【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日:平成24年8月20日 販売した場所:栃木県茂木町立学校給食センター(栃木県芳賀郡茂木町大字茂木7−2−1) 公開者:タニコー株式会社 販売した物の内容:タニコー株式会社が茂木町立学校給食センターに対して、國井和明及び林崎陽幸によりなされた発明を適用した搬送装置を販売した。 (2)展示日:平成24年9月19日〜20日 展示会名、開催場所:フードシステムソリューション2012東京ビッグサイト東ホール タニコーブース内 公開者:タニコー株式会社 出品の内容:タニコー株式会社が、フードシステムソリューション2012において、國井和明及び林崎陽幸によりなされた発明を適用した搬送装置を公開した。 (3)販売日:平成24年12月17日 販売した場所:千葉県八千代市学校給食センター(千葉県八千代市八千代都市計画事業西八千代北特定土地区画整理事業地内6街区1区画) 公開者:タニコー株式会社 販売した物の内容:タニコー株式会社が千葉県八千代市学校給食センターに対して、國井和明及び林崎陽幸によりなされた発明を適用した搬送装置を販売した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の様々な実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。なお、図面における共通の構成要素には、同一の参照符号が付されている。また、図面は、必ずしも同一の縮尺により表現されているとは限らない。
【0010】
1.加熱装置100の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置により搬入されたラックを収納して加熱処理を行うことが可能な加熱装置の一例を簡略化して示す斜視図である。加熱装置100は、箱型の筐体110を有する。筐体110は、その内部において、後述するラックを収納するための略直方体状の空間により形成された収納室120を含む。収納室120は、筐体110の前面に形成された矩形状の開口部122と筐体110の背面に形成された矩形状の開口部124(
図1には明確には示されていない)とに連通している。すなわち、収納室120には、いわゆるパススルー型開口部が設けられている。
【0011】
開口部122は、筐体110の前面に設けられた扉130により開閉自在とされており、開口部124は、筐体110の背面に設けられた扉140により開閉自在とされている。
【0012】
筐体110は、さらに、その内部において、収納室120に加熱した空気又は蒸気を供給し、又は、電磁波加熱するなどして、収納室120に搬入された後述するラックに載置された食材を加熱するための周知の加熱制御部150を含む。この加熱制御部150は、筐体110の前面に設けられた操作パネル160を介して作業者により操作される。
また、筐体110は、その底面において、複数(例えば4本)の鉛直方向に延びる棒状の支持部材170を備える。これにより、筐体110は、接地面Gと底面との間に空間を確保している。
なお、上述した扉130及び扉140は、加熱制御部150の位置に応じて設けられるものとすることができる。具体的には、扉130は、矩形状の開口部122における「左辺」に鉛直方向に延びる中心軸の周りに回動自在に設けられ、加熱制御部150から離れる方向に回動して、開口部122を開くように設けられる。扉140は、矩形状の開口部124における「右辺」に鉛直方向に延びる中心軸の周りに回動自在に設けられ、加熱制御部150から離れる方向に回動して、開口部124を開くように設けられる。
【0013】
上記構成を有する加熱装置100は、まず、扉130を開けて(扉140を閉じた状態で)開口部122から後述するラックを収納室120に搬入し、扉130を閉じる。次に、加熱装置100は、加熱制御部150を用いて後述するラックに収納された食材を加熱する。この後、加熱装置100は、扉140を開けて(扉130を閉じた状態で)開口部124から後述するラックを搬出する。
【0014】
なお、このような加熱装置100の利用方法は単なる一例に過ぎない。一実施形態においては、加熱装置100は、前面及び背面のうちのいずれか一方に開口部及びこの開口部を開閉自在にする扉を有し、この1つの開口部を介して後述するラックを搬入及び搬出する構成を採用することも可能である。
【0015】
2.搬送装置300及びこの搬送装置300により搬送されるラック200の構成
図2Aは、本発明の一実施形態に係る搬送装置及びこの搬送装置により搬送されるラックの構成を示す斜視図である。
図2Bは、本発明の一実施形態に係る搬送装置及びこの搬送装置により搬送されるラック(トレー満載時)の構成を示す斜視図である。
図2Cは、本発明の一実施形態に係る搬送装置及びこの搬送装置により搬送されるラックの構成を示す側面図である。
図2A〜
図2Cには、ラック200が搬送装置300に係合している様子、すなわち、ラック200が搬送装置300により持ち上げられている様子が示されている。
【0016】
2−1.ラック200の構成
図2A〜
図2Cに示すように、ラック200は、例えば12本のフレーム部材を組み合わせて全体として略直方体形状を成すように形成されている。具体的には、ラック200は、4本のフレーム部材を用いて略ロ字状に形成された上部フレーム部210と、4本のフレーム部材を用いて略ロ字状に形成された下部フレーム部220であって、上部フレーム部210から距離をおいて上部フレーム部210に対向して配置された下部フレーム部220と、上部フレーム部210の4つの端部の各々と下部フレーム部220の4つの端部の各々とを接続すべく鉛直方向に延びる4本の縦フレーム部232、234、236、238と、を含む。
【0017】
縦フレーム部232と縦フレーム部238との間には、例えば20本の(略L字状の断面形状を有する)支持部材(棚レール)240が互いに間隔をおいて略平行に延びるように取り付けられている。同様に、縦フレーム部234と縦フレーム部236との間にも、例えば20本の(略L字状の断面形状を有する)支持部材240が互いに間隔をおいて略平行に延びるように取り付けられている。縦フレーム部232と縦フレーム部238との間に形成された第N番目(1≦N≦20)の支持部材240は、縦フレーム部234と縦フレーム部236との間に形成された第N番目(1≦N≦20)の支持部材240と略同一の高さに配置されている。これにより、略同一の高さに配置された互いに対向する2本の第N番目の支持部材240の底面は、同一平面上に位置することになる。これら2本の支持部材240の底面が、食材を載置するためのトレー(ホテルパン)などを支持することができる。例えば、
図2A〜
図2Cに示すように、トレー10は、このトレー10の両縁部の下面が2つの支持部材240の底面に支持されることによって、ラック200に収納される。なお、
図2Aには、1つのトレー10のみがラック200に収納された様子が示され、
図2Bには、多数のトレー10がラック200に収納された様子が示されている。
図2Bには、一例として、1段の支持部材240につき、1つのトレー10が収納されている様子が示されているが、1段の支持部材240につき、複数のトレー10が収納されることもある。
【0018】
さらに、4本の縦フレーム部の各々には、略同一の高さにおいて、搬送装置300とラック200とを係合させる係合部250(合計4つの係合部250)が固定されている。係合部250は、対応する縦フレーム部を両端から挟み込むように略五角形状に形成された2枚の支持板252と、これら2枚の支持板252の間に延びるようにこれら2枚の支持板に固定された丸棒状の係合棒254と、を含む。これら4つの係合部250の各係合棒254は、すべて略同一の高さにおいて互いに略平行となるように配置されている。後述するように、搬送装置300は、縦フレーム部232及び縦フレーム部234に取り付けられた係合棒254、又は、縦フレーム部236及び縦フレーム部238に取り付けられた係合棒254に係合することによって、ラック200を上昇又は下降させることができる。なお、
図2A〜
図2Cには、ラック200が搬送装置300により上昇させられた様子が示されている。
【0019】
ラック200は、加熱装置100の収納室120に収納され加熱されるものであることから、ラック200を構成する各部は、耐熱性のある材料、例えばステンレス鋼やアルミニウム等の様々な材料により形成される。
【0020】
2−2.搬送装置300の概略構成
図3は、
図2Aに示した搬送装置をその前面左側上方からみて示す斜視図である。
図4は、
図2Aに示した搬送装置をその背面右側上方からみて示す斜視図である。
図2C、
図3及び
図4に示すように、搬送装置300は、主な部位として、ベース部310と、ベース部310に搭載された筐体320と、を含む。
【0021】
ベース部310は、ステンレス鋼等の材料により略ロ字状に形成されたフレーム部312と、フレーム部312の底面に取り付けられた例えば4つのキャスター314と、を含む。各キャスター314は、周知のものであって、車輪314aとこの車輪314aを水平方向に沿った中心軸の周りに回動可能に支持する支持部314bと、を含む。支持部314bは、鉛直方向に沿った中心軸の周りに回動可能にフレーム部312の底面に取り付けられている。
【0022】
筐体320は、ベース部310の前端に取り付けられ、互いに対向して略平行に延びる2つの側壁、すなわち、右側壁322及び左側壁324と、右側壁322と左側壁324との間に配置された本体部330と、を含む。
【0023】
右側壁322及び左側壁324は、一例として、強度を確保するために、略コ字状の断面形状をその延設方向に沿って維持するように形成されている。右側壁322及び左側壁324には、それぞれ、略コ字状に延びる把手322a及び把手324aが取り付けられている。
本体部330は、右側壁322及び左側壁324と協働して、上部中央に切り欠けた凹部330cを有する箱型形状を形成している。具体的には、本体部330は、全体として、右側壁322と、左側壁324と、前面332と、背面334とにより囲まれた凹状の箱型形状を形成している。なお、凹部330cは、搬送装置300の正面の前に立った作業者がこの凹部330cを通して搬送するラック200ラック200を搬入する加熱装置100を観察することができるようにすることを目的として、本体部330の上部中央に形成されたものである。
【0024】
本体部330における前面332の下部には、鉛直方向に沿って互いに略平行に延びる2本のスリット340が形成されている。このスリット340は、略コ字状に延びて前面332から突出するハンドル350が回動するための空間を提供するものである。ハンドル350は、後述するように、水平方向に延びる中心軸の周りに回動自在に設けられたものである。
【0025】
本体部330における背面334にも、鉛直方向に沿って互いに略平行に延びる2本のスリット360が形成されている。このスリット360は、鉛直方向に延びて背面334から突出する変位部材370が上下移動するための空間を提供するものである。互いに対向して延びる2つの変位部材370の各々の端部には、凹部372が形成されている。2つの変位部材370のそれぞれの凹部372が、それぞれ、上述したラック200における縦フレーム部232及び縦フレーム部234に取り付けられた係合棒254、又は、縦フレーム部236及び縦フレーム部238に取り付けられた係合棒254に係合することにより、ラック200を上昇又は下降させることができる。
【0026】
これら2つの変位部材370は、上述したハンドル350を下方向に回動させることにより上昇する一方、ハンドル350を上方向に回動させることにより下降するように構成されている。このような動作を実現するための具体的な構成については後述する。なお、
図2Cには、ハンドル350が下方向に回動して下がり切ることによって、変位部材370が上昇し切った状態が示されている。
【0027】
また、本体部330の右側壁322には、本体部330の内部に連通した箱型の操作部380が設けられている。この操作部380の前面には、鉛直方向に延びるスリット382が形成されている。このスリット382は、操作部380の前面から突出するレバー384が移動するための空間を提供するものである。このレバー384を下の位置(
図3に示した位置)に位置させたときには、ハンドル350を上方向に回動させること(すなわち、変位部材370を下方向に移動させること)のみが許容され、ハンドル350を下方向に回動させること(すなわち、変位部材370を上方向に移動させること)が禁止される。逆に、このレバー384を上の位置(
図3に示した位置とは逆の位置)に位置させたときには、ハンドル350を下方向に回動させること(すなわち、変位部材370を上方向に移動させること)のみが許容され、ハンドル350を上方向に回動させること(すなわち、変位部材370を下方向に移動させること)が禁止される。このような動作を実現するための具体的な機構(すなわちラチェット機構)については後述する。
【0028】
2−3.搬送装置300の内部構成
図5は、
図2A〜
図4に示した搬送装置300の本体部330の内部構成を前面からみて示す模式図である。
図6は、
図2A〜
図4に示した搬送装置300の本体部330の内部構成を右側面からみて示す模式図である。
図7Aは、
図5及び
図6に示したハンドル、駆動軸、従動軸及び接続部材の相互関係を示す模式図である。
【0029】
図5に示すように、右側壁322と左側壁324との間には、駆動軸400が回動自在に設けられている。この駆動軸400には、上述した略コ字状に延びるハンドル350が取り付けられている。さらに、この駆動軸400には、同軸状に駆動ギヤ402が取り付けられている。
【0030】
さらに、右側壁322と左側壁324との間には、従動軸404が回動自在に設けられている。従動軸404は、駆動軸400から間隔をおいて駆動軸400と略平行に延びるように配置されている。この従動軸404には、同軸状に従動ギヤ406が取り付けられている。従動ギヤ406は、駆動軸400に設けられた駆動ギヤ402と係合している。これにより、ハンドル350を上方向に回動させると、駆動軸400は、
図6及び
図7Aに示すように、時計回りの方向A
CWに回動(正転)し、これに伴い、従動軸404は、反時計回りの方向B
CCWに回動(逆転)する。逆に、ハンドル350を下方向に回動させると、駆動軸400は、反時計回りの方向A
CCWに回動(逆転)し、これに伴い、従動軸404は、時計回りの方向B
CWに回動(正転)する。
【0031】
図5に戻り、従動軸404には、例えばその両端において、同軸状に例えば円板状の回転部材408、409が取り付けられている。これらの回転部材408、409には、例えば板状の接続部材410が取り付けられている。具体的には、接続部材410は、その一端が回転部材408、409に取り付けられ、その他端が上述した変位部材370に取り付けられたものである。
【0032】
図7Bは、
図5及び
図7Aに示した接続部材408と変位部材370との接続の様子を示すべく、本体部330の内部の一部を上方からみて拡大して示す斜視図である。右側壁322と左側壁324との間には、略コ字状の断面形状を有する板状の支持部材374が、鉛直方向に摺動自在となるように、右側壁322及び左側壁324の両方に沿って延びている。なお、
図7Bには、略コ字状の断面形状を有する板状の支持部材374のうち一端側(すなわち右側壁322側)の部分しか示されていない。支持部材374のうち右側壁322の主面322aに対向する面374aには、複数のベアリング376が設けられている。これら複数のベアリング376は、右側壁322の対向する2つの面322b、322cの上を摺動するように機能する。
【0033】
この支持部材374の端部には、
図4に示して説明した変位部材370が取り付けられている(支持部材374は、変位部材370に取り付けられていることから、変位部材370の一部として捉えることも可能なものである)。支持部材374の下端部には、上述した接続部材410の他端が取り付けられている。この接続部材410の一端は、
図7Aに示すように、回転部材408においてその中心軸から本体部330の前面側に取り付けられている。
【0034】
この構成によれば、
図7A及び
図7Bを参照して説明すると、ハンドル350を下方向に回動させることによって、回転部材408が正転した(方向B
CWに回動した)ときには、接続部材410が上昇させられるため、接続部材410に接続された変位部材370もまた上昇させられる。これにより、変位部材370に係合したラック200もまた上昇する。なお、ハンドル350は、ハンドル350の端部(ハンドル350における作業者が握る部分)と駆動軸400との距離が長くなるように形成されている。よって、作業者がハンドル350を下方向に回動させるときには、駆動軸400を支点とし、ハンドル350の上記端部を作用点とした、梃子の原理がハンドル350に適用される。これにより、ラック200に多数の食材・食器が収納されていることによってラック200の重量が増大している場合であっても、作業者は、ハンドル350を容易に下方向に回動させることができ、したがって、駆動軸400及び従動軸404を回動させ、ラック200を上昇させることができる。
逆に、ハンドル350を上方向に回動させることによって、回転部材408が逆転(方向B
CCWに回動した)ときには、接続部材410が下降させられるため、接続部材410に接続された変位部材370もまた下降させられる。
【0035】
図7Bには、略コ字状の断面形状を有する板状の支持部材374のうち一端側(すなわち右側壁322側)の部分しか示されていないが、支持部材374のうちの他端側(すなわち左側壁324側)も同様の構成が採用されている。すなわち、
図5に示した回転部材409に取り付けられた接続部材410の他端もまた、支持部材374の下端部に取り付けられている。
【0036】
ラチェット機構
次に、駆動軸400及び従動軸404の回動方向を正転方向又は逆転方向のうちのいずれか1つの方向のみに選択的に制限するためのラチェット機構について、
図5及び
図6に加えて
図8を参照して説明する。
図8は、
図5及び
図6に示した操作部380の内部の構成を部分的に拡大して示す斜視図である。
ラチェット機構は、主に、箱型の操作部380の内部に配置されている。
図5に示すように、駆動軸400は、右側壁322を貫通して操作部380の内部にも到達している。操作部380の内部において、駆動軸400の端部には、2つの相互に異なる歯車が同軸状に取り付けられている。具体的には、駆動軸400の端部には、第1歯車510と、第1歯車510の左側に隣接した第2歯車520とが、取り付けられている。
【0037】
図8に示すように、第1歯車510は、その外周面において鋸状の断面形状を有する。第1歯車510の外周面は、第1歯車510の中心軸から放射状に延びる多数の平面(係止面)と、各係止面510aの「下端」とその後方(
図6及び
図8における右側)にある係止面510aの「上端」とを繋ぐ滑らかな曲面(摺動面)510bと、により形成されたものである。第2歯車520もまた、その外周面において鋸状の断面形状を有する。第2歯車520の外周面は、
図6には明確には示されていないが、第2歯車520の中心軸から放射状に延びる多数の平面(係止面)520aと、各係止面520aの「上端」とその後方(
図6及び
図8における右側)にある係止面520aの「下端」とを繋ぐ滑らかな曲面(摺動面)520bと、により形成されたものである。
【0038】
さらに、操作部380の内部において、第1歯車510に係脱自在となるように第1歯止め512が設けられ、第2歯車520に係脱自在となるように第2歯止め522が設けられている。
図8に示すように、第1歯止め512が第1歯車510に係合した場合には、第1歯車510が逆転するとき(A
CCW)、第1歯止め512は、第1歯車510の外周面における摺動面510bの上を摺動することができる。よって、第1歯車510は、逆転し続けることができる。逆に、第1歯車510が正転するとき(A
CW)、第1歯止め512は、第1歯車510の外周面における係止面510aに当接する。よって、第1歯車510は、正転し続けることができない。
一方、第2歯止め522が第2歯車520に係合した場合(この場合は
図8には示されていない)には、第2歯車520が正転するとき(A
CW)、第2歯止め522は、第2歯車520の外周面における摺動面520aの上を摺動することができる。よって、第2歯車520は、正転し続けることができる。逆に、第2歯車520が逆転するとき(A
CCW)、第2歯止め522は、第2歯車520の外周面における係止面520bに当接する。よって、第2歯車520は、逆転し続けることができない。
【0039】
これら第1歯止め512及び第2歯止め522による係脱動作は、例えば、次に述べる構成により実現可能である。
図6に示すように、第1歯止め512及び第2歯止め522は、操作部380の側壁380aに対して回動自在となるように取り付けられている。第1歯止め512には、この第1歯止め512に対して略90度を成して延びるように板状の第1連絡部材514が固定されている。同様に、第2歯止め522にも、この第2歯止め522に対して略90度を成して延びるように板状の第2連絡部材524が固定されている。第1連絡部材514と第2連絡部材524との間には、板状の共通連絡部材530が取り付けられている。共通連絡部材530と第1連絡部材514(第2連絡部材524)とは、互いに回動自在となるように取り付けられている。第1連絡部材514と第2連絡部材524との間には、例えば2本のバネSが接続されている。
【0040】
共通連絡部材530の中央には、略L字状に延びる板状の接続部材540の一端が回動自在となるように取り付けられている。この接続部材540の他端は、操作部380に設けられたスリット382を貫通して外部に突出している。接続部材540の他端には、レバー384が取り付けられている。
【0041】
この構成によれば、レバー384が「UP」位置にあるときには、第1歯止め512が第1歯車510に係合する(第2歯止め522は第2歯車520に係合しない)ため、駆動軸400は、逆転すること(A
CCW)のみが許容され、正転すること(A
CW)が禁止される。別言すれば、従動軸404は、正転すること(B
CW)のみが許容され、逆転すること(B
CCW)が禁止される。したがって、ハンドル350を下方向に回動させて、変位部材370に係合したラック200を上昇させることのみが許容され、ハンドル350を上方向に回動させて、変位部材370に係合したラック200を下降させることが禁止される。
逆に、レバー384が「DOWN」位置にあるときには、第2歯止め522が第2歯車510に係合する(第1歯止め512は第1歯車510に係合しない)ため、駆動軸400は、正転すること(A
CW)のみが許容され、逆転すること(A
CCW)が禁止される。別言すれば、従動軸404は、逆転すること(B
CCW)のみが許容され、正転すること(B
CW)が禁止される。したがって、ハンドル350を上方向に回動させて、変位部材370に係合したラック200を下降させることのみが許容され、ハンドル350を下方向に回動させて、変位部材370に係合したラック200を上昇させることが禁止される。
【0042】
なお、第1連絡部材514と第2連絡部材524とは、バネによって互いに近づく方向に付勢されている。レバーが「UP」位置から「DOWN」位置(又は「DOWN」位置から「UP」位置)に変位するためには、第1連絡部材514と第2連絡部材524との間の距離を広げる必要がある。よって、このようなバネが設けられていることにより、レバーが意図せずに「UP」位置から「DOWN」位置(又は「DOWN」位置から「UP」位置)に変位することが防止されるようになっている。
【0043】
回転速度の抑制機構
次に、駆動軸400及び従動軸404の回転速度を抑制する構成について、
図9を参照して説明する。
図9は、
図2A〜
図7Bに示した搬送装置300により行われる駆動軸400の回転速度を抑える構成を説明する模式図である。
図9(a)〜
図9(c)は、それぞれ、ハンドル350が、一番下の位置(以下「最低位置」という。)、中間の位置(以下「中間位置」という。)及び一番上の位置(以下「最高位置」という。)にある場合の様子を示している。
【0044】
円板状の回転部材408には、2種類の伸縮自在のダンパー(減衰装置)が取り付けられている。具体的には、回転部材408において、中心軸404から前面側には、ガスダンパ610が取り付けられ、中心軸404から背面側には、減衰ダンパ620が取り付けられている。
図9(b)に示すように、ハンドル350が「中間位置」にあるときに、ガスダンパ610の上端及び減衰ダンパ620の上端が略同一の高さに位置するように、ガスダンパ610及び減衰ダンパ620は回転部材408に取り付けられている(なお、ガスダンパ610の下端及び減衰ダンパ620の下端は、
図3に示すように、右側壁322の下部付近に固定されている)。
【0045】
ガスダンパ610は、常に伸びようとする性質を有し、所定の力(例えばここでは約30kg以上の力)を加えられると縮む、という性質を有する。ガスダンパ610としては、縮むときに減衰力を発生させる様々な方式のダンパを用いることができる。
また、減衰ダンパ620は、所定の力を加えられると縮む一方、伸びるときに減衰力を発生させるという性質を有する。このような減衰ダンパ620としては、例えば、周知である油圧ダンパを用いることができる。油圧ダンパは、主に、中空筒状のシリンダと、シリンダの内径より僅かに小さい直径を有し、シリンダの内部において上下移動可能となるように配置された円板状のピストンと、ピストンの中心においてピストンに対して直交する方向に延び、シリンダの下面に設けられた貫通穴から突出した棒状のピストンロッドと、を含む。シリンダの内部には、オイルが配置されている。円板状のピストンには、オイルの流れを許容するための小さな穴であるオリフィスが形成されている。このような構成を備えた油圧ダンパにおいては、ピストンロッドが伸びようとするときには、シリンダ内のオイルがピストンに形成されたオリフィスを通って流れる。オイルがオリフィスを通過するときに抵抗が発生し、これによって、減衰力が発生する。したがって、油圧ダンパは、伸びようとするときに減衰力を発生させることができる。このような油圧ダンパの具体例としては、カヤバ工業株式会社のKHGシリーズ、KCGシリーズ、KMGシリーズ、KLGシリーズ、KPGシリーズ及びKMOシリーズ等を用いてもよい。なお、減衰ダンパ620としては、油圧ダンパの他に、ガスダンパを含む様々な方式のダンパであって、伸びるときに減衰力を発生させる任意の方式のダンパを用いることができる。
【0046】
(ラック200の下降動作)
これらの2種類のダンパがどのように作用するのかについて説明する。まず、
図9(a)に示すように、ハンドル350は「最低位置」にある。このとき、変位部材370(すなわちラック200)は、最も高い位置(以下「第1の位置」という。)にある。作業者は、ラック200を下降させるために、まず、レバー384を「UP」位置から「DOWN」位置に変位させる。これにより、駆動軸400は、正転すること(A
CW)のみが許容され、逆転すること(A
CCW)を禁止される。したがって、作業者は、ハンドル350を上方向に回動させて
図9(b)に示す「中間位置」に変位させることができる。これに伴い、従動軸404は逆転する(B
CCW)。このとき、従動軸404は、ラック200の自重によって、逆転速度を増加させようとする。ところが、そのような従動軸404の逆転速度は、ガスダンパ610によってある程度は抑えられる。
【0047】
しかしながら、ラック200に大量のトレー及び大量の食材が載置されていること等によってラック200の重量が増大している場合、すなわち、ラック200の重量が、ガスダンパ610が耐えられる所定の力(ここでは例えば30kg)を大幅に超えている(例えば100kg)場合には、従動軸404の逆転速度は、ガスダンパ610によって十分に吸収することが困難なものとなる。減衰ダンパ620が設けられていないと仮定して考えると、この状態において、作業者が不注意などによってハンドル350から手を離してしまうと、ラック200の増大した自重によって、従動軸404が急速に逆転し、これに伴って、駆動軸400が急速に正転する。これにより、ハンドル350が急速に上方向に回動することとなって、ハンドル350が作業者に勢いよく衝突して非常に危険な存在となる。ところが、本実施形態では、伸びるときに減衰力を発生させる性質を有する減衰ダンパ620が、回転部材408に設けられていることによって、回転部材408の逆転速度を低減させることができる。よって、作業者が上記のようにハンドル350から手を離しても、回転部材408、ひいては、従動軸404及び駆動軸400は、ゆっくり回転するだけであるので、ハンドル350が急速に上方向に回動して作業者に衝突する事態が防止される。
【0048】
この後、作業者は、ハンドル350をさらに上方向に回動させることにより、ハンドル350を
図9(b)に示す「中間位置」から
図9(c)に示す「最高位置」にまで変位させる。これにより、変位部材370(すなわちラック200)は、最も低い位置(以下「第2の位置」という。)に変位する。なお、作業者がハンドル350を「中間位置」から「最高位置」に変位させる間においても、ガスダンパ610及び減衰ダンパ620は、作業者がハンドル350を「最低位置」から「中間位置」に変位させたときにおけるものと同様に作用することはいうまでもない。
【0049】
(ラック200の上昇動作)
図9(c)に示すように、ハンドル350は「最高位置」にある。このとき、変位部材370(すなわちラック200)は、最も低い位置(「第2の位置」)にある。作業者は、ラック200を上昇させるために、まず、レバー384を「DOWN」位置から「UP」位置に変位させる。これにより、駆動軸400は、逆転すること(A
CCW)のみが許容され、正転すること(A
CW)を禁止される。したがって、作業者は、ハンドル350を下方向に回動させて
図9(b)に示す「中間位置」に変位させることができる。これに伴い、従動軸404は正転する(B
CW)。このとき、ラック200の自重がどんなに増大していても、上述したラチェット機構によって、回転部材408は逆転できない(すなわち、駆動軸400は正転できない)。よって、作業者が誤ってハンドル350から手を離しても、ハンドル350が勢いよく上方向に回動することは防止される。
【0050】
なお、この状態において、作業者が誤ってハンドル350から手を離すと、ガスダンパ610が常に伸びようとする性質を有するものであることによって、回転部材408がゆっくり正転し、これに伴って、駆動軸400が逆転し、ハンドル350が下方向にゆっくりとではあるが回動する可能性がある。これを確実に防止するためには、もう1つの減衰ダンパを用意し、回転部材408の裏側において、ガスダンパ610の上端と同じ位置にこのもう1つの減衰ダンパの上端を取り付けることができる。すなわち、ガスダンパ610及びもう1つの減衰ダンパを、回転部材408を間に挟んで、互いに対向して平行に延びるように、設けることができる。これにより、作業者が誤ってハンドル350から手を離しても、回転部材408は、もう1つの減衰ダンパの存在によって、ゆっくり正転することが防止される。
【0051】
この後、作業者は、ハンドル350をさらに下方向に回動させることにより、ハンドル350を
図9(b)に示す「中間位置」から
図9(a)に示す「最低位置」にまで変位させる。これにより、変位部材370(すなわちラック200)は、最も高い位置(第1の位置)に変位する。
【0052】
なお、
図5〜
図9に示した実施形態においては、回転部材408のみにガスダンパ610及び減衰ダンパ620が取り付けられているが、別の実施形態においては、回転部材408に代えて又は回転部材408に加えて、回転部材409にこれらのダンパが取り付けられる。
【0053】
また、
図5〜
図9に示した実施形態においては、ガスダンパ610が1つ設けられ、減衰ダンパ620が1つ又は2つ設けられているが、別の実施形態においては、これらのダンパの数は、任意の数だけ設けられる。
【0054】
さらに、
図5〜
図9に示した実施形態においては、最も好ましい実施形態として、各ダンパを用いた回転速度の抑制機構が、ラチェット機構と組み合わせて用いられている。しかしながら、別の実施形態においては、この回転速度の抑制機構は、ラチェット機構なしでも機能するものである。この回転速度の抑制機構そのものが、従来技術には見られない新規な機構である、ということに留意されたい。
【0055】
3.搬送装置300による加熱装置100に対するラック200の搬入・搬出動作
3−1.搬入動作
まず、作業者は、搬送装置300にラックを係合させる。このとき、ハンドル350は「最低位置」(
図9(a)参照)にあり、変位部材370は「第1の位置」にある。次に、作業者は、搬送装置300の把手322a、324aを掴んで、搬送装置300の移動を操作して、ラック200が加熱装置100の収納室120(開口部122)の前に位置するように、搬送装置300を移動させる(
図1参照)。このとき、収納室120の底面は、ラック200の底面よりも低い位置にある。この状態において、作業者は、搬送装置300を収納室120に向かって押し込むことにより、ラック200が収納室120の内部に収納される。なお、搬送装置300のベース部310の大部分は、加熱装置100の底面と接地面G(
図1参照)との間に確保された空間に潜り込んでいる。
【0056】
次に、作業者は、ハンドル350を「最低位置」から「最高位置」(
図9(c)参照)に移動させる。これにより、変位部材370は、「第1の位置」からこれより低い「第2の位置」に移動する。この「第2の位置」は、収納室120の底面より低い位置にある。よって、作業者がこのような操作をすると、ラック200が収納室120の底面に載置され、さらに、変位部材370の凹部372(
図4参照)は、ラック200の係合棒254(
図2A参照)との係合を解消して、係合棒254の下方に位置する。この後、作業者は、搬送装置300を加熱装置100から退避させる。これにより、作業者は、加熱装置100を動作させて、ラック200に収納された食材を加熱することができる。
【0057】
3−2.搬出動作
作業者は、加熱装置100による加熱が完了した後、ラック200が加熱装置100の収納室120(開口部124)の前に位置するように、搬送装置300を移動させる(
図1参照)。このとき、ハンドル350は「最高位置」(
図9(c)参照)にあり、変位部材370は「第2の位置」にある。さらに、作業者は、搬送装置300を収納室120に向かって押し込むことにより、変位部材370の凹部372(
図4参照)がラック200の係合棒254(
図2A参照)の下方に位置する。なお、搬送装置300のベース部310の大部分は、加熱装置100の底面と接地面G(
図1参照)との間に確保された空間に潜り込んでいる。
【0058】
次に、作業者は、ハンドル350を「最高位置」から「最低位置」(
図9(a)参照)に移動させる。これに伴い、変位部材370は、「第2の位置」からこれより高い「第1の位置」に移動する。これにより、変位部材370の凹部372(
図4参照)がラック200の係合棒254(
図2A参照)に係合して上昇させるので、ラック200の底面は、収納室120の底面より高い位置に移動する。この後、作業者は、搬送装置300を加熱装置100から退避させる。
上述した搬入動作及び搬出動作の一例は、収納室120に設けられたパススルー型開口部のうちの一方の開口部、例えば開口部122を介して、ラック200を収納室120に搬入し、他方の開口部、例えば開口部124を介して、ラック200を収納室120から搬出するものである。このようなパススルー型の搬入・搬出動作を採用することによって、交差汚染の発生を抑えることができる。
【0059】
このように、本発明の様々な実施形態によれば、搬送装置300に係合したラック200を加熱装置100の収納室120の内部に位置決めした後、ハンドル350を操作することのみによって、ラック200を下降させて収納室120の底面の上に載置し、また、収納室120の底面の上に載置されているラック200を上昇させて収納室120の底面から上方に持ち上げることができる。これにより、ラック200を収納室120に簡単に搬入するとともに、ラック200を収納室120から簡単に搬出することができる。
【0060】
なお、加熱装置100、ラック200及び搬送装置300を、組み合わせて全体として「調理システム」として利用することが可能である。
【0061】
上記実施形態では、搬送装置に搬送される被搬送物の一例として、食材・食器を収納するラックが用いられる場合について説明したが、被搬送物としては、任意の物品を収納する任意の収納物(籠、タンク、容器等)が用いられる。
【0062】
また、上記実施形態では、最も好ましい形態として、駆動軸に同軸状に設けられた駆動ギヤと従動軸に同軸状に設けられた駆動ギヤとが噛み合うことにより、駆動軸と従動軸とが互いに連動して回動する形態を説明した。しかしながら、駆動ギヤと従動ギヤとが、両者の間に設けられた、1又は複数のギヤ、及び/又は、1又は複数の別の回転軸を介して、互いに連動するようにしてもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、最も好ましい形態として、減衰ダンパ及びガスダンパが従動軸の下方において鉛直方向に沿って設けられる形態を説明した。しかしながら、減衰ダンパ及びガスダンパは、従動軸の上方において鉛直方向に沿って設けられるようにしてもよいし、従動軸の側方において水平方向に沿って設けられるようにしてもよい。
【0064】
さらにまた、上記実施形態では、最も好ましい形態として、減衰ダンパ及びガスダンパが従動軸に関連して設けられる形態を説明した。しかしながら、減衰ダンパ及びガスダンパは、駆動軸に関連して設けられるようにしてもよい。