することができず、樹脂の熱膨張を抑制することが難しいという問題がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、正熱膨張材に対して、優れた分散性及び充填特性を有する負熱膨張材及びそれを含む複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記の実情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、リン酸及びタングステン化合物を含むスラリーを加熱処理する第A工程、次いで、第A工程後のスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理する第B工程、次いで第B工程後のスラリーを噴霧乾燥処理して球状の反応前駆体を得る第C工程、次いで該球状の反応前駆体を焼成する第D工程を有することにより、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムが得られること、また、該球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、優れた負熱膨張性を有すること、また、該球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムのうち、特定範囲のBET比表面積を有するものは樹脂に配合した場合においても樹脂の成形時の粘度が低く抑えられ、樹脂に十分な量のリン酸タングステン酸ジルコニウムを配合することができる等の充填特性に優れ、また分散性にも優れたものであることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
すなわち、本発明が提供しようとする第一の発明は、BET比表面積が、2m/g以下である球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる負熱膨張材である。
【0013】
また、本発明が提供しようとする第二の発明は、前記第一の発明の負熱膨張材と正熱膨張材を含むことを特徴とする複合材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、正熱膨張材に対して優れた分散性と充填特性を有したリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる負熱膨張材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、参考例1で得られた反応前駆体のX線回折図である。
図2図2(a)は、参考例1で得られた反応前駆体のFT−IRスペクトルチャートであり、図2(b)は、水酸化ジルコニウムのFT−IRスペクトルチャートであり、図2(c)は、リン酸のFT−IRスペクトルチャートであり、図2(d)は、三酸化タングステンのFT−IRスペクトルチャートである。
図3図3は、実施例1で得られた反応前駆体のX線回折図である。
図4図4は、実施例1で得られた反応前駆体のFT−IRスペクトルチャートである。
図5図5は、実施例1で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムのX線回折図である。
図6図6(a)は、実施例1で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムのSEM写真(倍率30000倍)であり、図6(b)は、図6(a)と同じSEM写真(ただし倍率は400倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。本発明の負熱膨張材は、BET比表面積が2m/g以下である球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムからなるものであり、かかる構成を有する負熱膨張材は、正熱膨張材に対して優れた分散性と充填特性を有したものになる。
【0017】
本発明者は、前記の構成を有するリン酸タングステン酸ジルコニウムは、例えば、従来の破砕状のリン酸タングステン酸ジルコニウムを用いるものに比べて樹脂と混練する際に、樹脂と負熱膨張材との相互作用が小さくなり、樹脂組成物の成形時の粘度を低減することができることを見出した。
【0018】
また、従来の破砕状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、粒子形状に起因して粒子強度が脆い部分が存在するので、例えば、ガラス粉末とリン酸タングステン酸ジルコニウムとの複合材料を封着材料として用いる場合に、ガラス粉末とリン酸タングステン酸ジルコニウムとの混合処理の際に、硬いガラス粉末がリン酸タングステン酸ジルコニウム粒子と強く衝突することにより、リン酸タングステン酸ジルコニウム粒子の脆い部分から粒子が割れて、微粒分が発生しやすく、この微粒分とガラス粉末とが熱処理工程で溶け込みやすくなり、封着材料の流動性が低下する問題があった。これに対して、本発明の負熱膨張材として使用する球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、球状の粒子であることから、硬い材料との混合処理の際に、微粒分の発生を抑制できる利点もある。
【0019】
本発明において、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムとは、単分散した一次粒子の状態で該リン酸タングステン酸ジルコニウムを負熱膨張材として使用する場合には、該一次粒子のリン酸タングステン酸ジルコニウム粒子自体の粒子形状が球状であること言う。また、微細な一次粒子が集合体を形成して二次粒子となっている凝集粒子の状態で該リン酸タングステン酸ジルコニウムを負熱膨張材として使用する場合には、凝集粒子自体の形状が球状であることを示す。
【0020】
本発明において、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、必ずしも真球状のものである必要はない。該球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムの球形度が好ましくは0.90以上1以下、更に好ましくは0.93以上1以下の範囲であると、正熱膨張材にする分散性及び充填特性が優れる観点から好ましい。
【0021】
本発明において、前記の球形度とは、サンプルを倍率400で電子顕微鏡観察したときに任意に抽出した粒子50個について画像解析処理を行い、得られたパラメーターから算出されるものである。すなわち、球形度は下記計算式(1)で求められる50個の粒子の平均値で表される。
球形度=等面積円相当径/外接円径・・・・・・(1)
等面積円相当径:粒子の周長に円周が相当する円の直径
外接円径:粒子の最長径
【0022】
前記画像解析処理に用いられる画像解析装置としては、例えば、ルーゼックス(ニレコ社製)、PITA−04(セイシン企業社製)等が挙げられる。球形度の値は1に近づくほど真球状に近くなる。
【0023】
本発明の負熱膨張材として用いる球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、BET比表面積が2.0m/g以下であることも特徴の一つである。
本発明の負熱膨張材において、BET比表面積を上記範囲とすることにより、特に樹脂と負熱膨張材との相互作用をより小さくすることができ、その結果、樹脂に対する分散性が優れたものになる。一方、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムのBET比表面積が2.0m/gより大きくなると、例えば、樹脂と混練する際に、樹脂との相互作用が大きくなり、樹脂の成形時の粘度が高くなり、また、樹脂に対する分散性及び充填特性が悪くなり好ましくない。本発明において、正熱膨張材に対する分散性と充填特性をより向上させる観点から、BET比表面積は、好ましくは0.01m/g以上2.0m/g以下、更に好ましくは0.01m/g以上1.5m/g以下、一層好ましくは0.01m/g以上1.2m/g以下である。このような範囲のBET比表面積を達成するためには、例えば、後述するリン酸タングステン酸ジルコニウムの好適な製造方法において、焼成温度及び焼成時間を調整すればよい。
【0024】
本発明で負熱膨張材として用いる球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、副成分元素として、少なくともMg及び/又はVを固溶して含有するもの(以下、単に「副成分元素」ということがある)であることが、樹脂に対する分散性及び充填特性を向上させる観点から好ましい。本発明において「副元素成分として少なくともMg及び/又はVを含有する」とは、副成分元素として、Mg及び/又はVを必須で含み、これ以外の他の副成分元素も含んでいてもよいことを意味する。
【0025】
Mg及び/又はV以外の他の副元素成分としては、例えば、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Li、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、Co、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHo等が挙げられる。これらの成分は、1種又は2種以上であってもよい。
【0026】
本発明において、副成分元素はMg及び/又はVのみであることが好ましく、特にMgとVとを併用することが、球形度も優れ、正熱膨張材に対する分散性と充填特性も向上する観点から好ましい。
【0027】
副成分元素の含有量は、優れた負熱膨張性を有し、更に分散性及び充填特性に優れたものになる観点から、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以上2質量%以下である。MgとVとを併用する場合は、Mgに対するVのモル比(V/Mg)は、Mg及びVの相乗効果が高くなる観点から、好ましくは0.1以上2.0以下であり、更に好ましくは0.2以上1.5以下である。
【0028】
本発明の負熱膨張材として用いる球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、正熱膨張材に対する充填性の観点から、平均粒子径が好ましくは1μm以上50μm以下、更に好ましくは2μm以上30μm以下である。平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察で、任意に抽出した粒子50個以上について測定した平均値である。
【0029】
前記の球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムの平均粒子径とは、単分散した一次粒子の状態で該球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムを負熱膨張材として使用する場合には、一次粒子のリン酸タングステン酸ジルコニウム粒子自体の平均粒子径のことである。一方、微細な一次粒子が集合体を形成して二次粒子となっている凝集粒子の状態で該リン酸タングステン酸ジルコニウムを負熱膨張材として使用する場合は、該凝集粒子自体の平均粒子径のことである。以下、単に平均粒子径と記す場合は、この定義に従う。
【0030】
本発明の負熱膨張材として用いる球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、正熱膨張材に対する充填性の観点から、タップ密度が好ましくは1.3g/ml以上であり、更に好ましくは1.5g/ml以上2.5g/ml以下である。
【0031】
本発明において、タップ密度は、負熱膨張材が、特に加圧されることなく自然に混合している状態における充填特性を示すものであり、50g以上70g以下程度の試料をメスシリンダーに入れ、メスシリンダーを自動T.D測定装置にセットし、測定条件としてタッピング回数500回、タッピング高さ3.2mm、タッピングペース200回/分として求められる(ASTM:B527−93,85に準拠)。
【0032】
本発明の負熱膨張材として用いる球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、正熱膨張材に対する充填性を更に向上させる観点から、かさ密度が好ましくは0.8g/ml以上、更に好ましくは1.0〜1.6g/mlである。
【0033】
本発明において、かさ密度は、自然落下によって粉末を一定容器に充填したときの単位体積当たりの質量であり、JIS K 5101−12−1:2004に準拠して測定することができる。具体的には、かさ密度は、例えば、かさ比重測定器(蔵持科学器械製作所製)を用いて測定することができる。
【0034】
本発明の負熱膨張材は、充填性をより向上させるため、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムの粗粒子と該粗粒子より小さい微粒子の混合物であってもよい。球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムの粗粒子の平均粒子径は好ましくは5μm以上、更に好ましくは5μm以上30μm以下である。一方、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムの微粒子の平均粒子径は好ましくは5μm未満であり、更に好ましくは1μm以上4μm以下である。前記平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察で、任意に抽出した粒子50個以上について測定した平均値である。
【0035】
球状のリン酸タングステン酸ジルコニウム粗粒子と、球状のリン酸タングステン酸ジルコニウム微粒子の配合割合は、タップ密度及びかさ密度が前記の範囲内となるように調整すればよい。
【0036】
本発明の負熱膨張材は、正熱膨張材に対する充填性及び分散性の観点から、安息角が好ましくは50°以下、更に好ましくは30°以上50°以下、特に好ましくは38°以上48°以下である。
【0037】
本発明において、安息角は、粉末を自然落下させて堆積させたときに、自発的に崩れることなく安定を保つ堆積物の山の斜面と水平面とのなす角度のことである。具体的には、パウダーテスター(ホソカワミクロン製 PT−N型)等の測定装置を用いて測定することができる。
【0038】
本発明で負熱膨張材として用いる球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムは、一次粒子が集合して二次粒子を形成した凝集粒子であることが好ましい。該凝集粒子は、一次粒子間に空隙を有することから、単分散した一次粒子の状態で該球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムを使用した場合に比べて、粒子自体の比重が小さくなるため、樹脂との比重差を小さくすることができる。このことに起因して、樹脂中で該負熱膨張材が沈降するのを抑制することができる。本発明において「一次粒子」とは、外見上の幾何学的形態から判断して、粒子としての最小単位と認められる物体のことである。
【0039】
特に、負熱膨張材として用いる前記の凝集粒子が、好ましくは1.2m/g以下、更に好ましくは0.01m/g以上1.2m/g以下、特に0.01m/g以上1m/g以下のBET比表面積を有する球状である場合には、凝集粒子の内部に空隙が存在した状態で、凝集粒子の表面は一次粒子間の空隙が低く抑えられることから、樹脂と負熱膨張材との相互作用をより小さくすることができ、その結果、樹脂に対する分散性を一層向上させることができる。
【0040】
球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムが凝集粒子の場合、走査型電子顕微鏡観察から求められる一次粒子の平均粒子径は、粒子を球状に保つ観点から、好ましくは3μm以下、更に好ましくは0.1μm以上2μm以下である。一次粒子の平均粒子径は走査型電子顕微鏡観察で、任意に抽出した粒子50個以上について測定した平均値である。
【0041】
次に、本発明の負熱膨張材の好ましい製造方法について説明する。本発明の負熱膨張材の製造方法は、好適には以下の工程を含んでいる。
・第A工程:水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、リン酸、並びにタングステン化合物を含むスラリーを加熱処理する。
・第B工程:第A工程後のスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理する。
・第C工程:第B工程後のスラリーを噴霧乾燥処理して球状の反応前駆体を得る。
・第D工程:前記球状の反応前駆体を焼成する。
そして、本製造方法においては、第A工程〜第B工程前に少なくともマグネシウム化合物及び/又はバナジウム化合物から選ばれる副成分元素を含む化合物を添加することができる。以下、各工程について説明する。
【0042】
〔第A工程〕
本工程では、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、リン酸、並びにタングステン化合物を含むスラリーを加熱処理する。なお、後述するように、副成分元素を含む化合物は、第A工程〜第B工程前に添加する。
【0043】
タングステン化合物を予め均一分散させたスラリーを調製した後に、リン酸及びジルコニウム化合物を添加した場合には、タングステン化合物に起因してスラリーの粘性が高くなり、各原料を均一混合処理することが難しい傾向がある。これに対し、本発明者は、タングステン化合物、リン酸及びジルコニウム化合物を含むスラリーを加熱処理することで、スラリーの粘性が低くなり、メディアミルによる湿式粉砕処理が可能なスラリーが得られることを見出した。
【0044】
第A工程で用いるジルコニウム化合物は、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムのうちの少なくとも一方である。ジルコニウム化合物は、工業的に入手できるものであれば、特に制限なく用いることができる。また、ジルコニウム化合物は無水塩又は含水塩であってもよい。ジルコニウム化合物として用いられる炭酸ジルコニウムは、塩基性塩であってもよく、アンモニアやナトリウム、カリウムなどの複塩であってもよい。ジルコニウム化合物は、そのまま粉体として第A工程のスラリーに添加することができる。あるいは、ジルコニウム化合物は水溶媒に分散させた懸濁液又は水溶媒に溶解させた溶液として添加してもよい。
【0045】
第A工程で用いるタングステン化合物は、水に対して不溶性ないし難溶性の化合物が好ましい。そのようなタングステン化合物としては、例えば三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム及び塩化タングステン等が挙げられる。これらのうち、三酸化タングステンは、純度が高いものが工業的に容易に入手でき、また取扱いが容易である観点から好ましい。
【0046】
第A工程で用いるリン酸は、工業的に入手できるものであれば、その種類に特に制限はない。リン酸は水溶液として用いることができる。
【0047】
ジルコニウム化合物のスラリーへの添加量は、負熱膨張材の負の熱膨張が大きくなる観点から、スラリー中のタングステン化合物中のW元素に対するジルコニウム化合物中のZr元素のモル比(Zr/W)が、好ましくは1.7以上2.3以下、更に好ましくは1.9以上2.1以下となるような量である。
【0048】
リン酸のスラリーへの添加量は、負熱膨張材の負の熱膨張が大きくなる観点から、スラリー中のタングステン化合物中のW元素に対するリン酸中のP元素のモル比(P/W)が、好ましくは1.7以上2.3以下、更に好ましくは1.9以上2.1以下となるような量である。
【0049】
第A工程で用いるタングステン化合物、リン酸及びジルコニウム化合物を分散させる溶媒は、水だけに限らず、水と親水性溶媒との混合溶媒であってもよい。これらの溶媒を含むスラリーの濃度は、操作性と取扱いが容易な粘度のスラリーとなる観点から、好ましくは5質量%以上50質量%以下、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下とする。
【0050】
第A工程において、各原料の添加順序に特に制限はなく、反応装置等を考慮して適宜添加順序を決定することができる。特に、タングステン化合物を含むスラリーを調製した後に、該スラリーにリン酸及びジルコニウム化合物を添加することが、操作性がより容易になる観点から好ましい。
【0051】
第A工程のスラリー加熱処理温度は、操作性と取扱いが容易な粘度のスラリーとなる観点から、好ましくは40℃以上110℃以下、更に好ましくは60℃以上90℃以下とする。
【0052】
第A工程での加熱処理の時間は本製造方法において臨界的ではなく、スラリー粘度が適度に下がるまで十分な時間反応を行えばよい。多くの場合、好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上4時間以下の加熱処理によって、満足すべき低粘性のスラリーを生成させることができる。
【0053】
本製造方法では、少なくともマグネシウム化合物及び/又はバナジウム化合物から選ばれる副成分元素を含む化合物(以下、単に「副成分元素を含む化合物」ということがある。)を、第A工程〜第B工程前、すなわち第B工程の完了前までにスラリーに添加することができる。具体的には、第A工程を行う前、第A工程を行っている最中、第A工程の完了後、第B工程を行う前、及び第B工程を行っている最中のうちの少なくとも一つの場面において、副成分元素を含む化合物を添加する。
【0054】
前記マグネシウム化合物としては、マグネシウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられる。これらのうち、マグネシウムの酸化物及び水酸化物を用いると、得られる負熱膨張材の純度を制御しやすく、高純度品を得やすい観点から好ましい。
【0055】
前記バナジウム化合物としては、バナジウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられる。これらのうち、バナジウムを含む酸化物及び水酸化物を用いると、得られる負熱膨張材の純度を制御しやすく、高純度品を得やすい観点から好ましい。
【0056】
本製造方法においては、Mg及び/又はV以外の他の副成分元素を含む化合物を併用することができ、その場合には、Mg及び/又はVを添加するときと同様に、第A工程〜第B工程前、すなわち第B工程前までにスラリーに添加すればよい。
【0057】
Mg及び/又はV以外の他の副成分元素を含む化合物としては、例えば、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、Li、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba、Ti、Hf、Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、Co、Bi、Te、Pb、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHoから選ばれる少なくとも1種の副成分元素を含む化合物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
前記Mg及び/又はV以外の他の副成分元素を含む化合物としては、該副成分元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられる。これらのうち、副成分元素を含む酸化物及び水酸化物を用いると、得られる負熱膨張材の純度を制御しやすく、高純度品を得やすい観点から好ましい。
【0059】
なお、添加した副成分元素を含む化合物がスラリー中に溶解又は析出するようにする目的で、必要によりアルカリや酸でスラリーのpHを調整することができる。
【0060】
マグネシウム化合物及びバナジウム化合物、並びに必要に応じて用いられる副成分元素を含む化合物のスラリーへの添加量は、得られる球状の反応前駆体に副成分元素として好ましくは0.05質量%以上5.0質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上3.0質量%以下となるような量とする。
【0061】
本工程において用いられるジルコニウム化合物、リン酸、タングステン化合物及び副成分元素を含む化合物は、高純度の球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムを得るため、それぞれ高純度品を用いることが好ましい。
【0062】
〔第B工程〕
本工程では、第A工程後のスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理して、微細で、且つ均一に各原料が分散されたスラリーを得る。メディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェーカー、アトライタ及びサンドミル等を用いることができる。特にビーズミルを用いることが好ましい。その場合、運転条件やビーズの種類及び大きさは、装置のサイズや処理量に応じて適切に選択すればよい。
【0063】
メディアミルを用いた処理を一層効率的に行う観点から、スラリーに、分散剤を加えてもよい。使用する分散剤は、分散媒の種類に応じて適切なものを選択すればよい。分散媒が例えば水である場合には、分散剤として各種の界面活性剤及びポリカルボン酸アンモニウム塩等を用いることができる。スラリーにおける分散剤の濃度は、分散効果が高くなる観点から、0.01質量%以上10質量%以下、特に0.1質量%以上5質量%以下とする。
【0064】
メディアミルを用いた湿式粉砕処理は、反応性に一層優れた球状の反応前駆体を得ることができる観点から、レーザー回折・散乱法により求められる固形分の平均粒子径が好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.1μm以上0.5μm以下となるまで行う。
【0065】
以上の操作によって、副成分元素、W、P及びZrの各原料成分が均一分散した粘性の低いスラリーを調製することができる。
【0066】
〔第C工程〕
第B工程が完了した後のスラリーは固液分離せずに次工程である第C工程に供し、第C工程において該スラリーを噴霧乾燥することで、球状の反応前駆体を得る。噴霧乾燥法においては、所定手段によってスラリーを霧化し、それによって生じた微細な液滴を乾燥させることで球状の反応前駆体を得る。スラリーの霧化には、例えば回転円盤を用いる方法と、圧力ノズルを用いる方法とがある。本工程においてはいずれの方法も用いることができる。
【0067】
噴霧乾燥法において、霧化された液滴の大きさは特に限定されないが、1μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることが特に好ましい。噴霧乾燥装置へのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが望ましい。
【0068】
噴霧乾燥装置における熱風温度は、粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になる観点から、100℃以上270℃以下に調整することが好ましく、150℃以上230℃以下に調整することが更に好ましい。
【0069】
噴霧乾燥によって得られる球状の反応前駆体は、リン酸タングステン酸ジルコニウムを生成する原料成分のW、P及びZrを含有した造粒粒子である。
【0070】
本工程によって得られる球状の反応前駆体は、少なくとも950cm−1以上1150cm−1以下に赤外線の吸収ピークを有することが好ましい。更にこの波数範囲で、赤外線吸収ピークの極大値が1030(±20)cm−1であることが好ましい。この理由は以下のとおりである。
後述する参考例1で示したように、リン酸、三酸化タングステン及び水酸化ジルコニウムを用いて副成分元素を含有しない反応前駆体を得た場合、該反応前駆体をX線回折分析したときに、三酸化タングステンのみの回折ピークが確認され(図1参照。)、水酸化ジルコニウムの回折ピークは観察されない。また、前記の反応前駆体をFT−IR分析したときに、水酸化ジルコニウムとリン酸とは異なる赤外線吸収ピークのパターンを示す(図2参照)ことから、スラリー中で水酸化ジルコニウムとリン酸は容易に反応することが分かる。したがって、本工程で得られる反応前駆体は、第A工程でジルコニウム化合物とリン酸が反応することによって、原料とは異なる赤外線吸収ピークのパターンを示すものと考えられる。なお本発明者は、リン酸と水酸化ジルコニウムとの反応により得られるリンとジルコニウムを含む無定形の化合物は、無定形のリン酸ジルコニウムである推測している。
【0071】
〔第D工程〕
第D工程は、第C工程で得られた球状の反応前駆体を焼成して、目的とする球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムを得る工程である。第D工程において、球状の反応前駆体を焼成する焼成温度は好ましくは900℃以上1300℃以下である。この理由は焼成温度を900℃以上に設定することで、未反応の酸化物等が残存しにくくなり、X線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムが得られやすくなる傾向があり、一方、焼成温度を1300℃以下に設定することで、粒子どうしが固結した状態の塊が生じにくくなり粉末が得られやすい傾向があるからである。本製造方法では、低温でX線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムを得ることが可能なので、この利点を生かすため焼成温度を900℃以上1100℃以下に設定することが更に好ましい。
【0072】
焼成時間は、本製造方法において臨界的ではなく、X線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムが生成するまで十分な時間反応を行えばよい。多くの場合、好ましくは1時間以上、更に好ましくは2時間以上20時間以下の焼成で、満足すべき諸物性を有するリン酸タングステン酸ジルコニウムを生成させることができる。焼成雰囲気は特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよい。
【0073】
焼成は所望により何度行ってもよい。あるいは、粉体特性を均一にする目的で、一度焼成したものを粉砕し、次いで再焼成を行ってもよい。
【0074】
焼成後、適宜冷却し、必要に応じ粉砕、解砕、分級等を行って目的とするリン酸タングステン酸ジルコニウムを得ることができる。このリン酸タングステン酸ジルコニウムは、負の熱膨張率を有し、X線回折的に単相であり、且つ球状のものである。
【0075】
本発明に係る負熱膨張材は、粉体又はペーストして用いることができる。ペーストとして用いる場合には、粘度の低い液状樹脂とのペーストの状態で用いることができる。あるいは、溶剤、更に必要によりバインダー、フラックス材及び分散剤等を含有させたペーストの状態で用いてもよい。
【0076】
ペースト中の負熱膨張材の配合量は、特に制限されるものではないが多くの場合5体積%以上65体積%以下であることが好ましい。
【0077】
本発明の負熱膨張材を含み、更にバインダー及びフラックス材を含むペーストは、例えば封着材料として好適に用いることができる。
【0078】
ペーストで用いる溶剤としては、当該技術分野で一般的なものが用いられる。例えばN,N’−ジメチルホルムアミド、エチレングルコール、ジメチルスルホキシド、炭酸ジメチル、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン、カプロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ブチルカルビトールアセテート、ポロピレングリコールジセテート、α―テルピネール、α―ターピネオール、γ―ブチルラクトン、テトラリン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、トルエン、3−メトキシ−3−メチルブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0079】
ペーストで用いるバインダーとしては、当該技術分野で一般的なものが用いられる。例えばニトロセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレングルコール誘導体、ポリメチルスチレン等が挙げられる。
【0080】
ペーストで用いるフラックス材としては、低融点ガラスが挙げられ、当該技術分野で一般的なものが用いられる。例えば、PbO−BO3系、PbO−SiO−B系、Bi−B系、Bi−SiO−B系、SiO−B−Al系、SiO−B−BaO系、SiO−B−CaO系、ZnO−B−Al系、ZnO−SiO−B系、P系、SnO−P系、V−P系、V−Mo系、及びV−P−TeO等が挙がられる。
【0081】
本発明の負熱膨張材は正熱膨張材に含有させて複合材料とし、負熱膨張材の配合比により、負熱膨張、零熱膨張又は低熱膨張の材料を得ることができる。
【0082】
本発明の負熱膨張材は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の負熱膨張材や熱膨張係数の調整に用いられるフィラーと併用してもよい。他の負熱膨張材や熱膨張係数の調整に用いられるフィラーとしては、例えば、タングステン酸ジルコニウム(ZrW28)、ZnxCd1-x(CN)2、マンガン窒化物、ビスマス・ニッケル・鉄酸化物、リン酸ジルコニウム、コーディエライト、ジルコン、ジルコニア、酸化錫、酸化ニオブ、石英、β―石英、β―スポジュメン、β―ユークリプタイト、ムライト、石英ガラス、NbZr(PO、溶融シリカ等が挙げられるが、特にこれらのものに限定されるものではない。
【0083】
本発明の負熱膨張材を含有させる正熱膨張材としては、各種有機化合物又は無機化合物が挙げられる。
前記有機化合物としては、例えば、ゴム、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ABS、ポリアクリレート、ポリフェニレンスルファイド、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)及びポリ塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。
前記無機化合物としては、例えば、金属、合金、二酸化ケイ素、グラファイト、サファイア、各種のガラス、コンクリート材料、各種のセラミックス材料などを挙げることができる。
これらのうち、正熱膨張材は、金属、合金、ガラス、セラミックス、ゴム及び樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。本発明に係る複合材料において、本発明の負熱膨張材の添加量は、当該技術分野において、一般的な添加量を採用することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
<評価装置>
1.X線回折分析:リン酸タングステン酸ジルコニウムと反応前駆体のX線回折分析は、リガク社 Ultima IVを用いた。線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
2.赤外吸収スペクトル(FT−IR)分析:反応前駆体の赤外吸収スペクトル分析は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製NICOLET6700により、分解能:4cm−1、積算数:256回、測定波数領域:400cm−1〜4000cm−1の条件にて測定した。ATR法により測定し、ATR補正及びスペクトルのスムージング処理を行った。
3.平均粒子径;各原料及びスラリー中の固形分の平均粒子径はレーザー回折・散乱法により、マイクロトラックMT3300EXII粒度分析計(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定した。
【0086】
<負熱膨張材>
〔参考例1〕
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部、仕込んだ。
室温(25℃)で(スリーワンモーター撹拌機)を用いて120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液とを、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように室温(25℃)で添加し、2時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、スラリーの全量を200℃で大気下に24時間乾燥を行って、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体についてX線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された(図1参照)。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1027cm−1に現れた(図2参照)。
次いで、得られた反応前駆体を1050℃で2時間にわたり大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr(WO)(POであった。これを気流式粉砕機で粉砕処理し負熱膨張材試料とした。
【0087】
〔実施例1〕
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加した。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液と水酸化マグネシウムとを、スラリー中のZr:W:P:Mgのモル比が2.00:1.00:2.00:0.1となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部、仕込み、スラリーを撹拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア撹拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された(図3参照)。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1042cm−1に現れた(図4参照)。
次いで、得られた反応前駆体を1050℃で2時間にわたり大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr(WO)(POであった。これを負熱膨張材試料とした。
【0088】
〔実施例2〕
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部、仕込んだ。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液と水酸化マグネシウムと五酸化二バナジウムとを、スラリー中のZr:W:P:Mg:Vのモル比が2.00:1.00:2.00:0.1:0.05となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、スラリーを撹拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア撹拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1030cm−1に現れた。
次いで、得られた反応前駆体を1050℃で2時間にわたり大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr(WO)(POであった。これを負熱膨張材試料とした。
【0089】
〔実施例3〕
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加した。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液とを、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部、仕込み、スラリーを撹拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア撹拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1042cm−1に現れた。
次いで、得られた反応前駆体を1220℃で8時間にわたり大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr(WO)(POであった。これを負熱膨張材試料とした。
【0090】
〔参考例2〕
市販の三酸化タングステン(WO;平均粒子径25μm)15質量部を秤量しタンクに仕込んだ。タンクに純水84質量部、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部、仕込んだ。
次いで、スラリーを撹拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア撹拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液とを、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように室温(25℃)で添加し、2時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1030cm−1に現れた。
次いで、得られた反応前駆体を1050℃で2時間にわたり大気中、焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr(WO)(POであった。これを負熱膨張材試料とした。
【0091】
<物性評価>
実施例及び参考例で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムについて、副成分元素の含有量、球形度、平均一次粒子径、平均二次粒子径(凝集粒子径)、BET比表面積、タップ密度、かさ密度、安息角及び熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例1で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムのSEM写真を図6(a)及び(b)に示す。
【0092】
(平均一次粒子径の測定)
リン酸タングステン酸ジルコニウムの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡観察において倍率5千倍で任意に抽出した粒子50個以上の平均値により求めた。粒子径は、各粒子の最大横断長さとした。
【0093】
(平均二次粒子径の測定)
リン酸タングステン酸ジルコニウムの平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡観察において倍率400倍で任意に抽出した粒子50個以上の平均値により求めた。粒子径は、各粒子の最大横断長さとした。
【0094】
(球形度の測定)
球形度は、画像解析装置ルーゼックス(ニレコ社製)を用いて、倍率400倍で任意に抽出した50個の粒子について、以下の計算式により求めた。
球形度=等面積円相当径/外接円径
等面積円相当径:粒子の周長に円周が相当する円の直径
外接円径:粒子の最長径
【0095】
(かさ密度の測定)
JIS 5101−12−1顔料試験方法に準拠し、かさ比重測定器(蔵持科学器機製作所)の受容器(容量30mL)に試料を、ふるいを通して受容器から溢れるまで受け、過剰分をへらですり切り、受容器に溜まった試料の質量を測定してかさ密度(g/mL)を算出した。
【0096】
(タップ密度の評価)
メスシリンダーに予め質量を測定した試料粉末10gをロートで投入し、タップ装置(Quantachrome instrument製 DUAL AUTOTAP)にセットし、測定条件としてタッピング回数500回、タッピング高さ3.2mm、タッピングペース200回/分とし、下記の式により求めた(ASTM:B527−93,85に準拠)。
タップ密度=粉体質量/タップ後の体積
【0097】
(安息角の評価)
パウダーテスター(ホソカワミクロン製 PT−N型)を用いて、試料注入法で自然落下させた状態で形成される粉体層の山の角度を測定した。
【0098】
(副成分元素Mg、Vの含有量)
波長分散型蛍光X線分析装置(リガク社 ZSX100e型)で測定した。
【0099】
(熱膨張係数の評価)
昇温機能が付いたXRD装置(リガク社 Ultima IV)にて、昇温速度20℃/minで、目標温度に到達してから10分後に試料のa軸、b軸、c軸に対する格子定数を測定し、格子体積変化(直方体)を線換算して熱膨張係数を求めた(J. Mat. Sci.,35(2000)2451−2454参照)。
【0100】
【表1】
【0101】
<樹脂複合体の作製>
〔実施例4〕
実施例1得られた負熱膨張材試料5.8gと液状エポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160〜175)4.2gを計量し真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度2000rpmで混合して30vol%のペーストを作製した。
このペーストの粘度をレオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 HAAKE MARSII)で、せん断速度1[1/s]及びせん断速度10[1/s]、25℃での粘度を測定した。
また、ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度1500rpmで混合して150℃で1時間にわたり硬化させて樹脂複合体を得た。この樹脂複合体を5mm角×10mmに切り出して熱機械分析装置(TMA)を用いて昇温速度1℃/minで30〜120℃の線膨張係数を測定した。
【0102】
〔実施例5〕
実施例2得られた負熱膨張材試料5.8gとエポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160〜175)4.2gを計量し真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度2000rpmで混合して30vol%のペーストを作製した。
このペーストの粘度をレオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 HAAKE MARSII)で、せん断速度1[1/s]及びせん断速度10[1/s]、25℃での粘度を測定した。
また、ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度1500rpmで混合して150℃で1時間にわたり硬化させて樹脂複合体を得た。この樹脂複合体を5mm角×10mmに切り出して熱機械分析装置(TMA)を用いて昇温速度1℃/minで30〜120℃の線膨張係数を測定した。
【0103】
〔実施例6〕
実施例3で得られた負熱膨張材試料5.8gと液状エポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160〜175)4.2gを計量し真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度2000rpmで混合して30vol%のペーストを作製した。
このペーストの粘度をレオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 HAAKE MARSII)で、せん断速度1[1/s]及びせん断速度10[1/s]、25℃での粘度を測定した。
また、ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度1500rpmで混合して150℃で1時間にわたり硬化させて樹脂複合体を得た。この樹脂複合体を5mm角×10mmに切り出して熱機械分析装置(TMA)を用いて昇温速度1℃/minで30〜120℃の線膨張係数を測定した。
【0104】
〔参考例3〕
参考例1得られた負熱膨張材5.8gとエポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160〜175)4.2gを計量し真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度2000rpmで混合して30vol%のペーストを作製した。
このペーストの粘度をレオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 HAAKE MARSII)で、せん断速度1[1/s]及びせん断速度10[1/s]、25℃での粘度を測定した。
また、ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度1500rpmで混合して150℃で1時間にわたり硬化させて樹脂複合体を得た。この樹脂複合体を5mm角×10mmに切り出して熱機械分析装置(TMA)を用いて昇温速度1℃/minで30〜120℃の線膨張係数を測定した。
【0105】
〔参考例4〕
参考例2得られた負熱膨張材5.8gとエポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160〜175)4.2gを計量し真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度2000rpmで混合して30vol%のペーストを作製した。
このペーストの粘度をレオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 HAAKE MARSII)で、せん断速度1[1/s]及びせん断速度10[1/s]、25℃での粘度を測定した。
また、ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度1500rpmで混合して150℃で1時間にわたり硬化させて樹脂複合体を得た。この樹脂複合体を5mm角×10mmに切り出して熱機械分析装置(TMA)を用いて昇温速度1℃/minで30〜120℃の線膨張係数を測定した。
【0106】
〔参考例5〕
平均粒子径10μmの球状溶融シリカ(線膨張係数5×10−7/℃)と3.3gとエポキシ樹脂(三菱化学 jER807、エポキシ当量160〜175)4.2gを計量し真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度2000rpmで混合して30vol%のペーストを作製した。
このペーストの粘度をレオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック製 HAAKE MARSII)で、せん断速度1[1/s]及びせん断速度10[1/s]、25℃での粘度を測定した。
また、ペーストに硬化剤(四国化成製 キュアゾール)を100μL加えて真空ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎ARV−310)にて回転速度1500rpmで混合して150℃で1時間にわたり硬化させて樹脂複合体を得た。この樹脂複合体を5mm角×10mmに切り出して熱機械分析装置(TMA)を用いて昇温速度1℃/minで30〜120℃の線膨張係数を測定した。
【0107】
【表2】
【0108】
表2の結果より、実施例1、実施例2及び実施例3の負熱膨張材は、参考例1、2に比べて、樹脂に配合した場合においても樹脂の成形時の粘度が低く抑えられ、また、溶融シリカ(参考例5)とほぼ同等の粘度で成形することができることが分かる。
【要約】
【課題】正熱膨張材に対して優れた分散性と充填特性を有した負熱膨張材を提供すること。
【解決手段】本発明の負熱膨張材は、BET比表面積が、2m/g以下である球状のリン酸タングステン酸ジルコニウムからなる。球形度が、0.90以上1以下であることが好適である。更に副成分元素として少なくともMg及び/又はVを含有することも好適である。副成分元素の含有量が、0.1質量%以上3質量%以下であることも好適である。平均粒子径が1μm以上50μm以下であることも好適である。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6