(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
第1実施形態について、
図1〜
図13を参照して説明する。
図1に示すように、作業工具の一例として、石膏ボードなどの被加工材に対してねじ締め作業を行うスクリュードライバ100が構成される。スクリュードライバ100は、本体部101、ハンドル107を主体として構成されている。
【0018】
本体部101は、本体ハウジング103とロケータ105を主体として構成されている。本体ハウジング103は、モータ110および駆動機構120を収容している。ロケータ105は、本体ハウジング103の先端領域に取り付けられている。本体部101の先端領域には、工具ビット119が駆動機構120に着脱可能に装着される。この工具ビット119は、ロケータ105から突出し、ロケータ105に対して工具ビット119の長軸方向に相対移動可能に装着される。
【0019】
ハンドル107は、本体部101の後端領域に連接されている。このハンドル107には、トリガ107aおよび切替スイッチ107bが設けられている。トリガ107aが操作されることで、電源コード109から電流が供給されて、モータ110が駆動される。また、切替スイッチ107bが操作されることで、モータ110の出力軸111の回転方向が切り替えられる。すなわち、出力軸111は、正回転および逆回転のうちのどちらかの回転方向が選択されて駆動される。モータ110および出力軸111が、それぞれ本発明における「モータ」および「出力軸」に対応する実施構成例である。
【0020】
図2〜
図6に示すように、駆動機構120は、駆動ギア125、リテーナ130、伝達機構140、コイルスプリング145、スピンドル150を主体として構成されている。この駆動機構120が、本発明における「回転伝達機構」に対応する実施構成例である。
【0021】
図2および
図3に示すように、駆動ギア125は、側壁126と底壁127を有する略カップ状の部材である。側壁126の内側は円筒状に形成されており、これにより駆動ギア125は、リテーナ130および伝達機構140を収容している。側壁126には、モータ110の出力軸111に形成されたギア歯112と係合するギア歯126aが設けられている。一方、底壁127の中心部には、スピンドル150が貫通する貫通孔が設けられている。貫通孔の近傍には、リテーナ130と当接可能な当接部127aが設けられている。すなわち、駆動ギア125とリテーナ130は、当接部127aを介して当接し、当接部127a以外の部分では当接しない。この駆動ギア125は、ベアリング128によって回転可能に保持されている。なお、駆動ギア125は、スピンドル150の長軸方向(工具ビット119の長軸方向)に移動可能に配置されている。この駆動ギア125が、本発明における「駆動部材」に対応する実施構成例である。
【0022】
図4に示すように、リテーナ130は、略円筒状に形成されており、駆動ギア125の底壁127に対向する基部131と、駆動ギア125の側壁126に対向する側部136を有している。なお、
図4においては、リテーナ130とボール143以外の構成要素は図示していない。
【0023】
図4に示すように、基部131には、2つの溝132がリテーナ130の周方向に沿って形成されている。
図5に示すように、それぞれの溝132には、基部131と平行な平坦部133と、平坦部133に対して傾斜する傾斜部134と、平坦部133に対して垂直な垂直部135が形成されている。この溝132は、ボール143と当接するように構成されている。なお、
図5においては、3つのボール143のうち溝132に当接するボール143のみを図示している。以降、溝の断面図において同様である。
【0024】
側部136は、基部131から円筒状のリテーナ130の軸方向に平行に突出するように形成されている。リテーナ130の周方向に関して、互いに間隔を空けて6つの側部136が形成されており、隣接する側部136の間にローラ141が配置される。
図2および
図3に示すように、リテーナ130の軸方向における、側部136の端部は、ニードルベアリング137に支持されており、これによりリテーナ130が回転可能に支持される。このリテーナ130が、本発明における「切替部材」に対応する実施構成例である。
【0025】
図2および
図3に示すように、伝達機構140は、ローラ141、被伝達部材142、ボール143を主体として構成されている。この伝達機構140は、駆動ギア125の回転をスピンドル150に伝達するように構成されている。
図6に示すように、被伝達部材142は、正六角形の断面形状を有する。被伝達部材142の正六角形のそれぞれの辺に対応して6つのローラ141が、被伝達部材142の外周に配置されている。このローラ141は、ローラ141の長軸方向がスピンドル150の長軸方向に沿って配置されている。ローラ141は、リテーナ130が回転したときに、リテーナ130の側部136によって被伝達部材142の外周に沿って周方向に移動される。このローラ141が、本発明の「伝達部材」に対応する実施構成例である。
【0026】
図2に示すように、ボール143は、被伝達部材142の内側において、被伝達部材142に形成されたボール保持溝142aとスピンドル150のボール保持溝156に保持されている。これにより、被伝達部材142とスピンドル150は、ボール143を介して一体に回転する。ボール保持溝142aには、それぞれ3つのボール143が、スピンドル150の長軸方向に移動可能に配置されている。なお、被伝達部材142には、移動規制部142bが形成されており、スピンドル150の長軸方向における、ボール143の所定距離以上の移動を規制する。
【0027】
図2および
図3に示すように、スピンドル150は、略円筒状のビット保持部151と略円柱状の回転伝達シャフト155が一体に形成されている。ビット保持部151には、ビット保持ボール152とリーフスプリング153が配置されており、これにより工具ビット119を着脱可能に保持する。スピンドル150の長軸方向に関して、ビット保持部151の工具ビット119とは反対側には、フランジ部154が形成されている。このフランジ部154は、駆動ギア125に対向するように配置されている。
【0028】
回転伝達シャフト155は、一端側がビット保持部151に連結され、他端側が駆動ギア125を貫通してモータ110側に延在している。回転伝達シャフト155には、被伝達部材142に2つのボール保持溝142aに対応して、ボール143を保持する2つのボール保持溝156が形成されている。ボール保持溝156は、回転伝達シャフト155の長軸方向(スピンドル150の長軸方向)に延在している。
【0029】
以上のスピンドル150は、ベアリング159によって回転可能に保持されている。なお、このスピンドル150は、スピンドル150の長軸方向に関して移動可能に保持されている。このスピンドル150が、本発明における「被動部材」に対応する実施構成例である。
【0030】
図2および
図3に示すように、コイルスプリング145は、回転伝達シャフト155の外側に、スピンドル150の長軸方向に平行に配置されている。コイルスプリング145の一端部は、駆動ギア125に当接し、コイルスプリング145の他端部は、スピンドル150に当接している。これにより、スピンドル150は、工具ビット119が装着される側(スクリュードライバ100の前方)に向かって付勢される。なお、フランジ部154の前方には、ストッパ146が配置されている。したがって、フランジ部154とストッパ146の当接によって、スクリュードライバ100の前方へのスピンドル150の移動が規制される。一方、駆動ギア125は、コイルスプリング145によって、工具ビット119が装着される側とは反対側(スクリュードライバ100の後方)に向かって付勢される。このとき、駆動ギア125は、リテーナ130およびニードルベアリング137によって、スクリュードライバ100の後方への移動が規制される。
【0031】
以上の通り構成されたスクリュードライバ100は、トリガ107aが操作されると、モータ110が駆動される。モータ110の出力軸111の回転によって、駆動ギア125が回転される。そして、駆動ギア125の回転がスピンドル150に伝達されることで、スピンドル150に保持された工具ビット119が回転される。
【0032】
(ねじ締め作業)
モータ110の出力軸111が所定方向(以下、正方向)に回転すると、
図2に示すように、当接部127aを介して摩擦力によって駆動ギア125の回転力がリテーナ130に伝達される。しかしながら、
図2および
図5に示すように、ボール143は、リテーナ130の傾斜部134に当接しており、これによりボール143がリテーナ130の回転を妨げる。したがって、駆動ギア125が回転されても、駆動ギア125の回転はリテーナ130に伝達されない。すなわち、ローラ141は、
図6に示す位置に保持され、スピンドル150は回転されない。このねじ締め作業時の出力軸111の回転方向が、本発明における「第1方向」に対応する実施構成例である。
図6に示されるローラ141の位置が、本発明における「伝達不能位置」に対応する実施構成例である。
【0033】
一方、
図7に示すように、工具ビット119がねじ(図示省略)に押し当てられると、コイルスプリング145の付勢力に抗して、スピンドル150がスクリュードライバ100の後方に移動する。スピンドル150の移動に伴って、ボール143が後方に移動する。これにより、
図8および
図9に示すように、ボール143と傾斜部134の当接が解除され、当接部127aとリテーナ130の間の摩擦力によって、リテーナ130が矢印Aで示される方向(A方向)に回転される。このスピンドル150の前方側の位置および後方側の位置が、それぞれ本発明における「第1の位置」および「第2の位置」に対応する実施構成例である。また、
図9に示されるローラ141の位置が、本発明における「伝達位置」に対応する実施構成例である。
【0034】
リテーナ130の回転によってローラ141が移動され、ローラ141は、駆動ギア125と被伝達部材142の間に挟持される。その結果、ローラ141のくさび効果によって駆動ギア125と被伝達部材142が一体にA方向に回転する。換言すると、駆動ギア125の回転が被伝達部材142に伝達される。被伝達部材142が回転することで、回転伝達シャフト155(スピンドル150)が回転される。これにより、スピンドル150に保持された工具ビット119が回転し、ねじ締め作業が遂行される。
【0035】
ねじ締め作業が行われると、ねじが被加工材にねじ込まれる。ねじ込まれるねじの移動に伴ってロケータ105の前面が被加工材に当接すると、工具ビット119を保持したスピンドル150が、スクリュードライバ100の前方に向かって徐々に移動する。これにより、ボール保持溝156に保持されたボール143が前方に向かって移動する。すなわち、ボール143は、
図8に示される位置から、
図10に示される位置に移動して、リテーナ130に設けられた溝132の傾斜部134に当接する。このロケータ105が、本発明における「被加工材当接部」に対応する実施構成例である。
【0036】
さらにねじが被加工材にねじ込まれることで、スピンドル150がスクリュードライバ100の前方に向かって移動すると、
図11に示すように、ボール143が傾斜部134を押圧する。これにより、
図9に示すように、A方向に回転する駆動ギア125に対して、リテーナ130は、B方向に相対回転する。その結果、リテーナ130およびローラ141は、
図6に示される位置に移動して、被伝達部材142に対する駆動ギア125の回転の伝達が遮断される。これにより、被加工材に対して所定の深さまでねじがねじ込まれて、ねじ締め作業が終了する。なお、ねじがねじ込まれる所定の深さとしての、工具ビット119に保持されたねじ頭からロケータ105の前面の間の距離は、作業者によって変更可能である。このボール143と溝132の傾斜部134が、それぞれ本発明における「当接部」および「誘導部」に対応する実施構成例である。
【0037】
(ねじ外し作業)
被加工材にねじ込まれたねじを外すねじ外し作業の際には、スクリュードライバ100がねじを逆回転させることで、被加工材からねじを外す。このとき、工具ビット119を駆動させるために、工具ビット119がねじを押圧することは合理的でない。そのため、スクリュードライバ100は、ねじ外し作業において、工具ビット119を押圧することなく工具ビット119がモータ110に駆動される。
【0038】
具体的には、モータ110の出力軸111がねじ締め作業における正方向とは逆の方向(以下、逆方向)に回転するように、切替スイッチ107bを切り替える。
図2に示す状態において、モータ110が駆動されると、駆動ギア125は、当接部127aを介して摩擦力によってリテーナ130に駆動ギア125の回転を伝達する。このとき、リテーナ130は
図5に示す状態から、
図12に示すようにB方向に移動する。すなわち、ボール143は、リテーナ130の溝132の傾斜部134から離れて垂直部135に近づく方向に移動する。換言すると、ボール143は、リテーナ130の回転を妨げない。このねじ外し作業時の出力軸111の回転方向が、本発明における「第2方向」に対応する実施構成例である。
【0039】
リテーナ130がB方向に回転することで、
図13に示すように、ローラ141が移動され、ローラ141は、駆動ギア125と被伝達部材142の間に挟持される。その結果、ローラ141のくさび効果によって駆動ギア125と被伝達部材142が一体にB方向に回転する。これにより、工具ビット119をねじに対して押圧することなく、工具ビット119が駆動される。したがって、ねじ外し作業が合理的に遂行される。この
図13に示されるローラ141の位置が、本発明における「伝達位置」に対応する実施構成例である。
【0040】
また、第1実施形態によれば、駆動ギア125のA方向とB方向の両方向の回転が、同一のローラ141で伝達される。すなわち、駆動ギア125がA方向に回転する際には、工具ビット119およびスピンドル150が軸方向に移動されることで、駆動ギア125の回転がローラ141を介してスピンドル150に伝達される。一方、駆動ギア125がB方向に回転する際には、工具ビット119およびスピンドル150が軸方向に移動することなく、駆動ギア125の回転がローラ141を介してスピンドル150に伝達される。したがって、合理的な作業態様に基づいて、同一のローラ141がモータ110の回転を工具ビット119に伝達する。
【0041】
また、第1実施形態によれば、スピンドル150の周方向に関する、リテーナ130の回動によって、ローラ141が回転伝達位置と回転不能位置に切り替えられる。すなわち、駆動ギア125の回転によって、ローラ141の位置が合理的に切り替えられる。
【0042】
また、第1実施形態によれば、ローラ141を用いることによって、駆動ギア125と被伝達部材142の間に挟持されたローラ141のくさび効果によって、モータ110の出力軸111の回転がスピンドル150に伝達される。
【0043】
また、第1実施形態によれば、ねじ締め作業における、ねじの移動に伴って、リテーナ130に形成された溝132の傾斜部134とボール143が当接することで、被伝達部材142に対する駆動ギア125の回転の伝達が遮断される。これにより、所定のねじ込み深さにおいてねじ締め作業が正確に終了される。
【0044】
以上の第1実施形態においては、駆動ギア125を円形断面として、被伝達部材142を正六角形断面としたが、これには限られない。例えば、駆動ギアを正六角断面として、被伝達部材を円形断面にしてもよい。また、駆動ギアと被伝達部材のどちらか一方の構成要素を正六角形断面としたが、これには限られず、正多角形断面としてもよい。この場合、多角形の辺の数に応じてローラが配置されることが好ましい。
【0045】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、
図14および
図15を参照して説明する。スクリュードライバ500のうち、第1実施形態と同様の構成については、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0046】
図14〜
図15に示すように、駆動機構520は、伝達機構530、被動ギア540、スピンドル550、ロードセル560、コントローラ570を主体として構成されている。この駆動機構520が、本発明における「回転伝達機構」に対応する実施構成例である。
【0047】
図15に示すように、伝達機構530は、モータ110の出力軸111の回転を被動ギア540に伝達するための機構である。この伝達機構530は、ロータ531、電磁石532、駆動ギア535、被動側クラッチ部材536、リーフスプリング537を主体として構成されている。
【0048】
ロータ531は、出力軸111と一体に回転するように出力軸111の外周に取り付けられている。このロータ531には、コントローラ570に接続された電磁石532が取り付けられている。駆動ギア535は、出力軸111と同軸状に配置されており、ロータ531に対向する領域にリーフスプリング537を介して被動側クラッチ部材536が取り付けられている。被動側クラッチ部材536は、磁性体として構成されている。電磁石532に電流が供給されていない状態では、リーフスプリング537の付勢力によって、ロータ531と被動側クラッチ部材536は離隔して配置される。このロータ531が、本発明における「駆動部材」に対応する実施構成例である。また、駆動ギア535および被動側クラッチ部材536が、本発明における「伝達部材」に対応する実施構成例である。また、ロータ531に対して離間して配置された駆動ギア535および被動側クラッチ部材536の位置が、本発明における「伝達不能位置」に対応する実施構成例である。
【0049】
被動ギア540は、駆動ギア535に係合するように配置されている。この被動ギア540の中心部には、回転伝達シャフト555がスプライン結合するように貫通しており、スピンドル550によって支持されている。また、被動ギア540の後端部には、ニードルベアリング541が配置されており、被動ギア540の前端部には、コイルスプリング545が配置されている。これにより、被動ギア540がスクリュードライバ500の後方に向かって付勢された状態で、回転可能に支持されている。
【0050】
スピンドル550は、ビット保持部551、回転伝達シャフト555を主体として構成されている。ビット保持部551には、ビット保持ボール552とリーフスプリング553が配置されており、これにより工具ビット119を着脱可能に保持する。スピンドル550の長軸方向に関して、ビット保持部551の工具ビット119とは反対側には、フランジ部554が形成されている。回転伝達シャフト555は、一端側がビット保持部551に固定状に連結され、他端側が被動ギア540を貫通してモータ110側に延在している。これにより、ビット保持部551と回転伝達シャフト555は、一体に回転するように構成されている。
【0051】
以上のスピンドル550は、コイルスプリング545がフランジ部554に当接しており、スピンドル550がスクリュードライバ500の前方に向かって付勢されている。フランジ部554の前方には、ストッパ556が配置されている。フランジ部554がストッパ556に当接することで、スクリュードライバ500の前方へのスピンドル550の移動が規制される。コイルスプリング545の付勢力に抗して押圧されることで、スピンドル550は、スクリュードライバ500の後方に向かって移動する。このスピンドル550が、本発明における「被動部材」に対応する実施構成例である。
【0052】
スピンドル550の後方には、コントローラ570に接続されたロードセル560が配置されている。回転伝達シャフト555の後端部がロードセル560に当接することで、工具ビット119を介して押圧されるスピンドル550の押圧力がロードセル560によって検出される。
【0053】
(ねじ締め作業)
トリガ107aが操作されてモータ110の出力軸111が回転した状態で、工具ビット119がねじ(図示省略)に押し当てられると、コイルスプリング545の付勢力に抗して、スピンドル550がスクリュードライバ500の後方に移動する。これにより、回転伝達シャフト555の後端部がロードセル560に当接して、コントローラ570がロードセル560を介してスピンドル550の押圧力を検出する。スピンドル550の押圧力が所定の閾値を超えると、コントローラ570は電磁石532に対して電流を供給する。これにより、駆動ギア535に設けられた被動側クラッチ部材536が電磁石532に引き寄せられて、駆動ギア535とロータ531が一体に回転可能となる。これにより、出力軸111の回転が、伝達機構530を介してスピンドル550(工具ビット119)に伝達され、ねじ締め作業が遂行される。このねじ締め作業時の出力軸111の回転方向が、本発明における「第1方向」に対応する実施構成例である。また、ロータ531と一体になった駆動ギア535および被動側クラッチ部材536の位置が、本発明における「伝達位置」に対応する実施構成例である。また、スピンドル550の前方側の位置および後方側の位置が、それぞれ本発明における「第1の位置」および「第2の位置」に対応する実施構成例である。また、この電磁石532が、本発明における「切替部材」に対応する実施構成例である。
【0054】
ねじが被加工材にねじ込まれることで、ねじ込まれるねじの移動に伴ってロケータ105の前面が被加工材に当接すると、スピンドル550がスクリュードライバ500の前方に向かって移動する。これにより、ロードセル560によって検出されるスピンドル550の押圧力が減少する。この押圧力が閾値を下回ると、コントローラ570は、電磁石532に対する電流の供給を停止する。これにより、リーフスプリング537の付勢力によって、ロータ531と駆動ギア535が離れることで、スピンドル550(工具ビット119)に対する出力軸111の回転の伝達が遮断される。その結果、被加工材に対して所定の深さまでねじがねじ込まれて、ねじ締め作業が終了する。
【0055】
(ねじ外し作業)
被加工材にねじ込まれたねじを外すねじ外し作業の際には、モータ110の出力軸111がねじ締め作業における正方向とは逆の方向(以下、逆方向)に回転するように、切替スイッチ107bを切り替える。そして、トリガ107aが操作されると、コントローラ570は、スピンドル550の押圧力に関わらず、電磁石532に対して電流を供給する。これにより、駆動ギア535に設けられた被動側クラッチ部材536が電磁石532に引き寄せられて、駆動ギア535とロータ531が一体に回転可能となる。その結果、出力軸111の回転が、伝達機構530を介してスピンドル550(工具ビット119)に伝達され、ねじ外し作業が遂行される。すなわち、スピンドル550が押圧されることなく、工具ビット119が回転される。このねじ外し作業時の出力軸111の回転方向が、本発明における「第2方向」に対応する実施構成例である。
【0056】
以上の第2実施形態によれば、工具ビット119をねじに対して押圧することなく、工具ビット119が駆動される。したがって、ねじ外し作業が合理的に遂行される。
【0057】
また、第2実施形態によれば、出力軸111の正方向と逆方向の両方向の回転が、同一の伝達機構530で伝達される。すなわち、電磁石532を用いることで、スピンドル550が押圧されて出力軸111の正方向の回転を伝達する回転伝達機構と、スピンドル550が押圧されることなく出力軸111の逆方向の回転を伝達する回転伝達機構が、同一の伝達機構530で構成される。換言すると、同一の被動側クラッチ部材536および/または駆動ギア535を介して、出力軸111の両方向の回転が伝達される。出力軸111の回転方向に応じた伝達部材を設ける必要がなく、スクリュードライバ500の部品点数が削減される。
【0058】
以上の第2実施形態においては、電磁石532がロータ531に取り付けられ、被動側クラッチ部材536が駆動ギア535に取り付けられていたが、これには限られない。例えば、電磁石が駆動ギア535に取り付けられ、被動側クラッチ部材がロータ531に取り付けられていてもよい。
【0059】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。変形例においては、モータ110の出力軸111が被動ギア540に係合するように構成されている。また、モータ110は、コントローラ570に接続されている。そして、ねじ締め作業時には、トリガ107aが操作されるとともに、ロードセル560によって検出されたスピンドル550の押圧力が所定の閾値を超えると、コントローラ570は、モータ110に対して電流を供給する。押圧力が閾値を下回ると、コントローラ570は、モータ110に対する電流の供給を停止して、ねじ締め作業が終了する。
【0060】
一方、ねじ外し作業時には、スピンドル550の押圧力に関わらず、トリガ107aが操作されると、コントローラ570は、モータ110に対して電流を供給する。これにより、工具ビット119をねじに対して押圧することなく、工具ビット119が駆動される。また、トリガ107aの操作が解除されることで、コントローラ570は、モータ110に対する電流の供給を停止する。その結果、ねじ外し作業が合理的に遂行される。
【0061】
なお、以上の第1実施形態および第2実施形態においては、切替スイッチ107bが切り替えられて、ねじ外し作業を行う際に、スクリュードライバ100,500の後方へのスピンドル150,550の移動を規制する規制部材が設けられていてもよい。例えば、規制部材としては、フランジ部154,554の後方に当該フランジ部154,554に当接可能に設けられており、ねじ締め作業時には、フランジ部154,554に当接しないように移動するように構成されている。
【0062】
上記発明の趣旨に鑑み、本発明に係る作業工具に関しては、下記の態様が構成可能である。
(態様1)
請求項6に記載の作業工具であって、
前記軸方向移動要素は、前記被動部材と一体に形成されていることを特徴とする作業工具。
(態様2)
請求項6に記載の作業工具であって、
前記軸方向移動要素は、前記被動部材とは別体に形成された球状部材であることを特徴とする作業工具。
(態様3)
請求項6、態様1または2のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記軸方向移動要素は、常時には前記周方向に関する前記切替部材の前記相対移動を規制するように構成されており、
前記被動部材が前記第1の位置から前記第2の位置に移動されることで、前記軸方向移動要素が前記軸方向に移動して、前記周方向に関する前記切替部材の前記相対移動を許容するように構成されており、
前記切替部材の前記相対移動が許容された状態で、前記駆動部材が回転されることで、前記切替部材が前記伝達部材を前記伝達不能位置から前記伝達位置に切り替えるように構成されていることを特徴とする作業工具。
(態様4)
請求項6、態様1〜3のいずれか1項に記載の作業工具であって、
当該作業工具は、先端工具がねじを回転させて被加工材に対してねじ締め作業を行うねじ締め工具として構成されており、
ねじ締め作業時に、被加工材に当接可能な被加工材当接部を有し、
前記被加工材当接部が被加工材に当接した状態で、先端工具がねじを被加工材にねじ込むことによって、当該先端工具に接続された前記被動部材が前記軸方向に関して被加工材に近づくように移動するように構成されており、
ねじ締め作業時の前記被動部材の前記軸方向に関する移動に伴って、前記軸方向移動要素が前記軸方向に移動することで、当該軸方向移動要素が前記切替部材を前記周方向に移動させて、前記切替部材が前記伝達部材を前記伝達位置から前記伝達不能位置に切り替えるように構成されていることを特徴とする作業工具。
(態様5)
態様4に記載の作業工具であって、
前記軸方向移動要素と前記切替部材のうちの一方の構成要素は、前記周方向に延在する誘導部を有しており、
前記軸方向移動要素と前記切替部材のうちの他方の構成要素は、前記誘導部と当接可能な当接部を有しており、
ねじ締め作業時に、前記誘導部と前記当接部が当接した状態で、前記軸方向移動要素が前記軸方向に関して被加工材に近づくように移動することで、前記切替部材を前記周方向に移動するように構成されており、
前記切替部材が前記周方向に移動されることで、前記切替部材が前記伝達部材を前記伝達位置から前記伝達不能位置に切り替えるように構成されていることを特徴とする作業工具。
(態様6)
請求項1〜6、態様1〜5のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記駆動部材と前記被動部材のうち一方の部材の他方の部材に対向する部分が、円筒状に形成されており、前記他方の部材の前記一方の部材に対向する部分が多角柱状に形成されており、
前記伝達部材は、多角柱のそれぞれの面に対応して配置された複数の伝達要素で構成されていることを特徴とする作業工具。
(態様7)
態様6に記載の作業工具であって、
前記被動部材が前記駆動部材の内側に配置され、
前記駆動部材の内側が円筒状に形成され、
前記被動部材の外側が多角柱状に形成され、
前記伝達要素はローラ状に形成されており、前記被動部材に形成された多角柱のそれぞれの面に対応して配置されていることを特徴とする作業工具。
(態様8)
先端工具を回転駆動する作業工具であって、
出力軸を有するモータと、
前記出力軸の回転を先端工具に伝達する回転伝達機構と、を有し、
前記回転伝達機構は、
回転軸を有し、前記モータの回転が常時伝達されて回転される駆動部材と、
先端工具が接続される被動部材と、を有し、
先端工具が被加工材に対して押圧されることで、前記被動部材が先端工具の軸方向における第1の位置から第2の位置に移動するように構成されており、
前記出力軸が所定の第1方向に回転する際には、先端工具が被加工材に対して押圧されて前記被動部材が前記第2の位置に移動することで、前記駆動部材から前記被動部材に前記出力軸の前記第1方向の回転が伝達されるように構成されており、
前記出力軸が前記第1方向とは反対の第2方向に回転する際には、先端工具が被加工材に対して押圧されることなく、前記被動部材が前記第1の位置に位置した状態で、前記駆動部材から前記被動部材に前記出力軸の前記第2方向の回転が伝達されるように構成されていることを特徴とする作業工具。
(態様9)
態様8に記載の作業工具であって、
前記駆動部材と前記被動部材の間に配置され、前記出力軸の前記第1方向と前記第2方向の両方向の回転を伝達する伝達部材を有することを特徴とする作業工具。
【0063】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通り示す。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
スクリュードライバ100,500が、本発明の「作業工具」に対応する構成の一例である。
モータ110が、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。
出力軸111が、本発明の「出力軸」に対応する構成の一例である。
駆動機構120,520が、本発明の「回転伝達機構」に対応する構成の一例である。
駆動ギア125が、本発明の「駆動部材」に対応する構成の一例である。
ロータ531が、本発明の「駆動部材」に対応する構成の一例である。
スピンドル150,550が、本発明の「被動部材」に対応する構成の一例である。
ローラ141が、本発明の「伝達部材」に対応する構成の一例である。
被動側クラッチ部材536が、本発明の「伝達部材」に対応する構成の一例である。
駆動ギア535が、本発明の「伝達部材」に対応する構成の一例である。
リテーナ130が、本発明の「切替部材」に対応する構成の一例である。
電磁石532が、本発明の「切替部材」に対応する構成の一例である。
ロケータ105が、本発明の「被加工材当接部」に対応する構成の一例である。