(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
袋状経編地に意匠を付与する場合には、編地に開口部を有するネット状編地1〜2針のアンダーラップ組織のベース上に、1針間及び2針間でアンダーラップしたフラット状編地で花柄や小紋柄、波柄や葉柄などの模様を付与することは一般的に行われている。2針間にアンダーラップされた開口部を有するネット状編地の比率は、編地全体の30%〜70%で構成し、2針間にアンダーラップしたフラット状編地の比率は30%〜70%で構成し、1針間の開口部を有するネット状編地と1針間のフラット状編地の比率は20%未満で構成することが好ましい。
【0016】
意匠面の2針間での開口部の比率が70%を超えると編地表面の繋がりが弱くなり、地組織に対し、意匠編地は不安定で動き易く、この動きによりしわ、歪み等を生じ易くなる。また、意匠面の2針間での開口部の比率が30%未満であると編地表面は動きにくくなるが、経緯の伸びのバランスが取りにくくなり、開口部が見えにくく意匠性が低下する。
模様を構成する2針間にアンダーラップするフラット状組織の比率が30%未満であると、編地表面全体の緩みが多く、編地のしわ、歪みの起こる虞があり、70%を超えると、糸長が多く、開口部で緩んだ糸長を取り込む働きがあり、編地の緩みは少なく、編地はしっかりするが、見栄えの凹凸は小さく、模様が見えにくくなる。
【0017】
意匠付与で1針間の開口部と1針間のフラット状編地の比率は20%未満の範囲で編成されることで、編地全体の緩みを軽減することができる。20%以上となると、編地全体が緩みを生じやすく、編地表面にしわ、歪み等が起こる虞がある。
【0018】
1針間の開口部と1針間のフラット状編地の比率は10%〜20%の範囲で、2針間のフラット編地付近に配置されることが好ましく、1針間の編地と2針間の編地を適宜に意匠で使用すると、編地全体の伸びや緩みの程度を調整することができ、模様が編地表面に浮き出るような凹凸感のある見栄えの良い意匠が可能となる。
【0019】
フラット状編地の地組織の編成において、鎖編の場合は上記範囲で適宜に配置をすればよく、地組織がデンビ編またはダブルデンビ編の場合、上記意匠の編糸の配置や比率で編成されることが好ましい。地組織が、デンビ編またはダブルデンビ編の場合、編糸の緩みを他の地組織の糸で吸収する働きがあるため、鎖編地よりも模様の比率外の範囲でも編地の緩みなどが少なくなる。
【0020】
開口部を有する編糸の経方向のアンダーラップ数の間隔は1〜8コースの間でアンダーラップさせ、ウエル方向にアンダーラップを繰り返すことで模様の付与をすることが好ましい。1コース未満の場合は開口部がなく、意匠の付与とはならず、8コースを超えると開口部を編成する編糸が緩みやすくなり、編地全体の緩み、しわ、歪みの原因になりやすい。
仮に裏面地組織がフラット状編地の場合、もう一方の編地に意匠付与する開口部を有する編地は、1〜4コースの経方向に編糸をアンダーラップとオーバーラップを繰り返した後に、ウエル方向に編糸を適宜な意匠に合わせてアンダーラップさせることが好ましい。
【0021】
表裏のループ数は同じであるため、いかに意匠付与時の構成で編地の糸長を調整出来るかが、しわ、歪み等を少なくする要因となる。
【0022】
裏面のフラットな地組織はフラット状編地に占める、1または2針間の開口部を有するネット状編地の比率は20%未満とする。20%未満であれば、表編地への意匠を付与した編地は、裏面の編地の影響を受けにくく、歪みは小さく、模様の形状は安定し保たれる。20%以上となると、編地全体が緩み、仕上がり時の形状が不安定となり、見栄えが悪くなる虞がある。また、使用の際にも、編地の繋がりが弱くなるため強度不足で、解れや破れの虞がある袋状経編地となる。
【0023】
本実施形態に使用される糸は、33dtex〜550dtexの範囲で適宜に選択をすれば良い。33dtex未満の場合、商品(製品)用途によって、強度、引き裂き、磨耗に対し、性能面で不足する懸念がある。また、550dtexを超えると、編地の強度、磨耗などの性能は良くなる傾向ではあるが、製品自体が厚くなり、重たくなったり、柔軟性が損なわれ、扱いにくくなる、また風合い等に懸念がある。
【0024】
本実施形態の編機は16ゲージ〜30ゲージの範囲で、用途に応じて適宜に選択をすれば良い。
【0025】
本実施形態の編地の性量は仕上がり18コースから80コースの範囲で、仕上がりウエルは16ウエル〜60ウエルの範囲で、用途に応じて使用する糸で適宜に選択をすれば良い。仕上がりコースが18コース未満であると、ループが経長に伸び易く、編地がルーズとなり、製品の見栄えや仕上がり性量が不均一になり易いばかりか、引き裂きなどの強度が低く、実用しにくい傾向にある。80コースを超えると、編地が重く、硬くなるため、肌側に使用する場合は、風合いが硬く、違和感を感ずるだけでなく、使用上において取り扱いにくい。
【0026】
本実施形態に使用される編糸は、特に限定することはなく、ナイロン、ポリエステル、レーヨン紡績糸、綿糸、天然糸、機能糸、など使用用途に応じて適宜に選択をすれば良い。
【0027】
ネットを構成するウエル(編糸本数)は2ウエル(編糸2本)〜10ウエル(編糸10本)で構成されることが好ましい。表面に占めるネット状編地の編成において、1ウエル(1本の編糸)で構成すると必要な糸長が少なくて済むが、ネット状編地のしわ、歪み、編地の浮きが多くなるため、見栄えが悪くなる虞がある。これは、給糸される糸長が全て同じであるため、糸長を必要としない編地は、編地が緩くなり、編地表面でしわ、歪み等となる。
【0028】
2ウエル(編糸2本)以上であると、編糸2本をジャカード糸で2針間にアンダーラップすると、糸長が多くなり、締め感を強くすることで、編地の緩み、しわ、歪みに対して良好となる。ネットのウエル(編糸の本数)は意匠や機能の範囲で選択をすれば良く2ウエル〜10ウエルの間で適宜に選択すれば良い。
【0029】
裏面地組織は鎖編と2針間にアンダーラップされると、編地の伸縮は小さく、形状安定性に優れ、表面の意匠部への影響は小さくなる。
【0030】
表面意匠の地組織において、ネット状編地部は、緯方向にある一定の間隔で、意匠を作製し、その後に緯一線に2針間にアンダーラップのフラット状編地部を編成することで、ネット状編地部で余った糸長を吸収(調整)することができ、しわ、歪み、浮きを解消できる。また、フラット状編地部は緯方向に一線に2〜10cmぐらいで意匠的に邪魔にならない程度の幅で編成されることが好ましい。フラット状編地部は、緯方向や対角線状などに編成することにより、しわ、歪み、浮きを抑える効果が期待できる。袋状の大きい製品の場合は、所定の間隔で表裏を接結することにより、小さな袋状ができ、編地のしわを解消することができる。さらに、小さな袋状でキルト状の袋状の製品とすることも可能であり、表裏接結することで糸長が多く消費されて、しわ、歪みについて良好な袋状編地となる。
【0031】
なお、ジャカードの糸を伸縮性の良い加工糸で意匠性を考慮すれば、編成は容易である。なかでも、ポリウレタン糸のカバーリング糸を使用することが好ましい。
【0032】
本発明の実施形態に係る袋状経編地について、図面を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る袋状経編地を含む経編地10を編成するためのダブルラッセル編機DRは、編機幅方向にそれぞれ並列してなる多数の前後のニードルN1、N2を有する。ダブルラッセル編機DRは、また前後の針釜(トリックプレート)T1、T2を有する。また、ダブルラッセル編機DRは、編成に使用するガイドバー(筬)L1、L2、L3、L4、L5、L6を有し、このうち二列はジャカードガイドバー(ジャカード筬)L3、L4である。ガイドバーL1、L2、L3が表面編地2aの編成に使用され、ガイドバーL4、L5、L6が裏面編地2bの編成に使用される。編糸Y1、Y2、Y3、Y4、Y5、Y6は、それぞれ上記各ガイドバーL1〜L6のガイド部G1、G2、G3、G4、G5、G6に通糸され、各編糸Y1〜Y6は、それぞれビームB1、B2、B3、B4、B5、B6から引き出される。このように、ダブルラッセル編機DRを用いて表面編地2aと裏面編地2bが袋状に編成されることによって、本実施形態に係る袋状経編地を含む経編地10が製造される。
【0034】
図2に示すように、本実施形態に係る袋状経編地の製造方法においては、編成幅方向に2種類の異なる製品用の経編地10a、10bを並べて、同時に経編地10を編成縦方向に編成していく。ここで、表面編地2aa、2baの地組織は、開口部を有するネット状編地である。これに対して、表面編地2aa、2baをそれぞれ一部破断して示す裏面編地2ab、2bbの地組織は、開口部を有しないフラット状編地である。経編地10の表裏編地部の裏面編地2ab、2bbは、主に2針間アンダーラップする筬で編成し、平坦平滑な地組織(フラット状編地)とする。一方、表面編地2aa、2baにおいては、1針間及び2針間で編成されたネット状の地組織(ネット状編地)と、1針又は2針間でアンダーラップされたフラット状編地(模様3a、3b)とを組み合わせて編地表面に意匠性ある表現をする。
【0035】
ネット状編地の表面編地2aa、2baの地組織には、フラット状編地からなる模様3a、3bが、ほぼ均等に配置されている。フラット状編地からなる模様3a、3bが、製品を区画するパターンの外線(橋渡し線及び切除線)4a、4bに囲まれた表面に占める面積の割合は、30%〜70%である。一方、ネット状編地からなる表面編地2aa、2baの地組織が、製品を区画するパターンの外線4a、4bに囲まれた表面に占める面積の割合は、30%〜70%である。経編地10は、表面編地2aa、2ba及び裏面編地2ab、2bbとともに、耳組織5、パターンの替わり編地6を形成しながら、矢印方向(編成縦方向)に編成される。経編地10が所定の長さだけ編成されたら、経編地10はダブルラッセル編機DRから外されて、染色等の加工工程に供される。その後、パターンの外線4a、4bの外側の編地は、パターンの外線4a、4bに沿って切除される。
【0036】
外線4a、4bの外側の編地を切除した本実施形態に係る袋状経編地を、
図3乃至
図5に示す。
図3に示すように、本実施形態に係る袋状経編地の一例は、Tシャツ1aである。パンツやインナー類等の他の衣料製品も、同様にして製造することができる。Tシャツ1aにおいては、表面編地2aaの地組織がネット状編地からなり、表面編地2aaの模様部分3aがフラット状編地からなる。そして、裏面編地2abは全てフラット状編地からなる。フラット状編地(模様3a)が表面編地2aaに占める割合は40%で、ネット状編地(地組織)が表面編地2aaに占める割合は60%である。
【0037】
ここで、フラット状編地(模様3a)が表面編地2aaに占める面積の割合は30%〜70%の範囲内であることが好ましく、ネット状編地(地組織)が表面編地2aaに占める面積の割合は30%〜70%の範囲内であることが好ましい。
フラット状編地が表面編地2aaに占める面積の割合が30%未満であると、後述するようなフラット状編地の部分で編糸を長く多量に消費することによる編糸長さの吸収効果が十分に得られない虞がある。一方、フラット状編地が表面編地2aaに占める面積の割合が70%を超えると、ネット状編地の割合が少なくなって、優れた意匠性が得られない虞がある。
ネット状編地が表面編地2aaに占める面積の割合が30%未満であると、ネット状編地の割合が少なくなって、優れた意匠性が得られない虞がある。一方、ネット状編地が表面編地2aaに占める面積の割合が70%を超えると、後述するようなフラット状編地の部分で編糸を長く多量に消費することによる編糸長さの吸収(調整)効果が十分に得られない虞がある。
【0038】
Tシャツ1aにおいては、透けて見えるネット状編地部とその中に模様3aを形成するフラット状編地部によって、優れた意匠性が得られる。また、フラット状編地部で編糸を長く多量に消費するため、編糸を少ししか消費しないネット状編地部で余る編糸長さを吸収(調整)することができ、編地のしわ、歪みを防止することができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係るTシャツ1aにおいては、ネット状編地部の開口部の編地は2ウエルの編糸を束ねて編成される。本実施形態に係る袋状経編地のネット組織について、
図6乃至
図8を参照して説明する。
【0040】
図6に示すように、1ウエルの編糸のみ束ねて構成されたネット(以下、「1ウエルネット」という。)の場合は、開口部12aの周囲に編糸Yaが1本だけに束ねて編成されている。このため、ネット状編地を1ウエルネットのネット組織のみで編成すると、開口部12aが拡がりやすく、また編糸Yaを束ねる編糸も消費されないため編糸余りが出やすくなり、編地のしわ、歪み等の原因になる。
【0041】
これに対して、
図7に示すように、2ウエルの編糸を束ねて構成されたネットの場合は、開口部12bの周囲に編糸Ybが2本束ねて編成されている。したがって、開口部12bが引き締められて拡がりにくくなり、また編糸Ybを2本束ねる編糸が長く消費されて編糸余りが少なくなり、編地のしわ、歪み等を防止することができる。
図8に示すように、3ウエルの編糸を束ねて構成されたネットの場合は、開口部12cの周囲に編糸Ycが3本束ねて編成されている。したがって、開口部12cの引き締め効果も、編糸Ycを3本束ねることによる編糸余りの消費効果も、より優れたものとなり、編地のしわ、歪みをさらに確実に防止することができる。
【0042】
このようにして、優れた意匠性と、しわ、歪み、弛み、膨らみ、垂れ下がりのない見栄えの良さを両立させた袋状経編地として、Tシャツ1aの衣料製品を製造することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、裏面編地2abは全てフラット状編地からなるものとしたが、これに限られるものではなく、裏面編地2abの一部が開口部を有するネット状編地となるように編成することも可能である。この場合、ネット状編地部が、裏面編地に占める面積の割合は、20%未満であることが好ましい。また、本実施形態においては、ネット状編地の開口部の編地は全て2ウエルの編糸を束ねて編成されるものとしたが、ネット状編地面積の20%以下の範囲内で、1ウエルネットのネット組織を混在させてもよい。特に、模様3aの周囲のみを1ウエルネットのネット組織とすることにより、模様3aがより浮き上がって見えるため、より優れた意匠性を付与することができる。
【0044】
図4及び
図5に示すように、本実施形態に係る袋状経編地の他の例は、袋状カバー1bである。シート、シーツ、マットレス等の他のカバー製品も、同様にして製造することができる。袋状カバー1bにおいては、
図4に示すように、表面編地2baの地組織がネット状編地からなり、表面編地2baの模様部分3bがフラット状編地からなる。そして、
図5に示すように、裏面編地2bbは全てフラット状編地からなる。フラット状編地(模様部分3b)が表面編地2baに占める割合は50%で、ネット状編地(地組織)が表面編地2baに占める割合は50%である。袋状カバー1bにおいては、透けて見えるネット状編地とその中に模様3bを形成するフラット状編地によって、優れた意匠性が得られる。また、フラット状編地の部分で編糸を長く多量に消費するため、編糸を少ししか消費しないネット状編地の部分で余る編糸長さを吸収することができ、編地のしわ、歪みを防止することができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る袋状カバー1bにおいては、ネット状編地の開口部の編地は3ウエルの編糸を束ねて編成される。
図8に示すように、3ウエルの編糸を束ねて構成されたネットの場合は、開口部12cの周囲に編糸Ycが3本束ねて編成されている。したがって、開口部12cの引き締め効果も、編糸Ycを3本束ねることによる編糸の消費効果も、より優れたものとなり、編地のしわ、歪みをさらに確実に防止することができる。
【0046】
このようにして、優れた意匠性があり、しわ、歪み、弛み、膨らみのない見栄えの良さを両立させた袋状経編地として、袋状カバー1b等のカバー製品を製造することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、裏面編地2bbは全てフラット状編地からなるものとしたが、これに限られるものではなく、裏面編地2bbの一部が開口部を有するネット状編地となるように編成することも可能である。この場合、ネット状編地部が、裏面編地に占める面積の割合は、20%未満であることが好ましい。また、本実施形態においては、ネット状編地の開口部の編地は全て3ウエルの編糸を束ねて編成されるものとしたが、ネット状編地の面積の20%以下の範囲内で、1ウエルネットのネット組織を混在させてもよい。特に、模様3bの周囲のみを1ウエルネットのネット組織とすることにより、模様3bがより浮き上がって見えるため、より優れた意匠性を付与することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る袋状経編地の組織部の基本的な編成組織について、
図9乃至
図11を参照して説明する。
図9は、本実施形態に係る袋状経編地の組織部の基本的な編成組織を示す編成組織図である。
図10は、本実施形態に係る袋状経編地の表裏身頃の基本的な編成組織を示す編成組織図である。
図11は、本実施形態に係る袋状経編地の表裏身頃の基本的な連結組織を示す編成組織図である。
【0049】
図9に示す組織1〜組織4は、組織部の基本的な編成組織図を表している。組織1及び組織2は、フラット状編地の編成を表している。組織3及び組織4は、開口部を有するネット状編地の編成を表している。開口部を有するネット状編地の場合、経方向に所望の間隔で編成後に、ある間隔で編み糸が1針及び2針間にアンダーラップを行なうことにより、開口部が編成される。常に1針、2針間にアンダーラップをしないと、糸長は短く少なくなるため、編糸余りにより、しわ、歪み等の不具合を生じる虞がある。
【0050】
図9に示す組織1においては、地組織を構成する編糸は1針間にアンダーラップされる編地であり、組織2は地組織を構成する編糸が2針間にアンダーラップされる編地である。組織2の地組織は、編糸が2針間にアンダーラップすることから、糸長は長く多くなるが、編地は厚く、しっかりとした編地となる。筒状、袋状、カバーなどの大きい製品や強度等を必要とする製品の場合は、2針間にアンダーラップされる編地を採用することが多い。組織1及び組織2のような地組織で編成されている場合は、編地のループが均一であり、またシンカーループの動きが一定であるため、給糸される糸長や糸張力も一定となり、地組織面は均一なループが並んだフラットな地組織となる。
【0051】
図9に示す組織3及び組織4は、開口部を編成する基本的な組織である。開口部の大きさは、経方向に短い間隔で編成する、ウエル方向のアンダーラップ数を多くする、またはアンダーラップ数を大きくとることで小さくなる。糸長は開口部の大きさや、編糸の経方向のアンダーラップの長さにより大きく異なってくる。
組織4のように2針間にアンダーラップをすると、糸長は長く多くなるが、開口部の編地はしっかりとした編地となる。また、2針間以上のアンダーラップは、経緯のループで引き寄せる働きを生じ、開口部と開口部の間が拡がる傾向があるが、大きい筒状や袋状のカバーなどの場合、編地自体のサイズが大きいため、製品は重たくなる傾向がある。
組織3のような1針間でアンダーラップを適宜に採用すればよいが多く採用するとサイズの大きい筒状や袋状のカバーなどの編地は、形状が編地の重量で変形し易い、伸び易い、また、強度が低く、見栄えや安心感に懸念が残る製品になる傾向がある。
【0052】
本実施形態においては、主に筒状や袋状のカバーなどのサイズの大きい形状の製品を作製する編地において、表裏どちらか一方の面の地組織がフラット状編地で他方の面が開口部を有するネット状編地や1〜2針間のアンダーラップで意匠を付与した製品の編成時において、しわ、歪み等が製品時に少なく見栄えの良い製品になるような編成方法を見出した。
【0053】
例えば、表裏どちらか一方の面が組織2のフラット編地で、2針間にアンダーラップされた経長い(1m以上)袋状で、かつ、緯長い(1m以上)袋状に編成し、他方の面は意匠性を付与し、編成組織2と組織3、または組織2と組織4で組み合わせると、給糸される糸長が異なる。フラット状編地の組織2に対し、意匠付与面の編地を構成する組織2、組織3、組織4の編地全体に締める比率を考慮する組み合わせをする。
【0054】
図10に示すように、本実施形態における袋状経編地の表裏身頃の基本的な編成組織においては、
図1に示すダブルラッセル編機DRのガイドバー(筬)L1〜L6のうち、ガイドバーL2、L3、L4、L5のみを編成に使用する。このうち二列はジャカードガイドバー(ジャカード筬)L3、L4である。
図10に示すように、ガイドバーL2、L5においては鎖編の編成を行い、ジャカードガイドバーL3、L4においては1針間でアンダーラップする編成を行う。
【0055】
図11に示すように、本実施形態における袋状経編地の表裏身頃の基本的な連結組織においては、
図1に示すダブルラッセル編機DRのガイドバー(筬)L1〜L6のうち、ガイドバーL2、L3、L4、L5のみを編成に使用する。このうち二列はジャカードガイドバー(ジャカード筬)L3、L4である。
図11に示すように、ガイドバーL2、L5においては鎖編の編成を行い、ジャカードガイドバーL3、L4においては1針間でアンダーラップする編成を行う。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により、用途、糸、組織等を特に何ら限定されるものではない。
【0057】
以下に説明するように、本発明の実施例1〜
7に係る袋状経編地を製造し、評価を行った。また、比較のため、比較例1〜
4の袋状経編地を製造し、評価を行った。
【実施例1】
【0058】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に44dtex/34fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、ジャカード組織の変化で意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を70コース/60ウエルとした。
【0059】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、2ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は50%で、フラット状編地の地組織は2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は表面編地の50%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【実施例2】
【0060】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に167dtex/48fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、ジャカード組織の変化で意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を60コース/40ウエルとした。
【0061】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、3ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は40%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は60%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【実施例3】
【0062】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−18E)を用いて、ガイドバーL2、L5に330dtex/144fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を40コース/30ウエルとした。
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、6ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は40%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は60%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【実施例4】
【0063】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に56dtex/24fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を26コース/24ウエルとした。
【0064】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、8ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は70%であった。フラット状編地の地組織は1針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は30%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【実施例5】
【0065】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に84dtex/36fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を50コース/50ウエルとした。
【0066】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編組織でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、2ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は30%であった。フラット状編地の地組織は2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は70%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【実施例6】
【0067】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に56dtex/24fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編との組み合わせによる地組織にして、ジャカード組織の変化で伸縮の強い編地と伸縮の弱い編地をコース、ウエル方向に意匠とともに付与して編成した。このとき、編地の仕上り密度を40コース/40ウエルとした。
【0068】
裏面編地の地組織は、L5とL6はデンビ編組織1針間のアンダーラップでジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、4ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は50%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は50%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【実施例7】
【0069】
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に44dtex/34fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、84dtex/36f加工糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、加工糸ガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、ジャガート組織の変化で意匠を編成した。このとき編地の仕上り密度を50コース/45ウエルとした。
【0070】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、2ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は50%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は50%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【0071】
〔比較例1〕
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に44dtex/34fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4による鎖編、デンビ編とコード編の組み合わせによる地組織にして、ジャカード組織の変化で意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を60コース/50ウエルとした。
【0072】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織80%でネット編地組織が20%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、2ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は50%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は50%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【0073】
〔比較例2〕
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に22dtex/12fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4によるデンビ編との組み合わせによる地組織にして、意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を70コース/60ウエルとした。
【0074】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、1ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は50%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は50%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【0075】
〔比較例3〕
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−18E)を用いて、ガイドバーL2、L5に550dtex/240fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4によるデンビ編との組み合わせによる地組織にして、意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を16コース/16ウエルとした。
【0076】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編でジャカードの筬のアンダーラップは2針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、1ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は70%であった。フラット状編地の地組織は、1針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は30%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【0077】
〔比較例4〕
2列のジャカードガイドバーを備えるダブルラッセル機(カールマイヤー社製 RDPJ6/2N−24E)を用いて、ガイドバーL2、L5に84dtex/36fの加工糸を使用し、ジャカードガイドバーL3、L4には、44dtex/4fのポリウレタン糸を芯糸にして、44dtex/34fのナイロン糸を600回/mでカバーリングした弾性カバーリング糸を使用し、ガイドバーL2、L5の鎖編と、ジャカードガイドバーL3、L4によるデンビ編との組み合わせによる地組織にして、意匠を編成した。このとき、編地の仕上り密度を50コース/50ウエルとした。
【0078】
裏面編地の地組織は、L5は鎖編組織でジャカードの筬のアンダーラップは1針間にアンダーラップの地組織100%とした。表面編地の意匠部の穴部の編地は、2ウエルの編糸を束ねた編地のネット組織が表面編地に占める比率は50%であった。フラット状編地の地組織は、2針間にアンダーラップする地組織で意匠を作製し、フラット状編地が表面編地に占める比率は50%であった。
加工上がりの表面編地(意匠面)のしわ、歪み、編地の浮き、見栄え品位の評価を、表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、実施例1〜7に係る袋状経編地は、いずれもフラット状編地が表面編地に占める面積の割合は30%〜70%であり、ネット状編地が表面編地に占める面積の割合は30%〜70%であり、ネット状編地の開口部の編地の80%〜100%(100%)は2ウエル〜10ウエルの編糸を束ねて編成される、という条件を満たしている。この結果、しわ、歪み、浮き、見栄え品位のいずれの項目においても、×の評価は無く、△〜○の総合評価となっている。
【0081】
これに対して、表1に示すように、比較例1〜4の袋状経編地は、フラット状編地が表面編地に占める面積の割合は30%〜70%であり、ネット状編地が表面編地に占める面積の割合は30%〜70%であり、ネット状編地の開口部の編地の80%〜100%は2ウエル〜10ウエルの編糸を束ねて編成される、という条件のいずれかを満たしていない。この結果、しわ、歪み、浮き、見栄え品位のいずれかの項目において、△〜×の評価となり、総合評価で×となっている。
【0082】
以上説明したように、本実施形態及び実施例に係る袋状経編地は、優れた意匠性と、しわ、歪み、浮き、弛み、膨らみのない見栄えの良さと、を両立させている。このことにより、生活用カバー類や衣料製品の用途に好適に使用することができる。
【0083】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態及び実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。