(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105237
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】カップ部を有する衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/12 20060101AFI20170316BHJP
A41C 3/08 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
A41C3/12 Z
A41C3/08
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-200577(P2012-200577)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2013-213304(P2013-213304A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年8月3日
(31)【優先権主張番号】特願2012-48776(P2012-48776)
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 さやか
【審査官】
一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−327314(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3159452(JP,U)
【文献】
特開2004−124325(JP,A)
【文献】
特開平10−251904(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3167827(JP,U)
【文献】
特開2012−107368(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/176283(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/00 − 3/14
A41C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の胸部を被覆する前身生地および後身生地(3)と、該前身生地の裏地として設けられる肌側身生地(7、8)と、2つのパッド(5)とを備え、前記前身生地は胸被覆部(1)と該胸被覆部(1)の端部より脇下および肩部へと延設する脇部(2)から構成され、前記パッド(5)の横辺(52)には肌側身生地(7)が、下辺(53)には肌側身生地(8)がそれぞれ縫着され、該肌側身生地(7、8)はパッド(5)とは縫着されていない辺部が前身生地の胸被覆部(1)や脇部(2)に縫着されており、これにより、パッド(5)を前身生地に対して間接的に保持し、2つのパッド(5)の間には略Y字形状に形成された伸縮性生地(6)が設けられ、該伸縮性生地(6)の上辺部は胸被覆部(1)の上辺部(12)に沿って縫着され、その横辺部は2つのパッド(5)の横辺(51)および肌側身生地(7)の辺部(71)に沿って縫着され、さらに、肩紐の開始する付近の脇部(2)にかけて縫着されることにより2つのパッド(5)を連接し、且つ、着用者の胸部横から脇下には、伸縮性生地(9)が前身生地と肌側身生地(7、8)の間に設けられていることを特徴とするカップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記パッド(5)がモールド加工により略三角形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記後身生地が、前記脇部(2)の端部より背中側および肩へと延設し、肩上において脇部(2)の上端と縫着されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
前記前身生地および前記脇部(2)の下端には着用者の胴部を被覆する前身頃(101)が縫着され、該前身頃(101)と同じ丈の長さになるよう形成された後身生地(3)が、脇部(2)と前身頃(101)の端部より背中側および肩へと延設し、肩上において脇部(2)の上端と縫着されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記伸縮性生地(9)は、その上辺(91)が切りっぱなしの状態のまま縫着されておらず、その横辺(92)は、胸被覆部(1)の端部(11)に沿って脇部(2)に縫着され、その横辺(93)は、脇部(2)の辺部(22)から端部(21)に沿って縫着されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記2つのパッド(5)同士を連接する伸縮性生地(6)とパッド(5)の横から脇部(2)にかけて設けられた伸縮性生地(9)がパワーネットであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のカップ部を有する衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、女性用の就寝時に着用するためのハーフトップやキャミブラ等のカップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、就寝時にブラジャーに代表されるカップ部を有する衣類を着用しない女性の割合は高く、その理由としては主にブラジャーによる締め付け感や窮屈さに起因している。しかしながら、就寝時にブラジャーを着用しない場合、バストの形が崩れたり、寝る姿勢を変えることに伴ってバストが移動して安定しないなどの問題があった。
【0003】
そこで、就寝時に着用できるブラジャーであって、着用時に締め付け感や窮屈さを与えることなくバストを安定保持できるブラジャーが開発されており、特許文献1には、バストを覆うフルカップ状とした左右カップ部のトップ部を囲む上部および下部に中央サポート部を設け、バストを安定的に保持するブラジャーが開示されている。また、特許文献2には、バストの隆起部の基部を移動しないようにカップの脇側、上側、中央前側に設けられたサポート部で保持するブラジャーが開示されている。
【0004】
しかし、これらのものはいずれも、パッドを設けないフルカップタイプのブラジャーであって、乳房全体を布地により被覆するというものである。よって、乳頭が透けたり、バストの保形性が弱く型崩れする恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4413548
【特許文献2】特開2009−228146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のカップ部を有する衣類のかかる欠点を克服し、就寝時にバストを締め付ける圧迫感が少ないにもかかわらず、バストの形崩れや横流れを効果的に防止することができる就寝時用のカップ部を有する衣類を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであり、前身生地と後身生地により胸回りを被覆するカップ部を有する衣類であって、前身生地の裏には乳房を被覆可能な2つのパッドと、前身生地の裏地を構成し前記パッドの辺部に縫着された肌側身生地と、前記パッドの辺部に縫着され2つのパッド同士を連接する伸縮性生地とを備え、さらに着用者の胸部横から脇下にかけて前記前身生地に伸縮性生地の裏当てが縫着されたことを特徴とするカップ部を有する衣類である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカップ部を有する衣類によれば、モールド加工のパッドを使用することにより、胸の保形性が高いにもかかわらず胸の圧迫感が少なく、横を向いた状態でもパッドが胸にフィットすることにより適切な位置、形にサポートすることができる。特に、着用者の胸部横から脇下にかけて伸縮性生地の裏当てを縫着して生地を3重にすることで、脇からのサポート力を高め、バストが横に流れることを効果的に防ぐことができる。また、パッド同士は伸縮性生地により連接することで、左右にパッドが広がることを防ぎ、バストの形崩れを効果的に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本発明に係るハーフトップの前身生地の裏側をあらわした図。
【
図5】本発明に係るハーフトップの胸部横から脇下にかけて設けられた伸縮性生地の態様をあらわした図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るカップ部を有する衣類の一実施態様である就寝用ハーフトップの形態の例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明のハーフトップの正面図、
図2は同背面図、
図3は同斜視図、
図4は本発明のハーフトップの前身生地の裏側をあらわした図である。図中、1(1A、1B)は胸被覆部、2は脇部、3は後身生地、4はアンダーベルト、5はパッド、6は伸縮性生地、7は肌側身生地、8は肌側身生地、11は胸被覆部端部、12は胸被覆部上辺部、21は脇部端部、22は脇部上辺部、51はパッド横辺、52はパッド横辺、53はパッド下辺、71は肌側身生地辺部をそれぞれ示す。
【0012】
本発明のハーフトップは、大別すると、前身生地および後身生地と、かかる身生地の裏地として設けられる肌側身生地と、乳房の隆起部を被覆する2つのパッドにより構成されている。それらのうち、前身生地は、着用者の胸部を被覆する胸被覆部1(1A、1B)と、胸被覆部1の端部11より脇下および肩部へと延設する脇部2から構成される。また、後身生地3は、脇部2の端部21より背中側および肩へと延設し、肩上において脇部2の上端と縫着されている。また、胸被覆部1、脇部2および後身生地3の下端には、ゴム等の弾性部材を含むアンダーベルト4が設けられている。
【0013】
図4に示すように、胸被覆部1の裏側には、着用者のバストの隆起を被覆するように、略三角形に形成された2つのパッド5が設けられている。このパッド5は、前身生地の胸被覆部1には直接縫着されておらず、以下の通り、裏地の肌側身生地に縫着されている。すなわち、パッド5の横辺52には肌側身生地7が縫着され、下辺53には肌側身生地8がそれぞれ縫着されている。かかる肌側身生地7、8は、パッド5とは縫着されていない辺部が前身生地の胸被覆部1や脇部2に縫着されており、これにより、パッド5を前身生地に対して間接的に保持している。
【0014】
そして、2つのパッド5の間には伸縮性生地6が設けられ、パッド5の横辺51に縫着されることにより、2つのパッド5を連接している。かかる伸縮性生地6は略Y字形状に形成されており、その上辺部は胸被覆部1の上辺部12に沿って縫着され、その横辺部は2つのパッド5の横辺51および肌側身生地7の辺部71に沿って縫着され、さらに、肩紐の開始する付近の脇部2にかけて縫着されている。ただし、その上辺は切りっぱなしの状態で縫着されていない。このように、2つのパッド5同士を伸縮性生地6により連接することで、就寝時に左右にパッドが広がることを防ぎ、バストの形崩れを効果的に防止することができる。また、本実施態様では、肌側身生地7から連続して、後身生地3の裏地として肌側身生地(図示せず)が設けられているが、必ずしも、肌側身生地の裏地は必要ではなく、表地としての後身生地3のみでもよい。
【0015】
さらに、着用者の胸部横から脇下には、伸縮性生地9が前身生地に対して裏当て縫着されている。このように伸縮性生地9は前身生地と肌側身生地の間に設けられているため、外部から直接視認することはできないが、
図5では、かかる伸縮性生地9の位置・形状が確認できるよう、他の構成部分を省略してあらわす。図に示すように、伸縮性生地9は、肩紐の開始する付近の脇部2に縫着されている。ただし、その上辺91は切りっぱなしの状態のまま縫着されていない。また、その横辺92は、胸被覆部1の端部11に沿って脇部2に縫着されている。さらに、その横辺93は、脇部2の辺部22から端部21に沿って縫着されている。すなわち、伸縮性生地9は肩紐部分を除く脇部2全体を覆う形状に形成されており、その一部がパッド5の端部にかかる形で前身生地に縫着されている。このように、脇部2に伸縮性生地9の裏当てを縫着することにより、その部分の生地が3重となってサポート力が増し、バストを横から支持して就寝時にバストが横に流れることを防ぐことができる。
【0016】
本実施態様において、身生地を構成する胸被覆部1、脇部2、および後身生地3の組織としてともに綿ベア天竺により形成されているが、生地の編組織はこれに限らず、フライス、ジャガード等ストレッチ性を有する編組織でも好適に使用できる。使用する素材は綿、レーヨン等のセルロース系素材、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン等の合繊系素材を単独あるいは適宜選択して組み合わせて使用できる。また、肌側の身生地を構成する肌側身生地7および肌側身生地8は、ともに綿天竺生地により形成されているが、生地の組織はこれに限らない。使用する素材は綿、レーヨン等のセルロース系素材、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン等の合繊系素材を単独あるいは適宜選択して組み合わせて使用できる。そして、本実施態様において、伸縮性生地6と伸縮性生地9はともにナイロンなどにポリウレタン弾性繊維を交編して形成されるいわゆるパワーネット等を好適に使用することができる。
【0017】
本実施態様において、パッド5はウレタン等の弾性素材をモールド加工して形成されている。このように、本発明のハーフトップでは、モールド加工のパッドを使用することにより、胸の保形性が高いにもかかわらず胸の圧迫感が少なく、横を向いた状態でもパッドが胸にフィットすることにより適切な位置、形にサポートすることができる。また、乳頭が透けるおそれもない。なお、パッド5の形状は略三角形に必ずしも限定されるものではないが、本実施態様のように略三角形に形成した方が、その辺部ごとに縫着する生地の伸縮性を変えて、生地の緊締力が働く部分を明確にできるため、好ましい。
【0018】
図6及び
図7は、本発明に係るカップ部を有する衣類の一実施態様であるキャミブラの正面図及び背面図である。図に示すように、キャミブラタイプのものは、胸被覆部1および脇部2の下端に胴部を被覆する前身頃101が縫着されており、さらに、前身頃101と同じ丈の長さになるよう形成された後身生地3が、脇部2と前身頃101の端部より背中側および肩へと延設し、肩上において脇部2の上端と縫着されているが、その他の点においては、前述の就寝用ハーフトップの構成と同様である。
【符号の説明】
【0019】
1……胸被覆部
2……脇部
3……後身生地
4……アンダーベルト
5……パッド
6……伸縮性生地
7……肌側身生地
8……肌側身生地
9……伸縮性生地
11……胸被覆部端部
12……胸被覆部上辺部
21……脇部端部
22……脇部上辺部
51……パッド横辺
52……パッド横辺
53……パッド下辺
71……肌側身生地辺部
91……伸縮性生地上辺
92……伸縮性生地横辺
93……伸縮性生地横辺
101……前身頃