【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、独立請求項の対象によって解決される。本発明の好ましい構成は従属請求項に記載されており、以下詳細に説明する。個々の特徴の前記および以降の説明は、個別にはいずれの場合でも明示的に述べられていなくても、装置カテゴリーにも方法カテゴリーにも関連するものである。そこに開示された個々の特徴は、示された組合せ以外でも本発明に重要なものであり得る。
【0012】
本発明による目標体積の照射計画方法は、以下のステップを含む:
・個別に走査可能な目標点を備える目標領域を設定するステップ、
・目標領域が繰り返しスキャンされる再スキャン試行の数を、目標領域の目標点が再スキャン試行中に異なる頻度で走査されるように設定し、これにより目標点の少なくとも一部が各再スキャン試行の際に走査され
るわけではないようにするステップ、
ここで目標点の走査は、各再スキャン試行で走査され
るわけではない少なくとも1つの目標点において、この目標点が走査される最後の再スキャン試行の前に、この目標点が走査されない少なくとも1つの別の再スキャン試行が来るように複数の再スキャン試行に分割される。
【0013】
ここで照射すべき目標体積は通例、多数の目標領域に分割される。照射セッション中に、目標領域は再スキャン方法で照射される。すなわち複数の再スキャン試行により照射される。ここで目標領域は通例、逐次走査される。すなわち1つの目標領域が再スキャン方法で走査されたら直ちに、次の目標領域が再び再スキャン方法で走査される等々。
【0014】
とりわけ、目標領域に対して設定される線量分布は不均一であってもよい。目標体積に対して適用されるべき全線量が均一の線量分布を有している場合であっても、目標領域に対して適用すべき線量分布が不均一であることが必要な場合もある。これは目標領域の一部が、別の目標領域の照射中にすでに予備線量により占められているためである。ここで線量分布は、適用すべき粒子数に対する尺度となり得る。線量分布は、目標体積、目標体積内に蓄積すべき線量および/または組織内に蓄積される線量の有効作用(たとえば生物学的効果比(RBWまたはRBE)の記述により特徴付けることのできる)に関する計画設定を考慮して計画フェーズで求めることができる。
【0015】
本発明の方法では、目標領域に対する線量分布が、この目標領域の目標点が再スキャン試行中に異なる頻度で走査されることによって適用される。ここで「目標点の走査」とは、この目標点に個別線量が適用されること、またはこれが計画されることであると理解されたい。とりわけ不均一な線量分布をこのようにして簡単に適用することができる。たとえば比較的高い総線量が施される目標点は、再スキャン試行中に、比較的低い総線量が施される目標点よりも全体でより頻繁に走査される。
【0016】
目標領域の目標点を異なる頻度で走査することにより、目標点の少なくとも一部が特定の再スキャン試行では走査されなくなる。たとえば全部で10の再スキャン試行が行われるが、1つの目標点が全部で7回しか走査すべきでない場合、この目標点を走査しない、すなわち飛ばす再スキャン試行が3つ存在する。
【0017】
本発明の基礎とするアイデアは、各再スキャン試行で走査され
るわけではない少なくとも1つの目標点において、この目標点が走査される最後の再スキャン試行の前に、この目標点が走査されない少なくとも1つの別の再スキャン試行が来るように目標点の走査が複数の再スキャン試行に分割されると有利であることである。このことはたとえば、この目標点が最初の再スキャン試行では走査されないことにより達成することができる。しかしこのことは、少なくとも2つの再スキャン試行で走査される目標点では、これら2つの再スキャン試行の間にこの目標点が走査されない少なくとも1つの別の再スキャン試行が来るようにしても達成できる。
【0018】
再スキャンの際に目標点が異なる頻度で走査されるとたしかに有利である。すなわちこのことにより不均一な線量適用が保証され、同時に、目標点に適用される個別線量が、測定装置による個別線量の適用の確実な監視がもはや保証できなくなるほど小さくならないように注意することが可能になるからである。
【0019】
しかし、再スキャン試行の繰り返しの際に、目標点ごとに適用される総線量までこの目標点が走査され、この目標点が以降の再スキャン試行ではそれ以上走査されないことが問題であることも認識された。この「融通のきかない」スキームによって、1つの再スキャン試行で走査される目標点が大量に間引かれる。しかしこれは照射装置にとっては不利である。目標点が間引かれる比較的後の再スキャン試行で、たとえば目標点の残った島から次の残った島に達するために放射線を過度に頻繁に遮断しなければならない場合、このことが照射時間を延長する。
【0020】
この融通のきかないスキームは、本計画法によって打破される。これにより、目標点の照射が比較的後の時点、すなわち比較的後の再スキャン試行にずらされる。これにより前記の不利な作用を減少または回避することができる。
【0021】
たとえば比較的後の再スキャン試行で初めて走査される目標点は、後の再スキャン試行の残った島を繋げるために使用することができる。これにより、比較的後の再スキャン試行中に走査される放射線経路をフレキシブルに最適化することができる。比較的後の再スキャン試行の残った島を繋げるために複数の目標点が使用される通例の場合であっても、目標領域の幾何形状と適用すべき線量分布の配置関係に応じて、比較的後の再スキャン試行中に初めて走査される個々の目標点がすでに、再スキャン試行の実施の改善をもたらすことができる。
【0022】
しかし、再スキャン試行中に走査すべき目標点は、再スキャン試行ごとにできるだけ均等に多数の目標点が走査されるように分割することもできる。すなわち各試行で走査される目標点の数が実質的に同じであるように分割することもできる。この実質的に均等の分割は、「間引き」が発生しないか、または非常に少量しか発生しないようにする。このことはたとえば、各再スキャン試行で走査され
るわけではない目標点が1つまたは複数存在することによって達成できる。目標点および目標点ごとの走査の数は、再スキャン試行にわたってランダムに分割することができる。
【0023】
目標点を複数の再スキャン試行に
分割するための1つの可能性は、スキャン経路を考慮して
分割を行うことである。すなわち、1回の再スキャン試行で走査すべき目標点が走査されるスキャン経路が、前もって規定された基準を満たすように
分割するのである。たとえば目標点の
分割後に、そこから得られたスキャン経路が各再スキャン試行で、前もって規定された基準を満たすか否かを検査することができる。これが満たされない場合、目標点の
分割を変更することができる。また
分割は、実行すべきアルゴリズムで目標点と再スキャン試行の特定の組合せが許容されない、または罰せられるように前もって構成することもできる。
【0024】
前もって規定された基準は、たとえば1つのスキャン経路で連続して走査
される2つの目標点の間隔が閾値以下であることとすることができる。たとえば2つの目標点の最大間隔が20mm以下、とりわけ10mmまたは5mm以下であるように設定することができる。すなわちこの場合、2つの目標点の間で放射線を遮断することが必然的に必要とならずにスキャンを行うことができる。他の可能な基準は、スキャン経路の走査の際に必要な放射線の遮断回数が最小であるか、または閾値以下であることである。
【0025】
有利な変形実施形態では、1つの目標点において適用すべき総線量が、この目標点が1回の再スキャン試行で走査されるときに常に適用されるこの目標点での適用すべき個別線量の整数倍であるように計画方法が構成される。この制限は、各目標点ですべての個別線量を常に適用することができるという利点を有する。場合により所要の精度で監視できないため時折、問題となる個別線量の端数を適用することが、これにより回避される。
【0026】
この変形実施形態も、開示された方法に関係なく実現することができる。これは、再スキャン方法のための再スキャンまたは照射計画の際に、目標点ごとの総線量と個別線量の比が整数であることだけが許容されることを意味する。このようにして目標点ごとに常にすべての個別線量が適用されることを保証することができる。この種の構成は、たとえば照射パラメータの決定の際の自由度を制限する周辺条件を設定することにより実現される。たとえば目標点の空間的位置は、この設定が満たされるように選択することができる。整数比が基礎である個別線量は、すべての照射計画に対して同じに選択することができる。または照射計画の異なる部分に対しては、たとえば異なる目標領域に対しては異なっていてもよい。
【0027】
個別線量は、これが閾値のわずかに上であるように選択するのが有利である。すなわちこれにより、線量適用を正確に監視できることが保証される。すなわち個別線量が小さくなりすぎると個別線量を測定装置により十分な精度で監視することが時折できなくなり、このことは最終的に治療の成功を脅かし得る。
【0028】
やはり開示された方法に関係なく、1つの目標点に適用すべき個別線量、すなわち1回の目標点走査で適用される線量は、とりわけ再スキャンの際には個別線量が常に所定の閾値の上になるよう選択するのが有利である。このようにして、線量適用を監視する測定装置により個別線量を所要の精度で監視できることが保証される。個別線量は、測定装置の測定領域の選択および加速装置から抽出される強度に整合することができる。全体として、使用されるハードウエアの可能性が明示的に考慮される。照射の進行中にハードウエアが、たとえば抽出される強度の変更および/または検出器の測定領域の選択の変更により別の動作モードで駆動される場合、前もって設定した閾値に適合することができる。
【0029】
しかし再スキャン試行の数が高められたため、個別線量をこの設定内でできるだけ小さく選択すべき場合、これにより再スキャンのポジティブな効果がさらに際立つようになる。さらに「総線量は個別線量の整数倍である」という設定は比較的簡単に満たすことができる。たとえば個別線量は、閾値の10倍または5倍、とりわけ閾値の2倍より常に下にすることができる。照射計画装置または照射装置用の制御装置は、対応して構成することができる。
【0030】
有利な実施形態では、目標領域の目標点で常にそれぞれ同じ大きさの個別線量が適用される。この変形実施形態は、照射装置に組み込むのに特に適する。なぜなら照射装置は、適用すべき同じ大きさの個別線量に合わせて設計し、最適化することができるからである。たとえば個別線量の適用を監視する装置の測定領域は、個別線量の大きさに整合することができる。さらに再スキャンの際、とりわけ体積再スキャンの際には、等エネルギー層の切り換えなしで、および/または加速ユニットから抽出される粒子線の強度の切り換えなしで、および/または測定装置、たとえば電離箱システムの測定領域の切り換えなしで照射を行うことができ、このことにより同じ大きさの個別線量が得られる。
【0031】
したがってこの場合、異なる再スキャン試行により照射される目標体積の他の目標領域に移行する前に、目標領域をすべての再スキャン試行によって完全にスキャンする必要はない。目標領域の1つが照射されるいくつかの再スキャン試行中ですでに、別の目標領域の目標点を走査することができる。1つの目標領域に対する再スキャン試行を別の目標領域の再スキャン試行とこのように「織り合わせる」ことによっても、目標点の有利な走査を達成することができる。1回の再スキャン試行でたとえば目標領域のさらに少数の目標点だけを走査しなければならない場合には、この目標点を別の目標領域の別の再スキャン試行に収めることも考えられる。すなわち、もう1つの目標領域の目標点の一部を、別の目標領域の照射がすでに開始された場合に初めて走査することが時折有利である。この方法も、開示された方法に関係なく実現することができる。照射計画装置、または照射装置用の制御装置は、対応して構成することができる。
【0032】
目標体積内の目標領域を照射する本発明の方法は、目標領域が個別に走査すべき目標点を含み、この目標領域内ではとりわけ不均一な線量分布が適用されるよう構成される。目標領域は多数の再スキャン試行により照射される。すなわち目標領域は全体で繰り返し走査される。目標領域自体の目標点は、再スキャン試行中に異なる頻度で走査され、したがって目標点の少なくとも一部は、すべての再スキャン試行で走査され
るわけではない。この方法は、各再スキャン試行で走査され
るわけではない少なくとも1つの目標点において、この目標点が走査される最後の再スキャン試行の前に、この目標点が走査されない少なくとも1つの別の再スキャン試行が実施されるように構成されている。
【0033】
本発明の照射計画装置は、開示された方法を照射計画のために実行するように構成された計算ユニットを有する。これはたとえば適切なコンピュータプログラムを用いて行うことができる。
【0034】
照射装置用の本発明の制御装置は、目標体積内の目標領域を照射するための開示方法の1つが実施されるように照射装置を照射中に制御する制御計算機を有する。これも適切なコンピュータプログラムによって行うことができる。本発明の照射装置は、この種の制御装置を有する。
【0035】
照射計画方法について挙げて説明したものの構成と利点は、目標体積内の目標領域を照射する方法にも同様に当てはまり、さらに対応して照射計画装置、および照射装置用の制御装置にも同様に当てはまる。
【0036】
従属請求項の特徴による改善形態を備える本発明の実施形態を、以下の図面に基づいて詳細に説明するが、これに限定するものではない。