特許第6105212号(P6105212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6105212アルキレンオキサイド付加物、その製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105212
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】アルキレンオキサイド付加物、その製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/11 20060101AFI20170316BHJP
   C07C 41/03 20060101ALI20170316BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20170316BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   C07C43/11CSP
   C07C41/03
   C11D1/722
   B01D19/04 B
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2012-113360(P2012-113360)
(22)【出願日】2012年5月17日
(65)【公開番号】特開2013-237819(P2013-237819A)
(43)【公開日】2013年11月28日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂樹
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−046189(JP,A)
【文献】 特開2004−182902(JP,A)
【文献】 特開2010−121142(JP,A)
【文献】 特開2004−035576(JP,A)
【文献】 特開平10−202080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/10−43/11
C11D 1/722
B01F 17/00−17/56
C08G 65/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(PO)r−H (1)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20、q=1〜30およびr=1〜10である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物であって、
前記アルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足し、EEO−Rと平均付加モル数pおよびqとの関係が下記数式(VI)をさらに満足する、アルキレンオキサイド付加物。
1≦E≦45 (I−A)
1≦EEO−R≦50 (II−A)
0≦EEO−OH0.6 (III−A)
99.5≦EOH≦100 (IV−A)
EO−R<100×q/(p+q) (VI)
【請求項2】
下記数式(II−B)をさらに満足する、請求項1に記載のアルキレンオキサイド付加物。
5≦EEO−R≦50 (II−B)
【請求項3】
下記数式(III−C)および(IV−C)をさらに満足する、請求項1または2に記載のアルキレンオキサイド付加物。
EO−OH=0 (III−C)
OH=100 (IV−C)
【請求項4】
前記Rの炭素数が8〜20である、請求項1〜3のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項5】
重量平均分子量が200〜3000である、請求項1〜4のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項6】
ブチルジグリコール法(BDG法)により測定される曇点が20〜95℃である、請求項1〜5のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物。
【請求項7】
下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程1と、
前記工程1の終了後に、プロピレンオキサイドを160℃以下で供給して付加反応させる工程2とを含む、アルキレンオキサイド付加物の製造方法であって、
前記工程1において、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時をT0、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあるとき、
T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[EO/PO]T0、[EO/PO]T100、[EO/PO]T1および[EO/PO]T2として、下記数式(B)〜(D)を同時に満足する、アルキレンオキサイド付加物の製造方法。
0<[EO/PO]T0<1 (B)
1<[EO/PO]T100<100 (C)
0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<10 (D)
【請求項8】
下記数式(B−1)および(C−1)をさらに満足する、請求項7に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
0.1<[EO/PO]T0<0.5 (B−1)
2<[EO/PO]T100<20 (C−1)
【請求項9】
下記数式(D−1)をさらに満足する、請求項7または8に記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
0.9<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<1.2 (D−1)
【請求項10】
前記工程2において、プロピレンオキサイドを100〜150℃で供給して付加反応させる、請求項7〜9のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする、洗浄剤。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれかに記載のアルキレンオキサイド付加物を必須成分とする、消泡剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンオキサイド付加物、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高級アルコールのエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等のアルキレンオキサイド付加物は、低温での流動性や安定性に優れるため、洗浄剤、消泡剤、乳化剤、分散剤、油相成分調整剤、浸透剤、ポリマー原料等の様々な産業用途で利用されてきた。これらの用途では、低起泡性等のハンドリング性能に優れることが望ましい。しかし、低起泡性や消泡性を高めると、本来的に重要な性能である洗浄力が低下するといったデメリットが生じることがある。
アルキレンオキサイド付加物の性能最適化のために、様々な構造設計が検討されてきた。たとえば、特許文献1には、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのランダム付加物;特許文献2には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイド、次いでプロピレンオキサイドの順に付加させて得られるブロック付加物;特許文献3には、アルコールに対して最初にプロピレンオキサイド、次いでエチレンオキサイドの順に付加させて得られるブロック付加物;特許文献4には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのランダム付加を行い、次にエチレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物;特許文献5には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのランダム付加を行い、次にエチレンオキサイドの付加を行い、さらにプロピレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物;特許文献6には、アルコールに対して最初にエチレンオキサイド、次いでプロピレンオキサイドを付加させ、さらにエチレンオキサイドを付加させて得られるブロック付加物等が開示されている。
【0003】
しかしながら、これらのアルキレンオキサイド付加物は、洗浄性、低泡性および消泡性等の要求特性を十分に満足するものではない。また、特許文献5および6に記載されるアルキレンオキサイド付加物では、その製造プロセスが煩雑で多段階であるため製造時間が長いといった製造上の問題もあった。
このように、特許文献1〜6のアルキレンオキサイド付加物にはそれぞれ問題があるが、それらの問題を抱えつつも従来のアルキレンオキサイド付加物を使用せざるを得ないというのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−303825号公報
【特許文献2】特公昭63−12192号公報
【特許文献3】特開昭53−58508号公報
【特許文献4】特開平10−46189号公報
【特許文献5】特開平10−130690号公報
【特許文献6】特開平10−195499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、洗浄性、低泡性および消泡性に優れるアルキレンオキサイド付加物、その製造方法および用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、1)まず、最初の工程で、アルコールと、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドとを付加反応させる際、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重量比をある一定の範囲内に制御させ、2)次いで、プロピレンオキサイドを特定温度以下で付加反応させることによって、上記課題を解決するアルキレンオキサイド付加物が得られるという知見が得られ、本発明を完成した。
【0007】
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(1):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(PO)r−H (1)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20、q=1〜30およびr=1〜10である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物であって、
前記アルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足し、EEO−Rと平均付加モル数pおよびqとの関係が下記数式(VI)をさらに満足する、アルキレンオキサイド付加物である。
1≦E≦45 (I−A)
1≦EEO−R≦50 (II−A)
0≦EEO−OH0.6 (III−A)
99.5≦EOH≦100 (IV−A)
EO−R<100×q/(p+q) (VI)
【0008】
このアルキレンオキサイド付加物において、以下の1)〜5)のうちの少なくとも1つの要件を満足すると好ましい。
1)下記数式(II−B)をさらに満足する。
5≦EEO−R≦50 (II−B
【0009】
2)下記数式(III−C)および(IV−C)をさらに満足する。
EO−OH=0 (III−C)
OH=100 (IV−C)
3)前記Rの炭素数が8〜20である。
4)重量平均分子量が200〜3000である。
5)ブチルジグリコール法(BDG法)により測定される曇点が20〜95℃である。
【0010】
次に、本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程1と、
前記工程1の終了後に、プロピレンオキサイドを160℃以下で供給して付加反応させる工程2とを含む、アルキレンオキサイド付加物の製造方法であって、
前記工程1において、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時をT0、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあるとき、
T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[EO/PO]T0、[EO/PO]T100、[EO/PO]T1および[EO/PO]T2として、下記数式(B)〜(D)を同時に満足する、アルキレンオキサイド付加物の製造方法である。
0<[EO/PO]T0<1 (B)
1<[EO/PO]T100<100 (C)
0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<10 (D)
【0011】
この製造方法において、以下の(1)〜(3)のうちの少なくとも1つの要件を満足すると好ましい。
(1)下記数式(B−1)および(C−1)をさらに満足する。
0.1<[EO/PO]T0<0.5 (B−1)
2<[EO/PO]T100<20 (C−1)
(2)下記数式(D−1)をさらに満足する。
0.9<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<1.2 (D−1)
(3)前記工程2において、プロピレンオキサイドを100〜150℃で供給して付加反応させる。
【0012】
本発明の洗浄剤は、上記アルキレンオキサイド付加物必須成分とする洗浄剤である。
本発明の消泡剤は、上記アルキレンオキサイド付加物必須成分とする消泡剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、洗浄性、低泡性および消泡性に優れる。
本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、洗浄性、低泡性および消泡性に優れるアルキレンオキサイド付加物を効率良く製造することができる。
本発明の洗浄剤は、本発明のアルキレンオキサイド付加物を必須成分とするため、洗浄性に優れる。
本発明の消泡剤は、本発明のアルキレンオキサイド付加物を必須成分とするため、消泡性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物1の13C−NMRスペクトルを測定した結果を示すチャート図である。
図2】実施例1で得られたアルキレンオキサイド付加物1のH−NMRスペクトルを測定した結果を示すチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、まず、アルキレンオキサイド付加物の製造方法を説明し、次いで、アルキレンオキサイド付加物およびその用途を説明する。
【0016】
〔アルキレンオキサイド付加物の製造方法〕
本発明のアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、下記一般式(A):
ROH (A)
(Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。)
で表されるアルコールに対して、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給して付加反応させる工程(以下では、この工程を「工程1」ということがある。また、簡単のために、「エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド」を「アルキレンオキサイドA」ということがある。)と、上記工程1の後に、プロピレンオキサイドを160℃以下で供給して付加反応させる工程(以下では、この工程を「工程2」ということがある。)を含む製造方法である。以下では、工程1で得られる付加物を付加中間体ということがある。
【0017】
一般式(A)で表されるアルコールにおけるRは、アルキル基またはアルケニル基である。また、Rは直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。
Rの炭素数は、通常1〜30、好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜22、特に好ましくは6〜20、最も好ましくは8〜20である。Rの炭素数が30超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の疎水性が増大する。
【0018】
上記アルコールとしては、特に限定はないが、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナオール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、へキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノールおよびトリアコサノール等の直鎖アルカノール;2−エチルへキサノール、2−プロピルヘプタノール、2−ブチルオクタノール、1−メチルヘプタデカノール、2−ヘキシルオクタノール、1−ヘキシルヘプタノール、イソデカノール、イソトリデカノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、へキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、テトラコセノール、ペンタコセノール、ヘキサコセノール、ヘプタコセノール、ヘプタコセノール、オクタコセノール、ノナコセノールおよびトリアコンセノール等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2−エチルへキセノール、イソトリデセノール、1−メチルヘプタデセノール、1−ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノールおよびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。これらのアルコールは、1種または2種以上を併用してもよい。高級アルコールの製品の具体例としては、特に限定はないが、たとえば、ヤシアルコール、パームアルコール等の天然油脂由来の高級アルコールや、カルコールシリーズ(花王製)、コノールシリーズ(新日本理化製)、オキソコールシリーズ(協和発酵ケミカル製)、ネオドールシリーズ(シェル化学製)、ALFOLシリーズ(Sasol製)、EXXALシリーズ(エクソン・モービル製)等が挙げられる。これらの高級アルコールの製品は、1種または2種以上を併用してもよい。
本発明の製造方法は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、特に限定はないが、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の水酸化物;酸化カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のアルカリ(土類)金属の酸化物;金属カリウム、金属ナトリウム等のアルカリ金属;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属の水素化物;炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ(土類)金属の炭酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の硫酸塩;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機スルホン酸;パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸ピリジニウム等の芳香族スルホン酸塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、トリエチルアミン等のアミン化合物;鉄粉、アルミニウム粉、アンチモン粉、塩化アルミニウム(III)、臭化アルミニウム(III)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化コバルト(III)、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、臭化アンチモン(III)、四塩化スズ、四塩化チタン、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル等のルイス酸;硫酸、過塩素酸等のプロトン酸;過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウム等のアルカリ(土類)金属の過塩素酸塩;カルシウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムエトキシド等のアルカリ(土類)金属のアルコキシド;カリウムフェノキシド、カルシウムフェノキシド等のアルカリ(土類)金属のフェノキシド;珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、ゼオライト等の珪酸塩;水酸化アルミニウム・マグネシウム焼成物、金属イオン添加酸化マグネシウム、焼成ハイドロタルサイト等のAl−Mg系複合酸化物またはそれらの表面改質物、ランタノイド系錯体等が挙げられる。これらの触媒は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0019】
触媒の使用量については、特に限定はないが、工程1ではアルコール100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜8重量部、さらに好ましくは0.01〜6重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部、最も好ましくは0.05〜3重量部である。触媒の使用量が0.001重量部未満であると付加反応が十分に進行しないことがある。一方、触媒の使用量が10重量部超であるとアルキレンオキサイド付加物が着色し易くなるおそれがある。
本発明の製造方法では、アルコール、触媒等の原料を反応容器に仕込み、そしてその反応容器に対して脱ガス処理や脱水処理が行われると好ましい。脱ガス処理は、たとえば減圧脱気方式、真空脱気方式等で行われる。また、脱水処理は、たとえば加熱脱水方式、減圧脱水方式、真空脱水方式等で行われる。
【0020】
本発明の製造方法では、その製造形式については特に限定はなく、連続式でもバッチ式でもよい。反応容器については、特に限定はないが、たとえば、攪拌翼を備えた槽型反応容器やマイクロリアクター等を挙げることができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼等を挙げることができる。
本発明の製造方法では、付加反応を減圧状態から開始してもよいし、大気圧の状態から開始してもよいし、さらには加圧状態から開始してもよい。大気圧状態や加圧状態から開始する場合には不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。付加反応が不活性ガスの雰囲気下で行われるとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドと酸素との副反応等に起因して生成する不純物を十分に除去することが可能となり、また、安全性の観点からも有用であるので好ましい。不活性ガスとしては特に限定はないが、たとえば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられる。これらの不活性ガスは1種または2種以上を併用してもよい。不活性ガスの雰囲気下における反応容器内の酸素濃度については、特に限定はないが、好ましくは10体積%以下、より好ましくは5体積%以下、さらに好ましくは3体積%以下、特に好ましくは1体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下である。反応容器内の酸素濃度が10体積%超であると不純物を十分に除去できないことがあり、また安全性の観点からも好ましくないことがある。
【0021】
反応容器内の初期圧力については、特に限定はないが、たとえば、ゲージ圧で好ましくは0〜0.50MPa、より好ましくは0〜0.45MPa、さらに好ましくは0〜0.4MPa、特に好ましくは0〜0.35MPa、最も好ましくは0〜0.3MPaである。反応容器内の初期圧力が0MPa未満であると、不純物の発生量が多くなることがある。一方、反応容器内の初期圧力が0.50MPa超であると、反応速度が遅くなることがある。
アルコールに対してアルキレンオキサイドAを供給すると、付加反応が生起する。ここでエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとは同時に供給されるので、得られるアルキレンオキサイド付加物中に形成されたポリオキシアルキレン基は、ランダム付加によって生成したものとなり易く、好ましい。
【0022】
アルキレンオキサイドAを同時に供給する方法については特に限定はないが、1)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをそれぞれ異なる供給ラインからアルコールに対して同時に連続的に供給する方法や、2)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとをそれぞれ異なるラインから供給しインラインで混合したものをアルコールに対して連続的に供給する方法や、3)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのそれぞれの一部を予め混合したものをまず一括してアルコールに対して供給し、次いで、残部のエチレンオキサイドおよび残部のプロピレンオキサイドをそれぞれ異なる供給ラインからアルコールに対して同時に連続的に供給する方法や、4)エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを予め混合した混合物をいくつか準備し、これらの混合物を何段階かに分けてアルコールに対して順次供給する方法等が挙げられる。
工程1では、供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を変化させながら供給することが好ましい。
【0023】
工程1では、供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を供給開始時にはプロピレンオキサイドの重量比が大きく、供給終了時にはエチレンオキサイドの重量比が大きくなるように制御されることがより好ましい。
ここで、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド(アルキレンオキサイドA)の供給開始時をT0、アルキレンオキサイドAの供給終了時をT100とし、T0とT100との間の時間T1およびT2が、T0<T1<T2<T100および(T2−T1)/T100=0.01の関係にあると設定するとき、T0、T100、T1、T2の各々の時点で供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比を、[EO/PO]T0、[EO/PO]T100、[EO/PO]T1および[EO/PO]T2として、下記数式(B)〜(D)を同時に満足するとよい。
0<[EO/PO]T0<1 (B)
1<[EO/PO]T100<100 (C)
0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<10 (D)
【0024】
数式(B)は、好ましくは0.02<[EO/PO]T0<0.9、さらに好ましくは0.05<[EO/PO]T0<0.8、特に好ましくは0.08<[EO/PO]T0<0.7、最も好ましくは0.1<[EO/PO]T0<0.5である。[EO/PO]T0が0であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の消泡性が低いことがある。一方、[EO/PO]T0が1以上であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の洗浄性が低いことがある。
数式(C)は、好ましくは1.2<[EO/PO]T100<80、さらに好ましくは1.5<[EO/PO]T100<60、特に好ましくは1.8<[EO/PO]T100<40、最も好ましくは2<[EO/PO]T100<20である。[EO/PO]T100が1以下であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の洗浄性が低いことがある。一方、[EO/PO]T100が100以上であると、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給の制御が困難となることがある。
【0025】
数式(D)は、好ましくは0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<5.0、さらに好ましくは0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<2.0、特に好ましくは0.9<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<1.2、最も好ましくは1.0≦[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<1.2である。[EO/PO]T2/[EO/PO]T1が0.8以下であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の洗浄性が低いことがある。[EO/PO]T2/[EO/PO]T1が10以上であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の消泡性が優れないことがある。
数式(B)〜(D)の意味するところを大まかに言えば、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給開始時から供給終了時にかけて、エチレンオキサイドの重量比を徐々に増加させていくように制御することである。但し、(T2−T1)/T100=0.01の関係を満足するような微小な時間範囲(たとえば、T2−T1)においては、エチレンオキサイドの重量比が一時的に減少する場合も許容される。
【0026】
アルキレンオキサイドAの供給速度に関しては、数式(B)〜(D)を同時に満足するように調整されればよく、特に限定はないが、たとえば、1)供給開始時のアルキレンオキサイドAの供給速度が速く、徐々に供給速度を遅くする(アルキレンオキサイドAを供給開始時に多量に供給し、供給終了時には量を減らす)方法や、2)供給開始時のアルキレンオキサイドAの供給速度が遅く、徐々に供給速度を速くする(アルキレンオキサイドAを供給開始時は少量を供給し、供給終了時には量を増やす)方法や、3)エチレンオキサイドの供給速度を供給開始時には遅く、時間の経過と共に徐々に供給速度を速くする一方、プロピレンオキサイドの供給速度を供給開始時には速く、時間の経過と共に徐々に供給速度を遅くする(エチレンオキサイドを供給開始時は少量を供給し、供給終了時には量を増やす一方、プロピレンオキサイドを供給開始時に多量に供給し、供給終了時には量を減らす)方法や、4)プロピレンオキサイドの供給速度を一定に保ち、供給開始時のエチレンオキサイドの供給速度を遅く、時間の経過と共に徐々に供給速度を速くする方法や、5)エチレンオキサイドの供給速度を一定に保ち、供給開始時のプロピレンオキサイドの供給速度を速く、時間の経過と共に徐々に供給速度を遅くする方法等が挙げられる。
付加反応時の反応容器内の圧力は、アルキレンオキサイドAの供給速度、反応温度、触媒量等に影響される。付加反応時の反応容器内の圧力は特に限定はないが、ゲージ圧で好ましくは0〜5.0MPa、より好ましくは0〜4.0MPa、さらに好ましくは0〜3.0MPa、特に好ましくは0〜2.0MPa、最も好ましくは0.1〜1.0MPaである。付加反応時の反応容器内の圧力が0MPa未満であると、反応速度が遅くなることがある。一方、付加反応時の反応容器内の圧力が5.0MPa超であると、製造が困難であることがある。
【0027】
アルキレンオキサイドAの付加反応の反応温度としては特に限定はないが、好ましくは70〜240℃、より好ましくは80〜220℃、さらに好ましくは90〜200℃、特に好ましくは100〜190℃、最も好ましくは110〜180℃である。反応温度が70℃未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応温度が240℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色およびアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
上記付加反応に要する時間(反応時間)については特に限定はないが、好ましくは0.1〜100時間、より好ましくは0.1〜80時間、さらに好ましくは0.1〜60時間、特に好ましくは0.1〜40時間、最も好ましくは0.5〜30時間である。反応時間が0.1時間未満であると、付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応時間が100時間超であると、生産効率が悪くなることがある。
【0028】
アルキレンオキサイドAの供給が完了すると反応容器内の内圧はアルキレンオキサイドAが消費されることにより徐々に低下していく。アルキレンオキサイドAの付加反応は内圧の変化が認められなくなるまで継続することが好ましい。アルキレンオキサイドAの付加反応は一定時間における内圧の変化が認められなくなった時点で反応を終了する。必要に応じて加熱減圧操作等を実施し、未反応のアルキレンオキサイドAを回収してもよい。
アルキレンオキサイドAの付加反応においては、必要に応じて不活性溶媒を用いることができる。たとえば、アルコールとしてトリアコンセノール等の常温で固体のものを用いる場合には反応前に予め不活性溶媒に溶解して用いることが好ましく、これにより反応性をより十分に向上できるとともに、ハンドリング性が高い。また、不活性溶媒を用いると除熱効果も期待できる。
【0029】
不活性溶媒としては特に限定はないが、たとえば、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類;スルホラン、ジメチルスルホンホキシド等のスルホン類;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族炭化水素類が好ましく、より好ましくはトルエンである。
不活性溶媒の使用量としては、特に限定はないが、アルコールを溶解するのに使用する場合には、アルコール100重量部に対して、好ましくは10〜1000重量部、より好ましくは10〜500重量部、さらに好ましくは10〜400重量部、特に好ましくは10〜300重量部、最も好ましくは10〜200重量部である。不活性溶媒の量がアルコール100重量部に対して1000重量部超であると、付加反応を十分に進行させることができないことがある。一方、不活性溶媒の量が10重量部未満であると、アルコールを十分に溶解することができないことがある。なお、不活性溶媒を使用した場合には、付加反応後に除去することが好ましい。不活性溶媒の除去によって、不活性溶媒の残存に起因する不純物の発生を十分に防ぐことができ、各種物性により優れたアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。溶媒の除去工程については、後述するとおりである。
【0030】
アルキレンオキサイドAの付加反応の終了後は、必要に応じて、触媒を中和および/または除去したり、不活性溶媒を除去したりすると好ましい。
触媒の中和は、通常の方法により行えばよいが、たとえば、触媒がアルカリ触媒である場合は、塩酸、リン酸、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、アクリル酸、メタクリル酸等の酸を添加して行うことが好ましい。
【0031】
触媒の中和は不活性ガスの雰囲気下で行われると好ましい。不活性ガスとしては、特に限定はないが、たとえば、窒素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
触媒の中和時の温度としては、特に限定はないが、好ましくは50〜200℃、より好ましくは50〜190℃、さらに好ましくは60〜180℃、特に好ましくは60〜170℃、最も好ましくは60〜160℃である。触媒の中和時の温度が50℃未満であると、中和に要する時間が長くなることがある。一方、触媒の中和時の温度が200℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物の着色およびアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されることがある。
【0032】
触媒の中和により、上記付加反応により得られる反応生成物のpHが好ましくは4〜10に調整され、さらに好ましくは5〜8、特に好ましくは6〜8である。また、触媒中和の際に、必要に応じて、キノン類やフェノール類等の酸化防止剤を併用することもできる。
中和により生成した中和塩は、さらに固液分離してもよい。中和により生成した中和塩の固液分離の方法としては、濾過や遠心分離等が挙げられる。濾過は、たとえば、濾紙、濾布、カートリッジフィルター、セルロースとポリエステルとの2層フィルター、金属メッシュ型フィルター、金属焼結型フィルター等を用いて、減圧または加圧下で温度20〜140℃の条件下で行うとよい。遠心分離は、たとえば、デカンターや遠心清澄機等の遠心分離器を用いて行うとよい。また、必要に応じて、固液分離前の液100重量部に対して水を1〜30重量部程度添加することもできる。上記固液分離として、特に濾過を行う際には、濾過助剤を使用すると濾過速度が向上するので好適である。
【0033】
濾過助剤としては、特に限定はないが、たとえば、セライト、ハイフロースーパーセル、セルピュアの各シリーズ(Advanced Minerals Corporation製)、シリカ#645、シリカ#600H、シリカ#600S、シリカ#300S、シリカ#100F(中央シリカ社製)、ダイカライト(グレフコ社製)等の珪藻土;ロカヘルプ(三井金属鉱業社製)、トプコ(昭和化学社製)等のパーライト;KCフロック(日本製紙社製)、ファイブラセル(Advanced Minerals Corporation製)等のセルロース系濾過助剤;サイロピュート(富士シリシア化学社製)等のシリカゲル等が挙げられる。これらの濾過助剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
濾過助剤は、予め濾紙等のフィルター面に濾過助剤層を形成するプレコート法を用いてもよいし、濾液に直接添加するボディーフィード法を用いてもよいし、これら両方を併用してもよい。濾過助剤の使用量としては、固液分離前の液100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.1〜1.5重量部である。また、濾過処理速度は、濾面の大きさ、減圧度または加圧度、処理湿度等にも依存するが、好ましくは100kg/m・hr以上、より好ましくは300kg/m・hr以上であり、さらに好ましくは、500kg/m・hr以上である。
【0034】
触媒の除去については、特に限定はないが、たとえば、触媒を吸着剤に吸着させた後、固液分離する方法が好ましい。
吸着剤としては、たとえば、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の珪酸塩、活性白土、酸性白土、シリカゲル、イオン交換樹脂等が挙げられる。市販の吸着剤としては、たとえば、キョーワード600、700(協和化学社製)、ミズカライフP−1、P−1S、P−1G、F−1G(水澤化学社製)、トミタ−AD600、700(富田製薬社製)等の珪酸塩;アンバーリスト(ローム・アンド・ハース社製)やアンバーライト(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(三菱化学社製)、ダウエックス(ダウケミカル社製)等のイオン交換樹脂等が挙げられる。これらの吸着剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0035】
吸着剤の使用量は、たとえば、触媒100重量部に対して、好ましくは100〜5000重量部、より好ましくは300〜3000重量部である。
触媒の除去条件としては、特に限定はないが、たとえば、減圧、常圧または加圧のいずれかの圧力条件下において、吸着剤を温度20〜140℃で5〜120分間攪拌混合した後、触媒が吸着された吸着剤を上記固液分離方法により分離する方法や、予めカラム等に吸着剤を充填しておいて、温度20℃〜140℃で反応混合物を通過させて触媒を吸着させて、触媒を除去する方法等が挙げられる。この際、さらに必要により、反応混合物100重量部に対して、水やエタノールに代表される低級アルコール等の水溶性溶剤を1〜20重量部添加してもよい。
【0036】
触媒の除去後の残存量については、特に限定はないが、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下、最も好ましくは20ppm以下である。
不活性溶媒の除去は、たとえば、蒸留により行うことが好ましい。
【0037】
なお、触媒の中和および/または除去と不活性溶媒の除去とを行う場合、各工程の順序は特に限定はなく、たとえば、触媒の中和および/または除去を行った後に、不活性溶媒の除去を行うと、得られるアルキレンオキサイド付加物の精製効率に優れるために好ましい。
次に、工程2では、工程1の後にプロピレンオキサイドを供給して、付加反応させる。工程2では、工程1で得られるアルキレンオキサイド付加物(付加中間体)の末端水酸基に対して、プロピレンオキサイドを付加反応させる。なお、工程2においては、以下で特に説明する場合を除いて上記工程1と同様にして付加反応することができる。たとえば、製造形式、反応時間、反応容器内の圧力、不活性溶媒の使用、触媒の使用、触媒の中和、触媒の除去等については、アルキレンオキサイドAに代えてプロピレンオキサイドを用いることを除けば、上記工程1の説明と同様である。
【0038】
工程2では、1)プロピレンオキサイドを工程1で得られる反応混合物そのままに対して供給して付加反応を行ってもよく、また、2)工程1で得られる反応混合物に対して、上述するように、触媒の中和および/または除去を行ったり、不活性溶媒を除去したりした後処理を済ませてから、プロピレンオキサイドを供給して、付加反応を行ってもよい。
工程2では、触媒をさらに追加してもよい。追加する触媒の使用量については、特に限定はないが、工程1で得られる反応混合物100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜8重量部、さらに好ましくは0.01〜6重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部、最も好ましくは0.05〜3重量部である。触媒の使用量が0.001重量部未満であると付加反応が十分に進行しないことがある。一方、触媒の使用量が10重量部超であるとアルキレンオキサイド付加物が着色し易くなるおそれがある。
【0039】
工程2において、プロピレンオキサイドの付加反応の反応温度は160℃以下であり、好ましくは70〜160℃、より好ましくは80〜160℃、さらに好ましくは90〜160℃、特に好ましくは100〜150℃、最も好ましくは100〜140℃である。反応温度が低すぎると付加反応が十分に進行しないことがある。一方、反応温度が160℃超であると、得られるアルキレンオキサイド付加物が着色したり、得られたアルキレンオキサイド付加物中のポリオキシアルキレン基の分解が促進されたりすることがある。
本発明の製造方法において、未反応で残存するアルコールの含有量としては、特に限定はないが、得られるアルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.01重量部以下、さらに好ましくは0.001重量部以下、特に好ましくは0.0001重量部以下、最も好ましくは0.00001重量部以下である。未反応で残存するアルコールの含有量が、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して1重量部超であると、臭気が発生することがある。
【0040】
〔アルキレンオキサイド付加物〕
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、下記一般式(1)で表される。
下記一般式(1):
RO−[(PO)p/(EO)q]−(PO)r−H (1)
(但し、Rは炭素数1〜30のアルキル基またはアルケニル基を示し、直鎖または分枝鎖のいずれの構造から構成されていてもよい。POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基を示す。p、qおよびrは、各々の平均付加モル数を示し、p=1〜20、q=1〜30およびr=1〜10である。[(PO)p/(EO)q]はpモルのPOとqモルのEOとがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。)
で表されるアルキレンオキサイド付加物である。
一般式(1)中のRに対しては、上記製造方法で説明したアルコールに由来する基であり、その説明も上述のとおりである。
【0041】
pはポリオキシアルキレン基([(PO)p/(EO)q])中のオキシプロピレン基の平均付加モル数を表し、rはポリオキシアルキレン基に結合するポリオキシプロピレン基((PO)r)中のオキシプロピレン基の平均付加モル数を表す。
オキシプロピレン基の平均付加モル数pとしては、特に限定はないが、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜8、特に好ましくは2〜8、最も好ましくは2〜6である。オキシプロピレン基の平均付加モル数pが1未満であると、低泡性や消泡性が十分ではないことがある。一方、オキシプロピレン基pの平均付加モル数が20超であると、疎水性が強くなりすぎて洗浄性が低下することがある。
【0042】
オキシプロピレン基の平均付加モル数rとしては、特に限定はないが、通常1〜10、好ましくは1〜9、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜7、最も好ましくは2〜6である。オキシプロピレン基の平均付加モル数rが1未満であると、低泡性や消泡性が十分ではないことがある。一方、オキシプロピレン基rの平均付加モル数が10超であると、疎水性が強くなりすぎて洗浄性が低下することがある。
EOはオキシエチレン基であり、qはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。オキシエチレン基の平均付加モル数qとしては、特に限定はないが、通常1〜30、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜18、さらに好ましくは2〜16、特に好ましくは3〜13、最も好ましくは4〜10である。オキシエチレン基の平均付加モル数qが1未満であると、親水性や洗浄性が十分ではない場合がある。一方、オキシエチレン基の平均付加モル数qが30モル超であると、親水性が強くなりすぎて洗浄性が低下することがある。
【0043】
[(PO)p/(EO)q]は、pモルのオキシプロピレン基とqモルのオキシエチレン基とがランダム付加してなるポリオキシアルキレン基である。このポリオキシアルキレン基の一方の末端は、エーテル結合を介してR基と結合しており、他方の末端は水酸基となっている(以下では、この水酸基を末端水酸基ということがある。)。本発明でランダム付加とは、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基が無秩序に共重合して配列された付加状態になっていることを言う。
アルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルを測定したチャートに基づいて、下記で各々定義されるNPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OHおよびN2OHを読み取り、
PO−PO:PO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO2:POの2級炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−R:R基と直接エーテル結合したEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
:R基のα位炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
EO−OH:末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
PO−OH:末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される13C−NMRスペクトルの積分値の和
1OH:1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
2OH:2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属されるH−NMRスペクトルの積分値の和
そして、得られた読み取り値を各々下記計算式(I)〜(IV):
(%)=100×NPO−PO/(NPO−PO+NPO2) (I)
EO−R(%)=100×NEO−R/N (II)
EO−OH(%)=100×NEO−OH/(NEO−OH+NPO−OH) (III)
OH(%)=100×N2OH/(N1OH+N2OH) (IV)
に代入して得られるランダム化指数E、R基に直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−R、末端水酸基が直結しているオキシエチレン基の百分率EEO−OH、および末端水酸基の2級化率EOHのパラメーターが、下記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足し、EEO−Rと平均付加モル数pおよびqとの関係が下記数式(VI)をさらに満足するので、低泡洗浄性および消泡性に優れる。
1≦E≦45 (I−A)
1≦EEO−R≦70 (II−A)
0≦EEO−OH≦20 (III−A)
80≦EOH≦100 (IV−A)
EO−R<100×q/(p+q) (VI)
【0044】
一般的にポリアルキレンオキサイド付加物を製造する際、通常のランダム付加を行った場合は、付加反応の進行とともに、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの比率を、取り立てて変化させることはなく、ほぼ一定値が保たれるので、アルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基のR基側、ポリオキシアルキレン基におけるR基とは反対側、ポリオキシアルキレン基のR基側およびR基とは反対側の中間点等のポリオキシアルキレン基のどの位置であっても、オキシプロピレン基およびオキシエチレン基のモル比は、ほぼ同一の値となる。
それに対して、本発明のアルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基において、上記モル比に大きな特徴がある。すなわち、本発明のアルキレンオキサイド付加物では、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重量比を経時的に変化させることによって、R基側に近い位置にあるポリオキシアルキレン基とR基から離れた位置にあるポリオキシアルキレン基のエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドのモル比が異なる値となる。本発明のアルキレンオキサイド付加物において、具体的には、1)アルキレンオキサイド付加物のポリオキシアルキレン基のR基側では、オキシプロピレン基のモル比が大きく、2)ポリオキシアルキレン基のR基側からポリオキシアルキレン基の末端水酸基側に近づくにつれてポリオキシエチレン基のモル比が徐々に大きくなり、そして、3)ポリオキシアルキレン基においてR基とは反対側ではオキシエチレン基のモル比が大きくなる構造となる。
【0045】
本発明のアルキレンオキサイド付加物は、上記で説明したランダム化指数E、R基に直接結合しているEO基の百分率EEO−R、末端水酸基に直接結合しているEO基の百分率EEO−OH、およびH−NMRスペクトルのピーク面積より計算される末端水酸基の2級化率EOHは、上記数式(I−A)〜(IV−A)を各々満足し、さらにEEO−Rと付加モル数p、qとの関係が上記数式(VI)を満足する。
ランダム化指数E(%)は、通常1≦E≦45であり、好ましくは1≦E≦40、さらに好ましくは1≦E≦35、特に好ましくは5≦E≦35、最も好ましくは10≦E≦35である。Eの値が小さいほど、ポリオキシアルキレン基内のランダム化率が高いことを示している。Eが1%未満であると、アルキレンオキサイド付加物を付加反応で得ることが困難となることがある。一方、Eが45%超であると、ランダム付加率が十分とは言えず、ブロック付加である。
【0046】
PO−POは、13C−NMRスペクトルにおいてPO−PO結合したPOの1級炭素に帰属される全ての積分値の和であり、74.3〜76.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
PO2は、13C−NMRスペクトルにおいてPOの2級炭素に帰属される全ての積分値の和であり、72.2〜73.8ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0047】
R基に直接結合しているオキシエチレン基の百分率EEO−R(%)は、通常1≦EEO−R≦70、好ましくは1≦EEO−R≦60、さらに好ましくは1≦EEO−R≦50、特に好ましくは5≦EEO−R≦50、最も好ましくは5≦EEO−R≦40である。EEO−Rが1%未満であると、ランダム付加とは言えず、ブロック付加の構造に極めて近い。一方、EEO−Rが49%超であると、洗浄力が優れない場合がある。
は、13C−NMRスペクトルにおいてR基のα位炭素に帰属される全ての積分値の和であり、71.2〜72.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0048】
EO−Rは、13C−NMRスペクトルにおいてR基と直接エーテル結合したオキシエチレン基に帰属される全ての積分値の和であり、69.7〜70.3ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
末端水酸基に直接結合しているEOの百分率EEO−OH(%)は、通常0≦EEO−OH≦20、好ましくは0≦EEO−OH≦15、さらに好ましくは0≦EEO−OH≦10、特に好ましくは0≦EEO−OH≦5、最も好ましくはEEO−OH=0である。EEO−OHが、20%超であると、低泡性および消泡性が十分でない場合がある。
【0049】
EO−OHは、13C−NMRスペクトルにおいて末端水酸基に直接結合しているEOの炭素に帰属される全ての積分値の和であり、61.0〜63.0ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
PO−OHは、13C−NMRスペクトルにおいて末端水酸基に直接結合しているPOの炭素に帰属される全ての積分値の和であり、65.0〜67.5ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0050】
末端水酸基の2級化率EOH(%)は、通常80≦EOH≦100、好ましくは85≦EOH≦100、さらに好ましくは90≦EOH≦100、特に好ましくは95≦EOH≦100、最も好ましくはEOH=100である。EOHが80%未満であると、低泡性および消泡性が十分でない場合がある。なお、EOHを求めるためのH−NMRスペクトル測定では、アルキレンオキサイド付加物を無水トリフルオロ酢酸でトリフルオロアセチル化した試料を用いる。
2OHは、H−NMRスペクトルにおいて2級水酸基の結合したメチン基のプロトンに帰属される全ての積分値の和であり、通常5.1〜5.5ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
【0051】
1OHは、H−NMRスペクトルにおいて1級水酸基の結合したメチレン基のプロトンに帰属される全ての積分値の和であり、通常4.3〜4.7ppmの範囲に確認される全ての積分値の和である。
EO−Rと付加モル数p、qとの関係を示す数式(VI)は、本発明のアルキレンオキサイド付加物が、ポリオキシアルキレン基のR基側において、通常のランダム付加よりもオキシプロピレン基のモル比が大きく付加していることを意味している。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加反応効率は一般的にはエチレンオキサイドの方が高いので、通常のランダム付加反応においては、ポリオキシアルキレン基のR基側では仕込み時のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのモル比よりもオキシエチレン基のモル比の方が大きく付加する傾向にある。本発明では、供給されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの重量比を意図的に変化させることによって、ポリオキシアルキレン基のR基側のオキシプロピレン基のモル比を大きくすることができる。
【0052】
本発明のアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは200〜5000、より好ましくは200〜4000、さらに好ましくは200〜3000、特に好ましくは200〜2000、最も好ましくは200〜1500である。重量平均分子量が200未満であると、アルキレンオキサイド付加物の洗浄性が低いことがある。
重量平均分子量が5000超であると、ハンドリング性が低いことがある。重量平均分子量の測定方法は、実施例で詳しく説明する。
アルキレンオキサイド付加物の曇点は、以下の実施例で詳しく説明するブチルジグリコール法(BDG法)により測定した値とする。BDG法により測定したアルキレンオキサイド付加物の曇点は、好ましくは0〜95℃、より好ましくは20〜95℃、さらに好ましくは20〜90℃、特に好ましくは20〜85℃、最も好ましくは20〜80℃である。BDG法により測定した曇点が0℃未満であると、アルキレンオキサイド付加物の洗浄性が低いことがある。一方、BDG法により測定した曇点が95℃超であると、アルキレンオキサイド付加物のハンドリング性が低いことがある。
【0053】
〔アルキレンオキサイド付加物の用途〕
本発明のアルキレンオキサイド付加物および/または本発明の製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物は、たとえば、衣料用の液体洗剤や粉体洗剤、家庭用洗剤、台所用洗剤、固体洗浄剤、シャンプー、機械・金属用洗剤等の洗浄剤や、消泡剤、抑泡剤、潤滑剤、繊維油剤、紙薬剤、脱樹脂剤、脱墨剤、脱脂剤、減水剤、凝集剤、分散剤、乳化重合剤、乳化剤、可溶化剤、懸濁剤、増粘剤、ゲル化剤、帯電防止剤、表面処理剤等の各種用途において、必須成分として利用することができる。
以下、用途が洗浄剤および消泡剤である場合について、詳しく説明する。
【0054】
(洗浄剤)
本発明の洗浄剤は、上記アルキレンオキサイド付加物および/または上記製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物を、必須成分とする。
本発明の洗浄剤は、水系で使用する際の水分散性が良好という理由から、水をさらに含んでいてもよい。水の配合割合については、特に限定はないが、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1〜10000重量部、より好ましくは10〜1000重量部、さらに好ましくは20〜1000重量部、特に好ましくは30〜1000重量部、最も好ましくは60〜1000重量部である。水の配合割合が1重量部未満であると、洗浄力が低下することがある。一方、水の配合割合が、10000重量部超であると、ハンドリング性に劣ることがある。
【0055】
本発明の洗浄剤は、上記で説明したアルキレンオキサイド付加物以外のその他の界面活性剤を含んでいてもよい。その他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれかで構成されるものであればよく、1種または2種以上を併用してもよい。
このようなその他の界面活性剤である非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー;5,8−ジメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド付加物(付加モル数37〜43)、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド(付加モル数7〜13)/プロピレンオキサイド(付加モル数37〜43)ブロック型付加物、2,5,8,11−テトラメチル−6−ドデシン−5,8−ジオールのエチレンオキサイド(付加モル数17〜23)/プロピレンオキサイド(付加モル数17〜23)ランダム型付加物等のポリオキシアルキレンアセチレンジオールエーテル等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0056】
このようなその他の界面活性剤である陰イオン性界面活性剤としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩;ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ無水マレイン酸、マレイン酸とイソブチレンとの共重合物、無水マレイン酸とイソブチレンとの共重合物、マレイン酸とジイソブチレンとの共重合物、無水マレイン酸とジイソブチレンとの共重合物、アクリル酸とイタコン酸との共重合物、メタアクリル酸とイタコン酸との共重合物、マレイン酸とスチレンとの共重合物、無水マレイン酸とスチレンとの共重合物、アクリル酸とメタアクリル酸との共重合物、アクリル酸とアクリル酸メチルエステルとの共重合物、アクリル酸と酢酸ビニルとの共重合物、アクリル酸とマレイン酸との共重合物、アクリル酸と無水マレイン酸との共重合物のアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のポリカルボン酸塩;ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のナフタレンスルホン酸塩;メラミンスルホン酸、アルキルメラミンスルホン酸、メラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルメラミンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のメラミンスルホン酸塩等;リグニンスルホン酸、および、これらのアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)、アンモニウム塩およびアミン塩等のリグニンスルホン酸塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
このようなその他の界面活性剤である陽イオン性界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0057】
このようなその他の界面活性剤である両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
また、本発明の洗浄剤は、二トリロ三酢酸塩、クエン酸塩、ポリアクリル酸塩等のキレート剤;炭酸塩、珪酸塩、硫酸塩、ゼオライト、トリポリリン酸塩等のビルダー;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ化合物;エチルアミン、ブチルアミン等のアルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン;エタノール、エチレングリコール等のハイドロトロープ剤;過酸化水素等の過酸化物;フッ酸等の酸;酵素;蛍光剤;色素;香料;除菌剤;防腐剤;保湿剤;増粘剤等のその他成分をさらに含んでもよい。
【0058】
本発明の洗浄剤は、目的に応じて種々の対象の洗浄に使用できる。本発明の洗浄剤の洗浄対象としては、特に限定はないが、たとえば、液晶パネル板、光学レンズ、磁気ヘッド、プリント配線基板、半導体、ステップモーター、軸受、ネジ等の精密加工部品;鉄鋼板;伸線;ガラス;アルミ;配管;熱交換器;木綿、麻、羊毛、レーヨン、アセテート、セルロース繊維、ポリエステル、ポリアミド繊維、アクリル、スパンデックス等の衣料;頭髪、皮膚、爪、目等の頭髪または身体;野菜等の食品;食器;壁、床、畳、家具、天井、屋根、トイレ、浴槽、浴室、換気扇、レンジ周り、流し台周り等の住居;医療機器;自動車用部品等が挙げられる。
本発明の洗浄剤が対象とする汚れとしては、特に限定はないが、たとえば、切削加工油、プレス加工油、圧延油、シリコーン、エステル、グリース、潤滑油、鉱物油、防錆油、加工屑や研磨剤等の無機粉末、接着剤、ワックス、錆、スケール、指紋、離型剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の洗浄剤を使用した洗浄方法としては、特に限定はなく、たとえば、浸漬洗浄、超音波洗浄、噴流洗浄、揺動洗浄、バブリング洗浄、ジェット洗浄、スプレー洗浄、シャワー洗浄、蒸気洗浄、減圧洗浄、真空洗浄、手洗い等が挙げられる。
本発明の洗浄剤を用いる際に適する温度(洗浄温度)としては、洗浄の種類によって任意に選択できるため特に限定はないが、たとえば、通常150℃以下、好ましくは5〜140℃、より好ましくは10〜130℃、さらに好ましくは15〜120℃、特に好ましくは20〜120℃、最も好ましくは30〜120℃である。
本発明の洗浄剤を使用して洗浄した後の対象の乾燥方法としては、特に限定はないが、たとえば、対流加熱方式、輻射加熱方式、誘導加熱方式、蒸気加熱方式、置換乾燥方式、真空乾燥方式等が挙げられる。
【0060】
(消泡剤)
本発明の消泡剤は、上記アルキレンオキサイド付加物および/または上記製造方法で得られるアルキレンオキサイド付加物を、必須成分とする。
本発明の消泡剤は、水系で使用する際の水分散性が良好という理由から、水をさらに含んでいてもよい。水の配合割合については、特に限定はないが、アルキレンオキサイド付加物100重量部に対して、好ましくは1〜10000重量部、より好ましくは10〜1000重量部、さらに好ましくは20〜1000重量部、特に好ましくは30〜1000重量部、最も好ましくは60〜1000重量部である。水の配合割合が1重量部未満であると、洗浄力または消泡力が低下することがある。一方、水の配合割合が、10000重量部超であると、ハンドリング性に劣ることがある。
【0061】
本発明の消泡剤は、有機溶剤、鉱物油、シリコーン、動植物油等その他の公知の消泡剤等のその他成分をさらに含んでもよい。
本発明の消泡剤の使用用途としては、特に限定はないが、たとえば、アミノ酸発酵、カルボン酸発酵、酵素発酵、抗生物質発酵等の発酵工業用途;紙パルプ製造工業;建築工業;染料工業;染色工業;ゴム工業;合成樹脂工業;インキ工業;塗料工業;繊維工業等に使用することができる。
本発明の消泡剤を使用する際、消泡することが必要な水性媒体に対する配合割合については特に限定はないが、たとえば、水性媒体100重量部に対して通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.001〜5重量部、さらに好ましくは0.001〜1重量部、特に好ましくは0.01〜1重量部、最も好ましくは0.01〜0.1重量部である。
【実施例】
【0062】
以下に、本発明の実施例をその比較例とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
13C−NMR法〕
測定試料約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水素化クロロホルムを加え溶解させて、13C−NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400,100MHz)で測定した。
【0064】
H−NMR法および2級化率算出方法〕
測定試料約30mgを直径5mmのNMR用試料管に秤量し、重水素化溶媒として約0.5mlの重水素化クロロホルムを加え溶解させる。その後、約0.1mlの無水トリフルオロ酢酸を添加し、分析用試料とし、H−NMR測定装置(BRUKER社製AVANCE400,400MHz)で測定した。
【0065】
〔重量平均分子量〕
アルキレンオキサイド付加物を不揮発分濃度が約0.2質量%濃度となるようにテトラヒドロフランに溶かした後、以下の測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定した。次いで、分子量既知のポリエチレングリコールのGPC測定結果から、検量線を作成し、重量平均分子量を算出した。
(測定条件)
機器名:HLC−8220(東ソー社製)
カラム:KF−G、KF−402HQ、KF−403HQ各1本ずつを直列に連結(いずれもShodex社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
注入量:10μl
溶離液の流量:0.3ml/分
温度:40℃
【0066】
〔曇点の測定〕
n−ブチルジグリコール(別名:2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル)の25重量%水溶液にアルキレンオキサイド付加物を添加して曇点試験液を調製した。その際、曇点試験液中のアルキレンオキサイド付加物の濃度が10重量%となるように調整した。次いで、加温して一旦曇点試験液を濁らせ、徐々に冷却して濁りが無くなる温度を曇点とした。
【0067】
〔実施例1〕
(工程1)
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、10g/hの供給速度から供給を開始して、徐々に供給量を増加させて、最終70g/hの供給速度で供給を完了し、約100分間で総量95gを供給した。また、プロピレンオキサイドでは、50g/hの供給速度で供給を開始し、徐々に供給量を減少させて、最終10g/hの供給速度で供給を完了し、約100分間で総量62gを供給した。
【0068】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T0は0.2であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T100は7.0であった。ここで、供給開始時から供給終了時までの時間(分)をx軸にとり、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]をy軸にとって、時間の経過とともに変化するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]を、x−y平面にプロットすると、(0,0.2)および(100,7.0)を結ぶ単調増加の直線となり、一次関数の関係にあった。また、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<10の条件を満たしていた。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させた。
【0069】
(工程2)
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約150分間でプロピレンオキサイド94gを供給した。
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は2であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は4であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は3であった。
【0070】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル(図1)およびH−NMRスペクトル(図2)の積分値を読み取り、NPO−PO、NPO2、NEO−R、N、NEO−OH、NPO−OH、N1OH、N2OHは、各々5.5、21.3、1.4、2.9、0、3.0、0、1.0であった。これらの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々20.5、48.3、0、100であった。また、EEO−R<100×q/(p+q)の条件を満たしていた。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は652であった。曇点は43.9℃であった。
【0071】
〔実施例2〜3〕
実施例2〜3では、実施例1において、表1に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様にアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0072】
〔比較例1〕
(工程1)
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを同時に供給開始した。エチレンオキサイドでは、57g/hの供給速度で供給し、約100分間で総量95gを供給した。また、プロピレンオキサイドでは、37g/hの供給速度で供給し、約100分間で総量62gを供給した。
【0073】
供給開始時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T0は1.54であった。供給終了時における供給されるエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]T100は1.54であった。すなわち、供給開始から供給終了の間、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの重量比[EO/PO]は一定値の1.54であった。エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給は、0.8<[EO/PO]T2/[EO/PO]T1<10の条件を満たさなかった。
エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させた。
【0074】
(工程2)
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ約150分間でプロピレンオキサイド94gを供給した。
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))9gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物のエチレンオキサイド付加モル数(p)は2であり、プロピレンオキサイド付加モル数(q)は4であり、エチレンオキサイド付加モル数(r)は3であった。
【0075】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトルおよびH−NMRスペクトルの積分値を読み取り、それらの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々20.8、81.5、0、100であった。EEO−R<100×q/(p+q)の条件を満たさなかった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は652であった。曇点は43.4℃であった。
【0076】
〔比較例2〜3〕
比較例2〜3では、比較例1において、表1に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、比較例1と同様にアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ得て、物性等も比較例1と同様に評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
〔比較例4〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約110分間でエチレンオキサイド95gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約230分間でプロピレンオキサイド156gを供給した。
【0079】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物は、表2に示すように、最初にエチレンオキサイド、次にプロピレンオキサイドの順番で付加して得られたブロック付加物であり、エチレンオキサイド付加モル数は4であり、プロピレンオキサイド付加モル数は5であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々50.3、100、0、100であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は652、曇点は43.4℃であった。
【0080】
〔比較例5〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約230分間でプロピレンオキサイド156gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約110分間でエチレンオキサイド95gを供給した。
エチレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
【0081】
得られたアルキレンオキサイド付加物は、表2に示すように、最初にプロピレンオキサイド、次にエチレンオキサイドの順番で付加して得られたブロック付加物であり、プロピレンオキサイド付加モル数は5であり、エチレンオキサイド付加モル数は4であった。
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々50.5、0、100、0であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は652、曇点は45.2℃であった。
【0082】
〔比較例6〕
1Lのオートクレーブに、ラウリルアルコール(分子量186)100gと、水酸化カリウム0.3gとを仕込んだ後、オートクレーブ内を窒素置換してから、攪拌しつつ80℃で減圧脱水を行った。
次いで、130℃まで昇温した後、反応温度145±5℃、反応圧力3.5±0.5kg/cmを維持しつつ、約120分間でプロピレンオキサイド62gを供給した。内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約110分間でエチレンオキサイド95gを供給した。さらに、内圧が低下して一定になるまで熟成させた後、約160分間でプロピレンオキサイド94gを供給した。
【0083】
プロピレンオキサイドの供給が完了した後、反応温度を維持しつつ、内圧が低下して一定になるまで熟成させ、80℃まで冷却した。後処理として、得られた反応混合物に合成吸着剤(キョーワード700、協和化学工業(株))3gを加えて、90℃で窒素気流下1時間攪拌して処理した後、ろ過により触媒を除去して、アルキレンオキサイド付加物を得た。
得られたアルキレンオキサイド付加物は、表2に示すように、最初にプロピレンオキサイド、次にエチレンオキサイド、最後にプロピレンオキサイドの順番で付加して得られたブロック付加物であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の付加モル数は、付加した順番で、プロピレンオキサイド付加モル数は2、エチレンオキサイド付加モル数は4、プロピレンオキサイド付加モル数は3であった。
【0084】
得られたアルキレンオキサイド付加物の13C−NMRスペクトル、H−NMRスペクトルの積分値より計算されるE、EEO−R、EEO−OH、EOHは、各々48.9、0、0、0であった。得られたアルキレンオキサイド付加物の重量平均分子量は652、曇点は45.5℃であった。
実施例1〜3および比較例1〜6で得られたアルキレンオキサイド付加物をそれぞれ用いて、下記の方法で、洗浄性、低泡性および消泡性を評価し、結果を表2に示した。
【0085】
〔洗浄性(洗浄力)の評価〕
アルキレンオキサイド付加物0.03g、メタケイ酸ソーダ0.6g、水299.37を混合して洗浄剤を調製した。別途鉱物油が付着した100mesh金網を準備して洗浄剤に浸漬させて2分間洗浄した。洗浄後の100mesh金網を蒸留水に1分間浸漬してすすぎを実施して、洗浄前後の油除去量から洗浄率を算出して洗浄力を評価した。洗浄力は下記の式により計算され、洗浄力の値が大きいほど洗浄性に優れる。
洗浄力(%)=(洗浄前の100mesh金網に付着した鉱物油量−洗浄後の100mesh金網に付着した鉱物油量)(g)/洗浄前の100mesh金網に付着した鉱物油量(g)×100
◎:洗浄力が70%以上であり、洗浄性に優れる。
〇:洗浄力が60%以上70%未満であり、洗浄性に優れる。
△:洗浄力が50%以上60%未満であり、洗浄性に劣る。
×:洗浄力が50%未満であり、洗浄性に劣る。
【0086】
〔低泡性(起泡力)の評価〕
アルキレンオキサイド付加物0.1g、水99.9gを混合して試験液を調製した。25℃の条件でロスマイルス法に従って、試験液を流下させ、流下が終わった直後の泡沫の高さを測定した。
◎:起泡力が25mm未満であり、低泡性に優れる。
〇:起泡力が25mm以上50mm未満であり、低泡性に優れる。
△:起泡力が50mm以上100mm未満であり、低泡性に劣る。
×:起泡力が100mm以上であり、低泡性に劣る。
【0087】
〔消泡性(消泡力)の評価〕
アルキレンオキサイド付加物0.05g、ポリビニルアルコール3g、水97gを混合した水溶液を50℃に保温しながら10分間エアーバブリングした。エアーバブリング後の水溶液の体積増加率を算出して消泡力を評価した。消泡力は下記の式により計算され、消泡力の値が小さいほど消泡性に優れる。
消泡力(%)=(エアーバブリング後の水溶液の体積−エアーバブリング前の水溶液の体積)(ml)/エアーバブリング前の水溶液の体積(ml)×100
◎:消泡力が100%未満であり、消泡性に優れる。
〇:消泡力が100%以上200%未満であり、消泡性に優れる。
△:消泡力が200%以上300%未満であり、消泡性に劣る。
×:消泡力が300%以上であり、消泡性に劣る。
【0088】
【表2】
【0089】
表2からは、実施例1〜3とそれぞれ番号が対応する比較例1〜3とを比較すると、アルキレンオキサイド付加物を化学式で表現した場合に構造的な差異が見出せなくても、実施例1〜3では、洗浄性、低泡性および消泡性に優れることが分かる。
また、実施例1および比較例4〜6のアルキレンオキサイド付加物は、ラウリルアルコール1モルに対して、エチレンオキサイド4モルおよびプロピレンオキサイド5モル付加して得られた点では差異はない。しかし、本願発明の特殊なアルキレンオキサイド付加物(実施例1)は、単なるブロック付加物(比較例4〜6)よりも、洗浄性、低泡性および消泡性の点で格段優れていることが分かる。
図1
図2