(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、昼光を利用している場合と人工照明のみを利用している場合とでは、人間の目の順応状態が異なるために、同じ照度であっても違う明るさに感じることは多い。係る点に鑑みると、上記特許文献の如く照度センサの照度を基準として人工照明をコントロールすると、昼光を利用している場合では暗く不快に感じることも多い。そのため、本来、快適な光環境は単に照度ではなく、人の目に入る光である輝度を主体として評価する必要がある。一方で、輝度を測定するためには、例えば高価な輝度カメラで視環境を撮影する必要があり、測定だけでコストがかかってしまうという問題がある。また、人間の感度に合わせたレンジで測定をするためには所定の測定時間を要し、時間と共に変化する昼光の下では測定も困難であった。
【0006】
そこで本発明は、このような従来技術の有する課題を解決するものであり、簡易な光測定方法を用い、且つ、人の明るさの感じ方を取り込んだ上で当該空間の光環境をコントロールすることで、快適性を維持しつつ省エネルギーを実現可能な照明制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る照明制御システムは、昼光が入射可能な開口部を有する部屋空間に設けられ
た照明装置と、部屋空間の照度を測定する照度センサと、照明装置の明るさを変更可能な制御装置と、を備え、制御装置は、照度センサから得られた照度に基づいて部屋空間の輝度状態を
推測した
推測輝度画像を生成する画像生成手段と、
推測輝度画像を、輝度対比と人の順応を加味した被評価画像に変換する画像変換手段と、被評価画像を用いて部屋空間の照明状態が適正か否かを判断する判断手段と、判断手段により適正で無いと判断される場合に
照明装
置の明るさを変更する照明調整手段と、を備え
、画像生成手段は、照明装置の照度及び開口部からの昼光の照度を一に設定した状態で且つ所定位置からの部屋空間の輝度画像を基本輝度画像として生成する基本輝度画像生成手段と、照度センサから得られた照度に基づいて、基本輝度画像を変換する変換係数を導出する変換係数導出手段と、基本輝度画像に変換係数を掛け合わせることで推測輝度画像を生成する推測輝度画像生成手段と、を備える。
【0008】
この発明では、照度センサから
得られた照度に基づいて輝度画像が生成され、この輝度画像を基礎として部屋空間の明るさが評価される。このように、輝度画像を評価対象とすることで、照度に基づいた照度画像では評価できなかった昼光と人工照明とが混合する空間の明るさを評価することができる。また、照度センサから
得られた照度に基づいて演算により輝度画像を算出する構成であるため、高価な輝度センサを要せず、且つ即時に評価対象の基礎となる
推測輝度画像を生成することができる。
【0009】
そして、
推測輝度画像を輝度対比と人の順応を加味した被評価画像に変換することで、部屋空間に存在する人が当該部屋空間の明るさを評価する感覚に近い評価を行うことができる。この評価に基づいて部屋空間の明るさを調整することにより、人の感覚に近い照明の調整を行うことができる。
また、照度センサから得られた照度に基づいて変換係数導出手段により直ちに変換係数が割り出される。そして、この変換係数と、予め生成しておいた基本輝度画像とを用いて容易に推測輝度画像を生成することができ、推測輝度画像の生成を迅速に(リアルタイムに)行うことができる。
【0010】
以上のように、照明制御システムは、簡易な光測定方法を用い、且つ、人の明るさの感じ方を取り込んだ上で当該空間の光環境をコントロールすることで、快適性を維持しつつ省エネルギーを実現できる。
【0012】
変換係数導出手段は、基本輝度画像の撮像状態とは照度条件のみを変更して得られる第1輝度画像と基本輝度画像とを対比して、基本輝度画像に対する第1輝度画像の輝度の変化量を同じ座標毎に比較し、当該比較の結果を集積して得られる第1係数と、基本輝度画像の撮像状態とは照度条件のみを変更して得られると共に第1輝度画像とは照度条件が異なる第2輝度画像と基本輝度画像とを対比して、基本輝度画像に対する第2輝度画像の輝度の変化量を同じ座標毎に比較し、当該比較の結果を集積して得られる第2係数と、第1係数及び第2係数に基づいて得られる基本輝度画像に対する照度と輝度との関係を示す照度輝度変換係数と、照度輝度変換係数を含み、照度センサから
得られた照度を変数とする線形関数と、を算出し、線形関数に照度センサから
得られた照度を入力することで当該照度における変換係数を導出する、ことが好ましい。この場合には、第1輝度画像と基本輝度画像とを比較することで第1係数が得られ、第2輝度画像と基本輝度画像とを比較することで第2係数が得られる。これら第1係数と第2係数との関係を、照度を変数とする線形関数として示すことで、当該第1輝度画像のときの照度及び第2輝度画像のときの照度以外の照度のときの輝度画像と、基本輝度画像とを比較することで得られるであろう係数(即ち変換係数)を導出することができる。そして、この変換係数を基本輝度画像に掛け合わせることで、当該照度のときの
推測輝度画像を直ちに生成することができる。この結果、照度センサから得られる照度情報に基づいて、当該照度のときの
推測輝度画像を生成することができる。
【0013】
本発明に係る照明制御システムは、昼光が入射可能な開口部を有する部屋空間に設けられた照明装置と、部屋空間の照度を測定する照度センサと、照明装置の明るさを変更可能な制御装置と、を備え、制御装置は、照明装置の照度及び開口部からの昼光の照度を一に設定した状態で且つ所定位置からの部屋空間の輝度画像を基本輝度画像として生成する基本輝度画像生成手段と、照度センサから得られた照度に基づいて、基本輝度画像を変換する変換係数を導出する変換係数導出手段と、基本輝度画像に変換係数を掛け合わせることで、部屋空間の輝度状態を推測した推測輝度画像を生成する推測輝度画像生成手段と、推測輝度画像に基づいて照明装置の明るさを変更する照明調整手段と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な光測定方法を用いつつ、人の感じる明るさを表現し、光環境をコントロールすることで、快適性を維持しつつ省エネルギーを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る照明制御システムの実施形態について詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、照明制御システム1は、部屋空間Xの明るさを制御するものである。部屋空間Xには、窓等が取り付けられる開口部Aが設けられ、開口部Aから昼光が部屋空間Xに入射可能となっている。開口部Aが設けられていることにより、部屋空間Xに入射する昼光の量が時間を追って変化し、部屋空間Xの明るさが変化する。
【0022】
照明制御システム1は、複数の照明装置2と、照度センサ3と、制御装置4とを含んで構成される。複数の照明装置2は、部屋空間Xにそれぞれ設けられ、部屋空間Xを照らす。照度センサ3は、部屋空間Xの所定位置に設けられて、受光面での受光した光の照度を検知する。本実施形態では、部屋空間Xの壁面(鉛直面)のいずれかの位置に設けることとする。
図1では、部屋空間Xに1つの照度センサ3が設けられている例を示しているが、部屋空間Xに複数設けることもできる。制御装置4は、複数の照明装置2の明るさを個別に変更可能となっている。
【0023】
制御装置4は、機能的には、画像生成手段10と、画像変換手段20と、判断手段30と、照明調整手段40と、照明オンオフ検出手段50とを含んで構成される。
【0024】
画像生成手段10は、照度センサ3から得られた照度に基づいて部屋空間Xの輝度状態を予測した予測輝度画像
(推測輝度画像)を生成する。このため、画像生成手段10は、基本輝度画像生成手段11と、変換係数導出手段12と、予測輝度画像生成手段
(推測輝度画像生成手段)13とを含んで構成される。
【0025】
基本輝度画像生成手段11は、各照明装置2の照度及び開口部Aからの昼光の照度を一に設定した状態で、且つ、所定位置から見たときの部屋空間Xの輝度画像を基本輝度画像として生成する。この基本輝度画像は、撮像装置100を用いて実際に部屋空間Xを撮像することによって得られる輝度画像を用いることができる。なお、シミュレーションによって基本輝度画像を算出することも可能であり、この場合、基本輝度画像生成手段11は、予め入力された、部屋空間Xの間取りや開口部Aの位置、照明装置2の設置位置等のデータを用いて算出する。なお、シミュレーションによって輝度画像を算出する方法として、例えば、Radianceやinspirer等の既存の方法を用いることができる。ここで生成する基本輝度画像は、一般的に居住生活で発生し得る人の視線又は視点で見える範囲とする。基本輝度画像の例を、
図2(a)に示す。
図2(a)では、部屋空間Xの開口部Aや机、棚等が写っている。また、この基本輝度画像のピクセル毎に、輝度が対応付けられている。
【0026】
また、基本輝度画像生成手段11は、変換係数導出手段12において変換係数を導出するために用いられる、第1輝度画像と、第2輝度画像と、第3輝度画像とを生成する。第1輝度画像は、基本輝度画像の撮像状態とは照度条件のみを変更して得られるものである。即ち、第1輝度画像と基本輝度画像とは示す範囲が同じである。また、第1輝度画像は、第2輝度画像及び第3輝度画像とも照度条件が異なる。なお、第1輝度画像は、基本輝度画像と同様に、シミュレーションによって算出したり、撮像装置100を用いて実際に撮像することによって生成したりすることができる。第2輝度画像は、基本輝度画像の撮像状態とは照度条件のみを変更して得られるものである。また、第2輝度画像は、第1輝度画像及び第3輝度画像とも照度条件が異なる。第3輝度画像は、基本輝度画像の撮像状態とは照度条件のみを変更して得られるものである。また、第3輝度画像は、第1輝度画像及び第2輝度画像とも照度条件が異なる。第2輝度画像及び第3輝度画像は、第1輝度画像と同様に、シミュレーションによって算出したり、撮像装置100を用いて実際に撮像することによって生成したりすることができる。
図2(b)に第1輝度画像の例を示し、
図2(c)に第2輝度画像の例を示し、
図2(d)に第3輝度画像の例を示す。
図2(a)〜
図2(d)では、便宜上、輝度の違いを線種によって表している。
【0027】
また、基本輝度画像生成手段11は、生成された第1輝度画像〜第3輝度画像に対応する部屋空間Xの照度をそれぞれ取得する。この照度は、シミュレーションによって算出したり、撮像装置100によって第1輝度画像〜第3輝度画像を撮像した時にそれぞれ照度センサ3から得られる照度を用いたりすることができる。なお、シミュレーションによって照度を算出する場合、基本輝度画像生成手段11は、照度を求めるために用いられる一般的な方程式(例えば、E=(F×N×U×M)/A[lx]:Fは照明装置2の光束、Nは照明装置2の数、Uは照明率、Mは保守率、Aは床面積とする。)を用いることができる。また、基本輝度画像生成手段11は、例えば、Radianceやinspirer等の既存の方法を用いて照度を算出することもできる。
【0028】
変換係数導出手段12は、照明装置2からの情報に基づいて、基本輝度画像生成手段11で生成された基本輝度画像を変換する変換係数を導出する。より詳細には、変換係数導出手段12は、まず、条件1として、第1輝度画像と、基本輝度画像とを対比して、基本輝度画像に対する第1輝度画像の輝度の変化量を同じ座標(ピクセル)毎に比較する。具体的には、例えば、
図2(a)に示す基本輝度画像の座標Zにおけるピクセルの輝度と、
図2(b)に示す第1輝度画像の座標Zにおけるピクセルの輝度とを比較する。そして、
図3に示すように、横軸を基本輝度画像の輝度値とし、縦軸を比較輝度画像としての第1輝度画像の輝度値としたマップ上に、ピクセル毎の輝度値をプロット(
図3における丸印)する。
【0029】
そして、変換係数導出手段12は、第1輝度画像と基本輝度画像とを対比して輝度値をプロットした結果に基づいて、このプロットした結果を表す直線L1を求める。
図3に示す例では、縦軸をy軸、横軸をx軸としたときに、直線L1は、y=1.5151xで表されるものとする。また、変換係数導出手段12は、この直線L1の傾き(1.5151)を、第1係数として求める。そして、変換係数導出手段12は、求めた第1係数と、第1輝度画像に対応する照度とを対応付ける。ここでは、第1輝度画像に対応する照度は、14ルクス[lx]であるものとする。
【0030】
同様に、変換係数導出手段12は、条件2として、第2輝度画像と、基本輝度画像とを対比して、基本輝度画像に対する第2輝度画像の輝度の変化量を同じ座標(ピクセル)毎に比較する。そして、
図3に示すマップ上に、ピクセル毎の輝度値をプロット(
図3における四角印)する。
【0031】
そして、変換係数導出手段12は、第2輝度画像と基本輝度画像とを対比して輝度値をプロットした結果に基づいて、このプロットした結果を表す直線L2を求める。
図3に示す例では、直線L2は、y=2.0748xで表されるものとする。また、変換係数導出手段12は、この直線L2の傾き(2.0748)を、第2係数として求める。そして、変換係数導出手段12は、求めた第2係数と、第2輝度画像に対応する照度とを対応付ける。ここでは、第2輝度画像に対応する照度は、20ルクス[lx]であるものとする。
【0032】
同様に、変換係数導出手段12は、条件3として、第3輝度画像と、基本輝度画像とを対比して、基本輝度画像に対する第3輝度画像の輝度の変化量を同じ座標(ピクセル)毎に比較する。そして、
図3に示すマップ上に、ピクセル毎の輝度値をプロット(
図3における三角印)する。
【0033】
そして、変換係数導出手段12は、第3輝度画像と基本輝度画像とを対比して輝度値をプロットした結果に基づいて、このプロットした結果を表す直線L3を求める。
図3に示す例では、直線L3は、y=3.5067xで表されるものとする。また、変換係数導出手段12は、この直線L3の傾き(3.5067)を、第3係数として求める。そして、変換係数導出手段12は、求めた第3係数と、第3輝度画像に対応する照度とを対応付ける。ここでは、第3輝度画像に対応する照度は、32ルクス[lx]であるものとする。
【0034】
次に、変換係数導出手段12は、第1係数〜第3係数に基づいて得られる基本輝度画像に対する照度と輝度との関係を示す照度輝度変換係数を求める。具体的には、
図4に示すように、横軸を照度(第1輝度画像〜第3輝度画像に対応する照度)、縦軸を変換係数(第1係数〜第3係数)としたマップ上に、第1係数〜第3係数をプロットする。そして、プロットした各点の変化を表す直線L10を求める。
図4に示す例では、縦軸をy軸、横軸をx軸としたときに、直線L10は、変換係数を求めるための線形関数であるy=0.107xで表されるものとする。この直線L10の傾き(0.107)が、第1係数〜第3係数に基づいて得られる基本輝度画像に対する照度と輝度との関係を示す照度輝度変換係数となる。
【0035】
また、変換係数導出手段12は、求めた線形関数を用い、照度センサ3によって測定された照度から変換係数を求める。線形関数を用いることで、第1係数〜第3係数に対応付けられた照度以外の照度の値からも、変換係数を求めることができる。ここで、変換係数は、基本輝度画像に変換係数を掛け合わせることで、変換係数に対応する照度における輝度画像を予測することができるものである。
【0036】
予測輝度画像生成手段13は、基本輝度画像に変換係数を掛け合わせることで予測した輝度画像を生成する。即ち、基本輝度画像生成手段11において生成された基本輝度画像と、変換係数導出手段12で求められた変換係数とを用いることにより、照度センサ3によって測定された照度から、当該照度における輝度画像(以下「予測輝度画像」という)を生成する。この予測輝度画像を生成するためには、基本輝度画像と、変換係数を導出するために用いられる直線L10を表す線形関数と、照度センサ3で測定された照度の値のみがあればよい。従って、線形関数を求めた後は、線形関数を求める際に用いた第1輝度画像〜第3輝度画像や、第1係数〜第3係数等は不要となる。このように、照度センサ3によって測定された照度に基づいて、現在の部屋空間Xにおける予測輝度画像を生成することができる。
【0037】
画像変換手段20は、予測輝度画像生成手段13で生成された予測輝度画像を、輝度対比と人の順応を加味した被評価画像に変換する。本実施形態では、被評価画像として、人間の光の感じ方を表す「明るさ画像」を用いる。この明るさ画像は、例えば、既知である特開2009−284276号公報等に記載されている。
【0038】
具体的には、画像変換手段20は、輝度画像を明るさ画像に変換する明るさ画像変換手段21を含んで構成される。明るさ画像変換手段21は、予測輝度画像生成手段13で生成された予測輝度画像に対して明るさ画像変換を施し、予測明るさ画像を導出する。
【0039】
判断手段30は、明るさ画像変換手段21で導出された予測明るさ画像を用いて部屋空間Xの照明状態が適正か否かを判断する。より詳細には、判断手段30は、ヒストグラム作成手段31と、条件判断手段32と、加工手段33と、再変換手段34と、差分算出手段35とを含んで構成される。
【0040】
ヒストグラム作成手段31は、明るさ画像変換手段21で変換された予測明るさ画像のヒストグラムを作成する。この予測明るさ画像のヒストグラムを
図5に示す。
図5では、横軸が明るさ画像の明るさ尺度値、縦軸が分布量を表している。
【0041】
条件判断手段32は、ヒストグラム作成手段31で作成されたヒストグラムが予め設定された条件を満たすか否かを判断する。即ち、部屋空間Xの明るさが適正か否かを判断する。このため、条件判断手段32は、尖度算定手段301と、第1の条件判断手段302と、閾値設定手段311と、割合算定手段312と、第2の条件判断手段313と、明るさ適否判断手段320とを含んで構成される。
【0042】
尖度算定手段301は、ヒストグラム作成手段31で作成された予測明るさ画像のヒストグラムの尖度を算定する。第1の条件判断手段302は、尖度算定手段301で算定された尖度が予め設定された条件を満たすか否かを判断する。ここで、本実施形態における部屋空間Xでは、明るさ画像のヒストグラムが正規分布に近いほど、部屋空間Xに存在する人は部屋空間Xの明るさを適正であると感じるものとする。この場合、第1の条件判断手段302は、ヒストグラムの尖度が、予め設定された閾値よりも大きく、正規分布に近い場合に、予め設定された条件を満たすものとして判断する。なお、部屋空間Xの間取りや開口部Aの大きさ等に応じて、部屋空間Xの人が適正な明るさであると感じるヒストグラムの形状は異なる。このため、実際に人が適正な明るさであると感じるときの明るさ画像のヒストグラムを分析するなど、適正な明るさであると感じるヒストグラムの形状(尖度の範囲)を予め求めておく。
【0043】
閾値設定手段311は、ヒストグラム作成手段31で作成された予測明るさ画像のヒストグラムに対し、上閾値と下閾値の2つの閾値を設定する。割合算定手段312は、予測明るさ画像のヒストグラムのうち、下閾値以下の割合、及び、上閾値以上の割合を算定する。第2の条件判断手段313は、割合算定手段312で算定された下閾値以下の割合及び上閾値以上の割合が予め設定された条件を満たすか否かを判断する。本実施形態における部屋空間Xでは、
図5に示すように、明るさ尺度値が5以下(下閾値)の割合が10%以下、明るさ尺度値が7.5以上(上閾値)の割合が10%以下の場合に、部屋空間Xに存在する人は部屋空間Xの明るさを適正であると感じるものとする。この場合、第2の条件判断手段313は、予測明るさ画像のヒストグラムが、明るさ尺度値が5以下(下閾値)の割合が10%以下、明るさ尺度値が7.5以上(上閾値)の割合が10%以下を満たす場合に、予め設定された条件を満たすものとして判断する。なお、部屋空間Xの間取りや開口部Aの大きさ、壁や天井の色合い等に応じて、部屋空間Xの人が適正な明るさであると感じるヒストグラムの分布状態は異なる。このため、実際に人が適正な明るさであると感じるときの明るさ画像のヒストグラムの分布を分析するなど、適正な明るさであると感じるヒストグラムの分布を予め求めておく。
【0044】
明るさ適否判断手段320は、第1の条件判断手段302及び第2の条件判断手段313において、予め設定された条件を満たすものとして判断された場合、部屋空間Xの明るさは適正であるものとして判断する。第1の条件判断手段302及び第2の条件判断手段313のいずれか一方でも条件を満たさないものとして判断された場合、明るさ適否判断手段320は、部屋空間Xの明るさは不適正であるものとして判断する。
【0045】
加工手段33は、明るさ適否判断手段320において部屋空間Xの明るさが不適正であるものとして判断された場合に、明るさ画像変換手段21で導出された予測明るさ画像を予め設定された条件を満たす加工明るさ画像に加工する。
【0046】
以下、加工手段33において行われる加工の具体的な例について説明する。一例として、
図6(a)において実線で示す予測明るさ画像のヒストグラムのように、ヒストグラムの尖度が小さく(ヒストグラムの山が扁平)、第1の条件判断手段302において予め設定された条件を満たしていないと判断された場合について説明する。この場合、加工手段33は、ヒストグラムが
図6(a)において破線で示す正規分布の形状に近くなるように予測明るさ画像を加工し、加工明るさ画像を作成する。
【0047】
また、他の例として、
図6(b)において実線で示す予測明るさ画像のヒストグラムのように、ヒストグラムの中央値における明るさ尺度値が5以下であり、明るさ尺度値が5以下(下閾値)の割合が10%以下、及び、明るさ尺度値が7.5以上(上閾値)の割合が10%以下の条件を満たさない場合について説明する。この場合、加工手段33は、
図6(b)において破線で示すように、ヒストグラムの中央値における明るさ尺度値が6.25となるように、更に、明るさ尺度値が5以下(下閾値)の割合が10%以下、及び、明るさ尺度値が7.5以上(上閾値)の割合が10%以下となるように予測明るさ画像を加工し、加工明るさ画像を作成する。
【0048】
更に、他の例として、
図6(c)において実線で示す予測明るさ画像のヒストグラムのように、ヒストグラムの山が2つ存在し、明るさ尺度値が5以下(下閾値)の割合が10%以下、及び、明るさ尺度値が7.5以上(上閾値)の割合が10%以下の条件を満たさない場合について説明する。この場合、加工手段33は、
図6(c)において破線で示すように、ヒストグラムの2つの山の中央値がそれぞれ明るさ尺度6.25に近づくように、更に、明るさ尺度値が5以下(下閾値)の割合が10%以下、及び、明るさ尺度値が7.5以上(上閾値)の割合が10%以下となるように予測明るさ画像を加工し、加工明るさ画像を作成する。
【0049】
また、加工手段33は、加工明るさ画像を作成する際に、まぶしさを考慮してもよい。
【0050】
ここで、部屋空間Xの明るさ、壁や天井の色合い等に起因して、予測輝度画像や予測明るさ画像には、どれだけ照明装置2を調光してもそれ以上明るく又は暗くすることができない座標が存在する場合がある。そこで、ヒストグラムの上下の閾値を設定し、ヒストグラムが上閾値以上の部分に対応する画像の領域、及び、ヒストグラムが下閾値以下の部分に対応する画像の領域については、もはや照明装置2をどのようにしても当該領域の明るさを調整することができない領域であると認識する一方、ヒストグラムが下閾値より大きく上閾値未満である部分に対応する画像の領域については、調光により明るさを調整できると認識することができる。従って、明るさを調整することができない領域については、処理を行わないようにすることができる。即ち、ヒストグラムの下閾値以下の部分、及び、上閾値以上の部分を構成するピクセルについては、加工手段33において、加工の対象外とすることができる。
【0051】
再変換手段34は、加工手段33で作成された加工明るさ画像を輝度画像に再変換して加工輝度画像を作成する。差分算出手段35は、再変換手段34で作成された加工輝度画像、及び、予測輝度画像生成手段13で生成された予測輝度画像を比較し、加工輝度画像及び予測輝度画像における座標毎の輝度の差分を算出する。即ち、現在の部屋空間Xの輝度と、適正な明るさである部屋空間Xの輝度との差分を算出する。
【0052】
照明調整手段40は、差分算出手段35で算出された輝度の差分を解消するように、複数の照明装置2の明るさを変更する。即ち、照明調整手段40は、部屋空間Xが適正な明るさとなるように、複数の照明装置2の少なくともいずれかの明るさを変更する。これにより、部屋空間Xの明るさを適正な明るさとすることができる。
【0053】
照明オンオフ検出手段50は、照明装置2のスイッチのオン状態又はオフ状態を検出する。
【0054】
ここで、制御装置4は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、そのハードウェア構成は、通常の情報処理装置の基本構成、即ち、CPU、RAM、ROM、キーボードやマウス等の入力デバイス、外部との通信を行う通信デバイス、情報を記憶する記憶デバイス、及び、ディスプレイ等の出力デバイス等を必要に応じて備えている。これらの構成要素が動作することにより、上記の画像生成手段10、画像変換手段20、判断手段30、及び、照明調整手段40、照明オンオフ検出手段50の各機能が発揮される。
【0055】
次に、制御装置4において行われる照明装置2の明るさの制御処理の流れについて
図7を用いて説明する。なお、照明装置2の明るさの制御処理の前に、画像生成手段10において、上述したように基本輝度画像生成手段11において基本輝度画像が生成され、変換係数導出手段12において線形関数(
図4の直線L10を表す関数)が求められているものとする。また、照明装置2の明るさの制御処理は、例えば、照明オンオフ検出手段50によって、照明装置2のスイッチがオン状態に操作されたことが検出されたときに開始される。
【0056】
まず、照度センサ3が、部屋空間Xの照度を測定する(ステップS101)。変換係数導出手段12は、照度センサ3で測定された照度と線形関数とに基づいて変換係数を導出する。そして、予測輝度画像生成手段13は、変換係数導出手段12で導出された変換係数と基本輝度画像生成手段11で生成された基本輝度画像とを掛け合わせることで予測輝度画像を生成する(ステップS102)。
【0057】
次に、明るさ画像変換手段21は、予測輝度画像生成手段13で生成された予測輝度画像を予測明るさ画像に変換する(ステップS103)。ヒストグラム作成手段31は、明るさ画像変換手段21で変換された予測明るさ画像のヒストグラムを作成する(ステップS104)。そして、第1の条件判断手段302は、ヒストグラムの尖度が予め設定された条件を満たしているか否かの判断を行う(ステップS105)。
【0058】
尖度が予め設定された条件を満たしている場合(ステップS105:YES)、第2の条件判断手段313は、ヒストグラムの下閾値以下の割合及び上閾値以上の割合が予め設定された条件を満たすか否かを判断する(ステップS106)。ヒストグラムの割合が予め設定された条件を満たす場合(ステップS106:YES)、明るさ適否判断手段320は、部屋空間Xの明るさが適正であるものとして判断する(ステップS107)。
【0059】
次に、照明オンオフ検出手段50は、照明装置2のスイッチがオフ状態(消灯)状態に操作されたか否かを判断する。オフ状態に操作された場合、照明装置2の明るさの制御処理を終了する。一方、照明装置2のスイッチがオフ状態でない場合、上述のステップS101の処理に戻り、照度センサ3による照度測定を行う。
【0060】
また、尖度が予め設定された条件を満たしていない場合(ステップS105:NO)、又は、ヒストグラムの割合が予め設定された条件を満たしていない場合(ステップS106:NO)、明るさ適否判断手段320は、部屋空間Xの明るさが不適正であるものとして判断する(ステップS109)。
【0061】
明るさ適否判断手段320によって、部屋空間Xの明るさが不適正であるものとして判断された場合、加工手段33は、明るさ画像変換手段21で導出された予測明るさ画像を予め設定された条件を満たす加工明るさ画像に加工する(ステップS110)。次に、再変換手段34は、加工手段33で作成された加工明るさ画像を輝度画像に再変換して加工輝度画像を作成する(ステップS111)。そして、差分算出手段35は、再変換手段34で作成された加工輝度画像、及び、予測輝度画像生成手段13で生成された予測輝度画像を比較し、加工輝度画像及び予測輝度画像における座標毎の輝度の差分を算出する(ステップS112)。
【0062】
次に、照明調整手段40は、差分算出手段35で算出された輝度の差分を解消するように、複数の照明装置2の明るさを変更する(ステップS113)。照明調整手段40における照明装置2の明るさの変更後、上述のステップS101の処理に戻り、照度センサ3による照度測定を行う。
【0063】
本実施形態は以上のように構成され、照度センサ3からの情報に基づいて輝度画像が生成され、この輝度画像を基礎として部屋空間の明るさが評価される。このように、照度に基づいた照度画像では評価できなかった昼光と人工照明の混合する空間の明るさを評価することができる。また、照度センサ3からの情報に基づいて輝度画像を演算により算出する構成であるため、高価な輝度センサを要せず、且つ即時に評価対象の基礎となる予測輝度画像を生成することができる。
【0064】
そして、予測輝度画像を、輝度対比と人の順応を加味した予測明るさ画像に変換することで、部屋空間Xに存在する人が当該部屋空間Xの明るさを評価する感覚に近い評価を行うことができる。この評価に基づいて部屋空間Xの明るさを調整することにより、人の感覚に近い照明装置2の調整を行うことができる。なお、照度の測定は所定間隔、例えば、1時間、又は、30分毎に行う。
【0065】
以上のように、照明制御システム1は、簡易な光測定方法を用い、且つ、人の明るさの感じ方を取り込んだ上で部屋空間Xの光環境をコントロールすることで、快適性を維持しつつ省エネルギーを実現できる。
【0066】
また、照度センサ3によって測定された照度に基づいて、変換係数導出手段12により直ちに変換係数が割り出される。そして、この変換係数と、予め生成しておいた基本輝度画像とを用いて容易に予測輝度画像を生成することができ、予測輝度画像の生成を迅速に(リアルタイムに)行うことができる。
【0067】
変換係数導出手段12が、上述した第1係数〜第3係数を求め、第1係数〜第3係数に基づいて線形関数を算出する。この線形関数を用いることで、照度センサ3によって測定された照度から変換係数を容易に導出することができる。そして、この変換係数を基本輝度画像に掛け合わせることで、当該照度のときの予測輝度画像を直ちに生成することができる。
【0068】
明るさ画像変換手段21は、予測輝度画像を予測明るさ画像に変換する。判断手段30は、予測明るさ画像に基づいて部屋空間Xの照明状態が適正か否かを判断する。予測明るさ画像は、輝度対比及び部屋空間Xにおける人の順応を加味した画像であるので、予測輝度画像を予測明るさ画像に変換することにより、より人の感覚に近い状態で部屋空間Xの明るさを評価することができる。
【0069】
予測明るさ画像のヒストグラムは、当該画像全体に亘る明るさの傾向を把握しやすい。このため、予測明るさ画像からヒストグラム上で良好とされる明るさの条件設定も定義づけ易い。そこで、ヒストグラム作成手段31が、予測明るさ画像をヒストグラム化する。そして、条件判断手段32が、ヒストグラム上で良好とされる予め設定された条件に対し予測明るさ画像をヒストグラム化したものが満足しているか否かを判断することで、部屋空間Xの明るさの評価を容易なものとすることができる。また、条件を満たさない場合は、予測明るさ画像から、条件を満たす加工明るさ画像を作成し、作成した加工明るさ画像を再変換して加工輝度画像を生成する。そして、生成した加工輝度画像と予測輝度画像とを比較することで、コントロールする照明装置2の位置及び出力等を逆算することができる。
【0070】
条件判断手段32は、予測明るさ画像のヒストグラムの尖度を算定する尖度算定手段301と、算定された尖度が予め設定された閾値より大きいか否かを判断する第1の条件判断手段302と、を備える。このように、ヒストグラムを尖度を用いて条件設定をすることにより、容易にヒストグラムの傾向及び当該条件を満たしているか否かを把握することができ、処理が簡便なものとなる。
【0071】
また、条件判断手段32は、予測明るさ画像のヒストグラムに対し、下閾値以下の割合及び上閾値以上の割合が予め設定された割合よりも大きいか否かを判断する第2の条件判断手段313を備える。このように、ヒストグラムに対して下閾値以下の割合、及び、上閾値以上の割合を用いて条件設定をすることにより、容易にヒストグラムの傾向及び当該条件を満たしているか否かを把握することができ、処理が簡便なものとなる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態では、輝度対比と人の順応を加味した被評価画像として明るさ画像を用いる例を示したが、人間の明るさの感じ方を表すものであれば、明るさ画像以外の被評価画像を用いてもよい。
【0073】
また、変換係数導出手段12は、
図4に示す線形関数を求めるために、第1係数〜第3係数を用いて直線L10を求めるものとしたが、第1係数〜第3係数のうちの少なくとも2つの係数に基づいて直線L10を求めてもよく、また、4つ以上の係数に基づいて直線L10を求めてもよい。
【0074】
また、照度センサ3は、複数設けられていてもよい。この場合、部屋空間Xの照度として、これら照度センサ3の平均値を用いることができる。