【実施例】
【0026】
以下、実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
[1]被処理物からの汚染物質の除去方法
(1)スラリー化およびpH調整
被処理物である放射性セシウム濃度3,800[Bq/kg]の飛灰1kgと、水道水10Lとを、容量20Lの円筒型容器に投入し、pH12のスラリーを得た。当該スラリーへ、さらに塩酸(和光純薬株式会社製 特級)を添加しながら攪拌機(新東科学株式会社製:スリーワンモーター)で撹拌し、当該スラリーのpH値を10に調整した。
【0027】
(2)磁力選別(1回目)
表面の磁束密度が、(1)1,500ガウス、(2)8,000ガウスの棒磁石を準備した。
当該(1)(2)の各棒磁石を順次、上述したスラリー中に沈め、各回とも15秒間攪拌してから磁石を引き揚げ、磁性物質を磁着物として、スラリーから除去する処理を5回繰り返して、鉄くず等の磁性物質をスラリーから除去した。このときの棒磁石はビニール袋等で覆い、磁着物がビニール袋等内に容易に回収できるようにした。
回収された鉄くず等の磁性物質を105℃の乾燥機で乾燥し、質量と放射性セシウム濃度を測定した(日立アロカ社製 食品放射能測定システム CAN−OSP−NAIを使用)。磁性物質の質量は70[g]であり、その放射性セシウム濃度は1,500[Bq/kg]であった。
【0028】
(3)除染剤の添加
磁性物質除去後のスラリーを容量20Lの円筒型容器に投入し、実施例1に係る磁性除染剤を10g添加して3時間撹拌し、放射性セシウムを磁性除染剤に吸着させて、セシウム吸着磁性除染剤(以下、「Cs吸着磁性除染剤」と記載する場合がある。)とした。
【0029】
(4)磁力選別(2回目)
1回目の磁力選別と同様に、表面の磁束密度が、(1)1,500ガウス、(2)8,000ガウスの棒磁石を準備した。
上記(1)(2)の各棒磁石を順次にスラリー中に沈め、各回とも15秒間攪拌してから磁石を引き揚げて、Cs吸着磁性除染剤を磁着物として、スラリーから回収する処理を5回繰り返して、Cs吸着磁性除染剤をスラリーから回収した。このときの棒磁石はビニール袋等で覆い、磁着物がビニール袋等内に容易に回収できるようにした。
回収されたCs吸着磁性除染剤の質量は50[g]であり、その放射性セシウム濃度は50,200[Bq/kg]であった。
【0030】
(5)ろ過および分析
磁力選別2回目後のスラリーを、No.5Cのろ紙を用いて吸引ろ過、乾燥し、脱水ケーキの質量を測定するとともに、脱水ケーキ、ろ液の放射性セシウム濃度を測定した。脱水ケーキの質量は700[g]であった。放射性セシウム濃度は、脱水ケーキが1,500[Bq/kg]、ろ液が3[Bq/kg]未満であった。脱水ケーキの放射性セシウム濃度測定には、測定対象の放射能レベルにより連続的に選別可能な土壌連続ソーティング装置(ポニー工業株式会社製 SoilSorting System S3)を用い、選別設定値は3,000[Bq/kg]とした。
放射性セシウムの濃度測定結果から、被処理物である飛灰に含有されていた放射性セシウムの殆どが、放射性セシウムを吸着した磁性除染剤に含有されていることが判明した。そして、磁力選別1回目に回収された磁着物には、被処理物由来の放射性セシウムは殆ど含まれておらず、汚染物質の減容化ができた。
【0031】
[2]磁性除染剤の製造方法
1000mLスケールの容器へ、平均長軸長235nmの鉄−コバルト(鉄原子量に対するコバルト原子量割合=3%)磁性粉粒子21gと純水570gとを投入し、常温にて30分間剪断力を有する攪拌機(プライミクス株式会社製TKホモミクサーMarkII)を用いて8000rpmで攪拌し、磁性粉を分散させ、磁性粉スラリーとした。
得られた磁性粉スラリーにアンモニア水(濃度21.3%)14gを添加して、分散液の液性をアルカリ性とした。このアルカリ性の磁性粉スラリーにPDDA(シグマアルドリッチ社製試薬、分子量10〜15万、固形分濃度20%)を15g(処理液全体に対する固形分濃度0.5質量%)添加し、プロペラ型攪拌機を用いて常温で30分間240rpmにて攪拌し、磁性粉粒子へPDDAを付着させた。
【0032】
得られたPDDAが付着した磁性粉粒子のスラリーを磁石の上で静置して、当該磁性粉粒子をスラリーから沈降させた後、上澄みを除き、余分なPDDAやアンモニア成分を除去して沈降物を回収した。
得られた沈降物へ純水を加えて400mLのスラリーとし、当該スラリーを攪拌して液中に不純物を溶かし出した。当該スラリーを再度磁石の上に静置して、PDDA被覆された磁性粉粒子をスラリーから沈降させた後、上澄みを除き、余分なPDDAやアンモニア成分を再度除去して沈降物を得た。
上述の洗浄操作を3回繰り返したところ、スラリーのpH値は8.57となり、導電率は8.5mS/mを示した。また、当該スラリーの一部を採取して乾燥し炭素量を確認したところ、0.5質量%の炭素が検出された。
当該スラリーを、常温にて分散機(プライミクス株式会社製のTKホモミクサーMarkII)により8000rpm(翼周速度12.6m/s)で30分間攪拌し、磁性粉粒子を分散させた。
【0033】
分散処理を行なった磁性粉スラリーへ、フェロシアン化カリウム水溶液(フェロシアン化カリウム三水和物として24.45g含有)、および硫酸ニッケル水溶液(硫酸ニッケル六水和物として19.99g含有)を、それぞれ添加して、常温にて分散機(同上)により8000rpmで30分間攪拌した。その後、磁性粉スラリー(固形分濃度約5%)を、ノズル型スプレードライヤーで噴霧し(入口温度220℃、噴射圧力50mmHg)、乾燥して、PDDAを被覆した磁性粉粒子の表面に、更にフェロシアン化ニッケルが被覆された実施例1に係る磁性除染剤を得た。
【0034】
[比較例1]
磁力選別(1回目)の操作を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
その結果、回収された磁着物の質量は120[g]であり、その放射性セシウム濃度は21,000[Bq/kg]であった。
【0035】
脱水ケーキの質量は700[g]であり、放射性セシウム濃度は1,500[Bq/kg]であった。ろ液の放射性セシウム濃度は3[Bq/L]未満であった。
脱水ケーキを土壌連続ソーティング装置に投入したところ、3,000[Bq/kg]未満と判定された。
【0036】
[実施例2]
飛灰として、放射性セシウム濃度が27,500[Bq/kg]のものを1kg用いた以外は、実施例1と同様の処理および測定を行った。
その結果、磁力選別1回目で回収された磁性物質の質量は40[g]であり、その放射性セシウム濃度は7,000[Bq/kg]であった。
磁力選別2回目で回収されたCs吸着磁性除染剤の質量は40[g]であり、その放射性セシウム濃度は650,000[Bq/kg]であった。
脱水ケーキの質量は680[g]であり、放射性セシウム濃度は2,500[Bq/kg]であった。ろ液の放射性セシウム濃度は3[Bq/L]未満であった。
脱水ケーキを土壌連続ソーティング装置に投入したところ、放射性セシウム濃度は3,000[Bq/kg]未満と判定された。
【0037】
[比較例2]
磁力選別(1回目)の操作を行わなかった以外は、実施例2と同様の操作を行った。
その結果、回収された磁着物の質量は80[g]であり、その放射性セシウム濃度は340,000[Bq/kg]であった。
脱水ケーキの質量は700[g]であり、放射性セシウム濃度は2,500[Bq/kg]であった。ろ液の放射性セシウム濃度は3[Bq/L]未満であった。
脱水ケーキを土壌連続ソーティング装置に投入したところ、3,000[Bq/kg]未満と判定された。
【0038】
【表1】
【0039】
[まとめ]
表1に記載された実施例1および比較例1の結果と、管理型最終処分場への埋立基準は放射性セシウム濃度8,000[Bq/kg]未満であることとから、実施例1では、埋立できない磁着物の質量が、比較例1に比べて2.4分の1に減容化できることが判明した。
同様に、表1に記載された実施例2および比較例2の結果と、放射性セシウム濃度が100,000[Bq/kg]を超えると特定廃棄物となることとから、実施例2では、当該特定廃棄物となる磁着物の質量が、比較例2に比べて2分の1に減容化できることが判明した。