(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記第1部分の軸方向長さがS1とされ、上記最外部の軸方向長さがS2とされるとき、S1/S2が0.3以上0.9以下である請求項1から5のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本願では、ヘッド外方が上側とも称され、ヘッド内方が下側とも称される。
【0018】
本実施形態のゴルフクラブヘッドは、重量体着脱機構を有する。この機構は、R&A(Royal and Ancient Golf Club of Saint Andrews;全英ゴルフ協会)が定めるゴルフ規則を満たしている。即ち、この重量体着脱機構は、R&Aが定める、「付属規則II クラブのデザイン」の「1 クラブ」における「1b 調整性」で規定される要件を満たしている。この「1b 調整性」が規定する要件は、下記の(i)、(ii)及び(iii)である。
(i)容易に調整できるものでないこと。
(ii)調整可能部分はすべてしっかりと固定され、ラウンド中に緩むことの合理的な可能性がないこと。
(iii)調整後のすべての形状が規則に適合すること。
【0019】
図1は、第1実施形態のヘッド4を備えたゴルフクラブ2を示す。このゴルフクラブ2は、ヘッド4、シャフト6及びグリップ8を備えている。ヘッド4は、シャフト6の一端部に取り付けられている。グリップ8は、シャフト6の他端部に取り付けられている。ヘッド4は、クラウン7とソール9とを有する。ヘッド4は中空である。
【0020】
このヘッド4は、ウッド型ヘッドである。ウッド型ヘッドのリアルロフト角は、通常、8度以上34度以下である。ウッド型ヘッドのヘッド体積は、通常、120cc以上470cc以下である。
【0021】
このヘッド4は例示である。ヘッド4として、ウッド型ヘッド、ユーティリティ型ヘッド、ハイブリッド型ヘッド、アイアン型ヘッド及びパター型ヘッドが例示される。シャフト6は管状体である。シャフト6として、スチールシャフト及びいわゆるカーボンシャフトが例示される。
【0022】
図2は、ソール9側から見たヘッド4の斜視図である。ヘッド4は、ヘッド本体h1と、重量体着脱機構M1とを有する。ヘッド4は、複数(2つ)の重量体着脱機構M1を有する。
図2は、重量体着脱機構M1の分解斜視図を含む。2つの重量体着脱機構M1のうちの1つが、分解斜視図で示されている。
【0023】
図2が示すように、重量体着脱機構M1は、ソケット10及び重量体12を備えている。ヘッド本体h1は、ソケット収容部14を備えている。ソケット収容部14の内面の形状は、ソケット10の外形に対応している。ソケット収容部14の数は、重量体着脱機構M1の数と同じである。ソケット収容部14の数は、ソケット10の数と同じである。本実施形態では、2つのソケット収容部14が設けられている。ソケット収容部14の数は、1であってもよいし、2であってもよいし、3以上であってもよい。重量体着脱機構M1の数は、1であってもよいし、2であってもよいし、3以上であってもよい。
【0024】
図3は、ソケット10の斜視図である。
図4(a)は、ソケット10の平面図である。
図4(b)は、ソケット10の底面図である。
図5は、ソケット10の側面図である。
図6は、
図4のA−A線に沿った断面図である。
図7は、
図4のB−B線に沿った断面図である。
図8は、
図5のC−C線に沿った断面図である。
【0025】
ソケット10は、ソケット収容部14の内部に固定されている。この固定は、例えば、接着剤により達成される。ソケット10は、接着剤を用いずに固定されていてもよい。
【0026】
本体部10aは、孔16を有している。孔16は、本体部10aを貫通している。
【0027】
重量体12は、ソケット10に、取り外し可能に取り付けられている。したがって、重量体12は、ヘッド4に、取り外し可能に取り付けられている。重量体12の交換により、ヘッド重心の位置が変更されうる。重量体12の交換により、ヘッド重量が変更されうる。
【0028】
図6及び
図7が示すように、孔16は、上側孔部18と、下側孔部20と、係合段差面22とを有する。
図6及び
図7において両矢印ZR18で示されるのは、上側孔部18が存在する軸方向範囲である。
図6及び
図7において両矢印ZR20で示されるのは、下側孔部20が存在する軸方向範囲である。上側孔部18の奥側(下側)に、下側孔部20が位置する。上側孔部18の内面は、その全体が滑らかに連続している。本実施形態において、上側孔部18の内面の断面形状は、略長方形である(
図4(a)及び
図4(b)参照)。この略長方形は、長方形の4つの角に丸みが付与された形状である。上側孔部18の内面の断面形状は、重量体12の係合部32の断面形状に略等しい。
【0029】
なお、本願において「軸方向」とは、軸線Z(後述)の方向を意味する。本願において「周方向」とは、この軸線Zを中心とする円周面における周方向を意味する。周方向は、最外部E1(後述)の移動方向に等しい。
【0030】
図8が示すように、下側孔部20の内面の断面形状は、複雑な凹凸を有している。下側孔部20の内面形状の詳細は、後述される。
【0031】
上側孔部18の断面形状は、下側孔部20の断面形状と相違する。この相違に起因して、係合段差面22が形成されている(
図4(b)参照)。係合段差面22は、下向きの面である
【0032】
下側孔部20は、第1部分20xと第2部分20yとを有している。
図6及び
図7において両矢印ZR1で示されるのは、第1部分20xが存在する軸方向範囲である。
図6及び
図7において両矢印ZR2で示されるのは、第2部分20yが存在する軸方向範囲である。第1部分20x及び第2部分20yの詳細は後述される。
【0033】
図2が示すように、ソケット10は、底面形成部10bを有している。底面形成部10bは、ソケット10の底面部を形成している。底面形成部10bは、下側孔部20の下側開口を塞いでいる。底面形成部10bは、重量体12がソケット収容部14の底部に当たることを防止しうる。なお、底面形成部10bは無くてもよい。底面形成部10bが、ソケット10の他の部分と一体成形されてもよい。
【0034】
ソケット10は、ポリマーによって形成されている。このポリマーの弾性率Esは、ヘッド本体h1を形成する材質の弾性率Ehよりも低い。好ましくは、ソケット10の材質は、樹脂である。ソケット10の下側孔部20は、重量体12の回転に伴い弾性変形しうる。この弾性変形の詳細については、後述される。
【0035】
図9は、重量体12の斜視図である。
図10(a)は、重量体12の平面図である。
図10(b)は、重量体12の底面図である。
図11(a)及び
図11(b)は、重量体12の側面図である。
図11(a)と
図11(b)とでは、視点が90°相違する。
図12は、
図11(a)のD−D線に沿った断面図である。
図13は、
図12のE−E線に沿った断面図である。
【0036】
図9、
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、重量体12は、頭部28、首部30及び係合部32を有する。頭部28の上端面の中央に、非円形孔34が形成されている。本実施形態では、非円形孔34の形状は、略四角形である。非円形孔34の内面には、凹部34aが設けられている(
図12参照)。頭部28の外周面に複数の切欠36が形成されている。首部30の外面は円周面である。首部30の形状は円柱である。ソケット10に固定された状態において、頭部28の上面は外部に露出する。
【0037】
係合部32の外面の断面形状S32は非円形である。
図10(b)及び
図13が示すように、本実施形態では、この断面形状S32は略長方形である。
図4には、上側孔部18の断面形状S18が示されている。断面形状S32は、断面形状S18と相似の関係にある。係合部32の断面形状S32は、断面形状S18よりも(僅かに)小さい。係合部32は、上側孔部18に挿入されうる。
【0038】
図12が示すように、係合部32の下端面には、凹部38が形成されている。この凹部38により形成される空間の体積によって、ソケット10との係合に係る部分の外形を変えることなく、重量体12の体積が調整されうる。よって、重量体12の質量が容易に調整されうる。
【0039】
図10(b)が示すように、係合部32は、角部32aを備えている。複数の角部32aが設けられている。本実施形態では、4つの角部32aが設けられている。角部32aは、軸垂直方向に突出する突出部を形成している。軸垂直方向とは、軸線Z(後述)に対して垂直な方向である。
【0040】
係合部32は、係合面40を有する(
図9、
図11(a)及び
図13参照)。係合部32と首部30との断面形状の差に起因して、係合面40が形成されている。係合面40は、上向きの面である。係合面40は、頭部28の下面29に対向している。
【0041】
この重量体12の比重G2は、ヘッド本体h1の比重G1よりも大きい。この重量体12の比重G2は、ソケット10の比重G3よりも大きい。耐久性及び比重の観点から、この重量体12の材質として、金属が好ましい。この金属として、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、タングステン合金、及び、タングステンニッケル合金(W−Ni合金)が例示される。チタン合金の一例は、6−4Ti(Ti−6Al−4V)である。ステンレス鋼の一例は、SUS304である。
【0042】
重量体12の製造方法として、鍛造、鋳造、焼結、NC加工等が挙げられる。アルミニウム合金、6−4チタン及びSUS304の場合、鋳造後にNC加工されるのが好ましい。W−Ni合金の場合、焼結又は鋳造の後、NC加工されるのが好ましい。NCとは、「Numerical Control」の略である。
【0043】
図14は、非係合ポジションNPにおける重量体着脱機構M1の平面図である。
図15は、係合ポジションEPにおける重量体着脱機構M1の平面図である。
【0044】
重量体12は、ソケット10に対して回転しうる。この相対回転により、重量体12は、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとを採ることができる。
【0045】
非係合ポジションNPでは、重量体12は、ソケット10から引き抜かれうる。非係合ポジションNPにおいて、重量体12は、アンロック状態にある。
【0046】
これに対して、係合ポジションEPでは、重量体12は、ソケット10から引き抜かれ得ない。係合ポジションEPでは、重量体12はソケット10に固定されている。係合ポジションEPにおいて、重量体12は、ロック状態にある。使用中のクラブ2では、重量体12は、係合ポジションEPにセットされる。ロック状態にある重量体12は、脱落しない。
【0047】
重量体12をソケット10に挿入した時点では、重量体12は、ソケット10に対して、非係合ポジションNPにある。角度θの相対回転によって、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと移行する。角度θの逆相対回転によって、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへと戻る。非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと移行する相対回転の角度が、本願において、「+θ」とも表記される。係合ポジションEPから非係合ポジションNPへと移行する相対回転の角度が、本願において、「−θ」とも表記される。回転方向が互いに逆方向であることを示すために、「+」及び「−」の符号が付されている。θの単位は、度(degree)である。
【0048】
この重量体着脱機構M1では、角度θの回転を与えるだけで、重量体12の取り付け及び取り外しが可能である。重量体着脱機構M1は、重量体12の取り付け及び取り外しにおける容易性に優れる。
【0049】
本実施形態では、角度θが40°である。角度θは40°に限定されない。固定の確実性の観点から、角度θは、20°以上が好ましく、30°以上がより好ましい。取り付け及び取り外しの容易性の観点から、角度θは、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましい。
【0050】
重量体12には、数字が表示されている。この数字は、重量体12の質量を示している。この重量体12は、7gである。
【0051】
重量体12の回転には、専用の工具が用いられてもよい。
図16は、この工具60の一例を示す斜視図である。この工具60は、トルクレンチである。この工具60は、柄62,軸64及び先端部66を備えている。柄62は、柄本体68と、把持部70とを有する。この把持部70は、把持部本体70aと、蓋体70bとを備えている。
【0052】
把持部本体70aに、軸64の後端部が固定されている。軸64の先端部66の断面形状は、重量体12の非円形孔34の断面形状に対応している。本実施形態では、先端部66の断面形状は四角形である。先端部66に、ピン72が設けられている。先端部66の側面に、ピン72が突出している。図示されないが、先端部66には、弾性体(コイルばね)が内蔵されている。この弾性体の付勢力により、ピン72は、突出する向きに付勢されている。
【0053】
重量体12を着脱する際には、蓋体70bは、閉められている。把持部本体70aの内部には、重量体収容部(図示されず)が設けられている。好ましくは、この重量体収容部は、複数の重量体12を収容しうる。重量が異なる複数の重量体12が収容されているのが好ましい。蓋体70bを開けることで、重量体12が取り出されうる。
【0054】
重量体12の装着では、工具60の先端部66が、重量体12の非円形孔34に差し込まれる。この差し込みにより、ピン72は、退行しつつ、非円形孔34を押圧する。この押圧力により、重量体12は、先端部66から脱落しにくい。ピン72は、非円形孔34の凹部34a(
図12参照)に入り込みうる。このピン72の入り込みにより、重量体12は、先端部66から脱落しにくい。工具60の軸64に保持された重量体12は、孔16に挿入される。
【0055】
重量体12の係合部32は、孔16の上側孔部18を通過して、下側孔部20に至る。この挿入の直後において、重量体12は、非係合ポジションNPにある。
【0056】
非係合ポジションNPにある重量体12に対して、角度+θ°の上記相対回転がなされる。具体的には、工具60を用いて、重量体12が、ソケット10に対して、角度+θ°回転される。この回転により、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへの移行が達成される。このようにして、重量体12の取り付けが完了する。重量体12の取り付けは容易である。
【0057】
重量体12の取り外しでは、角度θ°の逆回転がなされる。すなわち、角度−θ°の回転がなされる。この回転により、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへの移行が達成される。非係合ポジションNPにある重量体12は、引き抜かれうる。上述の通り、ピン72は、非円形孔34の凹部34a(
図12参照)に入り込みうる。このピン72の入り込みにより、重量体12の引き抜きが一層容易とされている。
【0058】
係合ポジションEPでは、重量体12を孔16から引き抜くことはできない。係合ポジションEPにおいては、孔16の係合段差面22と重量体12の係合面40との係合により、重量体12の引き抜きが阻害される。よって、係合ポジションEPでは、重量体12の非円形孔34から、工具60が容易に引き抜かれうる。
【0059】
図17は、係合部32及びソケット10を示す断面図である。
図17は、前述した軸方向範囲ZR1における断面図である(
図6及び
図7参照)。
図17の左側に、非係合ポジションNPにおける断面図が示されている。
図17の右側に、係合ポジションEPにおける断面図が示されている。
図17には、上記角度θの回転の中心軸である軸線Zが点で示されている。係合部32の輪郭線の断面の図心は、この軸線Z上にある。上記相対回転における重量体12の回転は、この軸線Zを中心とした回転である。
【0060】
なお、上述の通り、非係合ポジションNPにおいては、係合部32と下側孔部20との間に隙間(遊び)が存在する。よって、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと向かう上記相対回転の初期段階において、重量体12の回転軸線にズレが生じうる。しかし、非係合ポジションNPから係合ポジションEPへと向かう上記相対回転の最終段階では、上記隙間(遊び)が消滅し、重量体12の回転軸線のズレは解消される。よって上記軸線Zは、一義的に決定されうる。ソケット10の弾性変形により、重量体12の回転軸は操作毎に僅かに相違しうるが、軸線Zは、最も理想的な回転軸として定義される。重量体12の回転軸線が一義的でない場合、上記軸線Zは、係合ポジションEPにおける重量体12の中心軸線と定義される。
【0061】
図17が示すように、軸方向範囲ZR1において、下側孔部20は、非係合対応面80と、係合対応面82と、抵抗面84とを有する。非係合対応面80は、非係合ポジションNPでの係合部32に対応した面である。係合対応面82は、係合ポジションEPでの係合部32に対応した面である。抵抗面84は、非係合対応面80と係合対応面82との間に位置する。
【0062】
非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの間の相互移行の途中において、抵抗面84は、係合部32によって押圧される。この押圧は、主として、角部32aによってなされる。この押圧により、係合部32と下側孔部20との間に摩擦力が生じる。この押圧により、抵抗面84は弾性変形する。ソケット10の上記弾性率Esによって、この摩擦力が変化する。この摩擦力は、回転抵抗を生む。大きな摩擦力は、大きな回転抵抗を生む。上記弾性率Esを大きくすることで、回転抵抗が大きくされうる。大きな回転抵抗により、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの相互移行には、強いトルクが必要となる。この場合、上記相互移行は、容易には起こらない。打球時の衝撃力によって、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへの移行は生じない。上記相互移行には、工具60が必要とされる。工具60を用いずに、素手によって相互移行を達成することはできない。打撃時の強い衝撃によっても、係合ポジションEPにある重量体12は外れない。
【0063】
上記弾性率Esが大きすぎる場合、上記相互移行を達成するために、過大なトルクが必要となることがある。取り付けの容易性の観点から、過大なトルクは好ましくない。上記弾性率Esは、上記相互移行に要するトルクが適切となるように、設定される。
【0064】
上記相互移行において、重量体12を回転させるのに必要なトルクは、抵抗面84が最も弾性変形しているときに、極大となる。重量体12を回転させるのに必要なトルクは、上記相互移行の途中において極大となる。よって、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへの移行は容易には起こらない。この極大のトルクは、プレー中における重量体12の脱落を防止するのに寄与している。
【0065】
図17が示すように、抵抗面84は、凸状部を有している。この凸状部は、ソケット10の中心に向かって突出している。この凸状部は、滑らかな曲面によって形成されている。この凸状部により、上記相互移行の途中で発生する回転抵抗が大きくされている。この凸状部は、係合ポジションEPの解除を効果的に抑制しうる。
【0066】
なお、抵抗面84は、凸状部でなくてもよい。例えば抵抗面84は平坦であってもよい。上記トルクの極大値を高める観点からは、抵抗面84は凸状部であるのが好ましい。
【0067】
このように、重量体着脱機構M1では、角度θの相対回転を行うだけで、重量体12の取り付けが可能である。更に、角度θの相対回転を行うだけで、重量体12の取り外しが可能である。
【0068】
本実施形態では、この抵抗面84が、第1部分20xである。上記相対回転において、第1部分20xは、係合部32によって押圧される。この押圧により、第1部分20xに、上記弾性変形が生じる。この弾性変形は、圧縮変形及びその変形の回復である。最大の変形は、最外部E1によってもたらされる。この最外部E1については、後述される。
【0069】
非係合ポジションNPでは、係合部32は下側孔部20を変形させない。
図17の左側が示すように、非係合ポジションNPでは、係合部32と下側孔部20との間に、隙間が存在しうる。よって、非係合ポジションNPにおいて、重量体12の挿入及び抜き取りは容易である。一方、
図17の右側が示すように、係合ポジションEPでは、全ての角部32aが、隙間なく、下側孔部20に密着している。この密着した部分では、係合対応面82が角部32aによって押圧されている。この押圧により、下側孔部20が弾性変形している。この弾性変形により、下側孔部20が拡張されている。この弾性変形により、互いに対向する2つの係合対応面82の間の距離が拡張されている。この拡張が可能となるように、係合部32の寸法及び下側孔部20の寸法が決定されている。上記弾性変形の復元力により、重量体12は固定されている。
【0070】
このように、重量体着脱機構M1では、以下の構成A及び構成Bが達成されている。この構成Aにより、重量体12の固定が一層確実となる。また、構成Bにより、着脱作業が容易とされている。
[構成A]:係合ポジションEPにおいて、係合部32がソケット10を弾性変形させ、この弾性変形により、下側孔部20が拡張されている。
[構成B]:非係合ポジションNPにおいて、係合部32はソケット10を弾性変形させない。
【0071】
前述の通り、ソケット10は、上側孔部18と下側孔部20とを有する。上側孔部18と下側孔部20との間で断面形状が相違している。この断面形状の相違に起因して、前述の係合段差面22が生じている。
【0072】
図4(a)が示すように、上側孔部18は、被保持部18aを有する。被保持部18aの下面は、係合段差面22である。
【0073】
非係合ポジションNPにおいては、被保持部18aは、重量体12に係合しない。一方、係合ポジションEPにおいては、被保持部18aは、重量体12に係合する。係合ポジションEPでは、被保持部18aは、下面29と係合面40とによって挟まれる。換言すれば、係合ポジションEPでは、被保持部18aは、重量体12によって挟まれる。よって、重量体12の固定が確実とされている。
【0074】
図6及び
図7が示すように、係合段差面22は傾斜している。この傾斜に起因して、被保持部18aの軸方向厚みが変化している。被保持部18aの軸方向厚みは徐々に変化している。重量体12を係合ポジションEPへと回転させるにつれて、重量体12によって挟まれる部分の軸方向厚みの最大値が大きくなる。係合ポジションEPでは、被保持部18aは、この軸方向厚みが小さくなるように圧縮変形されている。重量体12を係合ポジションEPへと回転させるにつれて、この圧縮変形が大きくなる。係合ポジションEPでは、この圧縮変形の復元力により、被保持部18aから下面29及び係合面40に押圧力が付与されている。このため、重量体12の振動が抑制されており、重量体12の固定がより一層確実とされている。
【0075】
図18は、重量体着脱機構M1の断面図である。断面の位置は、
図17と同じである。
図18の左側は、非係合ポジションNPにおける断面図である。
図18の右側は、係合ポジションEPにおける断面図である。
【0076】
図18の左側は、非係合ポジションNPにおける断面図である。この非係合ポジションNPの断面図においてクロスハッチで示されている部分は、逆回転抑制部Rxである。この逆回転抑制部Rxを画定する円弧C1は、軸線Zを中心点とし、この中心点Zから点Pfまでの距離を半径R1とする円の一部である。点Pfは、係合部32の断面の輪郭線において、点Zから最も遠い点である。この逆回転抑制部Rxは、ロックを行う際における逆回転を阻止しうる。この逆回転抑制部Rxは、係合ポジションEPへ向かうための正規回転(+θ°の回転)を促す。すなわち、正規回転促進効果が奏される。
【0077】
図18の右側は、係合ポジションEPにおける断面図である。この係合ポジションEPの断面図においてクロスハッチで示されている部分は、過回転抑制部Ryである。この過回転抑制部Ryを画定する円弧C1は、上述の通りである。この過回転抑制部Ryは、ロックを行う際における過回転を阻止しうる。この過回転抑制部Ryは、係合ポジションEPに至った係合部32がこの係合ポジションEPを超えて更に過回転することを抑制する。過回転抑制部Ryは、係合ポジションEPの達成を促す。過回転抑制部Ryにより、過回転抑制効果が奏される。
【0078】
本実施形態では、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが大きく、且つ高い。よって、上記正規回転促進効果及び上記過回転抑制効果が高い。本実施形態では、過回転抑制部Ryを形成している凸部が、逆回転抑制部Rxでもある。ただし、重量体12が係合ポジションEPにあるとき、過回転抑制部Ryは、係合部32により圧縮され、僅かに変形している。一方、重量体12が非係合ポジションNPにあるとき、逆回転抑制部Rxには、圧縮変形は生じていない。なお、過回転抑制部Ryを形成している凸部と、逆回転抑制部Rxを形成している凸部とが、それぞれ別個に設けられても良い。
【0079】
図19は、係合部32及びソケット10を示す断面図である。
図19は、前述した軸方向範囲ZR2における断面図である(
図6及び
図7参照)。
図17が上記軸方向範囲ZR1における断面図であるのに対して、この
図19は上記軸方向範囲ZR2における断面図である。
【0080】
図19の左側に、非係合ポジションNPにおける断面図が示されている。
図19の右側に、係合ポジションEPにおける断面図が示されている。
図19には、上記角度θの回転の中心軸である軸線Zが点で示されている。係合部32の断面の図心は、この軸線Z上にある。上記相対回転における重量体12の回転は、この軸線Zを中心とした回転である。
【0081】
図19が示すように、軸方向範囲ZR2において、下側孔部20は、非係合対応面80と、係合対応面82と、非接触面86とを有する。非係合対応面80は、非係合ポジションNPでの係合部32に対応した面である。係合対応面82は、係合ポジションEPでの係合部32に対応した面である。非接触面86は、非係合対応面80と係合対応面82との間に位置する。
【0082】
前述のとおり、軸方向範囲ZR1には、抵抗面84が設けられている。この抵抗面84は、第1部分20xの表面である。これに対して、軸方向範囲ZR2には、抵抗面84に代えて、非接触面86が設けられている。本実施形態では、この非接触面86が、第2部分20yの表面である。
【0083】
図6及び
図7が示すように、本実施形態では、第2部分20yは、第1部分20xの下側に設けられている。第2部分20yは、第1部分20xの上側に設けられても良い。
【0084】
係合部32は、最外部E1を有する。最外部E1は、重量体12の回転軸線Zから最も遠い部分である。本実施形態において、最外部E1は、4つの角部32aのそれぞれに存在する稜線である(
図9及び
図10(b)参照)。本実施形態において、最外部E1は直線である。この最外部E1は、前述した点Pfの集合である(
図18参照)。この最外部E1は、軸線Zに対して平行である。
【0085】
なお、最外部E1は、本実施形態のように線であってもよいし、点であってよいし、面であってもよい。最外部E1が面である場合、典型的な最外部E1は、周方向に沿った曲面である。最外部E1は、本実施形態のように直線であってもよいし、曲線であってもよい。
【0086】
上述の通り、第1部分20xは係合部32によって圧縮される。第1部分20xは、最外部E1によって圧縮変形されうる圧縮変形部cp1を有している(
図6、
図7及び
図8参照)。この圧縮変形部cp1は、上記相対回転の過程において、圧縮変形される。第2部分20yは、この圧縮変形部cp1の下側に設けられている。第2部分20yは、圧縮変形部cp1の上側に設けられてもよい。前述した抵抗面84は、圧縮変形部cp1の表面である。第1部分20xの一部が圧縮変形部cp1であってもよい。第1部分20xの全体が圧縮変形部cp1であってもよい。
【0087】
本願では、最外部E1の通過領域が定義される。この通過領域は、下側孔部20の内面に設定される領域である。この通過領域とは、上記角度θの上記相対回転において、最外部E1が対向又は接触しうる領域である。なお「対向」とは、軸垂直方向における対向を意味する。この通過領域には、係合ポジションEPにおける最外部E1が対向又は接触しうる領域も含まれる。
【0088】
係合部32は、4つの最外部E1を有する。
図18が示すように、係合部32は、最外部E1として、第1の最外部E11、第2の最外部E12、第3の最外部E13及び第4の最外部E14を有する。
【0089】
図8において両矢印CR1で示されるのは、上記通過領域の周方向範囲である。4つの上記最外部E1のそれぞれに対応して、 周方向における4箇所に範囲CR1が存在している。第1の周方向範囲CR11は、第1の最外部E11の周方向通過範囲である。第2の周方向範囲CR12は、第2の最外部E12の周方向通過範囲である。第3の周方向範囲CR13は、第3の最外部E13の周方向通過範囲である。第4の周方向範囲CR14は、第4の最外部E14の周方向通過範囲である。
【0090】
図8には、第1仮想平面LP1、第2仮想平面LP2、第3仮想平面LP3及び第4仮想平面LP4が示されている。これらの仮想平面LP1からLP4は、二点鎖線で示されている。
【0091】
これらの仮想平面LP1からLP4は、
図19にも示されている。
【0092】
図19が示すように、第1仮想平面LP1及び第2仮想平面LP2は、非係合ポジションNPにおける仮想平面である。第1仮想平面LP1は、第1の最外部E11及び第3の最外部E13を含む平面である。第2仮想平面LP2は、第2の最外部E12及び第4の最外部E14を含む平面である。
【0093】
図19が示すように、第3仮想平面LP3及び第4仮想平面LP4は、係合ポジションEPにおける仮想平面である。第3仮想平面LP3は、第1の最外部E11及び第3の最外部E13を含む平面である。第4仮想平面LP4は、第2の最外部E12及び第4の最外部E14を含む平面である。
【0094】
図8では、これら4つの仮想平面LP1からLP4が一つの図面に集約されている。第1の周方向範囲CR11は、第1仮想平面LP1と第3仮想平面LP3との間に位置する。第2の周方向範囲CR12は、第2仮想平面LP2と第4仮想平面LP4との間に位置する。第3の周方向範囲CR13は、第1仮想平面LP1と第3仮想平面LP3との間に位置する。第4の周方向範囲CR14は、第2仮想平面LP2と第4仮想平面LP4との間に位置する。
【0095】
図6及び
図7において両矢印AR1で示されるのは、上記通過領域の軸方向範囲である。重量体12は軸方向に移動しないので、最外部E1も軸方向に移動しない。本実施形態では、4つの最外部E1の軸方向範囲AR1は、全て一致している。軸方向範囲AR1は、静止状態の重量体12における最外部E1の位置に一致している。
【0096】
なお、本実施形態では、軸方向範囲AR1は、下側孔部20の軸方向範囲ZR20に一致している(
図6及び
図7参照)。
【0097】
本実施形態において、上記通過領域は、周方向及び軸方向において決定される。すなわち、この通過領域は、周方向範囲が範囲CR1であり、且つ、軸方向範囲が範囲AR1である領域である。
【0098】
本実施形態では、4つの最外部E1のそれぞれに対応して、4箇所の上記通過領域が決定される。これら4箇所の通過領域は、次の通りである。
(1)第1の通過領域は、周方向範囲が上記範囲CR11であり、且つ、軸方向範囲が上記範囲AR1である領域である。
(2)第2の通過領域は、周方向範囲が上記範囲CR12であり、且つ、軸方向範囲が上記範囲AR1である領域である。
(3)第3の通過領域は、周方向範囲が上記範囲CR13であり、且つ、軸方向範囲が上記範囲AR1である領域である。
(4)第4の通過領域は、周方向範囲が上記範囲CR14であり、且つ、軸方向範囲が上記範囲AR1である領域である。
【0099】
下側孔部20は、第1部分20x及び第2部分20yを有している。第1部分20x及び第2部分20yは、上記通過領域に設けられている。本実施形態では、4つの上記通過領域の全てに、第1部分20x及び第2部分20yが設けられている。複数の通過領域のうちの少なくとも1つが、第1部分20x及び第2部分20yを有していればよい。
【0100】
図7において両矢印D1で示されているのは、第1部分20xと上記回転軸線Zとの距離である。
図7において両矢印D2で示されているのは、第2部分20yと上記回転軸線Zとの距離である。距離D1及び距離D2は、軸垂直方向に沿って測定される。
【0101】
本実施形態では、次の構成(a1)が成立している。換言すれば、本実施形態では、次の構成(b1)が成立している。
【0102】
(a1)同一の周方向位置において、距離D2が距離D1よりも大きい。
(b1)同一の軸方向断面において、距離D2が距離D1よりも大きい。
【0103】
なお、軸方向断面とは、軸線Zを含む平面による断面である。この断面は、無数に存在する。
【0104】
図8から明らかなように、距離D1及び距離D2は、周方向位置によって相違しうる。このため、距離D1と距離D2とは、同一の周方向位置において、比較される。この観点から、上記構成(a1)では、「同一の周方向位置」と規定されている。同様に、上記構成(b1)では、「同一の軸方向断面」と規定されている。
【0105】
上記構成(a1)により、第2部分20yが第1部分20xに置換された場合と比較して、重量体12の上記相対回転における上記回転抵抗が減少する。すなわち、第1部分20xの一部が第2部分20yとされることで、上記回転抵抗が減少する。本実施形態では、次の効果Aが奏される。
[効果A]:上記回転抵抗が減少する。換言すれば、正規回転に要するトルクが減少する。
【0106】
この効果Aに起因して、重量体12の取り付け及び取り外しが容易とされうる。よって、利便性が向上しうる。
【0107】
上記実施形態では、あらゆる周方向位置において、上記構成(a1)が成立している。よって、上記効果Aがより一層向上している。
【0108】
上記効果Aに起因して、トルク差が拡大しうる。このトルク差とは、上記過回転又は上記逆回転を生じさせるトルクと、正規回転に必要なトルクとの間の差である。大きなトルク差により、使用者は、正規回転か否かを認識しやすい。このトルク差により、使用者は、係合ポジションEPにあることを認識しやすい。このトルク差は、正規回転を促進し、上記過回転及び上記逆回転を抑制しうる。
【0109】
図7が示すように、軸方向断面において、第1部分20xの距離D1は一定である。第1部分20xは、軸線Zに対して平行な軸平行部である。本実施形態では、第1部分20xの全体が軸平行部である。ただし、
図8等が示すように、上側孔部18の内面形状には複雑な凹凸が形成されており、周方向位置によって距離D1は変化している。
【0110】
図7が示すように、軸方向断面において、第2部分20yは、斜面部202と軸平行部204とを有する。斜面部202において、距離D2は、下側にいくにつれて大きくなっている。軸平行部204は、軸線Zに対して平行である。
【0111】
図7で示される軸方向断面は、第1部分20x及び第2部分20yの形態の一例である。第1部分20x及び第2部分20yは、軸平行部を有していなくてもよい。
【0112】
第2部分20yのうち、軸平行部204は、非接触面86である。上記角度θの上記相対回転の過程において、この軸平行部204は、最外部E1に接触しない。軸平行部204は、重量体12に、上記回転抵抗を付与しない。軸平行部204は、上記効果Aを高める。
【0113】
第2部分20yは、最外部E1と接触してもよい。第2部分20yは、最外部E1によって圧縮変形されてもよい。上述の通り、距離D2は距離D1よりも大きい。よって、上記回転抵抗は、第2部分20yが第1部分20xに置換された場合と比較して、小さい。よってこの場合も、上記効果Aが奏される。
【0114】
上記回転抵抗を低減させるため、上述のように第2部分20yを設けるのではなく、次の仮想構成(c1)を採用することも可能である。
(c1)抵抗面84の全体において、回転軸線Zからの距離D3を大きくする。
例えば、上記距離D3(図示されず)は、上記距離D1とD2との間の値に設定されうる。例えば、上記距離D3は、上記距離D2よりも小さく且つ上記距離D1よりも大きい値に設定されうる。この構成(c1)によっても、上記回転抵抗が低減される。しかしこの構成(c1)と比較して、上記構成(a1)は、いくつかの利点がある。
【0115】
構成(a1)は、仮想構成(c1)と比較して、係合ポジションEPにおける重量体12の安定性を高めうる。この理由が、以下で説明される。
【0116】
図17、
図18及び
図19が示すように、係合ポジションEPでは、重量体12は、下側孔部20の密着によって、固定されている。この密着部分では、下側孔部20が圧縮変形され、この変形の復元力により、係合部32が押圧されている。4つの角部32aが押圧されることにより、重量体12は安定的に固定されている。
【0117】
仮想構成(c1)では、上記距離D3が上記距離D1よりも大きいため、下側孔部20の圧縮変形量が小さい。このため、上記押圧力が小さい。これに対して、構成(a1)では、上記距離D1が小さいため、下側孔部20の圧縮変形量が大きい。このため、上記押圧力が大きい。この大きな押圧力により、重量体12の安定的な固定が達成されている。即ち、上記実施形態では、次の効果Bが奏されうる。
[効果B]:係合ポジションEPにおいて、重量体12が、大きな押圧力によって安定的に固定されている。
【0118】
大きな圧縮変形量により、角部32aは、下側孔部20を凹ませている。この角部32aと凹みとの物理的係合により、回転抑制効果が生じうる。この回転抑制効果により、重量体12の安定的な固定が達成されている。即ち、上記実施形態では、次の効果Cが奏されうる。
[効果C]:大きな圧縮変形量に起因して、係合ポジションEPにおいて、物理的係合が増大する。この物理的係合により、上記回転抑制効果が高まる。
【0119】
この効果Cも、重量体12の安定的な固定に寄与している。
【0120】
上述のように、本実施形態では、大きな押圧力が生じうる。その反面、本実施形態では、第2部分20yが存在する。この第2部分20yは、非接触面86を有しており、この非接触面86は押圧力を付与しない。押圧面積を比較すると、構成(a1)よりも、仮想構成(c1)のほうが大きい。
【0121】
押圧面積が小さくなるにも関わらず、本実施形態は、仮想構成(c1)に比較して、重量体12を安定的に固定しうる。その第1の理由として、上述した効果Cが挙げられ、その第2の理由として、寸法誤差の影響が挙げられる。
【0122】
上記第1の理由(効果C)は、次のように説明される。圧縮変形が生じる面積が大きい場合であっても、圧縮変形量が小さい場合、上記物理的係合の効果は小さい。物理的係合が増大する効果は、押圧面積が小さくなる効果を上回りうる。
【0123】
第2の理由(寸法誤差)は、次のように説明される。一般に製造物には、寸法誤差が必須的に生じる。下側孔部20にも寸法誤差が生じうる。この寸法誤差により、上記圧縮変形量が減少しうる。圧縮変形量の減少を、割合として考えると、本実施形態は、仮想構成(c1)に比較して有利である。すなわち、寸法誤差に起因する圧縮変形量の減少量の絶対値が一定とすると、減少割合は、仮想構成(c1)よりも本実施形態の方が小さい。なぜなら、本実施形態では、この割合を算出する際に分母となる圧縮変形量の設計値が大きいからである。また、圧縮変形量の設計値が小さい場合、小さな寸法誤差によって、圧縮変形量がゼロとなりうる。これに対して、圧縮変形量の設計値が大きい場合、寸法誤差によって、圧縮変形量がゼロとなりにくい。このように、本実施形態では、仮想構成(c1)に比較して、寸法誤差の影響をより小さくしうる。
【0124】
ここで、初期圧縮変形、初期圧縮変形量及び初期押圧力が定義される。初期圧縮変形とは、係合ポジションEPから非係合ポジションNPへ向かう回転の初期段階において生じる圧縮変形である。この初期圧縮変形は、係合部32が下側孔部20を変形させることによって生ずる。初期圧縮変形量とは、上記初期圧縮変形の大きさである。初期押圧力とは、上記初期圧縮変形によって生じる押圧力である。
【0125】
重量体12が係合ポジションEPから非係合ポジションNPへと回転し始める瞬間が、回転開始局面とも称される。この回転開始局面で、上記初期圧縮変形が生じうる。この回転開始局面で、上記初期押圧力が生じうる。
【0126】
この回転開始局面は、重量体12の固定の安定性に影響を与える。例えば、重量体12が容易にぐらつくか否かは、この回転開始局面における回転しにくさに依存しうる。回転開始局面で重量体12の回転を規制することができれば、結果として、重量体12が安定的に固定される。
【0127】
上述した効果Bと同様の理由により、上記回転開始局面において、次の効果Dが生じうる。上述した効果Cと同様の理由により、上記回転開始局面において、次の効果Eが生じうる。これらの効果D及び効果Eも、重量体12の固定の安定性に寄与している。
【0128】
[効果D]:上記回転開始局面において、重量体12が、大きな押圧力を受ける。
【0129】
[効果E]:上記回転開始局面において、物理的係合が増大し、上記回転抑制効果が高まる。
【0130】
更に、本実施形態は、設計容易性を有する。第2部分20yの存在は、下側孔部20の設計を容易とする。抵抗面84の設計では、上記回転抵抗として、所定のトルク値が設定される。僅かな寸法の相違が上記トルク値を大きく変化させうるため、この抵抗面84の設計は容易ではない。本実施形態では、第2部分20yの軸方向長さを調整することによって、上記トルク値が調整されうる。よって、このトルク値の調整は容易である。このように、本実施形態は、次の効果Fを奏しうる。
[効果F]:第2部分20yを設けることにより、回転抵抗の調整が容易である。よって、下側孔部20の設計が容易である。
【0131】
第2部分20yにより、上記回転抵抗が、係合部32の軸方向長さに関わらず、一定とされうる。係合部32と下側孔部20との接触部分の軸方向長さは、係合部32の軸方向長さに関わらず一定とされうる。これは、第2部分20yに非接触面86を設けることで、可能となる。このように、本実施形態は、次の効果Gを奏しうる。
[効果G]:係合部32の軸方向長さに関わらず、上記回転抵抗を一定とすることができる。
【0132】
上記回転抵抗が過大であると、取り外しが困難となる。この回転抵抗が過小であると、固定の安定性が低下しうる。取り外しの容易性と固定の安定性とを両立させる観点から、上記回転抵抗は適切に設定されるのが好ましい。一方、係合部32の軸方向長さを変えることで、重量体12の質量が容易に変更されうる。質量が相違する複数の重量体12により、ヘッドの重量及び重心位置が変更されうる。上記効果Gにより、上記回転抵抗の変動を抑制しつつ、重量体12の質量の自由度が高められうる。上記効果Gは、ゴルフクラブとしての実際に使用において、高い有用性を提供しうる。
【0133】
上記実施形態では、第1部分20xが、第2部分20yの上側に位置している。換言すれば、第2部分20yが第1部分20xの下側に位置している。このため、異物による回転阻害が抑制される。この理由について、以下に説明する。
【0134】
異物とは、例えば、ソケット10の摩耗によって生じる削りくずである。重量体12の取り付け及び取り外しを繰り返すことで、この削りくずが生じうる。他の異物として、例えば、芝、砂及び土が挙げられる。重量体12が取り外されたとき、孔16が外部に開放される。このとき、芝等の異物が、下側孔部20に侵入しうる。侵入した異物は、下側孔部20に貯留されうる。この異物は、係合部32と下側孔部20との間に入り込みうる。係合部32と下側孔部20との接触部に異物が介在すると、上記相対回転に支障が生じうる。このように、異物による回転阻害が生じうる。
【0135】
本実施形態では、この異物による回転阻害が効果的に抑制されている。重量体12の取り付け及び取り外しの際には、通常、使用者は、重量体12の頭部28を鉛直方向上側とし、重量体12の係合部32を鉛直方向下側とする。これは、重量体12を回転させる作業を行いやすくするためである。ゴルフクラブ2では、重量体着脱機構M1がソール9に取り付けられている。例えば、重量体12を取り付ける際に、使用者は、ゴルフクラブ2のグリップエンドを地面に当て、ソール9を鉛直方向上側に向ける。
【0136】
したがって、重量体12が回転される際には、第2部分20yが第1部分20xに対して鉛直方向下側となりやすい。この場合、下側孔部20に侵入した異物は、重力により、第2部分20yの方向に移動される。移動した異物は、係合部32と第2部分20yとの間に形成された空間に収容されうる。異物がこの空間に貯留されるため、係合部32と第1部分20xとの間に異物が移動しにくい。よって、異物による上記回転阻害は起こりにくい。第2部分20yが第1部分20xよりも下側とされることで、異物による回転阻害が抑制されている。
【0137】
図7が示すように、第1部分20xは軸方向に沿って延びている。
図7において両矢印S1で示されるのは、第1部分20xの軸方向長さである。本実施形態では、この長さS1は、圧縮変形部cp1の軸方向長さに等しい。
図11(a)及び
図11(b)において両矢印S2で示されるのは、最外部E1の軸方向長さである。最外部E1も、軸方向に沿って延びている。最外部E1と第1部分20xとが接触することにより、重量体12の回転軸とソケット10の中心軸とが一致しやすい。これにより、重量体12が傾斜した状態で回転することが抑制され、下側孔部20に偏摩耗が生じにくい。ソケット10の偏摩耗を抑制する観点から、比(S1/S2)は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上がより好ましい。上記回転抵抗を抑制する観点から、比(S1/S2)は、0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましく、0.7以下がより好ましい。
【0138】
図20(a)は、第2実施形態に係る重量体200の斜視図である。
図20(b)及び
図20(c)は、重量体200の側面図である。
図20(b)と
図20(c)とでは、視点が90°相違する。この重量体200は、頭部202、首部30及び係合部32を有する。頭部202は、突起t1を有する。突起t1は、頭部202の下面から下側に向かって延びている。突起t1は、周方向の1箇所に設けられている。突起t1は、周方向の複数箇所に設けられてもよい。突起t1は、頭部202の外周部に位置している。頭部202と、前述した頭部28との相違は、突起t1の有無のみである。重量体200と、前述した重量体12との相違は、突起t1の有無のみである。
【0139】
この突起t1は、第1回転規制部の一例である。
【0140】
図21(a)は、第2実施形態に係るソケット210の斜視図である。
図21(b)は、ソケット210の平面図である。ソケット210は、本体部210aを有する。本体部210aは、孔16と、凹部r1とを有する。凹部r1は、本体部210aの周縁部に形成されている。凹部r1は、本体部210aの上側の角部に形成されている。凹部r1は、周方向に沿って延びている。凹部r1は、第1ストッパ面st1と第2ストッパ面st2とを有する。ソケット210と、前述したソケット10との相違は、凹部r1の有無のみである。
【0141】
凹部r1は、周方向の1箇所に設けられている。凹部r1は、周方向の複数箇所に設けられてもよい。
【0142】
この凹部r1は、第2回転規制部の一例である。
【0143】
図22は、重量体着脱機構M2の平面図である。第2実施形態に係る重量体着脱機構M2は、重量体200及びソケット210を備えている。図示しないが、前述した重量体着脱機構M1と同様に、ソケット210は、ヘッド本体h1のソケット収容部14に収容されている。
【0144】
図22の左側が非係合ポジションNPを示しており、
図22の右側が係合ポジションEPを示している。上述した重量体着脱機構M1と同様に、この重量体着脱機構M2でも、角度θの相対回転により、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの間の相互移行が可能である。
【0145】
上記相互移行において、突起t1は、凹部r1の上を摺動する。図示されないが、非係合ポジションNPにおいて、突起t1は第1ストッパ面st1に当接している。図示されないが、係合ポジションEPにおいて、突起t1は第2ストッパ面st2に当接している。突起t1と凹部r1との係合により、上記相対回転以外の非正規回転が規制されている。よって、上記過回転及び上記逆回転が防止されうる。上記非正規回転の典型例は、上記過回転及び上記逆回転である。
【0146】
図23(a)は、第3実施形態に係る重量体300の斜視図である。
図23(b)は、重量体300の平面図である。
図23(c)は、重量体300の底面図である。
【0147】
この重量体300は、頭部302、首部30及び係合部32を有する。頭部302は、突起t2を有する。突起t2は、頭部202の外周面に設けられている。突起t2は、軸垂直方向に突出している。突起t2は、周方向の1箇所に設けられている。突起t2は、周方向の複数箇所に設けられてもよい。
【0148】
頭部302と、前述した頭部28との相違は、突起t2の有無のみである。重量体300と、前述した重量体12との相違は、突起t2の有無のみである。
【0149】
この突起t2は、第1回転規制部の一例である。
【0150】
図24(a)は、第3実施形態に係るソケット310の斜視図である。
図24(b)は、ソケット310の平面図である。ソケット310は、本体部310aと、フランジ310bと、壁部310cとを有する。本体部310aは、孔16を有する。フランジ310bは、本体部310aの外周面の上端部に設けられている。フランジ310bの上面と、本体部310aの上面とは、同一の平面である。壁部310cは、フランジ310bの上面に設けられている。壁部310cは、上側にむかって突出している。
【0151】
壁部310cは周方向に沿って設けられている。壁部310cは、欠落部r2を有している。壁部310cの一部が周方向において欠落することにより、欠落部r2が形成されている。欠落部r2に起因して、壁部310cには、第1ストッパ面st1及び第2ストッパ面st2が形成されている。
【0152】
欠落部r2は、周方向の1箇所に設けられている。欠落部r2は、周方向の複数箇所に設けられてもよい。
【0153】
この欠落部r2を有する壁部310cは、第2回転規制部の一例である。
【0154】
図25は、重量体着脱機構M3の平面図である。第3実施形態に係る重量体着脱機構M3は、重量体300及びソケット310を備えている。図示しないが、前述した重量体着脱機構M1と同様に、ソケット310は、ヘッド本体h1のソケット収容部14に収容されている。
【0155】
図25の左側が非係合ポジションNPを示しており、
図25の右側が係合ポジションEPを示している。上述した重量体着脱機構M1と同様に、この重量体着脱機構M3でも、角度θの相対回転により、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの間の相互移行が可能である。
【0156】
上記相互移行において、突起t2は、欠落部r2の中で移動する。突起t2は、周方向に沿って、第1ストッパ面st1と第2ストッパ面st2との間を移動する。
図25が示すように、非係合ポジションNPにおいて、突起t2は第1ストッパ面st1に当接している。
図25が示すように、係合ポジションEPにおいて、突起t2は第2ストッパ面st2に当接している。突起t2と壁部310cとの係合により、上記相対回転以外の非正規回転が規制されている。よって、上記過回転及び上記逆回転が防止されうる。
【0157】
図26(a)は、第4実施形態に係る重量体400の斜視図である。
図26(b)は、重量体400の側面図である。
図26(c)は、重量体400の底面図である。
【0158】
この重量体400は、頭部28、首部30及び係合部402を有する。係合部402は、突起t3を有する。突起t3は、係合部402の底面に設けられている。突起t3は、係合部402の角部の近傍に設けられている。突起t3は、軸方向に突出している。突起t3は、下側にむかって突出している。突起t3は、1箇所に設けられている。突起t3は、複数箇所に設けられてもよい。
【0159】
係合部402と、前述した係合部32との相違は、突起t3の有無のみである。重量体400と、前述した重量体12との相違は、突起t3の有無のみである。
【0160】
この突起t3は、第1回転規制部の一例である。
【0161】
図27(a)は、第4実施形態に係る底面形成部410bの平面図である。
図27(b)は、底面形成部410bの斜視図である。この底面形成部410bは、前述した本体部10aに取り付けられる。底面形成部410bは、長穴r3を有する。長穴r3の長手方向は、周方向に沿っている。
【0162】
長穴r3の形成に伴い、底面形成部410bには、第1ストッパ面st1及び第2ストッパ面st2が形成されている。長穴r3の一端に第1ストッパ面st1が形成されている。長穴r3の他端に第2ストッパ面st2が形成されている。長穴r3は、1箇所に設けられている。長穴r3は、複数箇所に設けられてもよい。
【0163】
この長穴r3は、第2回転規制部の一例である。
【0164】
図28は、第4実施形態に係る重量体着脱機構M4の断面図である。重量体着脱機構M4は、重量体400及びソケット410を備えている。ソケット410は、底面形成部410bと、前述した本体部10aとを有する。ソケット410と、前述したソケット10との相違は、長穴r3の有無のみである。
【0165】
前述した重量体着脱機構M1と同様に、ソケット410は、ヘッド本体h1のソケット収容部14に収容されている。
【0166】
図28が示すように、突起t3は、長穴r3の内部に延びている。上記相対回転に伴い、突起t3は、突起t3の内部において移動する。
【0167】
図29は、
図28のF−F線に沿った断面図である。
図29の左側が非係合ポジションNPを示しており、
図29の右側が係合ポジションEPを示している。上述した重量体着脱機構M1と同様に、この重量体着脱機構M4でも、角度θの相対回転により、非係合ポジションNPと係合ポジションEPとの間の相互移行が可能である。
【0168】
上記相互移行において、突起t3は、長穴r3の中で移動する。突起t3は、周方向に沿って、第1ストッパ面st1と第2ストッパ面st2との間を移動する。
図29が示すように、非係合ポジションNPにおいて、突起t3は第1ストッパ面st1に当接している。
図29が示すように、係合ポジションEPにおいて、突起t3は第2ストッパ面st2に当接している。突起t3と長穴r3との係合により、上記相対回転以外の非正規回転が規制されている。よって、上記過回転及び上記逆回転が防止されうる。
【0169】
以上に記載されたように、第2、第3及び第4実施形態では、上記重量体が、第1回転規制部を有しており、上記ソケットが、第2回転規制部を有している。上記第1回転規制部と上記第2回転規制部との係合により、上記相対回転以外の非正規回転が規制されている。
【0170】
上記実施形態では、第1回転規制部として、突起t1からt3が例示されている。第1回転規制部は、第2回転規制部と係合して、重量体の回転を規制できればよい。第1回転規制部は、凸部、凹部、長穴等であってもよい。突起は、凸部の例である。第1回転規制部が、第1ストッパ面st1及び第2ストッパ面st2を有していても良い。
【0171】
上記実施形態では、第2回転規制部として、凹部r1、壁部310c及び長穴r3が例示されている。上記実施形態では、第2回転規制部が、第1ストッパ面st1及び第2ストッパ面st2を有している。第2回転規制部は、第1回転規制部と係合して、重量体の回転を規制できればよい。例えば、第2回転規制部は、突起等の凸部であってもよい。
【0172】
強度及び耐久性の観点から、ソケット収容部14の材質は、金属であるのが好ましい。上述の実施形態では、ソケット収容部14は、ヘッド本体h1の他の部分と共に一体成形されている。ソケット収容部14は、ヘッド本体h1の他の部分とは別に成形されてもよい。この場合、ソケット収容部14は、溶接によってヘッド本体h1に固定されるのが好ましい。
【0173】
上述の通り、ソケットはポリマーによって形成されている。このソケットが、ソケット収容部と重量体との間に存在している。ソケットにより、重量体がソケット収容部に接触することが防止されている。重量体がソケット収容部に接触すると、異音が生じうる。ポリマーによって形成されたソケットの存在により、この異音の発生が抑制されている。
【0174】
上述の通り、ソケットの弾性率Esは、ヘッド本体h1の弾性率Ehよりも小さい。ソケットの弾性率Esは、ソケット収容部の弾性率Eaよりも小さい。弾性率の低いソケットにより、重量体に付加される衝撃が効果的に緩和されうる。よって、異音の発生がより一層抑制されている。なお、本願において、弾性率はヤング率を意味する。
【0175】
図10(b)等が示すように、係合部32の断面形状は、略長方形である。この「略」とは、角部の変形を許容する趣旨である。略長方形の典型例は、本実施形態のような、角部が丸められた長方形である。略長方形の他の例として、角部が面取りされた長方形が挙げられる。
【0176】
係合部32の断面形状は、上記軸線Zを回転軸としたN回対称であってもよい。このNは、例えば、1以上4以下の整数である。本実施形態の略長方形では、Nは2である。すなわち、この略長方形は、2回対称である。
【0177】
N回対称とは、その回転軸回りに(360/N)度回転させたときに、回転前の形状と一致することを意味する。ただしNは自然数である。換言すれば、Nは1以上の整数である。好ましくは、Nは、1以上4以下の整数である。なお、一般的な回転対称性の定義では、Nは2以上の整数とされているが、本願では、Nは1をも含むものとする。一般的な定義では、Nが1である場合、回転対称性を有さないとされている。しかし本願においては、Nが1であってもよい。すなわち本願では、係合部32の断面形状は、「1回対称」であってもよい。
【0178】
前述した実用新案登録第3142270号公報では、係合部の断面形状が略正方形である。この実用新案登録第3142270号公報では、上記Nは4である。係合体の断面形状が略正方形である場合、ソケット10の孔16及び係合部32の設計が比較的容易である。また、上記Nが4である場合、上側孔部18に適合しうる重量体12の周方向位置も4とされうる。重量体12を孔16に挿入する際には、係合部32を上側孔部18に適合させる必要がある。この適合のために、重量体12を回転させる必要が生じうる。Nが4とされることで、上記適合のための重量体12の回転量が抑制されうる。この回転量の抑制により、孔16への重量体12の挿入が容易とされうる。係合部の断面形状として、略正方形は、好ましい例である。
【0179】
一方、実用新案登録第3142270号公報の
図5から
図7に示されるように、係合部の断面形状が略正方形である場合、Nが3以下である場合と比較して、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが小さくなりやすい。よって、上述した逆回転及び過回転が生じやすい。Nが3以下である場合、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが大きくされやすい。よって、上述した逆回転及び過回転が効果的に抑制される。逆回転及び過回転を抑制する観点からは、Nが1以上3以下であるのが好ましい。
【0180】
Nが3以下とされた場合、逆回転及び過回転に要する回転角度が増加し、加えて、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが大きくされうる。よって、逆回転及び過回転が効果的に減少しうる。このため、逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryが損傷しにくい。結果として、繰り返しの使用によっても、ソケット10が劣化しにくい。
【0181】
Nが4である場合の例として、略正方形が挙げられる。Nが3である場合の例として、略正三角形が挙げられる。Nが2である場合の例として、本実施形態のような略長方形の他、略平行四辺形が挙げられる。Nが3以下とされる場合、好ましくは、上記Nが2とされる。この場合、Nが1である場合と比較して、係合部32の断面形状が比較的単純とされる。よって、係合部32及びソケット10の設計が容易となる。
【0182】
前述の通り、本願では、半径R1が定義される。係合部32の最長回転半径がR1である。この半径R1は、最外部E1の回転半径である。本願では、係合部32の最短回転半径がR2とされる。
図18が示すように、この半径R1は、回転軸線Zから、上記点Pfまでの距離である。半径R2は、回転軸線Zから点Pcまでの距離である。この点Pcは、係合部32の断面の輪郭線において、軸線Zから最も近い点である(
図18参照)。
【0183】
逆回転抑制部Rx及び過回転抑制部Ryを大きくする観点からは、R1/R2は、1.30以上が好ましく、1.33以上がより好ましく、1.36以上がより好ましい。ソケット収容部14及びソケット10を小型化する観点から、R1/R2は、1.70以下が好ましく、1.60以下がより好ましく、1.50以下がより好ましい。なお、上記実施形態では、R1/R2は1.39である。
【0184】
図18の非係合ポジションNPの断面図においてクロスハッチングで示されているのは、逆回転抑制部Rxの断面積Xである。上記逆回転を抑制する観点から、この断面積Xは、1.5mm
2以上が好ましく、2.0mm
2以上がより好ましく、2.5mm
2以上がより好ましい。ソケット収容部14及びソケット10の小型化の観点から、この断面積Xは、5.0mm
2以下が好ましく、4.5mm
2以下がより好ましく、4.0mm
2以下がより好ましい。この断面積Xは、1つの逆回転抑制部Rxの断面積である。
【0185】
図18の係合ポジションEPの断面図においてクロスハッチングで示されているのは、過回転抑制部Ryの断面積Yである。上記過回転を抑制する観点から、この断面積Yは、1.5mm
2以上が好ましく、2.0mm
2以上がより好ましく、2.5mm
2以上がより好ましい。ソケット収容部14及びソケット10の小型化の観点から、この断面積Yは、5.0mm
2以下が好ましく、4.5mm
2以下がより好ましく、4.0mm
2以下がより好ましい。この断面積Yは、1つの過回転抑制部Ryの断面積である。
【0186】
図18において両矢印R3で示されているのは、逆回転抑制部Rxの最大高さである。この高さR3は、軸垂直方向に沿って測定される。上記逆回転を抑制する観点から、R3/R1は、0.19以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.21以上がより好ましい。ソケット収容部14及びソケット10の小型化及び軽量化の観点から、R3/R1は、0.24以下が好ましく、0.23以下がより好ましく、0.22以下がより好ましい。
【0187】
図18において両矢印R4で示されているのは、過回転抑制部Ryの最大高さである。この高さR4は、軸垂直方向に沿って測定される。上記過回転を抑制する観点から、R4/R1は、0.19以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.21以上がより好ましい。ソケット収容部14及びソケット10の小型化及び軽量化の観点から、R4/R1は、0.24以下が好ましく、0.23以下がより好ましく、0.22以下がより好ましい。
【0188】
[ソケットの硬度Hs]
重量体の固定を確実とし、打撃時の異音を抑制する観点から、ソケットの硬度Hsは、D40以上が好ましく、D42以上がより好ましく、D45以上が更に好ましい。耐摩耗性の観点から、硬度Hsは、D80以下が好ましく、D78以下がより好ましく、D76以下がより好ましい。
【0189】
硬度Hsは、「ASTM−D 2240−68」の規定に準拠して、自動ゴム硬度測定装置(高分子計器社の商品名「P1」)に取り付けられたショアD型硬度計によって測定される。測定サンプルの形状は、一辺の長さが3mmの立方体とされる。測定は、23℃の温度下でなされる。可能であれば、測定サンプルは、ソケットから切り出される。切り出しが困難である場合、ソケットの組成物と同一の組成物からなる測定サンプルが用いられる。
【0190】
[ソケットの材質]
硬度の観点から、ソケットの材質としては、ポリマーが好ましい。このポリマーとして、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーが例示される。熱硬化性ポリマーとして、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド及び熱硬化性エラストマーが例示される。熱可塑性ポリマーとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド及び熱可塑性エラストマーが例示される。
【0191】
熱可塑性エラストマーとして、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリスチレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが例示される。
【0192】
耐久性の観点からは、ウレタン系ポリマー及びポリアミドが好ましく、ウレタン系ポリマーがより好ましい。ウレタン系ポリマーとして、ポリウレタン及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが例示される。ウレタン系ポリマーは、熱可塑性であってもよく、熱硬化性であってもよい。成形性の観点からは、熱可塑性のウレタン系ポリマーが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0193】
成形性の観点からは、熱可塑性ポリマーが好ましい。硬度及び耐久性の観点から、この熱可塑性ポリマーの中では、ポリアミド及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーが好ましく、熱可塑性ポリウレタンエラストマーがより好ましい。
【0194】
ポリアミドとして、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12及びナイロン66が例示される。
【0195】
好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリウレタン成分と、ソフトセグメントとしてのポリエステル成分又はポリエーテル成分とを含む。即ち、好ましい熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)として、ポリエステル系TPUと、ポリエーテル系TPUとが挙げられる。ポリウレタン成分の硬化剤としては、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートが例示される。
【0196】
脂環式ジイソシアネートとしては、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトランス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)が例示される。
【0197】
芳香族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びトルエンジイソシアネート(TDI)が例示される。脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が例示される。
【0198】
市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)として、BASFジャパン社の商品名「エラストラン」が例示される。
【0199】
ポリエステル系TPUの具体例として、「エラストランC70A」、「エラストランC80A」、「エラストランC85A」、「エラストランC90A」、「エラストランC95A」、「エラストランC64D」等が挙げられる。
【0200】
ポリエーテル系TPUの具体例として、「エラストラン1164D」、「エラストラン1198A」、「エラストラン1180A」、「エラストラン1188A」、「エラストラン1190A」、「エラストラン1195A」、「エラストラン1174D」、「エラストラン1154D」、「エラストランET385」等が挙げられる。
【0201】
汎用性及び生産性の観点から、ソケットの好ましい材質の一例は、樹脂である。上記各ポリマーをマトリックスとする繊維強化樹脂が用いられても良い。
【実施例】
【0202】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0203】
[実施例1]
以下のようにして、上記ヘッド4と同じ構造のヘッドを作製した。
【0204】
チタン合金(Ti−6Al−4V)の圧延材をプレスすることにより、フェース部材を得た。チタン合金(Ti−6Al−4V)を用いた鋳造により、ボディを得た。このボディは、ソケット収容部を有していた。得られたフェース部材とボディとを溶接することで、ヘッド本体を得た。
【0205】
ソケットは、射出成形により得た。ソケットの材質として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーが用いられた。具体的には、「エラストラン1164D」と「エラストラン1198A」とを重量比で1:1で混合したものが用いられた。
【0206】
重量体の材質として、タングステンニッケル合金(W−Ni合金)が用いられた。このW−Ni合金を粉末焼結により成形して、重量体を得た。重量体の質量は、11gとされた。
【0207】
上記ソケットを、ソケット収容部に挿入した。ソケットはヘッド外方から挿入された。接着剤を用いて、ソケット収容部にソケットを接着した。接着剤として、住友スリーエム社製の商品名「DP460」が用いられた。
【0208】
上述した工具60を用いて、ソケットに重量体を取り付け、実施例1のヘッドを得た。シャフトに、グリップ及び実施例1のヘッドを装着して、実施例1に係るクラブを得た。上記角度θは、40°とされた。上述の比(S1/S2)は、0.7とされた。
【0209】
[実施例2]
ソケット及び重量体が上記第2実施形態(
図20及び
図21)に変更された他は実施例1と同様にして、実施例2に係るクラブを得た。
【0210】
[実施例3]
ソケット及び重量体が上記第3実施形態(
図23及び
図24)に変更された他は実施例1と同様にして、実施例3に係るクラブを得た。
【0211】
[実施例4]
ソケット及び重量体が上記第4実施形態(
図26及び
図27)に変更された他は実施例1と同様にして、実施例4に係るクラブを得た。
【0212】
[耐久テスト]
スイングロボットにクラブを取り付け、市販の2ピースボールを10000回打撃させた。ヘッドスピードは54m/sとされた。いずれの実施例においても、10000回の打撃の間、ソケット及び重量体の固定は維持された。
【0213】
実施例1から4では、比(S1/S2)を調整することで、上記相対回転に必要なトルクを、高精度に且つ容易に設定することができた。また比(S1/S2)が1より小さくされたため、上記トルクを抑制することができた。
【0214】
実施例2から4では、重量体の回転が、上記角度θ(40°)の相対回転のみに規制されていることが確認された。