特許第6105297号(P6105297)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6105297消費電力量推定装置、消費電力量推定方法、経路探索システム、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105297
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】消費電力量推定装置、消費電力量推定方法、経路探索システム、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
   B60L3/00 S
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-4331(P2013-4331)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-138439(P2014-138439A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504126112
【氏名又は名称】住友電工システムソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 純史
(72)【発明者】
【氏名】中島 正浩
【審査官】 大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−201412(JP,A)
【文献】 特開2004−135471(JP,A)
【文献】 特開2011−254583(JP,A)
【文献】 特開2006−115623(JP,A)
【文献】 特開平10−170293(JP,A)
【文献】 特開2012−113546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 3/00−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を推定する装置であって、
所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の少なくとも停止状態を含む走行状態を示す走行情報を取得する取得部と、
前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求める処理部と、
を備え
前記処理部は、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における前記総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量を、当該所定時間における前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量として求める、消費電力量推定装置。
【請求項2】
前記電気自動車に複数台の前記補機が搭載されており、
前記処理部は、前記総消費電力量情報が示す総消費電力量と、前記補機情報に基づいて稼働していると判定された補機の消費電力量の合計との関係により、各補機による前記バッテリの消費電力量を求める請求項1に記載の消費電力量推定装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記総消費電力量情報及び前記補機情報それぞれが示す所定時間毎の値を下記の式に適用した演算を行う請求項に記載の消費電力量推定装置。
【数1】
【請求項4】
前記取得部は、複数の電気自動車が送信するプローブ情報から、前記総消費電力量情報、前記補機情報及び前記走行情報を取得する請求項1〜のいずれか一項に記載の消費電力量推定装置。
【請求項5】
バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車のための経路を探索する経路探索システムであって、
電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を推定する消費電力量推定部と、
この推定された補機によるバッテリの消費電力量に基づいて生成されたデータベースを有している記憶部と、
前記データベース、及び、電気自動車から取得されたバッテリの情報を用いて、当該電気自動車のための経路を探索する経路探索部と、
を備え、
前記消費電力量推定部は、
所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の少なくとも停止状態を含む走行状態を示す走行情報を取得する取得部と、
前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求める処理部と、
を有し
前記処理部は、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における前記総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量を、当該所定時間における前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量として求める、経路探索システム。
【請求項6】
前記取得部は、道路区間毎に区分して、前記総消費電力量情報、前記補機情報、及び、前記走行情報を取得し、
前記処理部は、道路区間毎に、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求める請求項に記載の経路探索システム。
【請求項7】
前記処理部は、求められた前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を、電気自動車の車種毎に区分する請求項に記載の経路探索システム。
【請求項8】
バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を、消費電力量推定装置が推定する方法であって、
所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の少なくとも停止状態を含む走行状態を示す走行情報を取得し、
前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、当該抽出した停止状態における総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量を、当該所定時間における前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量として求める消費電力量推定方法。
【請求項9】
バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を推定する消費電力量推定装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、
前記消費電力量推定装置は、
所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の少なくとも停止状態を含む走行状態を示す走行情報を取得し、
前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、当該抽出した停止状態における総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量を、当該所定時間における前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量として求めるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の走行用モータ以外の補機によるバッテリの消費電力量を推定する消費電力量推定装置、消費電力量推定方法、前記消費電力量推定装置を備えている経路探索システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境に対する意識の高まりにより、窒素酸化物や二酸化炭素等のガスを走行時に排出しない電気自動車(EV)が注目されている。しかし、電気自動車の航続距離はガソリンを燃料として走行する自動車と比較して短いこと、電気自動車に搭載のバッテリに充電を行う充電ステーション(充電設備)が充分に普及していないことが、現在、電気自動車における大きな課題となっている。このため、電気自動車にとって、バッテリの充電状況の監視が重要となる。
【0003】
バッテリの充電状況を監視する方法としては、バッテリの充電量を計測器が計測し、この計測結果を、電気自動車の車内に搭載したモニタに表示させたり、車内のインストルメントパネルに設けられたメータに表示させたりし(例えば、特許文献1参照)、このメータ等をドライバが直接的に見て行う方法や、計測結果を音声によりドライバへ通知する方法等がある。
【0004】
また、電気自動車の車載装置が、プローブ情報を生成しサーバ装置へ無線送信することができる場合、例えば、車載装置は、所定時間毎に、バッテリの充電率の情報及び所定時間について走行した際の総消費電力量の情報をプローブ情報に含めて送信する。そして、このプローブ情報を受信したサーバ装置は、バッテリの充電状況を確認し、その確認結果を車載装置へ返信する。これに応じて車載装置は、バッテリの充電の要否等の情報をモニタに表示させたり、音声により通知したりする。
【0005】
これにより、ドライバはバッテリの充電状況を確認し、例えば充電量が少ない場合、充電ステーションを探す等、バッテリの充電状況に応じた対策を採る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−149553号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、このような電気自動車においても、経路探索装置によって目的地までの推奨経路等を探索する処理が行われる。例えば、バッテリの充電量が少ない場合、近隣に存在する充電ステーションまでの経路を探索する処理が行われる。
経路探索装置は、電気自動車のために経路探索を行う場合、バッテリの充電状況を考慮し、目的地まで到達可能であるか否かについて判定する必要がある。
【0008】
このためには、経路探索装置において、各道路区間(例えば道路リンク)を走行することによるバッテリの消費電力量の情報が必要である。この情報を経路探索装置に蓄積させるためには、各道路区間を走行した電気自動車から、その道路区間を実際に走行することで消費した電力量(消費電力の実測値)の情報を取得すればよい。
【0009】
しかし、電気自動車には、走行のためにバッテリから電力供給を受けて駆動する走行用モータの他に、安全性や快適性を確保するためのヘッドライトやエアコン等、走行用モータと同じバッテリから電力供給を受けて稼働する補機(電気機器)も搭載されている。このため、道路区間を実際に走行することで消費した電力量(消費電力の実測値)を取得しても、この電力量には、補機による消費電力量が含まれていると考えられる。
したがって、取得した消費電力量(消費電力の実測値)を、その道路区間を走行するために要する消費電力量としてそのまま適用し、その情報を経路探索装置に蓄積させた場合、例えばエアコンを使用しないでその道路区間を走行する電気自動車にとっては、有効な情報であるとは言えない。
【0010】
このため、消費電力を計測する計測器を補機に設置し、これら計測器から情報を収集することが考えられる。しかし、対象となる補機が多くなると、補機の数に応じて計測器の数も増加し、電気自動車のコストが高くなるという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、走行用モータ以外の補機によるバッテリの消費電力量を、補機に計測器を設置しなくても、取得可能とすること、また、この取得した消費電力量を用いて電気自動車のための経路探索を可能とさせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の消費電力量推定装置は、バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を推定する装置であって、所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の走行状態を示す走行情報を取得する取得部と、前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した所定の走行状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求める処理部とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、所定時間毎のバッテリの総消費電力量から、走行用モータによる消費電力量を除いた値が、補機の稼働による消費電力量となることに着目した発明であり、本発明の消費電力量推定装置は、所定時間毎のバッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、この所定時間における補機の稼働状態を示す補機情報、及び、この所定時間における電気自動車の走行状態を示す走行情報を取得すると、これら情報を用いて、補機の稼働によるバッテリの消費電力量を求める。このため、補機に計測器を設置しなくても、補機によるバッテリの消費電力量を取得することが可能となる。
【0014】
例えば、電気自動車の走行状態が停止状態である場合、走行用モータによる消費電力量はゼロであることから、その停止状態における総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量を、その所定時間における補機の稼働によるバッテリの消費電力量として求めることができる。
また、例えば、電気自動車の走行状態が等速走行状態である場合、走行用モータによる消費電力量は、ほぼ定数であると考えられる。このため、等速走行状態における総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量は、前記定数と、その所定時間における補機の稼働によるバッテリの消費電力量との和となることから、補機の稼働によるバッテリの消費電力量を求めることができる。
【0015】
(2)前記処理部は、前記走行情報に基づいて抽出した停止状態における前記総消費電力量及び前記補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求めるのが好ましい。この場合、補機の稼働によるバッテリの消費電力量を求めるための処理は簡単となる。
【0016】
(3)また、前記電気自動車に複数台の前記補機が搭載されており、前記処理部は、前記総消費電力量情報が示す総消費電力量と、前記補機情報に基づいて稼働していると判定された補機の消費電力量の合計との関係により、各補機による前記バッテリの消費電力量を求めるのが好ましい。これにより、複数台の補機が稼働することによるバッテリの消費電力量が求まる。
【0017】
(4)また、前記(3)の場合において、前記処理部は、前記総消費電力量情報及び前記補機情報それぞれが示す所定時間毎の値を下記の式に適用した演算を行うのが好ましい。
【数1】

これにより、処理部は、演算処理を行うことにより補機の消費電力量を求めることが可能となる。
【0018】
(5)また、前記取得部は、複数の電気自動車が送信するプローブ情報から、前記総消費電力量情報、前記補機情報及び前記走行情報を取得するのが好ましい。
この場合、消費電力量推定装置は多くのプローブ情報を収集することができる。このため、補機の稼働によるバッテリの消費電力量を求めために、これら多くのプローブ情報から取得した多くの情報を用いることが可能となる。
【0019】
(6)また、本発明は、バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車のための経路を探索する経路探索システムであって、電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を推定する消費電力量推定部と、この推定された補機によるバッテリの消費電力量に基づいて生成されたデータベースを有している記憶部と、前記データベース、及び、電気自動車から取得されたバッテリの情報を用いて、当該電気自動車のための経路を探索する経路探索部とを備え、前記消費電力量推定部は、所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の走行状態を示す走行情報を取得する取得部と、前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した所定の走行状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求める処理部とを有していることを特徴とする。
【0020】
本発明が備えている消費電力量推定部によれば、前記(1)に記載の消費電力量推定装置と同様の作用効果を奏することができ、補機に計測器を設置しなくても、補機によるバッテリの消費電力量を取得することが可能となる。
そして、経路探索部は、この取得された消費電力量に基づいて生成されたデータベース、及び、電気自動車から取得されたバッテリの情報を用いて、この電気自動車のために、補機の稼働状態を考慮した経路探索が可能となる。例えば、補機を作動させた場合に到達できる地点までの経路や、補機を作動させない場合に到達できる地点までの経路を、探索することが可能となる。
【0021】
(7)また、前記(6)の経路探索システムにおいて、前記取得部は、道路区間毎に区分して、前記総消費電力量情報、前記補機情報、及び、前記走行情報を取得し、前記処理部は、道路区間毎に、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求めるのが好ましい。
道路区間毎に道路の特性(例えば、路面の勾配等)が異なることから、道路区間毎に補機の稼働によるバッテリの消費電力量を求め、これを用いて前記データベースを生成することにより、経路探索部による経路探索処理にとって有用なデータベースとすることができる。
【0022】
(8)また、同じ種類の補機であっても車種が異なれば消費電力量が異なることがある。そこで、前記(7)の経路探索システムにおいて、前記処理部は、求められた前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を、電気自動車の車種毎に区分するのが好ましい。
【0023】
(9)また、本発明の消費電力量推定方法は、バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を、消費電力量推定装置が推定する方法であって、所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の走行状態を示す走行情報を取得し、前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した所定の走行状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求めることを特徴とする。
本発明によれば、前記(1)に記載の消費電力量推定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
(10)また、本発明は、バッテリの電力により走行用モータを駆動させて走行する電気自動車から取得される情報に基づいて、電気自動車に搭載されている走行用モータ以外の補機による前記バッテリの消費電力量を推定する消費電力量推定装置として、コンピュータを機能させるコンピュータプログラムであって、前記消費電力量推定装置は、所定時間毎の前記バッテリの総消費電力量を示す総消費電力量情報、当該所定時間毎の前記補機の稼働状態を示す補機情報、及び、当該所定時間毎の電気自動車の走行状態を示す走行情報を取得し、前記総消費電力量情報及び前記補機情報の中から、前記走行情報に基づいて抽出した所定の走行状態における総消費電力量情報及び補機情報を用いて、前記補機の稼働による前記バッテリの消費電力量を求めることを特徴とする。
本発明によれば、前記(1)に記載の消費電力量推定装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の消費電力量推定装置、消費電力量推定方法及びコンピュータプログラムによれば、補機に計測器を設置しなくても、補機によるバッテリの消費電力量を取得することが可能となる。
また、本発明の経路探索システムによれば、この取得された消費電力量を用いて、電気自動車のための経路探索が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】交通情報システムの一部を示すブロック図である。
図2】プローブ情報の一例を示す説明図である。
図3】取得部が行う取得処理の説明図である。
図4】取得部が取得するデータ群の説明図である。
図5】取得部が走行情報を取得する処理の説明図である。
図6】取得部が抽出した停止状態における情報の一部を示す説明図である。
図7】処理部が図4のデータ群を変換したデータ群の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
〔1. 経路探索システムについて〕
図1は、交通情報システムの一部を示すブロック図である。この交通情報システムには、車両2、車両2に搭載されている車載装置3、車載装置3と無線通信する路側通信装置4、及び、路側通信装置4と通信可能なサーバ装置5が含まれる。
【0028】
サーバ装置5は、複数の車載装置3(車両2)から送信された各種情報を、道路の各所に設置された路側通信装置4を通じて収集する。また、サーバ装置5は、経路探索の処理を行い、探索した経路の情報等を生成して車載装置3へ送信する。
車載装置3は、車両2に固定された装置以外に、例えばドライバ(搭乗者)が携帯しているスマートフォン等の携帯端末であってもよい。車載装置3が携帯端末の場合、路側通信装置4は、この携帯端末と無線通信を行う基地局装置となる。
路側通信装置4は、各地域の道路等に多数設置されている。各路側通信装置4は、通信機能を備えており、車載装置3と無線通信可能であり、また、有線(又は無線)によりサーバ装置5と通信可能である。
【0029】
車両2は、充電可能なバッテリ7と、このバッテリ7の電力によって駆動する走行用モータ10とを備えており、この走行用モータ10の駆動力により走行する電気自動車である。つまり、走行用モータ10の出力軸の回転力が、ドライブシャフト等の動力伝達部を介して、車輪に伝達される。また、車両2には、走行用モータ10以外の電気機器である補機が搭載されている。
補機には、例えば、空調設備(以下、エアコンという)、ヘッドライト、ワイパー、デフォッガー等が含まれる。これら各補機は、走行用モータ10と同じバッテリ7から電力の供給を受け稼働する電気機器である。本実施形態では、車両2に、3つの補機41,42,43が搭載されている。これら補機41,42,43それぞれには、識別番号として補機IDが付されている。これら補機41,42,43の補機IDをそれぞれ、ID1,ID2,ID3とする。
【0030】
車載装置3は車載コンピュータからなり、この車載装置3を搭載している車両2のプローブ情報を生成し、無線送信する。また、車載装置3は、サーバ装置5が生成した情報を、路側通信装置4を通じて受信する。
車載装置3は、ドライバ(搭乗者)の操作により各種の情報を入力可能でかつドライバに対して情報を出力可能である入出力部3aと、現在位置の情報を取得可能な測位部3bとを有している。
【0031】
入出力部3aは、例えばドライバが操作するタッチパネル及びその制御部からなり、タッチパネルを通じて文字入力や選択操作を行う等により例えば目的地を制御部へ入力可能である。目的地が入力されると、その目的地を示す目的地情報が制御部によって生成され、目的地情報は、車両2の識別情報(車両ID)と共に送信情報に含められてサーバ装置5へ送信される。また、タッチパネルは、ドライバに対して情報を表示するモニタとしても機能する。
本実施形態では、サーバ装置5が車両2のための経路探索を行う機能を備えており、前記目的地情報を含む前記送信情報は、サーバ装置5に対する経路の探索要求信号となる。
測位部3bは、例えばGPS機能を有した測位装置からなり、現在位置の情報を取得する。取得した現在位置の情報はプローブ情報に含められ、サーバ装置5へ送信される。
【0032】
プローブ情報(フローティングカー情報ともいう)について説明する。
車載装置3は、プローブ情報を周期的に(数秒毎に)生成して送信する。プローブ情報には、図2に示すように、車種コード、車両ID、年月日及び時刻の情報、リンクID、速度[km/時間]、乗車人数[人]、総消費電力量[kWh]、バッテリ7の充電率[%]及び残量[kWh]、走行用モータ10以外の補機の稼働状態を示す補機情報[オン又はオフ]が含められる。
【0033】
車種コードは、電気自動車である車両2の種類(車種)を識別するための識別情報であり、車体が異なっていても車種が同じであれば、同じ車種コードとなる。
車両IDは、車体毎に付与された識別情報である。
年月日及び時刻の情報は、周期的に生成される各プローブ情報が生成された年月日及び時刻を示す情報である(なお、図2では、月日のみ表示している)。
リンクIDは、プローブ情報の生成時点で走行していた道路区間の識別情報であり、測位部3bが測位して得た位置情報に基づいて設定される。本実施形態では、前記道路区間は道路リンクであるが、特に限定されるものではない。なお、このリンクIDについては、位置情報を含むプローブ情報を取得したサーバ装置5が設定してもよい。
【0034】
速度は、プローブ情報の生成周期間における平均速度であり、測位部3bが測位して得た位置情報とその測位時の時刻の情報とに基づいて算出される。
乗車人数は、車両2の乗車人数であり、例えば、シートベルトの装着状態の情報を電子制御ユニット(ECU)6が監視し、この情報を、電子制御ユニット6を通じて車載装置3は取得することができる。
総消費電力量は、プローブ情報の生成周期(又は送信周期)毎のバッテリ7の総消費電力量[kWh]であり、この生成周期間で走行用モータ10及び全ての補機41,42,43が消費したバッテリ7の電力量である。この値は、バッテリ7に付属のバッテリ管理装置によって計測される。
バッテリ7の充電率[%]及びバッテリ7の残量(残りの充電量)[kWh]は、バッテリ7に付属のバッテリ管理装置(計測器)が計測して得た値であり、プローブ情報の生成時点における値である。
補機情報は、プローブ情報の生成時点における補機41,42,43それぞれの稼働(オン)又は非稼働(オフ)の稼働状態を示す情報であり、この情報を、電子制御ユニット6を通じて車載装置3は取得することができる。
【0035】
〔2. サーバ装置5(経路探索システム)〕
〔2.1 全体構成〕
図1において、サーバ装置5は、ハードディスク等からなる記憶装置15と、路側通信装置4と通信を行うための通信インタフェースからなる通信装置16と、演算処理を行う機能を有する演算処理装置17とを備えている。通信装置16は、車載装置3から送信されたプローブ情報を受信し、プローブ情報に含まれている各種の情報を演算処理装置17へ与える。
【0036】
演算処理装置17は、様々な機能を奏する機能部を有しており、これら機能部のうちの一つが経路探索部20であり、他の一つが消費電力量推定部21である。具体的に説明すると、演算処理装置17は、CPU及び内部メモリ等を有するコンピュータからなり、この演算処理装置17を経路探索部20及び消費電力量推定部21として機能させるためのコンピュータプログラムが、記憶装置15又は前記内部メモリにインストールされている。そして、演算処理装置17が有している各機能部(経路探索部20及び消費電力量推定部21)は、前記コンピュータプログラムが実行されることで動作する。
【0037】
演算処理装置17が有する各機能部について簡単に説明する。
経路探索部20は、車載装置3から送信された前記探索要求信号に基づいて、その車載装置3を搭載している車両2のための経路(推奨経路や到達可能な経路範囲等)を探索する。
電気自動車である車両2(車載装置3)それぞれは、バッテリ7の情報をプローブ情報に含めて送信する。本実施形態における前記バッテリ7の情報は、バッテリ7の充電率[%]及び残量[kWh]である。このプローブ情報をサーバ装置5の通信装置16が受信すると、経路探索部20は、記憶装置15が有しているデータベース、及び、この車両2から取得された前記バッテリ7の情報を用いて、この車両2のための経路を探索する処理を行う。なお、記憶装置15には、この経路探索のために用いられる各種のデータベースが設けられている。
【0038】
消費電力量推定部21は、経路探索に用いるデータベースを生成するための処理を行う。つまり、電気自動車である車両2(車載装置3)から送信された前記の各種情報を含むプローブ情報を通信装置16が受信すると、通信装置16はこの情報を消費電力量推定部21(以下、推定部21ともいう)へ与え、推定部21は、このプローブ情報に含まれる各種情報に基づいて、この車両2に搭載されている補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量を推定する処理を行う。そして、推定部21は、この推定処理を行った結果を反映させた経路探索に用いられるデータベースを生成する。
【0039】
つまり、プローブ情報に含まれているバッテリ7の総消費電力量と、この推定した補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量とから、推定部21は、走行用モータ10が消費する電力量を求め、補機41,42,43及び走行用モータ10が消費する電力量の情報を、消費電力情報用のデータベース50に蓄積する。このデータベース50は、記憶装置15が有するデータベースである。
このように、推定部21によって推定された補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量に基づいて、データベース50が生成される。
以下、 経路探索部20及び推定部21の機能について、さらに説明する。
【0040】
〔2.2 経路探索部20について(その1)〕
経路探索部20は、第1の地点(例えば出発地又は現在地)から第2の地点(例えば目的地)まで車両2が走行すべき経路を、道路リンクのリンクコストを用いて所定の探索アルゴリズムに従って探索する機能を有している。探索アルゴリズムは、様々なアルゴリズムを採用可能であるが、本実施形態はダイクストラ法である。経路探索部20は、道路リンクのリンクコストの総和が小さくなる(最小となる)経路を探すシミュレーションを行う。リンクコストを旅行時間とすることにより、第1の地点から第2の地点まで、できるだけ旅行時間が短くなる経路が探索される。なお、各道路リンクのリンクコストは、記憶装置15が有するリンク情報用のデータベース51に蓄積されており、経路探索部20は、このデータベース51を参照して、経路探索を行う。
【0041】
また、道路の特性は、道路リンク毎に異なることから、電気自動車が消費するバッテリ7の電力量は、道路リンクに応じて異なると考えられる。例えば、同じ直線道路であっても、路面の勾配(道路の特性)は道路リンク毎で異なることがあるため、電気自動車が消費するバッテリ7の電力量は、道路リンクに応じて異なると考えられる。このため、経路探索部20は、道路リンクを、経路探索処理のための一単位として用い経路探索を行う。
つまり、経路探索部20は、経路探索を行う際、道路リンクの起点(ノード)におけるバッテリ7の残量(残り電力量)から、その道路リンクを走行することにより消費される電力量を差し引いた、残り電力量を算出する。そして、算出した残り電力量が所定の値(例えば充電率に換算して20%)以上であることを条件として、次の道路リンクを探索し続け、第2の地点までの経路探索を行う。算出した残り電力量が所定の値未満になると、航続不可能と判定される。
【0042】
このように、経路探索部20は、道路リンク毎にバッテリ7の状況(電力量)を考慮しながら、電気自動車のための経路探索を行う。このため、経路探索部20において、各道路リンクを走行することによるバッテリ7の消費電力量の情報が必要である。そして、この情報が、記憶装置15が有している消費電力情報用のデータベース50に記憶されている。このデータベース50は、推定部21によって生成される。
【0043】
〔2.3 消費電力量推定部21について〕
消費電力情報用のデータベース50を生成する処理について説明する。
各道路リンクを実際に走行することで消費した電力量(消費電力の実測値)の計測が電気自動車である車両2により行われると、その車両2の車載装置3は、その電力量(消費電力の実測値)の情報を生成し、この生成した情報をプローブ情報に含めて、サーバ装置5へ送信する。そして、サーバ装置5の通信装置16が、この情報を受信すると推定部21へ与え、推定部21は、道路リンク(リンクID)毎に、その道路リンクを実際に走行することで消費した電力量(消費電力の実測値)の情報を用いて、以下のとおり、データベース化する処理を行う。
【0044】
ここで、電気自動車には、前記のとおり、走行のためにバッテリ7から電力供給を受けて駆動する走行用モータ10の他に、安全性や快適性を確保するためにヘッドライトやエアコン等、走行用モータ10と同じバッテリ7から電力供給を受けて稼働する補機41,42,43も搭載されている(図1参照)。このため、各道路リンクを実際に走行することで取得される消費電力量(消費電力の実測値)には、これら補機41,42,43による消費電力量が含まれている。
【0045】
したがって、プローブ情報に基づいて取得した消費電力量(消費電力の実測値)を、道路リンクを走行するために要する消費電力量としてそのまま適用し、その情報をデータベース50に記憶させた場合、このデータベース50に蓄積されている情報は、補機の稼働状態が異なる電気自動車(例えばエアコンを使用しないでその道路リンクを走行する電気自動車)にとって、有効な情報であるとは言えない。
【0046】
そこで、推定部21は、電気自動車である車両2から取得されるプローブ情報に基づいて、この車両2に搭載されている補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量を推定する処理を行う。そして、プローブ情報から取得されたバッテリ7の総消費電力量を、走行用モータ10により消費された電力量と、補機41,42,43により消費された電力量とに区分して、データベース50に蓄積させる処理を行う。
【0047】
推定部21は、データベース50を生成するために、プローブ情報から各種の情報を取得する取得部22と、この取得部22が取得した情報を処理する処理部23とを備えている。
前記のとおり、電気自動車である車両2が送信するプローブ情報には、図2に示すように、車種コード、車両ID、プローブ情報が生成された年月日及び時刻、リンクID、速度(平均速度)、補機41,42,43それぞれの稼働(オン)又は非稼働(オフ)の稼働状態を示す補機情報、バッテリ7の総消費電力量を示す総消費電力量情報、バッテリの充電率、及び、バッテリの残量の情報が含まれている。
【0048】
このため、取得部22は、このプローブ情報から前記各種情報を取得することができる。特に、プローブ情報には、リンクIDが含まれていることから、取得部22は、図3に示すように、リンクID(道路リンク)毎に区分して情報を収集し、複数の情報を含むデータ群をリンクID(道路リンク)毎に区分して生成する。このデータ群は、全ての道路リンク(図3の場合、ID1〜100)について生成され、記憶装置15のデータベース50に記憶される。
【0049】
取得部22によって生成された一つのデータ群を図4に示す。この図4に示すデータ群は、リンクIDが「X」である道路リンクを走行した電気自動車である車両2から収集された情報の集まりである。
このデータ群は、所定時間毎(図4では5秒毎)に区分された複数の情報から構成されている。そしてプローブ情報に含まれる時刻情報が示す時刻が含まれる時間帯の各項目に、そのプローブ情報に含まれる各種情報が蓄積される。
なお、図4中の加速度については、プローブ情報に含まれている速度の時間変化に基づいて取得部22が算出する。また、所定時間(図4では5秒)は、プローブ情報の生成周期と同じ時間であってもよい。
【0050】
そして、取得部22は、速度の情報と加速度の情報とのうちの一方又は双方に基づいて、その各時間帯毎の(前記所定時間における)電気自動車の走行状態を示す走行情報を取得する。なお、走行状態とは、加速状態、減速状態、等速走行状態及び停止状態のいずれの状態である。
つまり、図5に示すように、例えば、プローブ情報に含まれている速度情報が示す速度の値がゼロである場合、取得部22は、そのプローブ情報の生成時、車両2は停止状態にあると判定することができ、この場合、停止状態であることを示す走行情報を生成する。つまり、走行情報として、そのプローブ情報が含まれている時間帯に「停止データ」のフラグを立てる。なお、走行情報は、これ以外であってもよく、走行状態を示す情報であればよく、単純に速度の情報や加速度の情報であってもよい。例えば、速度がゼロであれば走行状態は停止状態であるとすることができる。
【0051】
また、プローブ情報に含まれている速度情報が示す速度の値がゼロよりも大きい値であり、かつ、加速度の情報が示す加速度の値がゼロである場合、取得部22は、そのプローブ情報の生成時、車両2は等速走行状態にあると判定することができ、この場合、等速走行状態であることを示す走行情報を生成する。つまり、走行情報として、そのプローブ情報が含まれている時間帯に「等速走行データ」のフラグを立てる。
【0052】
以上より、取得部22は、所定時間毎(本実施形態では5秒毎)のバッテリ7の総消費電力量を示す総消費電力量情報(図5のI1)、各所定時間毎の(前記所定時間における)補機41,42,43のオン又はオフを示す稼働状態を示す補機情報(図5のI2)、及び、各所定時間における車両2の加速、減速、等速又は停止を示す走行状態を示す走行情報(図5のI3)を取得することができる。しかも、これら情報(I1,I2,I3)は、道路リンク毎に区分されたデータ群(図4参照)に基づくため、道路リンク毎に取得することができる。
【0053】
さらに、取得部22は、取得した走行情報に基づいて、図5に示すデータ群から、特定の走行状態における情報を抽出する。本実施形態では、停止状態における情報を抽出する。図6は、抽出した停止状態における情報(停止データ)の一部を示す説明図である。
【0054】
そして、処理部23は、抽出された所定の走行状態(本実施形態では、停止情報)における総消費電力量情報(I1)及び補機情報(I2)が示す値を、演算の変数として用い、補機41,42,43の稼働によるバッテリ7の消費電力量を演算により求める処理を行う。なお、図5及び図6に示すデータ群は、道路リンク毎に区分したものであるため、処理部23によって求められる補機41,42,43の消費電力量も、道路リンク毎に区分された情報となる。
【0055】
ここで、所定時間毎のバッテリ7の総消費電力量から、その所定時間毎の走行用モータ10による消費電力量を除いた値は、補機41,42,43の稼働による消費電力量となるが、車両2の走行状態が停止状態である場合、走行用モータ10による消費電力量はゼロであることから、処理部23は、その停止状態における総消費電力量情報(I1)が示す所定時間毎の総消費電力量を、その所定時間における補機の稼働によるバッテリの消費電力量として求めることができる。
【0056】
この処理部23による処理についてさらに説明する。
プローブ情報に含まれている補機情報(I2)は、そのプローブ情報の生成時における補機41,42,43のオン又はオフ(稼働状態)を示す情報であることから、処理部23は、この補機情報(I2)に基づいて、プローブ情報の生成時に補機41,42,43それぞれが稼働しているか否かを判定することができる。
【0057】
そこで、処理部23は、総消費電力量情報(I1)が示す総消費電力量と、補機情報(I2)に基づいて稼働していると判定された補機41,42,43の消費電力量の合計との関係による演算処理を行うことにより、補機41,42,43それぞれの稼働によるバッテリ7の消費電力量を求める処理を行う。なお、ここで求める消費電力量は、補機毎に消費される個別消費電力量である。
【0058】
すなわち、処理部23は、演算処理として、総消費電力量情報(I1)が示す所定時間毎の値、及び、補機情報(I2)が示す所定時間毎の値を、次の式(2)に適用した演算を行う。
【数2】
【0059】
なお、式(2)の定数Kは、走行状態が等速走行状態である場合、ゼロよりも大きい一定値であるが、走行状態が停止状態である場合、ゼロである。
つまり、本実施形態では、走行状態が停止状態であるため、前記式(2)は次の式(3)となる。
【数3】
【0060】
本実施形態では、対象とする補機が3台であるため、前記式(3)は次の式(4)となる。
[数4]
P=p1×X1+p2×X2+p3×X3 ・・・(4)
【0061】
図6に示す停止データ(一部)を、この式(4)に適用すると、以下のようになる。
0.015(kWh)=p1×1+p2×0+p3×0
=p1 ・・・(5)
0.023(kWh)=p1×1+p2×0+p3×1
=p1+p3 ・・・(6)
0.033(kWh)=p1×1+p2×1+p3×1
=p1+p2+p3 ・・・(7)
【0062】
このように、図6に示す停止データを、前記式(4)に適用することで、処理部23は、複数台の補機41,42,43が稼働することによるバッテリ7の消費電力量(個別消費電力量)p1,p2,p3をそれぞれ演算により求めることができる。
【0063】
なお、図6において、例えば、補機41(ID1)がオン、補機42(ID2)がオフ、補機43(ID3)がオンである場合、総消費電力量情報I1の示す値が「0.023」の場合と「0.022」の場合とがある。これらは車両2における測定誤差により当然発生するものである。このように、補機41,42,43の稼働状態が同じであるが、総消費電力量情報I1の示す値が異なる場合、これら値の平均値を総消費電力量情報I1の示す値として採用してもよい。
【0064】
そして、処理部23は、演算により取得した補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量(個別消費電力量)p1,p2,p3に基づいて、図4に示すデータ群を、図7に示すデータ群に変換する処理を行う。つまり、総消費電力量情報I1が示すバッテリ7の総消費電力量を、走行用モータ10により消費された電力量と、補機41,42,43により消費された電力量とに区分したデータ群へと変換する。図7では、走行用モータ10により消費された電力量を「走行」の項目に、補機41,42,43により消費された電力量(個別消費電力量)p1,p2,p3を、それぞれの補機ID「ID1」「ID2」「ID3」の項目に設定する。
【0065】
また、例えば、等速走行状態(速度が一定である状態)における補機41,42,43の稼働状態が、停止状態における補機41,42,43の稼働状態と同じであれば、等速走行状態における走行用モータ10の消費電力量は、次の式によって求めることが可能である。
(等速走行状態における走行用モータ10の消費電力量)
=(総消費電力量)−(停止状態における補機の個別消費電力量)
【0066】
このように、停止状態における補機41,42,43の個別消費電力量を用いることにより、補機41,42,43の稼働状態が停止状態と同じである各走行状態についても、走行用モータ10の消費電力量を算出することができ、図4に示すデータ群を、図7に示すデータ群に変換する処理を行うことができる。
【0067】
以上のように本実施形態に係る消費電力量推定部21によれば、所定時間毎のバッテリ7の総消費電力量を示す総消費電力量情報、この所定時間における補機41,42,43の稼働状態を示す補機情報、及び、この所定時間における電気自動車である車両2の走行状態を示す走行情報を取得すると、これら情報を用いて、補機41,42,43の稼働によるバッテリ7の消費電力量を演算により求めることができる。
このため、補機41,42,43毎に計測器を設置しなくても、補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量を取得することが可能となる。
【0068】
以上より、データベース50には、各道路リンク(リンクIDが「X」)を走行する際に走行用モータ10により消費される電力量の値が蓄積され、また、この道路リンクを走行する際に補機41,42,43それぞれにより消費される電力量の値が蓄積されたデータ群が構成される。そして、このようなデータ群がすべての道路リンクに関して構成され、これらがデータベース50に蓄積される。
【0069】
〔2.4 経路探索部20について(その2)〕
経路探索部20は、前記のとおり、電気自動車から取得されたバッテリ7の情報を用い、そして、前記データベース50を参照することにより、道路リンク毎の情報を用いた経路探索を行う。例えば、経路探索部20は、電気自動車から取得されたバッテリ7の情報を用い、そして、前記データベース50を参照することにより、走行用モータ10及び補機41,42,43によって消費される電力量を考慮しながら、この電気自動車のための経路探索を行う。
【0070】
例えば、経路探索部20は、データベース50を参照することにより、補機41,42,43それぞれが所定時間(5秒間)で消費する道路リンク毎の電力量を取得することができるため、これら補機41,42,43の全部又はいずれかを作動させた場合にバッテリ7から消費される道路リンク毎の電力量を求めることができる。このため、電気自動車が、これら補機41,42,43の全部又はいずれかを稼働させた状態で目的地まで到達するまでに、その補機の稼働により消費される総電力量を求めることができる。これにより、経路探索の結果、全ての補機41,42,43を稼働させた場合、バッテリ7の充電率が所定の値(例えば、充電率で20%以下)よりも小さくなることから、到達できない地点であっても、全ての補機41,42,43を非稼働させると、バッテリ7の充電率が所定の値(例えば、充電率で20%以下)よりも大きくなることから、その地点に到達することができる等の判定を行うことが可能となる。
【0071】
そして、経路探索部20は、経路探索の処理により推奨する経路を決定すると、その経路の情報を、通信装置16(図1参照)から路側通信装置4を通じて、車載装置3へ送信する。車載装置3は、この経路の情報を、入出力部3a(タッチパネル)に出力し、ドライバに推奨経路の情報を表示する。
【0072】
〔2.5 その他について〕
本実施形態では、図7に示すように、処理部23は、演算により求められた補機41,42,43の稼働によるバッテリ7の消費電力量を、電気自動車の車種毎に区分して取得している。例えば、図7のデータ群に示すように、所定時間毎の各情報は、電気自動車の車種別(車種コード別)に並べられている。車両IDが「3」と「1」の電気自動車は、車種が同じ(車種コードが「1」)であるが、車両IDが「5」の電気自動車は、車種が異なる(車種コードが「12」)。このように、データ群は、電気自動車の車種別に並べられている。
【0073】
これは、同じ種類の補機であっても(例えば同じエアコンであっても)、車種が異なれば消費電力量が異なるためである。そこで、処理部23は、走行用モータ10及び補機41,42,43によるバッテリ7の消費電力量の情報を、電気自動車の車種別に並べ、データ群を構成する。このため、経路探索部20は、電気自動車の経路探索を行う際に、その電気自動車の車種コードに応じて、データベース50中において使用する情報を選択する。
【0074】
また、本実施形態に係る経路探索システム(サーバ装置5)では、消費電力量推定部21の取得部22は、例えば図4に示すように、車両IDが異なる複数の電気自動車が送信したプローブ情報から、総消費電力量情報(I1)、補機情報(I2)及び走行情報(I3)を取得する。
【0075】
したがって、サーバ装置5は、車両IDが異なる複数の電気自動車から送信された多くのプローブ情報を収集することができる。このため、補機41,42,43の稼働によるバッテリ7の消費電力量を求めるために、これら多くのプローブ情報から取得した多くの情報を用いることが可能となる。
そして、ある電気自動車(例えば車両IDが「3」)が送信したプローブ情報に基づいて、消費電力量推定部21が、補機41,42,43の稼働によるバッテリの消費電力量を求め、データベース50が構成された場合であっても、この求めた結果を用いたサービスを、他の電気自動車(例えば車両IDが「1」)にも提供することが可能となる。
つまり、他の電気自動車(車両IDが「1」)は、電気自動車(車両IDが「3」)が送信したプローブ情報に基づいて求められた結果を用いたサービスを受けることが可能となり、また、電気自動車(車両IDが「3」)は、他の電気自動車(車両IDが「1」)が送信したプローブ情報に基づいて求められた結果を用いたサービスを受けることが可能となる。
【0076】
なお、前記実施形態では、一つの補機に一つの補機IDを付与する場合について説明したが、補機の種類によっては、その使用態様の相違により一つの補機を異なる補機としてみなし、一つの補機に複数の補機IDを付与するのが好ましい場合がある。
例えば、エアコンは、冷房と暖房との双方に用いられるが、一般的に冷房と暖房とで消費電力が異なる。電気自動車では、エアコンを冷房機として用いる場合よりも、暖房機として用いる場合の方が消費電力は大きくなる。そこで、冷房機として機能するエアコンに一つの補機IDを与え、暖房機として機能するエアコンに他の補機IDを付与する。そして、車載装置3はエアコンの使用態様に応じて補機情報を生成する。
【0077】
また、本実施形態では、経路探索システムは、サーバ装置5に設けられている場合について説明したが、その機能を一部又は全部を電気自動車である車両2側(車載装置3)に設けてもよい。
つまり、前記実施形態では、消費電力量推定部21を、サーバ装置5が備えている場合について説明したが、電気自動車(車載装置3)が備えていてもよい。また、経路探索部20についても、サーバ装置5ではなく、電気自動車(車載装置3)が備えていてもよい。
しかし、経路探索部20が経路探索を行うためには、道路リンクのリンクコストの情報、道路地図の情報、各道路リンクの勾配等を示す情報等を用いるが、リンクコストの情報は、更新される可能性があり、また、道路地図の情報、各道路リンクの勾配等を示す情報は、非常に情報量が多くなる。このため、本実施形態のように経路探索部20は、サーバ装置5が備えているのが好ましい。そして、これに伴って、この経路探索部20が用いる消費電力情報用のデータベース50を生成するための消費電力量推定部21も、サーバ装置5が備えているのが好ましい。
【0078】
また、前記実施形態では、推定部21による補機41,42,43の消費電力量を求めるために、電気自動車の走行状態が停止状態である場合の情報を用いる例を説明した。しかし、用いる情報は、他の走行状態における情報であってもよい。例えば、電気自動車の走行状態が等速走行状態である場合、走行用モータ10による消費電力量はほぼ定数(一定値)であると考えられる。このため、等速走行状態における総消費電力量情報が示す所定時間毎の総消費電力量は、前記定数と、その所定時間における補機の稼働によるバッテリの消費電力量との和となることから、補機の稼働によるバッテリの消費電力量を演算により求めることができる。なお、この場合、等速走行状態における走行用モータ10による消費電力量についての情報(速度分布毎の定数)を、推定部21が取得している必要がある。
【0079】
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0080】
2:車両(電気自動車) 3:車載装置 7:バッテリ
10:走行用モータ 15:記憶装置(記憶部) 20:経路探索部
21:消費電力量推定部(消費電力量推定装置) 22:取得部 23:処理部
41,42,43:補機 50:消費電力情報用のデータベース
I1:総消費電力量情報 I2:補機情報 I3:走行情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7