(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記両端部における前記偏光子の前記支持部材の固定領域が、前記偏光軸方向に直交し、前記偏光子の中心を通る仮想線に対して線対称の位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学素子。
前記支持部材は、中央に開口を形成するように4つの長尺部が四角形状に連接してなる枠体で構成されており、前記偏光子の両端部は、前記支持部材の長尺部の長手方向と直交する方向に沿って前記支持部材に固定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学素子。
【背景技術】
【0002】
投影型映像表示装置の一つとして、透過型液晶表示素子に基づく画像をスクリーン面に投影する液晶プロジェクタがある。液晶プロジェクタは、プレゼンテーションやホームシアター等に利用され、静止画又は動画を大画面サイズで投影することができる点で広く用いられている。
【0003】
液晶プロジェクタにおいては、透過型液晶表示素子により画像変調を行って画像化される。カラー画像をスクリーン上に投影するための液晶プロジェクタとしては、複数の透過型液晶表示素子から構成される液晶パネルを3枚利用して画像変調を行う三板式の液晶プロジェクタや、1枚の液晶表示素子を用いて画像変調を行う単板式の液晶プロジェクタを挙げることができる。
【0004】
液晶プロジェクタの透過型液晶表示素子の入射側及び出射側には、所定の偏光成分の光を得るための偏光子が配設される。直線偏光成分の光源からの光は入射側に配置された偏光子により直線偏光化された後、透過型液晶表示素子に入射し、映像信号によって変調され、偏光状態が変化する。そして、液晶表示素子を透過した光は、出射側に配設された偏光子により、所定の直線偏光成分に偏光状態が変化した状態になる。これにより、映像が投影される。
【0005】
したがって、入射側及び出射側の両偏光子は、液晶プロジェクタにおける必須構成部品であり、これらの両偏光子の光学的な特性が、投影される映像に大きな影響を及ぼすことになる。これらの両偏光子には、所定の直線偏光成分の光を透過し、この所定の直線偏光成分と直交する直線偏光成分の光を吸収する吸収型偏光子を用いることが多い。
【0006】
液晶プロジェクタの偏光子として用いられる吸収型偏光子は、通常、排熱の促進やハンドリング性の向上といった観点から、サファイアや水晶を素材とするガラスに粘着材等を介して固定されている。光源に近い位置に配置される偏光子は、多大な熱がかかりうる環境にある。このような多大な熱がかかりうる環境下では、偏光層の延伸状態が徐々に緩和されてしまう。吸収型偏光子を固定する基材には、偏光層の延伸緩和に伴う収縮しようとする応力が発生してしまうため、ガラスには形状が変化しない程度の剛性が必要とされる。そのため、薄い厚みのガラスを用いると、変形する場合がある。変形が起こると、光源より照射される光の進行方向が乱れ、映像光の輝度ムラ等、映像の品質劣化を招くことになる。
【0007】
吸収型偏光子の光学性能の維持という観点では、ガラスは有効な部材ではある。しかし、ガラスそのもののコストや、固定するための加工費等を考慮すると、偏光子は総じてコスト高となってしまう。そこで、吸収型偏光子を単体で支持部材に固定するという技術が報告されていた(特許文献1)。特許文献1の技術を用いれば、吸収型偏光子を単体であっても変形なく、固定できる。しかし、特許文献1の技術においては、吸収型偏光子の端部をすべて支持部材に固定しているため、熱による収縮が顕著ではない非延伸方向へは、熱や湿度によって偏光子が膨張し、たわんでしまうなど、変形する可能性を排除できなかった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲内で適宜変更して実施することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係る光学素子を示す図である。
図1に示す光学素子は、特定方向に偏光軸を持つ偏光子2と、この偏光子2の外周部を支持する支持部材1と、から主に構成されている。この光学素子においては、偏光子2の偏光軸方向における両端部2aは、支持部材1に固定されている。また、偏光子2の両端部2a以外が少なくとも一部で支持部材1に固定されていない。
【0022】
偏光子2は、所定の偏光軸方向の光を吸収あるいは反射し、この所定の偏光軸方向と直交する方向の光を透過する光学部品である。本発明に用いられる偏光子2としては、その一例として、ヨウ素や二色性染料が配向された樹脂フィルムを用いた吸収型偏光子が挙げられる。後述する本発明の原理より、偏光子2の基材は、屈曲可能なフィルムや樹脂材料などで構成されることが好ましい。また、偏光子2の厚さは、屈曲性の観点から、10μm〜500μmであることが好ましい。
【0023】
本発明の光学素子に使用できる吸収型偏光子は、例えば、
図2に示すように、偏光機能を発現する偏光層31と、偏光層31の両面を保護する保護フィルム32と、から構成される。偏光層31は、例えば、樹脂材料に二色性物質を含浸してシート体に成型した後、このシート体を特定方向に数倍程度に延伸して色素分子を配向させ、必要に応じて架橋処理を施し、このシート体の両面に接着剤等で保護フィルム32を貼り付けることにより作製することができる。これにより、偏光層31に偏光機能(自然光を入射させると直線偏光を透過する機能)が発現すると共に、保護フィルム32により吸湿や延伸状態の緩和を防ぐことができる。この場合においては、シート体を延伸する方向、すなわちシート体に張力をかける方向が偏光層31の偏光軸方向となる。
【0024】
偏光層31を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリビニルアルコールや部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系ポリマーを用いることができる。また、二色性物質としては、ヨウ素や二色性染料等を用いることができる。偏光層31は、シート体を延伸する際の延伸方向に沿って色素分子が配向しているので、延伸方向に平行な方向に振幅する電場ベクトル成分の光を吸収することで、自然光を直線偏光化して透過させる。そのため、延伸方向は一般的に吸収軸方向と呼ばれる。したがって、吸収型偏光子においては、吸収軸方向が偏光軸方向となる。
【0025】
保護フィルム32は、透明であることが好ましい。保護フィルム32の材料としては、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂を用いることができるが、これに限定されるものではない。偏光特性や耐久性等の観点から、特に好ましく用いうる透明な保護フィルムは、表面をアルカリ溶液等でケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。なお、偏光層31の両面に保護フィルム32を設ける場合、それぞれの面に互いに異なる樹脂材料で構成された保護フィルムを用いても良い。
【0026】
保護フィルム32に対しては、本発明の目的を損なわない限り、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、拡散処理又はアンチグレア処理等を施しても良い。また、保護フィルム32又は偏光層31に、微細な凹凸構造や誘電体層を設けて反射防止機能を付加したり、保護フィルム32又は偏光層31上に、拡散性を有する機能層を設けても良い。
【0027】
支持部材1は、中央に開口1cを形成するように4つの長尺部1b,1b’が四角形状に連接してなる枠体で構成されている。長尺部1b,1b’は、偏光子2の外周部を固定するための領域として用いられ、開口1cは、光線を透過するための領域として用いられる。この支持部材1は、偏光子2を、例えば、投影型映像表示装置内の所定の位置に固定するために必要である。
【0028】
長尺部1b,1b’の幅は特に限定されないが、偏光子2を固定するために十分な幅であれば良い。長尺部1b,1b’の厚さは、支持部材1を構成する材料や長尺部1b,1b’の幅を考慮しつつ、後述する偏光子2の収縮に伴う応力によって変形しない程度の剛性を支持部材1に持たせられる厚みであれば良い。
【0029】
支持部材1の材料としては、アルミニウム、チタン、マグネシウム、金属合金等の金属材料、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等の樹脂材料、ガラス繊維複合材を含む複合材料、ガラス等を挙げることができる。特に、支持部材1の材料としては、偏光子2の耐久性や加工性を考慮すると、放熱性に優れる金属材料を使用することが好ましい。
【0030】
上述したように、本発明に係る光学素子においては、偏光子2の偏光軸方向における両端部2aが支持部材1に固定され、偏光子2の両端部2a以外が支持部材1に固定されていない。
図1に示す構成においては、四角形状の枠体である支持部材1の対向する一対の長尺部1bの固定領域1aで四角形状の偏光子2の両端部2aを固定している。また、偏光子2は、支持部材1の固定領域1a以外では固定されていない。すなわち、支持部材1において、固定領域1aのみで偏光子2を固定している。
図1においては、偏光子2の両端部2aは、支持部材1の長尺部1aの長手方向(偏光軸方向)(
図1におけるx方向)と直交する方向(
図1におけるy方向)に沿って支持部材1に固定されている。
【0031】
偏光子2が上述したように特定方向に延伸処理して(張力を与えて)作製された吸収型偏光子である場合においては、延伸方向に応力が残留することになる。この残留した応力は、偏光子が高温環境下に置かれると、緩和され易く、張力が付与された方向(延伸方向)への収縮という現象となって発現することになる。吸収型偏光子の場合、上述したように、偏光層を作製する際の延伸方向が吸収軸方向(偏光軸方向)となるので、張力を付与された方向が吸収軸方向(偏光軸方向)となる。
【0032】
吸収型偏光子の場合、偏光層31の延伸状態の緩和のために保護フィルム32を貼り付けたとしても、高熱環境下では、偏光層31の収縮を完全に抑制することは困難である。本発明の光学素子においては、高熱環境下での偏光層31の収縮を抑制してたわみの発生を無くすために、偏光子2の偏光軸方向(吸収型偏光子では吸収軸方向(延伸方向))における両端部2aを支持部材1の固定領域1aで固定している。
【0033】
ここで、偏光子2の偏光軸方向における両端部2aとは、偏光子2の端部のうち、偏光軸方向において偏光子2の本体を挟んで対向する両端部をいう。偏光子2が吸収型偏光子である場合には、偏光軸方向は、偏光層を作製する際の延伸処理の延伸方向(吸収軸方向)である。なお、本発明においては、偏光子の少なくとも上記両端部が支持部材の固定領域で固定されていれば良く、偏光子の上記両端部以外が支持部材に固定されていても良いが、偏光子の外周部全体が支持部材に固定されている必要はない。
【0034】
偏光子2の形状は特に限定されないが、偏光軸方向(吸収型偏光子においては延伸方向)と平行な方向又は偏光軸方向と直交する方向に対して対称軸を持つ線対称な形状であることが好ましい。例えば、
図3及び
図4に示すように、偏光子2は、偏光軸方向と直交する方向Aに対して対称軸を持つ線対称な形状であることが好ましい。このような形状にすることにより、偏光軸方向への収縮が生じても、偏光子全体に均一に張力がかかるため、より効果的にたわみの発生を抑制できる。
【0035】
なお、本発明において端部の形状は、偏光子の形状に応じて種々の形状を含む。例えば、所定の長さを有する辺部であっても良く、鋭角や鈍角な角部や、湾曲形状を有する角部であっても良い。また、端部は必ずしも辺部のみや角部のみを意味するものではなく、辺部及び角部を共に含んでいても良い。
【0036】
本発明においては、偏光子の偏光軸方向における両端部を支持部材に固定する。この両端部を支持部材に固定することにより、偏光軸方向(吸収型偏光子の場合においては延伸方向)以外の端部における熱膨張による変形をより効果的に逃がすことができ、より効果的にたわみの発生を抑制できる。
【0037】
支持部材1の固定領域1aの位置関係として、好ましいのは、
図3及び
図4に示すように、偏光軸方向に直交し、偏光子2の中心を通る仮想線Aに対して線対称の位置に設けられていることが好ましい。このような位置関係では、偏光軸方向への収縮が生じても、その張力が偏光子2に対して均一にかかるため、よりたわみの発生を抑制できる。
【0038】
さらに、上述したように、偏光子2の両端部2aが、支持部材1の長尺部1aの長手方向(偏光軸方向)(
図1におけるx方向)と直交する方向(
図1におけるy方向)に沿って支持部材1に固定されていることにより、偏光軸方向への収縮による張力が偏光子全体に均一にかかり易くなり、よりたわみの発生を抑制できる。
【0039】
支持部材1の固定領域1aの数や形状については特に制限はない。例えば、
図1、
図3に示すように、偏光子2のそれぞれの端部2aにおける固定領域1aの数及び形状を同じにしても良く、
図4及び
図5に示すように、偏光子2の端部2aにおける固定領域1aの数が端部2a毎に異なっていても良い。また、支持部材1の固定領域1aは、
図1、
図3〜
図5に示すように、偏光軸方向における両端部に対応する支持部材1の長尺部1bのみに固定領域1aを設けても良く、
図6に示すように、偏光軸方向における両端部に対応する支持部材1の長尺部1bと、偏光軸方向と直交する方向に対応する支持部材1の長尺部1b’と、に固定領域1aを設けても良い。なお、
図6に示す構成においては、偏光軸方向と直交する方向に対応する支持部材1の長尺部1b’に偏光子2を固定しない非固定領域を設ける必要がある。
【0040】
支持部材1に偏光子2を固定する方法は、偏光子2が支持部材1から剥離したり、位置がずれたりしない方法であれば限定されない。例えば、接着剤で固定する方法や、一対の支持部材1で偏光子2の両面を挟み込んで固定する方法等が挙げられる。接着剤で固定する方法の場合は、熱伝導性に優れる接着剤を用いることが信頼性向上の観点から好ましい。
【0041】
このように、本発明の光学素子においては、偏光子2の偏光軸方向における偏光子2の両端部2aが支持部材1に固定されており、両端部2a以外が少なくとも一部で支持部材1に固定されていない。このため、実際の使用環境下にて、偏光子2に熱が加わり、偏光軸方向(例えば、吸収型偏光子においては延伸方向)の収縮が起こっても、偏光子2が支持部材1に固定されており、前記偏光軸方向に加わっている張力により、その収縮が相殺される。その結果、熱膨張によるたわみの発生を抑制でき、輝度ムラの発生を防ぐことが可能となる。また、この光学素子においては、少なくとも偏光子2が支持部材1に固定されていない領域が存在するので、その領域で熱膨張による変形を逃がすことができ、たわみ発生の抑制に寄与する。したがって、本発明の光学素子によれば、熱や湿度よるたわみなどの発生を抑制し、コストアップ要因となるガラスなどへも貼合することなく、輝度ムラが発生しない。
【0042】
本発明の実施の形態に係る投影型映像表示装置について説明する。本実施の形態に係る投影型映像表示装置としては、透過型液晶表示素子を利用した液晶プロジェクタがあり、液晶プロジェクタの少なくとも入射側に配置される偏光子として、上記実施の形態に係る光学素子は好適に用いることができる。
【0043】
図7は、本発明の光学素子を備えた投影型映像表示装置である液晶プロジェクタを示す図である。
図7に示す液晶プロジェクタは、LEDなどの光源11と、光源11の後段に配置された照明光学装置12と、照明光学装置12の後段に配置された画像合成光学装置13と、画像合成光学装置13の後段に配置された投射光学装置14と、を具備する。
【0044】
この液晶プロジェクタにおいては、光源11から出射された白色光が照明光学装置12で所定方向の直線偏光光(例えば、S偏光)に揃えられた後、白色光に含まれる青色(B)光が第1の光路L1に分離され、緑色(G)光が第2の光路L2に分離され、赤色(R)光が第3の光路L3に分離される。そして、第1の光路L1、第2の光路L2、第3の光路L3に分離されて画像合成光学装置13に入光する青色光、緑色光及び赤色光からそれぞれ画像光を形成した後、3色の画像光を合成した画像光を投射光学装置14でスクリーン上に拡大投影する。
【0045】
光源11は、光源ランプ111と、光源ランプ111から出射された白色光を反射して略一方向に揃える反射鏡112と、を具備する。光源ランプ111は、白色光を出射する。反射鏡112は、光源ランプ111から出射された白色光を光路Lに沿って照明光学装置12に向けて反射する。
【0046】
照明光学装置12は、光源11の後段に配置された装置本体121と、装置本体121の後段に配置されたダイクロイックミラー122aと、ダイクロイックミラー122aの後段の第1の光路L1上に配置される反射ミラー123aと、ダイクロイックミラー122aの後段に配置されたダイクロイックミラー122bと、ダイクロイックミラー122bの後段の第3の光路L3上に配置された反射ミラー123b,123c及びリレーレンズ124a,124bと、を備える。
【0047】
装置本体121は、光源11から出射された白色光を偏光変換素子、レンズアレイ、及びリレーレンズ(不図示)を介して略一方向に揃った直線偏光光(例えば、S偏光)の平行光とし、平行光を光路Lに沿ってダイクロイックミラー122aに向けて出光する。
【0048】
ダイクロイックミラー122a,122bは、光源11からの光路L上に配置される。ダイクロイックミラー122a,122bは、ガラス基板上にSiO
2、TiO
2、Ta
2O
3、MgF
2などの誘電体膜が積層されて構成され、可視領域の特定の波長領域を透過し、他の波長領域を反射する。本実施の形態においては、ダイクロイックミラー122aは、可視光の緑色光以上の波長領域(例えば、495nm以上)である緑色光及び赤色光を透過し、緑色光未満の波長領域である青色光を反射する。また、ダイクロイックミラー122bは、可視光の赤色光以上の波長領域(例えば、620nm以上)である赤色光を透過し、赤色光未満の波長領域である緑色光及び青色光を反射する。
【0049】
ダイクロイックミラー122aは、その主面が光源11からの光路Lに対して45度傾斜して配置される。ダイクロイックミラー122aは、装置本体121から出光した白色光に含まれる青色光を反射ミラー123aに向けて光路Lと略直交する方向(紙面上方向)に反射し、青色光を第1の光路L1に分離する。反射ミラー123aは、その主面がダイクロイックミラー122aと対向するように配置され、青色光を画像合成光学装置13に向けて光源11からの光路Lと略同一方向(紙面左方向)に反射する。また、ダイクロイックミラー122aは、白色光に含まれる赤色光及び緑色光を透過する。
【0050】
ダイクロイックミラー122bは、その主面が光源11からの光路Lに対して45度傾斜して配置される。ダイクロイックミラー122bは、ダイクロイックミラー122aを透過した緑色光を画像合成光学装置13に向けて光路Lと略直交する方向(紙面上方向)に反射し、緑色光を第2の光路L2に分離する。また、ダイクロイックミラー122bは、ダイクロイックミラー122aを透過した赤色光を透過し、赤色光を第3の光路L3に分離する。
【0051】
反射ミラー123b,123cは、その主面が第3の光路L3に対してそれぞれ45度傾斜して配置される。反射ミラー123bは、ダイクロイックミラー122bによって分離された赤色光を光源11からの光路Lと直交する方向(紙面上方向)に向けて反射する。また、反射ミラー123cは、反射ミラー123bによって反射された赤色光を画像合成光学装置13に向けて光源11からの光路Lと略逆方向(紙面右方向)に反射する。
【0052】
リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー122bと反射ミラー123bとの間に配置され、リレーレンズ124bは、反射ミラー123bと反射ミラー123cとの間に配置される。リレーレンズ124a,124bは、第1の光路L1及び第2の光路L2に対して光路長が長くなる第3の光路L3に分離される赤色光を光軸調整し、画像合成光学装置13で合成される画像光の色むらを低減する。
【0053】
画像合成光学装置13は、第1の光路L1上に配置されるリレーレンズ131B、入射側偏光子132B、液晶パネル133B及び出射側偏光子134Bと、第2の光路L2上に配置されるリレーレンズ131G、入射側偏光子132G、液晶パネル133G及び出射側偏光子134Gと、第3の光路L3上に配置されるリレーレンズ131R、入射側偏光子132R、液晶パネル133R及び出射側偏光子134Rと、を備える。画像合成光学装置13は、照明光学装置12で分離された赤色光、緑色光、青色光を液晶パネル133R,133G,133Bで変調してそれぞれ画像光を形成し、形成した3色の画像光をRGB合成ダイクロイックプリズム135で合成して投射光学装置14に出光する。
【0054】
投射光学装置14は、複数のレンズを組み合わせて構成される。投射光学装置14は、画像合成光学装置13から出射された画像光をスクリーン上に拡大投影する。このような液晶プロジェクタにおいては、入射側偏光子が、熱や湿度よるたわみなどの発生を抑制し、輝度ムラが発生しないので、品質の良い画像光を投影することができる。
【0055】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
外形が長方形であり、その長辺の長さが34mm、短辺の長さが24mm、長尺部の幅が3mm、長尺部の厚さが1mmであるアルミニウム製の支持部材と、外形が長方形であり、長辺の長さが30mm、短辺の長さが20mm、厚さが110μmである吸収型偏光子(住友化学株式会社製、SRW062A)を準備した。このとき、吸収型偏光子の吸収軸(偏光軸)は長方形の長辺と平行であった。支持部材に接着剤(東亜合成株式会社製、アロンアルファEXTRA4000)を塗布し、支持部材に吸収型偏光子を貼り付けて実施例1の光学素子を作製した。この光学素子は、
図1に示すように、吸収型偏光子の偏光軸方向(延伸方向)と直交する支持部材1の長尺部(短辺)1bに、それぞれ1箇所ずつ固定領域1aが設けられており、2つの固定領域1aは、偏光軸方向と直交する方向の対称軸Aに対して線対称な位置関係であった。
【0056】
(実施例2)
外形が台形であり、その下底の長さが35mm、上底の長さが25mm、高さが25mm、長尺部の幅が3mm、長尺部の厚さが1mmであるアルミニウム製の支持部材と、外形が台形であり、下底の長さが32mm、上底の長さが23mm、高さが23mm、厚さが110μmである吸収型偏光子(住友化学株式会社製、SRW062A)を準備した。このとき、吸収型偏光子の吸収軸(偏光軸)は台形の上底や下底と平行であった。支持部材に接着剤(東亜合成株式会社製、アロンアルファEXTRA4000)を塗布し、支持部材に吸収型偏光子を貼り付けて実施例2の光学素子を作製した。この光学素子は、
図3に示すように、吸収型偏光子の偏光軸方向(延伸方向)における支持部材1の長尺部1b(台形の脚部)に、それぞれ1箇所ずつ固定領域1aが設けられており、2つの固定領域1aは、偏光軸方向と直交する方向の対称軸Aに対して線対称な位置関係であった。
【0057】
(実施例3)
外形が台形であり、その下底の長さが35mm、上底の長さが25mm、高さが25mm、長尺部の幅が3mm、長尺部の厚さが1mmであるアルミニウム製の支持部材と、外形が台形であり、下底の長さが32mm、上底の長さが23mm、高さが23mm、厚さが110μmである吸収型偏光子(住友化学株式会社製、SRW062A)を準備した。このとき、吸収型偏光子の吸収軸(偏光軸)は台形の上底や下底と平行であった。支持部材に接着剤(東亜合成株式会社製、アロンアルファEXTRA4000)を塗布し、支持部材に吸収型偏光子を貼り付けて実施例3の光学素子を作製した。この光学素子は、
図4に示すように、吸収型偏光子の偏光軸方向(延伸方向)における支持部材1の長尺部1b(台形の脚部)に、一方に2箇所、他方に1箇所固定領域1aが設けられており、両端部の固定領域1aは、偏光軸方向と直交する方向の対称軸Aに対して線対称な位置関係であった。
【0058】
(実施例4)
外形が台形であり、その下底の長さが35mm、上底の長さが25mm、高さが25mm、長尺部の幅が3mm、長尺部の厚さが1mmであるアルミニウム製の支持部材と、外形が台形であり、下底の長さが32mm、上底の長さが23mm、高さが23mm、厚さが110μmである吸収型偏光子(住友化学株式会社製、SRW062A)を準備した。このとき、吸収型偏光子の吸収軸(偏光軸)は台形の上底や下底と平行であった。支持部材に接着剤(東亜合成株式会社製、アロンアルファEXTRA4000)を塗布し、支持部材に吸収型偏光子を貼り付けて実施例4の光学素子を作製した。この光学素子は、
図5に示すように、吸収型偏光子の偏光軸方向(延伸方向)における支持部材1の長尺部1b(台形の脚部)に、一方に2箇所、他方に1箇所固定領域1aが設けられており、両端部の固定領域1aは、偏光軸方向と直交する方向の対称軸Aに対して線対称な位置関係でなかった。
【0059】
(実施例5)
外形が台形であり、その下底の長さが35mm、上底の長さが25mm、高さが25mm、長尺部の幅が3mm、長尺部の厚さが1mmであるアルミニウム製の支持部材と、外形が台形であり、下底の長さが32mm、上底の長さが23mm、高さが23mm、厚さが110μmである吸収型偏光子(住友化学株式会社製、SRW062A)を準備した。このとき、吸収型偏光子の吸収軸(偏光軸)は台形の上底や下底と平行であった。支持部材に接着剤(東亜合成株式会社製、アロンアルファEXTRA4000)を塗布し、支持部材に吸収型偏光子を貼り付けて実施例4の光学素子を作製した。この光学素子は、
図6に示すように、吸収型偏光子の偏光軸方向(延伸方向)における支持部材1の長尺部1b(台形の脚部)及び吸収型偏光子の偏光軸方向(延伸方向)における支持部材1の長尺部1b’(台形の上底及び下底)の一部に固定領域1aが設けられており、両端部の固定領域1aは、偏光軸方向と直交する方向の対称軸Aに対して線対称な位置関係でなかった。
【0060】
(比較例1)
外形が長方形であり、その長辺の長さが34mm、短辺の長さが24mm、長尺部の幅が3mm、長尺部の厚さが1mmであるアルミニウム製の支持部材と、外形が長方形であり、長辺の長さが30mm、短辺の長さが20mm、厚さが110μmである吸収型偏光子(住友化学株式会社製、SRW062A)を準備した。このとき、吸収型偏光子の吸収軸(偏光軸)は長方形の長辺と平行であった。支持部材に接着剤(東亜合成株式会社製、アロンアルファEXTRA4000)を塗布し、支持部材に吸収型偏光子を貼り付けて比較例1の光学素子を作製した。この光学素子は、
図8に示すように、吸収型偏光子の外周を全て固定領域1aとした。すなわち、比較例1の光学素子においては、支持部材1と偏光子2との間の非固定領域が存在していない。
【0061】
上記のようにして作製した実施例1〜実施例5の光学素子と比較例1の光学素子について、たわみの評価及び輝度ムラの評価を行った。その結果を下記表1に示す。なお、たわみの評価及び輝度ムラの評価は以下のようにして行った。
【0062】
(たわみの評価)
実施例1〜実施例5及び比較例1の光学素子を80℃で1日加熱した後に、偏光子のたわみ状態を以下の基準にしたがって目視にて観察した。
○:たわんだ状態が観察されない
△:たわんだ状態がわずかに観察される
×:たわんだ部分が観察される
【0063】
(輝度ムラの評価)
実施例1〜実施例5及び比較例1の光学素子について、加熱前及び80℃で1日加熱後に、投影型映像表示装置(日本アビオニクス株式会社製、iP−55)に搭載し、スクリーン上に表示する映像の輝度をコニカミノルタ社製分光放射輝度計CS−2000で測定した。投影型映像表示装置はスクリーン上に一辺2mの正方形の白画面を表示するよう、画像表示設定を行った。スクリーンは前記プロジェクタから2m離れた地点に、正面に設置した。前記輝度計で、前記投影型映像表示装置の正面(測定箇所1)と、正面から水平方向に80cm移動した箇所(測定箇所2)とにおける輝度を測定した。この際、投影映像表示装置とスクリーン上の正面の測定箇所とを結ぶ直線と、輝度計とスクリーン上の各測定箇所とを結ぶ直線のなす角が15度となるように輝度計を設置した。得られた輝度値を下記の式に当てはめ、加熱前後での輝度の変化率を求めた。なお、小数点第一位以下の値は、四捨五入した。
変化率={(加熱後の輝度値/加熱前の輝度値)−1}×100 (%)
【0065】
表1から分かるように、実施例1〜実施例5の光学素子については、ほとんどたわみがなく、輝度ムラが非常に小さかった。これは、偏光子の延伸方向における偏光子の両端部が支持部材に固定されており、両端部以外が少なくとも一部で支持部材に固定されていないので、実際の使用環境下にて、偏光子に熱が加わり延伸方向の収縮が起こっても、支持部材の固定により生じた張力のために収縮が抑えられたためであると考えられる。一方、比較例1の光学素子は、たわんだ部分が観察され、輝度ムラも大きかった。これは、偏光子の外周全てが支持部材で固定されているために、偏光子の延伸方向に直交する方向における端部で熱膨張による変形を効果的に逃がすことができなかったためであると考えられる。
【0066】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。また、上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさ、形状、材質、数量等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。