特許第6105403号(P6105403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105403
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】尿素水供給系の診断装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/18 20060101AFI20170316BHJP
   F01N 3/00 20060101ALI20170316BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20170316BHJP
   B01D 53/94 20060101ALN20170316BHJP
   B01D 53/90 20060101ALN20170316BHJP
   B01D 53/86 20060101ALN20170316BHJP
【FI】
   F01N3/18 C
   F01N3/00 F
   F01N3/08 H
   !B01D53/94 400
   !B01D53/90
   !B01D53/94 222
   !B01D53/86 222
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-126774(P2013-126774)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1207(P2015-1207A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 俊哉
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−7568(JP,A)
【文献】 特開2010−163923(JP,A)
【文献】 特開2006−37770(JP,A)
【文献】 特開2008−274765(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00− 3/38、9/00−11/00
B01D 53/86−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素水の濃度を検出するセンサーの検出値を取得する取得部と、
選択還元型触媒によるNOxの浄化率を演算する浄化率演算部と、
前記尿素水を供給する尿素水供給系の状態を診断する診断部と、を備え、
前記診断部は、
前記尿素水が正常であるときの前記濃度を基準濃度として有し、
前記尿素水が正常であるときの前記浄化率を基準浄化率として有し、
前記浄化率演算部の演算した前記浄化率が前記基準浄化率以上である第1条件と、前記取得部の取得した前記検出値が前記基準濃度以上である第2条件のいずれか一方が成立するときに前記センサーが異常であると診断する
尿素水供給系の診断装置。
【請求項2】
前記診断部は、
前記第1条件と前記第2条件とが成立するときに、前記センサーが正常であると診断する
請求項1に記載の尿素水供給系の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、
前記第1条件と前記第2条件とが成立しないときに、前記センサーが正常であると診断する
請求項1または2に記載の尿素水供給系の診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、
前記第1条件と前記第2条件とが成立しないときに、前記尿素水が異常であると診断する
請求項1から3のいずれか1つに記載の尿素水供給系の診断装置。
【請求項5】
前記取得部は、
前記選択還元型触媒の上流で排気のNOx濃度を検出する上流NOxセンサーの検出値と、前記選択還元型触媒の下流で排気のNOx濃度を検出する下流NOxセンサーの検出値と、を取得し、
前記浄化率演算部は、
前記上流NOxセンサーの検出値と前記下流NOxセンサーの検出値とに基づいて前記浄化率を演算する
請求項1から4のいずれか1つに記載の尿素水供給系の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、尿素水の濃度を検出するセンサーを有する尿素水供給系に対して、尿素水供給系の状態を診断する尿素水供給系の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排気中の窒素酸化物(以下、NOxという。)を浄化する排気浄化装置として、排気に尿素水を供給する尿素水供給系と、尿素水の供給された排気が流入する選択還元型触媒と、を備えた排気浄化装置が知られている。こうした排気浄化装置においては、水分の過度な蒸発や基準に満たない液体の補充等によって尿素水の品質に異常が生じると、所望の浄化性能を得るために必要となる尿素水の量が変化する。そのため、特許文献1には、尿素水の濃度を検出するセンサーによって尿素水の濃度を検出し、その検出値に基づいて尿素水の適否を判定し、尿素水の品質に異常が生じている場合には運転者に対して警告する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−371831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記センサーの検出値に基づいて尿素水の適否を判定するうえでは、該センサーの検出値が正常であることが前提となる。それゆえに、センサーの検出値が異常であるときには、正常な尿素水が異常と判定されたり、異常な尿素水が正常と判定されたりする。結局のところ、尿素水やセンサーなどを含む尿素水供給系の状態が、1つのセンサーの検出値のみに基づいて診断されるため、尿素水供給系の状態の診断結果には、誤った判断が含まれてしまう。
【0005】
本開示の技術は、尿素水供給系の状態の診断結果の精度を高めることの可能な尿素水供給系の診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する尿素水供給系の診断装置は、尿素水の濃度を検出するセンサーの検出値を取得する取得部と、選択還元型触媒によるNOxの浄化率を演算する浄化率演算部と、前記尿素水を供給する尿素水供給系の状態を診断する診断部と、を備え、前記診断部は、前記尿素水が正常であるときの前記濃度を基準濃度として有し、前記尿素水が正常であるときの前記浄化率を基準浄化率として有し、前記浄化率演算部の演算した前記浄化率が前記基準浄化率以上である第1条件と、前記取得部の取得した前記検出値が前記基準濃度以上である第2条件のいずれか一方が成立するときに前記センサーが異常であると診断する。
【0007】
上記構成において、第1条件が不成立、且つ、第2条件が成立する場合は、センサーの検出値が基準濃度以上であるにも関わらず、浄化率が基準浄化率未満である場合である。すなわち、センサーの検出値が実際の尿素水の濃度よりも高い値を示している。一方、第1条件が成立し、且つ、第2条件が不成立の場合は、センサーの検出値が基準濃度未満であるにも関わらず、浄化率が基準浄化率以上である場合である。すなわち、センサーの検出値が実際の尿素水の濃度よりも低い値を示している。これにより、センサーが異常であると診断されることから、尿素供給系の状態の診断結果の精度が高められる。
【0008】
上記尿素水供給系の診断装置において、前記診断部は、前記第1条件と前記第2条件とが成立するときに、前記センサーが正常であると診断することが好ましい。
上記構成のように、第1条件及び第2条件の双方が成立する場合には、センサーの検出値が正常であると診断される。
【0009】
上記尿素水供給系の診断装置において、前記診断部は、前記第1条件と前記第2条件とが成立しないときに、前記センサーが正常であると診断することが好ましい。
上記構成のように、第1条件及び第2条件の双方が成立しない場合は、センサーの検出値が基準濃度未満であり、且つ、浄化率も基準浄化率未満である場合である。つまり、センサーの検出値は正常であることから、センサーが正常であるとの診断結果が得られる。
【0010】
上記尿総帥供給系の診断装置において、前記診断部は、前記第1条件と前記第2条件とが成立しないときに、前記尿素水が異常であると診断することが好ましい。
上記構成のように、第1条件及び第2条件の双方が成立しない場合は、センサーの検出値が基準濃度未満であり、且つ、浄化率も基準浄化率未満である場合であることから、センサーの検出値ではなく尿素水の品質に問題がある。すなわち、第1条件及び第2条件を設定することにより、センサーの適否に加え、尿素水の適否も診断結果として得られる。
【0011】
上記尿素水供給系の診断装置において、前記取得部は、前記選択還元型触媒の上流で排気のNOx濃度を検出する上流NOxセンサーの検出値と、前記選択還元型触媒の下流で排気のNOx濃度を検出する下流NOxセンサーの検出値と、を取得し、前記浄化率演算部は、前記上流NOxセンサーの検出値と前記下流NOxセンサーの検出値とに基づいて前記浄化率を演算することが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、浄化率演算部の演算する浄化率が、各NOxセンサーの検出値に基づいて演算される。その結果、例えばエンジンの運転状態に基づいて推定される値を用いてNOxの浄化率が演算される場合に比べて、浄化率演算部による浄化率の信頼性が向上することで診断結果に対する信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の技術における尿素水供給系の診断装置の一実施形態を具備した排気浄化装置の概略構成を示す概略構成図。
図2】診断処理の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1及び図2を参照して、本開示における尿素水供給系の診断装置の一実施形態について説明する。
図1に示されるように、ディーゼルエンジン10(以下単に「エンジン10」という。)の排気通路12には、排気を浄化する排気浄化装置20が配設されている。排気浄化装置20に流入した排気は、前段酸化触媒22(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)に流入する。
【0015】
前段酸化触媒22は、例えばアルミナ、シリカ、ゼオライト等からなる担体に、白金やパラジウム等の金属や、金属酸化物等を担持させたものである。前段酸化触媒22は、排気に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)を酸化して、水、二酸化炭素、二酸化窒素等に変換する。
【0016】
前段酸化触媒22を通過した排気は、DPF24(DPF:Diesel particulate filter)に流入する。DPF24は、セラミックスや金属多孔体から構成され、排気中の粒子性物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。DPF24の再生処理では、DPF24に流入する排気を昇温させるべく、例えば、前段酸化触媒22よりも上流の排気通路12に対し、図示されないバーナーから燃焼ガスが供給されたり図示されない燃料噴射弁から燃料が噴射されたりする。
【0017】
DPF24の下流であり且つ後述する選択還元型触媒36の上流には、上流NOxセンサー28が配設されている。上流NOxセンサー28は、DPF24を通過した排気のNOx濃度Cnx1を所定の制御周期で検出し、その検出したNOx濃度Cnx1を示す信号をECU44に出力する。
【0018】
上流NOxセンサー28の下流には、排気通路12に対して尿素水を供給する電子制御式のインジェクター30が配設されている。インジェクター30には、タンク32に貯留された尿素水が圧送ポンプ34により圧送される。圧送ポンプ34は、図示されないリリーフ弁を内蔵しており、タンク32内の尿素水を所定の圧力でインジェクター30に圧送する。インジェクター30は、ECU44によって開閉制御される。排気に供給された尿素水は、排気の熱によってアンモニアに加水分解される。
【0019】
タンク32には、尿素水品質センサー35(以下単に「センサー35」という。)が配設されている。センサー35は、尿素水における超音波の伝播速度や尿素水の温度に基づいて尿素水の濃度を検出し、その検出値である尿素水濃度Curを示す信号をECU44に出力する。インジェクター30、タンク32、圧送ポンプ34、センサー35、及び尿素水は、尿素水供給系に含まれる。
【0020】
インジェクター30の下流には、選択還元型触媒36が配設されている。選択還元型触媒36は、NOxをアンモニアで還元する選択的触媒還元(Selective Catalytic Reduction)を行う。選択還元型触媒36は、例えばハニカム状のセラミックからなる担体に吸着性の高いゼオライト又はジルコニアを担持させたものである。排気中のNOxは、選択還元型触媒36の触媒作用によってアンモニアと反応し、窒素と水とに還元される。
【0021】
選択還元型触媒36には、触媒温度センサー38が配設されている。触媒温度センサー38は、選択還元型触媒36の温度である触媒温度Tsを所定の制御周期で検出し、その検出した触媒温度Tsを示す信号をECU44に出力する。
【0022】
選択還元型触媒36を通過した排気は、後段酸化触媒40(ASC:Ammonia Slip Catalyst)に流入する。後段酸化触媒40は、例えばアルミナ、シリカ、ゼオライト等からなる担体に、白金やパラジウム等の金属や、金属酸化物等を担持させたものである。後段酸化触媒40は、選択還元型触媒36における還元反応で消費されなかったアンモニアを分解する。
【0023】
後段酸化触媒40の下流には、下流NOxセンサー42が配設されている。下流NOxセンサー42は、後段酸化触媒40を通過した排気のNOx濃度Cnx2を所定の制御周期で検出し、その検出したNOx濃度Cnx2を示す信号をECU44に出力する。
【0024】
ECU44は、CPU、RAM、ROM等を備えたマイクロコンピューターである。ECU44には、上記触媒温度Ts、尿素水濃度Cur、NOx濃度Cnx1、NOx濃度Cnx2の他、エアフローメーター46から吸入空気量Gaを示す信号が所定の制御周期で入力される。ECU44は、吸入空気量Gaを排気通路12における排気の流量である排気流量として取り扱う。すなわち、ECU44は、触媒温度Ts、尿素水濃度Cur、NOx濃度Cnx1、NOx濃度Cnx2、吸入空気量Gaを取得する取得部として機能する。
【0025】
ECU44は、上記各種センサーから入力される情報、ROMに予め記憶された制御プログラムや各種データ、これらに基づいて各種の演算及び処理を実行する。ECU44は、インジェクター30の開閉制御を通じた尿素水の供給処理を実行する。また診断部としてのECU44は、尿素水供給系の状態を診断する診断処理を実行し、センサー35の適否及びタンク32内の尿素水の適否、これらを判定する。ECU44は、診断処理においてセンサー35あるいは尿素水が「異常」と判定された場合、警報装置50を作動させて、「異常」と判定された対象を運転者に通知する。
【0026】
供給処理において、ECU44は、所定の制御周期毎に尿素水の供給量を演算する。ECU44は、尿素水の濃度が所望濃度(例えば32.5%wt)であることを前提として尿素水の供給量を演算する。ECU44は、吸入空気量Ga、NOx濃度Cnx1、触媒温度Tsに基づいて排気中のNOxを浄化するために必要な尿素水の基本供給量を演算する。そしてECU44は、上流NOxセンサー28のNOx濃度Cnx1と下流NOxセンサー42のNOx濃度Cnx2とから演算される浄化率η(=Cnx1/Cnx2)に基づいて基本供給量を補正することにより尿素水の供給量を演算する。ECU44は、演算された供給量の分の尿素水が排気に供給されるようにインジェクター30に対して制御信号を出力する。
【0027】
図2を参照して、ECU44の実行する診断処理の処理手順について説明する。この診断処理は繰り返し実行される。
図2に示されるように、ECU44は、最初のステップS11にて、NOx濃度Cnx1、NOx濃度Cnx2、尿素水濃度Curの各種情報を取得する。次にECU44は、浄化率演算部として機能し、ステップS11にて取得したNOx濃度Cnx1とNOx濃度Cnx2とに基づいて浄化率ηを演算する(ステップS12)。
【0028】
次のステップS13にてECU44は、浄化率ηが基準浄化率ηst以上であるか否かを判断する。基準浄化率ηstは、上記各種データに予め規定された値であって、排気中のNOxが浄化されたと判断される浄化率である。なお、浄化率ηが基準浄化率ηst以上であることを第1条件という。
【0029】
浄化率ηが基準浄化率ηst以上であった場合(ステップS13:YES)、ECU44は、ステップS11にて取得した尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上であるか否かを判断する(ステップS14)。基準濃度Cstは、上記各種データに予め規定された値であって、供給処理にて演算された供給量の尿素水が排気に供給されることによって、少なくとも基準浄化率ηstが得られるべき尿素水の濃度である。なお、尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上であることを第2条件という。
【0030】
尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上であった場合(ステップS14:YES)、ECU44は、センサー35及び尿素水の双方を「正常」と判定し、「正常」という診断結果を得て(ステップS15)診断処理を一旦終了する。反対に、ステップS14において尿素水濃度Curが基準濃度Cst未満であった場合(ステップS14:NO)、ECU44は、尿素水を「正常」、センサー35を「異常」と判定し、「センサー35の異常」という診断結果を得て(ステップS16)診断処理を一旦終了する。
【0031】
一方、ステップS13にて浄化率ηが基準浄化率ηst未満であった場合(ステップS13:NO)、ECU44は、ステップS14と同様、ステップS11にて取得した尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上であるか否かを判断する(ステップS17)。
【0032】
尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上であった場合(ステップS17:YES)、ECU44は、ステップS16の処理に移行して、尿素水を「正常」、センサー35を「異常」と判定して、「センサー35の異常」という診断結果を得て診断処理を一旦終了する。反対に、尿素水濃度Curが基準濃度Cst未満であった場合(ステップS17:NO)、ECU44は、尿素水を「異常」、センサー35を「正常」と判定し、「尿素水の異常」という診断結果を得て(ステップS18)診断処理を終了する。診断処理の終了後、ECU44は、診断処理の診断結果に応じて警報装置50を作動させて、「異常」と診断された対象を運転者に通知する。
【0033】
次に、上述した診断処理の作用について説明する。
ECU44は、浄化率ηが基準浄化率ηst以上である第1条件、尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上である第2条件、これら第1条件及び第2条件のいずれか一方のみが成立するときにセンサー35を「異常」と判定する。
【0034】
第1条件が不成立、且つ、第2条件が成立する場合は、尿素水濃度Curが基準濃度Cst以上であるにも関わらず、浄化率ηが基準浄化率ηst未満である場合である。そのため、センサー35の尿素水濃度Curが実際の濃度よりも高い値を示している。一方、第1条件が成立し、且つ、第2条件が不成立の場合は、尿素水の濃度が基準濃度Cst未満であるにも関わらず、浄化率ηが基準浄化率ηst以上である場合である。そのため、センサー35の尿素水濃度Curが実際の濃度よりも低い値を示している。すなわち、上記のように第1条件及び第2条件が設定されることによってセンサー35の適否を判定することができる。
【0035】
以上説明したように、上記実施形態の尿素水供給系の診断装置によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)診断処理によってセンサー35の適否が判定されることから、センサー35の適否が判定されることなく尿素水の適否が判定される場合に比べて、尿素供給系の状態の診断結果の精度が高められる。
【0036】
(2)第1条件及び第2条件の双方が不成立である場合には、浄化率ηが基準浄化率ηst未満であり、且つ尿素水濃度Curが基準濃度Cst未満である。こうした場合には、センサー35ではなく尿素水の品質が異常である。すなわち、上記のように第1条件及び第2条件が設定されることによって、センサー35の適否のみならず、尿素水の適否も診断結果として得られる。
【0037】
(3)上流NOxセンサーの検出値であるNOx濃度Cnx1と下流NOxセンサーの検出値であるNOx濃度Cnx2とに基づいて浄化率ηが演算される。すなわち、浄化率ηがNOxに関する実際の検出値に基づいて演算される。そのため、例えばエンジンの運転状態に基づいて推定される値を用いて浄化率ηが演算される場合に比べて、浄化率ηに対する信頼性が向上する。その結果、診断処理の診断結果に対する信頼性も向上する。
【0038】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・浄化率ηは、例えばエンジン10の運転状態に応じて推定される値を用いて演算されてもよい。
【0039】
・診断処理においては、尿素水の適否について判定されることなく、センサー35の適否についてのみ判定されてもよい。この際、尿素水の適否が診断処理とは異なる処理として実行されてもよい。
【0040】
・センサー35を「異常」と判定する条件は、第1条件及び第2条件のいずれか一方の成立を含んでいればよく、例えば尿素水濃度Curが基準濃度よりも高い上限濃度未満であること等、第1条件及び第2条件とは異なる条件をさらに含んでいてもよい。
【0041】
・第1条件及び第2条件の双方が成立する場合、及び、双方が成立しない場合、判定部は、センサー35の適否を判定しなくともよい。
・供給処理において、尿素水の供給量が演算される際の尿素水の濃度は尿素水濃度Curであってもよい。
【0042】
・エンジンは、ディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンや天然ガスエンジンであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…エンジン、12…排気通路、20…排気浄化装置、22…前段酸化触媒、24…DPF、26…DPF温度センサー、28…上流NOxセンサー、30…インジェクター、32…タンク、34…圧送ポンプ、35…尿素水品質センサー、36…選択還元型触媒、38…触媒温度センサー、40…後段酸化触媒、42…下流NOxセンサー、44…ECU、46…エアフローメーター、50…警報装置。
図1
図2