(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレームに支持されて旋回軸を中心に回転可能な旋回用ロータと、前記旋回用ロータに設定されて前記旋回軸に第1角度で交差する調整軸と、前記旋回用ロータに支持されて前記調整軸を中心に回転可能な傾動用ロータと、前記傾動用ロータに固定されて前記調整軸に第2角度で交差する方向へ延びるシュートと、前記旋回用ロータを前記フレームに対して回転させる旋回駆動モータと、前記傾動用ロータを前記旋回用ロータに対して回転させる調整駆動モータと、前記旋回駆動モータおよび前記調整駆動モータを制御する制御装置と、を有し、
前記フレームに対する前記旋回用ロータの前記旋回軸まわりの角度位置をロータ旋回角、前記旋回用ロータに対する前記傾動用ロータの前記調整軸まわりの角度位置をベベル角、前記フレームに対する前記シュートの前記旋回軸まわりの角度位置をシュート旋回角として、
前記制御装置は、指令値としてロータ旋回速度指令値が与えられるとともに、前記ロータ旋回速度指令値をシュート旋回角指令値に変換し、現在の前記ベベル角を参照して前記シュート旋回角を演算し、得られた前記シュート旋回角と前記シュート旋回角指令値とが一致するように前記旋回駆動モータを制御することを特徴とする装入装置。
フレームに支持されて旋回軸を中心に回転可能な旋回用ロータと、前記旋回用ロータに設定されて前記旋回軸に第1角度で交差する調整軸と、前記旋回用ロータに支持されて前記調整軸を中心に回転可能な傾動用ロータと、前記傾動用ロータに固定されて前記調整軸に第2角度で交差する方向へ延びるシュートと、前記旋回用ロータを前記フレームに対して回転させる旋回駆動モータと、前記傾動用ロータを前記旋回用ロータに対して回転させる調整駆動モータと、前記旋回駆動モータおよび前記調整駆動モータを制御する制御装置と、を有する装入装置の制御方法であって、
前記フレームに対する前記旋回用ロータの前記旋回軸まわりの角度位置をロータ旋回角、前記旋回用ロータに対する前記傾動用ロータの前記調整軸まわりの角度位置をベベル角、前記フレームに対する前記シュートの前記旋回軸まわりの角度位置をシュート旋回角として、
指令値としてロータ旋回速度指令値を与え、前記ロータ旋回速度指令値をシュート旋回角指令値に変換し、現在の前記ベベル角を参照して前記シュート旋回角を演算し、
得られた前記シュート旋回角と前記シュート旋回角指令値とが一致するように
前記旋回駆動モータを制御することを特徴とする装入装置の制御方法。
【背景技術】
【0002】
従来、製銑用の高炉においては、炉内に装入物を装入する設備として装入装置が用いられている。同様な装入装置は、他の反応炉や反応塔、触媒容器など、容器内部に内容物を充填する際にも用いられている。
このような装入装置においては、容器内における装入物の平面分布を均一にする等、装入物を所望の状態とすることが要求される。このために、装入装置においては、装入物の散布方向や散布状態を自由に制御することが求められ、様々な散布機構が開発されている。
【0003】
特許文献1の装置は、装入物を送り出す円筒状または樋状のシュートを旋回部分(ロータ)に傾斜して設置し、このロータをシュートとともに鉛直な旋回軸まわりに旋回させることで、シュートの先端から放出される装入物をドーナツ状に散布する。さらに、旋回軸に対するシュートの傾斜角度を調整することで、シュートから放出される装入物の到達領域を変更し、これにより散布状態の制御を実現している。
【0004】
特許文献1の装置では、シュートは傾斜角度の調整機構を介してロータに支持される。ロータを旋回駆動するために旋回駆動モータが用いられ、旋回駆動モータの出力は調整機構にも伝達されている。調整機構と旋回駆動モータとの間には差動機構(遊星歯車)が介在され、差動機構の3つめの軸には調整駆動モータが接続されている。このような構成において、中間歯車の減速比を正しく選択すれば、旋回駆動モータにより調整機構と旋回部分とが一体に回転するようにできる。また、調整駆動モータを作動させることで、差動機構から旋回動作に対する相対回転(相対角度、位相差の変化)が調整機構に伝達され、調整機構においては伝達された相対回転に応じてシュートの傾斜角度の調整動作が行われる。
【0005】
前述した特許文献1では、シュートおよびロータを旋回駆動モータの駆動により一体的に旋回させるとともに、調整駆動モータの駆動により調整機構を駆動させている。この際、旋回するロータ上の調整機構を駆動するために、差動機構を介在させている。このような差動機構があると、装置としての構造が複雑化し、設備コストも上昇する。さらに、複雑な機構の旋回を維持するために保守点検が煩雑になる。
【0006】
これに対し、本願の出願人により、シュートの旋回軸まわりに回転する旋回用ロータ(以下単にロータということがある)と、旋回機構に支持されて旋回軸に対して傾斜した調整軸まわりに回転する傾動用ロータ(以下ホルダということがある)とを設置し、この傾動用ロータにシュートを支持した構成が提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2では、通常はこれらの旋回用ロータおよび傾動用ロータを同期回転させること(相対回転なし)でシュートを一定の傾斜角度に維持して旋回させるとともに、旋回用ロータに対して傾動用ロータを相対回転させることにより、シュートの傾斜角度を調整することができる。
【0007】
このような構成の駆動には、差動機構と旋回駆動モータおよび調整駆動モータとを用い、通常は旋回駆動モータだけで旋回用ロータと傾動用ロータとを同期回転させ、シュート角度の調整時には調整駆動モータと差動機構とにより旋回用ロータと傾動用ロータとを相対回転させる構造が利用される(特許文献2の段落0048〜0049および
図16を参照)。なお、差動機構は、動力伝達の見直しにより特許文献1の差動機構よりも簡素化されている。
【0008】
また、旋回用ロータおよび傾動用ロータに対して個別の駆動モータを用い、各々の回転を個別に制御することで、差動機構を用いずに旋回動作および傾斜角度調整を行う構造も利用できる。つまり、旋回用ロータおよび傾動用ロータを同期回転させることで、シュートを現状角度のまま旋回動作させることができ、あるいは旋回用ロータと傾動用ロータとを相対回転させることでシュートの傾斜角度調整を行うことができる(特許文献2の段落0038および
図1、段落0047および
図15を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、装入物の炉内での充填状態は、その後の炉内挙動に大きく影響するものであり、高炉の運転においては重大な関心事となっている。
このため、高炉の運転に関する過去の運転事例をデータベースに蓄積しておき、実際の運転の際に参照することが行われている。例えば、装入物や運転環境が特定の状態で、過去に運転結果が良好となった散布動作でのシュートの傾斜角度および旋回角度等のパラメータの値を記録しておき、同様な条件で良好な運転結果が得られた設定とすることで、良好な運転結果が得られる可能性が高い。
【0011】
従来の運転事例では、装入時の関心事である実際のシュート旋回角を蓄積するのではなく、その代替として、具体的な制御対象であるロータ旋回角の指令値を蓄積していた。これは、特許文献1のような従来の装入装置では、旋回軸まわりのシュートの向きつまりシュート旋回角と、シュートが設置されて実際に旋回駆動される旋回用ロータの向きつまりロータ旋回角とは、その構造上常に一致する。このため、特許文献1に類する従来の装入装置を対象に蓄積された従来の運転事例では、シュート旋回角としてロータ旋回角を用いても全く問題がないことによる。
【0012】
図7に、特許文献1の装入装置を模式的に示す。
図7において、シュート93は旋回用ロータ91に設置され、その傾斜角度(シュート傾斜角s)が調整機構94により調節される。旋回用ロータ91は、フレーム99に支持され、旋回駆動モータ92により駆動されて鉛直方向である旋回軸Dまわりに旋回する(シュート旋回角α)。
図8にも示すように、シュート93は、旋回用ロータ91の旋回(ロータ旋回角θ)に伴って一体に旋回し、その先端はシュート傾斜角sに応じた半径の回転軌跡を描く。これにより、シュート93の先端から散布される装入物は、炉内の所定の半径領域に堆積される。
【0013】
このような旋回の動作制御は、制御装置90にロータ旋回速度指令値Vcを与えることで行われる。ロータ旋回速度指令値Vcを与えられた制御装置90は、旋回駆動モータ92がロータ旋回速度指令値Vcに応じた速度で回転するように旋回駆動モータ92を運転する。
この際、シュート93はシュート傾斜角sが変化しても旋回用ロータ91に対する旋回方向に変化がなく、シュート旋回角αとロータ旋回角θとは常に一致しており、制御にあたって両者を区別する必要はない。
また、シュート傾斜角sの制御は、制御装置90にシュート傾斜角指令値scを与えることで、制御装置90から調整機構94に対してシュート傾斜速度目標値srが与えられ、これによりシュート93が所定のシュート傾斜角sへと移動することで行われる。
【0014】
従って、このような特許文献1に類する従来の装入装置における制御パラメータは次の通りとなる。
シュート傾斜角s:旋回軸Dに対するシュート93の傾斜角度。
シュート傾斜角指令値sc:制御装置90に与えられるシュート傾斜角sの指令値。
シュート傾斜速度目標値sr:調整機構94に与えられるシュート傾斜速度の目標値。
シュート旋回角α:フレーム99に対するシュート93の旋回軸Dまわりの角度位置。
ロータ旋回角θ:フレーム99に対する旋回用ロータ91の旋回軸Dまわりの角度位置(=シュート旋回角α)。
ロータ旋回速度指令値Vc:制御装置90に与えられる旋回駆動モータ92の速度の指令値。
【0015】
装入装置の運転事例として蓄積すべきパラメータは、装入動作に直接的に関連するシュート傾斜角sおよびシュート旋回速度であるが、特許文献1の装入装置ではシュート旋回角αとロータ旋回角θとが常に一致していること、および制御対象である旋回部分が具体的には旋回用ロータ91であるため、運転事例として実際に蓄積されるのはシュート傾斜角sおよびロータ旋回速度指令値Vcであり、これらが運転時に参照されて制御装置90に与えられる。
このように、従来蓄積されてきた運転事例では、シュート旋回速度の代わりに具体的な制御パラメータであるロータ旋回速度指令値Vcが用いられていた。
【0016】
一方、前述した旋回用ロータに対して傾斜した調整軸まわりに回転する傾動用ロータを有する構成(特許文献2参照)では、その構造的な特性として、シュートの傾斜角度に応じて、シュート先端の向きが旋回用ロータの向きに対して旋回方向(旋回動作の周方向)に変位する。このような周方向の変位が生じるため、特許文献2の装入装置では、前述したデータベースの運転事例をそのまま適用できないという問題が生じる。
【0017】
すなわち、シュートの向きに周方向の変位が生じた状態では、制御装置に与えられるロータ旋回速度指令値に基づいて旋回用ロータをロータ旋回速度と同じ値に制御したとしても、シュート旋回角つまり実際に装入物の方向を決定するシュートは異なる方向を向いていることになる。
そして、シュート旋回角がロータ旋回角と異なると、既存の運転事例に基づいて適切なロータ旋回速度指令値を与えても、装入物の装入動作が指定通り行われないことになり、前述したデータベースの運転事例をそのまま適用できず、高炉運転上大きな問題となる可能性があった。
【0018】
図9に、特許文献2の装入装置を模式的に示す。
図9において、旋回用ロータ81は、フレーム89に支持され、旋回駆動モータ82により駆動されて鉛直方向である旋回軸D1まわりに旋回する(ロータ旋回角θ)。
旋回用ロータ81には傾動用ロータ84が設置され、シュート83は傾動用ロータ84に支持されている。傾動用ロータ84は、調整駆動モータ85および旋回駆動モータ82により駆動され、旋回軸D1に対して傾斜した調整軸D2まわりに回転可能である。シュート83は、傾動用ロータ84の回転角度(ベベル角β)に応じて、傾斜角度(シュート傾斜角s)が変化する。
【0019】
図10にも示すように、シュート83は、旋回用ロータ81の旋回に伴って一体に旋回し、その先端はシュート傾斜角sに応じた半径の回転軌跡を描く。これにより、シュート83の先端から散布される装入物は、炉内の所定の半径領域に堆積される。
ここで、シュート傾斜角sを変更するために、傾動用ロータ84を回転させると、シュート83の先端は現在のロータ旋回角θに対して異なる方向へ向くことになる(旋回角偏差σ)。このような旋回角偏差σが生じると、シュート83の向き(シュート旋回角α)はロータ旋回角θから旋回角偏差σだけ変化した状態(シュート旋回角α=ロータ旋回角θ+旋回角偏差σ)となる。
【0020】
このような構成において、シュート傾斜角sの制御は、前述した従来の構成と同様、制御装置80にシュート傾斜角sの指令値(シュート傾斜角指令値sc)を与えることで、同指令値に対応したシュート傾斜速度の目標値(シュート傾斜速度目標値sr)が調整駆動モータ85に送られ、傾動用ロータ84が旋回用ロータ81に対して回転することでシュート83の傾斜が変更される。
【0021】
一方、旋回の動作制御は、制御装置80にロータ旋回速度指令値Vcを与えることで行われる。ロータ旋回速度指令値Vcを与えられた制御装置80は、旋回駆動モータ82がロータ旋回速度指令値Vcに応じた速度で回転するように旋回駆動モータ82を運転する。
しかし、前述したように、特許文献2の装入装置では、シュート83の向き(シュート旋回角α)はロータ旋回角θから旋回角偏差σだけ変化した状態(シュート旋回角α=ロータ旋回角θ+旋回角偏差σ)となる。
つまり、特許文献2の装入装置では、既存の運転事例(例えば前述した特許文献1など、ロータ旋回角θ=シュート旋回角αで蓄積された運転事例)を参照しようとしても、ロータ旋回速度指令値Vcをそのまま適用したのでは旋回角偏差σ分の相違が生じて所期の装入動作が行われないことになり、前述したデータベースの運転事例をそのまま適用できず、高炉運転上大きな問題となる可能性があった。
【0022】
本発明の主な目的は、旋回用ロータに対して傾斜した調整軸まわりに回転する傾動用ロータを有する構成においても、従来の運転事例を適用できる装入装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、特許文献1等で蓄積された既存の運転事例のロータ旋回速度指令値Vcを前述した特許文献2の装入装置にそのまま適用すると、シュート旋回角αがロータ旋回角θに対して旋回角偏差σだけ相違が生じるとの知見に基づき、前述した特許文献2の装入装置において、前述した制御装置80に、ロータ旋回速度指令値Vcを積分してシュート旋回角αの指令値に相当するシュート旋回角指令値αcを求める機能を付加するとともに、制御装置80から旋回駆動モータ82に与えられる目標値としてのロータ旋回角目標値θrについて、運転実績に基づくロータ旋回速度指令値Vcから演算されたシュート旋回角指令値αcに対して旋回角偏差σ分の補償を行い、このロータ旋回角目標値θrに従って旋回駆動モータ82を制御することで、旋回角偏差σ分の相違が生じないようにし、前述した特許文献2の装入装置でも従来の運転事例を適用できるようにする。そして、このような旋回角偏差σ分の補償を行うために、本発明では、旋回角偏差σをシュート傾斜角sとベベル角βとの関係において明らかにし、これにより具体的な補償を実現したものである。
具体的に、本発明は、以下に示す要件を備えて構成される。
【0024】
本発明の装入装置は、フレームに支持されて旋回軸を中心に回転可能な旋回用ロータと、前記旋回用ロータに設定されて前記旋回軸に第1角度で交差する調整軸と、前記旋回用ロータに支持されて前記調整軸を中心に回転可能な傾動用ロータと、前記傾動用ロータに固定されて前記調整軸に第2角度で交差する方向へ延びるシュートと、前記旋回用ロータを前記フレームに対して回転させる旋回駆動モータと、前記傾動用ロータを前記旋回用ロータに対して回転させる調整駆動モータと、前記旋回駆動モータおよび前記調整駆動モータを制御する制御装置と、を有し、前記フレームに対する前記旋回用ロータの前記旋回軸まわりの角度位置をロータ旋回角、前記旋回用ロータに対する前記傾動用ロータの前記調整軸まわりの角度位置をベベル角、前記フレームに対する前記シュートの前記旋回軸まわりの角度位置をシュート旋回
角として、前記制御装置は、
指令値としてロータ旋回速度指令値が与えられるとともに、前記ロータ旋回速度指令値をシュート旋回角指令値に変換し、現在の前記ベベル角を参照して前記シュート旋回角を演算し、得られた前記シュート旋回角と前記シュート旋回角指令値とが一致するように前記旋回駆動モータを制御することを特徴とする。
【0025】
このような本発明では、制御装置により、
与えられたロータ旋回速度指令値がシュート旋回角指令値に変換されるとともに、現在のベベル角を参照してシュート旋回角が演算され、得られたシュート旋回角とシュート旋回角指令値とが一致するように旋回駆動モータが制御される。これにより、ロータ旋回角は
旋回角偏差を加味したロータ旋回角目標値に基づいて制御され、その結果、シュート旋回角は
与えられたロータ旋回
速度指令値に基づいて制御される。
従って、旋回用ロータに対して傾斜した調整軸まわりに回転する傾動用ロータを有する構成でありながら、制御装置に与えられ
る指令値として
ロータ旋回速度指令値を用いることができ、従来の装入装置で蓄積された運転事例をそのまま適用することができる。
【0026】
本発明の装入装置において、前記制御装置は、前記シュートが前記調整軸廻りに回転した際の、前記ベベル角と、前記シュート
旋回角と前記ロータ旋回角との偏差である旋回角偏差との関係を示す関数またはデータテーブルを記憶しており、現在の前記ベベル角に基づいて現在の前記
旋回角偏差を取得して前記シュート旋回角
と前記シュート旋回角指令値とが一致するロータ旋回角目標値を計算することが好ましい。
【0027】
本発明の装入装置において、前記制御装置は
、前記ロータ旋回速度指令値を積分器で積分して前記
シュート旋回角指令値を計算
することが好ましい。
【0028】
本発明の装入装置において、前記制御装置は、
指令値としてロータ旋回速度指令値が与えられるとともに、現在の前記ベベル角を参照して現在の前記旋回角偏差を演算し、前記旋回角偏差を微分器で微分して旋回角偏差微分値を求め、前記旋回角偏差微分値と前記ロータ旋回速度指令値とから得られる旋回モータ角度指令に基づいて前記旋回駆動モータを制御する構成としてもよい。
このような構成においても、旋回用ロータに対して傾斜した調整軸まわりに回転する傾動用ロータを有する構成でありながら、制御装置に与えられる指令値としてロータ旋回速度指令値を用いることができ、従来の装入装置で蓄積された運転事例をそのまま適用することができる。
【0029】
本発明の装入装置の制御方法は、フレームに支持されて旋回軸を中心に回転可能な旋回用ロータと、前記旋回用ロータに設定されて前記旋回軸に第1角度で交差する調整軸と、前記旋回用ロータに支持されて前記調整軸を中心に回転可能な傾動用ロータと、前記傾動用ロータに固定されて前記調整軸に第2角度で交差する方向へ延びるシュートと、前記旋回用ロータを前記フレームに対して回転させる旋回駆動モータと、前記傾動用ロータを前記旋回用ロータに対して回転させる調整駆動モータと、前記旋回駆動モータおよび前記調整駆動モータを制御する制御装置と、を有する装入装置の制御方法であって、前記フレームに対する前記旋回用ロータの前記旋回軸まわりの角度位置をロータ旋回角、前記旋回用ロータに対する前記傾動用ロータの前記調整軸まわりの角度位置をベベル角、前記フレームに対する前記シュートの前記旋回軸まわりの角度位置をシュート旋回
角として、
指令値としてロータ旋回速度指令値を与え、前記ロータ旋回速度指令値をシュート旋回角指令値に変換し、現在の前記ベベル角を参照して前記シュート旋回角を演算し、得られた前記シュート旋回角と前記シュート旋回角指令値とが一致するように前記旋回駆動モータを制御することを特徴とする。
【0030】
このような本発明では、前述した本発明の装入装置で述べた通りの作用効果を得ることができ、従来の装入装置で蓄積された運転事例をそのまま適用することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の装入装置およびその制御方法によれば、旋回用ロータに対して傾斜した調整軸まわりに回転する傾動用ロータを有する構成においても、従来の運転事例を適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
図1には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1に示されるのは、本発明に基づく装入装置の旋回制御装置10である。
本実施形態の装入装置は、基本的に前述した特許文献2の構成(
図9および
図10参照)を備えている。
【0034】
すなわち、装入装置は、
図9に示すように、フレーム89に支持されて旋回軸D1を中心に回転可能な旋回用ロータ81と、旋回用ロータ81に設定されて旋回軸D1に第1角度で交差する調整軸D2と、旋回用ロータ81に支持されて調整軸D2を中心に回転可能な傾動用ロータ84と、傾動用ロータ84に固定されて調整軸D2に第2角度で交差する方向へ延びるシュート83と、旋回用ロータ81をフレーム89に対して回転させる旋回駆動モータ82と、傾動用ロータ84を旋回用ロータ81に対して回転させる調整駆動モータ85と、旋回駆動モータ82および調整駆動モータ85を制御する制御装置80とを備えている。
【0035】
前述した制御装置80における制御パラメータとしては、以下が用いられている。
(従来同様の制御パラメータ)
シュート傾斜角s:旋回軸D1に対するシュート83の傾斜角度。
シュート傾斜角指令値sc:制御装置80に与えられるシュート傾斜角sの指令値(運転事例で蓄積されるパラメータ)。
ロータ旋回角θ:フレーム89に対する旋回用ロータ81の旋回軸まわりの角度位置。
ロータ旋回速度指令値Vc:制御装置80に与えられる旋回駆動モータ82の速度の指令値(ロータ旋回速度の指令値に相当、シュート旋回角αの指令値の代替として運転事例で蓄積されているパラメータ)。
【0036】
前述した従来の制御パラメータに対し、制御装置80においては、ベベル式のシュート傾斜調整を行うために、以下のパラメータが追加されている。
(ベベル式で追加される制御パラメータ)
シュート旋回角α:フレーム89に対するシュート83の旋回軸D1まわりの角度位置。
旋回角偏差σ:ロータ旋回角θとシュート旋回角αとの角度差。シュート傾斜角sの調整に伴う旋回用ロータ81におけるシュート83の向きに起因し、ベベル角βの関数となる。
シュート旋回角指令値αc:制御装置80が従うべきシュート旋回角αの指令値。運転事例で蓄積されているロータ旋回速度指令値Vcを積分して得られるパラメータ。
ロータ旋回角目標値θr:旋回駆動モータ82に与えられるロータ旋回角θの目標値。
旋回モータ速度指令Vr:制御装置90で求められる旋回モータ82の速度指令。
ベベル角β:旋回用ロータ81に対する傾動用ロータ84の調整軸D2まわりの角度位置であり、調整駆動モータ85の動作結果。シュート傾斜角sの調整用。
ベベル角目標値βr:調整駆動モータ85に与えられるベベル角βの目標値(シュート傾斜角sの関数)。
【0037】
このような制御装置80のうち、旋回動作に関する制御を行うために、本実施形態では
図1に示す旋回制御装置10を用いる。
なお、制御装置80の機能のうち、シュート83の傾斜調整ほかの機能については、制御装置80の既存の制御構成を利用する。
【0038】
図1において、旋回制御装置10には、前述した制御装置80の制御パラメータであるロータ旋回速度指令値Vc(運転実績を参照)、ロータ旋回角θの現在値(システム内で検出される実績値)、ベベル角βの現在値(同)が与えられる。
そして、旋回制御装置10においては、ロータ旋回速度指令値Vcを積分してシュート旋回角指令値αcが演算され、ベベル角βから旋回角偏差σが演算され、このシュート旋回角指令値αcに旋回角偏差σ分の補償を行ったロータ旋回角目標値θrが求められる。
【0039】
このロータ旋回角目標値θrに基づいて旋回駆動モータ82を制御することで、ロータ旋回速度指令値Vc(従来はシュート旋回角αを意図したもの)に旋回角偏差σ分の補償が行われた状態で旋回用ロータ81を回転させることができる。
なお、オペレータの参照用および制御用に、シュート旋回角αの現在値(システム内で検出される実績値)が出力される。
【0040】
なお、本実施形態の制御装置80においては、旋回駆動モータ82をシュート旋回角αで制御している。このため、旋回制御装置10の内部では、与えられた
ロータ旋回速度指令値Vcを積分して角度値での演算(旋回角偏差σ分の補償)を行うとともに、出力にあたって再び旋回速度である旋回モータ速度指令Vrに変換している。
【0041】
旋回制御装置10は、前述した処理を行うために、旋回速度積分器11、旋回角偏差演算器12、旋回角目標値演算器13、旋回角位置制御器14、シュート旋回角演算器15を備えている。
【0042】
旋回速度積分器11は、積分器111および角度制限器112を備えている。
積分器111は、旋回速度積分器11に入力されるロータ旋回速度指令値Vcを積分してシュート旋回角指令値αcとして出力する。
角度制限器112は、積分器111からのシュート旋回角指令値αcを0〜360度の範囲内の数値に制限するものである。具体的には、ロータ旋回速度指令値Vcの値が360に達する毎にリセット信号を積分器111に送り、積分値を0にリセットする。
このような積分器111および角度制限器112により、旋回速度積分器11においては、
図2に示すように、入力されるロータ旋回速度指令値Vcの値が増加し続けても、出力されるシュート旋回角指令値αcの値は0〜360度の間の値に制限される。
【0043】
旋回角偏差演算器12は、演算器121を備えている。
演算器121は、旋回角偏差演算器12に入力されるベベル角βから旋回角偏差σを演算する。
ここで、制御対象である
図9に示す装入装置において、ベベル角βと旋回角偏差σとの関係は次のようになる。
【0044】
先ず、旋回軸D1と調整軸D2のなす角度(第1角度)をA1、調整軸D2とシュート83の軸線のなす角度(第2角度)をA2とする。
図3に示すように、シュート83の軸線と旋回軸D1との交点P、シュート83先端の中心点Qとし、シュート83軸線に沿った点Pと点Qとの距離をR、シュート83先端の旋回軸D1からの距離をLとして、シュート83の向きの水平成分(シュート旋回角α)方向をx、その直交方向をyとし、シュート83先端のx方向位置をx1、同y方向位置をy1とすると、x1,y1は次式(1)(2)で表される。
【0045】
x1=R[sinA2cosA1
+sinA2cosA1cosβ−sin(A2−A1)] …(1)
y1=RsinA2sinβ …(2)
このとき、L=(x1
2+y1
2)
−2 であり、旋回角偏差σとの関係についてみるとsinσ=y1/Lであるから、σ=sin
−1(y1/L)。ここで、y1は式(2)の通りであるから、次式(3)となる。
σ=sin
−1(RsinA2sinβ/L) …(3)
これにより、ベベル角βが決まれば式(3)から旋回角偏差σが演算できる。
【0046】
演算器121は、前述した旋回角偏差σの演算を行うために、
図4に示すようなベベル角βと旋回角偏差σとの対応関係をデータテーブルあるいは関数として記録しておき、入力されたベベル角βを旋回角偏差σに変換する。
【0047】
図4において、ベベル角βが0度のとき、シュート83は先端が最も上向き(
図9のシュート傾斜角sが最大)であり、
図3においてはシュート先端が軌跡L2の最右側にあり、シュート先端の向きであるシュート旋回角αはロータ旋回角θと一致し、旋回角偏差σ=0である。
ベベル角βが90度のとき、シュート83は中途角度となり、
図3においてはシュート先端が軌跡L2の図中下端となり、シュート旋回角αはロータ旋回角θから大きくずれ、旋回角偏差σ>0である。
【0048】
ベベル角βが180度に近づくと、シュート83は真下向きに近づくことになり、
図3においてはシュート先端が軌跡L2の最左側に近づき、シュート旋回角αはロータ旋回角θに対して下向きに直交する状態に近くなり、旋回角偏差σ=90に近づく。
ここで、ベベル角βが180度になると、シュート83は真下向きとなり、
図3においてはシュート先端が軌跡L2の最左側となる。
【0049】
ベベル角βが180度を超えると、
図3においてはシュート先端が軌跡L2の最左側から図中上方へ移り、シュート旋回角αはロータ旋回角θに対して上向きに直交する状態となり、旋回角偏差σ=−90から0に近づいてゆく。
ベベル角βが270度のとき、シュート83は中途角度となり、
図3においてはシュート先端が軌跡L2の図中上端となり、シュート旋回角αはロータ旋回角θから大きくずれ、旋回角偏差σ<0である。
【0050】
なお、演算器121においては、ベベル角βを−180<β<180(
図9において旋回用ロータ81に対して傾動用ロータ84が調整軸D2まわりに1回転する範囲)とするのではなく、例えば−360<β<360(同2回転する範囲)あるいは−720<β<720(同4回転する範囲)としてもよい。
【0051】
ベベル角βを−720<β<720とする場合、
図5に示すように、ベベル角βの増減に伴って、
図9で旋回用ロータ81に対して傾動用ロータ84が調整軸D2まわりに4回転し、その間にシュート83は一方の上端位置から反対側の上端位置への傾斜を4回繰り返すことができる。この間、シュート83は、ベベル角β=0のとき一方の上端位置にあり、β=180度のとき真下向きとなり、β=360度のとき反対側の上端位置に至る。
従って、このような動作により、旋回用ロータ81を旋回させることなく、シュート83を180度逆向きに傾斜させることができる。
【0052】
このような旋回角偏差演算器12により、旋回角偏差σが演算され、演算された旋回角偏差σは旋回角目標値演算器13、旋回角位置制御器14およびシュート旋回角演算器15に与えられて次の演算に利用される。
【0053】
旋回角目標値演算器13は、加算器131を有し、旋回速度積分器11から出力されたシュート旋回角指令値αcと、旋回角偏差演算器12からの旋回角偏差σとを加算してロータ旋回角目標値θrを演算する。
【0054】
旋回角位置制御器14は、減算器141、増幅器142および加算器143を備えている。
減算器141は、旋回角目標値演算器13で演算されたロータ旋回角目標値θrから、現在のロータ旋回角θを減算し、その差分を増幅器142に送る。
増幅器142は、減算器141で計算された差分を所定の制御ゲインで増幅し、加算器143に送る。
【0055】
加算器143は、増幅器142で増幅された差分に、現在のロータ旋回速度指令値Vcを加算し、旋回モータ速度指令Vrを演算する。
旋回モータ速度指令Vrは、旋回駆動モータ82に与えられ、
図9において旋回用ロータ81が回転して所定のロータ旋回角目標値θrへ駆動される。
このとき、シュート83はロータ旋回角θに対して旋回角偏差σ分変位したシュート旋回角αへ向くことになる。このときのシュート旋回角αは、シュート旋回角指令値αcで指定された向きであり、運転事例から参照された旋回モータ速度指令Vrが意図するシュート83の向きとなる。
【0056】
シュート旋回角演算器15は、加算器151を有する。
加算器151は、旋回角偏差演算器12で演算された旋回角偏差σと、現在のロータ旋回角θとを加算し、これにより実際のシュート83の向きであるシュート旋回角αが演算され、オペレータの参照用および制御用に出力される。
【0057】
このような本実施形態によれば、
図9の装入装置は、旋回制御装置10を有する制御装置80により、ロータ旋回速度指令Vcからシュート旋回角指令値αcを演算し、ベベル角βから旋回角偏差σを演算するとともに、これらのシュート旋回角指令値αc、旋回角偏差σおよび現在のロータ旋回角θを参照してロータ旋回角目標値θrおよび旋回モータ速度指令Vrが計算され、この旋回モータ速度指令Vrに基づいて旋回駆動モータ82が制御される。
これにより、旋回用ロータ81のロータ旋回角θは、ロータ旋回速度指令Vcから旋回角偏差σの影響を除去した旋回モータ速度指令Vrに基づいて制御され、シュート83のシュート旋回角αはロータ旋回速度指令Vcとして運転事例に意図された通りのシュート旋回角指令値αcに基づいて制御される。
【0058】
従って、旋回用ロータ81に対して傾斜した調整軸D2まわりに回転する傾動用ロータ84を有する構成でありながら、制御装置80に与えられるパラメータがロータ旋回速度指令Vcであっても、シュート83の旋回角を適切に制御することができ、従来の装入装置で蓄積された運転事例をそのまま適用することができる。
【0059】
〔第2実施形態〕
図6には、本発明の第2実施形態が示されている。
図6に示されるのは、本発明に基づく装入装置の旋回制御装置10Aである。
本実施形態において、装入装置の全体構成および制御装置80は、基本的に前述した第1実施形態と同様である。このため、共通の構成に関する重複する説明は省略し、以下には本実施形態の旋回制御装置10Aについて説明する。
【0060】
前述した第1実施形態の旋回制御装置10(
図1参照)は、与えられたロータ旋回速度指令値Vcを積分して角度値での演算を行うとともに、出力にあたって再び旋回速度である旋回モータ速度指令Vrに変換していた。
これに対し、本実施形態の旋回制御装置10Aでは、旋回角偏差σを微分してロータ旋回速度指令値Vcに加算することにより、速度制御パラメータのまま旋回モータ速度指令Vrを演算している。
【0061】
このために、旋回制御装置10Aは、前述した第1実施形態の旋回制御装置10(
図1参照)と同様な旋回角偏差演算器12およびシュート旋回角演算器15を有するとともに、旋回角目標値演算器13Aおよび旋回角偏差微分器16を有する。
旋回角偏差演算器12およびシュート旋回角演算器15は、前述した第1実施形態で説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
旋回角偏差微分器16は、旋回角偏差演算器12で演算された旋回角偏差σを微分し、旋回角偏差微分値σ’として出力する。
旋回角目標値演算器13Aは、加算器131Aを有し、旋回制御装置10Aから入力されるロータ旋回速度指令値Vcと、旋回角偏差微分器16からの旋回角偏差微分値σ’とを加算し、旋回モータ速度指令Vrとして出力する。
【0063】
このような本実施形態によっても、
図9の装入装置は、旋回制御装置10Aを有する制御装置80により、ベベル角βを参照して旋回モータ速度指令Vrが計算され、この旋回モータ速度指令Vrに基づいて旋回駆動モータ82が制御される。これにより、ロータ旋回角θはロータ旋回角
目標値θrに基づいて制御され、その結果、シュート旋回角αはシュート旋回角指令値αcに基づいて制御される。
従って、旋回用ロータ81に対して傾斜した調整軸D2まわりに回転する傾動用ロータ84を有する構成でありながら、制御装置80に与えられるシュート旋回角指令値αcとして、従来の装入装置で蓄積された運転事例をそのまま適用することができる。
【0064】
〔変形例〕
本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形等は本発明に含まれるものである。
例えば、旋回制御装置10,10Aの具体的な構成は既存のハードウェアまたはソフトウェアを用いて適宜設計すればよい。
また、本発明の旋回制御装置としては、前述した旋回制御装置10,10Aと同様な機能が得られれば、前述した旋回制御装置10,10A以外の構成であってもよい。
さらに、本発明の装入装置としては、制御装置80の前述した旋回制御装置10,10A以外の構成、例えばシュート傾斜角度を制御する機能等は適宜設計すればよい。