特許第6105458号(P6105458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6105458
(24)【登録日】2017年3月10日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20170316BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20170316BHJP
   G03G 15/06 20060101ALI20170316BHJP
   G03G 21/08 20060101ALI20170316BHJP
【FI】
   G03G15/00 303
   G03G15/02 102
   G03G15/06 101
   G03G21/08
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-253310(P2013-253310)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2015-111215(P2015-111215A)
(43)【公開日】2015年6月18日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】三宅 弘二
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−31488(JP,A)
【文献】 特開平8−220956(JP,A)
【文献】 特開平6−51602(JP,A)
【文献】 特開平5−241456(JP,A)
【文献】 特開平11−84827(JP,A)
【文献】 特開2009−122558(JP,A)
【文献】 特開平3−20767(JP,A)
【文献】 特開平8−146677(JP,A)
【文献】 特開2013−73097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/06
G03G 21/08
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体を動作させるモータと、帯電電圧の印加により前記感光体を帯電させる帯電器と、現像電圧の印加により前記感光体に描画された潜像を現像する現像器と、前記感光体の表面電位を制御する除電器と、を有する画像形成部と、
前記画像形成部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記現像に用いる現像剤の状態を取得する状態取得部と、
前記状態取得部が取得した前記現像剤の状態に基づいて、第1のモード又は第2のモードのいずれか一方のモードを、非画像形成時における前記画像形成部のモードとして選択する選択部と、を有し、
前記第1のモードは、現像電圧を画像形成時における現像電圧と同等とし、帯電電圧を画像形成時における帯電電圧と同等以下とするとともに、前記除電器を動作させないモードであり、
前記第2のモードは、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を前記感光体表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とするとともに、前記除電器を動作させるモードである、画像形成装置。
【請求項2】
前記状態取得部は、二成分現像方式における前記現像剤中のトナー濃度又はトナー帯電量に基づいて前記現像剤の状態を取得する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1のモードの帯電電圧は、前記画像形成時における帯電電圧よりも低い請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記帯電器の抵抗に関する情報に基づいて、前記第1のモードの帯電電圧を設定するモード内容設定部をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記モード内容設定部は、前記除電器を動作させた場合の前記帯電器の抵抗値と前記除電器を動作させない場合の前記帯電器の抵抗値との差分である抵抗値差分を、前記帯電器の抵抗に関する情報とする請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記モード内容設定部は、前記帯電器周辺の温湿度環境、及び、前記帯電器における前記帯電電圧の印加時間に基づいて前記帯電器の抵抗値変動を予測し、前記抵抗値変動を前記帯電器の抵抗に関する情報とする請求項4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記除電器はランプを点灯することにより前記感光体の表面電位を制御する除電ランプであり、
前記選択部は、非画像形成時のモードとして前記第1のモードを選択した場合において、
画像形成後に前記帯電電圧が0Vとされるタイミングで、前記除電ランプを動作させ、前記感光体の少なくとも一周分以上前記除電ランプを点灯させる請求項1〜6のいずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項8】
感光体を動作させるモータと、帯電電圧の印加により前記感光体を帯電させる帯電器と、現像電圧の印加により前記感光体に描画された潜像を現像する現像器と、前記感光体の表面電位を制御する除電器と、を有する画像形成部と、
前記画像形成部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
非画像形成時において、最初に前記画像形成部を制御する第1制御部と、前記第1制御部による制御の後に前記画像形成部を制御する第2制御部と、を有し、
前記第1制御部は、
現像電圧を0Vとし、帯電電圧を前記感光体表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とするとともに、前記除電器を動作させた状態で、前記感光体を少なくとも1周分以上当該帯電電圧で帯電させ、
前記第2制御部は、
現像電圧を0Vとし、帯電電圧を前記感光体の放電開始電圧以下に設定するとともに、前記除電器を動作させない、画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、非画像形成時のページ間にて、前記第1制御部及び前記第2制御部による制御を行うか否かを、プロセススピードに応じて決定する実行決定部をさらに有する請求項8記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感光体に接触することにより感光体を帯電させる接触式帯電ローラが用いられた画像形成装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このような画像形成装置では、帯電させた感光体の表面電位を制御する除電ランプが用いられる。当該除電ランプは、感光体表面の帯電電位を安定させる等の目的で用いられるものであり、画像形成装置の作像機能を担保するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−139711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような画像形成装置においては、長寿命化を実現すべく、被摩耗部材、特に感光体やクリーニングブレード等の摩耗を抑制することが求められている。感光体の長寿命化を達成する最も簡単な方法は、感光体の厚膜化や大径化である。しかしながら感光体を厚膜化した場合には画質が低下することがあり、また、感光体を大径化した場合には製造コストが上昇したり装置が大型化したりすることがある。感光体の厚膜化や大径化を行わずに感光体の長寿命化を達成するためには、帯電器による放電量(放電ストレス)を低減することが効果的である。しかしながら、残像などの画像欠陥を抑制するために、転写後の表面電位を下げる必要性から除電ランプが用いられることによって画像形成装置の放電ストレス低減が困難となっている。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、作像機能を担保しながら放電ストレスを低減し感光体の摩耗を抑制することができる画像形成装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置は、画像形成部と、画像形成部を制御する制御部と、を備えている。画像形成部は、感光体を動作させるモータと、帯電電圧の印加により感光体を帯電させる帯電器と、現像電圧の印加により感光体に描画された潜像を現像する現像器と、感光体の表面電位を制御する除電器と、を有している。制御部は、現像に用いる現像剤の状態を取得する状態取得部と、状態取得部が取得した現像剤の状態に基づいて、第1のモード又は第2のモードのいずれか一方のモードを、非画像形成時における画像形成部のモードとして選択する選択部と、を有している。第1のモードは、現像電圧を画像形成時における現像電圧と同等とし、帯電電圧を画像形成時における帯電電圧と同等以下とするとともに、除電器を動作させないモードである。また、第2のモードは、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を感光体表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とするとともに、除電器を動作させるモードである。
【0007】
この画像形成装置では、現像剤の状態に基づき、非画像形成時における画像形成部のモードとして第1のモード又は第2のモードが選択されている。第1のモードでは、除電器が動作しないため放電ストレスの低減が図られる。また、第2のモードでは、現像電圧を0Vとした状態で、帯電電圧を感光体表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とすることにより、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を発生させることなく、感光体表面電位を極力低くして放電ストレスを低減することができる。ここで、除電器を動作させなかった場合には、感光体表面の帯電電位が不安定になり、帯電器が印加する帯電電圧に対して感光体表面の帯電電位に所定のばらつきが出るおそれがある。感光体表面の帯電電位と現像電位との差分(クリーニング電位)が適切な範囲内でない場合には、いわゆるキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題が発生し得る。よって、除電器が動作しない場合の作像機能を担保するためには、上述した帯電電位の所定のばらつきを考慮した場合においても、感光体表面の帯電電位と現像電位との差分(クリーニング電位)が適切な範囲内とされる必要がある。適切なクリーニング電位の範囲は現像剤の状態に応じて決まる。そのため、例えば、現像剤の状態が、帯電電位の所定のばらつきを考慮しても帯電電位と現像電位との差分が適切なクリーニング電位の範囲内に収まる状態である場合には除電器を動作させない第1のモードを選択し、帯電電位と現像電位との差分が適切なクリーニング電位の範囲内に収まらない状態である場合には第1のモードには劣るものの放電ストレスの低減を図ることができる第2のモードを選択することで、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を発生させることなく(作像機能を担保しつつ)、放電ストレスを最大限低減して感光体の摩耗を抑制することができる。
【0008】
また、状態取得部は、二成分現像方式における現像剤中のトナー濃度又はトナー帯電量に基づいて現像剤の状態を取得する。トナー濃度又はトナー帯電量に基づいて現像剤の状態を取得することで、適切なクリーニング電位と所定の関係を有した現像剤の状態を確実に取得することができる。
【0009】
また、第1のモードの帯電電圧は、画像形成時における帯電電圧よりも低い。第1のモードでは除電器が動作しないため感光体表面の帯電電位が時間の経過とともに少しずつ高くなるところ、非画像形成時である第1のモードでの帯電電圧を画像形成時における帯電電圧よりも低くしておくことで、感光体表面の帯電電位が現像電位と比べて高くなることに起因するキャリア付着及び画像の濃度低下の発生を抑制し、作像機能を担保することができる。
【0010】
また、制御部は、帯電器の抵抗に関する情報に基づいて、第1のモードの帯電電圧を設定するモード内容設定部をさらに有する。帯電器の抵抗に関する情報を用いることで、除電器が動作しない第1のモードにおける感光体表面の帯電電位変化量がある程度予測できるため、当該予測に基づいて第1のモードの帯電電圧を設定することによって、より確実にキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を抑制できる。
【0011】
また、モード内容設定部は、除電器を動作させた場合の帯電器の抵抗値と除電器を動作させない場合の帯電器の抵抗値との差分である抵抗値差分を、帯電器の抵抗に関する情報とする。実際の抵抗値差分を用いることによって、精度高く感光体表面の帯電電位変化量を予測でき、適切な帯電電圧を設定することで、より確実にキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を抑制できる。
【0012】
また、モード内容設定部は、帯電器周辺の温湿度環境、及び、帯電器における帯電電圧の印加時間に基づいて帯電器の抵抗値変動を予測し、抵抗値変動を帯電器の抵抗に関する情報とする。温湿度環境及び帯電電圧の印加時間から帯電器の抵抗値変動を予測することで、抵抗値変動、すなわち帯電器の劣化度合を高精度に予測できる。このような抵抗値変動を帯電器の抵抗に関する情報とすることで、例えば、高速動作であるために実際の抵抗値を取得し難い場合においても、適切な帯電電圧を設定することができ、より確実にキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を抑制できる。
【0013】
また、除電器はランプを点灯することにより感光体の表面電位を制御する除電ランプであり、選択部は、非画像形成時のモードとして第1のモードを選択した場合において、画像形成後に帯電電圧が0Vとされるタイミングで、除電ランプを動作させ、感光体の少なくとも一周分以上除電ランプを点灯させる。第1のモード選択時の画像形成後において、感光体の少なくとも一周分以上除電ランプを点灯させることで、感光体の表面電位をリセットすることができ、感光体の残留電荷が次回画像形成時に影響をおよぼすことを回避できる。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、感光体を動作させるモータと、帯電電圧の印加により感光体を帯電させる帯電器と、現像電圧の印加により感光体に描画された潜像を現像する現像器と、感光体の表面電位を制御する除電器と、を有する画像形成部と、画像形成部を制御する制御部と、を備え、制御部は、非画像形成時において、最初に画像形成部を制御する第1制御部と、第1制御部による制御の後に画像形成部を制御する第2制御部と、を有し、第1制御部は、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を感光体表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とするとともに、除電器を動作させた状態で、感光体を少なくとも1周分以上当該帯電電圧で帯電させ、第2制御部は、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を感光体の放電開始電圧以下に設定するとともに、除電器を動作させない。
【0015】
この画像形成装置では、非画像形成時において、第1制御部によって感光体の1周分以上、感光体の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となるように帯電が行われる。そのため、感光体の全周の帯電電位を画像形成時のクリーニング電位と同等とでき、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等を抑制することができる。そして、第1制御部による制御の後に、第2制御部によって、例えば帯電器の動作が停止される等により帯電電圧が感光体の放電開始電圧以下に設定されるとともに、除電器の動作が停止される。そのため、新たな放電ストレスを生じさせることを抑制できる。また、一度均一帯電された感光体の帯電電位は、数時間程度の時間をかけて徐々に低くなっていく。そのため、通常の画像形成処理においては、感光体の帯電電位は概ね維持されるものとみなすことができる。よって、例えば帯電器の動作が停止されても、適切なクリーニング電位を維持させることができる。以上より、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を発生させることなく(作像機能を担保しつつ)、放電ストレスを最大限低減して感光体の摩耗を抑制することができる。
【0016】
また、制御部は、非画像形成時のページ間にて、第1制御部及び第2制御部による制御を行うか否かを、プロセススピードに応じて決定する実行決定部をさらに有する。プロセススピードに応じて第1制御部及び第2制御部による制御を行うか否かを決定することにより、第1制御部及び第2制御部による制御が、次ページの画像に影響をおよぼすことを回避できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作像機能を担保しながら放電ストレスを低減し感光体の摩耗を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図2】第1実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
図3】Erase-OFFモードの動作シーケンスを示す図である。
図4】Lo-Biasモードの動作シーケンスを示す図である。
図5】クリーニング電位について説明するための図である。
図6】トナー帯電量とクリーニング電位との関係を示した図である。
図7】トナー帯電量とトナー濃度との関係を示した図である。
図8】制御部の処理を示すフロー図である。
図9】従来の画像形成装置の動作シーケンスを示す図である。
図10】各モード毎の感光体摩耗量の試験結果を示す図である。
図11】各モード毎の感光体摩耗量の試験結果を示す表である。
図12】第2実施形態に係る制御部の機能ブロック図である。
図13】Lo-Biasモードの動作シーケンスを示す図である。
図14】連続走行時におけるLo-Biasモードの動作シーケンスを示す図である。
図15】各モード毎の感光体摩耗量の試験結果を示す図である。
図16】各モード毎の感光体摩耗量の試験結果を示す表である。
図17】変形例に係るLo-Biasモードの動作シーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
[第1実施形態]
(画像形成装置の全体構成)
図1に示すように、画像形成装置1は、搬送ユニット10、転写ユニット20、感光体ドラム30(感光体)、4つの現像ユニット100、及び、定着ユニット40を含んで構成される、ゼログラフィーを用いた画像形成装置である。
【0021】
搬送ユニット10は、最終的に画像が形成される記録媒体としての用紙Pを収容すると共に、用紙Pを記録媒体搬送路上に搬送する。用紙Pは、カセットCに積層して収容される。搬送ユニット10は、用紙Pに転写されるトナー像が二次転写領域Rに到達するタイミングで、用紙Pを二次転写領域Rに到達させる。
【0022】
転写ユニット20は、4つの現像ユニット100により形成されたトナー像を、用紙Pに二次転写する二次転写領域Rに搬送する。転写ユニット20は、転写ベルト21と、転写ベルト21を懸架する懸架ローラ21a、21b、21c及び21dと、感光体ドラム30と共に転写ベルト21を挟持する一次転写ローラ22と、懸架ローラ21dと共に転写ベルト21を挟持する二次転写ローラ24とを含んで構成される。
【0023】
転写ベルト21は、懸架ローラ21a、21b、21c及び21dにより循環移動される無端状のベルトである。一次転写ローラ22は、転写ベルト21の内周側から感光体ドラム30を押圧するように設けられる。一方、二次転写ローラ24は、転写ベルト21の外周側から懸架ローラ21dを押圧するように設けられる。また、転写ユニット20は、転写ベルト21に付着したトナーを除去するベルトクリーニング装置等を更に備えていてもよい。
【0024】
感光体ドラム30は、周面に画像が形成されるドラム状の静電潜像担持体であり、例えばOPC(Organic PhotoConductor)からなる。本実施形態に係る画像形成装置1は、カラー画像を形成可能な装置であり、例えばマゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの各色に対応して、4つの感光体ドラム30が転写ベルト21の移動方向に沿って設けられている。各感光体ドラム30は、ドラムモータ35によって動作させられる。各感光体ドラム30の周上には、図1に示すように、帯電ローラ32(帯電器)、露光ユニット34、ドラムモータ35(モータ)、クリーニングユニット38、及び、現像ユニット100(現像器)がそれぞれ設けられている。これらの構成により画像形成部37が構成されている。画像形成部37が有する各構成は、後述する制御部60(図2参照)によって制御される。
【0025】
帯電ローラ32は、帯電電圧の印加により感光体ドラム30の表面を所定の電位に均一に帯電させる。帯電ローラ32は、感光体ドラム30に近接もしくは当接しており、微小GAP放電を利用して上述した均一帯電を行う。露光ユニット34は、帯電ローラ32により帯電した感光体ドラム30の表面を、用紙Pに形成する画像に応じて露光する。これにより、感光体ドラム30の表面のうち露光ユニット34により露光された部分の電位が変化し、静電潜像が形成される。4つの現像ユニット100は、現像電圧の印加により、各現像ユニット100に対応して設けられたトナータンク36から供給されたトナーによって感光体ドラム30に描画された静電潜像を現像し、トナー像を生成する。4つのトナータンク36内には、それぞれ、マゼンダ、イエロー、シアン、及び、ブラックのトナーが充填されている。
【0026】
クリーニングユニット38は、感光体ドラム30上に形成されたトナー像が転写ベルト21に一次転写された後に感光体ドラム30上に残存するトナーを回収する。クリーニングユニット38は、例えばクリーニングブレード80を設け、感光体ドラム30の周面にクリーニングブレード80を当接させることにより感光体ドラム30上の残トナーを除去する構成を用いることができる。また、クリーニングユニット38は、感光体ドラム30の周上に、感光体ドラム30の表面電位を制御する除電ランプ39(除電器)を有している。除電ランプ39は、点灯することによって感光体ドラム30の表面を除電するイレースランプである。除電ランプ39は、画像形成時(プリント時)に動作することにより感光体ドラム30の表面電位を所望の値とするとともに、転写後等の非画像形成時に動作することで、画像形成後の感光体ドラム30の残留電荷を感光体ドラム30の光減衰電圧以下にし、表面電位をリセットする。除電ランプ39によって、残留電荷による帯電電位の不安定さの解消や、画像におけるゴーストの発生が抑制される。なお、非画像形成時には、プリント動作前やプリント動作後だけでなく、複数ページにわたって画像形成が行われる場合のページ間も含まれる。
【0027】
定着ユニット40は、転写ベルト21から用紙Pへ二次転写されたトナー像を用紙Pに付着させ、定着させる。定着ユニット40は、例えば、加熱ローラ42と、加圧ローラ44とを含んで構成される。加熱ローラ42は、回転軸周りに回転可能な円筒状の部材であり、その内部には例えばハロゲンランプなどの熱源が設けられている。加圧ローラ44は、回転軸周りに回転可能な円筒状の部材であり、加熱ローラ42を押圧するように設けられる。加熱ローラ42及び加圧ローラ44の外周面には、例えばシリコーンゴム等の耐熱弾性層が設けられる。加熱ローラ42と加圧ローラ44との接触領域である定着ニップに用紙Pを通過させることにより、トナー像を用紙Pに溶融定着させる。
【0028】
また、画像形成装置1には、定着ユニット40によりトナー像が定着された用紙Pを装置外部へ排出するための排出ローラ52及び54が設けられている。
【0029】
次に、画像形成装置1の動作について説明する。画像形成装置1に被記録画像の画像信号が入力されると、画像形成装置1の制御部は、受信した画像信号に基づいて、帯電ローラ32により感光体ドラム30の表面を所定の電位に均一に帯電させた後、露光ユニット34により感光体ドラム30の表面にレーザ光を照射して静電潜像を形成する。
【0030】
一方、現像ユニット100では、トナーとキャリアを所望の混合比になるように調整し、さらに混合攪拌してトナーを均一に分散させ最適な帯電量を付与した現像剤が調整される。この現像剤を現像ローラ110に担持させる。そして、現像ローラ110の回転により現像剤が感光体ドラム30と対向する領域まで搬送されると、現像ローラ110に担持された現像剤のうちのトナーが感光体ドラム30の周面上に形成された静電潜像に移動し、静電潜像が現像される。こうして形成されたトナー像は、感光体ドラム30と転写ベルト21とが対向する領域において、感光体ドラム30から転写ベルト21へ一次転写される。転写ベルト21には、4つの感光体ドラム30上に形成されたトナー像が順次積層されて、1つの積層トナー像が形成される。そして、積層トナー像は、懸架ローラ21dと二次転写ローラ24とが対向する二次転写領域Rにおいて、搬送ユニット10から搬送された用紙Pに二次転写される。
【0031】
積層トナー像が二次転写された用紙Pは、定着ユニット40へ搬送される。用紙Pを加熱ローラ42と加圧ローラ44との間で熱及び圧力を加えながら通過させることにより、積層トナー像を用紙Pに溶融定着させる。その後、用紙Pは、排出ローラ52及び54により画像形成装置1の外部へ排出される。一方、転写ベルト21は、ベルトクリーニング装置を備える場合、積層トナー像が用紙Pへ二次転写された後、転写ベルト21に残存するトナーをベルトクリーニング装置により除去してもよい。
【0032】
(制御部の機能)
ここで、図2図11を参照して、画像形成部37を制御する制御部60の各機能を説明する。図2に示されるように、制御部60は、状態取得部61と、選択部62と、モード設定部63と、モード内容設定部64と、を有している。制御部60は、CPU、主記憶装置であるRAM及びROM、通信を行うための通信モジュール、並びにハードディスク等の補助記憶装置等のハードウェアを備えるコンピュータを含むものとして構成されており、これらの構成要素がプログラム等により動作することにより、各機能が発揮される。
【0033】
状態取得部61は、現像に用いる現像剤の状態を取得する。具体的には、状態取得部61は、二成分現像方式における現像剤中のトナー濃度又はトナー帯電量に基づいて現像剤の状態を取得する。状態取得部61は、取得した現像剤の状態を選択部62に入力する。なお、状態取得部61は、現像ユニット100内に設置されたトナー濃度センサーにより現像剤中のトナー濃度を測定し、その値からトナー帯電量を予測する方法などが一般的に用いられている。また、状態取得部61は、トナー濃度センサーの値と画像濃度センサーの値とから、トナー帯電量を求めてもよい。
【0034】
以下では、状態取得部61は、現像剤中のトナー帯電量に基づいて現像剤の状態を取得するとして説明する。ここで、例えばトナー帯電量の取得が難しい場合であっても、トナー濃度を取得することによって、当該取得したトナー濃度からトナー帯電量を推定することが可能である。すなわち、図7に示されるように、画像形成部37周辺の温湿度環境と、トナー濃度とに基づいて、トナー帯電量を推定することが可能である。
【0035】
選択部62は、状態取得部61が取得した現像剤の状態、すなわち現像剤中のトナー帯電量に基づいて、Erase-OFFモード(第1のモード)又はLo-Biasモード(第2のモード)のいずれか一方のモードを、非画像形成時(プリント動作前、プリント動作後、及びページ間)における画像形成部37のモードとして選択する。
【0036】
ここで、Erase-OFFモードとは、非画像形成時において、現像電圧を画像形成時(プリント時)の現像電圧と同等とし、帯電電圧を画像形成時の帯電電圧と同等以下とするとともに、除電ランプ39を動作させない(動作を停止させる)モードである。なお、以下の説明において、同等な電圧(電位)の範囲には、±10%程度異なる電圧(電位)も含まれるものとする。Erase-OFFモードの詳細について、図3を用いて説明する。
【0037】
図3では、横軸が時間、縦軸が画像形成部37の各構成の状態を示している。図3に示す例では、非画像形成時であるプリント動作前及びプリント動作後においてErase-OFFモードによる制御が行われ、画像形成時であるプリント時には通常のプリント動作制御が行われている。ドラムモータ35は、プリント動作前の制御開始時に動作が開始させられ、プリント動作後の制御終了時まで一貫して動作させられる。また、現像ローラ110には、プリント動作前の制御開始時からプリント動作後の制御終了時(より詳細には、ドラムモータ35の動作が終了する直前)まで一貫してプリント時の現像電圧が印加される。すなわち、ドラムモータ35の制御、及び、印加される現像電圧については、Erase-OFFモードとプリント時とで同一である。
【0038】
一方、帯電ローラ32に印加される帯電電圧は、Erase-OFFモードとプリント時とで異なっている。すなわち、Erase-OFFモードでは、プリント時の帯電電圧と同等以下であり、より詳細にはプリント時の帯電電圧よりも低い電圧が帯電ローラ32に印加される。プリント動作後における帯電電圧の印加は、現像電圧の印加が終了した後、且つ、ドラムモータ35の動作が終了する前まで行われる。また、除電ランプ39については、プリント時では動作させられているのに対し、Erase-OFFモードでは動作が停止させられている。除電ランプ39は、プリント動作後において、帯電電圧の印加が終了した(帯電電圧が0Vとされた)タイミング、より詳細には、帯電電圧が0Vとされる直前のタイミングである動作後点灯タイミングLi(図3参照)で動作させられ、感光体ドラム30の一周分以上、ランプを点灯する。
【0039】
なお、図3に示されるように、実際には、Erase-OFFモードの期間であるプリント動作前及びプリント動作後においても、一部期間、具体的にはプリント時の制御との切り替え期間において、プリント時の制御が行われている。
【0040】
感光体ドラム30表面の帯電電位について説明する。プリント時における感光体ドラム30表面の帯電電位は所定の値、例えば-600V等とする必要がある。そのため、プリント時における帯電電圧は、感光体ドラム30の帯電電位を-600V程度とできる値とされる。ここで、感光体ドラム30の帯電電位と現像電位との差は、画像形成時のクリーニング電位(例えば50V〜200V程度)とされる必要がある。ここで、クリーニング電位とは、感光体ドラム30表面の帯電電位と現像電位との差である。また、画像形成時のクリーニング電位とは、プリントサイクルにおける画像デフェクトを防止することが可能な電位である。図5に示されるように、感光体ドラム30の帯電電位と現像電位との差すなわちクリーニング電位が小さくなりすぎると、背景部に不良帯電トナーが付着して画像品質が低下するバックグラウンドかぶりが問題となる。一方、感光体ドラム30の帯電電位と現像電位との差すなわちクリーニング電位が大きくなりすぎると、感光体ドラム30に現像剤のキャリアが付着するキャリア付着が問題となる。画像形成時のクリーニング電位とは、バックグラウンドかぶりの程度が所定の閾値を超えず、且つ、キャリア付着の量が所定の閾値を超えない電位である。
【0041】
ここで、Erase-OFFモードにおいて除電ランプ39の動作が停止されている場合には、感光体ドラム30の表面の帯電電位が時間の経過とともに少しずつ高くなる。そのため、帯電電位と現像電位との差が大きくなることによってキャリア付着が発生することを抑制すべく、Erase-OFFモードにおいては、上述したように、プリント時の帯電電圧よりも低い帯電電圧が帯電ローラ32に印加されている。具体的には、Erase-OFFモードでの感光体ドラム30の帯電電位の増加量は50V以下と推定されるため、Erase-OFFモードにおける帯電電圧はプリント時の帯電電圧よりも50V程度低い値とされる。
【0042】
次に、Lo-Biasモードとは、非画像形成時において、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を感光体ドラム30表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とするとともに、除電ランプ39を動作させるモードである。Lo-Biasモードの詳細について、図4を用いて説明する。
【0043】
図4では、横軸が時間、縦軸が画像形成部37の各構成の状態を示している。図4に示す例では、非画像形成時であるプリント動作前及びプリント動作後においてLo-Biasモードによる制御が行われ、画像形成時であるプリント時には通常のプリント動作制御が行われている。ドラムモータ35は、プリント動作前の制御開始時に動作が開始させられ、プリント動作後の制御終了時まで一貫して動作させられる。また、除電ランプ39は、プリント動作前の制御開始時に動作が開始させられ、プリント動作後の制御終了時、より詳細にはドラムモータ35の動作が終了した後まで一貫して動作させられる。すなわち、ドラムモータ35及び除電ランプ39の制御については、Lo-Biasモードとプリント時とで同一である。
【0044】
一方、現像ローラ110に印加される現像電圧、及び、帯電ローラ32に印加される帯電電圧は、Lo-Biasモードとプリント時とで異なっている。すなわち、Lo-Biasモードでは、現像電圧は0Vとされる。また、帯電電圧はプリント時の帯電電圧よりも低い所定のローバイアス、具体的には、感光体ドラム30表面の帯電電位を画像形成時のクリーニング電位と同等にする値とされる。
【0045】
なお、上述したErase-OFFモードと同様、Lo-Biasモードにおいても、実際には、Lo-Biasモードの期間であるプリント動作前及びプリント動作後においても、一部期間、具体的にはプリント時の制御との切り替え期間において、プリント時の制御が行われている。
【0046】
選択部62は、現像剤中のトナー帯電量に基づいて、Erase-OFFモード又はLo-Biasモードのいずれか一方のモードを非画像形成時の画像形成部37のモードとして選択する。ここで、Erase-OFFモードにおいて除電ランプ39を動作させない場合には、感光体ドラム30表面の帯電電位が不安定になり、帯電ローラ32に印加される帯電電圧に対して感光体ドラム30表面の帯電電位の値に所定のばらつきが出るおそれがある。このことで、帯電電位と現像電位との差が、適切なクリーニング電位とならないなるおそれがある。
【0047】
ここで、適切なクリーニング電位の範囲は、図6に示されるように、現像剤中のトナー帯電量に応じて決まるものである。図6では、横軸がトナー帯電量、縦軸が帯電電位と現像電位との差であり、一点鎖線の上側はキャリア付着が発生し得る範囲、実線の下側はバックグラウンドかぶりが発生し得る範囲を示している。よって、一点鎖線の下側且つ実線の上側の範囲が、適切なクリーニング電位の範囲を示している。例えば、Erase-OFFモードにおける感光体ドラム30表面の帯電電位のばらつき(最大帯電量変動)を50V程度とした場合に、適切なクリーニング電位の範囲を50V以上確保できるトナー帯電量については、最大帯電量変動を考慮してもキャリア付着やバックグラウンドかぶりが発生しないと推定できる。よって、選択部62は、取得したトナー帯電量における適切なクリーニング電位の範囲が、最大帯電量変動よりも大きい場合にはErase-OFFモードを選択し、取得したトナー帯電量における適切なクリーニング電位の範囲が、最大帯電量変動よりも小さい場合にはLo-Biasモードを選択する。選択部62は、選択したモードをモード設定部63に入力する。
【0048】
モード設定部63は、画像形成部37の各構成に対して、選択部62が選択したモードに応じた設定を行う。具体的には、帯電ローラ32、ドラムモータ35、クリーニングユニット38の除電ランプ39、及び、現像ユニット100の現像ローラ110に対して、モードに応じた設定を行う。
【0049】
モード内容設定部64は、帯電ローラ32の抵抗に関する情報に基づいて、Erase-OFFモードの帯電電圧の設定変更を行う。Erase-OFFモードの各設定内容は選択部62に記憶されているため、モード内容設定部64は、変更後の設定内容を選択部62に入力する。
【0050】
モード内容設定部64は、除電ランプ39を動作させた場合の帯電ローラ32の抵抗値と、除電ランプ39を動作させない場合の帯電ローラ32の抵抗値との差分である抵抗値差分を、上述した帯電ローラ32の抵抗に関する情報として取得することにより、帯電電圧の設定変更を行う。具体的には、帯電ローラ32の抵抗を検知する抵抗検知部71が、除電ランプ39を動作させた場合と動作させない場合のそれぞれにおいて、一定の電流を流したときのフィードバック電圧を取得し抵抗値を導出する。抵抗検知部71は、各抵抗値をモード内容設定部64に入力する。そして、モード内容設定部64は、抵抗値差分に基づいて、Erase-OFFモードにおいて除電ランプ39の動作を停止させた場合の帯電電位変化量を予測し、予測した帯電電位変化量に応じて帯電電圧を設定する。
【0051】
また、モード内容設定部64は、帯電ローラ32周辺の温湿度環境、及び、帯電ローラ32における帯電電圧の総印加時間に基づいて、帯電ローラの抵抗値変動を予測し、当該抵抗値変動を帯電ローラ32の抵抗に関する情報として帯電電圧の設定変更を行う。具体的には、帯電ローラ32の近傍に設置された温室度計測部72が温湿度を計測しモード内容設定部64に入力する。また、印加時間記憶部73が、帯電ローラ32が過去に帯電電圧を印加された総印加時間を記憶しており、当該総印加時間をモード内容設定部64に入力する。そして、モード内容設定部64は、温湿度環境及び総印加時間から帯電ローラ32の抵抗値変動、すなわち帯電器の劣化度合いを予測する。モード内容設定部64は、予測した抵抗値変動に基づいて、Erase-OFFモードにおいて除電ランプ39の動作を停止させた場合の帯電電位変化量を予測し、予測した帯電電位変化量に応じて帯電電圧を設定する。
【0052】
次に、図8を参照して制御部60の処理について説明する。画像形成装置1の動作が開始されると、まず、制御部60によりドラムモータ35が動作させられる(ステップS1)。つづいて、状態取得部61により二成分紛体吸引皿によって測定されたトナー帯電量が現像剤の状態として取得され、当該取得された現像剤の状態が選択部62に入力される(ステップS2)。そして、選択部62によって、状態取得部61に取得されたトナー帯電量が規定範囲内であるか否かが判断される(ステップS2)。具体的には、取得されたトナー帯電量における適切なクリーニング電位の範囲が最大帯電量変動(例えば50V)よりも大きい場合には、取得されたトナー帯電量は規定範囲内であると判断される。
【0053】
ステップS2において、トナー帯電量が規定範囲内であると判断された場合には、選択部62によりErase-OFFモードが選択され、モード設定部63により画像形成部37の各構成に対してErase-OFFモードに応じた設定が行われる(ステップS3)。一方で、ステップS2において、トナー帯電量が規定範囲内でないと判断された場合には、選択部62によりLo-Biasモードが選択され、モード設定部63により画像形成部37の各構成に対してLo-Biasモードに応じた設定が行われる(ステップS4)。以上が制御部60の処理である。なお、各処理の前段階において、モード内容設定部64により、Erase-OFFモードの帯電電圧の設定変更を行ってもよい。
【0054】
次に、図2及び図9図11を参照して第1実施形態に係る画像形成装置1の作用効果について説明する。
【0055】
従来より、中高速の画像形成装置においては、帯電させた感光体の表面電位を制御する除電ランプが用いられている。このような除電ランプを用いることによって、感光体表面の帯電電位が安定するものの、感光体表面への放電量(放電ストレス)が大きくなってしまうという問題があった。例えば、図9に示されるように、非画像形成時であるプリント動作前やプリント動作後においても、プリント時と同等に帯電電圧等が印加されるとともに除電ランプが点灯されることによって、放電ストレスが大きくなっていた。
【0056】
この点、本実施形態に係る画像形成装置1では、現像剤の状態に基づき、非画像形成時における画像形成部37のモードとしてErase-OFFモード又はLo-Biasモードが選択されている。Erase-OFFモードでは、除電ランプ39が動作しないため放電ストレスの低減が図られる。また、Lo-Biasモードでは、現像電圧を0Vとした状態で、帯電電圧を感光体ドラム30表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とすることにより、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を発生させることなく、感光体ドラム30表面の帯電電位を極力低くして放電ストレスを低減することができる。
【0057】
ここで、除電ランプ39を動作させなかった場合には、感光体ドラム30表面の帯電電位が不安定になり、帯電ローラ32が印加する帯電電圧に対して感光体ドラム30表面の帯電電位に所定のばらつきが出るおそれがある。感光体表面の帯電電位と現像電位との差分が適切なクリーニング電位の範囲内でない場合には、いわゆるキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題が発生し得る。よって、除電ランプ39が動作しない場合の作像機能を担保するためには、上述した帯電電位の所定のばらつきを考慮した場合においても、感光体ドラム30表面の帯電電位と現像電位との差分が適切なクリーニング電位の範囲内とされる必要がある。適切なクリーニング電位の範囲は現像剤の状態に応じて決まるため、例えば、現像剤の状態が、帯電電位の所定のばらつきを考慮しても帯電電位と現像電位との差分が適切なクリーニング電位の範囲内に収まる状態である場合には除電ランプ39を動作させないErase-OFFモードを選択し、帯電電位と現像電位との差分が適切なクリーニング電位の範囲内に収まらない状態である場合にはErase-OFFモードには劣るものの放電ストレスの低減を図ることができるLo-Biasモードを選択することで、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を発生させることなく(作像機能を担保しつつ)、放電ストレスを最大限低減して感光体の摩耗を抑制することができる。
【0058】
従来の画像形成装置、及び、画像形成装置1のそれぞれを走行させた場合の感光体摩耗量について説明する。なお、従来の画像形成装置は図9に示す動作シーケンス(以下、ノーマルモードと記載)で走行する。また、画像形成装置1はErase-OFFモードの場合には図3に示す動作シーケンスで、Lo-Biasモードの場合には図4に示す動作シーケンスで、それぞれ走行する。図10及び図11に示すように、同じように走行させた場合の感光体摩耗量は、ノーマルモードが最も多く、次いでLo-Biasモード、Erase-OFFモードの順であった。また、感光体ドラム1000回転あたりの具体的な摩耗量は、ノーマルモードが20nmであるのに対し、Lo-Biasモードは9.5nm、Erase-OFFモードは8nmと極めて少なくなった。また、本実施形態の画像形成装置1では、全動作シーケンスにおける非画形成時の時間を50%とした場合、従来に対し、25%以上の長寿命化が達成できた。
【0059】
また、状態取得部61が、二成分現像方式における現像剤中のトナー濃度又はトナー帯電量に基づいて現像剤の状態を取得することで、適切なクリーニング電位の範囲と所定の関係を有する現像剤の状態を確実に取得することができる。
【0060】
また、Erase-OFFモードの帯電電圧は、画像形成時における帯電電圧よりも低い値とされているため、除電ランプ39が動作しないことにより感光体ドラム30表面の帯電電位が時間の経過とともに少しずつ高くなった場合においても、キャリア付着及び画像の濃度低下の発生を抑制することができる。
【0061】
また、制御部60が、帯電ローラ32の抵抗に関する情報に基づいて、Erase-OFFモードの帯電電圧を設定するモード内容設定部64を有している。モード内容設定部64が帯電ローラ32の抵抗に関する情報を用いることで、除電ランプ39が動作しないErase-OFFモードにおける感光体ドラム30表面の帯電電位変化量がある程度予測できるため、当該予測に基づいてErase-OFFモードの帯電電圧を設定することによって、より確実にキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を抑制できる。
【0062】
また、モード内容設定部64は、除電ランプ39を動作させた場合の帯電ローラ32の抵抗値と除電ランプを動作させない場合の帯電ローラ32の抵抗値との差分である抵抗値差分を、上述した帯電ローラ32の抵抗に関する情報とすることで、実際の抵抗値差分を用いて精度高く感光体表面の帯電電位変化量を予測できる。このため、適切な帯電電圧を設定でき、より確実にキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を抑制できる。
【0063】
また、モード内容設定部64は、帯電ローラ32周辺の温湿度環境、及び、帯電ローラ32における帯電電圧の総印加時間に基づいて帯電ローラ32の抵抗値変動を予測し、抵抗値変動を帯電ローラ32の抵抗に関する情報とすることで、抵抗値変動、すなわち帯電ローラ32の劣化度合を予測し、帯電電位変化量を予測することができる。そのため、例えば、高速動作であるために実際の抵抗値を取得し難い場合においても、適切な帯電電圧を設定することができ、より確実にキャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を抑制できる。
【0064】
また、選択部62が、非画像形成時のモードとしてErase-OFFモードを選択した場合において、画像形成後に帯電電圧が0Vとされるタイミングで、除電ランプ39を動作させ、感光体ドラム30の少なくとも一周分以上除電ランプ39を点灯させることで、感光体ドラム30の表面電位をリセットすることができ、感光体ドラム30の残留電荷が次回画像形成時に影響をおよぼすことを回避できる。
【0065】
[第2実施形態]
次に、図12図17を参照して、第2実施形態に係る画像形成装置1Aの制御部60Aの各機能について説明する。第1実施形態に係る画像形成装置1と第2実施形態に係る画像形成装置1Aとは基本的に同じ構成を備えている。よって、本実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する説明については省略する。図12に示されるように画像形成部37の各構成を制御する制御部60Aは、第1制御部65と、第2制御部66と、実行決定部67とを有している。
【0066】
第1制御部65及び第2制御部66は、ともに非画像形成時において画像形成部37を制御するものであり、第1制御部65は最初に画像形成部37を制御する機能を、第2制御部66は第1制御部65による制御の後に画像形成部37を制御する機能を、それぞれ有している。なお、第1制御部65及び第2制御部66による画像形成部37の制御は、第1実施形態で説明したLo-Biasモードの一態様として制御されるものである。
【0067】
第1制御部65は、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を感光体ドラム30表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値とするとともに、除電ランプ39を動作させた状態で感光体ドラム30を少なくとも1周分以上、上述した帯電電圧で帯電させる。第1制御部65は、帯電ローラ32、ドラムモータ35、クリーニングユニット38の除電ランプ39、及び、現像ユニット100の現像ローラ110に対して上記制御が可能となるように設定を行う。
【0068】
第2制御部66は、第1制御部65による制御が完了した後に、現像電圧を0Vとし、帯電電圧を感光体ドラム30の放電開始電圧以下に設定するとともに、除電ランプ39の動作を停止させる。第2制御部66は、帯電ローラ32、ドラムモータ35、クリーニングユニット38の除電ランプ39、及び、現像ユニット100の現像ローラ110に対して上記制御が可能となるように設定を行う。
【0069】
第1制御部65及び第2制御部66による制御の詳細について、図13を用いて説明する。図13では、横軸が時間、縦軸が画像形成部37の各構成の状態を示している。図13に示す例では、非画像形成時であるプリント動作前及びプリント動作後において第1制御部65及び第2制御部66による制御が行われ、画像形成時であるプリント時には通常のプリント動作制御が行われている。
【0070】
ドラムモータ35は、プリント動作前の制御開始時に動作が開始させられ、プリント動作後の制御終了時まで一貫して動作させられる。よって、ドラムモータ35の制御については、第1制御部65及び第2制御部66によって制御される非画像形成時と、プリンタ時とで同一である。また、現像ローラ110に印加される現像電圧は、第1制御部65及び第2制御部66によって制御される非画像形成時においては常に0Vである。よって、現像電圧は非画像形成時とプリンタ時とで異なるものの、第1制御部65及び第2制御部66の制御内容は同一である。
【0071】
一方、帯電ローラ32に印加される帯電電圧は、非画像形成時とプリンタ時とで異なっているだけでなく、非画像形成時において、第1制御部65による制御内容と第2制御部66による制御内容とで異なっている。第1制御部65は、帯電電圧を感光体ドラム30の表面の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となる値として、感光体ドラム30を少なくとも1周分以上、当該帯電電圧で帯電させる。なお、現像電圧が0Vであるため、感光体ドラム30の帯電電位を画像形成時のクリーニング電位とする帯電電圧は、プリント時の帯電電圧よりも低い。そして、第1制御部65によって感光体ドラム30が少なくとも1周分以上帯電させられた後に、第2制御部66は、帯電電圧を感光体ドラム30の放電開始電圧以下に設定する。
【0072】
また、除電ランプ39の制御についても、第1制御部65による制御内容と第2制御部66による制御内容とで異なっている。すなわち、第1制御部65は、上述した感光体ドラム30が少なくとも1周分以上画像形成時のクリーニング電位で帯電させられている期間においては除電ランプ39を動作させる。そして、第1制御部65によって感光体ドラム30が少なくとも1周分以上帯電させられた後に、第2制御部66は、除電ランプ39の動作を停止させる。除電ランプ39は、プリント動作後において、感光体ドラム30が停止する直前の動作後点灯タイミングLiで動作させられ、感光体ドラム30の一周分以上ランプを点灯する。
【0073】
第1制御部65の制御により画像形成時のクリーニング電位に帯電させられた感光体ドラム30の表面電位は、第2制御部66の制御により帯電電圧が感光体ドラム30の放電開始電圧以下に設定されることによって、暗減衰により徐々に電位を失っていく。しかしながら、このような暗減衰は数時間程度の時間の経過があってはじめて問題となるものであり、通常のプリントシーケンスにおいては問題とならない。すなわち、非画像形成時において第2制御部66により帯電電圧が感光体ドラム30の放電開始電圧以下に設定された場合であっても、第1制御部によって帯電されられた画像形成時のクリーニング電位はほぼ維持されることとなる。
【0074】
実行決定部67は、画像形成装置1Aが複数ページの画像形成を行う場合、すなわち連続走行を行う場合に、非画像形成時であるページ間にて、第1制御部65及び第2制御部66による制御を行うか否かを、プロセススピードに応じて決定する。画像形成装置1Aが例えばカラー機等でありプロセススピードが速い場合には、第1制御部65及び第2制御部66の双方の制御を行ってバイアスを切り替える時間(バイアスの立ち上げ、立ち下げに相当する時間)が確保できずに、次のページのプリント画像に影響をおよぼすおそれがある。そのため、プロセススピードに応じて、プリント画像に影響が出ない場合に限って、ページ間において第1制御部65及び第2制御部66による制御を行う。
【0075】
図14は、連続走行時において、実行決定部67が、ページ間にて第1制御部65及び第2制御部66による制御を行うと決定した場合の動作シーケンスを示している。この例では、非画像形成時であるページ間においても、プリント動作前及びプリント動作後の期間と同様に、第1制御部65及び第2制御部66による制御が行われている。
【0076】
次に、図12図15、及び図16を参照して第2実施形態に係る画像形成装置1Aの作用効果について説明する。
【0077】
この画像形成装置1Aでは、非画像形成時において、第1制御部65によって感光体ドラム30の1周分以上、感光体ドラム30の帯電電位が画像形成時のクリーニング電位と同等となるように帯電が行われる。そのため、感光体ドラム30の全周の帯電電位を画像形成時のクリーニング電位と同等とでき、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等を抑制することができる。そして、第1制御部65による制御の後に、第2制御部66によって、例えば帯電ローラ32の動作が停止される等により帯電電圧が感光体ドラム30の放電開始電圧以下に設定されるとともに、除電ランプ39の動作が停止される。そのため、新たな放電ストレスを生じさせることを抑制できる。また、一度均一帯電された感光体ドラム30の帯電電位は、数時間程度の時間をかけて徐々に小さくなっていくものであるため、通常の画像形成処理においては、感光体ドラム30の帯電電位は概ね維持されるものとみなすことができる。そのため、例えば帯電ローラ32の動作を停止しても、適切なクリーニング電位を維持させることができる。よって、キャリア付着やバックグラウンドかぶり等の問題を発生させることなく(作像機能を担保しつつ)、放電ストレスを最大限低減して感光体ドラム30の摩耗を抑制することができる。
【0078】
なお、特に二成分現像方式において、高画像密度あるいは低画像密度の走行が続いた場合にはトナーの追加やドレインが必要となる場合がある。カラー機の場合、4色のうち1色のみが上述したトナーの追加等が必要になった場合であっても4色全てに対応した画像形成部において同様の動作が行われ感光体ドラムの摩耗に対する影響が大きくなるという問題がある。このような場合でも、画像形成装置1Aでは、必要な色に対応した画像形成部37においてのみプリント時と同様の処理を行い、それ以外の画像形成部37では上述した第1制御部65及び第2制御部66による制御を行うことで、感光体ドラム30の摩耗を抑制することができる。
【0079】
従来の画像形成装置、第1実施形態の画像形成装置1、及び画像形成装置1Aのそれぞれを走行させた場合の感光体摩耗量について説明する。なお、従来の画像形成装置は図9に示す動作シーケンス(以下、ノーマルモードと記載)で走行する。また、画像形成装置1は図4に示す動作シーケンス(以下、画像形成装置1のLo-Biasモードと記載)で走行する。また、画像形成装置1Aは、第1制御部65及び第2制御部66により制御を行い図13に示す動作シーケンス(以下、暗減衰モードと記載)で走行する。図15及び図16に示すように、同じように走行させた場合の感光体摩耗量は、ノーマルモードが最も多く、次いで画像形成装置1のLo-Biasモード、暗減衰モードの順であった。また、感光体ドラム1000回転あたりの具体的な摩耗量は、ノーマルモードが20nmであるのに対し、画像形成装置1のLo-Biasモードは9.5nm、暗減衰モードは3nmと極めて少なくなった。
【0080】
また、制御部60Aが、非画像形成時のページ間にて、第1制御部65及び第2制御部66による制御を行うか否かを、プロセススピードに応じて決定する実行決定部67をさらに有することで、プロセススピードが高速であるような場合に、第1制御部65及び第2制御部66による制御が次ページの画像に影響をおよぼすことを回避できる。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図13にて説明したように、除電ランプは、プリント動作後において、感光体ドラムが停止する直前に動作させられ、感光体ドラムの一周分以上ランプを点灯するとして説明したが、感光体ドラムの膜厚が薄い場合や、感光体ドラムの感度が高い場合、低帯電状態での除電ランプの照射により感光体ドラムの表面に光疲労のおそれがある場合等においては、図17に示されるように感光体ドラム停止前の除電ランプ点灯を行わなくてもよい。
【0082】
また、状態取得部が現像剤の状態を取得するために取得する情報は、必ずしもトナー濃度又はトナー帯電量に限定されず、適切なクリーニング電位と所定の関係を有した現像剤の状態を表す情報であればよい。
【0083】
また、実施形態中で説明した各制御はプリント動作に限定されるものでなく、例えば、カラーレジストレーション調整動作や画像濃度調整動作など、画像形成を行う全ての動作に適用することができる。
【符号の説明】
【0084】
1,1A…画像形成装置、30…感光体ドラム、32…帯電ローラ、35…ドラムモータ、37…画像形成部、39…除電ランプ、60,60A…制御部、61…状態取得部、62…選択部、63…モード設定部、64…モード内容設定部、65…第1制御部、66…第2制御部、67…実行決定部、110…現像ローラ。

図1
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