(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105400
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】射出成形機のケーブル配線装置及び姿勢保持部材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20170316BHJP
【FI】
B29C45/17
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-125367(P2013-125367)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-500(P2015-500A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】引本 塁
【審査官】
井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−346907(JP,A)
【文献】
実開昭59−104584(JP,U)
【文献】
特開平10−086196(JP,A)
【文献】
特開2010−018107(JP,A)
【文献】
特開2003−032861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
H01B 7/00
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面上に互いに略平行に整列した複数のケーブルを、少なくとも2つ以上の姿勢保持部材を用いて配線する射出成形機のケーブル配線装置であって、前記姿勢保持部材は、前記複数のケーブルの配線方向に垂直な方向に延在し、少なくとも2本のケーブルに接触するように配置され、前記姿勢保持部材の少なくとも1組の隣り合う2つの姿勢保持部材は、一方の姿勢保持部材が前記複数のケーブルが整列した面上に配置され、他方の姿勢保持部材が前記複数のケーブルを挟んで前記整列した面の反対側の他方の面に配置され、前記2つの姿勢保持部材は、同一のケーブルに固定されることを特徴とする射出成形機のケーブル配線装置。
【請求項2】
前記姿勢保持部材と、前記ケーブルとを締結する切り離し可能な締結部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の射出成形機のケーブル配線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機のケーブル配線装置及び姿勢保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機では、型締ユニットや射出ユニットといった駆動するユニット(以下、駆動ユニットとする。)が複数のケーブルによって電源供給ユニットに接続されている。各ケーブルは架台上に整列されている。一般的に電源供給ユニットは架台に固定されており、駆動ユニットの駆動に合わせてケーブルが移動する。
このとき、特にケーブルの径が大きい場合などには、駆動ユニットを駆動した際に、各ケーブルが整列した状態を維持することができずに、ケーブルに浮き上がりやねじれが生じる場合がある。ケーブルに浮き上がりやねじれが生じた状態のままケーブルが移動すると、ケーブル同士が互いに乗り上げたり交錯する状態となって、架台上に配置された部材などに干渉してケーブルの被覆の破損や芯線の破断などを引き起こす場合がある。
これらの課題を解消するために、ケーブルを保持する部材を用いたり、ケーブルを格納する部材を用いることがある。
【0003】
特許文献1には、
図8に示されているように、互いに並行に配置されたケーブル110を樹脂製のブリッジ111を用いて横断的に固定してケーブルの形状を保持する技術が開示されている。
特許文献2には、
図9に示されているようにケーブル110を保護可撓管112内に格納することで、ケーブル110を保護しつつその形状を保持して稼働させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−306262号公報
【特許文献2】特開平10−86196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている技術は、樹脂製のブリッジ111が固定された際に板状に固めてしまうため、配索後にケーブル110の形状を自由に変えることができないことがある。そのため、駆動するユニットに接続するケーブル110に適用することが困難となる場合がある。
特許文献2に開示されている技術は、保護可撓管112を別途設置する必要があるためコストがかかり、また、保護可撓管112を設置するスペースが余分に必要となることがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、複数のケーブル同士が互いに乗り上げたり交錯したりすることがなく、滑らかに移動することが可能なケーブル配線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明では、面上に互いに略平行に整列した複数のケーブルを、少なくとも2つ以上の姿勢保持部材を用いて配線する射出成形機のケーブル配線装置であって、前記姿勢保持部材は、前記複数のケーブルの配線方向に垂直な方向に延在し、少なくとも2本のケーブルに接触するように配置され、前記姿勢保持部材の少なくとも1組の隣り合う2つの姿勢保持部材は、一方の姿勢保持部材が前記複数のケーブルが整列した面上に配置され、他方の姿勢保持部材が前記複数のケーブルを挟んで前記整列した面の反対側の他方の面に配置され、前記2つの姿勢保持部材は、同一のケーブルに固定されることを特徴とする射出成形機のケーブル配線装置が提供される。
すなわち、請求項1に係る発明では、互いに略平行に整列した複数のケーブルを、2つ以上の姿勢保持部材を用いて配線するようにしたことによって、複数のケーブル同士が互いに乗り上げたり交錯したりすることがなく、滑らかに移動するケーブル配線装置を提供することができる。
【0008】
本願の請求項2に係る発明では、前記姿勢保持部材と、前記ケーブルとを締結する切り離し可能な締結部材を備えたことを特徴とする請求項1記載の射出成形機のケーブル配線装置が提供される。
すなわち、請求項2に係る発明では、姿勢保持部材とケーブルとの固定に、切り離し可能な締結部材を用いて固定するようにしたことにより、姿勢保持部材とケーブルとの固定及び解除を簡便に行うようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、複数のケーブル同士が互いに乗り上げたり交錯したりすることがなく、滑らかに移動することが可能なケーブル配線装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】射出成形機における配線方法を示した斜視図である。
【
図2】射出成形機における配線方法を示した斜視図であり、
図1の(i)方向から見た斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態の配線装置の構造を示した実装図である。
【
図4】本発明の実施形態の姿勢保持部材の詳細図である。
【
図5】
図1におけるケーブル部分を上方向から見た平面図である。
【
図6】本発明の実施形態の配線装置の構造で、ケーブルが4本の場合の実装図である。
【
図7】本発明の実施形態の配線装置の構造で、ケーブルが2本の場合の実装図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2は、一般的な射出成形機における配線方法を示した斜視図であり、
図2は、
図1の(i)側から見た斜視図である。架台21の上に電源供給ユニット22が固定されており、その上に配置されたレール24上に駆動ユニット23が配置され、駆動ユニット23はレール24に沿った方向に駆動される。また、駆動ユニット23と電源供給ユニット22との間は複数のケーブル10によって接続されている。複数のケーブル10は互いに略平行に整列して配置されており、駆動ユニット23側においては架台21上に整列されており、その後
図2における正面部において架台21下部方向に延びて、最終的に電源供給ユニット22に接続されている。
【0013】
図1及び
図2に示されている複数のケーブル10の配線装置に関する、本発明の実施形態を、以下図に基づいて説明する。
図3は、本実施形態の配線装置の構造を示した模式図である。本実施形態においては、複数のケーブルとして、3本のケーブル10a、ケーブル10b、ケーブル10cからなるもので説明する。
本実施形態において、3本のケーブル10は互いに略平行になるように整列して配置されており、それぞれのケーブル10は、配線用機材1と締結部材5を用いて固定されている。
図3に示されているように、配線用機材1は、その長手方向が3本のケーブル10の配線方向に垂直な方向となるように配置されており、少なくとも1組の隣り合う2つの配線用機材1が、一方が3本のケーブル10の上面、他方が3本のケーブル10の下面となるように配置されている。また、配線用機材1はナイロンバンドからなる締結部材5によってケーブル10に固定されており、
図3における左側2つの配線用機材1は中央のケーブル10bに、右側2つの配線用機材1は左端のケーブル10aに固定されている。
【0014】
図4は、本実施形態において用いられている配線用機材1の詳細図である。配線用機材1は、金属鋼板からなる保持板3と、その長手方向側部を覆う、樹脂製の保護ブッシュ4とから構成されている。保護ブッシュ4により、ケーブル10が駆動した際に、金属製の保持板3が周囲の金属部分とこすれて摩耗することを防止することができる。また、保持板3には、配線用機材1とケーブル10とを固定する締結部材5を通すためのケーブル固定穴2が設けられている。本実施形態においては、ケーブル固定穴2は4つ設けられており、2つのケーブル固定穴2に締結部材5であるナイロンバンドを貫通させ、さらに締結部材5をケーブル10の周囲を周回させるようにして配線用機材1とケーブル10とを固定する。また、残りの2つのケーブル固定穴2についても同様に締結部材5を用いて配線用機材1とケーブル10とを固定する。
締結部材5によって固定されている配線用機材1とケーブル10との固定を解除する際には、締結部材5を切り離すことによって固定を解除することができる。
【0015】
本実施形態においては、
図3及び
図4に示されているように、3本のケーブル10に対し、隣り合う配線用機材1の一方を3本のケーブル10の上面、他方を3本のケーブル10の下面となるように配置し、いずれも同一のケーブルであるケーブル10bに固定するようにしている。これにより、駆動ユニット23の駆動に伴って、ケーブル10a又はケーブル10cが中央のケーブル10bを乗り越えようとしても、ケーブル10bに固定された配線用機材1によって付勢されるためケーブル10bを乗り越えることはできない。また、ケーブル10bがケーブル10a又はケーブル10cを乗り越えようとしても、ケーブル10bに固定された配線用機材1がケーブル10a及びケーブル10cによって付勢されるため、同様に乗り越えることができない。このため、3本のケーブル10は互いに乗り上げたり交錯したりすることがない。
【0016】
図5は、
図1におけるケーブル10部分を上方向から見た平面図である。
図3においては、複数のケーブル10は直線状に配置されていたが、
図5に示されているように複数のケーブルが屈曲する部分を有していても、複数のケーブル10が互いに略平行状に配置され、配線用機材1によって固定するようにすれば、同様の効果を奏することができる。このように屈曲した状態で架台21上を摺動する場合であっても、配線用機材1はいずれか1本のケーブル10に固定されており、他のケーブル10の水平方向の動きを抑制しないため、ケーブル10は駆動ユニット23の駆動に合わせて自由にその形状と位置を変えることができる。
【0017】
本実施形態においては、配線用機材1を固定するにあたり、締結部材5を3本のケーブル10のうちの中央のケーブル10bに固定する場合を中心に説明したが、必ず中央のケーブル10bに固定しなければならないものではなく、
図3における右側2つの配線用機材1のように、端のケーブルであるケーブル10aやケーブル10cに固定しても、同様の効果を奏することができる。
本実施形態において用いられる配線用機材1は、保持板3を金属鋼板によって形成しているが、ケーブル10を適切に固定できるものであれば、他の材質であってもよい。また、締結部材5についても、本実施形態においてはナイロン製のバンドを用いているが、他の材質のものであってもよい。さらに、保持板3に設けるケーブル固定穴2についても、本実施形態においては4つのケーブル固定穴2を設けて、2組の締結部材5を用いて配線用機材1とケーブル10とを固定しているが、ケーブル固定穴2の個数についても4つに限ったものではなく、例えば6つ設けて3組の締結部材5によって固定したり、逆に2つのケーブル固定穴2として1つの締結部材5によって固定したり、さらには、ケーブル固定穴2を1つとして、かかるケーブル固定穴2に締結部材5を貫通させてケーブル10を固定するようにすることもできる。
【0018】
本実施形態においては、ケーブル10の本数が3本の場合で説明したが、
図6に示されているような4本の場合や、
図7に示されているような2本の場合であっても同様に適用することができる。これらの場合であっても、隣り合う配線用機材1は一方が複数のケーブル10の上面、他方が複数のケーブル10の下面となるように配置され、締結部材5であるナイロンバンドを用いて、同一のケーブルに固定するように構成されている。
【符号の説明】
【0019】
1 配線用機材
2 ケーブル固定穴
3 保持板
4 保護ブッシュ
5 締結部材
10 ケーブル
20 射出成形機
21 架台
22 電源供給ユニット
23 駆動ユニット
24 レール
110 ケーブル
111 ブリッジ
112 保護可撓管