(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一のポリオレフィン微多孔膜と第二のポリオレフィン微多孔膜とを有し、シャットダウン温度が128〜135℃、厚み20μmあたりの30℃から105℃における透気抵抗度上昇率が1.5sec/100ccAir/℃未満、長さ方向におけるF25値の変動幅が1MPa以下である、長さ1000m以上の積層ポリオレフィン微多孔膜。(ここで、F25値とは引張試験機を用いて試験片が25%伸びた時の荷重値を試験片の断面積で除した値を表す。)
第二のポリオレフィン微多孔膜が、メルトフローレートが25〜150g/10min、融点が120℃以上130℃未満である樹脂を含む請求項1に記載の積層ポリオレフィン微多孔膜。
請求項1または2に記載の積層ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、水溶性樹脂または水分散性樹脂と耐熱性粒子を含み、平均厚みT(ave)が1〜5μmの多孔層を設けた電池用セパレータ。
水溶性樹脂または水分散性樹脂が、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂及びポリフッ化ビニリデン系樹脂のうち少なくとも一種を含む請求項3または4に記載の電池用セパレータ。
請求項8又は請求項9に記載の積層ポリオレフィン微多孔膜の製造方法によって得られるポリオレフィン微多孔膜を搬送速度が50m/分以上で巻き芯に巻き上げる工程を含む積層ポリオレフィン微多孔膜捲回体の製造方法。
請求項1若しくは請求項2に記載の積層ポリオレフィン微多孔膜又は請求項8若しくは請求項9に記載の積層ポリオレフィン微多孔膜の製造方法によって得られる積層ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に、水溶性樹脂または水分散性樹脂と、耐熱性粒子を含む塗工液を振れ精度が10μm/Φ100mm以下の塗工ロールを用いたロールコート法で塗工し、乾燥する工程を含む電池用セパレータの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜は、長さ1000m以上で、長さ方向におけるF25値の変動幅が1MPa以下(ここで、F25値とは引張試験機を用いて試験片が25%伸びた時の荷重値を試験片の断面積で除した値を表す。)である。
【0023】
本発明は積層ポリオレフィン微多孔膜の長さ方向におけるF25値の変動幅を1MPa以下とすることで、積層ポリオレフィン微多孔膜と塗工ロールとの接線(以下、塗工接線と略記する。)における接触圧力が積層ポリオレフィン微多孔膜の長さ方向に対して均一になりやすく、塗工厚を均一にしやすくなるという優れた効果を奏する。長さ方向におけるF25値の変動幅が1MPa超となるとスリット工程や塗工工程での巻き上げ時に微多孔膜の捲回体の巻き堅さにばらつきができ、たわみや巻きずれが発生しやすくなり捲き姿が悪化する。例えば、巻き芯への巻き上げ時の搬送速度が50m/分以上となるような高速で加工する場合には顕著になる。
【0024】
1.積層ポリオレフィン微多孔膜
積層ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン特性と強度および透過性などの物性バランスの観点からは、少なくとも第一のポリオレフィン微多孔膜と第二の微ポリオレフィン多孔膜とを有すればよい。積層ポリオレフィン微多孔膜の表裏バランスの観点からは、第一のポリオレフィン微多孔膜/第二のポリオレフィン微多孔膜/第一のポリオレフィン微多孔膜もしくは第二のポリオレフィン微多孔膜/第一のポリオレフィン微多孔膜/第二のポリオレフィン微多孔膜の3層構成とすることがより好ましい。第一のポリオレフィン微多孔膜は第一のポリオレフィン樹脂組成物により形成されており、第二のポリオレフィン微多孔膜は第二のポリオレフィン樹脂組成物により形成されている。
【0025】
[1]第一のポリオレフィン微多孔膜
第一のポリオレフィン微多孔膜は第一のポリオレフィン樹脂組成物により形成されている。ポリオレフィン樹脂組成物としては、ポリエチレンやポリプロピレンが好ましい。また、単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン樹脂の混合物、例えばポリエチレンとポリプロピレンの混合物であってもよいし、異なるオレフィンの共重合体でもよい。シャットダウン特性の観点からはポリエチレン樹脂が好ましい。
【0026】
第一のポリエチレン樹脂組成物はポリエチレンを主成分とし、ポリエチレンの含有量は透過性と突刺強度を向上させるために第一のポリエチレン樹脂組成物を100質量%として、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。ポリプロピレンを20質量%以下の割合で含んでいてもよい。
【0027】
ポリエチレンの種類としては、密度が0.94g/cm
3を越えるような高密度ポリエチレン、密度が0.93〜0.94g/cm
3の範囲の中密度ポリエチレン、密度が0.93g/cm
3より低い低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。好ましくは超高分子量ポリエチレンを含有する。共押出法を用いる場合は、各層の粘度差などにより幅方向の物性ムラの制御が困難となることが、超高分子量ポリエチレンを含有することで膜全体の分子ネットワークが強固となる。これにより延伸工程における不均一変形による厚み斑が抑制され、物性の均一性な微多孔膜を得ることができる。さらに好ましくは、強度の観点より、高密度ポリエチレンと超高分子量ポリエチレンを含有する。
【0028】
超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。α-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。
【0029】
超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量(以下、Mwという)が1×10
6以上4×10
6未満であることが好ましい。Mwが上記好まし印以内であると細孔およびフィブリルを微細化することができ、突刺強度を高めることが可能となる。
【0030】
高密度ポリエチレンの重量平均分子量は1×10
5以上が好ましく、2×10
5以上がより好ましい。上限値はMwが8×10
5が好ましく、より好ましくはMwが7×10
5である。Mwが上記好ましい範囲であれば、製膜の安定性と最終的に得られる突刺強度とを両立することができる。
【0031】
超高分子量ポリエチレンの含有量は、突刺強度と透気抵抗度の両立、透気抵抗度のバラツキを抑制する観点から、第一の微多孔膜のポリエチレン樹脂全体を100質量%として15質量%〜45質量%が好ましく、より好ましくは18質量%〜40質量%である。
【0032】
第一のポリエチレン樹脂組成物には、実質的に低融点樹脂を含まない。「実質的に低融点樹脂を含まず」とは、例えばクロス分別クロマトグラフなどで抽出される90℃以下の溶出成分の分率が5.0質量%以下であることを意味する。これは意図的に低融点樹脂を添加しなくても、高分子においては、分子量に分布をもつために、低融点となりうる低分子成分が含まれてしまうため0質量%とするのは困難だからである。低融点樹脂が全層にわたって存在すると、シャットダウン前においても、加熱した際に透気抵抗度が悪化しやすくなる場合がある。
【0033】
クロス分別クロマトグラフによる溶出成分は、例えば以下のように求めることができる。
・測定装置:クロス分別クロマトグラフ CFC2 型(Polymer ChAR社製)
・検出器:赤外分光光度計IR4型(Polymer ChAR社製)
・検出波長:3.42μm
・カラム:昭和電工(株)製“Shodex”(登録商標) UT806M
・カラム温度:140℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0ml/分
・試料濃度:3.0mg/ml
・降温時間:140分(140℃→0℃)
・90℃以下の溶出成分量:0℃から140℃までを10℃ごとに分画した際の各抽出量の内、0℃から90℃までの重量を足し合わせたものを全体の抽出量で除すことにより、90℃以下の溶出成分量を算出する。
【0034】
[2]第二のポリオレフィン微多孔膜
第二のポリオレフィン微多孔膜は第二のポリオレフィン樹脂組成物により形成されている。第二のポリオレフィン樹脂組成物は下記の特性を有すものであれば第一のポリオレフィン樹脂組成物と同種のポリオレフィン樹脂組成物であってもよい。第二のポリオレフィン樹脂組成物は、強度の観点から高密度ポリエチレンを50質量%以上含むことが好ましい。高密度ポリエチレンの重量平均分子量は1×10
5〜8×10
5が好ましく、より好ましくは2×10
5〜7×10
5である。上記好ましい範囲内とすることで、製膜の安定性と最終的に得られる突刺強度とを両立することができる。
【0035】
第二のポリオレフィン微多孔膜に低温でのシャットダウン機能を付与し、電池用セパレータとしての特性を向上させるために、第二のポリエチレン樹脂組成物は低融点樹脂を含有することが重要である。低融点樹脂とは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体などが挙げられる。α-オレフィンとしては第一のポリエチレン樹脂組成物と同様のα―オレフィンが挙げられる。
【0036】
低融点樹脂のメルトフローレート(MFR)は25g/10min以上であることが重要である。より好ましくは50g/10min以上、さらに好ましくは100g/min以上である。MFRが25g/10min以上であると、流動性が良く延伸過程において厚みのムラを作りにくく均一な膜厚分布とすることができる。また、分子運動性が良いために残留ひずみが残りにくく、低温で十分に分子が緩和しているために、融点より低い温度で残留ひずみによる孔の閉塞が起こりにくい。そのため、30℃〜105℃の範囲において、透気度の上昇を抑制することができる。上限値は150g/minが好ましく、より好ましくは140g/minである。MFRが150g/minを超えると、溶融物の粘度が低すぎるために、第一のポリエチレン樹脂組成物との共押出において、各層が均一に押し出せない場合がある。また、製造時の延伸工程において、粘度が低いために微多孔膜の破断が起こることがある。
【0037】
低融点樹脂の融点は120℃以上130℃未満であることが重要である。融点が120℃未満の場合、融点が低すぎるために、共押し出し法で積層する際に、超高分子量を含んだ第一のポリエチレン樹脂組成物との積層時に積層体が十分に延伸できる温度まで延伸温度を上げた場合に第二のポリオレフィン微多孔膜を構成する樹脂成分が溶融して孔形成に悪影響を及ぼし、透気抵抗度が悪化する恐れがある。一方で、孔の閉塞を防ぐために全体の延伸温度を下げた場合には、積層体全体としての軟化が不十分となり、A層にて超高分子量を添加することで期待される厚み均一性の効果を十分に得ることができない恐れがある。一方、融点が130℃以上の場合、目標とする低いシャットダウン温度を達成することが困難となる。
【0038】
低融点樹脂の含有量は第二のポリエチレン樹脂組成物を100質量%として、下限値は20質量%〜35質量%が好ましく、より好ましくは25質量%〜30質量%である。20質量%以上であるとシャットダウン温度を128〜135℃にすることができる。35質量%以下であると、粘度が低いために起こる微多孔膜の製膜時における横延伸時に発生しやすい破断を抑制することができる。
【0039】
第二のポリエチレン樹脂組成物は、突刺強度の観点から超高分子量ポリエチレンを含有することが好ましい。超高分子量ポリエチレンは、第一のポリエチレン樹脂組成物と同じが好ましい。
【0040】
第二のポリエチレン樹脂組成物の超高分子量ポリエチレンの含有量はポリエチレン樹脂全体を100質量%として、下限値は10質量%〜40質量%が好ましく、より好ましくは18質量%〜30質量%である。超高分子量ポリエチレン樹脂は低融点樹脂との分子運動性の差が大きいために、40質量%を超えると、溶融混練時に低融点樹脂との分離が進みやすく、最終的に得られる微多孔膜の外観不良を引き起こす可能性がある。
【0041】
第一のポリエチレン樹脂組成物と、第二のポリエチレン樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は5〜200の範囲内が好ましく、より好ましくは10〜100である。Mw/Mnの範囲が上記好ましい範囲であると、ポリエチレンの溶液の押出が容易である。またポリエチレン微多孔膜は厚さを薄膜化させた場合でも、十分な機械的強度が得られる。Mw/Mnは分子量分布の尺度として用いられるものであり、例えば、単一物からなるポリエチレンの場合、この値が大きい程分子量分布の幅が大きい。単一物からなるポリエチレンのMw/Mnはポリエチレンの多段重合により適宜調整することができる。また、ポリエチレンの混合物のMw/Mnは各成分の分子量や混合割合を調整することにより適宜調整することができる。
【0042】
本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤や帯電防止剤、紫外線吸収剤、さらにはブロッキング防止剤や充填材等の各種添加剤を含有させてもよい。特に、ポリオレフィン樹脂の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。酸化防止剤や熱安定剤の種類および添加量を適宜選択することは微多孔膜の特性の調整又は増強として重要である。
【0043】
本発明に用いる積層ポリオレフィン微多孔膜には、実質的に無機粒子を含まないことが好ましい。「実質的に無機粒子を含まず」とは、例えばケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下が好ましく、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。積極的に粒子を積層ポリエチレン微多孔膜に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいは積層ポリオレフィン微多孔膜の製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、膜中に混入する場合があり、50ppm以下で検出される可能性がある。
【0044】
本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜は長さ方向のF25値の変動幅が1MPa以下であり、好ましくは0.8MPa以下、より好ましくは0.6MPa以下、さらに好ましくは0.4MPa以下である。下記に述べるように、特に、縦延伸工程及び横延伸工程を高度に制御することで積層ポリオレフィン微多孔膜の長さ方向のF25値の変動幅を制御することができる。
【0045】
[3]積層ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
積層ポリオレフィン微多孔膜は、上記の各種特徴を満足する範囲内ならば、目的に応じた製造方法を自由に選択することができる。微多孔膜の製造方法としては、発泡法、相分離法、溶解再結晶法、延伸開孔法、粉末焼結法などがあり、これらの中では微細孔の均一化、コストの点で相分離法が好ましい。
【0046】
相分離法による製造方法としては、例えばポリオレフィンと成膜用溶剤とを加熱溶融混練し、得られたポリオレフィン樹脂溶液をダイより押出し、冷却して得られたゲル状シートを二方向に延伸し、その後、成膜溶剤を除去することで積層微多孔膜を得る方法などが挙げられる。
【0047】
本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜の製造方法について、詳述する。
本発明ではゲル状シートをロール法、テンター法もしくはこれらの方法の組み合わせによって長さ方向(「MD」又は「縦方向」ともいう)及び幅方向(「TD」又は「横方向」ともいう)の二方向に所定の倍率で延伸する。本発明において延伸は縦方向及び横方向を順次行う、逐次二軸延伸法が好ましい。同時二軸延伸法は、未延伸ゲル状シートの両端をつかむクリップで固定した後、縦方向及び横方向に同時に前記クリップを拡張させる延伸法である。このような同時二軸延伸法は延伸倍率に伴ってクリップの間隔が広くなり、長さ方向におけるシートの品質にばらつきが生じ、結果として長さ方向でF25値の変動幅が増大する場合がある。
【0048】
本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は以下の(a)〜(f)の工程を含むものである。
(a)第一のポリオレフィン組成物に成膜用溶剤を溶融混練して第一のポリオレフィン溶液を調整する工程、
(b)第二のポリオレフィン組成物に成膜用溶剤を溶融混練して第二のポリオレフィン溶液を調整する工程、
(c)前記第一及び第二のポリオレフィン溶液を1つのダイより同時に押し出し、冷却して未延伸ゲル状シートを形成する工程
(d)前記未延伸ゲル状シートを少なくとも3対の縦延伸ロール群の間を通過させ、段階的に増大するロール間の周速によって縦方向に延伸し、縦延伸ゲル状シートを得る工程(ここで、縦延伸ロールとこれに平行に接する耐熱性ゴムで被覆したニップロールを1対の縦延伸ロール群とし、該ニップロールが縦延伸ロールに接する圧力は0.05MPa以上、0.5MPa以下である)
(e)前記縦延伸ゲル状シートをクリップ間距離がテンター出口で50mm以下となるように把持して横方向に延伸し、二軸延伸ゲル状シートを得る工程
(f)前記二軸延伸ゲル状シートから成膜用溶剤を抽出し、乾燥する工程
さらに(a)〜(f)の工程の後、必要に応じてコロナ処理工程等を設けてもよい。
【0049】
以下、各工程については、ポリオレフィン樹脂としてポリエチレン樹脂を使用した例で説明する。
(a)第一のポリオレフィン樹脂溶液の調製工程
第一のポリオレフィン樹脂溶液の調製工程としては、第一のポリオレフィン樹脂組成物に成膜用溶剤を添加した後、溶融混練し、ポリオレフィン樹脂溶液を調製する。溶融混練方法として、例えば、特公平06−104736号公報および日本国特許第3347835号公報に記載の二軸押出機を用いる方法を利用することができる。溶融混練方法は公知であるので説明を省略する。
【0050】
成膜用溶剤としては、ポリエチレンを十分に溶解できるものであれば特に限定されない。例えば、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィンなどの脂肪族または環式の炭化水素、あるいは沸点がこれらに対応する鉱油留分などがあげられるが、流動パラフィンのような不揮発性の溶剤が好ましい。
【0051】
第一のポリオレフィン樹脂溶液中のポリエチレン樹脂濃度は、ポリエチレン樹脂と成膜用溶剤の合計を100重量部として、25〜40重量部であることが好ましい。ポリエチレン樹脂濃度が上記好ましい範囲であると、ポリエチレン樹脂溶液を押し出す際のダイ出口でスウェルやネックインを防止でき、ゲル状シートの成形性及び自己支持性が維持される。
【0052】
(b)第二のポリオレフィン樹脂溶液の調製工程
第二のポリオレフィン樹脂溶液の調製工程は、第二のポリオレフィン樹脂組成物を用いる以外は第一のポリオレフィン樹脂溶液の調製工程と同じであってよい。
【0053】
(c)未延伸ゲル状シートを成形する工程
未延伸ゲル状シートを成形する工程としては、ポリエチレン樹脂溶液を押出機から直接的に又は別の押出機を介してダイに送給し、シート状に押し出し、冷却して未延伸ゲル状シートを成形する。同一または異なる組成の複数のポリオレフィン溶液を、押出機から一つのダイに送給し、そこで層状に積層し、シート状に押出してもよい。
【0054】
押出方法はフラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。押出し温度は140〜250℃好ましく、押出速度は0.2〜15m/分が好ましい。ポリオレフィン溶液の各押出量を調節することにより、膜厚を調節することができる。押出方法としては、例えば、特公平06−104736号公報および日本国特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。
【0055】
シート状に押し出されたポリエチレン樹脂溶液を冷却することによりゲル状シートを形成する。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。例えば、冷媒で表面温度20℃から40℃に設定した回転する冷却ロールにシート状に押し出されたポリエチレン樹脂溶液を接触させることにより未延伸ゲル状シートを形成することができる。押出されたポリエチレン樹脂溶液は25℃以下まで冷却するのが好ましい。
【0056】
(d)縦延伸工程
縦延伸工程としては、未延伸ゲル状シートを複数本の予熱ロールを経由させ、所定の温度まで昇温させた後、各ロール間の周速を段階的に増大させた少なくとも3対の縦延伸ロール群を通過させ、縦方向に延伸し、縦延伸ゲル状シートを得る。
【0057】
本発明では縦延伸におけるシート滑りを抑え、均一な縦延伸をすることが、長さ方向のF25値を制御する上で重要となる。
【0058】
延伸工程において、縦延伸ロールと、縦延伸ロールに平行に一定の圧力をもって接するニップロールとを1対のロール群とし、少なくとも3対のロール群の間を未延伸ゲル状シートを通過させることで、ロール間の周速比によって縦延伸がなされる。縦延伸ロールと平行にニップロールを配置することで縦延伸ロール上にシートを密着させ、シートの延伸位置を固定することでシートを安定に走行させ、均一な縦延伸をすることができる。また、均一な縦延伸をするためには縦延伸工程は1段延伸より2段延伸以上に分けて所望の延伸倍率にすることが好ましい。つまり、縦延伸ロールを3対以上配置することが重要である。
【0059】
本発明では、各延伸ロール間の周速を段階的に増大することによって、未延伸ゲル状シートを長さ方向に延伸することが重要である。さらに隣り合う延伸ロールの周速比も段階的に増大させることが好ましい。つまり、1本目の延伸ロールと2本目の延伸ロールとの周速比を小さくし、2本目と3本目の延伸ロールの周速比、3本目と4本目の延伸ロールの周速比と順に周速比を増大させることで長さ方向のF25の変動幅を制御しつつ、生産性を両立できる。これは、未延伸ゲル状成形シートが1本目の延伸ロールを通過する時点では成膜用溶剤を多く含んでおり滑りやすいが、各延伸ロール間の周速を段階的に増大することで成膜用溶剤の絞り出し効果が得られやすく、縦延伸工程における滑りを防ぐことができるからである。ここで、絞り出し効果とは、未延伸ゲル状シートあるいは縦延伸中のゲル状シートから成膜用溶剤を絞り出すことで縦延伸ロールとの滑りを抑制し安定して延伸できることをいう。
【0060】
1段目の延伸工程における延伸ロールの周速比の上限は1.5以下が好ましく、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。下限は1.1が好ましい。また、隣り合う各延伸ロールの周速比の差は0.5以下好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0061】
隣り合う延伸ロールの間隔は、延伸中のゲル状成形シートが延伸ロールから離れて次の延伸ロールに接するまでの距離を150mmから500mmの範囲にするのが好ましい。隣り合う延伸ロールの間隔が上150mm未満ではF25の変動幅が大きくなる場合がある。500mmを超えると延伸中のゲル状成形シートの温度低下を防ぎ延伸斑が発生するおそれがある。
【0062】
縦延伸工程におけるシートの温度はポリオレフィン樹脂の融点+10℃以下が好ましい。また、延伸倍率は積層ポリオレフィン微多孔膜の弾性、強度の観点から面倍率で9倍以上が好ましく、より好ましくは16〜400倍である。
【0063】
縦延伸ロールの表面温度は、ロールごとに延伸ロールの有効幅(延伸中のシートが通過する幅)において表面温度の変動幅を±2℃以内に制御する。縦延伸ロールの表面温度は、例えば、赤外放射温度計で測定することができる。
【0064】
縦延伸ロールは、表面粗度が0.3S〜5.0Sのハードクロムメッキが施された金属ロールが好ましい。表面粗度がこの範囲であると熱伝導もよく、ニップロールとの相乗効果でシートの滑りを効果的に抑制できる。
【0065】
本発明では、ニップロールを用いて縦延伸工程におけるゲル状シートの滑りを抑制する。ニップロールを用いずに縦延伸ロールとゲル状シートの接触面積を大きくするだけでは十分な滑り抑制効果は得られず、F25値の変動幅が増大するおそれがある。また、1本のニップロールでシートの滑りを抑制しようとするとニップロールが延伸ロールに接する圧力(ニップ圧ともいう)を高くする必要があり、得られる積層ポリオレフィン微多孔膜の細孔をつぶしてしまうおそれがある。よって、ニップロールは3本以上を使用して、各ニップロールの対となる縦延伸ロールへのニップ圧を比較的小さくすることが重要である。1本の縦延伸ロールに対して複数本のニップロールを用いてもよい。
【0066】
各ニップロールのニップ圧は0.05MPa以上、0.5Mpa以下である。ニップロールのニップ圧が0.5MPaを超えると得られる積層ポリオレフィン微多孔膜の細孔がつぶれるおそれがある。0.05MPa未満ではニップ圧が十分でなく滑り抑制効果が得られず、また、成膜用溶剤の絞り出し効果も得られにくい。ニップロールのニップ圧の下限は0.1MPaが好ましく、より好ましくは0.2MPaであり、上限は0.5MPaが好ましく、より好ましくは0.4MPaである。ニップロールのニップ圧が上記範囲内であると、適度な滑り抑制効果が得られる。
【0067】
また、ニップロールは耐熱性ゴムで被覆する必要がある。縦延伸工程中、熱や張力による圧力でゲル状シートから成膜用溶剤がブリードアウトし、特に、押出し直後の縦延伸工程でのブリードアウトは顕著である。ブリードアウトした成膜用溶剤がシートとロール表面の境界に介在しながら、シートの搬送や延伸が行われることになり、シートは滑りやすい状態となる。耐熱性ゴムで被覆したニップロールを縦延伸ロールに平行に接するように配置し、未延伸ゲル状シートを通過させことによって、延伸中のゲル状シートから成膜用溶剤を絞り出しながら延伸することができ、これによって滑りが抑制することができる。
【0068】
ニップロールは、直径100mm〜300mmの金属ロールに厚さ3〜20mmの耐熱性ゴムで被覆したロールが好ましい。耐熱性ゴム部分の体積が80%以上を占める所謂ゴムロールではたわみやすく、幅方向に対して均一な圧力を与えにくいため好ましくない。
【0069】
縦延伸工程において、縦延伸ロール及びニップロールに付着した成膜用溶剤をとり除く方法(掻き取り手段ともいう)を併用するとさらに効果的に滑り抑制効果が得られる。掻き取り手段は特に限定されないが、ドクターブレード、圧縮空気で吹き飛ばす、吸引する、またはこれらの方法を組み合わることができる。特に、ドクターブレードを用いて掻き落とす方法は比較的容易に実施できるため好ましい。縦延伸ロール上にドクターブレードを縦延伸ロールの幅方向と平行になるようにあてて、ドクターブレードを通過した直後から延伸中のゲル状シートが接するまでの延伸ロール表面に成膜用溶剤が視認できない程度に掻き落とす方法が好ましい。ドクターブレードは1枚でもよいし、複数枚用いてもよい。また、掻き取り手段は縦延伸ロール又はニップロールのいずれに設置してもよく、あるいは両方に設置してもよい。
【0070】
ドクターブレードの材質は、成膜用溶剤に耐性を有するものであれば特に限定されないが、金属製より、仮にドクターブレードの削れ粉が積層ポリオレフィン微多孔膜に混入しても電気的に悪影響を及ぼさない樹脂製あるいはゴム製が好ましい。金属製の場合、延伸ロールにキズつけてしまうおそれがある。樹脂製ドクターブレードとしては、ポリエステル製、ポリアセタール製、ポリエチレン製などが挙げられる。
【0071】
(e)横延伸工程
横延伸工程としては、縦延伸ゲル状シートの両端をクリップを用いて固定した後、テンター内で前記クリップを横方向に拡張させて縦延伸ゲル状シートを横方向に延伸し、二軸延伸ゲル状シートを得る。ここでシート進行方向のクリップ間距離はテンター入り口から出口まで50mm以下で維持されることが好ましく、より好ましくは25mm以下、さらに好ましくは10mm以下とする。また、クリップ間距離は上記範囲内で一定であることが好ましい。クリップ間距離が上記好ましい範囲内にあると幅方向のF25値の変動幅を抑えることができる。
【0072】
横延伸工程又は熱処理工程では急激な温度変化の影響を抑制するために、テンター内を10〜30ゾーンに分割し、各ゾーンで独立して温度制御することが好ましい。特に、熱処理工程の最高温度に設定されたゾーンにおいては、各ゾーンの温度をシート進行方向に対して段階的に熱風によって昇温させて、熱処理工程における各ゾーン間での急激な温度変化がおきないようにすることが好ましい。
【0073】
(f)前記二軸延伸ゲル状シートから成膜用溶剤を除去し、乾燥する工程
前記二軸延伸ゲル状シートから除去洗浄溶剤を用いて、成膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。洗浄溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素、塩化メチレン、四塩化炭素などの塩素化炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭化水素、ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などの易揮発性のものを用いることができる。これらの洗浄溶剤はポリエチレンの溶解に用いた成膜用溶剤に応じて適宜選択し、単独もしくは混合して用いる。洗浄方法は、洗浄溶剤に浸漬し抽出する方法、洗浄溶剤をシャワーする方法、洗浄溶剤をシートの反対側から吸引する方法、またはこれらの組合せによる方法などにより行うことができる。上述のような洗浄は、シートの残留溶剤が1重量%未満になるまで行う。その後、シートを乾燥するが、乾燥方法は加熱乾燥、風乾などの方法で行うことができる。
【0074】
(g)前記乾燥後のシートを熱処理して積層ポリオレフィン微多孔膜を得る工程
乾燥後のシートを熱処理して積層ポリオレフィン微多孔膜を得る。熱処理は熱収縮率及び透気抵抗度の観点から90〜150℃の範囲内の温度で行うのが好ましい。熱処理工程の滞留時間は、特に限定されることはないが、通常は1秒以上10分以下が好ましく、より好ましくは3秒以上2分以下である。熱処理はテンター方式、ロール方式、圧延方式、フリー方式のいずれも採用できる。
【0075】
熱処理工程では長さ方向及び幅方向の両方向の固定をしながら、長さ方向及び幅方向の少なくとも一方向に収縮させるのが好ましい。熱処理工程によって積層ポリオレフィン微多孔膜の残留歪の除去を行うことができる。熱処理工程のおける長さ方向又は幅方向の収縮率は、熱収縮率及び透気抵抗度の観点から0.01〜50%が好ましく、より好ましくは3〜20%である。さらに、機械的強度向上のために再加熱し、再延伸してもよい。再延伸工程は延伸ロール式もしくはテンター式のいずれでもよい。なお、(a)〜(f)の工程の後、必要に応じてコロナ処理工程や親水化工程等の機能付与工程を設けてもよい。
【0076】
上述のように高度に縦延伸及び横延伸を制御することによって、積層ポリオレフィン微多孔膜の長さ方向のF25値の変動幅を小さくすることができる。これにより、後述する多孔層の積層工程において塗工厚の変動幅を小さくしやすくなるだけでなく、巻き姿の良好な電池用セパレータ捲回体が得られる。さらに、F25値の変動幅を1MPa以下とすることでスリット工程や塗工工程における搬送中の蛇行を、例えば、リワインダーによる巻き上げ時の搬送速度が50m/分を超えるような高速で加工する場合であっても抑制することができる。
【0077】
積層ポリオレフィン微多孔膜の幅は特に制限はないが、下限は500mmが好ましく、より好ましくは600mm、さらに好ましくは1000mmであり、上限は4000mmが好ましく、より好ましくは3000mm、さらに好ましくは2000mmである。積層ポリオレフィン微多孔膜の厚さが上記範囲であると、高容量の電池作製に適し、自重によるたわみが生じにくい。
【0078】
積層ポリオレフィン微多孔膜の長さは、下限は1000mが好ましく、より好ましくは2000m、さらに好ましくは3000mである。上限は特に定めないが10000mが好ましく、より好ましくは8000m、さらに好ましくは7000mである。積層ポリオレフィン微多孔膜の長さが上記範囲であると、生産性を向上させ、捲回体とした場合に自重によりたわみが生じにくい。
【0079】
積層ポリオレフィン微多孔膜の厚さは電池の高容量化の観点から5〜25μmが好ましい。
【0080】
積層ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度は、50sec/100ccAir〜300sec/100ccAirが好ましい。
【0081】
積層ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、30〜70%が好ましい。
【0082】
積層ポリオレフィン微多孔膜の平均孔径については、孔閉塞性能の観点から、好ましくは0.01〜1.0μmが好ましい。
【0083】
2.多孔層
次に、多孔層について説明する。
本発明でいう多孔層とは、耐熱性、電極材料との密着性、電解液浸透性などの機能を少なくとも一つを付与、または向上させるものである。多孔層は無機粒子とバインダーで構成される。
【0084】
バインダーとは、前記機能を付与又は向上させるとともに無機粒子同士を結合させる役割、積層ポリオレフィン微多孔膜と多孔層とを結合させる役割を有するものである。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、セルロースエーテル系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。セルロースエーテル系樹脂としてはカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロース、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。また、バインダーは水溶液または水分散液として用いることができ、市販されているものでもよい。市販されているものとしては、例えば、日新化成(株)製“POVACOAT”(登録商標)、東亜合成(株)製“ジュリマー”(登録商標)AT−510、ET−410、FC−60、SEK−301、大成ファインケミカル(株)製UW−223SX、UW−550CS、DIC(株)製WE−301、EC−906EF、CG−8490、アルケマ(株)製“KYRNAR”(登録商標)WATERBORNE、東日本塗料(株)製VINYCOAT PVDF AQ360などが挙げられる。耐熱性を重視する場合はポリビニルアルコール、アクリル系樹脂が好適であり、電極接着性、非水電解液との親和性を重視する場合はポリフッ化ビニリデン系樹脂が好適である。
【0085】
無機粒子の平均粒径は、積層ポリオレフィン微多孔膜の平均細孔径の1.5倍以上、50倍以下であることが好ましく、より好ましくは2倍以上、20倍以下である。粒子の平均粒径が上記好ましい範囲であると、耐熱性樹脂と粒子が混在した状態で積層ポリオレフィン微多孔膜の細孔を塞ぐのを防ぎ、結果として透気抵抗度を維持できる。また、電池組み立て工程において粒子が脱落し、電池の重大な欠陥を招くのを防ぐ。
【0086】
電極材料に起因するデンドライトに起因する短絡を防止するために、多孔層には無機粒子が含まれることが重要である。無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカ、ベーマイトなどが挙げられる。また、必要に応じて耐熱性架橋高分子粒子を添加してもよい。耐熱性架橋高分子粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子などが挙げられる。無機粒子の形状は真球形状、略球形状、板状、針状、多面体形状が挙げられるが特に限定されない。
【0087】
多孔層に含まれる無機粒子の含有量は、上限は98vol%が好ましく、より好ましくは95vol%である。下限は50vol%が好ましく、より好ましくは60vol%である。粒子の添加量が上記好ましい範囲であるとカール低減効果が十分であり、多孔層の総体積に対して機能性樹脂の割合が最適である。
【0088】
多孔層の平均厚みT(ave)は、下限は1μmが好ましく、より好ましくは1.5μm、さらに好ましくは2.0μmであり、上限は5μmが好ましく、より好ましくは4μm、さらに好ましくは3μmである。多孔層の膜厚が上記好ましい範囲であると、多孔層の厚み変動幅(R)を抑制できる。多孔層を積層して得られた電池用セパレータは融点以上で溶融・収縮した際の破膜強度と絶縁性を確保できる。また、巻き嵩を抑制することができ電池の高容量化には適する。
【0089】
多孔層の空孔率は、30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜70%である。所望の空孔率は、無機粒子の濃度、バインダー濃度などを適宜調整することで得られる。
【0090】
3.積層ポリオレフィン微多孔膜への多孔層の積層方法
次に、本発明における積層ポリオレフィン微多孔膜への多孔層の積層方法について説明する。
本発明は、長さ方向のF25値の変動幅が1MPa以下である積層ポリオレフィン微多孔膜に多孔層を積層することで電池用セパレータを得ることができる。本発明の積層ポリオレフィン微多孔膜を用いることによって塗工ロールとの接線(以下、塗工接線と略記する。)における接触圧力が積層ポリオレフィン微多孔膜の長さ方向に対して均一になりやすく、塗工厚を均一にしやすくなる。
【0091】
積層ポリオレフィン微多孔膜へ多孔層を積層する方法は、例えば、後述する公知のロールコート法を用いて、樹脂、無機粒子及び分散溶媒を含む塗工液を積層ポリオレフィン微多孔膜に所定の膜厚になるように後述する方法で塗工し、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間5秒から60秒の条件下で乾燥させる方法がある。溶媒とは、例えば、水、アルコール類、及びこれらの混合液などが挙げられる。
【0092】
ロールコート法としては、例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法などが挙げられ、これらの方法は単独又は組み合わせて行うことができる。なかでも塗工厚の均一化の観点からはグラビアコート法が好ましい。
【0093】
本発明ではロールコート法におけるロールと積層ポリオレフィン微多孔膜との塗工接線の太さが、3mm以上、10mm以下であることが好ましい。塗工接線の太さが10mmを超えると積層ポリオレフィン微多孔膜と塗工ロールとの接触圧力が大きく、塗工面にキズが入りやすくなる。
【0094】
本明細書でいう塗工接線とは、塗工ロールと積層ポリオレフィン微多孔膜が接する線であり、塗工接線の太さとは塗工接線の長さ方向の幅を意味する(
図5参照)。塗工接線の太さは、塗工ロールと積層ポリオレフィン微多孔膜の塗工接線を積層ポリオレフィン微多孔膜の裏面から観察することによって測定することができる。塗工接線の太さを調整するには、積層ポリオレフィン微多孔膜に対する塗工ロールの位置を前後に調整するほか、塗工面の背後に配したバックロールの水平方向に対する左右の位置バランスを調整することによって可能である。バックロールは塗工ロールに対して上流側、下流側の両方に配置することがより効果的である。
【0095】
ロールコート法における塗工ロールの振れ精度は、10μm/Φ100mm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm/Φ100mm以下、さらに好ましくは5μm/Φ100mm以下である。塗工ロールの振れ精度が上記範囲内であると、長さ方向に対しても均一な塗工厚さが得られやすくなる。塗工ロールの振れ精度が高くなるほど高価になるが、本発明の課題を為しえるためには重要である。
【0096】
本明細書でセパレータの長さ方向における多孔層の厚みが均一とは、セパレータが長さ1000m以上に対して厚みの変動幅(R)が1.0μm以下であることを意味する。厚みの変動幅(R)は0.8μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以下である。
【0097】
塗工液の固形分濃度は、均一に塗工できれば特に制限されないが20重量%以上、80重量%以下が好ましく、50重量%以上、70重量%以下がより好ましい。塗工液の固形分濃度が上記好ましい範囲であると均一な塗工厚が得られやすくなり、多孔層が脆くなるのを防ぐことができる。
【0098】
4.電池用セパレータ
積層ポリオレフィン微多孔膜に多孔層を積層して得られた電池用セパレータの膜厚は、機械強度、電池容量の観点から6μm〜30μmが好ましい。電池用セパレータの幅は特に制限はないが、下限は30mmが好ましく、より好ましくは60mm、さらに好ましくは100mmであり、上限は2000mmが好ましく、より好ましくは1000mm、さらに好ましくは800mmである。電池用セパレータの厚さが上記範囲であると、高容量の電池作製に適し、自重によるたわみが生じにくい。
【0099】
電池用セパレータの長さは、下限は1000mが好ましく、より好ましくは2000m、さらに好ましくは3000mである。上限は特に定めないが10000mが好ましく、より好ましくは8000m、さらに好ましくは7000mである。電池用セパレータの長さの長さが上記範囲であると、生産性を向上させ、捲回体とした場合に自重によりたわみが生じにくい。
【0100】
電池用セパレータは、乾燥状態で保存することが望ましいが、絶乾状態での保存が困難な場合は、使用の直前に100℃以下の減圧乾燥処理を行うことが好ましい。
【0101】
本発明の電池用セパレータは、ニッケル−水素電池、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−亜鉛電池、銀−亜鉛電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池、およびプラスチックフィルムコンデンサ、セラミックコンデンサ、電気二重層コンデンサなどのセパレータとして用いることができるが、特にリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いるのが好ましい。以下にリチウムイオン二次電池を例にとって説明する。リチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層された電極体と電解液(電解質)を含有している。電極体の構造は特に限定されず、公知の構造であってよい。例えば、円盤状の正極及び負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極及び負極が交互に積層された電極構造(積層型)、帯状の正極及び負極が重ねられて巻回された電極構造(巻回型)等の構造とすることができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例よって何ら制限されるものではない。なお、実施例中の測定値は以下の方法で測定した値である。
【0103】
1.F25値の変動幅の測定
実施例及び比較例で得られた積層ポリオレフィン微多孔膜の幅方向に対してTD10mm×MD50mmの試験片を等間隔に5点切り出した。両端部の試験片は微多孔膜の幅方向の端部から30〜40mmの箇所から切り出した。JIS K7113に準じ、卓上形精密万能試験機(オートグラフAGS‐J((株)島津製作所製))を用いて、試験片の長さ方向のSS曲線(垂直応力(stress)と垂直歪み(strein)との関係)を求めた。垂直歪みが25%伸長した時点での垂直応力値を読み取り、その値を試験前の各試験片の断面積で除した値をF25値とし、5点の幅方向の平均値を求めた。長さ方向に対して250m間隔で5箇所について、F25値の幅方向の各平均値を求め、その最大値と最小値の差からF25値の変動幅を求めた。なお、電池用セパレータから多孔層を剥離除去した積層ポリオレフィン微多孔膜を試験片に供してもよい。
・測定条件
ロードセル容量:1kN
クリップ間距離:20mm
試験速度:20mm/min
測定環境:気温20℃、相対湿度60%
【0104】
2.多孔層の膜厚の長さ方向の変動幅(R)
実施例及び比較例で得られた積層ポリオレフィン微多孔膜の幅方向に対してTD10mm×MD50mmの試験片を等間隔に5点切り出した。両端部の試験片は微多孔膜の幅方向の端部から30〜40mmの箇所から切り出した。各試験片の断面をSEM観察することによって多孔層の厚みを求めた。断面試験片はクライオCP法を用いて作製し、電子線によるチャージアップを防ぐため、僅かに金属微粒子を蒸着してSEM観察を行った。無機粒子の存在領域を多孔層として膜厚を測定し、5点の幅方向の平均値を求めた。長さ方向に対して250m間隔で5箇所について幅方向の各平均値を求め、その最大値と最小値の差から長さ方向に対する多孔層の厚みの変動幅(R)とした。上記計25点の試験片の厚みの平均値を多孔層の平均厚みT(ave)とした。
・測定装置
電界放射型走査電子顕微鏡(FE‐SEM)S‐4800((株)日立ハイテクノロジ−ズ製)
クロスセクションポリッシャ(CP)SM‐9010(日本電子(株)製)
・測定条件
加速電圧:1.0kV
【0105】
3.縦延伸ロールの表面温度の変動幅
各ロールの表面を赤外放射温度計で5分間ごとに5回測定し、最大値と最小値の差から縦延伸ロールの表面温度の変動幅を求めた。
【0106】
4.塗工接線の太さ測定
塗工接線とは、塗工の際に塗工ロールと積層ポリオレフィン微多孔膜が接する幅方向の線である。塗工接線の太さとは、塗工接線の長さ方向の幅であり、積層ポリオレフィン微多孔膜の裏面を通してスケールを用いて読み取った値をいう。
【0107】
5.巻き姿
実施例及び比較例で得られた電池用セパレータの捲回体を目視で観察を行い、たわみ、巻きずれの発生している箇所の数を数えた。
・判定基準
○(良好):なし
△(良好):1〜3ヶ所
×(不良):4ヶ所以上
【0108】
6.キズの評価
実施例及び比較例で得られた電池用セパレータの捲回体から最外周部分を取り除いた後、内周部分1m
2を引き出し、評価用試料とした。キズの検出には、ブロムライト(写真撮影、ビデオ撮影時用いる照明器具)を塗工面に照射し、キズを目視で検出し、数を数えた。
・判定基準
○(良好):1箇所以下
△(良好):2〜5箇所
×(不良):6箇所以上
【0109】
7.膜厚
接触式膜厚計((株)ミツトヨ製 ライトマチック series318)を使用して20点の測定値を平均することによって求めた。超硬球面測定子φ8.5mmを用い、加重0.01Nの条件で測定した。
【0110】
8.平均孔径
積層ポリエチレン微多孔膜の平均孔径は以下の方法で測定した。試料を測定用セルの上に両面テープを用いて固定し、プラチナまたは金を数分間真空蒸着させ、適度な倍率で膜の表面をSEM測定した。SEM測定で得られた画像上で任意の10箇所を選択し、それら10箇所の孔径の平均値を試料の平均孔径とした。
【0111】
9.透気抵抗度(sec/100ccAir)
テスター産業(株)製のガーレー式デンソメーターB型を使用して、積層ポリエチレン微多孔膜又は電池用セパレータをクランピングプレートとアダプタープレートの間にシワが入らないように固定し、JIS P8117に従って測定した。試料は10cm角とし、測定点は試料の中央部と4隅の計5点として、その平均値を透気抵抗度として用いた。なお、試料の1辺の長さが10cmに満たない場合は5cm間隔で5点測定した値を用いてもよい。
透気抵抗度の上昇幅は下記の式より求めた。
透気抵抗度の上昇幅=(Y)−(X)sec/100ccAir
積層ポリエチレン微多孔膜の透気抵抗度(X)sec/100ccAir
電池用セパレータの透気抵抗度(Y)sec/100ccAir
【0112】
10.シャットダウン温度
積層ポリエチレン微多孔膜を5℃/minの昇温速度で加熱しながら、王研式透気抵抗度計(旭精工株式会(株)製、EGO−1T)により透気抵抗度を測定し、透気抵抗度が検出限界である1×10
5秒/100ccAirに到達した温度を求め、シャットダウン温度(℃)とした。
【0113】
11.透気抵抗度上昇率
上記7.のシャットダウン温度測定において得られた、厚みT1(μm)の積層ポリエチレン微多孔膜の、温度と透気抵抗度Pのデータから、温度30℃〜105℃における温度と透気抵抗度Pの相関図を作図し、最小二乗法により傾きPa(sec/100ccAir/℃)を算出した。算出したPaを式:Pb=Pa/T1×20により、膜厚を20μmとして規格化し、30℃〜105℃における透気抵抗度上昇率Pb(秒/100ccAir/μm/℃)を算出した。
【0114】
12.積層ポリオレフィン微多孔膜の空孔率
10cm角の試料を用意し、その試料体積(cm
3)と質量(g)を測定し得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算した。
空孔率=(1−質量/(樹脂密度×試料体積))×100
【0115】
13.重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
MwおよびMw/Mnは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC−150C
・カラム:昭和電工(株)製“Shodex”(登録商標) UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0ml/分
・試料濃度:0.1質量%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作製した。
【0116】
14.メルトフローレート(MFR)
JIS−K7210に準じて、温度190℃、荷重2.16gで測定した。
【0117】
15.融点
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の示差走査熱量計(DSC)DSC6220を用い、窒素ガス雰囲気下で樹脂試料5mgを昇温速度20℃/分で昇温したとき観察される融解ピークの頂点温度を融点とした。
【0118】
(塗工液の作製)
参考例1
バインダ−としてポリビニルアルコール(平均重合度1700、ケン化度99%以上)、無機粒子として平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、イオン交換水をそれぞれ6:54:40の重量比率で配合して十分に攪拌し、均一に分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、塗工液(a)を得た。
【0119】
参考例2
バインダ−としてポリビニルアルコールとアクリル酸、メタクリル酸メチルの共重合体(“POVACOAT”(登録商標)、日新化成(株)製)、無機粒子として平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、溶媒(イオン交換水:エタノール=70:30)をそれぞれ5:45:50の重量比率で配合し、十分に攪拌し、均一に分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、塗工液(b)を得た。
【0120】
参考例3
バインダ−としてポリフッ化ビニリデン系樹脂の水系エマルション(VINYCOAT
PVDF AQ360、東日本塗料(株)製)、無機粒子として平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、イオン交換水をそれぞれ30:30:40の重量比率で配合して十分に攪拌し、均一に分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、塗工液(c)を得た。
【0121】
(積層ポリオレフィン微多孔膜の製造)
実施例1
重量平均分子量が200万の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)18質量%及び重量平均分子量が35万の高密度ポリエチレン(HDPE)82質量%からなる組成物100質量%に、酸化防止剤テトラキス−[メチレン−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.375質量%を加えた第一のポリエチレン組成物(融点135℃)を得た。この第一のポリエチレン組成物25質量%を二軸押出機に投入した。この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン75質量%を供給し、溶融混練して、押出機中にて第一のポリエチレン樹脂溶液を調製した。
一方、重量平均分子量が200万の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)17.5質量%及び重量平均分子量が30万の高密度ポリエチレン(HDPE)57.5質量%、MFRが135g/10minで、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・1−ヘキセン共重合体)25質量%からなる組成物100質量%に、酸化防止剤(テトラキス−[メチレン−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン)0.375質量%を加えた第二のポリエチレン組成物(融点128℃)を得た。この第二のポリエチレン組成物25質量%を二軸押出機に投入した。この二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン75質量%を供給し、溶融混練して、押出機中にて第二のポリエチレン樹脂溶液を調製した。
得られた第一のポリエチレン樹脂溶液および第二のポリエチレン樹脂溶液を、層構成が第一/第二/第一で溶液比率が1/2/1となるように積層ダイから190℃で共押し出しして、内部冷却水温度を25℃に保った直径800mmの冷却ロールで引き取りながら未延伸ゲル状シートを形成した。
得られた未延伸ゲル状シートを、シート表面の温度が110℃になるように、4本の予熱ロール群を通過させ、
図1に示す縦延伸装置Aに導いた。縦延伸ロールには、幅1000mm、直径300mm、ハードクロムメッキが施された金属ロール(表面粗度0.5S)を用いた。なお、各縦延伸ロールの表面温度は110℃であった。ドクターブレードにはポリエステル製のドクターブレードを用いた。また、ニップロールにはニトリルゴム被覆ロール((株)加貫ローラ製作所製)を用いた。縦延伸装置として縦延伸装置Aを用い、川下に進む方向に段階的に延伸ロールの周速を増大させ、第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.3、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比1.5、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比1.8、第4延伸ロールと第5延伸ロールの周速比2.1に設定した。また、隣り合う延伸ロールの間隔は延伸中のゲル状シートが延伸ロールから離れて次の延伸ロールに接するまでの距離を200mmとし、各ニップロールの圧力は0.3MPaとした。さらに、各延伸ロールの表面温度変動幅は±2℃となるよう制御した。次いで、4本の冷却ロールを通過させし、シート温度が50℃になるよう冷却し、縦延伸ゲル状シートを形成した。
得られた縦延伸ゲル状シートの両端部をクリップで把持し、20ゾーンに分割されたテンター内で、温度115℃で横方向に6倍延伸し、二軸延伸ゲル状シートを成形した。このときシート進行方向に対してクリップの間隔はテンター入り口から出口まで5mmとした。得られた二軸延伸ゲル状シートを30℃まで冷却し、25℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて流動パラフィンを除去し、60℃に調整された乾燥炉で乾燥した。
得られた乾燥後のシートを
図4に示す再延伸装置にて縦倍率1.2倍となるよう再延伸し、125℃、20秒間熱処理し、厚さ14μmの積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。さらに、巻き上げ時の搬送速度を50m/分で幅4000mm、巻き長5050mの積層ポリオレフィン微多孔膜捲回体を得た。得られた捲回体から積層ポリオレフィン微多孔膜を繰り出し、幅950mmにスリット加工して塗工用基材として用いる積層ポリオレフィン微多孔膜Aを得た。
【0122】
実施例2
第一のポリエチレン組成物の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)の配合比を表1のとおりに調整した以外は実施例1と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Bを得た。
【0123】
実施例3
縦延伸装置として縦延伸装置Aの替わりに
図2に示す縦延伸装置Bを用いた以外実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Cを得た。
【0124】
実施例4
縦延伸装置として縦延伸装置Aの替わりに
図3に示す縦延伸装置Cを用いた以外実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Dを得た。
【0125】
実施例5
縦延伸装置として縦延伸装置Aの替わりに
図4に示す縦延伸装置Dを用い、縦延伸装置Dの第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.5、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比2.0、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比2.5に設定した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Eを得た。
【0126】
実施例6
縦延伸装置において、各ニップロールの圧力を0.1MPaとした以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Fを得た。
【0127】
実施例7
縦延伸装置において、各ニップロールの圧力を0.5MPaとした以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Gを得た。
【0128】
実施例8
各ポリエチレン樹脂溶液の押し出し量を調整し、実施例2と同様にして、厚さ7μmの積層ポリオレフィン微多孔膜Hを得た。
【0129】
実施例9
縦延伸装置Aにおいて、5本の縦延伸ロールとも表面粗度が5.0Sのセラミック被覆金属ロールを用いた以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Iを得た。
【0130】
実施例10
縦延伸装置Aの第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.2、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比1.5、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比1.8、第4延伸ロールと第5延伸ロールの周速比2.3に設定した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Jを得た。
【0131】
実施例11
縦延伸装置Aの第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.3、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比1.7、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比1.8、第4延伸ロールと第5延伸ロールの周速比1.9に設定した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Kを得た。
【0132】
実施例12〜15
第二のポリエチレン組成物中に含まれる低融点樹脂を表に1記載のとおりに変更した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜L,M,N、Oを得た。
【0133】
実施例16
第二のポリエチレン組成物中に含まれる低融点樹脂の添加量を表1のとおりに調整した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Pを得た。
【0134】
実施例17
層構成が第一/第二/第一で溶液比率が1.5/2/1.5となるようにした以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Qを得た。
【0135】
実施例18
第一のポリエチレン組成物の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)の配合比を表1のとおりに調整した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜Rを得た。
【0136】
比較例1
実施例2で成形された未延伸ゲル状シートの両端部をクリップで把持し、温度116℃に調節した5ゾーンに分割されたテンターに導き同時二軸延伸法で縦方向に7倍、横方向に7倍に延伸して同時二軸延伸ゲル状シートを成形した。このとき、クリップの間隔は、シート進行方向に対してテンター入り口では5mmであり、テンター出口では95mmであった。次いで、同時二軸延伸ゲル状シートを30℃まで冷却し、25℃に温調した塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄し、流動パラフィンを除去したシートを60℃に調整された乾燥炉で乾燥し、積層ポリオレフィン微多孔膜を得た。さらに、巻き上げ時の搬送速度を50m/分で幅4000mm、巻き長5050mの積層ポリオレフィン微多孔膜捲回体を得た。得られた捲回体から積層ポリオレフィン微多孔膜を繰り出し、幅950mmにスリット加工して塗工用基材として用いる積層ポリオレフィン微多孔膜aを得た。
【0137】
比較例2
縦延伸装置Aにおいて、5本の延伸ロールともニップロールを用いなかったこと以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜bを得た。
【0138】
比較例3
縦延伸装置として縦延伸装置Bを用い、5本の延伸ロールともニップロールを用いなかったこと以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜cを得た。
【0139】
比較例4
縦延伸装置Aにおいて、各ニップロールの圧力は0.04MPaとした以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜dを得た。
【0140】
比較例5
縦延伸装置Aにおいて、縦延伸ロールを表面粗度0.1Sのハードクロムメッキされた金属ロールを用いた以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜eを得た。
【0141】
比較例6
縦延伸装置Aの第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.6、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比1.6、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比1.7、第4延伸ロールと第5延伸ロールの周速比1.7に設定した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜fを得た。
【0142】
比較例7
縦延伸装置Aの第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.1、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比1.3、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比1.5、第4延伸ロールと第5延伸ロールの周速比3.5に設定した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜gを得た。
【0143】
比較例8
縦延伸装置Aの第1延伸ロールと第2延伸ロールの周速比1.3、第2延伸ロールと第3延伸ロールの周速比1.7、第3延伸ロールと第4延伸ロールの周速比1.8、第4延伸ロールと第5延伸ロールの周速比1.9に設定した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜hを得た。
【0144】
比較例9
ポリエチレン溶液Aのみを用いて、190℃で単層ダイから押し出ししてゲル状シートを成形し、得られた単層ゲル状シートを使用した以外は実施例2と同様にしてポリオレフィン微多孔膜iを得た。
【0145】
比較例10
第二のポリエチレン組成物中に含まれる低融点樹脂としてMFRが3.2g/10minのエチレン・1−ヘキセン共重合体を用いた以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜jを得た。
【0146】
比較例11
第一のポリエチレン組成物の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)と高密度ポリエチレン(HDPE)の配合比を表1のとおりに調整した以外は実施例2と同様にして積層ポリオレフィン微多孔膜kを得た。
【0147】
実施例19
実施例1で得られた積層ポリオレフィン微多孔膜Aに
図5に示す塗工装置(グラビアコート法)を用いて搬送速度50m/分で塗工液(a)を塗工し、50℃の熱風乾燥炉を10秒間通過させることで乾燥し電池用セパレータを得た。このとき、塗工装置の塗工ロールとバックロールの位置を調整し、塗工接線の太さが3〜5mmの範囲内になるようにした。また、塗工ロールは直径100mmのグラビアロールで振れ精度が8μm/Φ100mmのものを用いた。次いで、スリット加工し、電池用セパレータの厚み17μm、幅900mm、巻き長5000mの電池用セパレータを得た。
【0148】
実施例20〜36
実施例2〜18で得られた積層ポリオレフィン微多孔膜B〜Rを用いた以外は実施例19と同様にして電池用セパレータを得た。
【0149】
実施例37
塗工液(a)を塗工液(b)に替えた以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0150】
実施例38
塗工液(a)を塗工液(c)に替えた以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0151】
実施例39
塗工ロールを直径100mmのグラビアロールで振れ精度が10μm/Φ100mmのものを用いた以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0152】
実施例40
塗工ロールを直径100mmのグラビアロールで振れ精度が5μm/Φ100mmのものを用いた以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0153】
実施例41
塗工装置のグラビアロールとバックロールの位置を調整し、塗工接線の太さが5〜7mmの範囲とした以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0154】
実施例42
塗工装置のグラビアロールとバックロールの位置を調整し、塗工接線の太さが8〜10mmの範囲とした以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0155】
実施例43
塗工装置におけるグラビアロールのセル容量を変更して、多孔層厚み5μmとした以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0156】
実施例44
塗工装置のグラビアロールとバックロールの位置を調整し、塗工接線の太さが11〜13mmの範囲とした以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0157】
実施例45
塗工ロールを直径100mmのグラビアロールで振れ精度が12μm/Φ100mmのものを用いた以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0158】
実施例46
多孔層厚み8μmとなるように塗工装置におけるグラビアロールのセル容量を変更した以外は実施例20と同様にして電池用セパレータを得た。
【0159】
比較例12〜22
比較例1〜11で得られた積層ポリオレフィン微多孔膜a〜kを用いた以外は実施例19と同様にして電池用セパレータを得た。
【0160】
表1に実施例1〜18、表2に比較例1〜11における積層ポリオレフィン微多孔膜の製造条件を示す。
【0161】
表3に実施例19〜46、表4に比較例12〜22における電池用セパレータの製造条件、電池用セパレータの特性及びその捲回体の特性を示す。
【0162】
【表1】
【0163】
【表2】
【0164】
【表3】
【0165】
【表4】
本発明は、シャットダウン特性に優れ、多孔層の厚みを均一に設けるのに適した積層ポリオレフィン微多孔膜を提供する。また、本発明は積層ポリオレフィン微多孔膜に多孔層の厚みを均一に設けた電池の高容量化に適した電池用セパレータを提供する。
第一のポリオレフィン微多孔膜と第二のポリオレフィン微多孔膜とを有し、シャットダウン温度が128〜135℃、厚み20μmあたり30℃から105℃における透気抵抗度上昇率が1.5sec/100ccAir/℃未満、長さ方向におけるF25値の変動幅が1MPa以下である、長さ1000m以上の積層ポリオレフィン微多孔膜。(ここで、F25値とは引張試験機を用いて試験片が25%伸びた時の荷重値を試験片の断面積で除した値を表す。)