特許第6105299号(P6105299)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本触媒の特許一覧

特許6105299有機電界発光素子用組成物、及び、有機電界発光素子
<>
  • 特許6105299-有機電界発光素子用組成物、及び、有機電界発光素子 図000011
  • 特許6105299-有機電界発光素子用組成物、及び、有機電界発光素子 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105299
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】有機電界発光素子用組成物、及び、有機電界発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20170316BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20170316BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 5/53 20060101ALI20170316BHJP
   C08K 5/34 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 A
   C08L71/02
   C08L79/00 Z
   C08K5/53
   C08K5/34
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-12643(P2013-12643)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-146628(P2014-146628A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有元 洋一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宗弘
(72)【発明者】
【氏名】郷田 隼
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−510471(JP,A)
【文献】 特表2008−525609(JP,A)
【文献】 特開2006−225658(JP,A)
【文献】 米国特許第06611096(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、基板上に形成された陽極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子の水又は低級アルコール系溶媒に溶解しない化合物により形成された層上の層の形成に用いられる組成物であって、
該組成物は、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを含み、
該π電子共役系化合物は、下記一般式(1)、(2)又は(3);
【化1】
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、又は、ヘテロアリールオキシ基を表す。Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。nは、リン原子に結合したベンゼン環の数を表し、1〜3の整数である。)
【化2】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。Rで表される1価の有機基が複数ある場合には、当該複数の有機基の一部又は全部が結合して、Nを含有する芳香族複素環の一部とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。当該複数の有機基の一部が結合して芳香環又は芳香族複素環を形成している場合は、残りの有機基は、当該複数の有機基の一部から形成された芳香環又は芳香族複素環に結合していてもよいし、Nを含有する芳香族複素環に結合していてもよい。mは、Nを含有する芳香族複素環に結合するRの数を表し、1〜3の整数である。)
【化3】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。X、Xは、同一又は異なって、炭素原子、窒素原子又は酸素原子を表す。XとRが結合した炭素原子とを繋ぐ結合部分、及び、XとRが結合した炭素原子とを繋ぐ結合部分における点線部分は、X又はXと炭素原子とが二重結合で結ばれていてもよいことを表す。)
で表される化合物のいずれかであることを特徴とする有機電界発光素子用組成物。
【請求項2】
前記有機電界発光素子用組成物は、陰極と陽極との間の複数の層のうち少なくとも1つの層が塗布により形成される有機電界発光素子に用いられることを特徴とする請求項1に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項3】
前記重合体は、炭素数2〜4のアルキレンオキシドにより形成されたポリアルキレンオキシド構造及び/又は炭素数2〜4のアルキレンイミンにより形成されたポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の有機電界発光素子用組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の有機電界発光素子用組成物を用いて形成されることを特徴とする有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用組成物、及び、有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は面発光する自発光型の素子であり、照明装置として用いた場合には現在主流となっている白熱灯や蛍光灯に比べ、低消費電力化が可能となり、省エネルギーに寄与できる次世代照明としての利用が期待されている素子である。さらに、素子自体が非常に薄く、軽く、柔軟でフレキシブルであるという特徴を有し、天井全体や曲面に設置するなど、従来困難であった場所での使用方法についても検討され、デザイン性にも優れた照明装置として実用化が期待されている。
【0003】
有機電界発光素子は陽極と陰極との間に発光性有機化合物を含んで形成される発光層を含む1種または複数種の層を挟んだ構造を持ち、陽極から注入されたホールと陰極から注入された電子が、再結合する時のエネルギーを利用して発光性有機化合物を励起させ、発光を得るものである。最も基礎的な構造の有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に発光層を挟んだ構造をしているが、さらに低駆動電圧化や長寿命化等の性能向上を図るために、必要に応じて正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、インターレイヤー層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層を設ける場合があり、さらに電荷発生層を介して2つ以上の有機電界発光素子構造を重ねて作りこんだマルチフォトンエミッション方式の有機電界発光素子も提案されている。
【0004】
有機化合物層を形成する成膜方法には、蒸着と塗布の2種類がある。現在、製品化されている有機電界発光素子の多くは、有機化合物層が蒸着により成膜されている。蒸着は容易に多層化が可能なため、層によって機能分離を図り、高効率化、長寿命化が達成されている。その一方で、蒸着によって有機電界発光素子を作製するためには複数の有機化合物を連続的に蒸着する為の大掛かりな製造装置が必要となり、莫大な初期投資が必要になると考えられている。
他方、塗布による成膜は、大掛かりな製造装置を必要とせず、ロール・トゥー・ロールによる製造が可能であるなど、製造コストや処理時間の観点から大画面化に有利とされるが、インク溶媒の種類によっては上層塗布時に下層が溶解するという問題があり、低駆動電圧化や長寿命化等のための多層化が困難であるという問題点があった。一つの例としては、基板上に形成された陽極上に有機化合物層と陰極とが積層された順構造の有機電界発光素子の場合、発光層の上に有機溶媒を含む溶液を塗布して電子輸送層や電子注入層を形成しようとすると発光層が溶解してしまうため、発光層の上に有機溶媒を含む溶液の塗布により層を形成することは困難であった。
非常に一般的な塗布型有機電界発光素子の作製方法として、例えば、基板上に形成されたITO(インジウム酸化錫)からなる陽極上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)からなる正孔注入/正孔輸送層(バッファ層)を水分散液からの塗布で形成し、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)からなるインターレイヤー層をトルエン溶液からの塗布で形成した後、加熱による(架橋反応等に由来すると考えられる)不溶化処理を施し、さらに、ポリ(ジオクチルフルオレン)等からなる発光層をトルエン溶液からの塗布で形成した後、陰極としてフッ化リチウム(LiF)/カルシウム(Ca)/アルミニウム(Al)を真空蒸着にて製膜する方法が挙げられる(非特許文献1)。
このように、発光層を形成する有機化合物層はトルエンやキシレンといった非極性溶媒に可溶な化合物を利用することが多いため、発光層と陰極の間に有機化合物層塗布製膜することは非常に例が少なかった。
【0005】
このような中、発光層と陰極の間に、有機化合物含有溶液を塗布することにより層を形成した有機電界発光素子としていくつか提案されており、その中に、ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールからなる層を形成した有機電界発光素子が報告されている(非特許文献2及び3参照)。ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールは、水又は低級アルコール系溶媒にも溶解が可能であるため、ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールを水又は低級アルコール系溶媒に溶解させたものを用いて層を形成すれば、水又は低級アルコール系溶媒に溶解しない化合物により形成された層(例えば発光層)の上に塗布により層を形成することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stelios A. Choulis et al.,Advanced Functional Materials,Vol.16,1075(2006)
【非特許文献2】Yinhua Zhuo et al.,Science,Vol.336,327(2012)
【非特許文献3】Tzung−Fang Guo et al.,Applied Physics Letters,Vol.87,013504(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、有機電界発光素子を構成する層の材料として、ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールを用いることが提案されており、これらを用いれば、水又は低級アルコール系溶媒に溶解しない化合物により形成された層を溶解させることなく、その上に塗布により層を形成することは可能である。しかしながら、ポリエチレンイミン又はポリエチレングリコールを用いて塗布により層を形成した場合、以下のような課題があった。すなわち、一般的に、有機化合物層の膜厚を薄くしようとすると、再現性、均一性が得られにくくなることから、膜厚は厚い方が好ましいとされている。しかしながら、ポリエチレンイミン及びポリエチレングリコールは絶縁体であるため、膜厚を厚くすると抵抗が大きくなり、有機電界発光素子の駆動電圧が上昇するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、有機化合物層を形成する際に下層を溶解することなく塗布が可能であり、かつ、有機電界発光素子の駆動電圧の上昇を抑えることが可能な有機電界発光素子用組成物、及び、該有機電界発光素子用組成物を用いて形成される有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、下層を溶解させずに、塗布により有機化合物層を形成することができ、かつ、得られる有機電界発光素子の駆動電圧の上昇も抑えることができる方法について種々検討したところ、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを含む組成物を有機電界発光素子の層を形成する材料とすると、塗布により層を形成する際に下層を溶解することなく層形成が可能であって、かつ、得られる有機電界発光素子の駆動電圧の上昇を抑えることが可能となることを見出し、本発明に到達したものである。
【0010】
すなわち本発明は、陰極と、基板上に形成された陽極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子の形成に用いられる組成物であって、上記組成物は、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを含むことを特徴とする有機電界発光素子用組成物である。
本発明はまた、上記有機電界発光素子用組成物を用いて形成される有機電界発光素子でもある。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを含むものである。ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体に、導電性の高いπ電子共役系化合物を加えることで、本発明の有機電界発光素子用組成物から形成される層の導電性を向上させることができる。その結果、有機化合物層の膜厚を厚くした場合であっても、有機電界発光素子の駆動電圧の上昇を抑えることができる。
本発明の有機電界発光素子用組成物は、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物をそれぞれ1種含むものであってもよく、2種以上含むものであってもよい。また、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを含むものである限り、その他の成分を含んでいてもよい。
【0012】
上記ポリアルキレンオキシド構造を主鎖骨格に有する重合体のポリアルキレンオキシド構造は、炭素数2〜4のアルキレンオキシドにより形成された構造であることが好ましい。このような炭素数のアルキレンオキシドにより形成された構造の重合体は、水又は低級アルコールに溶けやすく、かつ安価に入手可能である。より好ましくは、炭素数2又は3のアルキレンオキシドにより形成された構造である。
上記ポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体のポリアルキレンイミン構造は、炭素数2〜4のアルキレンイミンにより形成された構造であることが好ましい。このような炭素数のアルキレンイミンにより形成された構造の重合体は、水又は低級アルコールに溶けやすく、かつ安価に入手可能である。より好ましくは、炭素数2又は3のアルキレンイミンにより形成された構造である。
【0013】
上記ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、主鎖骨格にポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を有するものであればよく、主鎖骨格にポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する共重合体であってもよい。
【0014】
上記ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体がポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造以外の構造を有する場合、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造以外の構造の原料となる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、アクリル酸、スチレン、又は、ビニルカルバゾール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。また、これらの単量体の炭素原子に結合した水素原子が他の有機基に置換された構造のものも好適に用いることができる。水素原子と置換する他の有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基等が挙げられる。
【0015】
上記ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、重合体の主鎖骨格を形成する単量体成分100質量%のうち、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、50質量%以上であり、更に好ましくは、80質量%以上である。最も好ましくは、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を形成する単量体が100質量%であること、すなわち、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体がポリアルキレンオキシド及び/又はポリアルキレンイミンのホモポリマーであることである。
【0016】
上記ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、重量平均分子量が100〜80,000であることが好ましい。より好ましくは、200〜20,000であり、更に好ましくは、500〜10,000である。
重量平均分子量は、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:Waters Alliance(2695)(商品名、Waters社製)
分子量カラム:TSKguard column α、TSKgel α−3000、TSKgel α−4000、TSKgel α−5000(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:100mMホウ酸水溶液14304gに50mM水酸化ナトリウム水溶液96gとアセトニトリル3600gを混合した溶媒
検量線用標準物質:ポリエチレングリコール(東ソー社製)
測定方法:測定対象物を固形分が約0.2質量%となるように溶離液に溶解し、フィルターにてろ過した物を測定サンプルとして分子量を測定する。
【0017】
上記π電子共役系化合物の例としては、水または低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物であれば特に限定されないが、ベンゼン環、ピリジン環、イミダゾール環、チオフェン環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、又は、チアジアゾール環等や、これらがさらに縮環したπ共役系ユニットを含む低分子化合物、又は、高分子化合物が好ましい。
具体的には、上記π電子共役系化合物は、下記一般式(1)、(2)又は(3);
【0018】
【化1】
【0019】
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有していてもよいアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、又は、ヘテロアリールオキシ基を表す。Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。nは、リン原子に結合したベンゼン環の数を表し、1〜3の整数である。)
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。Rで表される1価の有機基が複数ある場合には、当該複数の有機基の一部又は全部が結合して、Nを含有する芳香族複素環の一部とともに芳香環又は芳香族複素環を形成していてもよい。当該複数の有機基の一部が結合して芳香環又は芳香族複素環を形成している場合は、残りの有機基は、当該複数の有機基の一部から形成された芳香環又は芳香族複素環に結合していてもよいし、Nを含有する芳香族複素環に結合していてもよい。mは、Nを含有する芳香族複素環に結合するRの数を表し、1〜3の整数である。)
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表す。X、Xは、同一又は異なって、炭素原子、窒素原子又は酸素原子を表す。XとRが結合した炭素原子とを繋ぐ結合部分、及び、XとRが結合した炭素原子とを繋ぐ結合部分における点線部分は、X又はXと炭素原子とが二重結合で結ばれていてもよいことを表す。)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
【0024】
上記一般式(1)におけるRが1価の有機基の場合、1価の有機基としては、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコシキ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、フルオロ基、クロロ基等が挙げられる。炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基のいずれかが好ましい。
上記一般式(1)のRにおけるアリール基、アリールオキシ基、ヘテロアリール基、又は、ヘテロアリールオキシ基が置換基を有するものである場合、置換基としては、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコシキ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、フルオロ基、クロロ基が挙げられる。
【0025】
上記一般式(2)において、Rが1価の有機基であって、芳香環や芳香族複素環を形成しない場合、1価の有機基としては、炭素数1〜6の炭化水素基、炭素数1〜6のアルコシキ基、ヒドロキシル基、アミノ基、シアノ基、フルオロ基、クロロ基等が挙げられる。炭化水素基としては、一般式(1)におけるRが炭化水素基である場合と同様のものが好ましい。
で表される1価の有機基が複数あって、当該複数の有機基の一部又は全部が結合して、Nを含有する芳香族複素環の一部とともに芳香環又は芳香族複素環を形成している場合、当該芳香環又は芳香族複素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、等の芳香環;ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環等の複素環が挙げられる。これらの中でも、ベンゼン環、ナフタレン環、又は、キノリン環が好ましい。
すなわち、上記一般式(2)で表される構造のうち、Rで表される1価の有機基が複数あって、当該複数の有機基が結合して、Nを含有する芳香族複素環の一部とともに芳香環又は芳香族複素環を形成している場合の好ましい構造は、下記一般式(2−1)〜(2―3)のいずれかの構造である。
【0026】
【化4】
【0027】
(式中、Rは、一般式(2)と同様である。m及びmは、同一又は異なって、環構造に結合するRの数を表し、0〜2の整数である。)
【0028】
【化5】
【0029】
(式中、Rは、一般式(2)と同様である。m、m及びmは、同一又は異なって、環構造に結合するRの数を表し、0〜2の整数である。)
【0030】
【化6】
【0031】
(式中、Rは、一般式(2)と同様である。m、m及びmは、同一又は異なって、環構造に結合するRの数を表し、0〜2の整数である。)
【0032】
上記一般式(3)において、X、Xは、同一又は異なって、炭素原子、窒素原子又は酸素原子を表すが、X、Xがいずれも窒素原子であるか、Xが炭素原子であり、Xが酸素原子であるか、Xが酸素原子であり、Xが炭素原子であるか、Xが酸素原子であり、Xが窒素原子であることが好ましい。X、Xがいずれも窒素原子である場合、R、Rが結合した5員環は、トリアゾール環になり、Xが炭素原子であり、Xが酸素原子である場合には、R、Rが結合した5員環は、イソオキサゾール環であり、Xが酸素原子であり、Xが炭素原子である場合にはオキサゾール環であり、Xが酸素原子であり、Xが窒素原子である場合はオキサジアゾール環になる。
及びRは、同一又は異なって、水素原子又は1価の有機基を表すが、1価の有機基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、アミノ基等が挙げられる。Rは、炭素数1〜6のアルキル基、アミノ基又は炭素数1〜6のアルキルアミノ基であることが好ましい。Rは、水素原子又はアミノ基であることが好ましい。
【0033】
上記一般式(1)で表されるπ電子共役系化合物としては、ジフェニルホスフィンオキシド、ジフェニルメチルホスフィンオキシド又はトリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド化合物が好ましい。
上記一般式(2)で表されるπ電子共役系化合物としては、ジメチルピリジン、アミノピリジン若しくはシアノピリジン等のピリジン化合物、アミノキノリン、ベンゾキノリン若しくはフェナントロリン等のピリジン縮環化合物、又は、ポリ(ビニルピリジン)等の高分子化合物が好ましい。
上記一般式(3)で表されるπ電子共役系化合物としては、アミノメチルイソオキサゾール又はジアミノトリアゾール等の複素環化合物が好ましい。
より好ましくは、トリフェニルホスフィンオキシド、3−シアノピリジン、4−シアノピリジン、1,10−フェナントロリン、又は、ポリ(4−ビニルピリジン)であり、更に好ましくはトリフェニルホスフィンオキシド、又は、ポリ(4−ビニルピリジン)である。
【0034】
本発明の有機電界発光素子用組成物におけるポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体や水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物の好ましい濃度は、有機電界発光素子用組成物を塗布して層を形成する際の塗布方法や条件によって異なるが、本発明の有機電界発光素子用組成物100質量%中における、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体の濃度は、0.1〜10質量%であることが好ましい。
また、本発明の有機電界発光素子用組成物100質量%中における、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物の濃度は、0.02〜2質量%であることが好ましい。
また本発明の有機電界発光素子用組成物は、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを上記それぞれの好ましい割合で含むことが好ましい。このような好ましい割合の中で、塗布方法や条件に合わせて更に濃度を適宜設定すればよい。
なお、ここでいう有機電界発光素子用組成物とは、組成物中の固形分の他、溶媒も含む組成物全体を意味する。
【0035】
上記ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体は、水又は低級アルコールに可溶である。また、上記π電子共役系化合物としては、水又は低級アルコールに可溶なものが用いられている。これにより、本発明の有機電界発光素子用組成物が含む溶媒としては、水又は低級アルコールを用いることができる。
本発明の有機電界発光素子用組成物が含む溶媒として水又は低級アルコールを用いれば、水又は低級アルコールに溶解しない化合物により形成された層を溶解させることなく、その上に塗布により層を形成することが可能である。
上記低級アルコールとしては特に限定されず、炭素数1〜8のアルコールが好ましく、より好ましくは、炭素数1〜3のアルコールである。
低級アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、又は、2−プロパノールを好適に用いることができ、これらの中でも、メタノール、又は、エタノールがより好ましい。
【0036】
上記溶媒の量は、本発明の有機電界発光素子用組成物中のポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体や水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物の濃度が、組成物の塗布方法や条件に合わせた適切な濃度になるよう適宜設定すればよい。
【0037】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、陰極と、基板上に形成された陽極との間に複数の層が積層された構造を有する有機電界発光素子の形成に用いられる。
以下、有機電界発光素子について詳述する。
このような、本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて形成されることを特徴とする有機電界発光素子もまた、本発明の1つである。
【0038】
本発明の有機電界発光素子は、陰極と、基板上に形成された陽極との間に複数の層が積層された順構造の素子であり、陰極と陽極との間に積層された各層は、主として有機化合物、又は、有機金属化合物で形成される。
陰極と陽極との間に積層された層のうち、1層は発光層であり、陰極と発光層との間に電子注入層と、必要に応じて電子輸送層とを有し、陽極と発光層との間に正孔輸送層及び/又は正孔注入層を有する構成の素子であることが好ましい。また本発明の有機電界発光素子は、これらの各層の間に他の層を有していてもよいが、これらの各層のみから構成される素子であることが好ましい。すなわち、基板上に陽極、正孔注入層及び/又は正孔輸送層、発光層、必要に応じて電子輸送層、電子注入層、陰極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
上記構成の有機電界素子において、素子が電子輸送層を有さない場合は、電子注入層と発光層とが隣接することになる。また、素子が正孔輸送層、正孔注入層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層と陽極とに隣接して積層されることになり、素子が正孔輸送層と正孔注入層の両方を有する場合には、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。
【0039】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、電子注入層を形成するために用いられることが好ましい。本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて電子注入層を形成すると、有機溶媒に溶解した材料を塗布して発光層又は電子輸送層を形成した場合でも、下層の発光層又は電子輸送層を溶解することなく電子輸送層をその上に塗布して形成することが可能になる。
【0040】
本発明の有機電界発光素子用組成物を用いた電子注入層の平均厚さは、1〜30nmであることが好ましい。より好ましくは、1〜10nmである。
電子注入層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0041】
本発明の有機電界発光素子用組成物は、電子輸送層として用いることも本発明の好ましい実施形態の一つである。本発明の本発明の有機電界発光素子用組成物を用いて電子輸送層を形成する場合は、別途電子注入層を設けることになる。別途電子注入層として使用可能な化合物としては、フッ化リチウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム、又は、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0042】
本発明の有機電界発光素子において、発光層を形成する材料としては、発光層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いるができ、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0043】
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ−フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキルフェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ−フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(RO−PPV)、シアノ−置換−ポリ(パラ−フェンビニレン)(CN−PPV)、ポリ(2−ジメチルオクチルシリル−パラ−フェニレンビニレン)(DMOS−PPV)、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω−ビス[N,N’−ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]−ポリ[9,9−ビス(2−エチルヘキシル)フルオレン−2,7−ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニル−オルト−コ(アントラセン−9,10−ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレン)(RO−PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010−230995号、特願2011−6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0044】
上記発光層を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq)、8−ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq)、(1,10−フェナントロリン)−トリス−(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6−ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’−ビス(2,5−ジ−t−ブチルフェニル)−3,4,9,10−ペリレン−ジ−カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4−(ジ−シアノメチレン)−2−メチル−6−(パラ−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5−ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’−(パラ−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5−ペンタフェニル−1,3−シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’−テトラフェニル−9,9’−スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(HPc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009−155325号公報、特開2011−184430号公報および特願2011−6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。
【0045】
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜100nmである。
発光層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。発光層を真空蒸着法で形成する場合は水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0046】
本発明の有機電界発光素子は、発光層の上に電子注入層が直接形成されていることが好ましいが、発光層と電子注入層との間に電子輸送層が形成されていてもよい。電子輸送層が形成されている場合、その材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いるができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層の材料として用いることができる化合物の例としては、トリス−1,3,5−(3’−(ピリジン−3’’−イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2−(3−(9−カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2−フェニル−4,6−ビス(3,5−ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4−ビス(4−ビフェニル)−6−(4’−(2−ピリジニル)−4−ビフェニル)−[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’−(1,3,5−ベントリイル)−トリス(1−フェニル−1−H−ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ))、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5−ビス(6’−(2’,2’’−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、Alqのような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
【0047】
本発明の有機電界発光素子が、正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層として用いる正孔輸送性有機材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0048】
上記p型の低分子材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物;4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物;N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物;カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物;スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物;OZのようなオキサゾール系化合物;トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物;1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物;ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物;イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物;フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物;ポリアニリンのようなアニリン系化合物;シラン系化合物;1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物;フローレンのようなフローレン系化合物;ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物;キナクリドンのようなキナクリドン系化合物;フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物;N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0049】
本発明の有機電界発光素子が、電子輸送層や正孔輸送層を有する場合、これらの層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは、20〜100nmである。
電子輸送層や正孔輸送層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。各層を真空蒸着法で形成する場合は水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0050】
本発明の有機電界発光素子が、正孔注入層を有する場合、その材料としては、正孔注入層の材料として通常用いることができるいずれの有機化合物も用いるができ、これらを混合して用いてもよい。
正孔注入層の材料として用いることができる有機化合物の例としては、上記正孔輸送層の材料として挙げた化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
本発明の有機電界発光素子において、基板上に形成された陽極としては、ITO(インジウム酸化錫)、IZO(インジウム酸化亜鉛)、FTO(フッ素酸化錫)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物等が挙げられる。この中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
【0052】
上記陽極の平均厚さは、特に制限されないが、10〜500nmであることが好ましい。より好ましくは、100〜200nmである。陽極の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
【0053】
本発明の有機電界発光素子において、陰極としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Li、Al、Au、又は、これらを含む合金等が挙げられる。この中でも、Mg、Ca、又は、Alが好ましい。
【0054】
上記陰極の平均厚さは、特に限定されないが、10〜1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30〜150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10〜30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陰極として使用することができる。
陰極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0055】
本発明の有機電界発光素子は、陰極と陽極との間の複数の層のうち少なくとも隣り合う2つの層が塗布により形成されることが好ましく、発光層の上に電子注入層が直接形成されている場合に発光層及び電子注入層が塗布により形成されることがより好ましい。
塗布による成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法又はスリットコート法が好ましい。
【0056】
上記有機化合物層を、有機化合物溶液を塗布して形成する場合、本発明の有機電界発光素子用組成物を塗布してなる層以外の有機化合物層を塗布製膜するための溶媒としては、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0057】
本発明の有機電界発光素子は、封止することが好ましい。封止工程としては、通常の方法を適宜使用できる。例えば、不活性ガス中で封止容器を接着する方法や、有機電界発光素子の上に直接封止膜を形成する方法などが挙げられる。これらに加えて、水分吸収材を封入する方法を併用してもよい。
【0058】
本発明の有機電界発光素子は、基板上に有機電界発光素子を構成する各層が積層されたものであってもよい。基板上に各層が積層されたものである場合、基板上に形成された電極上に、各層が形成されたものであることが好ましい。この場合、本発明の有機電界発光素子は、基板がある側とは反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよく、基板がある側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
【0059】
上記基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
また、トップエミッション型の場合には、不透明基板も用いることができ、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等も用いることができる。
【0060】
上記基板の平均厚さは、0.1〜30mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10mmである。
基板の平均厚さはデジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
【0061】
本発明の有機電界発光素子は、有機化合物層の材料を適宜選択することによって発光色を変化させることができるし、カラーフィルター等を併用して所望の発光色を得ることもできる。そのため、表示装置の発光部位や照明装置として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の有機電界発光素子は、上述のような構成であるので、有機化合物層を形成する際に下層を溶解することなく塗布が可能であり、かつ、有機電界発光素子の駆動電圧の上昇を抑えることが可能である。このような本発明の有機電界発光素子用組成物は、照明装置や表示装置の発光部位等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、実施例1、比較例1及び参考例1で作製した有機電界発光素子の電圧−輝度特性を示すグラフである。
図2図2は、実施例2、比較例2及び参考例2で作製した有機電界発光素子の電圧−輝度特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0065】
<有機電界発光素子の作製>
実施例1
[1]市販されている平均厚さ0.7mmのITO電極層付き透明ガラス基板を用意した。この時、基板のITO電極(陽極)は幅2mmにパターニングされているものを用いた。この基板をアセトン中、イソプロパノール中でそれぞれ10分間超音波洗浄後、イソプロパノール中で5分間煮沸した。この基板をイソプロパノール中から取り出し、窒素ブローにより乾燥させ、UVオゾン洗浄を20分間行った。
[2]この基板をスピンコーターにセットし、市販のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)の水分散液を滴下し、毎分1,800回転で60秒間回転させ、さらに150℃のホットプレートで10分間乾燥させて、陽極上にPEDOT/PSSからなる正孔注入層を形成した。正孔注入層の平均厚さは60nmであった。正孔注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
[3]市販のポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)の0.2%キシレン溶液を作製した。上記工程[2]で作製した基板をスピンコーターにセットした。上記工程[2]で形成した正孔注入層の上にTFB−キシレン溶液を滴下し、毎分1000回転で30秒間回転させ、これをアルゴン雰囲気下200℃のホットプレートで60分間乾燥させ、さらに余剰なキシレンでリンスすることで余剰なTFBを除去して、正孔注入層の上にTFBからなるインターレイヤー層を形成した。インターレイヤー層の平均厚さは1nmであった。インターレイヤー層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
[4]市販のポリ(ジオクチルフルオレン−アルト−ベンゾチアジアゾール)(F8BT)の1%キシレン溶液を作製した。上記工程[3]で作製した基板をスピンコーターにセットした。上記工程[3]で形成したインターレイヤー層の上にF8BT−キシレン溶液を滴下し、毎分2,000回転で30秒間回転させ、インターレイヤー層の上にF8BTからなる発光層を形成した。発光層の平均厚さは40nmであった。発光層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
[5]市販の日本触媒社製ポリエチレンイミンSP−200とトリフェニルホスフィンオキシドの混合エタノール溶液を作製した。この時、トリフェニルホスフィンオキシドの濃度は0.5%、ポリエチレンイミンオキシドの濃度は1%とした。上記工程[4]で作製した基板をスピンコーターにセットした。上記工程[4]で形成した発光層の上にポリエチレンイミン−トリフェニルホスフィンオキシド混合エタノール溶液を滴下し、毎分2,000回転で30秒間回転させ、発光層の上に電子注入層を形成した。電子注入層の平均厚さは10nmであった。電子注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
[6]上記工程[5]で作製した基板を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。アルミニウムワイヤー(Al)をアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。真空蒸着装置内を約1×10−4Paまで減圧し、電子注入層の上にAl(陰極)を平均厚さが100nmとなるように蒸着し、有機電界発光素子(1)を作製した。陰極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定した。なお、陰極を蒸着する時、ステンレス製の蒸着マスクを用いて蒸着面が幅2mmの帯状になるようにした。すなわち、作製した有機電界発光素子の発光面積は4mmとした。
【0066】
実施例2
工程[5]において、ポリエチレンイミン(1%)−トリフェニルホスフィンオキシド(0.5%)混合エタノール溶液に代えて、ポリエチレングリコール(1%)−トリフェニルホスフィンオキシド(0.5%)混合エタノールを用いた以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子(2)を作製した。電子注入層の平均厚さは10nmであった。電子注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0067】
比較例1
工程[5]において、ポリエチレンイミン(1%)−トリフェニルホスフィンオキシド(0.5%)混合エタノール溶液に代えて、ポリエチレンイミン(1%)エタノール溶液を用いた以外は実施例1と同様にして、有機電界発光素子(比較1)を作製した。電子注入層の平均厚さは10nmであった。電子注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0068】
比較例2
工程[5]において、ポリエチレングリコール(1%)−トリフェニルホスフィンオキシド(0.5%)混合エタノール溶液に代えて、ポリエチレングリコール(1%)エタノール溶液を用いた以外は実施例2と同様にして、有機電界発光素子(比較2)を作製した。電子注入層の平均厚さは10nmであった。電子注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0069】
参考例1
工程[5]において、ポリエチレンイミン(1%)エタノール溶液に代えて、ポリエチレンイミン(0.1%)エタノール溶液を用いた以外は比較例1と同様にして、有機電界発光素子(参考1)を作製した。電子注入層の平均厚さは1nmであった。電子注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0070】
参考例2
工程[5]において、ポリエチレングリコール(1%)エタノール溶液に代えて、ポリエチレングリコール(0.1%)エタノール溶液を用いた以外は比較例2と同様にして、有機電界発光素子(参考2)を作製した。電子注入層の平均厚さは1nmであった。電子注入層の平均厚さは、触針式段差計により測定した。
【0071】
<有機電界発光素子の発光特性測定>
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。コニカミノルタ社製の「LS−100」により、発光輝度を測定した。
実施例1、比較例1、及び、参考例1で作製した有機電界発光素子(1)、(比較1)及び(参考1)を、アルゴン雰囲気下直流電圧を印加した時の電圧−輝度特性を図1に示す。
実施例2、比較例2、及び、参考例2で作製した有機電界発光素子(2)、(比較2)及び(参考2)を、アルゴン雰囲気下直流電圧を印加した時の電圧−輝度特性を図2に示す。
【0072】
図1から明らかなように、ポリエチレンイミンとトリフェニルホスフィンオキシドとを含む組成物を電子注入層に用いた実施例1では、トリフェニルホスフィンオキシドを含まない組成物を電子注入層に用いた比較例1に比べて、駆動電圧の上昇を抑えられることがわかった。また、実施例1では、トリフェニルホスフィンオキシドを含まない組成物を電子注入層に用い、かつ、電子注入層の膜厚を薄くした参考例1と同程度に、駆動電圧の上昇を抑えられることがわかった。
また、図2から明らかなように、ポリエチレングリコールとトリフェニルホスフィンオキシドとを含む組成物を電子注入層に用いた実施例2では、トリフェニルホスフィンオキシドを含まない組成物を電子注入層に用いた比較例2に比べて、駆動電圧の上昇を抑えられることがわかった。さらに、実施例2では、トリフェニルホスフィンオキシドを含まない組成物を電子注入層に用い、かつ、電子注入層の膜厚を薄くした参考例2に比べても、駆動電圧の上昇を抑えられることがわかった。
以上の結果から、ポリアルキレンオキシド構造及び/又はポリアルキレンイミン構造を主鎖骨格に有する重合体と、水又は低級アルコールに可溶なπ電子共役系化合物とを含む本発明の組成物を電子注入層に用いた有機電界発光素子では、電子注入層の膜厚が厚くても、駆動電圧の上昇が抑えられることがわかった。
図1
図2