特許第6105276号(P6105276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105276
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】車両用安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 1/08 20060101AFI20170316BHJP
   H02H 5/04 20060101ALI20170316BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20170316BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20170316BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20170316BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20170316BHJP
   B60K 6/20 20071001ALI20170316BHJP
   B60L 3/04 20060101ALI20170316BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   B60L1/08
   H02H5/04
   H02H7/00 K
   H02H7/00 B
   H02H7/20 D
   B60R16/02 645A
   B60H1/32 613G
   B60K6/20
   B60L3/04 D
   B60H1/22 611C
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-281693(P2012-281693)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-128079(P2014-128079A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 武
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−203280(JP,A)
【文献】 特開2008−027826(JP,A)
【文献】 特開2003−070153(JP,A)
【文献】 特開平08−051722(JP,A)
【文献】 特開2010−006344(JP,A)
【文献】 特開平10−145205(JP,A)
【文献】 実開平03−011331(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0229937(US,A1)
【文献】 米国特許第04994651(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06
B60K 6/20−6/547
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60R 16/02
H02H 5/00−7/00
7/10−7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両又は電動車両に搭載され、電源から負荷に供給ラインを通じて供給される電流を遮断可能な車両用安全装置であって、
前記負荷の温度が第一設定温度に達したときに前記供給ラインを遮断状態とし、前記第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下したときに前記供給ラインを通電状態に復帰させる第一遮断手段と、
前記負荷の温度が前記第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達したときに前記供給ラインを遮断状態として通電状態への復帰を不可とする第二遮断手段と、を備えることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用安全装置であって、
前記第一遮断手段は、
前記供給ラインに設けられ、制御電流が遮断されるか又は通電することによって前記負荷へ供給させる電流を遮断するトランジスタと、
前記負荷の温度に応じて前記制御電流の遮断と通電とを切り換えるスイッチ手段と、を有することを特徴とする車両用安全装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用安全装置であって、
前記スイッチ手段は、前記負荷の温度が前記第一設定温度に達したときに前記制御電流を遮断し、前記負荷の温度が前記第二設定温度に低下したときに前記制御電流を通電させ、
前記トランジスタは、前記制御電流が遮断されると前記負荷へ供給される電流を遮断し、前記制御電流が通電すると前記負荷へ供給される電流を通電させることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項4】
請求項2に記載の車両用安全装置であって、
前記スイッチ手段は、前記負荷の温度が前記第一設定温度に達したときに前記制御電流を通電させ、前記負荷の温度が前記第二設定温度に低下したときに前記制御電流を遮断し、
前記トランジスタは、前記制御電流が通電すると前記負荷へ供給される電流を遮断し、前記制御電流が遮断されると前記負荷へ供給される電流を通電させることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一つに記載の車両用安全装置であって、
前記スイッチ手段は、前記負荷の第一の部分の熱が伝達される第一バイメタルスイッチであり、
前記第二遮断手段は、前記負荷の第二の部分の熱が伝達される第二バイメタルスイッチを有し、
前記負荷の前記第二の部分は、前記第一の部分と比較して温度が低いことを特徴とする車両用安全装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用安全装置であって、
前記第二遮断手段は、
前記第二バイメタルスイッチが設けられ、前記供給ラインにおける前記負荷の上流と下流とを短絡可能な短絡ラインと、
前記電源と前記短絡ラインとの間の前記供給ラインに設けられる電力ヒューズと、を有し、
前記第二バイメタルスイッチは、前記負荷の温度が前記第三設定温度に達したときに前記短絡ラインを短絡させることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用安全装置であって、
前記電源からは、前記供給ラインにおける前記電力ヒューズの下流から分岐して、前記負荷とは異なる他の負荷にも電流が供給され、
前記電力ヒューズは、前記負荷と前記他の負荷とで共用されることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用安全装置であって、
前記負荷は、車両用空調装置に用いられる電気ヒータであり、
前記他の負荷は、前記車両用空調装置に用いられる電動コンプレッサであることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の車両用安全装置であって、
前記第三設定温度は、前記負荷の温度が前記第一設定温度に達して前記第一遮断手段が前記供給ラインを遮断状態とした後にオーバーシュートによって上昇する前記負荷の最大温度と比較して高い温度に設定されることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項10】
ハイブリッド車両又は電動車両に搭載され、電源から負荷に供給ラインを通じて供給される電流を遮断可能な車両用安全装置であって、
前記供給ラインに設けられ、制御電流が遮断されると前記負荷へ供給される電流を遮断し、前記制御電流が通電すると前記負荷へ供給される電流を通電させるトランジスタと、
前記負荷と伝熱可能に接触し、前記負荷の温度が第一設定温度に達したときに前記制御電流を遮断し、前記第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下したときに前記制御電流を通電させる第一バイメタルスイッチと、
前記供給ラインにおける前記負荷の上流と下流とを短絡可能な短絡ラインと、
前記短絡ラインに設けられ、前記負荷と伝熱可能に接触し、前記負荷の温度が前記第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達したときに前記短絡ラインを短絡させる第二バイメタルスイッチと、
前記電源と前記短絡ラインとの間の前記供給ラインに設けられる電力ヒューズと、を備えることを特徴とする車両用安全装置。
【請求項11】
ハイブリッド車両又は電動車両に搭載され、電源から負荷に供給ラインを通じて供給される電流を遮断可能な車両用安全装置であって、
前記供給ラインに設けられ、制御電流が遮断されると前記負荷へ供給される電流を通電させ、前記制御電流が通電すると前記負荷へ供給される電流を遮断するトランジスタと、
前記負荷と伝熱可能に接触し、前記負荷の温度が第一設定温度に達したときに前記制御電流を通電させ、前記第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下したときに前記制御電流を遮断する第一バイメタルスイッチと、
前記供給ラインにおける前記負荷の上流と下流とを短絡可能な短絡ラインと、
前記短絡ラインに設けられ、前記負荷と伝熱可能に接触し、前記負荷の温度が前記第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達したときに前記短絡ラインを短絡させる第二バイメタルスイッチと、
前記電源と前記短絡ラインとの間の前記供給ラインに設けられる電力ヒューズと、を備えることを特徴とする車両用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常時に電流を遮断する車両用安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、温度検出手段によって検出された温度が所定温度以上のときに負荷へ供給される電流を遮断するスイッチ回路が開示されている。このスイッチ回路では、温度検出手段からの信号に基づいて制御手段がスイッチを開放することによって、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)への制御信号の入力を遮断し、負荷へ供給される電流を遮断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−145205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のスイッチ回路は、温度検出手段からの信号に基づいて制御手段がスイッチを開放することによって負荷へ供給される電流を遮断するものである。そのため、電流を遮断した後に、制御手段に何らかの異常が発生したりすると、負荷への電流の供給が再開されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、負荷の異常時における電流遮断の確実性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、ハイブリッド車両又は電動車両に搭載され、電源から負荷に供給ラインを通じて供給される電流を遮断可能な車両用安全装置であって、前記負荷の温度が第一設定温度に達したときに前記供給ラインを遮断状態とし、前記第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下したときに前記供給ラインを通電状態に復帰させる第一遮断手段と、前記負荷の温度が前記第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達したときに前記供給ラインを遮断状態として通電状態への復帰を不可とする第二遮断手段と、を備えることを特徴とする車両用安全装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、負荷の温度が第一設定温度に達すると、第一遮断手段が、電源から負荷に供給される電流が流れる供給ラインを遮断状態とする。そして、負荷の温度が第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下すると、第一遮断手段は、供給ラインを遮断状態から通電状態に復帰させる。また、負荷の温度が更に上昇して第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達すると、第二遮断手段が、供給ラインの電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。したがって、負荷の異常時における電流遮断の確実性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る車両用安全装置が適用される車両用空調装置の構成図である。
図2図2は、本発明の第一の実施の形態に係る車両用安全装置の回路図である。
図3図3は、第一バイメタルスイッチの通電状態を示す断面図である。
図4図4は、車両用空調装置の温水タンクの断面図である。
図5図5は、電気ヒータの斜視図である。
図6図6は、電気ヒータに対する第一バイメタルスイッチと第二バイメタルスイッチとの配置を説明する平面図である。
図7図7は、本発明の第二の実施の形態に係る車両用安全装置の回路図である。
図8図8は、本発明の参考例に係る車両用安全装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
(第一の実施の形態)
以下、図1から図6を参照して、本発明の第一の実施の形態に係る車両用安全装置100について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、車両用安全装置100が適用される車両用空調装置1について説明する。
【0012】
車両用空調装置1は、ハイブリッド車両(Hybrid Electric Vehicle:HEV)や電動車両(Electric Vehicle:EV)に搭載される空調装置である。車両用空調装置1は、空気導入口2aを有する風路2と、空気導入口2aから空気を導入して風路2に流すブロワユニット3と、風路2を流れる空気を冷却するとともに除湿するクーラユニット4と、風路2を流れる空気を暖めるヒータユニット5とを備える。
【0013】
風路2には、空気導入口2aから吸い込まれた空気が流れる。風路2には、車室外の外気と車室内の内気とが吸い込まれる。風路2を通過した空気は、車室内に導かれる。
【0014】
ブロワユニット3は、軸中心の回転によって風路2に空気を流す送風装置としてのブロワ3aを有する。ブロワユニット3は、車室外の外気を取り入れる外気取入口と車室内の内気を取り入れる内気取入口との開閉用のインテークドア(図示省略)を有する。ブロワユニット3は、外気取入口と内気取入口の開閉又は開度を調整し、車室外の外気と車室内の内気との吸込量を調整可能である。
【0015】
クーラユニット4は、冷房用冷媒が循環する冷媒循環回路4aと、電動モータ(図示省略)によって駆動されて冷媒を圧縮する電動コンプレッサ4bと、電動コンプレッサ4bによって圧縮された冷媒の熱を外部に放出して冷媒を凝縮させるコンデンサ4cと、凝縮した冷媒を膨張させて温度を下げる減圧弁4dと、膨張して温度が下がった冷媒によって風路2を流れる空気を冷却するエバポレータ4eとを有する。
【0016】
ヒータユニット5は、冷媒が循環する冷媒循環回路5aと、電動モータ(図示省略)によって駆動されて冷媒を循環させる電動ポンプ5bと、循環する冷媒から空気を除去する空気抜きタンク5cと、循環する冷媒を暖める電気ヒータ5dと、電気ヒータ5dによって暖められた冷媒が流通する温水タンク6と、電気ヒータ5dで暖められた冷媒によって風路2を流れる空気を暖めるヒータコア5eと、風路2を流れる空気のうちヒータコア5eに導かれる空気とヒータコア5eをバイパスする空気との流量を調整するミックスドア5fとを有する。
【0017】
車両用空調装置1では、空気導入口2aから風路2に導入された空気は、まず、ブロワ3aによってクーラユニット4に導かれる。クーラユニット4では、風路2を流れる空気が、エバポレータ4eとの熱交換によって冷却されるとともに除湿される。
【0018】
エバポレータ4eを通過した空気は、ミックスドア5fによって、ヒータコア5eに導かれる空気とヒータコア5eをバイパスする空気とに分けられる。ヒータコア5eに導かれた空気は、ヒータコア5eとの熱交換によって暖められる。そして、ヒータコア5eによって暖められた空気とヒータコア5eをバイパスした空気とが再び合流して、車室内に導かれる。このように、車両用空調装置1は、空気導入口2aから風路2に導入された空気の温度と湿度とを調整して車室内に導く。
【0019】
次に、図2及び図3を参照して、車両用安全装置100,及び車両用安全装置100が適用される電気回路10について説明する。
【0020】
図2に示すように、電気回路10は、電源としての直流電源11と、直流電源11から供給される電流によって作動する負荷としての電気ヒータ5dとを備える。また、電気回路10は、温水タンク6内の冷媒の温度を検出する水温センサ23と、水温センサ23が検出した冷媒の温度に基づいて電気ヒータ5dへの電流の供給を制御するコントローラ25とを備える。
【0021】
直流電源11は、ハイブリッド車両や電動車両などに搭載される強電バッテリである。直流電源11の出力電圧は、30V以上の強電であり、ここでは350Vである。直流電源11からの電流は、供給ライン12を通じて電気ヒータ5dに供給される。直流電源11に代えて、交流電源を電源として用いてもよい。
【0022】
直流電源11は、電気ヒータ5dとは異なる他の負荷としての電動コンプレッサ4bにも電流を供給する。この場合、電動コンプレッサ4bへの電流は、供給ライン12における後述する電力ヒューズ31の下流から分岐して供給される。
【0023】
電気ヒータ5dは、通電することによって発熱するシーズヒータ又はPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータである。電気ヒータ5dは、コスト的には、シーズヒータであることが望ましい。電気ヒータ5dは、温水タンク6内に収装され、車両の暖房装置に用いられる冷媒を加熱する。
【0024】
水温センサ23は、温水タンク6内に収容される。水温センサ23は、検出した冷媒の温度に応じた電気信号をコントローラ25に送信する。
【0025】
コントローラ25は、冷媒の温度が適正な温度範囲よりも低い場合には、後述するIGBT20に制御電流を通電させて電気ヒータ5dに電流を供給するようにドライバ20aに指令を行う。一方、コントローラ25は、冷媒の温度が適正な温度範囲よりも高い場合には、IGBT20への制御電流を遮断して電気ヒータ5dに電流を供給しないようにドライバ20aに指令を行う。このようにして、コントローラ25は、冷媒の温度を所望の温度に調整している。
【0026】
車両用安全装置100は、電気ヒータ5d自体の温度、又は温水タンク6内の冷媒の温度が許容温度範囲を超えて上昇した場合に、直流電源11から電気ヒータ5dに供給ライン12を通じて供給される電流を遮断可能なものである。
【0027】
なお、以下でいう各々の「設定温度」とは、「電気ヒータ5d自体の温度、又は温水タンク6内の冷媒の温度が許容温度範囲を超えて上昇した場合の電気ヒータ5dの温度」を意味し、正常な暖房運転時の目標温度を意味するものではない。
【0028】
車両用安全装置100は、供給ライン12に設けられるトランジスタとしてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)20と、IGBT20を制御する制御電流を切り換えるスイッチ手段としてのバイメタルスイッチ(第一バイメタルスイッチ)22と、IGBT20に制御電流(DC12V)を供給する電源装置24とを備える。
【0029】
また、車両用安全装置100は、供給ライン12における電気ヒータ5dの上流と下流とを短絡可能な短絡ライン30と、直流電源11と短絡ライン30との間の供給ライン12に設けられる電力ヒューズ31と、短絡ライン30に設けられるバイメタルスイッチ(第二バイメタルスイッチ)32とを備える。
【0030】
IGBT20は、制御電流が遮断されると電気ヒータ5dへ供給される電流を遮断し、制御電流が通電すると電気ヒータ5dへ供給される電流を通電させる。IGBT20は、短絡ライン30が短絡する位置と比較して電気ヒータ5dの近くの供給ライン12に設けられる。IGBT20には、短絡ライン30が短絡したときには、直流電源11からの電流が流れない。これにより、IGBT20は、短絡ライン30が短絡したときの大電流から保護される。
【0031】
IGBT20は、電気ヒータ5dの上流と下流とに一対設けられる。具体的には、一方のIGBT20は、供給ライン12の電流の流れ方向において、短絡ライン30の一端30aとの接点の下流かつ電気ヒータ5dの上流に設けられ、他方のIGBT20は、電気ヒータ5dの下流かつ短絡ライン30の他端30bとの接点の上流に設けられる。
【0032】
IGBT20は、制御電流が通電している場合には、供給ライン12の電流の流れを許容する。一方、IGBT20は、水温センサ23からの電気信号に基づいてコントローラ25が電源装置24からの制御電流を遮断するようにドライバ20aに指令を行った場合、又はバイメタルスイッチ22によって制御電流が遮断された場合には、その機能を停止して供給ライン12の電流の流れを遮断する。
【0033】
バイメタルスイッチ22は、通常の状態で通電状態に切り換えられているノーマルクローズタイプである。バイメタルスイッチ22は、通電状態に切り換えられたときにバイメタルスイッチ32と比較して小さな電流を流す弱電側のバイメタルスイッチである。バイメタルスイッチ22は、電気ヒータ5dと伝熱可能に接触する。バイメタルスイッチ22は、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達したときに制御電流を遮断し、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下したときに制御電流を通電させる。バイメタルスイッチ22は、一対設けられ、電源装置24と各々のIGBT20との間にそれぞれ介装される。
【0034】
第一設定温度は、温水タンク6内の冷媒の許容温度範囲の上限と比較して高い温度に設定される。これにより、バイメタルスイッチ22は、コントローラ25によるIGBT20の制御が正常に行われている場合には通電状態に維持される。一方、第二設定温度は、バイメタルスイッチ22が制御電流を遮断してから温水タンク6内の冷媒の温度が充分に下がった場合の温度に設定される。例えば、第二設定温度は、温水タンク6内の冷媒の許容温度範囲の下限に設定される。
【0035】
図3に示すように、バイメタルスイッチ22は、臨界温度に達すると変形するディスク型のバイメタル22aと、バイメタル22aの変形によって軸方向に移動するピン26と、ケーシング内に固定される固定接点27aと、ばね28の付勢力によって固定接点27aに向けて付勢される可動接点27bと、固定接点27aと可動接点27bとの各々に接続される一対の端子29とを備える。バイメタルスイッチ22は、バイメタル22aの変形によって、電流の流れを遮断する開放状態と、電流の流れを許容する通電状態とに切り換えられる。
【0036】
バイメタル22aには、電気ヒータ5dの発熱が直接的又は間接的に伝達される。バイメタル22aは、臨界温度よりも低い温度のときには下に凸の状態(図3に示す状態)であり、臨界温度に達すると上に凸の状態に変形する。このバイメタル22aの臨界温度が、第一設定温度に該当する。
【0037】
バイメタル22aが臨界温度に達して上に凸の状態に変形すると、ばね28によって付勢された可動接点27bが固定接点27aから離間して通電不能な状態となる。これにより、バイメタルスイッチ22が開放状態に切り換えられ、IGBT20への制御電流が遮断される。
【0038】
図2に示すように、短絡ライン30は、供給ライン12の電流の流れ方向において、電力ヒューズ31の下流かつ電気ヒータ5dの上流に一端30aが接続され、電気ヒータ5dの下流かつ直流電源11の上流に他端30bが接続される。短絡ライン30は、供給ライン12に接続される一端30aと他端30bとの間を接続する極めて抵抗の小さな導体である。換言すれば、短絡ライン30が電気ヒータ5dの上流と下流とを短絡したときには、短絡ライン30の抵抗は、電気ヒータ5dの抵抗よりも小さくなっている。
【0039】
バイメタルスイッチ32は、通常の状態で開放状態に切り換えられているノーマルオープンタイプである。バイメタルスイッチ32は、通電状態に切り換えられたときにバイメタルスイッチ22と比較して大きな電流を流す強電側のバイメタルスイッチである。バイメタルスイッチ32は、電気ヒータ5dと伝熱可能に接触する。バイメタルスイッチ32の具体的な構成は、バイメタルスイッチ22と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0040】
バイメタルスイッチ32は、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達したときに通電状態に切り換えられる。短絡ライン30は、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度未満の状態では短絡されていない。短絡ライン30は、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度に達してバイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられることによって短絡状態となる。
【0041】
第三設定温度は、バイメタルスイッチ32のバイメタルの臨界温度である。第三設定温度は、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達してバイメタルスイッチ22がIGBT20への制御電流を遮断して供給ライン12を遮断状態とした後にオーバーシュートによって上昇する電気ヒータ5dの最大温度と比較して高い温度に設定される。そのため、バイメタルスイッチ22及びIGBT20が正常に作動している場合には、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度に達することはない。
【0042】
電力ヒューズ31は、短絡ライン30が短絡したときに瞬間的に流れる大電流(過電流)によって切断される。短絡ライン30の抵抗は極めて小さいため、短絡ライン30が短絡すると、電力ヒューズ31には、短絡ライン30の短絡前に電気ヒータ5dに流れていた電流と比較して大きな大電流(過電流)が流れる。電力ヒューズ31は、直流電源11から供給される電流によって、当該電流を供給するためのハーネス(図示省略)の発熱が許容温度を超える前に切断される。この許容温度は、ハーネスを構成する部品が損傷しない程度の温度に設定される。
【0043】
電力ヒューズ31は、ともに直流電源11から電流が供給される電気ヒータ5dと電動コンプレッサ4bとで共用される。よって、電力ヒューズ31が切断された場合には、電気ヒータ5dだけでなく、電動コンプレッサ4bへの電流の供給も停止される。
【0044】
次に、図4から図6を参照して、バイメタルスイッチ22とバイメタルスイッチ32との配置について説明する。
【0045】
図4に示すように、温水タンク6は、冷媒が供給される供給通路6aと、電気ヒータ5dによって加熱された冷媒を排出する排出通路6bと、電気ヒータ5dを内部に保持する保持部材7とを備える。温水タンク6を流通する冷媒は、例えば不凍液などの冷却水である。温水タンク6には、バイメタルスイッチ22とバイメタルスイッチ32とが取り付けられる。
【0046】
図5に示すように、電気ヒータ5dは、複数の平行な発熱部51と、両端に形成されて電源が供給される端子部54とを有する。電気ヒータ5dは、発熱部51が順に隣り合うように巻回される巻線形状に形成される。電気ヒータ5dは、隣り合う発熱部51を有していれば、必ずしも巻線形状でなくてもよい。
【0047】
発熱部51は、断面が環状となるように形成される。ここでは、発熱部51の断面は円形である。発熱部51は、直線状に形成される直線部53と、直線部53の端部を隣り合う他の直線部53に連結する曲線部52とを有する。
【0048】
図4に示すように、バイメタルスイッチ22とバイメタルスイッチ32とは、保持部材7との間で電気ヒータ5dの発熱部51を挟み込むように温水タンク6の上部に取り付けられる。バイメタルスイッチ22とバイメタルスイッチ32とは、温水タンク6の外部から内部に挿入され、温水タンク6の外部にボルト締結される。バイメタルスイッチ22とバイメタルスイッチ32とは、ボルトの締結力によって、電気ヒータ5dに対して押圧される。
【0049】
バイメタルスイッチ22は、バイメタルスイッチ32と比較して排出通路6bに近い位置に取り付けられる。一方、バイメタルスイッチ32は、バイメタルスイッチ22と比較して供給通路6aに近い位置に取り付けられる。
【0050】
温水タンク6に供給される冷媒は、供給通路6aの近傍では、未だ電気ヒータ5dによって暖められていないため、比較的温度が低く、排出通路6bの近傍では、電気ヒータ5dによって暖められた後であるため、比較的温度が高い。電気ヒータ5d自体の温度も同様に、供給通路6aの近傍と比較して、排出通路6bの近傍の方が高い。このように、バイメタルスイッチ22には、電気ヒータ5dの比較的温度の高い第一の部分の熱が伝達され、バイメタルスイッチ32には、第一の部分と比較して温度の低い電気ヒータ5dの第二の部分の熱が伝達される。
【0051】
これにより、弱電側のバイメタルスイッチ22が、強電側のバイメタルスイッチ32よりも先に切り換えられることとなる。よって、バイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられて電力ヒューズ31が切断されるより先に、バイメタルスイッチ22が遮断状態に切り換えられてIGBT20への制御電流を遮断することができる。したがって、供給ライン12の通電状態への復帰を可能とする安全回路を、通電状態への復帰を不可とする安全回路よりも先に動作させることができる。
【0052】
なお、温水タンク6内の冷媒の流速が遅いほど、冷媒が電気ヒータ5dから奪う熱量は小さくなるため、電気ヒータ5d自体の温度が高くなりやすくなる。一方、温水タンク6内の冷媒の流速が速いほど、冷媒が電気ヒータ5dからから奪う熱量が大きくなるため、電気ヒータ5d自体の温度が低くなりやすくなる。したがって、バイメタルスイッチ22,32を電気ヒータ5dに接触させるに際し、温水タンク6内において、冷媒の流速の遅い部分にバイメタルスイッチ22を配置し、この部分と比較して相対的に冷媒流速の早い部分にバイメタルスイッチ32を配置してもよい。このようにバイメタルスイッチ22,32を配置することで、上記と同様の効果が得られる。
【0053】
ちなみに、本実施形態では、供給通路6aの近傍と比較して、排出通路6bの近傍の方が遅い。よって、バイメタルスイッチ22は、温水タンク6の中で冷媒の流速が遅い部分に配置され、バイメタルスイッチ32は、バイメタルスイッチ22が配置される部分と比較して冷媒の流速が速い部分に配置される。
【0054】
次に、主に図2を参照しながら、車両用安全装置100の動作について説明する。
【0055】
温水タンク6内の冷媒の温度が許容温度範囲内にある正常時には、バイメタルスイッチ32は、短絡ライン30の電流の流れを遮断する開放状態に維持される。また、バイメタルスイッチ22は、IGBT20に制御電流が通電する通電状態に維持される。よって、直流電源11からの電流が電気ヒータ5dに供給され、電気ヒータ5dが発熱して温水タンク6を流通する冷媒が加熱される。
【0056】
この状態から、電気ヒータ5d自体の温度、又は温水タンク6内の冷媒の温度が許容温度範囲を超えて上昇した場合には、車両用安全装置100が作動する。車両用安全装置100では、以下に示す第一から第三の安全回路が三段階に作動して、直流電源11から電気ヒータ5dに供給される電流を遮断する。
【0057】
まず、温水タンク6内の冷媒が許容温度範囲を超えて上昇すると、水温センサ23からコントローラ25に冷媒の温度に応じた電気信号が送信される。コントローラ25は、この電気信号に基づいて、IGBT20に制御電流を通電させないようにドライバ20aに指令を行う。よって、供給ライン12の電流の流れが遮断される。これが、第一の安全回路である。
【0058】
ここで、例えば、何らかの異常によって温水タンク6内の冷媒の流通量が減少した場合には、電気ヒータ5dは、いわゆる空焚きの状態となる。この状態では、水温センサ23が検出する冷媒の温度が上昇する前に、電気ヒータ5d自体の温度が許容温度範囲を超えて上昇するおそれがある。
【0059】
電気ヒータ5dの温度が上昇して第一設定温度に達した場合には、バイメタルスイッチ22が通電状態から開放状態に切り換えられる。これにより、コントローラ25による制御とは関係なく、IGBT20への制御電流が遮断されて、供給ライン12の電流の流れが遮断される。これが、第二の安全回路である。
【0060】
その後、電気ヒータ5dの温度が下降して第二設定温度に低下した場合には、バイメタルスイッチ22が開放状態から通電状態に切り換えられる。これにより、IGBT20へ制御電流が通電して、供給ライン12を通電状態に復帰させる。
【0061】
このように、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達すると、バイメタルスイッチ22が、IGBT20への制御電流を遮断し、直流電源11から電気ヒータ5dに供給される電流が流れる供給ライン12を遮断状態とする。そして、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下すると、バイメタルスイッチ22がIGBT20への制御電流を通電させ、供給ライン12を遮断状態から通電状態に復帰させる。これにより、例えば、温水タンク6内の冷媒の流通量が一時的に減少して、その後もとに戻ったような場合には、再び電気ヒータ5dを用いて冷媒を加熱することが可能である。
【0062】
なお、車両用安全装置100では、IGBT20とバイメタルスイッチ22とは、それぞれ二つずつ設けられている。そのため、第二の安全回路では、一方のバイメタルスイッチ22が何らかの異常によって開放状態に切り換えられなかった場合にも、他方のバイメタルスイッチ22が開放状態に切り換えられることによって補うことができる。つまり、第二の安全回路は、二重の安全回路である。
【0063】
このとき、一方のバイメタルスイッチ22が開放状態に切り換えられる温度と比較して高い温度で開放状態に切り換えられるものを他方のバイメタルスイッチ22として用いるなど、各々のバイメタルスイッチ22の臨界温度を相違させてもよい。
【0064】
バイメタルスイッチ22は、上述したように、ノーマルクローズタイプである。これに代えて、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達したときに制御電流を通電させ、電気ヒータ5dの温度が第二設定温度に低下したときに制御電流を遮断するノーマルオープンタイプのバイメタルスイッチを用いてもよい。この場合には、IGBT20に代えて、制御電流が通電すると電気ヒータ5dへ供給される電流を遮断し、制御電流が遮断されると電気ヒータ5dへ供給される電流を通電させるIGBTが用いられる。
【0065】
更に、何らかの異常によって、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度を超えて上昇したときに、二つのバイメタルスイッチ22がともに開放状態に切り換えられなかった場合や、バイメタルスイッチ22が開放状態に切り換えられたのにIGBT20が供給ライン12の電流を遮断しなかった場合には、短絡ライン30に設けられたバイメタルスイッチ32が作動する。
【0066】
具体的には、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度に達すると、電気ヒータ5dの温度によってバイメタルが変形して、バイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられる。これにより、短絡ライン30が短絡され、供給ライン12に設けられた電力ヒューズ31には、短絡による大電流が流れる。つまり、電力ヒューズ31には、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度に達したときに、意図的に過電流が流される。これにより、電力ヒューズ31が切断されて、供給ライン12の電流が遮断される。これが、第三の安全回路である。
【0067】
このように、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度から更に上昇して第三設定温度に達すると、バイメタルスイッチ32が短絡ライン30を短絡し、過電流が流れることで電力ヒューズ31を切断させ、供給ライン12の電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。
【0068】
よって、電力ヒューズ31が切断されることによって、例えIGBT20が何らかの異常によって直流電源11からの電流を遮断できなかったとしても、直流電源11からの電流を確実に遮断することができる。したがって、直流電源11から電気ヒータ5dへ供給される電流の遮断の確実性を向上させることができる。
【0069】
また、直流電源11からは、供給ライン12における電力ヒューズ31の下流かつIGBT20の上流から分岐して、電動コンプレッサ4bへも電流が供給される。この場合、電気ヒータ5d及び電動コンプレッサ4bが正常に作動している場合には、電力ヒューズ31は切断されない。電力ヒューズ31は、バイメタルスイッチ32によって短絡ライン30が短絡された場合や、電動コンプレッサ4bにおける短絡などの異常によって回路全体に過電流が流れた場合に切断されることとなる。
【0070】
このように、電力ヒューズ31を複数の負荷で共用することによって、各々に電力ヒューズを設ける場合と比較して、コストを抑えることができる。なお、電力ヒューズ31として、車両のヒューズボックス内に設けられた電力ヒューズを用いてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、バイメタルスイッチ22及びIGBT20による電力遮断が、バイメタルスイッチ32及び電力ヒューズ31による電力遮断よりも先に起こるようになっている。したがって、バイメタルスイッチ22及びIGBT20による電力遮断が生じた時点では、電動コンプレッサ4bには電力供給がなされるので、クーラユニット4の機能を維持できる。例えば、クーラユニット4を稼働させつつ、電力遮断された電気ヒータ5dの予熱を利用して、除湿暖房を行うことができる。あるいは、クーラユニット4による冷房を行うこともできる。
【0072】
なお、バイメタルスイッチ22及びバイメタルスイッチ32は、電気ヒータ5dの温度に基づいて機械的に通電状態に切り換えられるものである。よって、短絡ライン30を短絡させるための制御装置が不要であるため、コストを抑えることができるとともに、制御装置を用いた場合と比較して、作動の信頼性が向上する。
【0073】
以上の第一の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0074】
電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達すると、バイメタルスイッチ22が、IGBT20への制御電流を遮断し、直流電源11から電気ヒータ5dに供給される電流が流れる供給ライン12を遮断状態とする。そして、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下すると、バイメタルスイッチ22がIGBT20への制御電流を通電させ、供給ライン12を遮断状態から通電状態に復帰させる。これにより、例えば、温水タンク6内の冷媒の流通量が一時的に減少して、その後もとに戻ったような場合には、再び電気ヒータ5dを用いて暖房を行うことが可能である。
【0075】
また、電気ヒータ5dの温度が更に上昇して第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達すると、バイメタルスイッチ32が短絡ライン30を短絡し、過電流が流れることで電力ヒューズ31を切断させ、供給ライン12の電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。
【0076】
よって、電力ヒューズ31が切断されることによって、例えIGBT20が何らかの異常によって直流電源11からの電流を遮断できなかったとしても、直流電源11からの電流を確実に遮断することができる。したがって、直流電源11から電気ヒータ5dへ供給される電流の遮断の確実性を向上させることができる。
【0077】
(第二の実施の形態)
以下、図7を参照して、本発明の第二の実施の形態に係る車両用安全装置200について説明する。なお、第二の実施の形態では、前述した第一の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0078】
第二の実施の形態は、IGBT20への制御電流を調整するドライバ20aを設ける代わりに、IGBT20への制御電流を制御可能な電源装置221を備える点で、第一の実施の形態とは相違する。
【0079】
電源装置221は、IGBT20の制御電流(DC12V)を供給する直流電源224と、制御電流の流れを制御するコントローラ25と、コントローラ25からの指令に基づいて制御電流を調整するアンプ226とを備える。
【0080】
車両用安全装置200では、温水タンク6内の冷媒が許容温度範囲を超えて上昇すると、水温センサ23からアンプ226を介してコントローラ25に冷媒の温度に応じた電気信号が送信される。コントローラ25は、この電気信号に基づいて、IGBT20に制御電流を通電しないようにアンプ226を介して指令を行う。よって、供給ライン12の電流の流れが遮断される。
【0081】
また、電気ヒータ5dの温度が上昇して第一設定温度に達した場合には、バイメタルスイッチ22が通電状態から開放状態に切り換えられる。これにより、コントローラ25がアンプ226を介して行う制御とは関係なく、IGBT20への制御電流が遮断されて、供給ライン12の電流の流れが遮断される。
【0082】
以上の第二の実施の形態では、第一の実施の形態と同様に、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達すると、IGBT20とバイメタルスイッチ22とが、直流電源11から電気ヒータ5dに供給される電流が流れる供給ライン12を遮断状態とする。そして、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度と比較して低い第二設定温度に低下すると、IGBT20とバイメタルスイッチ22とは、供給ライン12を遮断状態から通電状態に復帰させる。
【0083】
また、電気ヒータ5dの温度が更に上昇して第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達すると、バイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられて電力ヒューズ31が切断され、供給ライン12の電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。したがって、電気ヒータ5dの異常時における電流遮断の確実性を向上させることができる。
【0084】
(参考例)
以下、図8を参照して、本発明の参考例に係る車両用安全装置300について説明する。なお、この参考例でもまた、前述した各実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。なお、同図では、図示を省略しているが、第一の実施の形態と同様に、直流電源11は、電気ヒータ5dとは異なる他の負荷としての電動コンプレッサ4bにも電流を供給する。この場合、電動コンプレッサ4bへの電流は、供給ライン12において電力ヒューズ31とIGBT20との間から分岐して供給される。
【0085】
この参考例は、IGBT20への制御電流を遮断するためにバイメタルスイッチ22に代えて温度ヒューズ322を用いる点で、上述した各実施の形態とは相違する。
【0086】
車両用安全装置300は、電気ヒータ5dの温度の上昇によって切断される温度ヒューズ322を備える。
【0087】
温度ヒューズ322は、一対設けられ、電源装置221のアンプ226と各々のIGBT20との間にそれぞれ介装される。温度ヒューズ322は、電気ヒータ5dの温度が上昇して第一設定温度に達した場合に切断される。
【0088】
車両用安全装置300では、温水タンク6内の冷媒の許容温度範囲を超えて上昇すると、水温センサ23からアンプ226を介してコントローラ25に冷媒の温度に応じた電気信号が送信される。コントローラ25は、この電気信号に基づいて、IGBT20に制御電流が通電しないようにアンプ226を介して指令を行う。よって、供給ライン12の電流の流れが遮断される。
【0089】
また、電気ヒータ5dの温度が上昇して第一設定温度に達した場合には、電気ヒータ5dの温度によって温度ヒューズ322が切断される。これにより、コントローラ25による制御とは関係なく、IGBT20への制御電流が遮断されて、供給ライン12の電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。
【0090】
更に、何らかの異常によって、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度を超えて上昇したときに、二つの温度ヒューズ322がともに切断されなかった場合には、短絡ライン30に設けられたバイメタルスイッチ32が作動する。
【0091】
具体的には、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度に達すると、電気ヒータ5dの温度によってバイメタルが変形して、バイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられる。これにより、短絡ライン30が短絡され、供給ライン12に設けられた電力ヒューズ31には、短絡による大電流が流れる。つまり、電力ヒューズ31には、電気ヒータ5dの温度が第三設定温度に達したときに、意図的に過電流が流される。これにより、電力ヒューズ31が切断されて、供給ライン12の電流が遮断される。
【0092】
このように、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度から更に上昇して第三設定温度に達すると、バイメタルスイッチ32が短絡ライン30を短絡し、過電流が流れることで電力ヒューズ31を切断させ、供給ライン12の電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。
【0093】
よって、電力ヒューズ31が切断されることによって、例えIGBT20が何らかの異常によって直流電源11からの電流を遮断できなかったとしても、直流電源11からの電流を確実に遮断することができる。したがって、直流電源11から電気ヒータ5dへ供給される電流の遮断の確実性を向上させることができる。
【0094】
以上の参考例では、電気ヒータ5dの温度が第一設定温度に達すると、温度ヒューズ322が切断されて、IGBT20が、直流電源11から電気ヒータ5dに供給される電流が流れる供給ライン12を遮断して通電状態への復帰を不可とする。
【0095】
また、電気ヒータ5dの温度が更に上昇して第一設定温度と比較して高い第三設定温度に達すると、バイメタルスイッチ32が通電状態に切り換えられて電力ヒューズ31が切断され、供給ライン12の電流を遮断して通電状態への復帰を不可とする。したがって、電気ヒータ5dの異常時における電流遮断の確実性を向上させることができる。
【0096】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0097】
例えば、上記の実施の形態では、負荷として電気ヒータ5dの温度を検出しいているが、これに代えて、電動モータなどの他の機器の温度を検出するようにしてもよい。この場合にも同様に、車両用安全装置100,200,及び300は、異常時に直流電源11からの電流を確実に遮断することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 車両用安全装置
1 車両用空調装置
4 クーラユニット
4b 電動コンプレッサ(他の負荷)
4e エバポレータ
5 ヒータユニット
5d 電気ヒータ(負荷)
5e ヒータコア
6 温水タンク
10 電気回路
11 直流電源(電源)
12 供給ライン
20 IGBT(トランジスタ)
22 バイメタルスイッチ(第一バイメタルスイッチ)
23 水温センサ
25 コントローラ
30 短絡ライン
31 電力ヒューズ
32 バイメタルスイッチ(第二バイメタルスイッチ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8